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  • 特開-トルクレンチ 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023169998
(43)【公開日】2023-12-01
(54)【発明の名称】トルクレンチ
(51)【国際特許分類】
   B25B 23/14 20060101AFI20231124BHJP
   B25B 23/142 20060101ALI20231124BHJP
【FI】
B25B23/14 620J
B25B23/14 610B
B25B23/142
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022081408
(22)【出願日】2022-05-18
(71)【出願人】
【識別番号】000151690
【氏名又は名称】株式会社東日製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100087398
【弁理士】
【氏名又は名称】水野 勝文
(74)【代理人】
【識別番号】100128783
【弁理士】
【氏名又は名称】井出 真
(74)【代理人】
【識別番号】100128473
【弁理士】
【氏名又は名称】須澤 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100160886
【弁理士】
【氏名又は名称】久松 洋輔
(72)【発明者】
【氏名】緒方 智博
(72)【発明者】
【氏名】山本 康弘
(72)【発明者】
【氏名】高久 悟次
(72)【発明者】
【氏名】志村 宏一
【テーマコード(参考)】
3C038
【Fターム(参考)】
3C038BC01
3C038CA02
3C038CC08
3C038EA06
(57)【要約】
【課題】検出したトルク値などを表示する表示部を少なくとも含む配置領域を適切に確保しつつ、小トルク帯で使用される小型のトルクレンチを提供する。
【解決手段】本発明のトルクレンチは、係合する締結部材にトルクを付与し、当該トルクをトルク検出部によって検出するトルクレンチ本体部と、トルクレンチ本体部に設けられ、トルク検出部によって検出される検出値を表示する表示部と、を有する。トルクレンチ本体部は、少なくとも表示部が配置される配置領域が、平面状の上面に設けられているとともに、トルクレンチ本体部の後端側の外形側面に、作業者が指で摘まんで操作可能なグリップ部が設けられている。そして、グリップ部の上面が平面状に形成され、配置領域が設けられるトルクレンチ本体部の上面がグリップ部まで延設されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
係合する締結部材にトルクを付与し、当該トルクをトルク検出部によって検出するトルクレンチ本体部と、前記トルクレンチ本体部に設けられ、前記トルク検出部によって検出される検出値を表示する表示部と、を有するトルクレンチであって、
前記トルクレンチ本体部は、
少なくとも前記表示部が配置される配置領域が、平面状の上面に設けられているとともに、前記トルクレンチ本体部の後端側の外形側面に、作業者が指で摘まんで操作可能なグリップ部が設けられており、
前記グリップ部の上面が平面状に形成され、前記配置領域が設けられる前記トルクレンチ本体部の上面が前記グリップ部まで延設されていることを特徴とするトルクレンチ。
【請求項2】
前記グリップ部を構成する前記トルクレンチ本体部の後端側の外形側面は、前記上面に対して略垂直に平面状に形成されていることを特徴とする請求項1に記載のトルクレンチ。
【請求項3】
前記グリップ部の後端から延設され、外部電源に接続される電源ケーブルをさらに備えることを特徴とする請求項1又は2に記載のトルクレンチ。
【請求項4】
