(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023169997
(43)【公開日】2023-12-01
(54)【発明の名称】加熱調理器
(51)【国際特許分類】
F24C 7/02 20060101AFI20231124BHJP
【FI】
F24C7/02 521H
F24C7/02 521B
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022081404
(22)【出願日】2022-05-18
(71)【出願人】
【識別番号】399048917
【氏名又は名称】日立グローバルライフソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】森田 賢治
(72)【発明者】
【氏名】吉川 政志
(72)【発明者】
【氏名】菅野 裕希
(72)【発明者】
【氏名】大都 紀之
【テーマコード(参考)】
3L086
【Fターム(参考)】
3L086AA01
3L086BC01
3L086BC06
3L086DA02
3L086DA24
(57)【要約】
【課題】マイクロ波加熱手段を用いる場合において、庫内の視認性を損なうことなく、マイクロ波遮蔽ガラスのアースをとることが可能な加熱調理器を提供する。
【解決手段】被加熱物を収容する加熱室2と、被加熱物をマイクロ波加熱するレンジ加熱手段と、加熱室2に対して開閉可能なドア20Aと、ドア20Aの外周に設けられたチョーク構造部26を有するドアベース21と、を備える。ドア20Aは、加熱室2と対向して配置される庫内側ガラス41および庫外側ガラス42と、庫内側ガラス41と庫外側ガラス42との間に配置される導電性部材43と、を備えたマイクロ波遮蔽ガラス40Aを有する。ドアベース21にはチョーク構造部26が設けられ、チョーク構造部26の内周側には、当該チョーク構造部26とは別のチョーク構造部27が全周に渡って設けられている。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加熱物を収容する加熱室と、
前記被加熱物をマイクロ波加熱する加熱源と、
前記加熱室に対して開閉可能なドアと、
前記ドアの外周に設けられたドアベースと、を備え、
前記ドアは、前記加熱室と対向して配置される透明なガラスと、前記ガラスに積層される導電性部材と、を備えたマイクロ波遮蔽ガラスを有し、
前記ドアベースにはチョーク構造部が設けられ、
前記チョーク構造部の内周側には、当該チョーク構造部とは別のチョーク構造部が全周にわたって設けられていることを特徴とする加熱調理器。
【請求項2】
請求項1に記載の加熱調理器において、
前記マイクロ波遮蔽ガラスは、前記加熱室側に位置する庫内側ガラスと、前記加熱室とは反対側に位置する庫外側ガラスと、によって前記導電性部材を間に挟み、接着して構成され、
前記庫外側ガラスは、前記庫内側ガラスよりも外周が短く形成され、
前記庫内側ガラスの庫外側の面に前記導電性部材が露出し、
前記庫外側ガラスは、前記別のチョーク構造部よりも当該庫外側ガラスの端部が内周側に設けられていることを特徴とする加熱調理器。
【請求項3】
請求項2に記載の加熱調理器において、
前記庫外側ガラスは、前記庫内側ガラスと比べて薄いことを特徴とする加熱調理器。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の加熱調理器において、
前記別のチョーク構造部の一部または全体が前記ドアベースと別部品で構成され、
前記別のチョーク構造部は、前記ドアベースに対して連続的に電気的接続または断続的に電気的接続されていることを特徴とする加熱調理器。
【請求項5】
請求項4に記載の加熱調理器において、
前記断続的に電気的接続される電気的接続部は、溶接、かしめ、またはねじ留めであることを特徴とする加熱調理器。
【請求項6】
請求項4に記載の加熱調理器において、
前記断続的に電気的接続される電気的接続部のピッチは、前記加熱源の発振周波数の(1/4)波長以下であることを特徴とする加熱調理器。
【請求項7】
請求項4に記載の加熱調理器において、
