(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023170003
(43)【公開日】2023-12-01
(54)【発明の名称】保守計画立案システム及び保守計画立案方法
(51)【国際特許分類】
G06Q 10/20 20230101AFI20231124BHJP
【FI】
G06Q10/00 300
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022081414
(22)【出願日】2022-05-18
(71)【出願人】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】松葉 浩也
(72)【発明者】
【氏名】エリス ロバート ジョセフ
【テーマコード(参考)】
5L049
【Fターム(参考)】
5L049CC15
(57)【要約】
【課題】機器の保守計画についてユーザの納得が得られやすい保守計画立案システム等を提供する。
【解決手段】保守計画立案システム10は、機器の将来のメンテナンスの実施時期に関する適切さの度合いを示すスコアを、ユーザによる入力装置30を介した操作に基づいて調整するスコア調整部111bと、スコア調整部111bによる調整の結果に基づいて、機器の保守計画を立案する計画計算部112bと、を備える。また、保守計画立案システム10は、故障リスク値を算出する際の候補となる複数の算出手法の中から、ユーザによる入力装置30を介した操作で選択される算出手法に基づいて、故障リスク値を算出するリスク評価部11aを備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
機器の将来のメンテナンスの実施時期に関する適切さの度合いを示すスコアを、ユーザによる入力手段を介した操作に基づいて調整するスコア調整部と、
前記スコア調整部による調整の結果に基づいて、前記機器の保守計画を立案する計画計算部と、を備える保守計画立案システム。
【請求項2】
前記機器の将来の故障リスクの高さを示す故障リスク値を算出する際の候補となる複数の算出手法の中から、ユーザによる前記入力手段を介した操作で選択される算出手法に基づいて、前記故障リスク値を算出するリスク評価部を備えること
を特徴とする請求項1に記載の保守計画立案システム。
【請求項3】
前記計画計算部は、複数の前記機器又は複数の前記メンテナンスに関する所定の業務制約の範囲内で、前記スコアの和を最大化するように前記保守計画を立案すること
を特徴とする請求項1に記載の保守計画立案システム。
【請求項4】
前記機器の将来の故障リスクの高さを示す故障リスク値と、前記スコアと、の関係を示す所定の曲線を表示手段に表示させる表示制御部を備え、
前記スコア調整部は、ユーザによる前記入力手段を介した操作に基づいて、前記曲線を変化させ、
前記計画計算部は、所定の基準時からの経過時間に対応する前記故障リスク値を算出し、さらに、前記曲線に基づいて、前記故障リスク値に対応する前記スコアを算出すること
を特徴とする請求項1に記載の保守計画立案システム。
【請求項5】
前記曲線は、上に凸の部分を含み、
前記調整として、前記部分における前記スコアの最大値を与える頂点の前記故障リスク値、及び、前記頂点の前記スコアのうち少なくとも一方が調整されること
を特徴とする請求項4に記載の保守計画立案システム。
【請求項6】
前記調整として、前記曲線における前記故障リスク値の最大値が調整されること
を特徴とする請求項4に記載の保守計画立案システム。
【請求項7】
前記保守計画の立案後、ユーザによる前記入力手段を介した操作に基づいて、前記スコアが再調整された場合、前記計画計算部は、再調整後の前記スコアに基づいて、前記機器の保守計画を再び立案すること
を特徴とする請求項1に記載の保守計画立案システム。
【請求項8】
前記保守計画に関する設定画面を表示手段に表示させる表示制御部を備え、
前記表示制御部は、前記機器の種類、前記メンテナンスの種類、又は前記機器の設置場所に基づいて、グループ化された前記機器又は前記メンテナンスを前記設定画面に表示させ、
ユーザによる前記入力手段を介した操作に基づいて、グループ化された前記機器又は前記メンテナンスに関する前記スコアが一括で調整されること
を特徴とする請求項1に記載の保守計画立案システム。
【請求項9】
所定の基準時からの経過時間と前記機器の将来の故障リスクの高さを示す故障リスク値との関係を示す第1関数、及び、前記故障リスク値と前記スコアとの関係を示す第2関数の合成関数として、前記経過時間と前記スコアとの関係を示す第3関数が導出されること
を特徴とする請求項1に記載の保守計画立案システム。
【請求項10】
機器の将来のメンテナンスの実施時期に関する適切さの度合いを示すスコアを、ユーザによる入力手段を介した操作に基づいて調整するスコア調整処理と、
前記スコア調整処理による調整の結果に基づいて、前記機器の保守計画を立案する計画計算処理と、を含む保守計画立案方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保守計画立案システム等に関する。
【背景技術】
【0002】
機器の保守計画の立案に関する技術として、例えば、特許文献1に記載の技術が知られている。すなわち、特許文献1には、「故障リスク情報または前記保守コスト計算手段で生成された保守コスト情報に基づいて前記部品群の保守時期を計算し保守計画を作成する保守計画最適化手段」を備える保守計画支援システムについて記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、どのような方針に基づいて保守計画が作成されたのかをユーザ(顧客)が理解できない可能性がある。保守計画が作成される際の方針をユーザがある程度理解して、納得できるようなシステムにすることが望ましいが、そのような技術については特許文献1には記載されていない。
【0005】
そこで、本発明は、機器の保守計画についてユーザの納得が得られやすい保守計画立案システム等を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記した課題を解決するために、本発明に係る保守計画立案システムは、機器の将来のメンテナンスの実施時期に関する適切さの度合いを示すスコアを、ユーザによる入力手段を介した操作に基づいて調整するスコア調整部と、前記スコア調整部による調整の結果に基づいて、前記機器の保守計画を立案する計画計算部と、を備えることとした。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、機器の保守計画についてユーザの納得が得られやすい保守計画立案システム等を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施形態に係る保守計画立案システムの構成を示す機能ブロック図である。
