(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023169991
(43)【公開日】2023-12-01
(54)【発明の名称】経口組成物及び皮膚外用剤
(51)【国際特許分類】
A23L 33/105 20160101AFI20231124BHJP
A61K 8/49 20060101ALI20231124BHJP
A61Q 19/08 20060101ALI20231124BHJP
A61K 31/365 20060101ALI20231124BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20231124BHJP
【FI】
A23L33/105
A61K8/49
A61Q19/08
A61K31/365
A61P17/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022081389
(22)【出願日】2022-05-18
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】593106918
【氏名又は名称】株式会社ファンケル
(74)【代理人】
【識別番号】100162396
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 泰之
(74)【代理人】
【識別番号】100194803
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 理弘
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 理恵
【テーマコード(参考)】
4B018
4C083
4C086
【Fターム(参考)】
4B018LB01
4B018LB05
4B018LB06
4B018LB08
4B018LB09
4B018MD10
4B018MD48
4B018MD80
4B018ME14
4B018MF01
4C083AC841
4C083BB51
4C083CC03
4C083EE12
4C086AA01
4C086AA02
4C086CA01
4C086MA01
4C086MA04
4C086MA52
4C086MA63
4C086NA14
4C086ZA89
(57)【要約】
【課題】好中球エラスターゼ阻害剤の皮膚外用剤や内用剤の設計の制限を少なくすること。
【解決手段】バリオラル酸を含有する、シワ及び/又はたるみの予防及び改善用経口組成物。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バリオラル酸を含有する、シワ及び/又はたるみの予防及び改善用経口組成物。
【請求項2】
バリオラル酸を含有する、好中球エラスターゼ活性阻害用経口組成物。
【請求項3】
バリオラル酸を含有するシワ及び/又はたるみの予防及び改善用皮膚外用剤。
【請求項4】
バリオラル酸を含有する好中球エラスターゼ活性阻害用皮膚外用剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シワ、たるみの予防及び改善用経口組成物及び皮膚外用剤に関する。
【背景技術】
【0002】
エラスチンは組織の弾性を生み出す繊維状のタンパク質で、動脈や靱帯、肺など弾力性が必要とされる組織に多く発現している。エラスターゼはエラスチンを分解するプロテアーゼで、ヒトには8つのエラスターゼ遺伝子が存在する。そして、血管内の好中球は血管内壁の接着因子を足がかりにして血管内壁に付着し、その後血管の内皮細胞の間を通過して血管外に出る。その好中球が放出する好中球エラスターゼは、特許文献1及び2に示すように、真皮のエラスチンを分解して細胞外マトリックスを損傷させ、シワを形成する一因となることが報告されている。また、紫外線を受けたり、笑ったときの目尻等のように、皮膚上の同じ箇所にシワが生じる等の物理的な刺激を繰り返したりすると、炎症反応に応答して好中球エラスターゼ分泌量が多くなることが報告されている。そのため、好中球エラスターゼの働きを阻害することは、シワ形成を抑制すると考えられる。