前記トルクレンチは、標準締付けトルクが15N・m以下の締結部材を対象に使用されることを特徴とする請求項1に記載のトルクレンチ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、小ねじなどの小トルク帯で使用され、検出したトルク値などを表示する表示部を備えたトルクレンチに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載のトルクレンチは、検出したトルク値を表示する表示部を備えており、作業員は、締結部材を手動で締付ける際に表示部の測定値を確認しながら、適切なトルクで締付け作業を行うことができる。また、特許文献1に記載のトルクレンチは、締付け後の検査作業にも使用することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4512544号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、小ねじなどの小トルク帯(例えば、標準締付けトルクが15N・m以下)ではトルクレンチの有効長(全長)が長い場合、オーバートルクになりやすく、締付け作業や検査作業が難しいという課題がある。
【0005】
一方で、表示部を備えたトルクレンチは、トルク値を検出する検出回路や検出値を表示する表示回路などに電力を供給するためのバッテリを備えている。バッテリは、例えば、グリップ部分を兼ねるように搭載することができるものの、この場合、トルクレンチの有効長が長くなってしまう。そこで、バッテリを搭載せずに、外部電源、例えば、商用電源や外部バッテリから直接電力供給されるように構成すれば、表示部を備えたトルクレンチを小型化することができるが、以下の課題があった。
【0006】
小型化したトルクレンチであっても、安定した締付け操作を実現するためにはグリップ部が必要となるが、トルクレンチの有効長を延ばさずにグリップ部を確保しようとすると、表示部を設けることが可能な領域が小さく(狭く)なってしまう。例えば、特許文献1に記載のように、全周にわたって丸いグリップ部を設けることができる。しかしながら、丸いグリップ部の円弧上の領域に表示部を設けることができないため、表示部を配置可能な領域が狭くなってしまう。
【0007】
本発明の目的は、検出したトルク値などを表示する表示部を少なくとも含む配置領域を適切に確保しつつ、小トルク帯で使用される小型のトルクレンチを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のトルクレンチは、係合する締結部材にトルクを付与し、当該トルクをトルク検出部によって検出するトルクレンチ本体部と、トルクレンチ本体部に設けられ、トルク検出部によって検出される検出値を表示する表示部と、を有する。
【0009】
トルクレンチ本体部は、少なくとも表示部が配置される配置領域が、平面状の上面に設けられているとともに、トルクレンチ本体部の後端側の外形側面に、作業者が指で摘まんで操作可能なグリップ部が設けられている。ここで、グリップ部の上面が平面状に形成され、配置領域が設けられるトルクレンチ本体部の上面がグリップ部まで延設されるように構成されている。
【0010】
また、上記グリップ部を構成するトルクレンチ本体部の後端側の外形側面は、上面に対して略垂直に平面状に形成することができる。
【0011】
また、上記グリップ部の後端から延設され、外部電源に接続される電源ケーブルをさらに備えるように構成することができる。
【0012】
また、本トルクレンチは、標準締付けトルクが15N・m以下の締結部材を対象に使用されるトルクレンチとすることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、検出したトルク値などを表示する表示部を少なくとも含む配置領域を適切に確保しつつ、小トルク帯で使用される小型のトルクレンチを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】第1実施形態であるトルクレンチの外観上面図である。
図2】第1実施形態であるトルクレンチの使用状態説明図である。
図3図1におけるA-A断面図である。
図4】第1実施形態であるトルクレンチの回路等の構成ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、実施形態につき、図面を参照して説明する。
【0016】
(第1実施形態)
図1から図4は、第1実施形態を示す図である。図1は、本実施形態のトルクレンチ1の外観上面図である。
【0017】
なお、本実施形態のトルクレンチ1は、検出したトルク値を表示する表示部10を備えており、作業員が、ねじやボルト等の締結部材を手動で締付ける際に表示部10に表示されるトルク測定値を確認しながら、適切なトルクで締付け作業を行う工具である。また、締付け後の締結部材に対し、当該締結部材が実際に締付けられているトルク値を測定する検査用の工具としても使用することができる。
【0018】