【
図2】実施形態に係る保守計画立案システムの処理を示すフローチャートである。
【
図3】実施形態に係る保守計画立案システムの機器情報の説明図である。
【
図4】実施形態に係る保守計画立案システムの予測手法情報の説明図である。
【
図5】実施形態に係る保守計画立案システムの予測手法選択部の処理に関する表示画面例である。
【
図6】実施形態に係る保守計画立案システムの評価計算実行部の処理を示すフローチャートである。
【
図7】実施形態に係る保守計画立案システムにおけるスコアの調整に関する説明図である。
【
図8】実施形態に係る保守計画立案システムの計画ポリシー情報の説明図である。
【
図9】実施形態に係る保守計画立案システムにおけるスコアの調整等に関する画面表示例である。
【
図10】実施形態に係る保守計画立案システムの計画計算部の処理を示すフローチャートである。
【
図11】実施形態に係る保守計画立案システムにおける、将来の各日付のスコアの導出に関する説明図である。
【
図12】実施形態に係る保守計画立案システムのスコア情報の説明図である。
【
図13】実施形態に係る保守計画立案システムの計画情報の説明図である。
【
図14】実施形態に係る保守計画立案システムにおける各機器の保守計画に関する表示画面例である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
≪実施形態≫
<保守計画立案システムの構成>
図1は、実施形態に係る保守計画立案システム10の構成を示す機能ブロック図である。
保守計画立案システム10は、機器の保守計画を立案するシステムである。このような機器として、例えば、発電設備や送電設備、配電設備、変電設備が挙げられるが、これに限定されるものではない。すなわち、保守計画立案システム10の対象となる機器は、通信設備や空調設備、冷凍設備、医療設備、ガス設備、水道設備、道路の他、化学プラントや製造プラント、水処理プラントであってもよいし、航空機や船舶、鉄道車両の他、これらに関連する設備(例えば、鉄道の線路・電線路)であってもよい。
【0010】
メンテナンスの対象となる機器は、通常、複数(例えば、数百個や数千個)存在することが多く、また、異なる種類のものが混在していることが多い。また、1つの機器に対して、複数のメンテナンスが行われることがある他、1つのメンテナンスが複数の機器に関わっていることもある。以下の説明では、一例として、1つの機器に対して所定の1つのメンテナンスが行われる場合について説明するが、これに限定されるものではない。
【0011】
図1に示すように、保守計画立案システム10は、記憶装置20や入力装置30(入力手段)、表示装置40(表示手段)に配線を介して接続されるとともに、ネットワーク50にも接続されている。記憶装置20は、例えば、HDD(Hard Disk Drive)であり、所定のデータやプログラムを記憶するようになっている。入力装置30は、例えば、ユーザによって操作されるキーボードやマウスである。
【0012】
表示装置40は、例えば、ディスプレイである。そして、保守計画立案システム10の処理結果が表示装置40に所定に表示されるようになっている。なお、タッチディスプレイのように、表示装置40がデータ入力の機能を兼ね備えるようにしてもよい。その他、所定の音声を出力するスピーカ等(図示せず)がさらに接続されていてもよい。
【0013】
また、保守計画立案システム10の処理結果が、ネットワーク50を介して、ユーザの情報端末(図示せず)に送信されるようにしてもよい。このような情報端末として、例えば、スマートフォンや携帯電話、タブレット、パソコン、ウェアラブル端末が挙げられる。
図1に示す保守計画立案システム10は、一つのコンピュータ(例えば、サーバ)で構成されていてもよいし、また、信号線やネットワークを介して、複数のコンピュータ(図示せず)が所定に接続された構成であってもよい。
【0014】
図1に示すように、保守計画立案システム10は、メモリ11と、プロセッサ12と、インタフェース13と、を備えている。メモリ11は、ROM(Read Only Memory)やHDD等の不揮発性メモリと、RAM(Random Access Memory)やレジスタ等の揮発性メモリと、を含んで構成されている。メモリ11には、リスク評価部11aや計画立案部11b、表示制御部11cのそれぞれのプログラムやデータが格納されている。
【0015】
プロセッサ12は、例えば、CPU(Central Processing Unit)であり、メモリ11に格納されたプログラムを読み出して、所定の処理を実行する。インタフェース13は、データの伝送を行うものである。インタフェース13は、記憶装置20、入力装置30、表示装置40及びネットワーク50に接続されるとともに、メモリ11及びプロセッサ12に接続されている。
【0016】
図1に示すように、メモリ11には、リスク評価部11aと、計画立案部11bと、表示制御部11cのそれぞれのプログラムやデータが格納されている。リスク評価部11aは、ユーザによって選択される所定の予測手法に基づいて、機器の将来の状態を予測する。本実施形態では、機器の将来の状態として、リスク評価部11aが機器の故障リスク指数(故障リスク値)を算出するようにしている。なお、「故障リスク指数」とは、メンテナンスを行わずに機器を使い続けた場合に、機器で故障が生じる可能性(故障リスク)の高さを示す値である。
【0017】
図1に示すように、リスク評価部11aは、予測手法選択部111aと、評価計算実行部112aと、機器情報113aと、予測手法情報114aと、機器状態予測情報115aと、を備えている。
予測手法選択部111aは、機器の将来の故障リスク指数を予測する際の候補となる複数の予測手法(算出手法)の中から、ユーザによる入力装置30の操作に基づいて、所定の予測手法を選択する。
評価計算実行部112aは、予測手法選択部111aによって選択された予測手法に基づいて、機器の将来の故障リスク指数を算出する。
なお、機器情報113aや予測手法情報114a、機器状態予測情報115aについては後記する。
【0018】
図1に示す計画立案部11bは、所定の計画ポリシー情報113bに基づいて、機器の将来の保守計画を立案する。
図1に示すように、計画立案部11bは、スコア調整部111bと、計画計算部112bと、計画ポリシー情報113bと、スコア情報114bと、計画情報115bと、を備えている。
【0019】
スコア調整部111bは、機器の将来のメンテナンスの時期に関する適切さの度合いを示すスコアを、ユーザによる入力装置30(入力手段)を介した操作に基づいて調整する。計画計算部112bは、スコア調整部111bによる調整の結果に基づいて、機器の保守計画を立案する。なお、計画ポリシー情報113bやスコア情報114b、計画情報115bについては後記する。
