(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023169988
(43)【公開日】2023-12-01
(54)【発明の名称】端子付き電線
(51)【国際特許分類】
H01R 4/18 20060101AFI20231124BHJP
【FI】
H01R4/18 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022081385
(22)【出願日】2022-05-18
(71)【出願人】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001771
【氏名又は名称】弁理士法人虎ノ門知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】輿石 誠
【テーマコード(参考)】
5E085
【Fターム(参考)】
5E085BB02
5E085BB03
5E085BB12
5E085CC03
5E085DD14
5E085FF01
5E085GG26
5E085HH17
5E085JJ06
5E085JJ13
(57)【要約】
【課題】電線の絶縁被覆部に作用する荷重を低減させることで耐久性の向上を図る端子付き電線を提供することを目的とする。
【解決手段】端子付き電線100は、絶縁被覆部W2で導体部W1を被覆する電線Wと、絶縁被覆部W2の端末から露出する導体部W1に対して圧着される導体圧着部46と絶縁被覆部W2に対して圧着される被覆圧着部48とを含む圧着端子1とを備え、被覆圧着部48は、電線Wの軸線方向Xに沿って延在する基部41と基部41から軸線周りに沿う周方向D1の両側にそれぞれ延びる一対のバレル片44、45とを含み、被覆圧着部48は、一対のバレル片44、45の先端部が重なり合うように、基部41と一対のバレル片44、45とによって絶縁被覆部W2の周方向D1の全周を包んで圧着され、一対のバレル片44、45のうち、圧着時に内側に位置するバレル片45のみが、周方向D1の先端に向けて厚さが薄くなる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁性を有する絶縁被覆部で導電性を有する導体部を被覆する電線と、
前記絶縁被覆部の端末から露出する前記導体部に対して圧着される導体圧着部と前記絶縁被覆部に対して圧着される被覆圧着部とを含む圧着端子と、
を備え、
前記被覆圧着部は、前記電線の軸線方向に沿って延在する基部と前記基部から軸線周りに沿う周方向の両側にそれぞれ延びる一対のバレル片とを含み、
前記被覆圧着部は、前記一対のバレル片の先端部が重なり合うように、前記基部と前記一対のバレル片とによって前記絶縁被覆部の前記周方向の全周を包んで圧着され、
前記一対のバレル片のうち、圧着時に内側に位置する前記バレル片のみが、前記周方向の先端に向けて厚さが薄くなる、
端子付き電線。
【請求項2】
前記一対のバレル片のうち、圧着時に内側に位置する前記バレル片は、前記基部に連結される基端から前記周方向の先端に向けて厚さが薄くなり、前記先端の厚さは、前記基端の厚さの1/3~1/2の厚さである、
請求項1に記載の端子付き電線。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、端子付き電線に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の端子付き電線は、被覆電線と、圧着端子とを備える。圧着端子は、導体圧着部と被覆圧着部とを有する。導体圧着部は、電線の導体部を圧着して電気的に接続され、被覆圧着部は、電線の絶縁被覆部を圧着して固定される。そして、被覆圧着部は、一対のバレル片によって構成される。一対のバレル片は、絶縁被覆部に対して巻き付けられ、先端部が互いに重なり合うように圧着される。このような端子付き電線としては、例えば、下記特許文献に記載されたものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2022-017693号公報
【特許文献2】特開2011-044423号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したように圧着端子の被覆圧着部を構成する一対のバレル片は、絶縁被覆部に対して巻き付けられ、互いの先端部が互いに重なり合うようにオーバーラップして圧着される。そして、圧着端子は、防食材によって防食された防食端子を構成する。この場合、端子付き電線は、防食端子をハウジングキャビティ内に入れるため、防食材の厚さを考慮して被覆圧着部の厚さや幅が小さく設定される。すると、一対のバレル片が絶縁被覆部に巻き付けられて圧着されたとき、絶縁被覆部に荷重が作用して損傷する可能性がある。そのため、従来の端子付き電線は、被覆圧着部が電線の絶縁被覆部を圧着する構造に改善の余地がある。
