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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023170009
(43)【公開日】2023-12-01
(54)【発明の名称】スライド補助機構
(51)【国際特許分類】
   E02D 13/04 20060101AFI20231124BHJP
【FI】
E02D13/04
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022081434
(22)【出願日】2022-05-18
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-09-07
(71)【出願人】
【識別番号】522198276
【氏名又は名称】株式会社エスケー工業
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】デロイトトーマツ弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】塩田 幸蔵
【テーマコード(参考)】
2D050
【Fターム(参考)】
2D050EE10
(57)【要約】
【課題】回転軸の回転に伴ってガイド上を移動物がスライドする移動機構おいて、ガイドに効率的に潤滑材を塗布できるスライド補助機構を提供する。
【解決手段】 本発明のスライド補助機構は支持部材と、潤滑材を供給する供給手段を備える。支持部材はガイドを幅方向に跨いでガイドの表面に接触する接触面を有し、供給手段から供給された潤滑材が流入する溝部を接触面に有している。溝部は接触面の左上部から右下部にわたって又は接触面の右上部から左下部にわたって設けられている。溝部の両端部には潤滑材を受け入れる流入口が設けられている。供給手段は流入口それぞれに潤滑材を供給する流路を有し、流路それぞれについて潤滑材を供給する状態と供給を停止する状態とに切り替えて、流入口それぞれに対する潤滑材の供給の有無を制御する制御手段を有する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸の回転に伴って当該回転軸に並行して延在するガイド上を移動物がスライドして移動する移動機構に用いられるスライド補助機構であって、
前記移動物に固定され、前記ガイド上をスライドして移動する当該移動物を、当該移動物のスライド方向にスライド自在に支持する支持部材と、
前記ガイドと前記支持部材との間に潤滑材を供給する供給手段とを備え、
前記支持部材は、
前記ガイドの延在方向から見た当該ガイドの断面形状に対応した凹形状の面であって、前記ガイドを幅方向に跨いで当該ガイドの表面に接触する接触面を有し、
前記供給手段から供給された前記潤滑材が流入する溝部を前記接触面に有しており、
前記溝部は、前記移動物のスライド方向を上下方向とし、前記ガイドの幅方向を左右方向としたときの、前記接触面の左上部から右下部にわたって又は前記接触面の右上部から左下部にわたって設けられており、
前記溝部の両端部には、当該溝部に流入する前記潤滑材を受け入れる流入口が設けられており、
前記供給手段は、
前記流入口それぞれに接続されて、当該供給手段から当該流入口それぞれに向けて前記潤滑材を供給する流路を有し、
前記流路それぞれについて前記潤滑材を供給する供給状態と、当該潤滑材の供給を停止する停止状態とに切り替えて、前記流入口それぞれに対する当該潤滑材の供給の有無を制御する制御手段とを有する
ことを特徴とするスライド補助機構。
【請求項2】
請求項1に記載のスライド補助機構において、
前記制御手段は、
操作者からの前記潤滑材の供給を指示する操作があった際又は前記回転軸が回転している際に、当該回転軸の回転方向に対応する、当該回転軸の回転に伴って前記ガイドに前記接触面が押し付けられる側を認識し、
当該認識された側に設けられた前記流入口に接続された前記流路を前記供給状態とし、他の前記流路を前記停止状態とする制御を行う
ことを特徴とするスライド補助機構。
【請求項3】
請求項1に記載のスライド補助機構において、
前記支持部材は、
2つの前記溝部を前記接触面に有しており、