図1に示す表示制御部11cは、保守計画に関する所定の設定画面を表示装置40(表示手段)に表示させる他、計画立案部11bによって立案された保守計画を表示装置40に表示させる。
【0020】
図2は、保守計画立案システムの処理を示すフローチャートである(適宜、
図1も参照)。
図2に示すステップS101において保守計画立案システム10は、ユーザによる入力装置30の操作に基づき、予測手法選択部111aによって、機器の将来の状態を予測する際の予測手法を選択する。
次に、ステップS102において保守計画立案システム10は、評価計算実行部112aによって、機器の将来の状態(例えば、故障リスク指数)を予測する。
【0021】
ステップS103において保守計画立案システム10は、ユーザによる入力装置30の操作に基づき、スコア調整部111bによって、機器のメンテナンス時期の適切さを示すスコアを調整する(スコア調整処理)。
ステップS104において保守計画立案システム10は、計画計算部112bによって、機器の将来の保守計画を立案する(計画計算処理)。すなわち、保守計画立案システム10は、ステップS102の予測結果と、ステップS103で調整されたスコアと、に基づいて、機器の将来の保守計画を立案する。ステップS104の処理を行った後、保守計画立案システム10は、一連の処理を終了する(END)。
【0022】
次に、機器情報113a(
図1参照)や予測手法情報114a(
図1参照)について説明した後、
図2のステップS101~S104の各処理の詳細について説明する。
【0023】
図3は、機器情報113aの説明図である。
図3に示す機器情報113aは、将来のメンテナンスの対象である機器に関する情報である。
図3の例では、「機器ID」、「設置場所」、「機器名称」、「手法名」、及び「予測結果」が、機器情報113aとしてメモリ11(
図1参照)に格納されている。
図3に示す「機器ID」は、それぞれの機器に割り振られる識別情報である。また、「設置場所」は機器の設置場所であり、「機器名称」は機器の名称である。
【0024】
図3の例では、機器IDが「Transformer1」であり、機器名称が「変圧器X」である機器が、「変電所A」に設置されている。これらの「機器ID」や「設置場所」、「機器名称」といったデータは、例えば、機器を管理するユーザから提供される。
【0025】
図3に示す「手法名」は、機器の将来の状態を予測する際に用いられる予測手法の名称であり、ユーザによる入力装置30(
図1参照)の操作で選択される。なお、「時間ベース」や「指数関数」といった具体的な予測手法については後記する。
図3に示す「予測結果」は、ユーザが選択した所定の予測手法に基づく機器の将来の状態(例えば、故障リスク指数)の予測結果である。
【0026】
詳細については後記するが、機器の将来の状態の予測結果は、機器状態予測情報115a(
図1参照)として、例えば、データテーブルの形式でメモリ11に格納される。したがって、
図3の機器情報113aに含まれる「予測結果」として、機器状態予測情報115aに含まれる予測結果の識別情報が用いられてもよいし、また、予測結果が格納される記憶領域のアドレスが用いられてもよい。例えば、機器IDが「Transformer1」である機器の将来の状態の予測結果は、機器状態予測情報115a(
図1参照)に含まれる「テーブル1」として、メモリ11(
図1参照)から適宜に読み出される。
【0027】
また、機器情報113aにおいて、機器IDに他のデータが追加で対応付けられるようにしてもよい。例えば、各メンテナンスに割り振られるメンテナンスIDや、機器の過去のメンテナンス(点検を含む)の履歴を示すデータの他、機器に設置されたセンサ(図示せず)の検出値や、機器を駆動する際の指令値といったデータが機器IDに対応付けられるようにしてもよい。
【0028】
図4は、予測手法情報114aの説明図である。
予測手法情報114aは、機器の将来の状態の予測手法を示すデータであり、メモリ11(
図1参照)に予め格納されている。
図4に示す「手法名」は、機器の将来の状態の予測する際に用いられる手法の名称である。
図4では、予測手法の一つとして、指数関数が用いられる例を示している。そして、指数関数等の複数の予測手法が予測手法情報114aとしてメモリ11(
図1参照)に予め格納され、ユーザによる入力装置30(
図1参照)の操作によって、予測手法が適宜に選択されるようになっている。
【0029】
本実施形態では、機器の将来の状態として、リスク評価部11a(
図1参照)が故障リスク指数を算出するようにしている。「故障リスク指数」とは、前記したように、機器の将来の故障リスクの高さを示す値である。機器の状態の予測手法の一つである指数関数は、例えば、時間の経過に伴って故障リスク指数が単調増加することが既知であるような場合に用いられる。
【0030】
図4に示す「手順」は、機器の将来の状態を予測する際の手順であり、「手法名」に対応付けられている。すなわち、「指数関数」の予測手法を用いた場合の「手順」として、例えば、次のような処理のプログラムがメモリ11(
図1参照)に予め記憶されている。
図4の例では、ステップS201においてリスク評価部11a(
図1参照)が、機器の直近のメンテナンスの実施時期の他、保守計画の終了予定日や時間間隔を入力として受け取る。例えば、機器の直近のメンテナンスから1年間の各日付について、機器の故障リスク指数を算出させる場合、ユーザは、入力装置30(
図1参照)を所定に操作し、次のように設定する。すなわち、ユーザは、直近のメンテナンスの日付(又は直近のメンテナンスから現時点までの経過日数)や、保守計画の終了予定日の日付を入力し、時間間隔を1日に設定する。
【0031】
次に、ステップS202においてリスク評価部11a(
図1参照)は、各時刻tについて、v=exp(t/E)を計算し、その結果を出力する。なお、前記した式に含まれる「v」は、機器の故障リスク指数であり、「E」は、直近のメンテナンスの実施時期から保守計画の終了予定日までの期間の長さである。リスク評価部11a(
図1参照)は、直近のメンテナンスの実施時期から保守計画の終了予定日までの期間を所定の時間間隔(S101で入力された時間間隔)で等分した場合の各時刻tについて、v=exp(t/E)の値を故障リスク指数として算出し、その結果を表示装置40(
図1参照)に表示させる。
【0032】
なお、機器の将来の状態を予測する際の予測手法は、
図4に示す「指数関数」に限定されるものではない。他の予測手法として、例えば、「時間ベース」や「標準モデルベース」や「データ駆動」が用いられてもよい。
予測手法の一つである「時間ベース」とは、機器の製造メーカの仕様の他、国や地方公共団体の規定に基づいて、機器の状態を予測する手法である。例えば、機器の製造メーカの仕様書において、1年ごとに機器のメンテナンスを行うことが推奨されていたとする。このような場合、直近のメンテナンスから1年が経するのを境に、故障リスク指数がステップ状に高くなるようにしてもよい。例えば、機器の過去のメンテナンス履歴のデータをユーザが有していない場合でも、予測手法として「時間ベース」を用いることで、機器の将来の状態を予測できる。