前記別のチョーク構造部の上下側を前記ドアベースと一体とし、
前記別のチョーク構造部の左右側を前記ドアベースと別部品で構成されていることを特徴とする加熱調理器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加熱調理器に関する。
【背景技術】
【0002】
加熱調理器は、加熱室に被調理物を載置して加熱調理するものであり、被加熱物を本体に格納するために、本体筐体の前部に開閉可能なドアを備えている。このドアには、加熱室内の被調理物の状態を確認するのぞき窓が設けられており、のぞき窓は、マイクロ波加熱の際にマイクロ波が本体外に漏洩することを防止するために、複数のパンチング孔が形成された金属板(パンチングメタル)によって構成されている。
【0003】
特許文献1には、内外のドアガラスの間に、透明耐熱性樹脂シートに導電膜を設けて、調理の状況を見ながら調理を進められるようにした構造が記載されている。特許文献2には、パンチングメタルの一部またはすべてを取り除いて透明導電体を用いて庫内の視認性を向上する構造が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008-60015号公報
【特許文献2】特開2005-26092号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の加熱調理器では、導電膜を電気的に接続する具体的な構造について検討されていない。また、特許文献2に記載の加熱調理器では、透明導電体をパンチングメタルに電気的に接続する具体的な構造について検討されていない。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、被加熱物を収容する加熱室と、前記被加熱物をマイクロ波加熱する加熱源と、前記加熱室に対して開閉可能なドアと、前記ドアの外周に設けられたドアベースと、を備え、前記ドアは、前記加熱室と対向して配置される透明なガラスと、前記ガラスに積層される導電性部材と、を備えたマイクロ波遮蔽ガラスを有し、前記ドアベースにはチョーク構造部が設けられ、前記チョーク構造部の内周側には、当該チョーク構造部とは別のチョーク構造部が全周に渡って設けられていることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】第1実施形態の加熱調理器の外観斜視図である。
【
図2】第1実施形態の加熱調理器のドアを開けた状態を示す斜視図である。
【
図3】第1実施形態の加熱調理器の縦断面斜視図である。
【
図5】第1実施形態の加熱調理器のドア内部構造を示す断面斜視図である。
【
図6】第1実施形態の加熱調理器のドア内部のチョーク構造部を備えたドアベース単体を示す斜視図である。
【
図7】第1実施形態の加熱調理器のドア内部構造を示す縦断面図である。
【
図8】第1実施形態の加熱調理器のドア内部構造を示す横断面図である。
【
図9】第2実施形態の加熱調理器のドア内部構造を示す縦断面図である。
【
図10】第2実施形態の加熱調理器のドア内部構造を示す横断面図である。
【
図11】第3実施形態の加熱調理器のドア内部構造を示す縦断面図である。
【
図12】第3実施形態の加熱調理器のドア内部構造を示す横断面図である。
【
図13A】第4実施形態の加熱調理器の他のチョーク構造部の上下側を展開した状態を示す背面図である。
【
図13B】第4実施形態の加熱調理器の他のチョーク構造部の上下側を折り曲げた状態を示す背面図である。
【
図13C】第4実施形態の加熱調理器の他のチョーク構造部の左右側を取り付けた状態を示す背面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明を実施するための形態(以下「実施形態」という)について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。なお、
図1に示す方向を基準として説明する。
【0009】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態の加熱調理器の外観斜視図である。