本実施形態のトルクレンチ1は、小トルク帯で使用されるトルクレンチである。小トルク帯とは、標準締付けトルクの上限が15N・m以下の範囲であり、トルクレンチ1は、小ねじなどの小容量のトルク(荷重)で締結する締結部材に使用される。好ましくは、標準締付けトルクが10N・m以下の範囲の締結部材に対して使用され、さらに好ましくは、標準締付けトルクが2N・m以下の範囲の締結部材に対して使用される。
【0019】
なお、本実施形態のトルクレンチ1が使用される小トルク帯の範囲は、下限を設けた範囲とすることもできる。本実施形態のトルクレンチ1は、0.1N・m~15N・mの範囲の締結部材に対して使用され、好ましくは0.1N・m~10N・mの範囲の締結部材に対して使用される。さらに好ましくは、0.3N・m~2N・mの範囲の締結部材に対して使用される。また、標準締付けトルクが小さい小ねじを、小トルク帯として定義することもできる。例えば、標準締付けトルクが2N・m以下のねじの呼び径M1~M4のねじ、標準締付けトルクが10N・m以下のねじの呼び径M1~M7のねじ、標準締付けトルクが15N・m以下のねじの呼び径M1~M8のねじを小トルク帯と定義し、これらのねじを対象に締付け作業を行うトルクレンチとして使用される。
【0020】
そして、上述のように、小トルク帯で使用されるトルクレンチ1は、オーバートルクを抑制するため、トルクレンチ1の有効長Lが短くなっており、小型化されている。
【0021】
図1に示すように、トルクレンチ本体部2は、剛性を有するパイプ部材から形成されたレバー3の前部に、締結部材に係合する係合部であるソケット等が装着されるヘッド4が交換可能に取り付けられる。レバー3とは反対側のトルクレンチ本体部2の後端部に、グリップ部5が設けられている。
【0022】
グリップ部5は、トルクレンチ本体部2の後端側の外形がグリップ領域として形成され、所定の幅を有している。グリップ部5は、上面視で後端に向かって細くなっており、有効長Lの起点である力の作用点に相当する箇所が凹んでいる。
【0023】
図2は、本実施形態のトルクレンチ1の使用状態を説明するための図である。図2の例において、二点鎖線で描画された楕円形は、作業員の指を模している。作業員は、人差し指と親指、または人差し指及び中指と親指で、グリップ部5におけるトルクレンチ1の両側面2b,2cを摘まみ、例えば、時計回り方向に回動させることで、締結部材の締付け作業を行うことができる。図2に示すように、グリップ部5は、トルクレンチ本体部2の長手方向に、少なくとも2本の指が並ぶことが可能な幅を有するように構成することができる。
【0024】
トルクレンチ本体部2の上面2aは、平面状に形成されており、上面2aに少なくとも表示部10を含む配置領域Sが設けられている。配置領域Sは、トルクレンチ本体部2の長手方向に延び、グリップ部5が設けられるグリップ領域に入り込んでいる。
【0025】
つまり、図1に示すように、グリップ部5は、平面状の上面2aが含まれる領域におけるトルクレンチ本体部2の後端側の外形側面2b、2cを指で摘まんで操作するように構成されている。このため、配置領域Sが設けられる領域に、グリップ部5を設けることができる。言い換えれば、グリップ部5を円柱状に形成せずに、グリップ部5の上面を平面に形成し、トルクレンチ本体部2の上面2aがグリップ部5まで延設された状態になるように構成している。このため、上面2aに設けられる配置領域Sが、グリップ部5が形成されるグリップ領域内まで延設できるようになり、トルクレンチ本体部2とは別にグリップ部5を搭載する必要がなく、トルクレンチ1の有効長Lを短くすることができる。
【0026】
また、図3に示すように、グリップ部5が設けられるグリップ領域の側面2b、2cは、上面2aに対して略垂直(厚さ方向)に平面形状に形成されている。側面2b、2cが幅方向に膨らんでいないため、当該側面2b、2cを指で摘まんだとき、グリップ部5を安定して挟み込むことができるとともに、トルクレンチ1を回動動作も安定して行うことができる。
【0027】
つまり、本実施形態のトルクレンチ1は、従来のような円筒状のグリップを握り締めるように把持するのではなく、グリップ部5を指で摘まんで操作する。このため、側面2b,2cが幅方向に膨らんでいると、湾曲している側面2b,2cに対して指が滑ってズレたりし、安定性に欠け、しっかりと指で摘まむことができない場合がある。そこで、本実施形態では、側面2b,2cをフラットに形成し、当接する指がフラットな側面2b,2cで安定して位置できるようにしている。
【0028】