【0033】
また、別の予測手法である「標準モデルベース」とは、機器の直近のメンテナンス(点検を含む)の結果に基づいて、故障リスク指数を算出する手法である。機器の直近のメンテナンスのデータが存在する場合、ユーザは、予測手法として「標準モデルベース」を選択できる。
【0034】
また、別の予測手法である「データ駆動」とは、機器に関して、過去に行われたメンテナンスの履歴等に基づいて、故障リスク指数を算出する手法である。その他、機器が駆動されるときの各センサ(図示せず)の検出値や、機器を制御する際の指令値といったものが「データ駆動」に適宜に用いられるようにしてもよい。機器の過去のメンテナンス履歴のデータを有している場合、ユーザは、予測手法として「データ駆動」を選択できる。このような複数の予測手法が、予測手法情報114aとしてメモリ11(
図1参照)に予め格納されている。
【0035】
図1に示す予測手法選択部111aは、前記したように、機器の将来の状態を予測する際の候補となる複数の予測手法の中から、ユーザによる入力装置30の操作に基づいて、所定の予測手法を選択する。
【0036】
図5は、予測手法選択部の処理に関する表示画面例である。
図5の例では、メンテナンスの対象機器(ターゲットアセット)の「場所」、「機器」、及び「手法」の各候補が、所定のプルダウンメニューP1,P2,P3として、表示装置40(
図1参照)に表示されるようになっている。
図5の例では、機器の「場所」として「変電所A」が選択され、さらに、「機器」の名称として「変圧器X」が選択されている。そして、「変電所A」に設置された「変圧器X」の将来の状態を予測する際の予測手法として、「指数関数」が選択されている。
【0037】
このように、ユーザによる入力装置30(
図1参照)の操作に応じて、予測手法選択部111a(
図1参照)は、プルダウンメニューP3の中から所定の予測手法を選択する(
図2のS101に対応)。なお、メンテナンスの対象となる機器が特定されればよいため、機器の設置場所や名称の選択は、特に必須の処理ではない。例えば、メンテナンスの対象となる機器の機器IDをユーザが選択(又は直接入力)するようにしてもよい。
【0038】
そして、
図5の「OK」のボタンB1が選択された場合、「対象機器状態予測」として、例えば、「本日」から「1年後」までの故障リスク指数の推移を示す曲線R1が表示されるようになっている。なお、
図5に示す曲線R1の座標の横軸は、保守計画の立案時(本日)からの経過時間であり、縦軸は、メンテナンスの対象となる機器の将来の故障リスク指数である。
【0039】
なお、
図5は、所定の1つの機器に関する表示画面例を示しているが、メンテナンスの対象となる複数の機器(例えば、数百個や数千個の機器)のそれぞれについて、予測手法が選択される。前記したように、ユーザがどのようなデータを保有しているかといったことに基づいて、ユーザ自身が予測手法を選択できるようになっている。ユーザによって選択された予測手法は、
図3に示すように、機器ID(又はメンテナンスID)に対応付けられ、機器情報113aとしてメモリ11(
図1参照)に格納される。
【0040】
図1に示す評価計算実行部112aは、メンテナンスの対象となる将来の状態(例えば、
図5に示す曲線R1の各値)を算出する。このような評価計算実行部112aの処理について、
図6を用いて説明する。
【0041】
図6は、評価計算実行部の処理を示すフローチャートである。
なお、
図6に示す一連の処理は、
図2のステップS102の処理(機器の将来の状態の予測)に対応している。また、
図6の「START」時には、メンテナンスの対象となる各機器について、将来の状態を予測する際の予測手法が選択され、機器情報113a(
図3参照)としてメモリ11(
図1参照)に格納されているものとする。
ステップS1021において評価計算実行部112aは、機器の状態(例えば、故障リスク指数)に関する予測値を初期化する。例えば、評価計算実行部112aは、
図3の機器IDに対応付けられる予測結果の各欄の値を所定に初期化する。
【0042】
ステップS1022において評価計算実行部112aは、全ての機器の状態を予測したか否かを判定する。すなわち、評価計算実行部112aは、機器情報113a(
図3参照)に含まれている全ての機器(又は全てのメンテナンス)について、故障リスク指数を算出したか否かを判定する。ステップS1022において、状態の予測が行われていない機器が存在する場合(S1022:No)、評価計算実行部112aの処理はステップS1023に進む。
【0043】
ステップS1023において評価計算実行部112aは、未処理の機器を選択する。すなわち、評価計算実行部112aは、故障リスク指数がまだ算出されていない機器を選択する。
ステップS1024において評価計算実行部112aは、予測手法を特定する。すなわち、評価計算実行部112aは、ステップS1023で選択した機器に対応する手法名(
図3参照)に基づいて、予測手法情報114a(
図1参照)の中から当該手法名のデータを読み出す。例えば、
図3に示す機器情報113aにおいて、機器IDが「Transformer1」である機器の故障リスク指数を予測する際、評価計算実行部112aは、手法名の「指数関数」に基づいて、予測手法情報114a(
図4参照)から「指数関数」のデータを読み出す。
【0044】
次に、ステップS1025において評価計算実行部112aは、機器の将来の状態を予測する。すなわち、評価計算実行部112aは、ステップS1024で特定した予測手法に基づいて、機器の将来の各時期における故障リスク指数を算出する。このように、評価計算実行部112a(つまり、リスク評価部11a:
図1参照)は、機器の故障リスク指数(故障リスク値)を算出する際の候補となる複数の予測手法(算出手法)の中から、ユーザによる入力装置30(入力手段:
図1参照)を介した操作で選択される予測手法に基づいて、故障リスク指数を算出する。
【0045】
ステップS1026において評価計算実行部112aは、機器の将来の状態の予測結果を記憶する。具体的には、評価計算実行部112aは、ステップS1025の予測結果を機器状態予測情報115a(
図1参照)としてメモリ11(
図1参照)に格納する。その他、機器情報113a(
図3参照)に含まれる「予測結果」として、機器状態予測情報115aに含まれる予測結果の識別情報が記憶されるようにしてもよい。
【0046】
ステップS1026の処理を行った後、評価計算実行部112aの処理は、ステップS1022に戻る。また、ステップS1022において、全ての機器の状態を予測した場合(S1022:Yes)、評価計算実行部112aは、