図1に示すように、加熱調理器1Aは、外周を覆うキャビネット11で覆われる本体10と、本体10の前面に回動可能なドア20Aと、を備えて構成されている。ドア20Aは、ドアベース21(
図3参照)と、ドア枠22と、ハンドル23と、操作パネル24と、外側ドアガラス25と、を備えている。
【0010】
ドア枠22は、ドア20の外周を構成する樹脂成型部品であり、ドア20Aの上下左右の全周を囲むように構成されている。ハンドル23は、ドア20Aを開閉する際の持ち手であり、樹脂成型部品によってドア枠22と一体に形成されている。操作パネル24は、操作部および表示部を備えている。外側ドアガラス25は、透明なガラス板によって構成され、ドア枠22に嵌め込まれている。
【0011】
また、ドア20Aは、被調理物を加熱するときに使用するマイクロ波の漏洩を防止し、ヒータの熱を封じ込め、効率良く加熱することを可能とする。
【0012】
図2は、第1実施形態の加熱調理器のドアを開けた状態を示す斜視図である。
図2に示すように、加熱調理器1Aは、本体10の内側に被加熱物である被調理物(不図示)を収納する加熱室2を備えている。この加熱室2は、底板2a、奥板2b、上板2c、右側板2d、左側板2eを有し、前面に矩形状の開口が形成されている。なお、
図2では、加熱室2の底板2a上にトレーが収納されている状態を示している。
【0013】
ドア20Aの裏側(ドア20Aを閉じたときの本体10側)には、四角枠状の外周面20aが形成されている。この外周面20aと対向する加熱室2の入口周囲には、加熱室前板3が設けられている。この加熱室前板3は、左側と右側において鉛直方向(上下方向)に延びる縦面部3aと、縦面部3aの間における上端および下端から水平方向(左右方向)に延びる横面部3bとを有し、四角枠状に形成されている。縦面部3aおよび横面部3bは、平らな面で形成され、ドア20Aを閉じたときに、ドア20Aの外周面20aと面で接するようになっている。
【0014】
図3は、第1実施形態の加熱調理器の縦断面斜視図である。なお、
図3は、キャビネット11(
図1参照)、底板2aより下側に設けられる部品の図示を一部省略している。
図3に示すように、ドア20Aの外周の内部(ドア枠22の内側)には、マイクロ波の漏洩を防止するためのチョーク構造部26を備えたドアベース21が設けられている。ドアベース21は、ドア20Aの骨格を成すものであり、鉄などの金属製の板材を切削や抜き、曲げ、絞りなどの加工をすることによって構成されている。
【0015】
チョーク構造部26は、ドア20Aの外周全体に渡って形成されている。なお、
図3では、ドア20Aの上部と下部において水平方向に延びるチョーク構造部26の一部が図示され、ドア20Aの左右において上下方向に向けて延びるチョーク構造部の図示を省略している。
【0016】
また、ドア20Aには、チョーク構造部26に追加して、別のチョーク構造部27が設けられている。このチョーク構造部27は、チョーク構造部26と同様に、加熱室2から漏れ出るマイクロ波を減衰させるものであり、ドアベース21と一体に形成されている。また、チョーク構造部27は、ドア20Aの外周に設けられるチョーク構造部26の内側(内周側)に設けられる。換言すると、チョーク構造部27は、外側ドアガラス25とマイクロ波遮蔽ガラス40Aの外周縁部との間に位置している。また、チョーク構造部27は、チョーク構造部26に沿って、周方向全体に渡って形成されている。
【0017】
底板2aの下方には、被調理物をレンジ加熱する際に作動するレンジ加熱手段30が設けられている。このレンジ加熱手段30は、マイクロ波を発生させるマグネトロン、マイクロ波を加熱室2に送る導波管などによって構成されている。なお、本実施形態の加熱調理器1Aは、ヒータ(不図示)によるオーブン加熱手段などを備えていてもよい。また、第1実施形態の加熱調理器1Aは、レンジ加熱手段30のみを備えた単機能タイプに適用してもよく、レンジ加熱手段30やオーブン加熱手段などを備えたオーブンレンジタイプのものに適用してもよい。
【0018】
