(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023000170
(43)【公開日】2023-01-04
(54)【発明の名称】結像光学系
(51)【国際特許分類】
G02B 13/02 20060101AFI20221222BHJP
G03B 5/00 20210101ALI20221222BHJP
【FI】
G02B13/02
G03B5/00 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021100831
(22)【出願日】2021-06-17
(71)【出願人】
【識別番号】000131326
【氏名又は名称】株式会社シグマ
(72)【発明者】
【氏名】朝倉 健
【テーマコード(参考)】
2H087
2K005
【Fターム(参考)】
2H087KA01
2H087LA02
2H087MA07
2H087NA07
2H087PA12
2H087PA16
2H087PB16
2H087QA02
2H087QA07
2H087QA12
2H087QA21
2H087QA26
2H087QA34
2H087QA42
2H087QA45
2H087RA32
2H087RA44
2K005CA23
(57)【要約】
【課題】結像光学系自身が小型軽量であり且つ小型軽量なフォーカシングユニットを有することで小型軽量な望遠レンズに適した結像光学系を提供する。
【解決手段】複数のレンズからなり、物体側から像側に向かって順に全体として正のパワーを有する第1群と、全体として負のパワーを有してフォーカシング時に光軸上を移動する第2群と、全体として負のパワーを有する第3群とからなり、第3群は物体側から像側に向かって順に、全体として負のパワーを有する像ブレ補正ユニットとリアユニットとからなり、第1群とリアユニットは像面に対し常時固定されていることを特徴とする結像光学系。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のレンズからなり、
物体側から像側に向かって順に、全体として正のパワーを有する第1群と、全体として負のパワーを有してフォーカシング時に光軸上を移動する第2群と、全体として負のパワーを有する第3群とからなり、
前記第3群は物体側から像側に向かって順に、全体として負のパワーを有する像ブレ補正ユニットとリアユニットとからなり、
前記第1群と前記リアユニットは像面に対し常時固定されていることを特徴とする結像光学系。
【請求項2】
前記リアユニットは全体として正のパワーを有し、
以下の条件式を満足することを特徴とする請求項1に記載の結像光学系。
(1) -15.0<Φ_OS/Φ<-5.0
但し、
Φ_OSは像ブレ補正ユニットのパワー、
Φは結像光学系の無限遠合焦時のパワーである。
【請求項3】
以下の条件式を満足することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の結像光学系。
(2) 0.40<LT/f<0.60
但し、
LTは無限遠合焦時の結像光学系の最も物体側の面から像面までの光軸上の距離、
fは無限遠合焦時の結像光学系の焦点距離である。
【請求項4】
前記第2群は少なくとも1枚の正レンズと少なくとも1枚の負レンズとを有することを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の結像光学系。
【請求項5】
前記像振れ補正ユニットは少なくとも1枚の正レンズと少なくとも1枚の負レンズを有することを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の結像光学系。
【請求項6】
前記第2群と前記第3群の間に開口絞りを有することを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の結像光学系。
【請求項7】
以下の条件式を満足することを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれかに記載の結像光学系。
(3) -5.0<Φ_G2/Φ<-1.0
但し、Φ_G2は第2群のパワーである。
【請求項8】
以下の条件式を満足することを特徴とする請求項1乃至請求項7のいずれかに記載の結像光学系。
(4) -5.0<Φ_G3/Φ<-1.0