図6に示す一連の処理を終了する(END)。
【0047】
図1に示す機器状態予測情報115aは、それぞれの機器の将来の状態の予測結果に関する情報である。つまり、
図6の一連の処理によって生成されるデータが、機器状態予測情報115aである。機器状態予測情報115aには、将来の各時期(例えば、現時点から1年後までの各日付)における故障リスク指数の値が含まれている。
次に、ユーザの操作に基づくスコアの調整について、
図7を用いて説明する。
【0048】
図7は、スコアの調整に関する説明図である。
なお、
図7の横軸は、所定の機器の故障リスク指数である。また、
図7の縦軸は、機器の将来のメンテナンス時期の適切さの度合いを示すスコアである。
図7の破線で示す曲線C1は、初期設定された所定の関数のグラフである。例えば、横軸の故障リスク指数の値Xと、縦軸のスコアの値Yと、で特定される点を(X,Y)で表した場合、曲線C1は、点(0,0)から点(10,0)までの上に凸の曲線として、初期設定されている。また、
図7の例では、点(5.5,10)が曲線C1の頂点T1になっている。
【0049】
前記したように、機器のメンテナンスの時期が遅いほど、故障リスク指数が高くなることが多い。例えば、故障リスク指数が略ゼロの非常に早い時期に機器のメンテナンスを行った場合、そのメンテナンスが開始されるまでに機器が故障に至るリスクはほとんどないが、メンテナンスに要するコストが高くなるため、メンテナンスの時期の適切さの度合い(つまり、スコア)は低い。したがって、
図7の曲線C1では、原点の付近で故障リスク指数がゼロに近づくにつれて、スコアもゼロに近づくように設定されている。
【0050】
一方、故障リスク指数の値が「10」に近い時期(かなり遅い時期)に機器のメンテナンスを行った場合、メンテナンスに要するコストは低くなるが、メンテナンスが開始されるまでに機器が故障に至るリスクが高くなるため、メンテナンスの時期の適切さの度合い(つまり、スコア)は低い。したがって、
図7の曲線C1では、故障リスク指数が「10」に近づくにつれて、スコアがゼロに近づくように設定されている。
【0051】
なお、メンテナンスの実施時期に関する考え方は、ユーザによってさまざまである。例えば、機器のメンテナンスのコストが高くなっても構わないから、機器が故障に至るリスクを低くしたいと考えるユーザもいる。また、資金面でそれほど余裕がないため、機器のメンテナンスのコストをできるだけ抑えたいと考えるユーザもいる。
【0052】
これまでは、保守計画をシステム側で立案する過程にユーザが介在せずに、一律的に保守計画が立案されていた。このように一律的な保守計画がユーザに提示された場合、機器の故障リスクやコストについて、どのような考え方(ポリシー)に基づいて保守計画が立案されたのかをユーザが理解できない可能性がある。その結果、保守計画の内容をユーザが受け入れにくくなる可能性がある。
【0053】
そこで、本実施形態では、機器の将来の故障リスクの高さを示す故障リスク指数(故障リスク値)と、スコアと、の関係を示す所定の曲線C1等を表示制御部11c(
図1参照)が表示装置40(表示手段)に表示させるようにしている。これによって、メンテナンスに関する考え方をユーザが視覚的に理解できる。そして、メンテナンスの実施時期やコストに関するユーザの考え方が反映されるように、ユーザの操作に基づいて曲線C1の位置や形状を変更し、変更後の曲線に基づいて、計画計算部112b(
図1参照)が保守計画を立案するようにしている。これによって、保守計画に関するユーザの理解や納得が得られやすくなる。
【0054】
例えば、初期設定の曲線C1(標準的な考え方)を見たユーザが、機器の故障のリスクをさらに低くするような保守計画を作成したいと考えたとする。このような場合にユーザは、入力装置30(
図1参照)を所定に操作し、例えば、破線の曲線C1から実線の曲線C2に変更する。具体的には、ユーザが入力装置30を操作し、曲線C1の頂点T1を選択して、その頂点の位置を横方向にスライドさせると、例えば、頂点T2とする新たな曲線C2が表示される。上に凸の曲線C2は、初期設定の曲線C1よりも頂点T2の故障リスク指数が低くなっている。つまり、曲線C2には、機器が故障に至るリスクを低減したいというユーザの考え方が反映されている。
【0055】
また、初期設定の曲線C1(標準的な考え方)を見たユーザが、機器のメンテナンスのコストを抑えた保守計画を作成したいと考えたとする。このような場合にユーザは、入力装置30を所定に操作し、例えば、破線の曲線C1から一点鎖線の曲線C3に変更する。上に凸の曲線C3は、初期設定の曲線C1よりも頂点T3の故障リスク指数が高くなっている。つまり、曲線C3には、比較的遅い時期に機器のメンテナンスを行うことで、コストの低減を図ろうとするユーザの考え方が反映されている。
【0056】
また、初期設定の曲線C1(標準的な考え方)を見たユーザが、対象となる所定の機器については、メンテナンスの時期はそれほど重要でないと考えたとする。つまり、所定の機器のメンテナンスの時期は、早くてもよいし、また、遅くても特に問題はないとユーザが考えたとする。このような場合にユーザは、入力装置30を所定に操作し、例えば、破線の曲線C1から二点鎖線の曲線C4に変更する。上に凸の曲線C4は、頂点T4のスコアが標準よりも低くなっている。つまり、曲線C4には、所定の機器のメンテナンスの実施時期については特にこだわらないというユーザの考え方が反映されている。
【0057】
このように、それぞれの曲線C2,C3,C4は、機器のメンテナンスの実施時期やコストに関するユーザの大まかな考え方を示している。これらの曲線C2,C3,C4は、初期設定の曲線C1と同様に上に凸の曲線であり、原点(0,0)を通るように設定されている。
【0058】
その他、上に凸の曲線C1において故障リスク指数が最大になる点(10,0)の座標をユーザが変更できるようにしてもよい。例えば、所定の機器が故障に至った場合でも大きな問題は特に生じないといった場合、ユーザは、入力装置30(
図1参照)を所定に操作し、故障リスク指数の最大値(曲線の端点であって、原点とは異なる点の故障リスク指数)を低くする。
【0059】
なお、所定の機器については曲線C2が設定され、別の機器については曲線C3が設定されるといったように、複数の機器について異なる曲線が混在することもある。このような各曲線に対応する所定の関数が、それぞれの機器(又はメンテナンス)に対応付けられ、計画ポリシー情報113b(
図1参照)としてメモリ11(
図1参照)に格納される。
【0060】
図8は、計画ポリシー情報113bの説明図である。
図8に示す「最適リスク値」は、機器の故障リスク指数とスコアとの関係を示す曲線において、スコアが最も高くなる点の故障リスク指数である。
図7に示す曲線C1を例に説明すると、この曲線C1の頂点T1における故障リスク指数の値「5.5」が「最適リスク値」である。