また、ドア20Aには、外側ドアガラス25より庫内側に、透明なマイクロ波遮蔽ガラス40Aが設けられている。このマイクロ波遮蔽ガラス40Aは、マイクロ波を遮断させて加熱室2の外部にマイクロ波が漏洩するのを防止する機能を有する。つまり、第1実施形態の加熱調理器1Aでは、従来からある庫内の視認性とマイクロ波漏洩防止の両立を図るものとして使用されていたパンチングメタルを搭載しないものである。
【0019】
図4は、
図3のX方向矢視図である。なお、
図4は、ドア20Aが完全に閉じた状態であり、ドア20Aの外周面20aが、加熱室2の前部開口の周囲に設けられた加熱室前板3に面で接して閉じた状態である。
【0020】
図4に示すように、マイクロ波遮蔽ガラス40Aは、加熱室2側に位置する庫内側ガラス41(ガラス)、加熱室2とは反対側(庫外側)に位置する庫外側ガラス42(ガラス)と、庫内側ガラス41と庫外側ガラス42との間に設けられる導電性部材43と、を備えて構成されている。また、庫内側ガラス41と庫外側ガラス42は、可視光線を透過する性質を有し、庫外から加熱室2内の被調理物を視認できるようにしたものである。また、庫内側ガラス41と庫外側ガラス42とは、間に導電性部材43を挟んで、接着剤を介して互いに固定されている。このように、マイクロ波遮蔽ガラス40Aは、庫内側ガラス41と庫外側ガラス42とが接着、固定された複層ガラスである。このように庫内側ガラス41と庫外側ガラス42とが接着固定されていることで、衝撃などで破損したときのガラスの飛散を抑制できる。
【0021】
また、庫内側ガラス41と庫外側ガラス42は、耐熱性および耐衝撃性などに優れたガラス板によって構成されている。また、庫内側ガラス41と庫外側ガラス42は、いずれも同じ形状のものであり、上下左右の4辺が互いに一致するように構成されている。
【0022】
導電性部材43は、金属製の縦糸と金属製の横糸とを格子状に編んだ金属メッシュを適用することができる。また、金属メッシュの開口率は、一般的に使用されているパンチングメタルの開口率(例えば、50%)よりも大きく(例えば、70%又は78%以上)設定されている。これにより、庫外(加熱調理器1Aの外側)から加熱室2内を覗いたときの視認性をパンチングメタル(鉄板に複数の丸孔が形成されたもの)を用いた場合よりも高めることができる。また、導電性部材43は、加熱室2内の視認性を損なわなければ、ITO(Indium Tin Oxide)などの透明な導電体に限定されるものではなく、有色の導電体を適用してもよい。
【0023】
なお、導電性部材43に金属メッシュを採用することは、導電性部材43の一部破損や剥離を検出する点でも好ましい。金属メッシュを採用すると、加熱室2内の視認性を損なわない範囲で、導電性部材43を薄く目視できる状態になる。導電性部材43は、一部が破損や剥離した場合に、それを導通検査では検出することは難しいので、目視での検出が必要になるが、従来技術でも挙げた導電膜のような目視できない透明な部材を採用すると、一部に生じた破損や剥離を検出するのは難しくなる。そのため、この導電性部材43を、加熱室2内の視認性を損なわない範囲で目視できる金属メッシュのような部材とすることが、導電性部材43の一部破損や剥離を検出する点で好ましい。
【0024】
また、導電性部材43としては、金属メッシュに限定されるものではなく、金属を格子状(メッシュ状)に印刷したものであってもよい。例えば、庫内側ガラス41の面上または庫外側ガラス42の面上にペースト状にした導電性部材をスクリーン印刷によって形成することができる。
【0025】
図5は、第1実施形態の加熱調理器のドア内部構造を示す断面斜視図である。
図5に示すように、チョーク構造部26,27は、例えば鉄製の金属板を複数回曲げるとともに周方向に沿って櫛歯状に構成されたものである。なお、
図5では、チョーク構造部26,27がドア20Aの上部の一部しか図示していないが、ドア20Aの上部、下部、左側部および右側部の全周に渡って連続して形成されているものである。ちなみに、ドアベース21の一部は、加熱室前板3に接触する構造であり、ドアベース21と加熱室前板3とが隙間なく接触していればドア20Aの周囲からマイクロ波は漏洩しない。しかし、オーブン加熱などでドアベース21や加熱室前板3が高温に加熱された場合、金属の膨張により表面の平面度が変わることがある。この場合、ドアベース21と加熱室前板3の間にわずかな隙間が生じ、隙間からマイクロ波が漏洩する可能性がある。そこで、ドアベース21の周囲には、前記したチョーク構造部26,27が備えられている。