【0005】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであって、電線の絶縁被覆部に作用する荷重を低減させることで耐久性の向上を図る端子付き電線を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明に係る端子付き電線は、絶縁性を有する絶縁被覆部で導電性を有する導体部を被覆する電線と、前記絶縁被覆部の端末から露出する前記導体部に対して圧着される導体圧着部と前記絶縁被覆部に対して圧着される被覆圧着部とを含む圧着端子と、を備え、前記被覆圧着部は、前記電線の軸線方向に沿って延在する基部と前記基部から軸線周りに沿う周方向の両側にそれぞれ延びる一対のバレル片とを含み、前記被覆圧着部は、前記一対のバレル片の先端部が重なり合うように、前記基部と前記一対のバレル片とによって前記絶縁被覆部の前記周方向の全周を包んで圧着され、前記一対のバレル片のうち、圧着時に内側に位置する前記バレル片のみが、前記周方向の先端に向けて厚さが薄くなる。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係る端子付き電線は、電線の絶縁被覆部に対して圧着される被覆圧着部が一対のバレル片を含み、一対のバレル片のうち、圧着時に内側に位置するバレル片のみが、周方向の先端に向けて厚さが薄くなる。そのため、電線の絶縁被覆部に対する被覆圧着部の圧着時に、絶縁被覆部の圧縮変位量が減少し、被覆圧着部から絶縁被覆部に作用する荷重を低減させることで、被覆圧着部の耐久性の向上を図ることができる、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、本実施形態に係る端子付き電線の概略構成を表す分解斜視図である。
【
図2】
図2は、圧着前の圧着端子を表す模式的な側面図である。
【
図3】
図3は、圧着前の圧着端子の被覆圧着部を表す
図2のIII-III断面図である。
【
図5】
図5は、従来の被覆圧着部と本実施形態の被覆圧着部との形状比較を表す断面図である。
【
図6】
図6は、参考例に係る端子付き電線の概略構成を表す分解斜視図である。
【
図7】
図7は、圧着前の圧着端子の被覆圧着部を表す断面図である。
【
図8】
図8は、圧着後の圧着端子の被覆圧着部を表す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本発明に係る実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。
【0010】
以下の説明では、互いに交差する第1方向、第2方向、及び、第3方向のうち、第1方向を「軸線方向X」といい、第2方向を「幅方向Y」といい、第3方向を「高さ方向Z」という。ここでは、軸線方向Xと幅方向Yと高さ方向Zとは、相互に略直交する。軸線方向Xは、典型的には、圧着端子が設けられる電線の軸線X1(
図1等参照)に沿う方向、電線が延在する延在方向、圧着端子と相手端子との挿抜方向等に相当する。幅方向Yと高さ方向Zとは、軸線方向Xと交差する交差方向に相当する。高さ方向Zは、典型的には、基部の板厚方向、圧着端子の中間部から電線の導体部が露出する露出方向、中間部から露出する導体部に対する防食材の塗布方向等に相当する。また、以下の説明では、圧着端子の圧着後の状態において、軸線X1周りに沿う方向を「周方向D1」という。また、以下の説明で用いる各方向は、特に断りのない限り、各部が相互に組み付けられた状態での方向を表すものとする。
【0011】
[実施形態]
図1は、本実施形態に係る端子付き電線の概略構成を表す分解斜視図、
図2は、圧着前の圧着端子を表す模式的な側面図である。
【0012】
図1及び
図2に示すように、端子付き電線100は、車両に使用されるワイヤハーネス等に適用されるものである。ここで、ワイヤハーネスは、例えば、車両に搭載される各装置間の接続のために、電源供給や信号通信に用いられる複数の電線Wを束にして集合部品とし、コネクタ等で複数の電線Wを各装置に接続するようにしたものである。
【0013】