また、好中球エラスターゼ阻害剤として、特定の化合物を含有した、シワ及び/又はたるみの予防又は改善剤は、特許文献1の特に一般式(1)により公知である。また、セイヨウニワトコの抽出物を有効成分とした、好中球エラスターゼ阻害剤を含有する、若々しい肌の状態を維持する効果が期待された外用剤及び内用剤は特許文献2により公知である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-194341公報
【特許文献2】特開平11-147832号公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】2010 Dec;60(3):151-8. Neutrophil elastasecontributes to extracellular matrix damage induced by chronic low-dose UVirradiation in a hairless mouse photoaging model
【非特許文献2】日本香化粧品学会誌 2020年44巻1号p.13-19
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
先行技術の好中球エラスターゼ阻害剤は確かにある程度の効果を発揮するとしても、特定の化合物や植物の抽出物に限定されるのであり、他の好中球エラスターゼ阻害剤の選択肢は少なかった。好中球エラスターゼ阻害剤の選択肢を広げることが望まれていた。ひいては、好中球エラスターゼ阻害剤の皮膚外用剤や内用剤の設計の制限を少なくすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の主な構成は、次のとおりである。
1.バリオラル酸を含有する、シワ及び/又はたるみの予防及び改善用経口組成物。
2.バリオラル酸を含有する、好中球エラスターゼ活性阻害用経口組成物。
3.バリオラル酸を含有するシワ及び/又はたるみの予防及び改善用皮膚外用剤。
4.バリオラル酸を含有する好中球エラスターゼ活性阻害用皮膚外用剤。
【発明の効果】
【0007】
新たな好中球エラスターゼ阻害剤により、好中球エラスターゼの働きを阻害してシワやたるみを予防及び抑制できる経口組成物や皮膚外用剤の選択肢を充実させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図2】エラスチン高発現細胞より抽出したタンパク質にエラスターゼ及び阻害剤候補を添加し、エラスチンの分解阻害を評価したSDS電気泳動の図。
【
図3】好中球エラスターゼ阻害活性のバリオラル酸濃度依存性を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の改善用経口組成物及び皮膚外用剤は、バリオラル酸(Variolaric acid)を含有する。
【0010】
(バリオラル酸)
本発明に用いるバリオラル酸は、
図1に示す構造を有する化合物であり、特定の苔等の地衣類等に含有される化合物である。
バリオラル酸は合成により得てもよく、バリオラル酸を含有する特定の植物又は地衣類(例えばウスニア等)から任意の抽出方法により抽出をしたり、その抽出物を精製して高純度のものとして得ても良い。
そして、バリオラル酸を、経口組成物や皮膚外用剤に含有させることにより、簡便に皮膚や組織での好中球エラスターゼ阻害活性を高めることができる。このように、好中球エラスターゼの活性を阻害することにより、真皮のエラスチンを分解して細胞外マトリックスを損傷する程度を低減できる。その結果として、シワやたるみの発生を予防したり、発生したシワやたるみを改善したりでき、ひいては皮膚の老化を防止でき、皮膚表面の張りを保持できる効果を発揮できる。そして、本発明の経口組成物及び皮膚外用剤も、シワやたるみの発生を予防したり、発生したシワやたるみを改善したりでき、そして皮膚の老化を防止でき、皮膚表面の張りを保持できる効果を発揮できることになる。
【0011】