図8に示す「最大リスク値」は、機器の故障リスク指数とスコアとの関係を示す曲線における故障リスク指数の最大値である。
図7に示す曲線C1を例に説明すると、この曲線C1の一方の端点である点(10,0)の故障リスク指数「10」が「最大リスク値」である。
【0061】
図8に示す「最大スコア」は、機器の故障リスク指数とスコアとの関係を示す曲線におけるスコアの最大値である。
図7に示す曲線C1を例に説明すると、この曲線C1の頂点T1におけるスコアの値「10」が「最大スコア」である。
図8に示す「最適リスク値」、「最大リスク値」、及び「最大スコア」が指定されることで、曲線(例えば、
図7の曲線C1)の位置や形状が決まるようになっている。
【0062】
図8の例では、機器IDが「Transformer1」である機器の最適リスク値は「2.5」であり、最大リスク値は「5.5」であり、最大スコアは「10」に設定されている。なお、ユーザの操作で曲線C1(
図7参照)が変更される前は、計画ポリシー情報113bとして、初期設定の曲線C1(
図7参照)に関するデータが記憶されている。また、ユーザの操作で曲線が変更された場合には、計画ポリシー情報113bとして、ユーザによる変更後の曲線に関するデータが記憶される。
【0063】
なお、ユーザによる入力装置30の操作を曲線C1等(
図7参照)の変更に反映させる処理は、スコア調整部111b(
図1参照)によって行われる。すなわち、スコア調整部111bは、ユーザによる入力装置30(入力手段)を介した操作に基づいて、故障リスク指数(故障リスク値)と、スコアと、の関係を示す所定の曲線を変化させる。
【0064】
図9は、スコアの調整等に関する画面表示例である。
なお、
図9に示す「場所」(機器の場所)や「機器」(機器の名称)の他、対象機器状態予測の曲線R1については、
図5と同様である。例えば、ユーザによる入力装置30(
図1参照)の操作で機器が指定された場合、メンテナンスの実施時期の適切さを示すスコアに関して、前記した初期設定の曲線C1が表示されるようにしてもよい。ユーザは、表示画面上でポインタG1を適宜に移動させ、曲線C1の頂点T1の位置等を調整する。これによって、機器の故障のリスクやメンテナンスのコストに関するユーザ自身の考え方が調整後の曲線に反映される。そして、ユーザは、曲線の調整後に「OK」のボタンB2を押す。
【0065】
このような処理が、メンテナンスの対象となる複数の機器のそれぞれについて行われる。なお、メンテナンスの対象となる機器の数が膨大であることもあるため、スコアに関する曲線の調整をユーザが一括で行えるようにしてもよい。例えば、機器の種類、メンテナンスの種類、又は機器の設置場所に基づいて、グループ化された機器(又はメンテナンス)を表示制御部11c(
図1参照)が設定画面に表示させるようにしてもよい。そして、ユーザによる入力装置30(入力手段:
図1参照)を介した操作に基づいて、グループ化された機器(又はメンテナンス)に関するスコアが一括で調整されるようにしてもよい。これによって、保守計画を立案させる際のユーザの作業負担を軽減できる。
【0066】
図10は、計画計算部の処理を示すフローチャートである(適宜、
図1も参照)。
なお、
図10に示す一連の処理は、
図2のステップS104の処理(保守計画の立案)に対応している。また、
図10の「START」時には、メンテナンスの対象となる各機器の将来の状態(例えば、故障リスク指数)の予測結果が、機器状態予測情報115a(
図1参照)としてメモリ11(
図1参照)に格納されているものとする。また、
図10の「START」時には、メンテナンスの対象となる各機器のスコアの曲線(
図9参照)がユーザの操作で調整され、計画ポリシー情報113b(
図1参照)としてメモリ11(
図1参照)に格納されているものとする。
【0067】
ステップS1041において計画計算部112bは、全ての機器のスコアを算出したか否かを判定する。すなわち、計画立案部11bは、機器情報113a(
図3参照)に含まれている全ての機器について、将来の各時期のスコアを算出したか否かを判定する。前記したように、「スコア」とは、機器のメンテナンスの時期に関する適切さの度合いを示す値である。ステップS1041においてスコアが算出されていない機器が存在する場合(S1041:No)、計画計算部112bの処理はステップS1042に進む。
【0068】
ステップS1042において計画計算部112bは、未処理の機器を選択する。すなわち、計画計算部112bは、スコアがまだ算出されていない機器を選択する。
次に、ステップS1043において計画計算部112bは、機器の将来の状態の予測値を読み出す。すなわち、計画計算部112bは、ステップS1042で選択した機器の機器IDに基づいて、機器状態予測情報115aを参照し、その機器の故障リスク指数の推移を示す関数を読み出す。
【0069】
ステップS1044において計画計算部112bは、スコアの曲線に対応する関数を導出する。すなわち、計画計算部112bは、ステップS1042で選択した機器の機器IDに基づいて、計画ポリシー情報113b(
図8参照)を参照し、その機器の最適リスク値、最大リスク値、及び最大スコアに基づいて、ユーザによる調整後のスコアの曲線(例えば、
図7の曲線C2)の関数を導出する。
ステップS1045において計画計算部112bは、将来の各日付のスコアを算出する。このステップS1045の処理について、
図11を用いて説明する。
【0070】
図11は、将来の各日付のスコアの導出に関する説明図である。
図11の紙面上側には、所定の機器の故障リスク指数の推移を示す曲線R1を示している。この曲線R1は、例えば、現時点からの経過日数と、故障リスク指数と、の関係を示すものであり、前記したように、ユーザが選択した予測手法(
図5参照)に基づいて作成される。曲線R1に関するデータは、機器IDに対応付けて、機器状態予測情報115a(
図1参照)としてメモリ11(
図1参照)に格納されている。
【0071】
図11の紙面中間には、所定の機器の故障リスク指数とスコアとの関係を示す曲線C2を示している。前記したように、曲線C2は、ユーザによる入力装置30(
図1参照)の操作で調整される(
図7参照)。曲線C2に関するデータは、機器IDに対応付けて、計画ポリシー情報113b(
図8参照)としてメモリ11(
図1参照)に格納されている。
【0072】
図10のステップS1045において計画計算部112bは、機器の将来の状態(故障リスク指数)を示す曲線R1(
図11の紙面上側)と、その機器のスコアに関する曲線C2(
図10の紙面中間)と、に基づいて、将来のスコアの推移を示す曲線K1の各値を算出する。例えば、現時点から6カ月後のスコアを算出する際、計画計算部112bは、まず、故障リスク指数の曲線R1で表される所定の関数に基づいて、6カ月後の故障リスク指数の値を算出する。そして、計画計算部112bは、この故障リスク指数の値に対応するスコアを、曲線C2の関数に基づいて算出する。これによって、6カ月後のスコアが算出される。