但し、Φ_G3は第3群のパワーである。
【請求項9】
以下の条件式を満足することを特徴とする請求項1乃至請求項8のいずれかに記載の結像光学系。
(5) |f/R_G1last|<6.0
但し、R_G1lastは第1群の最像側面の曲率半径である。
【請求項10】
回折光学素子を有さないことを特徴とする請求項1乃至請求項9のいずれかに記載の結像光学系。
【請求項11】
前記複数のレンズのパワーを持つ面はすべて球面からなることを特徴とする請求項1乃至請求項10のいずれかに記載の結像光学系。
【請求項12】
前記複数のレンズが光軸上に成す空気間隔のうち最大の空気間隔は前記第1群を構成するレンズ同士の間に位置し、
以下の条件式を満足することを特徴とする請求項1乃至請求項11のいずれかに記載の結像光学系。
(6) -15.0<Φ_rear/Φ<-5.0
但し、
Φ_rearは最大の空気間隔の像側に隣接するレンズから複数のレンズのうち最も像側に配置されたレンズまでが成す部分系の無限遠合焦時のパワーである。
【請求項13】
前記複数のレンズが光軸上に成す空気間隔のうち最大の空気間隔は前記第1群を構成するレンズ同士の間に位置し、
前記最大の空気間隔よりも物体側に配置されたすべてのレンズと空気との界面は有効光線径内に於いて物体側に凸面を向けていることを特徴とする請求項1乃至請求項12のいずれかに記載の結像光学系。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はスチルカメラ、ビデオカメラなどに用いられる撮影レンズに好適な結像光学系に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から長焦点距離の撮影レンズ(以下望遠レンズ)に好適な結像光学系として、物体側から像側に向かって順に正のパワーのレンズ群、負のパワーのレンズ群を配置したテレフォトタイプの結像光学系が知られている。テレフォトタイプのパワー配置を採用することで長く重くなりがちな望遠レンズの光学全長を短くすることが可能になる。
【0003】
また望遠レンズはスポーツや動物などの撮影で使用されることが多く、高速なオートフォーカスが求められている。望遠レンズは結像光学系全体を移動させてフォーカシングする全体繰り出し方式を採用するとフォーカシング時に移動するレンズの重量が大きくなり高速なオートフォーカスを実現することが難しいためインナーフォーカス方式を採用することが多い。
【0004】
さらに近年、動画撮影で望遠レンズが使用される場合が増えてきた。動画撮影で使用される場合、オートフォーカスはコントラスト検出方式を用いられることが多い。コントラスト検出方式ではコントラストを検出するためにフォーカシングユニットにウォブリングという動作をさせることが一般的であるため従来よりも軽量なフォーカシングユニットを搭載した望遠レンズが望まれている。
【0005】
加えて近年、小型に設計されたミラーレスカメラの普及に伴い望遠レンズにおいても小型軽量が求められている。望遠レンズを小型軽量化する場合その結像光学系を小型化することに加え可動部を小型軽量化することが重要となる。アクチュエーターの大きさや配置は可動部の大きさや重量に左右されるからである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載の結像光学系はインナーフォーカスを採用しながら高性能を実現しているもののフォーカシングユニットの小型軽量化が不十分である。また焦点距離に対する光学全長が十分に小さいとは言えない。
【0008】
本発明はこのような状況に鑑みてなされたものであり、結像光学系自身が小型軽量であり且つ小型軽量なフォーカシングユニットを有することで小型軽量な望遠レンズに適した結像光学系を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明を実施の結像光学系は、複数のレンズからなり、物体側から像側に向かって順に全体として正のパワーを有する第1群と、全体として負のパワーを有してフォーカシング時に光軸上を移動する第2群と、全体として負のパワーを有する第3群とからなり、第3群は物体側から像側に向かって順に、全体として負のパワーを有する像ブレ補正ユニットとリアユニットとからなり、第1群とリアユニットは像面に対し常時固定されていることを特徴とする。
【0010】