端子付き電線100は、電線Wと、電線Wの端末に圧着されて導通接続された圧着端子1とを備える。但し、端子付き電線100は、電線Wと圧着端子1の要部を覆って防食する防食材も備える。以下、端子付き電線100の各構成について詳細に説明する。
【0014】
電線Wは、車両に配索され、各装置を電気的に接続するものである。電線Wは、導電性を有する線状の導体部W1と、導体部W1の外側を覆う絶縁性を有する絶縁被覆部W2とを含んで構成される。電線Wは、絶縁被覆部W2によって導体部W1を被覆した絶縁電線である。
【0015】
導体部W1は、導電性を有する金属素線を複数束ねた芯線である。導体部W1は、複数の金属素線を撚り合わせた撚り芯線であってもよい。絶縁被覆部W2は、導体部W1の外周側を被覆する電線被覆である。絶縁被覆部W2は、例えば、絶縁性の樹脂材料(PPやPVC、架橋PE等。耐摩耗性や耐薬品性、耐熱性等に配慮して適宜選定される。)等を押出成形することによって形成される。
【0016】
電線Wは、軸線X1に沿って線状に延在し、延在方向(軸線方向X)に対してほぼ同じ径で延びるように形成される。電線Wは、導体部W1の断面形状(軸線方向Xと交差する方向の断面形状)が略円形状、絶縁被覆部W2の断面形状が略円環形状となっており、全体として略円形状の断面形状となっている。電線Wは、少なくとも一方の端末において、絶縁被覆部W2が剥ぎ取られており、導体部W1が絶縁被覆部W2から露出している。電線Wは、絶縁被覆部W2から露出している導体部W1の端末に圧着端子1が設けられる。
【0017】
圧着端子1は、電線Wが電気的に接続され、導電性を有する相手端子が接続される端子金具である。圧着端子1は、電気接続部2と、連結部3と、電線圧着部4とを備える。電気接続部2と連結部3と電線圧着部4とは、全体が一体で導電性を有する金属部材によって構成される。例えば、圧着端子1は、一枚の板金を、電気接続部2、連結部3、電線圧着部4等の各部に対応した形状にあわせて、打ち抜き加工、プレス加工、折り曲げ加工等の各種加工によって成形することで各部が立体的に一体で形成される。圧着端子1は、軸線方向Xに沿って一方側から他方側に向かって、電気接続部2、連結部3、電線圧着部4の順で並んで相互に連結される。
【0018】
電気接続部2は、相手端子と電気的に接続される部分である。電気接続部2は、雄型の端子形状であってもよいし、雌型の端子形状であってもよい。本実施形態の電気接続部2は、雌型の端子形状として図示しており、雄型の端子形状の相手端子と電気的に接続される。なお、電気接続部2は、相手端子に限らず、アース部材等の種々の導電性の部材と電気的に接続される構成であってもよい。この場合、電気接続部2は、例えばアース部材等に締結されるいわゆる丸形端子(LA端子)形状であってもよい。
【0019】
連結部3は、電気接続部2と電線圧着部4との間に介在し、電気接続部2と電線圧着部4とを連結し導通する部分である。圧着端子1は、電気接続部2と電線圧着部4とが連結部3を介して電気的に接続され、電線圧着部4を介して電気接続部2と電線Wの導体部W1とが電気的に接続され導通される。
【0020】
電線圧着部4は、電線Wが接続され、電線Wの端末と圧着端子1とを電気的に接続する部分である。電線圧着部4は、電線Wの端末に加締められて圧着されることで、電線Wの端末に設けられる。電線圧着部4は、基部41と、二組の一対のバレル片42、43、44、45を含んで構成される。電線圧着部4は、基部41と二組の一対のバレル片42、43、44、45とによって電線Wに対して加締められて圧着される。
【0021】
電線圧着部4は、基部41と、二組の一対のバレル片42、43、44、45によって、導体圧着部46、中間部47、被覆圧着部48が構成される。言い換えれば、電線圧着部4は、基部41、及び、二組の一対のバレル片42、43、44、45によって構成される導体圧着部46、中間部47、被覆圧着部48を含んで構成される。
【0022】
導体圧着部46は、基部41の一部、及び、一対のバレル片42、43によって構成される。中間部47は、基部41の一部によって構成される。被覆圧着部48は、基部41の一部、及び、一対のバレル片44、45によって構成される。電線圧着部4は、軸線方向Xに沿って電気接続部2側から反対側に向かって、導体圧着部46、中間部47、被覆圧着部48の順で並んで相互に連結される。そして、電線圧着部4は、中間部47を介して一対のバレル片42、43と一対のバレル片44、45とが分断されたいわゆる別体バレル型の圧着部を構成する。