(経口組成物)
本発明における経口組成物としては、バリオラル酸を含有できるものであれば特に限定されない。飲食品、健康食品、食品添加物、医薬品用の組成物としても使用できる。或いは、通常の医薬品に用いる賦形剤によって、散剤、錠剤、カプセル剤とすることもできる。
また、飲食品や健康食品等として、液剤、液剤以外の形状、例えば乳液状、ベースト状、ゲル状、パウダー状(粉末状)、顆粒状、ペレット状、スティック状、固形状等の何れの形態としてもよい。
【0012】
このような経口組成物としては、コーヒー、紅茶、清涼飲料、乳酸菌飲料、無果汁飲料、果汁入り飲料、栄養ドリンクなどの飲料類、リキュール、果実酒などの酒類、アイスクリーム、シャーベットなどの冷菓類、スナック類、栄養食品、ゼリー、プリン、羊かんなどのデザート類、クッキー、ケーキ、チョコレート、チューイングガム、饅頭などの菓子類、菓子パン、食パンなどのパン類、ラムネ菓子、タブレットなどの錠菓類、ハム、ソーセージ等の畜肉食品、ちくわ、かまぼこ等の魚肉食品、魚介類食品、ドレッシング、醤油、ジャム、ふりかけ等の調味料等を挙げることができる。
このように、経口組成物とする場合には、酸化防止剤(ビタミンC、ビタミンEなど)や、糖類、甘味料、増粘安定剤、pH調整剤などと組み合わせて飲食品、健康食品、食品添加物、医薬品用の組成物としても使用できる。
【0013】
バリオラル酸を、医薬品やサプリメントの製剤とする場合は、バリオラル酸を一般的な手段により、直接又は製剤上許容し得る担体とともに混合、分散した後、所望の形態に加工することによって、容易に得ることができる。この場合、本発明に用いられるバリオラル酸の他に、かかる形態に一般的に用いられる植物油、動物油等の油性分、ビタミン類、pH調整剤、防腐剤、増粘剤、色素、香料等を、本発明の効果を妨害しない範囲で適宜配合することができる。
これら経口組成物への本発明のバリオラル酸の含有量は、飲食品の固形分中0.1ppm以上が好ましく、1.0ppm以上がより好ましく、5.0ppm以上がさらに好ましく、10.0ppm以上が最も好ましい。また99.0質量%以下が好ましく、10.0質量%以下がより好ましく、5.0質量%以下が更に好ましく、3.0質量%以下が最も好ましい。
【0014】
(皮膚外用剤)
本発明の皮膚外用剤例としては、化粧水(ローション)、乳液、クリーム、オイル、軟膏、パック、リップ、口紅、ファンデーション、アイライナー、頬紅、マスカラ、アイシャドウー、マニキュア・ペディキュア、爪被覆剤、爪被覆除去剤、ひげ剃り用剤、シャンプー、リンス、ヘアトリートメント、ヘアトニック、ヘアスプレー、ヘアクリーム、ヘアローション、整髪料、育毛料、パーマネント液、染毛料、ハンドソープ、ボディーソープ、歯磨き剤、洗口料、洗顔料・石鹸類、香水、防臭制汗剤、軟膏、湿布薬等を挙げることができる。
【0015】
本発明の皮膚外用剤を化粧料とする場合には、化粧料などで通常使用される基剤、添加剤等を併用して、化粧品、医薬部外品用の製剤として使用できる。
本発明の皮膚外用剤の形態としては、化粧水、乳液、クリーム、ジェル等の、溶液状、乳化物状、高分子ゲル状製剤とすることができる。また、泡状製剤、多層状製剤、スプレー製剤、不織布等に含浸させたシートあるいはゲルパック製剤であってもよい。
本発明の皮膚外用剤には、目的に応じて任意成分として保湿剤、界面活性剤、増粘剤、抗炎症剤、ビタミン類、抗酸化剤、血行促進剤、創傷治癒剤、抗菌性物質、皮膚賦活剤、常在菌コントロール剤、活性酸素消去剤、美白剤等の薬効成分を含有させることができる。
これら皮膚外用剤への本発明のバリオラル酸の含有量は、皮膚外用剤の固形分中0.1ppm以上が好ましく、1.0ppm以上がより好ましく、5.0ppm以上がさらに好ましく、10.0ppm以上が最も好ましい。また99.0質量%以下が好ましく、10.0質量%以下がより好ましく、5.0質量%以下が更に好ましく、3.0質量%以下が最も好ましい。
【0016】