また、本発明を実施の結像光学系は、好ましくは、リアユニットは全体として正のパワーを有し、以下の条件式を満足することを特徴とする。
(1) -15.0<Φ_OS/Φ<-5.0
但し、
Φ_OSは像ブレ補正ユニットのパワー、
Φは結像光学系の無限遠合焦時のパワーである。
【0011】
また、本発明を実施の結像光学系は、好ましくは、以下の条件式を満足することを特徴とする。
(2) 0.40<LT/f<0.60
但し、
LTは無限遠合焦時の結像光学系の最も物体側の面から像面までの光軸上の距離、
fは無限遠合焦時の結像光学系の焦点距離である。
【0012】
また、本発明を実施の結像光学系は、好ましくは、第2群は少なくとも1枚の正レンズと少なくとも1枚の負レンズとを有することを特徴とする。
【0013】
また、本発明を実施の結像光学系は、好ましくは、像振れ補正ユニットは少なくとも1枚の正レンズと少なくとも1枚の負レンズを有することを特徴とする。
【0014】
また、本発明を実施の結像光学系は、好ましくは、第2群と第3群の間に開口絞りを有することを特徴とする。
【0015】
また、本発明を実施の結像光学系は、好ましくは、以下の条件式を満足することを特徴とする。
(3) -5.0<Φ_G2/Φ<-1.0
但し、Φ_G2は第2群のパワーである。
【0016】
また、本発明を実施の結像光学系は、好ましくは、以下の条件式を満足することを特徴とする。
(4) -5.0<Φ_G3/Φ<-1.0
但し、Φ_G3は第3群のパワーである。
【0017】
また、本発明を実施の結像光学系は、好ましくは、以下の条件式を満足することを特徴とする。
(5) |f/R_G1last|<6.0
但し、R_G1lastは第1群の最像側面の曲率半径である。
【0018】
また、本発明を実施の結像光学系は、好ましくは、回折光学素子を有さないことを特徴とする。
【0019】
また、本発明を実施の結像光学系は、好ましくは、複数のレンズのパワーを持つ面はすべて球面からなることを特徴とする。
【0020】
また、本発明を実施の結像光学系は、好ましくは、複数のレンズが光軸上に成す空気間隔のうち最大の空気間隔は第1群を構成するレンズ同士の間に位置し、以下の条件式を満足することを特徴とする。
(6) -15.0<Φ_rear/Φ<-5.0
但し、
Φ_rearは最大の空気間隔の像側に隣接するレンズから複数のレンズのうち最も像側に配置されたレンズまでが成す部分系の無限遠合焦時のパワーである。
【0021】
また、本発明を実施の結像光学系は、好ましくは、複数のレンズが光軸上に成す空気間隔のうち最大の空気間隔は第1群を構成するレンズ同士の間に位置し、最大の空気間隔よりも物体側に配置されたすべてのレンズと空気との界面は有効光線径内に於いて物体側に凸面を向けていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
本発明を実施の結像光学系によれば、結像光学系自身が小型軽量であり且つ小型軽量なフォーカシングユニットを有することで小型軽量な望遠レンズに適した結像光学系を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明の実施例1の無限遠におけるレンズ構成図である。
【
図2】本発明の実施例1の無限遠における縦収差図である。
【
図3】本発明の実施例1の撮影距離3.2mにおける縦収差図である。
【
図4】本発明の実施例1の無限遠における横収差図である。
【
図5】本発明の実施例1の撮影距離3.2mにおける横収差図である。
【
図6】本発明の実施例1の無限遠における0.2°防振時の横収差図である。
【
図7】本発明の実施例2の無限遠におけるレンズ構成図である。
【
図8】本発明の実施例2の無限遠における縦収差図である。
【
図9】本発明の実施例2の撮影距離3.2mにおける縦収差図である。
【
図10】本発明の実施例2の無限遠における横収差図である。
【
図11】本発明の実施例2の撮影距離3.2mにおける横収差図である。
【
図12】本発明の実施例2の無限遠における0.2°防振時の横収差図である。
【
図13】本発明の実施例3の無限遠におけるレンズ構成図である。
【
図14】本発明の実施例3の無限遠における縦収差図である。
【
図15】本発明の実施例3の撮影距離3.3mにおける縦収差図である。
【
図16】本発明の実施例3の無限遠における横収差図である。
【