【0023】
具体的に、基部41は、軸線方向Xに沿って延在し、圧着端子1の圧着前の状態において、略U字状に形成された電線圧着部4の底壁となる部分である。基部41は、板厚方向が高さ方向Zに沿う板状に形成される。基部41は、圧着加工の際に電線Wの端部が載置される。基部41は、軸線方向Xの一方側に連結部3を介して電気接続部2が連結される。基部41は、各部において幅方向Yの両端部が高さ方向Zに沿って立ち上がっている。
【0024】
より具体的に、基部41は、軸線方向Xに沿って、導体圧着部46、中間部47、被覆圧着部48に渡って連続する。つまり、基部41は、導体圧着部46を構成する第1基部41a、中間部47を構成する第2基部41b、被覆圧着部48を構成する第3基部41cが軸線方向Xに沿って連なって構成される。基部41は、第1基部41aの軸線方向Xの一方の端部に電気接続部2が連結される。また、基部41は、圧着加工前の状態において、第3基部41cの軸線方向Xの他方の端部にキャリアが連結されており、例えば、圧着加工時にキャリアから切断される。
【0025】
一対のバレル片42、43は、基部41の一部である第1基部41aと共に導体圧着部46を構成する部分である。導体圧着部46は、電線Wの導体部W1に対して加締められ圧着されることで、導体部W1と電気的に接続される部分である。導体圧着部46は、電線圧着部4において軸線方向Xの一端側、ここでは、電気接続部2側に設けられる。
【0026】
一対のバレル片42、43は、導体圧着部46において第1基部41aから幅方向Y(圧着後の状態においては周方向D1)の両側にそれぞれ帯状に延びて形成され、第1基部41aとの間に電線Wの導体部W1を包んで加締められ圧着される部分である。一対のバレル片42、43は、圧着加工前の状態において、U字状に形成された電線圧着部4の側壁となる部分である。一方のバレル片42は、第1基部41aから幅方向Yの一方側に延びる。他方のバレル片43は、第1基部41aから幅方向Yの他方側に延びる。一対のバレル片42、43は、電線Wの導体部W1に対して加締められ圧着される前の状態では、第1基部41aに対して曲げ加工が施され第1基部41aとあわせて略U字状に成形されている。
【0027】
一対のバレル片42、43は、導体部W1に対して巻き付けられて加締められ、圧着された状態で、先端42a、43a側が互いに重なり合わない(オーバーラップしない)ように第1基部41a側の根元から先端までの長さが設定されている。導体圧着部46は、第1基部41aと一対のバレル片42、43とによって、一対のバレル片42、43の間に配置された電線Wの導体部W1の外側を包んで導体部W1に対して加締められ圧着される。
【0028】
一対のバレル片42、43は、例えば、いわゆるBクリンプと称する加締め圧着がなされる。導体圧着部46は、Bクリンプでは、第1基部41aと一対のバレル片42、43とによって導体部W1の周方向D1の全周を包んで圧着された状態で、一対のバレル片42、43のそれぞれが第1基部41a側に向けて折り曲げられた状態とされる。そして、導体圧着部46は、この状態で一対のバレル片42、43の先端42a、43aがそれぞれ導体部W1に接触して押しつけられるように加締められ圧着される。
【0029】
なお、導体圧着部46は、導体圧着部46の内面に、導体部W1との接触面積を増やし接触安定性を向上すると共に凝着強度を向上するためのインデント46aを有していてもよい。ここで、導体圧着部46の内面とは、第1基部41a、及び、一対のバレル片42、43において導体部W1と接触する側の面である。また、導体圧着部46は、上記の形式に限らず、例えば、いわゆるオーバーラップクリンプと称する加締め圧着がなされてもよい。導体圧着部46は、オーバーラップクリンプでは、一対のバレル片42、43が電線Wに対して巻き付けられて加締められ、圧着された状態で、先端42a、43a側が互いに重なり合う(オーバーラップする)ように構成される。
【0030】
一対のバレル片44、45は、基部41の一部である第3基部41cと共に被覆圧着部48を構成する部分である。被覆圧着部48は、電線Wの絶縁被覆部W2に対して加締められ圧着されることで、絶縁被覆部W2に固定される部分である。被覆圧着部48は、電線圧着部4において軸線方向Xの他端側、ここでは、電気接続部2側とは反対側に設けられる。
【0031】