また、本実施形態のトルクレンチ1は、バッテリが搭載されておらず、電源ケーブルKが設けられている、電源ケーブルKは、グリップ部5の後端から延設されており、外部電源に接続される。
【0029】
図4は、本実施形態のトルクレンチ1に搭載される回路等の構成ブロック図である。
【0030】
本実施形態のトルクレンチ1は、レバー3の内部にはストレインゲージ部101が配置され、このストレインゲージ部101に対してレバー3の内部に装入しているヘッド4の後端部からの圧力が作用してトルク検出のための信号が出力され、この信号が制御装置108に入力される。
【0031】
制御装置108をトルクレンチ本体部2に備えたトルクレンチ1は、ソケット4を締結部材に係合した状態で作業者がグリップ部材5を指で摘まんで、時計回り方向に回動することにより、締結部材が締付けられ、そのときのトルク値が表示部10に表示される。
【0032】
表示部10は、LCDなどのディスプレイ部であり、表示部10が設けられる配置領域Sには、電源スイッチ、カウンタ送りキー、カウンタ戻しキー、モードキー、クリアキー、メモリキーなどの各種キー操作部11も配置することができる。
【0033】
トルクレンチ本体部2の内部には、図4に示すように、上述したストレインゲージ部101に対して電圧を印加するための印加電圧部102、ストレインゲージ部101からのアナログデータである検出信号を増幅するアナログ増幅部103、アナログ増幅部103で増幅した検出信号を処理する信号処理部104、信号処理部104で処理された検出信号をデジタル変換するA/D変換器105、外部電源から供給される電力の電圧を各回路に分配する電源回路部106、及び印加電圧部102に対して省電力化のために印加電圧を制御する印加電圧制御部107が設けられている。
【0034】
電源回路部106は、電源ケーブルKが接続され、電源ケーブルKを介して外部電源に接続される。外部電源は、商用電源、バッテリ(持ち運び可能なバッテリを含む)であり、電源ケーブルKの接続端子は、コンセントプラグやUSB端子など、外部電源の接続形式に合わせた態様を採用することができる。
【0035】
なお、電源ケーブルKは、データ通信及び給電可能なUSBケーブルを適用してもよい。この場合の外部電源は、USB端子の接続先(データ通信先)の機器やコンピュータ装置となる。
【0036】
また、制御装置(CPU部)108は、全体の制御を司り、A/D変換器105からの検出信号が演算部109に入力されて各種の演算が実行される。そして、演算結果などがメモリ110に記憶される。
【0037】
また、制御装置108は、表示制御部111を含み、表示部10の表示を制御する。制御装置108には、電源スイッチのからのスイッチ信号、カウンタ送りキー、カウンタ戻しキー、モードキー、クリアキーなどのキー操作により出力される信号が操作部11から入力され、これらのキー操作に応じた処理が実行され、処理結果を表示部10に表示する。
【0038】
なお、本実施形態の制御装置108は、例えば、外部とのデータ送受信を行うための通信機能を備えたり、LEDランプ等の照明装置の点灯制御、所定の音を出力する音発生装置による音出力制御を行ったりすることができる。
【0039】
このように本実施形態のトルクレンチ1は、トルクレンチ本体部2において、少なくとも表示部10が配置される配置領域Sが、平面状の上面2aに設けられているとともに、トルクレンチ本体部2の後端側の外形側面2b,2cに、作業者が指で摘まんで操作可能なグリップ部5が設けられている。そして、グリップ部5の上面が平面状に形成され、配置領域Sが設けられるトルクレンチ本体部2の上面2aが、グリップ部5が設けられるグリップ領域内部まで延設されている。
【0040】
このため、トルクレンチ1の有効長Lを短くして小型化しても、検出したトルク値などを表示する表示部10の配置領域Sを適切に確保しつつ、小ねじなどの小トルク帯で使用される小型のトルクレンチを提供することができる。
【符号の説明】
【0041】
1 トルクレンチ
2 トルクレンチ本体部
2a 上面
2b,2c 側面
3 レバー
4 ヘッド
5 グリップ部
10 表示部
11 操作部
K 電源ケーブル
L 有効長
S 配置領域
101 ストレインゲージ部
102 印加電圧部
103 アナログ増幅部
104 信号処理部
105 A/D変換器
106 電源回路部
107 印加電圧制御部
108 制御装置
109 演算部
110 メモリ
111 表示制御部
図1
図2
図3
図4