前記溝部の一方は、前記移動物のスライド方向を上下方向とし、前記ガイドの幅方向を左右方向としたときの、前記接触面の左上部から右下部にわたって設けられており、
前記溝部の他方は、前記接触面の右上部から左下部にわたって設けられており、
前記2つの溝部それぞれの両端部には、前記供給手段から供給されて当該溝部に流入する前記潤滑材を受け入れる流入口が設けられている
ことを特徴とするスライド補助機構。
【請求項4】
請求項3に記載のスライド補助機構において、
前記制御手段は、
操作者からの前記潤滑材の供給を指示する操作があった際又は前記回転軸が回転している際に、当該回転軸の回転方向に対応する、前記移動物のスライド方向及び当該回転軸の回転に伴って前記ガイドに前記接触面が押し付けられる側を認識し、
当該認識された方向及び側に設けられた前記流入口に接続された前記流路を前記供給状態とし、他の前記流路を前記停止状態とする制御を行う
ことを特徴とするスライド補助機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転軸の回転に伴って当該回転軸に並行して延在するガイド上を移動物がスライドして移動する移動機構に用いられるスライド補助機構に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば杭打機などを用いて地面の掘削作業などを行う場合においては、杭打機に設けられたガイド上を、アースオーガなどの機械が地面の方向にスライドし、そして作業の終了時には地面から離れる方向に移動する。
【0003】
このとき、ガイドとアースオーガとの接触部が擦れあうことによる摩耗を軽減するため、当該接触部にグリースなどの潤滑材を手作業などで塗布することが一般的に行われている。潤滑材の塗布作業は、潤滑材がなくなるたびに繰り返して行う必要があるので、ガイドとアースオーガとの接触部に、効率的に潤滑材を塗布できる機構が求められている。
【0004】
そして杭打機において、ガイドとアースオーガのガイドアームとの摺接面にグリースを供給する機構が知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9-316879号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の機構は、ガイドパイプの外周面に摺接する摺接部と、摺接部の内周側に形成されたX状の溝からなるグリース溜部と、グリース溜部に外部からグリースを供給するための給脂口とから構成されており、ガイドパイプとガイドアームとの摺動面にグリースを塗布することができるとされている。
【0007】
しかしながら発明者らは、回転軸の回転に伴って当該回転軸に並行して延在するガイドパイプ等のガイド上を移動物がスライドして移動する移動機構において、特許文献1のような技術を用いてグリースのような潤滑材を供給しようとした場合、以下の課題があることを発見した。
【0008】
図1はガイドに設置された状態のアースオーガ1を上方から見た模式図である。図1に示すように、アースオーガ1がそのモータによりスクリュー(図示せず)を方向Aに回転させようとすると、その反作用によりアースオーガ1に対して方向Bに回転する力が加わる。その結果、ガイドアーム2とガイド3との接触面において、モータの回転軸の回転に伴ってガイド3に押し付けられて密着する部分4と、ガイドアーム2とガイド3とが離れて隙間5ができてしまう部分と、が発生する。
【0009】
このとき、ガイドアーム2とガイド3とが離れて隙間5ができている部分に潤滑材を供給しても、ガイドアーム2とガイド3とが接触していないため接触面に潤滑材を塗布できない。
【0010】
回転軸の回転に伴ってガイド3に押し付けられて密着する部分4に重点的に潤滑材を供給できることが効率的であるが、特許文献1の機構では、給脂口が摺接部の中央部分に一か所のみ設けられている構成であるので、回転軸の回転に伴ってガイド3に押し付けられて密着する部分4に重点的に潤滑材を供給することができない。
【0011】
結果的に、ガイド3に効率的に潤滑材を塗布できず、ひいてはガイド3とガイドアーム2との接触部が擦れあうことによる摩耗を十分に軽減できない。
【0012】