一対のバレル片44、45は、被覆圧着部48において第3基部41cから幅方向Y(圧着後の状態においては周方向D1)の両側にそれぞれ帯状に延びて形成され、第3基部41cとの間に電線Wの絶縁被覆部W2を包んで加締められ圧着される部分である。一対のバレル片44、45は、圧着加工前の状態において、U字状に形成された電線圧着部4の側壁となる部分である。一方のバレル片44は、第3基部41cから幅方向Yの一方側に延びる。他方のバレル片45は、第3基部41cから幅方向Yの他方側に延びる。一対のバレル片44、45は、電線Wの絶縁被覆部W2に対して加締められ圧着される前の状態では、第3基部41cに対して曲げ加工が施され第3基部41cとあわせて略U字状に成形されている。
【0032】
一対のバレル片44、45は、絶縁被覆部W2に対して巻き付けられて加締められ、圧着された状態で、先端44a、45a側が互いに重なり合う(オーバーラップする)ように第3基部41c側の根元から先端までの長さが設定されている。被覆圧着部48は、第3基部41cと一対のバレル片44、45とによって、一対のバレル片44、45の間に配置された電線Wの絶縁被覆部W2の外側を包んで絶縁被覆部W2に対して加締められ圧着される。
【0033】
バレル片44、45は、例えば、いわゆるオーバーラップクリンプと称する加締め圧着がなされる。被覆圧着部48は、オーバーラップクリンプでは、第3基部41cと一対のバレル片44、45とによって絶縁被覆部W2の周方向D1の全周を包んで圧着された状態で、先端44a、45a側が互いに重なり合う(オーバーラップする)状態とされる。
【0034】
電線圧着部4は、軸線方向Xに対して被覆圧着部48と導体圧着部46との間に中間部47が介在する。中間部47は、導体圧着部46と被覆圧着部48との間に介在し、軸線方向Xに沿って導体圧着部46と被覆圧着部48とを連結する部分である。中間部47は、第2基部41bによって構成され、第2基部41bの軸線方向Xの一方側の端部に導体圧着部46の第1基部41aが連結され、他方側の端部に被覆圧着部48の第3基部41cが連結される。そのため、導体圧着部46を構成する一対のバレル片42、43と、被覆圧着部48を構成する一対のバレル片44、45とは、それぞれ、互いの間に中間部47が介在することで相互に軸線方向Xに間隔をあけて分断して形成される。
【0035】
ここで、被覆圧着部48を構成する第3基部41c、及び、一対のバレル片44、45について詳細に説明する。
図3は、圧着前の圧着端子の被覆圧着部を表す
図2のIII-III断面図である。
【0036】
図1及び
図3に示すように、電線Wの絶縁被覆部W2に対して圧着される被覆圧着部48は、基部41の第3基部41cと、一対のバレル片44、45とを含む。被覆圧着部48は、一対のバレル片44、45の先端部が重なり合うように、第3基部41cと一対のバレル片44、45とによって周方向D1の全周を包んで圧着される。この場合、本実施形態の被覆圧着部48は、一対のバレル片44、45のうち、圧着時に内側に位置するバレル片45のみが、周方向D1の先端に向けて厚さが薄くなる。
【0037】
詳細に説明すると、圧着加工前の状態において、第3基部41cは、周方向D1に沿って湾曲した形状をなし、周方向D1に沿って厚さがほぼ一定である。第3基部41cは、周方向D1における一方の端部に繋ぎ部41dを介してバレル片44が接続される。すなわち、バレル片44は、基端44bが第3基部41cの繋ぎ部41dに接続される。また、第3基部41cは、周方向D1における他方の端部に繋ぎ部41eを介してバレル片45が接続される。すなわち、バレル片45は、基端45bが第3基部41cの繋ぎ部41eに接続される。第3基部41cは、繋ぎ部41d、41eを含めた部分が周方向D1に沿った湾曲形状をなす。一対のバレル片44、45は、ほぼ直線形状をなしていることが好ましいが、若干湾曲していてもよい。被覆圧着部48は、第3基部41cの両側に一対のバレル片44、45が接続された圧着加工前の状態において、U字状に形成される。接続状態にある第3基部41cと一対のバレル片44、45は、外面および内面が段差なく連続する面であることが好ましい。
【0038】
バレル片44は、基端44bが第3基部41cの繋ぎ部41dに接続され、先端44aが第3基部41cから離間する方向に延出する。バレル片44は、基端44bから先端44aに向けて厚さがほぼ一定である。そして、バレル片44は、被覆圧着部48の外側になる外面44dと、被覆圧着部48の内側になる内面44cとは、それぞれ段差のない平面である。但し、バレル片44は、先端44aに角が面取りされた部分である面取部44eが設けられているが、面取部44eがなくてもよい。