図17】本発明の実施例3の撮影距離3.3mにおける横収差図である。
【
図18】本発明の実施例3の無限遠における0.2°防振時の横収差図である。
【
図19】本発明の実施例4の無限遠におけるレンズ構成図である。
【
図20】本発明の実施例4の無限遠における縦収差図である。
【
図21】本発明の実施例4の撮影距離3.1mにおける縦収差図である。
【
図22】本発明の実施例4の無限遠における横収差図である。
【
図23】本発明の実施例4の撮影距離3.1mにおける横収差図である。
【
図24】本発明の実施例4の無限遠における0.2°防振時の横収差図である。
【
図25】本発明の実施例5の無限遠におけるレンズ構成図である。
【
図26】本発明の実施例5の無限遠における縦収差図である。
【
図27】本発明の実施例5の撮影距離4.6mにおける縦収差図である。
【
図28】本発明の実施例5の無限遠における横収差図である。
【
図29】本発明の実施例5の撮影距離4.6mにおける横収差図である。
【
図30】本発明の実施例5の無限遠における0.2°防振時の横収差図である。
【
図31】本発明の実施例6の無限遠におけるレンズ構成図である。
【
図32】本発明の実施例6の無限遠における縦収差図である。
【
図33】本発明の実施例6の撮影距離2.6mにおける縦収差図である。
【
図34】本発明の実施例6の無限遠における横収差図である。
【
図35】本発明の実施例6の撮影距離2.6mにおける横収差図である。
【
図36】本発明の実施例6の無限遠における0.2°防振時の横収差図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の結像光学系について説明する。本発明の結像光学系は
図1、
図7、
図13、
図19、
図25、
図31に示すレンズ構成図から分かるように、物体側から像側に向かって順に全体として正のパワーを有する第1群と全体として負のパワーを有してフォーカシング時に光軸上を移動する第2群と全体として負のパワーを有する第3群とからなり、第3群は物体側から像側に向かって順に、全体として負のパワーを有する像ブレ補正ユニットとリアユニットとからなり、像ブレ補正ユニットは結像光学系のブレによる像のブレを軽減するように光軸と垂直な方向に移動し、第1群とリアユニットは像面に対し常時固定されていることを特徴としている。
【0025】
このような群の構成とすることで全体として正のパワーを有する第1群による光束の収斂効果によりフォーカシングユニットである第2群と像ブレ補正ユニットを含む第3群を小径化することができる。可動部であるフォーカシングユニットと像ブレ補正ユニットを小径化することにより軽量化も容易になるためそれぞれのアクチュエーターも小型軽量化可能である。第2群、第3群を小径化しつつアクチュエーターも小型軽量化できるため望遠レンズとして小型軽量にすることが可能となる。
【0026】
また物体側に正パワーを有する第1群、像側に負パワーを有する第2群及び第3群を配置することでテレフォトタイプのパワー配置を構成することができ、結像光学系の全長短縮効果がある。結像光学系の最も物体側に配置された第1群と最も像側に配置されたリアユニットが像面に対し常時固定であることで望遠レンズに防塵防滴機構を付与しやすい。また使用者が交換レンズをカメラに着脱する際に結像光学系の最も像側に配置されたレンズに触れてしまうことが考えられる。可動部である像ブレ補正ユニットに触れた際に駆動パーツを破壊してしまう可能性があるため結像光学系の最像側には像面に対し常時固定のユニットが配置されることが望ましい。
【0027】
さらに本発明の結像光学系は、リアユニットは全体として正のパワーを有し、以下の条件式を満足することを特徴とする。
(1) -15.0<Φ_OS/Φ<-5.0
但し、
Φ_OSは像ブレ補正ユニットのパワー、
Φは結像光学系の無限遠合焦時のパワーである。
【0028】
正パワーのリアユニット配置することで第3群の負のパワーを維持したまま像ブレ補正ユニットの負パワーを大きくすることができ、像ブレ補正ユニットの移動量に対する像ブレ補正の量(以下、防振係数)を大きくすることを可能にしている。防振係数を大きくすると像ブレ補正ユニットの移動量を小さくすることができるのでアクチュエーターのサイズを小さくすることが可能になり望遠レンズの小型軽量化に有利になる。
【0029】