図11の例では、機器のメンテナンスを6カ月後に行う場合のスコアの値が「9.5」になっている。このような処理を「本日」から「1年後」までの各日付について行うことで、計画計算部112bは、
図11の紙面下側の曲線K1の各値を算出する。
【0073】
このように、計画計算部112bは、所定の基準時からの経過時間に対応する故障リスク指数(故障リスク値)を算出し、さらに、故障リスク指数とスコアとの関係を示す所定の曲線C2に基づいて、故障リスク指数に対応するスコアを算出する。
言い換えると、所定の基準時からの経過時間と故障リスク指数(故障リスク値)との関係を示す「第1関数」(曲線R1に対応)、及び、故障リスク指数とスコアとの関係を示す「第2関数」(曲線C2に対応)の合成関数として、所定の「第3関数」(曲線K1に対応)が導出される。ここで、「第3関数」とは、所定の基準時からの経過時間とスコアとの関係を示す関数である。また、前記した所定の基準時とは、例えば、保守計画の立案時や直近のメンテナンスの終了時である。
【0074】
図10のステップS1045において将来の各日付のスコアを算出した後、ステップS1046において計画計算部112bは、スコアの算出結果をスコア情報114bとして記憶する。つまり、計画計算部112bは、将来の各日付のスコア(
図11の曲線K1のデータ)を機器IDに対応付けて、スコア情報114b(
図1参照)としてメモリ11(
図1参照)に格納する。
【0075】
図12は、機器のスコア情報114bの説明図である。
図12の例では、機器IDが「Transformer1」である機器の日付順のスコアの数列(0.0,0.1,0.2,0.2,・・・)が、スコア情報114bとしてメモリ11(
図1参照)に格納されている。なお、将来のメンテナンスの対象である他の機器についても同様に、スコア情報114bが生成される。
【0076】
図10のステップS1046の処理を行った後、計画計算部112bの処理はステップS1041に戻る。このようにして、計画計算部112bは、ステップS1041~S1046の処理を各機器について行う。ステップS1041において全ての機器のスコアを算出した場合(S1041:Yes)、計画計算部112bの処理はステップS1047に進む。
【0077】
ステップS1047において計画計算部112bは、各機器の将来の保守計画を立案する。すなわち、計画計算部112bは、複数の機器(又は複数のメンテナンス)に関する所定の業務制約の範囲内で、スコアの和を最大化するように保守計画を立案する。ここで、所定の業務制約とは、例えば、メンテナンスの実施順序の他、メンテナンスに使う道具や交換部品、季節、人員等に関する制約である。このような業務制約に関するデータは、例えば、ユーザから提供されて、メモリ11(
図1参照)に格納されている。このような業務制約があるため、メンテナンスの対象となっている全ての機器のスコアを最大にする必要は特にない。つまり、所定の業務制約の範囲内で各機器(又は各メンテナンス)のスコアの和の最大化を図ればよいため、個別のスコアを最大にする必要は特にない。
【0078】
なお、ステップS1047の処理については、計画計算部112bが外部のサーバ等(図示せず)に所定の演算処理を行わせるようにしてもよいし、また、専用のソフトウェアが適宜に用いられてもよい。
そして、ステップS1048において計画計算部112bは、保守計画のデータを計画情報115b(
図1参照)としてメモリ11(
図1参照)に格納する。ステップS1048の処理を行った後、計画計算部112bは一連の処理を終了する(END)。
【0079】
図13は、計画情報115bの説明図である。
図13の例では、機器IDが「Transformer1」である機器のメンテナンス時期として、「XXXX年YY月第1週」というデータが、計画情報115bとしてメモリ11(
図1参照)に格納されている。
図13に示すメンテナンス時期は、例えば、メンテナンスを行うことが可能な時期であってもよいし、また、メンテナンスを行うことが最も推奨される日付(ベストタイミングの日付)であってもよい。このように、それぞれの機器のメンテナンス時期のデータが機器ID(又はメンテナンスID)に対応付けられている。
【0080】
図1に示す表示制御部11cは、ユーザの設定画面(例えば、
図5、
図9の表示画面)を表示装置40(
図1参照)に表示させる他、計画計算部112bによって作成された計画情報115b(
図14参照)を表示装置40に表示させる。
【0081】
図14は、各機器の保守計画に関する表示画面例である。
なお、
図14の横軸は、現時点(保守計画の立案時)からの経過日数である。また、
図14では、各機器の機器IDが縦方向に並んで表示されている。そして、メンテナンスが可能な時期(ドット表示の期間)と、メンテナンスのベストタイミングである時期(星印の日付)と、が機器IDに対応付けられ、表形式で表示されている。これによって、ユーザは、各機器のメンテナンスをどのタイミングで行えばよいかを一目で把握できる。なお、
図14の例では、横軸が「経過日数」になっているが、これに代えて、所定の日付(年月日)が表示されるようにしてもよい。
【0082】
また、故障リスク指数とスコアとの関係を示す曲線(例えば、
図11の曲線C2)をユーザが変更することで、機器の保守計画を再び立案させることも可能である。例えば、
図11に示す曲線C2は、頂点T2における故障リスク指数が比較的低くなっている。つまり、曲線C2には、メンテナンスを早めに行うことで機器が故障のリスクを低くしたいというユーザの考え方が反映されている。
【0083】
例えば、各機器の保守計画(
図14参照)を見たユーザが、メンテナンスに要するコストを抑制した保守計画も見てみたいと考えたとする。このような場合にユーザは、入力装置30(
図1参照)を所定に操作し、故障リスク指数とスコアとの関係を示す曲線を、例えば、
図7の曲線C3に変更する。曲線C3は、頂点T3における故障リスク指数が比較的高く、メンテナンスのコストを抑制するという考え方が反映されている。
【0084】
なお、それぞれの機器でスコアの曲線が個別に変更されてもよいし、また、機器の種類等で一括して変更されるようにしてもよい。そして、計画計算部112b(
図1参照)は、それぞれの機器の変更後のスコアの曲線に基づいて、各機器の保守計画を再び立案する。このように、保守計画の立案後、ユーザによる入力装置30(入力手段)を介した操作に基づいて、スコアが再調整された場合、計画計算部112bは、再調整後のスコアに基づいて、機器の保守計画を再び立案する。これによって、ユーザは、再調整後のスコアに基づく各機器の保守計画を確認し、自身の希望に沿った保守計画を立案させることができる。