【0039】
バレル片45は、基端45bが第3基部41cの繋ぎ部41eに接続され、先端45aが第3基部41cから離間する方向に延出する。バレル片45は、基端45bから先端45aに向けて厚さが薄くなる。この場合、バレル片45の基端45bの厚さは、バレル片44の基端44bの厚さと同じであり、バレル片45の先端45aの厚さは、バレル片44の先端44aの厚さより薄い。バレル片45は、被覆圧着部48の外側になる外面45dと、被覆圧着部48の内側になる内面45cとは、それぞれ段差のない平面である。但し、バレル片45は、先端45aに角が面取りされた部分である面取部45eが設けられているが、面取部45eがなくてもよい。そして、バレル片45は、先端45aの厚さが、基端45bの厚さの1/3~1/2の厚さであることが好ましい。なお、本実施形態のバレル片45は、基端45bから先端45aに向けて厚さが薄くなる形状としたが、基端45bから先端45a側に所定長さだけ離間した位置から先端45aに向けて厚さが薄くなる形状としてもよい。
【0040】
以下、電線Wの端末に圧着端子1が圧着されて導通接続された端子付き電線100について説明する。
図4は、端子付き電線を表す断面図である。
【0041】
図4に示すように、圧着端子1は、導体圧着部46が導体部W1に圧着され、被覆圧着部48が絶縁被覆部W2に圧着されることで、電線Wの端末に圧着される。この状態で、圧着端子1は、導体圧着部46と導体部W1との間に接点部位が形成され、接点部位を介して電線Wの導体部W1と導通接続される。そして、圧着端子1は、例えば、コネクタハウジング等に保持され、コネクタハウジングが相手コネクタのコネクタハウジングと相互に嵌合しコネクタ接合されることで、相手端子と電気的に接続され相互間に電気的な接点部位が形成される。この結果、圧着端子1は、接続部位を介して相手端子と導通接続される。
【0042】
圧着端子1が圧着される電線Wの導体部W1は、例えば、アルミニウム(Al)又はアルミニウム合金等によって構成される場合がある。つまりこの場合、導体部W1は、アルミニウム又はアルミニウム合金によって構成された金属素線を複数束ねた芯線である。一方、圧着端子1は、導体部W1とは異なる異種金属、例えば、銅(Cu)又は銅合金によって構成された母材の表面に、すず(Sn)等によるメッキが施されることで構成される場合がある。この場合、端子付き電線100は、導体部W1の材料がアルミニウム又はアルミニウム合金、圧着端子1の材料が銅又は銅合金であることで、両者の間に水(塩水)等が浸入すると両者のイオン化傾向の違いによって、導体部W1と圧着端子1との間においてガルバニック腐食が発生するおそれがある。なおここで、上記アルミニウム合金は、アルミニウムを主成分とする合金である。また、上記銅合金は、銅を主成分とする合金であり、例えば、いわゆる黄銅等を含む。
【0043】
これに対して、端子付き電線100は、電線圧着部4に腐食を防止する防食材10が施されることで、ガルバニック腐食が発生することを抑制している。端子付き電線100は、防食材10によって、圧着端子1から露出する導体部W1を覆うことで防食されている。防食材10は、例えば、紫外線を照射することで硬化するUV(Ultraviolet、紫外線)硬化型樹脂によって構成される。UV硬化型樹脂としては、例えば、ウレタンアクリレート系の樹脂を用いることができるがこれに限らない。防食材10は、ペースト状のUV硬化型樹脂が所定の部位に塗布された後、紫外線が照射されることで硬化し形状を保持する。ここでは、防食材10は、導体圧着部46、中間部47、被覆圧着部48、及び、圧着端子1から露出している導体部W1に渡って設けられる。つまり、ここでは、防食材10は、軸線方向Xに沿って圧着端子1から露出している導体部W1の先端W1b、導体圧着部46、中間部47から露出する中間露出部W1a、及び、被覆圧着部48に渡って設けられる。また、防食材10は、電線圧着部4の内部や導体部W1の素線間にも浸透するように設けられる。防食材10は、記各部に塗布、浸透された後、紫外線が照射されることで硬化して形状を保持し各部を覆う。この構成により、圧着端子1は、防食材10によって止水し、水(塩水等)が内部に浸入することを規制することができ、ガルバニック腐食等が発生することを抑制することができる。
【0044】