条件式(1)は像ブレ補正ユニットのパワーと結像光学系のパワーの比を規定している。
【0030】
条件式(1)の上限値を超えて像ブレ補正ユニットのパワーが小さくなると防振係数が小さくなるため像ブレ補正ユニットの駆動量を大きく取る必要が生じてしまいアクチュエーター、ひいては望遠レンズを小型化することが困難になる。条件式(1)の下限値を超えて像ブレ補正ユニットのパワーが大きくなると防振係数は稼げるものの像ブレ補正ユニットにおいて発生する収差が大きくなり、光軸と垂直な方向に駆動した際のコマ収差や非点収差の変動が大きくなるため像ブレ補正時に良好な性能を得ることが困難になる。
【0031】
条件式(1)の上限値を-8.0に限定することで前述の効果をより確実なものとすることができ好ましい。条件式(1)の下限値を-12.0に限定することで前述の効果をより確実なものとすることができ好ましい。
【0032】
さらに本発明の結像光学系は、以下の条件式を満足することを特徴とする。
(2) 0.40<LT/f<0.60
但し、LTは無限遠合焦時の結像光学系の最も物体側の面から像面までの光軸上の距離、
fは無限遠合焦時の結像光学系の焦点距離である。
【0033】
条件式(2)は結像光学系の無限遠合焦時の光学全長と焦点距離の比を規定している。
【0034】
条件式(2)の上限を超えて光学全長が長くなりすぎると望遠レンズとして小型軽量化することが困難となる。条件式(2)の下限を超えて光学全長が短くなりすぎるとフォーカシングユニットの移動量を大きく取ることができず実用的な最短撮影距離を達成しようとするとフォーカシングユニットの倍率を大きくしなければならないためフォーカシングユニットで発生する収差が大きくなり広い撮影距離範囲で良好な性能を得ることが困難となる。
【0035】
条件式(2)の上限値を0.59に限定することで前述の効果をより確実なものとすることができ好ましい。条件式(2)の下限値を0.45に限定することで前述の効果をより確実なものとすることができ好ましい。
【0036】
さらに本発明の結像光学系は、第2群は少なくとも1枚の正レンズと少なくとも1枚の負レンズを有することを特徴とする。
【0037】
フォーカシングユニットである第2群が少なくとも1枚の正レンズと少なくとも1枚の負レンズを有することでフォーカシングユニット単体での軸上色収差補正が可能となり、広い撮影距離範囲で良好な性能を得ることが可能となる。
【0038】
さらに本発明の結像光学系は、像ブレ補正ユニットは少なくとも1枚の正レンズと少なくとも1枚の負レンズを有することを特徴とする。
【0039】
像ブレ補正ユニットは少なくとも1枚の正レンズと負レンズを有することで像振れ補正ユニット内での色収差の補正が可能となり像ブレ補正時に良好な性能を得ることができる。
【0040】
さらに本発明の結像光学系は、第2群と第3群の間に開口絞りを有することを特徴とする。
【0041】
開口絞りを第2群と第3群の間に配置することで周辺画角の光束が低い位置に可動群である第2群と像ブレ補正ユニットを配置することでき可動群を小径化することが可能となる。これにより高速なフォーカシングが可能になり、さらにはフォーカシングユニットと像ブレ補正ユニットのアクチュエーターを小さくすることができるため望遠レンズとして小型軽量化することが可能となる。
【0042】
さらに本発明の結像光学系は、以下の条件式を満足することを特徴とする。
(3) -5.0<Φ_G2/Φ<-1.0
但し、Φ_G2は第2群のパワーである。
【0043】
条件式(3)は第2群と結像光学系のパワーの比について好ましい範囲を規定している。
【0044】
条件式(3)の上限値を超えて第2群の負のパワーが小さくなると合焦時の第2群の移動量が大きくなり結像光学系の小型化が困難になる。条件式(3)の下限値を超えて第2群の負のパワーが大きくなるとフォーカシングユニットである第2群で収差、特に非点収差が発生しやすくなるため広い撮影距離範囲において良好な性能を得ることが困難になる。
【0045】
条件式(3)の上限値を-3.0に限定することで前述の効果をより確実なものとすることができ好ましい。条件式(3)の下限値を-4.6に限定することで前述の効果をより確実なものとすることができ好ましい。
【0046】
さらに本発明の結像光学系は以下の条件式を満足することを特徴とする。
(4) -5.0<Φ_G3/Φ<-1.0
但し、Φ_G3は第3群のパワーである。
【0047】