【0085】
また、例えば、保守計画が立案された後、機器の将来の故障リスク指数の推移を予測する際の予測手法をユーザが入力装置30の操作で変更し、変更後の予測手法に基づいて、保守計画を再び立案させることもできる。これによって、ユーザは、自身が選択し直した所定の予測手法に基づく保守計画を確認できる。
【0086】
<効果>
本実施形態によれば、機器の将来のメンテナンスの時期に関する適切さを示すスコアをユーザが入力装置30(
図1参照)の操作で調整できる。したがって、機器の故障のリスクやメンテナンスのコストに関するユーザの考え方(好み)を保守計画に反映させることができる。これによって、保守計画の結果に関して、ユーザの理解や納得が得られやすくなる。また、表示装置40(
図1参照)に表示された所定の曲線の形状をユーザが調整すればよいため(
図7参照)、スコアの調整に関する処理をユーザが視覚的に理解しやすくなる。
【0087】
また、本実施形態によれば、機器の将来の状態(例えば、故障リスク指数)を予測する際の予測手法をユーザが選択するようになっている。つまり、機器のメンテナンスの履歴データを保有しているか否かといった個別的な事情に応じて、ユーザ自身が柔軟に予測手法を選択できる。このように、保守計画の立案の過程にユーザの選択や調整を介在させることで、機器の保守計画についてユーザの納得が得られやすくなる。
【0088】
また、保守計画がいったん作成された後も、機器の故障リスク指数の予測手法や、メンテナンス時期のスコアをユーザが適宜に変更し、変更後のデータに基づいて、保守計画を再び立案させることができる。この場合も、メンテナンスに関する考え方をユーザが視覚的に理解できるため、ユーザの考え方(好み)に沿って保守計画を適宜に修正できる。
【0089】
また、機器の将来の状態を予測する際の予測手法を適宜に設定することで、例えば、季節の変化に伴って変動するような故障リスクにも対応できる。例えば、夏季には樹木が成長しやすく、送電線に樹木が接触しやすくなるが、このようなことも考慮した所定の関数を予測手法として用いることも可能である。
【0090】
≪変形例≫
以上、本発明に係る保守計画立案システム10について実施形態で説明したが、本発明はこれらの記載に限定されるものではなく、種々の変更を行うことができる。
例えば、実施形態では、機器の将来の状態を示す指標として故障リスク指数が用いられる場合について説明したが、これに限らない。すなわち、機器の将来の状態を示すものであればよく、故障リスク指数とは異なる所定の指標が用いられてもよい。
また、実施形態では、機器の将来の状態を予測する際の予測手法として、「指数関数」、「時間ベース」、「標準モデルベース」、及び「データ駆動」の中から選択される場合について説明したが、他の予測手法が用いられるようにしてもよい。
【0091】
また、実施形態では、機器の種類、メンテナンスの種類、又は機器の設置場所に基づいて、グループ化された機器(又はメンテナンス)を設定画面に表示させ、ユーザの操作に基づいて、スコアの曲線を一括で変更する処理について説明したが、これに限らない。例えば、機器の将来の状態を予測する際の予測手法の選択についても、所定のグループごとに一括で変更できるようにしてもよい。これによって、ユーザの作業負担を軽減できる。
【0092】
また、実施形態では、故障リスク指数とスコアとの関係を示す曲線が、ユーザによる入力装置30(
図1参照)の操作で変更される場合について説明したが、これに限らない。例えば、故障リスク指数を示す所定の座標軸において、スコアの最大値を与える位置をユーザが指定できるようにしてもよいし、また、他の方法が適宜に用いられてもよい。
【0093】
また、実施形態では、故障リスク指数(故障リスク値)とスコアとの関係を示す曲線(
図7参照)において、上に凸の部分におけるスコアの最大値を与える頂点の故障リスク値、及び、この曲線の頂点のスコアの両方が調整される場合について説明したが、これに限らない。すなわち、前記した曲線において、スコアの最大値を与える頂点の故障リスク値、及び、この曲線の頂点のスコアのうち少なくとも一方が調整されるようにしてもよい。
また、故障リスク指数とスコアとの関係を示す曲線の形状は、上に凸の部分の他、その一部に下に凸の部分が含まれていてもよい。
【0094】
また、実施形態では、ユーザによるスコアの調整として、故障リスク指数(故障リスク値)とスコアとの関係を示す曲線(
図7参照)において、故障リスク値の最大値(
図8の「最大リスク値」)が調整可能である場合について説明したが、これに限らない。例えば、故障リスク値の最大値が固定されていてもよい。
また、実施形態では、故障リスク指数とスコアとの関係を示す曲線(
図7参照)がユーザの操作で調整される場合について説明したが、これに限らない。例えば、所定の基準時(保守計画の立案時又は直近のメンテナンスの終了時)からの経過時間と、スコアと、の関係を示す曲線が、ユーザによる入力装置30の操作に基づいて調整されるようにしてもよい。
【0095】
また、保守計画を立案する際、表示制御部11c(
図1参照)が各機器(又は各メンテナンス)のスコアの合計値を表示装置40に表示させるようにしてもよい。これによって、複数通りの保守計画をユーザが比較する際の参考にすることができる。
また、ユーザがスコアの曲線等を所定に修正した場合、その修正の傾向をAI(Artificial Intelligence)等が学習し、その学習結果を当該ユーザが保守計画を再び立案させる際に反映させるようにしてもよい。
【0096】
また、保守計画立案システム10が実行する処理が、コンピュータの所定のプログラムとして実行されてもよい。前記したプログラムは、通信線を介して提供することもできるし、CD-ROM等の記録媒体に書き込んで配布することも可能である。
【0097】
また、各実施形態は本発明を分かりやすく説明するために詳細に記載したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されない。また、実施形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。また、前記した機構や構成は説明上必要と考えられるものを示しており、製品上必ずしも全ての機構や構成を示しているとは限らない。
【符号の説明】
【0098】
10 保守計画立案システム
11 メモリ
11a リスク評価部
111a 予測手法選択部
112a 評価計算実行部
113a 機器情報
114a 予測手法情報
115a 機器状態予測情報
11b 計画立案部
111b スコア調整部
112b 計画計算部
113b 計画ポリシー情報
114b スコア情報
115b 計画情報
11c 表示制御部
12 プロセッサ
13 インタフェース
20 記憶装置
30 入力装置(入力手段)
40 表示装置(表示手段)
50 ネットワーク