本発明は、回転軸の回転に伴ってガイド上を移動物がスライドする移動機構おいて、ガイドに効率的に潤滑材を塗布できるスライド補助機構を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明のスライド補助機構は、
回転軸の回転に伴って当該回転軸に並行して延在するガイド上を移動物がスライドして移動する移動機構に用いられるスライド補助機構であって、
前記移動物に固定され、前記ガイド上をスライドして移動する当該移動物を、当該移動物のスライド方向にスライド自在に支持する支持部材と、
前記ガイドと前記支持部材との間に潤滑材を供給する供給手段とを備え、
前記支持部材は、
前記ガイドの延在方向から見た当該ガイドの断面形状に対応した凹形状の面であって、前記ガイドを幅方向に跨いで当該ガイドの表面に接触する接触面を有し、
前記供給手段から供給された前記潤滑材が流入する溝部を前記接触面に有しており、
前記溝部は、前記移動物のスライド方向を上下方向とし、前記ガイドの幅方向を左右方向としたときの、前記接触面の左上部から右下部にわたって又は前記接触面の右上部から左下部にわたって設けられており、
前記溝部の両端部には、当該溝部に流入する前記潤滑材を受け入れる流入口が設けられており、
前記供給手段は、
前記流入口それぞれに接続されて、当該供給手段から当該流入口それぞれに向けて前記潤滑材を供給する流路を有し、
前記流路それぞれについて前記潤滑材を供給する供給状態と、当該潤滑材の供給を停止する停止状態とに切り替えて、前記流入口それぞれに対する当該潤滑材の供給の有無を制御する制御手段とを有する
ことを特徴とする。
【0014】
本発明によれば、移動物に固定されて、ガイド上をスライドして移動する移動物を、当該移動物のスライド方向にスライド自在に支持する支持部材が備えられている。また支持部材の、ガイドの表面に接触する接触面に、潤滑材が流入する溝部が設けられている。
【0015】
そして溝部は、接触面の左上部から右下部にわたって又は右上部から左下部にわたって設けられている。なお上下方向とは移動物のスライド方向であり、左右方向とはガイドの幅方向である(以下同じ。)。
【0016】
また、潤滑材が流入する流入口が溝部の両端部に設けられており、供給手段が有する制御手段により、流入口それぞれに対する潤滑材の供給の有無が制御される。
【0017】
これにより、回転軸の回転に伴って支持部材とガイドとが離れて隙間ができてしまう側への潤滑材の供給を停止し、回転軸の回転に伴ってガイドに押し付けられて密着する側には潤滑材を供給する制御をするように用いることが可能となるので、ガイドに効率的に潤滑材を塗布できる。
【0018】
このように本発明によれば、回転軸の回転に伴ってガイド上を移動物がスライドする移動機構おいて、ガイドに効率的に潤滑材を塗布できる。
【0019】
また本発明のスライド補助機構において、
前記制御手段は、
操作者からの前記潤滑材の供給を指示する操作があった際又は前記回転軸が回転している際に、当該回転軸の回転方向に対応する、当該回転軸の回転に伴って前記ガイドに前記接触面が押し付けられる側を認識し、
当該認識された側に設けられた前記流入口に接続された前記流路を前記供給状態とし、他の前記流路を前記停止状態とする制御を行う
ことが好ましい。
【0020】
本発明によれば、制御手段により回転軸の回転方向に対応する、回転軸の回転に伴ってガイドに接触面が押し付けられる側が認識される。また制御手段により、当該認識された側に設けられた流入口に接続された流路を供給状態とし、他の流路を停止状態とする制御が行われる。
【0021】
このような制御が、操作者からの潤滑材の供給を指示する操作があった際又は回転軸が回転している際に制御部により自動的に行われるので、ガイドに確実かつ効率的に潤滑材を塗布できる。
【0022】
なお、回転軸の回転方向と、それに伴って移動物がスライドする方向との対応関係は、スライド補助機構が取り付けられる移動機構によって異なることが考えられる。すなわち例えば、ある移動機構は左回りで回転軸が回転した際に、移動物が前方又は下方に移動し、他の移動機構は右回りで回転軸が回転した際に、移動物が前方又は下方に移動することが考えられる。このような場合において、溝部の向きの異なる支持部材に交換するなどの手間を生じさせることなく、スライド補助機構を用いることができれば効率的である。