【0026】
ドアベース21は、チョーク構造部26の前端において下方に延びる板部21aと、この板部21aの下端において後方(加熱室前板3側)に向けて延びる板部21bと、を有している。また、ドアベース21は、板部21bの後端から下方(マイクロ波遮蔽ガラス40Aの上端側)に向けて延びる板部21cと、この板部21cの下端から前方に延びた後に下方に延びるL字状の板部21dと、を有している。板部21cは、ドア閉時に加熱室前板3に接触するようになっている。板部21dは、庫外側ガラス42の外周縁部の庫外側の面と対向する位置に配置される。なお、
図5では、ドアベース21がドア20Aの上部の一部しか図示していないが、チョーク構造部26と同様に、ドア20Aの上部、下部、左側部および右側部の全周に渡って連続して形成されている。
【0027】
チョーク構造部27は、チョーク構造部26と同様に、鉄製の金属板を複数回曲げるとともに周方向に沿って櫛歯状に構成されたものである。また、チョーク構造部27は、ドアベース21の板部21dの下端に連続して形成されている。すなわち、板部21dの下端から前方に延びる板部27aと、この板部27aの前端から鉛直方向下方に延びる板部27bと、この板部27bの下端から後方に延びる板部27cと、この板部27cの後端から鉛直方向上方に板部27bよりも短く延びる板部27dと、を有している。板部27a,27bの部分が左右方向に沿って一つの面によって形成され、板部27c,27dの部分が左右方向に沿って櫛歯状に形成されている。また、板部27dの先端に、さらに曲げ部を設け、板部27a、27b、27c、27dで構成されるチョーク構造部27の内側方向に伸ばす板部を設けてもよい。
【0028】
図6は、第1実施形態の加熱調理器のドア内部のチョーク構造部を備えたドアベース単体を示す斜視図である。なお、
図6は、後側(庫内側)から見た状態を示している。
図6に示すように、チョーク構造部26の内周側には、ドアベース21の板部21cが位置している。この板部21cは、加熱室前板3(
図2参照)に沿って四角枠状の面をなすように形成されている(
図6では一部のみ図示)。さらに、板部21cの内周側には、チョーク構造部27が設けられている(
図6では一部のみ図示)。
【0029】
上側に位置するチョーク構造部27の先端の板部27dは、上下方向上向きに起立するように構成されている。右側に位置するチョーク構造部27の先端の板部27dは、左右方向右側に起立するように構成されている。なお、図示していないが、下側に位置するチョーク構造部27の先端の板部は、上下方向下向きに起立するように構成され、左側に位置するチョーク構造部27の先端の板部は、左右方向左側に起立するように構成されている。
【0030】
図7は、第1実施形態の加熱調理器のドア内部構造を示す縦断面図、
図8は、第1実施形態の加熱調理器のドア内部構造を示す横断面図である。
図7および
図8に示すように、庫内側ガラス41と庫外側ガラス42は、前記したように同じ形状(同じ仕様)のガラスである。また、庫内側ガラス41と庫外側ガラス42との間に設けられる導電性部材43は、庫内側ガラス41と庫外側ガラス42の外周縁部と一致する形状であり、導電性部材43の縁部が庫内側ガラス41および庫外側ガラス42の端部から飛び出さないように構成されている。
【0031】
図7に示すように、庫外側ガラス42の外周縁部42sは、板部21dの後面21d1に対して庫内側(加熱室2側)から押し付けられた状態でドアベース21に固定される。すなわち、シリコーンシール剤50(シール剤)を、庫内側ガラス41および庫外側ガラス42とドアベース21(板部21c,21d)とに跨るように塗布する。なお、シリコーンシール剤50は、耐熱性、接着性などを有するものである。このようにシリコーンシール剤50を用いることで、マイクロ波遮蔽ガラス40Aとドアベース21との隙間からドア20A内に異物が入り込むのを防止できる。
【0032】