条件式(4)は第3群と全系のパワーの比を規定している。
【0048】
条件式(4)の上限値を超えて第3群の負のパワーが小さくなると全系の焦点距離を維持したままテレフォトタイプのパワー配置を維持するために第2群の負のパワーを大きくする必要がある。フォーカシングユニットである第2群の負のパワーが大きくなりすぎるとフォーカシング時の非点の変動が大きくなり広い撮影距離範囲で良好な性能を得ることが困難となる。条件式(4)の下限値を超えて第3群の負のパワーが大きくなると十分なバックフォーカスを確保することが困難になる。バックフォーカスが小さくなると周辺画角の光束が第3群を通過する際に光軸から高い位置を通るようになるため非点収差の発生を抑えることが困難になる。
【0049】
条件式(4)の上限値を-1.3に限定することで前述の効果をより確実なものとすることができ好ましい。条件式(4)の下限値を-4.0に限定することで前述の効果をより確実なものとすることができ好ましい。
【0050】
さらに本発明の結像光学系は以下の条件式を満足することを特徴とする
(5) |f/R_G1last|<6.0
但し、R_G1lastは第1群の最像側面の曲率半径である。
【0051】
条件式(5)は無限遠合焦時の全系の焦点距離と第1群の最像側面の曲率半径の比を規定している。
【0052】
条件式(5)の上限値を超えて第1群の最像側面の曲率が強くなると当該面で発生するコマ収差や非点収差が大きくなってしまうため良好な結像性能を得ることが困難となる。
【0053】
条件式(5)の上限値を5.0に限定することで前述の効果をより確実なものとすることができ好ましい。
【0054】
さらに本発明の結像光学系は回折光学素子を使用しないことを特徴とする。回折光学素子は回折面に色収差補正効果や非球面効果を有することが可能であるが、その形状に起因する不要な回折光や画角外の光線によるフレアが発生してしまう。本発明の結像光学系は回折光学素子を使用していないため回折光学素子を使用している場合と比較するとフレアやゴーストの発生を抑え易い。
【0055】
さらに本発明の結像光学系はパワーを持つ面はすべて球面からなることを特徴とする。球面レンズは加工の際に球心を回転中心とする回転が発生しても等価に加工できることから球面でないレンズと比較して作成が容易である。望遠レンズの結像光学系を構成するレンズは大口径になりやすいため安価な加工コストで加工精度の良いレンズを得ることができることは望ましい。
【0056】
さらに本発明の結像光学系は、複数のレンズが光軸上に成す空気間隔のうち最大の空気間隔は第1群を構成するレンズ同士の間に位置し、以下の条件式を満足することを特徴とする。
(6) -15.0<Φ_rear/Φ<-5.0
但し、
Φ_rearは最大の空気間隔の像側に隣接するレンズから複数のレンズのうち最も像側に配置されたレンズまでが成す部分系の無限遠合焦時のパワーである。
【0057】
条件式(6)は最大の空気間隔の像側に隣接するレンズから複数のレンズのうち最も像側に配置されたレンズまでが成す部分系(以下、像側部分系)のパワーと結像光学系のパワーの比を規定している。像側部分系が条件式(6)を満足することで像側部分系は全体として強い負のパワーを有することとなる。この時全系が結像光学系となるために、最大の空気間隔よりも物体側に配置されたすべてのレンズからなる部分系(以下、物体側部分系)は全体として正のパワーを有することとなる。正のパワーを有する物体側部分系と強い負のパワーを有する像側部分系を最大の空気間隔によって隔てて配置することで結像光学系に強い全長短縮効果をもたらすテレフォトタイプのパワー配置を構成することが可能となる。また物体側部分系の収斂効果によりフォーカシングユニットや像ブレ補正ユニットを小径化しやすい。
【0058】
条件式(6)の上限値を超えて像側部分系の負のパワーが小さくなるとテレフォトタイプのパワー配置が弱まり全長短縮効果が小さくなるため望ましくない。また像側部分系への入射光線高も低くしづらくなり、フォーカシングユニットの小径化に不利になる。条件式(6)の下限値を超えて像側部分系の負のパワーが大きくなると結像光学系のパワー配置の対称性が悪くなりすぎるため歪曲収差を補正することが困難になり望ましくない。
【0059】
条件式(6)の上限値を-6.0に限定することで前述の効果をより確実なものとすることができ好ましい。条件式(6)の下限値を-14.0に限定することで前述の効果をより確実なものとすることができ好ましい。