本発明の皮膚外用剤に含有させても良い薬効成分としては、従来、医薬品、医薬部外品、化粧品、衛生材料等で使用されていて、水中に溶解、または分散可能なものであれば特に限定されることなく使用することができる。具体的には、アシタバエキス、アボカドエキス、アマチャエキス、アルテアエキス、アルニカエキス、アンズエキス、アンズ核エキス、ウイキョウエキス、ウコンエキス、ウーロン茶エキス、エチナシ葉エキス、オウゴンエキス、オウバクエキス、オオムギエキス、オランダカラシエキス、オレンジエキス、海水乾燥物、加水分解エラスチン、加水分解コムギ末、加水分解シルク、カモミラエキス、カロットエキス、カワラヨモギエキス、甘草エキス、カルカデエキス、キウイエキス、キナエキス、キューカンバーエキス、グアノシン、クマザサエキス、クルミエキス、グレープフルーツエキス、クレマティスエキス、酵母エキス、ゴボウエキス、コンフリーエキス、コラーゲン、コケモモエキス、サイコエキス、サイタイ抽出液、サルビアエキス、サボンソウエキス、ササエキス、サンザシエキス、シイタケエキス、ジオウエキス、シコンエキス、シナノキエキス、シモツケソウエキス、ショウブ根エキス、シラカバエキス、スギナエキス、スイカズラエキス、セイヨウキズタエキス、セイヨウサンザシエキス、セイヨウニワトコエキス、セイヨウノコギリソウエキス、セイヨウハッカエキス、ゼニアオイエキス、センブリエキス、タイソウエキス、タイムエキス、チョウジエキス、チガヤエキス、チンピエキス、トウヒエキス、ドクダミエキス、トマトエキス、納豆エキス、ニンジンエキス、ノバラエキス、ハイビスカスエキス、バクモンドウエキス、パセリエキス、蜂蜜、パリエタリアエキス、ヒキオコシエキス、ビサボロール、フキタンポポエキス、フキノトウエキス、ブクリョウエキス、ブッチャーブルームエキス、ブドウエキス、プロポリス、ヘチマエキス、ペパーミントエキス、ボダイジュエキス、ホップエキス、マツエキス、マロニエエキス、ミズバショウエキス、ムクロジエキス、モモエキス、ヤグルマギクエキス、ユーカリエキス、ユズエキス、ヨモギエキス、ラベンダーエキス、リンゴエキス、レタスエキス、レモンエキス、レンゲソウエキス、ローズエキス、ローズマリーエキス、ローマカミツレエキス、ローヤルゼリーエキス等を挙げることができる。
【0017】
また、アミノ酸、尿素、ピロリドンカルボン酸ナトリウム、ベタイン、ホエイ、トリメチルグリシン等の保湿剤;スフィンゴ脂質、セラミド、コレステロール、コレステロール誘導体、リン脂質等の油性成分;ε-アミノカプロン酸、グリチルリチン酸、β-グリチルレチン酸、塩化リゾチーム、グアイアズレン、ヒドロコルチゾン等の抗炎症剤;ビタミンA,B2,B6,D,E、パントテン酸カルシウム、ビオチン、ニコチン酸アミド等のビタミン類;トコフェロール、カロチノイド、フラボノイド、タンニン、リグナン、サポニン等の抗酸化剤;γ-オリザノール、ビタミンE誘導体等の血行促進剤;レチノール、レチノール誘導体等の創傷治癒剤;デオキシリボ核酸、コンドロイチン硫酸ナトリウム、コラーゲン、エラスチン、キチン、キトサン、加水分解卵殻膜等の生体高分子;アラントイン、ジイソプロピルアミンジクロロアセテート、4-アミノメチルシクロヘキサンカルボン酸等の活性成分;セファランチン、トウガラシチンキ、ヒノキチオール、ヨウ化ニンニクエキス、塩酸ピリドキシン、dl-α-トコフェロール、酢酸dl-α-トコフェロール、ニコチン酸、ニコチン酸誘導体、D-パントテニルアルコール、アセチルパントテニルエチルエーテル、ビオチン、アラントイン、イソプロピルメチルフェノール、エストラジオール、エチニルエストラジオール、塩化カルプロニウム、塩化ベンザルコニウム、塩酸ジフェンヒドラミン、タカナール、カンフル、サリチル酸、ノニル酸バニリルアミド、ノナン酸バニリルアミド、ピロクトンオラミン、ペンタデカン酸グリセリル、モノニトログアヤコール、レゾルシン、γ-アミノ酪酸、塩化ベンゼトニウム、塩酸メキシレチン、オーキシン、女性ホルモン、カンタリスチンキ、シクロスポリン、ヒドロコルチゾン、モノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン等も挙げられる。
【実施例0018】