また、圧着端子1は、被覆圧着部48が絶縁被覆部W2に圧着されるとき、一対のバレル片44、45は、絶縁被覆部W2に巻き付けられて加締められ、圧着された状態で、先端44a、45a側が互いに重なり合う(オーバーラップする)状態となる。このとき、被覆圧着部48は、バレル片44が内側に位置して絶縁被覆部W2に接触し、バレル片44が外側に位置してバレル片45に接触する。すなわち、被覆圧着部48は、バレル片45の内面45cが絶縁被覆部W2に対して密着し、バレル片45の外面45dに対してバレル片44の内面44cが密着する。そして、外側に位置するバレル片44は、厚さがほぼ一定であるが、内側に位置するバレル片45は、先端45aに向けて厚さが薄くなる先細形状をなしている。つまり、一対のバレル片44、45は、絶縁被覆部W2に巻き付けられて重なり合う先端44a、45a側にて、内側に位置するバレル片45の厚さが外側に位置するバレル片44の厚さより薄い。そのため、被覆圧着部48が絶縁被覆部W2に圧着されたとき、被覆圧着部48による絶縁被覆部W2の圧縮変位量が減少し、被覆圧着部48から絶縁被覆部W2に作用する荷重が低減する。
【0045】
被覆圧着部48による絶縁被覆部W2の圧着状態を詳細に説明する。
図5は、従来の被覆圧着部と本実施形態の被覆圧着部との形状比較を表す断面図である。
【0046】
図5に示すように、従来の端子付き電線001は、被覆圧着部002を構成する一対のバレル片003、004が、本実施形態の一方のバレル片44と同様に、基端から先端に向けて厚さt11、t12がほぼ一定であり、厚さt11、t12が同じである。従来の端子付き電線001は、被覆圧着部002を構成する一対のバレル片003、004が絶縁被覆部W2に巻き付けられて加締められ、圧着された状態で先端側が互いに重なり合う(オーバーラップする)状態となる。このとき、絶縁被覆部W2は、厚さt11、t12がほぼ一定である一対のバレル片003、004が重なり合うように巻き付けられ、圧着される。そのため、絶縁被覆部W2は、被覆圧着部002による圧縮変位量が大きくなり、厚さt13となる。
【0047】
一方、本実施形態の端子付き電線100は、被覆圧着部48を構成する一対のバレル片44、45のうち、外側に位置するバレル片44の厚さt1が基端44bから先端44aに向けてほぼ一定であるが、内側に位置するバレル片45の厚さt2が基端45bから先端45aに向けて薄くなる。本実施形態の端子付き電線100は、被覆圧着部48を構成する一対のバレル片44、45が絶縁被覆部W2に巻き付けられて加締められ、圧着された状態で、先端側が互いに重なり合う(オーバーラップする)状態となる。このとき、絶縁被覆部W2は、外側のバレル片44と、内側に位置した厚さt2の薄いバレル片45とが重なり合うように巻き付けられて圧着される。そのため、絶縁被覆部W2は、被覆圧着部48による圧縮変位量が減少し、従来の被覆圧着部002による厚さt13より厚い厚さt3となる。その結果、被覆圧着部48から絶縁被覆部W2に作用する荷重を低減させることで、絶縁被覆部W2の損傷が抑制され、内部への水の浸入を阻止して圧着端子1の腐食が抑制される。
【0048】
以上説明したように、本実施形態に係る端子付き電線100は、絶縁被覆部W2で導体部W1を被覆する電線Wと、導体部W1に対して圧着される導体圧着部46と絶縁被覆部W2に対して圧着される被覆圧着部48とを含む圧着端子1とを備える。被覆圧着部48は、電線Wの軸線方向Xに沿って延在する基部41と基部41から軸線周りに沿う周方向D1の両側にそれぞれ延びる一対のバレル片44、45とを含み、被覆圧着部48は、一対のバレル片44、45の先端部が重なり合うように、基部41と一対のバレル片44、45とによって絶縁被覆部W2の周方向D1の全周を包んで圧着される。そして、一対のバレル片44、45のうち、圧着時に内側に位置するバレル片45のみが、周方向D1の先端45aに向けて厚さが薄くなる。
【0049】
本実施形態に係る端子付き電線100によれば、一対のバレル片44、45が絶縁被覆部W2に巻き付けられて圧着された状態で、先端側が互いに重なり合うオーバーラップ状態になる。このとき、絶縁被覆部W2は、一方のバレル片44に対して先細形状をなす他方のバレル片45が内側に位置した状態になる。そのため、絶縁被覆部W2は、被覆圧着部48による圧縮変位量が減少し、作用する荷重が低減させる。その結果、絶縁被覆部W2の損傷が抑制され、被覆圧着部48の耐久性の向上を図ることができる。
【0050】
また、本実施形態に係る端子付き電線100は、一対のバレル片44、45のうち、圧着時に内側に位置するバレル片45は、基部41に連結される基端45bから周方向D1の先端45aに向けて厚さが薄くなり、先端45aの厚さは、基端45bの厚さの1/3~1/2の厚さである。そのため、被覆圧着部48による絶縁被覆部W2に対する圧縮変位量を効果的に減少させることができる。