なお、図示省略しているが、シリコーンシール剤50は、マイクロ波遮蔽ガラス40Aの上端縁部、下端縁部、左端縁部および右端縁部の全体(全周)に連続的に塗布されている。そして、ドアベース21は、本体10(筐体)を介してアースに接地される。なお、
図8では、シリコーンシール剤50の図示を省略している。なお、マイクロ波遮蔽ガラス40Aに設けられた導電性部材43は、ドアベース21(チョーク構造部26,27)と電気的には接続されていないが、電磁波(マイクロ波)を減衰させる機能は有している。
【0033】
また、シリコーンシール剤50に替えてシリコーンに導電性を付与した導電性のシリコーンシール剤を用いてもよい。これにより、ドアベース21と導電性部材43とを電気的に接続することができる。
【0034】
また、チョーク構造部27の板部27dは、マイクロ波遮蔽ガラス40Aの庫外側ガラス42との間に隙間S1が形成されている。これにより、庫外側ガラス42にチョーク構造部27が接触して、庫外側ガラス42が傷付くのを防止できる。
【0035】
また、チョーク構造部27がマイクロ波遮蔽ガラス40Aの外周部に位置しているので、庫外から加熱室2内を見たときの視認性が損なわれるのを抑制できる。
【0036】
以上説明したように、第1実施形態の加熱調理器1Aは、被加熱物を収容する加熱室2と、被加熱物をマイクロ波加熱するレンジ加熱手段30と、加熱室2に対して開閉可能なドア20Aと、ドア20Aの外周に設けられたドアベース21と、を備える。ドア20Aは、加熱室2と対向して配置される庫内側ガラス41および庫外側ガラス42と、庫内側ガラス41および庫外側ガラス42に積層される導電性部材43と、を備えたマイクロ波遮蔽ガラス40Aを有する。ドアベース21にはチョーク構造部26が設けられ、チョーク構造部26の内周側には、チョーク構造部26とは別のチョーク構造部27が全周に渡って設けられている。これによれば、マイクロ波遮蔽ガラス40Aの導電性部材43がドアベース21と電気的に接続されていなくても、ガラス(庫内側ガラス41および庫外側ガラス42)から漏洩するマイクロ波を抑えることができる。また、チョーク構造部26の内側に当該チョーク構造部26とは別のチョーク構造部27を備えることで、加熱室2からのマイクロ波の漏洩をさらに抑えることができる。
【0037】
(第2実施形態)
図9は、第2実施形態の加熱調理器のドア内部構造を示す縦断面図、
図10は、第2実施形態の加熱調理器のドア内部構造を示す横断面図である。なお、第1実施形態と同様の構成については同一の符号を付して重複した説明を省略する。
図9および
図10に示すように、第2実施形態の加熱調理器1Bは、第1実施形態のマイクロ波遮蔽ガラス40Aに替えてマイクロ波遮蔽ガラス40Bとしたドア20Bを備えている。このマイクロ波遮蔽ガラス40Bは、庫内側ガラス41と、庫外側ガラス44と、導電性部材43と、を備えている。
【0038】
庫外側ガラス44は、庫内側ガラス41よりも外周が短く形成され、庫内側ガラス41よりも一回り外形が小さく形成されている。また、庫外側ガラス44の外周端部44aは、チョーク構造部27よりも内側(内周側)に位置している。また、庫外側ガラス44は、庫内側ガラス41から外周に突出しないように積層され、庫内側ガラス41との間に段差部40aが形成されている。導電性部材43の外周縁部は、庫外側ガラス44の外周縁部より大きく形成されている。これにより、段差部40aには、導電性部材43の外周縁部43uが庫外側を向いて露出している。また、ドアベース21の板部21dは、導電性部材43の外周縁部43uと接触している。
【0039】
導電性部材43の外周縁部43uは、ドアベース21の板部21dの後面に押し付けられた状態で、シリコーンシール剤50を介して固定される。なお、図示省略しているが、外周縁部43uは、庫内側ガラス41の上部、下部、左側部、右側部の4辺に露出して形成され、ドアベース21の全周と接して電気的に接続されている。
【0040】
また、チョーク構造部27の板部27dは、マイクロ波遮蔽ガラス40Bの庫外側ガラス44に積層された導電性部材43との間に隙間S2が形成されている。これにより、導電性部材43にチョーク構造部27が接触して、導電性部材43が傷付くのを防止できる。