以下、実施例に基づいて本発明について詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0019】
<エラスチン分解阻害試験>
293FreeStyle細胞にpcDNA3.1/Elastin-Flag-6Hisプラスミドをトランスフェクションし、安定発現細胞を獲得した。RIPAでエラスチンを含むライセート(エラスチンタンパク抽出溶液)を回収し、好中球エラスターゼと被験物質を添加し、37℃で2時間インキュベートした。サンプルをSDS電気泳動に供し、Flag抗体を使ったWestern Blottingでエラスチンタンパクを確認。エラスチンの分解及び分解阻害を評価した。その結果を
図2に示す。
ここで、上記エラスチンタンパク抽出溶液に対して、試料1のcontrolは、バッファーのみを加えたもの。試料2は好中球エラスターゼを加えたもの、試料3は好中球エラスターゼとエラスターゼ阻害剤であるsivelestatを加えたもの、試料4は好中球エラスターゼとバリオラル酸を加えたものである。
なお、各試料に用いた濃度は、好中球エラスターゼ90ng/50μL、バリオラル酸1mMである。
図2によれば、好中球エラスターゼ阻害剤を添加しなかった試料2によれば、好中球エラスターゼによりエラスチンタンパクが分解されたことがわかり、試料1、3、4の試料ではエラスチンタンパクが分解されずに残っていることを確認できる。この結果からは、本発明に沿った例である試料4によっても、試料3と同様に、バリオラル酸は好中球エラスターゼ阻害活性を有することを確認できた。
【0020】
<バリオラル酸の好中球エラスターゼ阻害活性の濃度依存性>
好中球エラスターゼはエラスチン特異的基質であるSuc-Ala-Ala-Ala-pNA(Succinyl-L-alanyl-L-alanyl-L-alanine p-nitroanilide) を加水分解してp-ニトロアニリンを生成すると、410nmで検出可能となる。そのため、p-ニトロアニリンの生成量を指標とすることで素材の好中球エラスターゼ活性阻害作用を評価することができる。我々は、この方法をもとに96wellスケールの評価系を構築し、吸光度にて評価した。
[方法]
(1)試薬の入手
Native human Neutrophil Elastase protein [Active] (ab91099)はアブカムより入手した。Suc-Ala-Ala-Ala-pNA(3071-V)はペプチド研究所より入手した。
エラスターゼ阻害剤sivelestat(S7198)はsigmaより入手した。
(2)好中球エラスターゼ阻害試験
96ウェル透明プレート(IWAKI)にバッファー(100mM HEPES pH7.5, 500mM NaCl, 0.05%Tween20)、バリオラル酸(0.0001μM、0.001μM、0.01μM、0.1μM、1μM、10μM、100μM)、好中球エラスターゼ(終濃度100ng/well)をアプライし、37℃で15分インキュベートする。そこにエラスチン特異的基質であるSuc-Ala-Ala-Ala-pNAを終濃度12.5mMで添加し、さらに37℃で60分反応させる。410nmの吸光度を測定し、以下の式により阻害率を算出した。
好中球エラスターゼ阻害率(%)
=1-(被験物質の吸光度/コントロールの吸光度)×100
その結果を
図3に示す。
図3によれば、バリオラル酸の濃度を0.1μMから1μMに高くすると、好中球エラスターゼ阻害率が高くなることを確認できる。そして、バリオラル酸の濃度を10μMから100μMにかけて高くすることにより、好中球エラスターゼ阻害率が80%を超える程度に高くなることがわかる。すなわちバリオラル酸によりエラスチン特異的基質であるSuc-Ala-Ala-Ala-pNAの分解阻害が引き起こされていることを示している。このことはバリオラル酸が好中球エラスターゼの活性を阻害することにより、エラスチンの分解を阻害する可能性を示唆している。したがって、本発明を採用することにより、十分に高い好中球エラスターゼの活性阻害を発揮でき、ひいては、皮膚のシワ及び/又はたるみを予防したり、改善したりすることができる。