【0051】
[参考例]
図6は、参考例に係る端子付き電線の概略構成を表す分解斜視図である。
【0052】
図6に示すように、参考例に係る端子付き電線100Aは、基部41の一部、及び、一対のバレル片44A、45によって構成される被覆圧着部48Aの構造が本実施形態とは異なる。以下では、上述した本実施形態と同様の構成要素には共通の符号が付されるとともに、共通する構成、作用、効果については、重複した説明はできるだけ省略する。
【0053】
図6に示すように、端子付き電線100Aは、電線Wと、電線Wの端末に圧着されて導通接続された圧着端子1Aとを備える。圧着端子1Aは、電気接続部2と、連結部3と、電線圧着部4Aとを備える。電線圧着部4Aは、基部41と、二組の一対のバレル片42、43、44A、45を含んで構成される。電線圧着部4Aは、基部41と二組の一対のバレル片42、43、44A、45とによって電線Wに対して加締められて圧着される。
【0054】
電線圧着部4Aは、基部41と、二組の一対のバレル片42、43、44、45によって、導体圧着部46、中間部47、被覆圧着部48Aが構成される。言い換えれば、電線圧着部4Aは、基部41、及び、二組の一対のバレル片42、43、44、45によって構成される導体圧着部46、中間部47、被覆圧着部48Aを含んで構成される。一対のバレル片44A、45は、基部41の一部である第3基部41cと共に被覆圧着部48Aを構成する部分である。
【0055】
図7は、圧着前の圧着端子の被覆圧着部を表す断面図である。
【0056】
図1及び
図7に示すように、電線Wの絶縁被覆部W2に対して圧着される被覆圧着部48Aは、基部41の第3基部41cと、一対のバレル片44A、45とを含む。被覆圧着部48Aは、一対のバレル片44A、45の先端部が重なり合うように、第3基部41cと一対のバレル片44A、45とによって周方向D1の全周を包んで圧着される。このとき、一対のバレル片44A、45は、周方向D1の先端に向けて厚さが薄くなる。
【0057】
詳細に説明すると、バレル片44Aは、基端44bが第3基部41cの繋ぎ部41dに接続され、先端44aが第3基部41cから離間する方向に延出する。バレル片44Aは、基端44bから先端44aに向けて厚さが薄くなる。バレル片44Aは、先端44aの厚さが、基端44bの厚さの1/3~1/2の厚さであることが好ましい。すなわち、一対のバレル片44A、45は、ほぼ同形状をなす。
【0058】
図8は、圧着後の圧着端子の被覆圧着部を表す断面図である。
【0059】
図8に示すように、参考例の端子付き電線100Aは、被覆圧着部48Aを構成する一対のバレル片44A、45の厚さt1。t2が基端44b、45bから先端44a、45aに向けて薄くなる。参考例の端子付き電線100Aは、被覆圧着部48Aを構成する一対のバレル片44A、45が絶縁被覆部W2に巻き付けられて加締められ、圧着された状態で、先端側が互いに重なり合う(オーバーラップする)状態となる。このとき、絶縁被覆部W2は、厚さt1、t2の薄いバレル片44、45が互いに重なり合うように巻き付けられて圧着される。そのため、絶縁被覆部W2は、被覆圧着部48Aによる圧縮変位量が減少し、厚さt3となる。その結果、被覆圧着部48Aから絶縁被覆部W2に作用する荷重を低減させることで、絶縁被覆部W2の損傷が抑制される。
【0060】
なお、上述した本発明の実施形態に係る端子付き電線は、上述した実施形態に限定されず、特許請求の範囲に記載された範囲で種々の変更が可能である。
【0061】
本実施形態に係る端子付き電線は、以上で説明した実施形態、参考例の構成要素を適宜組み合わせることで構成してもよい。
【符号の説明】
【0062】
1、1A 圧着端子
2 電気接続部
3 連結部
4、4A 電線圧着部
10 防食材
41 基部
41a 第1基部
41b 第2基部
41c 第3基部
41d、41e 繋ぎ部
42、43、44、44A、45 バレル片
42a、43a、44a、45a 先端
44b、45b 基端
44c、45c 内面
44d、45d 外面
44e、45e 面取部
46 導体圧着部
46a インデント
47 中間部
48、48A 被覆圧着部
100、100A 端子付き電線
D1 周方向
W 電線
W1 導体部
W2 絶縁被覆部
X 軸線方向
X1 軸線
Y 幅方向
Z 高さ方向