【0041】
このように構成された第2実施形態では、マイクロ波遮蔽ガラス40B(電磁波遮蔽ガラス)が、加熱室2側に位置する庫内側ガラス41と、加熱室2とは反対側に位置する庫外側ガラス44と、によって導電性部材43を間に挟み、接着して構成されている。庫外側ガラス44は、庫内側ガラス41よりも外周が短く形成され、庫内側ガラス41の庫外側の面に導電性部材43が露出している。庫外側ガラス44は、チョーク構造部27よりも当該庫外側ガラス44の外周端部44a(端部)が内周側(内側)に設けられている。これによれば、チョーク構造部27と導電性部材43との距離を近づけることができるので、電磁波(マイクロ波)減衰性能を高めることができる。
【0042】
(第3実施形態)
図11は、第3実施形態の加熱調理器のドア内部構造を示す縦断面図、
図12は、第3実施形態の加熱調理器のドア内部構造を示す横断面図である。
図11および
図12に示すように、第3実施形態の加熱調理器1Cは、第1実施形態のマイクロ波遮蔽ガラス40Aに替えてマイクロ波遮蔽ガラス40Cとしたドア20Cを備えている。このマイクロ波遮蔽ガラス40Cは、庫内側ガラス41と、庫外側ガラス45と、導電性部材43と、を備えている。
【0043】
庫外側ガラス45は、庫内側ガラス41よりも厚みが薄く形成されている。また、庫内側ガラス41と庫外側ガラス45は、上下左右の4辺が互いに一致するように構成されている。また、導電性部材43の縁部は、庫内側ガラス41および庫外側ガラス45の端部から飛び出さないように構成されている。
【0044】
図11に示すように、チョーク構造部27の板部27dは、マイクロ波遮蔽ガラス40Aの庫外側ガラス45との間に隙間S3が形成されている。これにより、庫外側ガラス45にチョーク構造部27が接触して、庫外側ガラス45が傷付くのを防止できる。
【0045】
このように構成された第3実施形態では、庫外側ガラス45が庫内側ガラス41よりも薄く形成されているので、庫外側ガラスが庫内側ガラス41と同じ厚みのものに比べて、チョーク構造部27を導電性部材43に近づけることができ、マイクロ波の減衰性能を高めることができる。
【0046】
(第4実施形態)
図13Aは、第4実施形態の加熱調理器の他のチョーク構造部の上下側を展開した状態を示す背面図、
図13Bは、第4実施形態の加熱調理器の他のチョーク構造部の上下側を折り曲げた状態を示す背面図、
図13Cは、第4実施形態の加熱調理器の他のチョーク構造部の左右側を取り付けた状態を示す背面図である。
第4実施形態の加熱調理器は、チョーク構造部27の一部をドアベース21と別部品で構成したものである。チョーク構造部27は、上部に位置して左右方向に延びて配置されるチョーク構造部27Aおよび下部に位置して左右方向に延びて配置されるチョーク構造部27B(
図13C参照)と、左側部に位置して上下方向に延びて配置されるチョーク構造部27Cおよび右側部に位置して上下方向に延びて配置されるチョーク構造部27Dと、を有し、チョーク構造部26の内側において上部、下部、左側部および右側部に沿って全周に渡って形成される。また、
図13Cに示すように、チョーク構造部27A,27Bの左右方向の長さをL1とし、チョーク構造部27C,27Dの上下方向の長さをL2としたときに、L1>L2に設定されている。換言すると、チョーク構造部27C,27Dは、チョーク構造部27A,27Bよりも短く形成されている。
【0047】
図13Aに示すように、上部に位置するチョーク構造部27Aと下部に位置するチョーク構造部27Bは、ドアベース21(チョーク構造部26)と一体に形成されている。なお、一体とは、1枚ものの鉄板を切削や抜き、曲げ、絞りなどの加工をすることによって構成されていることを意味する。
図13Aは、チョーク構造部27A,27Bを折り曲げる前の展開した状態である。また、
図13Aに示す破線a,b,c,dは、折り曲げ線を示し、
図13Bは、チョーク構造部27A,27Bを折り曲げた後の状態を示している。
【0048】