【0060】
さらに本発明の結像光学系は、最大の空気間隔よりも物体側に配置されたすべてのレンズと空気との界面は有効光線径内に於いて物体側に凸面を向けていることを特徴とする。最大の空気間隔よりも物体側に配置されたすべてのレンズにおいては軸上マージナル光線が高い位置を通るため球面収差が発生しやすいが、レンズと空気との界面が物体側に凸面を向けるようにすることでアプラナティックに近い形状となり球面収差の発生を低減することが可能である。
【0061】
次に、本発明の結像光学系に係る実施例のレンズ構成について説明する。なお、以下の説明ではレンズ構成を物体側から像側の順番で記載する。
【実施例0062】
図1は、本発明の実施例1の結像光学系のレンズ構成図である。
【0063】
第1群は物体側に凸面を向けたメニスカス形状の正レンズL1と、物体側に凸面を向けたメニスカス形状の正レンズL2と、物体側に凸面を向けたメニスカス形状の負レンズL3と、両凸形状の正レンズL4と両凹形状の負レンズL5からなる接合レンズと、物体側に凸面を向けたメニスカス形状の負レンズL6と両凸形状の正レンズL7からなる接合レンズとから構成されており、全体として正のパワーを有する。また第1群は像面に対して常時固定されている。
【0064】
第2群は物体側に凸面を向けたメニスカス形状の正レンズL8と物体側に凸面を向けたメニスカス形状の負レンズL9からなる接合レンズで構成されており、全体として負のパワーを有する。また第2群は無限遠物体から近距離物体へのフォーカシング時に光軸上を物体側から像側に向かって移動する。
【0065】
第3群は像ブレ補正ユニットとリアユニットから構成され、全体として負のパワーを有する。また第3群はフォーカシング時に像面に対して固定されている。
【0066】
像ブレ補正ユニットは像側に凸面を向けたメニスカス形状の正レンズL10と両凹形状の負レンズL11から構成され、全体として負のパワーを有する。また像ブレ補正ユニットは結像光学系のブレによる像のブレを軽減するように光軸と垂直な方向に移動する。
【0067】
リアユニットは両凸形状の正レンズL12と、像側に凸面を向けたメニスカス形状の負レンズL13と、両凸形状の正レンズL14と、両凹形状の負レンズL15と両凸形状の正レンズL16からなる接合レンズとから構成され、全体として正のパワーを有する。またリアユニットは像面に対して常時固定されている。
【0068】
物体側部分系はL1乃至L5によって構成されており、全体として正のパワーを有する。像側部分系はL6乃至L16によって構成されており、全体として負のパワーを有する。またフォーカシングユニットとして第2群を含んでいる。
【0069】
開口絞りは第2群と第3群の間に配置されている。
第1群は物体側に凸面を向けたメニスカス形状の正レンズL1と、物体側に凸面を向けたメニスカス形状の正レンズL2と、物体側に凸面を向けたメニスカス形状の負レンズL3と、両凸形状の正レンズL4と両凹形状の負レンズL5からなる接合レンズと、物体側に凸面を向けたメニスカス形状の負レンズL6と両凸形状の正レンズL7からなる接合レンズとから構成されており、全体として正のパワーを有する。また第1群は像面に対して常時固定されている。
第2群は両凸形状の正レンズL8と両凹形状の負レンズL9からなる接合レンズで構成されており、全体として負のパワーを有する。また第2群は無限遠物体から近距離物体へのフォーカシング時に光軸上を物体側から像側に向かって移動する。
像ブレ補正ユニットは像側に凸面を向けたメニスカス形状の正レンズL10と両凹形状の負レンズL11から構成され、全体として負のパワーを有する。また像ブレ補正ユニットは結像光学系のブレによる像のブレを軽減するように光軸と垂直な方向に移動する。
リアユニットは両凸形状の正レンズL12と、像側に凸面を向けたメニスカス形状の負レンズL13と、両凸形状の正レンズL14と、両凹形状の負レンズL15と両凸形状の正レンズL16からなる接合レンズとから構成され、全体として正のパワーを有する。またリアユニットは像面に対して常時固定されている。
物体側部分系はL1乃至L5によって構成されており、全体として正のパワーを有する。像側部分系はL6乃至L16によって構成されており、全体として負のパワーを有する。またフォーカシングユニットとして第2群を含んでいる。