図13Cは、左側部に位置するチョーク構造部27Cおよび右側部に位置するチョーク構造部27Dをドアベース21に取り付けた後の状態を示している。なお、チョーク構造部27C,27Dは、折り曲げた後に、ドアベース21の左側部の板部21dと右側部の板部21dに溶接(スポット溶接)によって接続される。溶接部は、板部21dに沿って等間隔に複数形成されている。このようにしてチョーク構造部27C,27Dは、ドアベース21に対して断続的に電気的接続される。このときの溶接部(電気的接続部)p1と溶接部(電気的接続部)p2とのピッチPは、レンジ加熱手段30の発振周波数の1/4波長以下に設定される。例えば、周波数が2.45GHzの場合、ピッチPは31mm以下に設定される。なお、ピッチPが短くなればなるほど、マイクロ波の遮断性を高めることができる。
【0049】
なお、第4実施形態では、チョーク構造部27C,27Dとドアベース21とを、溶接によって接続する場合を例に挙げて説明したが、溶接に限定されるものではなく、かしめ、またはねじ留めによって接続することもできる。また、かしめ部とかしめ部とのピッチ、ねじ留め部とねじ留め部とのピッチは、溶接の場合と同様に、レンジ加熱手段30の発振周波数の1/4波長以下に設定される。また、チョーク構造部27C,27Dとドアベース21とは、断続的に電機的接続される構成に限定されるものではなく、溶接によって連続的に電気的接続される構成であってもよい。
【0050】
このように構成された第4実施形態では、チョーク構造部27C,27Dがドアベース21と別部品で構成され、チョーク構造部27C,27Dは、ドアベース21に対して断続的に電気的接続されている。これによれば、チョーク構造部26の内側にチョーク構造部(27A~27D)を全周に渡って配置することが可能になる。
【0051】
また、第4実施形態では、断続的に電気的接続される溶接部p1,p2は、溶接である。これによれば、電気的接続部を確実かつ迅速に形成することができる。
【0052】
また、第4実施形態では、断続的に電気的接続される溶接部p1,p2のピッチPは、レンジ加熱手段30(加熱源)の発振周波数の(1/4)波長以下である。これによれば、マイクロ波を確実に遮断することができる。
【0053】
また、第4実施形態では、上下側のチョーク構造部27A,27Bをドアベース21と一体とし、左右側のチョーク構造部27C,27Dをドアベース21と別部品で構成する。これによれば、1辺が短い左右のチョーク構造部27C,27Dを別部品にする方が、電気的接続点の数を減らすことができ、その結果、性能安定性を高くし、かつ、製造コストを安価にできる。
【0054】
なお、本発明は前記した実施形態に限定されるものではなく、種々の変形例が含まれる。例えば、第1実施形態乃至第3実施形態では、庫内側ガラスと庫外側ガラスとを備えた複層ガラスを例に挙げて説明したが、庫内側ガラス41の庫外側の面に導電性部材43を積層した単層ガラスであってもよい。
【0055】
また、第4実施形態では、チョーク構造部27の一部である左右のチョーク構造部27C,27Dをドアベース21と別部品とした場合を例に挙げて説明したが、チョーク構造部27の全部である上下左右のチョーク構造部27A~27Dをドアベース21と別部品として構成してもよい。また、チョーク構造部27の一部である上下のチョーク構造部27A,27Bをドアベース21と別部品として構成してもよい。
【0056】
また、第2実施形態では、導電性部材43と板部21dとを接触させた構成を例に挙げて説明したが、導電性部材43と板部21dとが接触しない構成であってもよい。
【符号の説明】
【0057】
1A,1B,1C 加熱調理器
2 加熱室
3 加熱室前板
20A,20B,20C ドア
21 ドアベース
21a,21b,21c,21d 板部
25 外側ドアガラス
26 チョーク構造部
27 チョーク構造部(別のチョーク構造部)
27A,27B チョーク構造部(ドアベースと一体)
27C,27D チョーク構造部(ドアベースと別部品)
30 レンジ加熱手段(加熱源)
40A,40B,40C マイクロ波遮蔽ガラス
41 庫内側ガラス(ガラス)
42,44,45 庫外側ガラス(ガラス)
43 導電性部材
44a 外周端部(庫外側ガラスの端部)
50 シリコーンシール剤(シール剤)
60 溶接部(電気的接続部)
P ピッチ
S1,S2,S3 隙間