【0023】
そのため、本発明のスライド補助機構において、
前記支持部材は、
2つの前記溝部を前記接触面に有しており、
前記溝部の一方は、前記移動物のスライド方向を上下方向とし、前記ガイドの幅方向を左右方向としたときの、前記接触面の左上部から右下部にわたって設けられており、
前記溝部の他方は、前記接触面の右上部から左下部にわたって設けられており、
前記2つの溝部それぞれの両端部には、前記供給手段から供給されて当該溝部に流入する前記潤滑材を受け入れる流入口が設けられている
ことが好ましい。
【0024】
本構成のスライド補助機構によれば、2つの溝部を接触面に有しており、溝部の一方は接触面の左上部から右下部にわたって設けられており、溝部の他方は接触面の右上部から左下部にわたって設けられている。また、2つの溝部のそれぞれの両端には潤滑材を受け入れる流入口が設けられている。
【0025】
そのため、回転軸の回転方向と、それに伴って移動物がスライドする方向との対応関係が異なる移動機構に、本発明のスライド補助機構を付け替えて用いても、溝部の向きの異なる支持部材に交換するなどの手間を生じさせることなく、回転軸の回転に伴って支持部材とガイドとが離れて隙間ができてしまう側への潤滑材の供給を停止し、回転軸の回転に伴ってガイドに押し付けられて密着する側には潤滑材を供給する制御をするように用いることが可能となる。
【0026】
また本発明のスライド補助機構において、
前記制御手段は、
操作者からの前記潤滑材の供給を指示する操作があった際又は前記回転軸が回転している際に、当該回転軸の回転方向に対応する、前記移動物のスライド方向及び当該回転軸の回転に伴って前記ガイドに前記接触面が押し付けられる側を認識し、
当該認識された方向及び側に設けられた前記流入口に接続された前記流路を前記供給状態とし、他の前記流路を前記停止状態とする制御を行う
ことが好ましい。
【0027】
本発明によれば、制御手段により回転軸の回転方向に対応する、移動物のスライド方向及び回転軸の回転に伴ってガイドに接触面が押し付けられる側が認識される。また制御手段により、当該認識された方向及び側に設けられた流入口に接続された流路を供給状態とし、他の流路を停止状態とする制御が行われる。
【0028】
このような制御が、操作者からの潤滑材の供給を指示する操作があった際又は回転軸が回転している際に制御部により自動的に行われるので、回転軸の回転方向と、それに伴って移動物がスライドする方向との対応関係が異なる移動機構に、本発明のスライド補助機構を付け替えて用いても、ガイドに確実かつ効率的に潤滑材を塗布できる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】従来のスライド補助機構の一例を示す図。
図2】本発明のスライド補助機構の一例を示す図。
図3】本発明のスライド補助機構の一例を示す図。
図4】本発明のスライド補助機構の動作内容の一例を示すフローチャート。
図5】本発明のスライド補助機構の動作内容の一例を示すフローチャート。
図6】本発明のスライド補助機構の変更例を示す図。
図7】本発明のスライド補助機構の変更例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0030】
<スライド補助機構の構成>
まず図2、3を用いて、本発明の第1実施形態のスライド補助機構10の構成について、杭打機に用いられる場合を一例として説明する。図2の上方の図は、スライド補助機構10が搭載された状態のオーガモーターを上方からみた図であり、下方の図は、側方から見た図である。図3は、支持部材110の構造を説明する模式図である。なお同一の構成については、同一の符号を付して説明を省略することがある。
【0031】
本実施形態のスライド補助機構10は、例えばオーガモーターの回転軸30の回転に伴って当該回転軸30に接続されたスクリューが地中を掘り進み、あるいは逆回転時にはスクリューが押し戻されて、それによって当該回転軸30に並行して延在するガイド50上を移動物70であるオーガモーターがスライドして移動する移動機構90に用いられるスライド補助機構であり、支持部材110(110a、110b)と、供給手段130と、を含んで構成される。
【0032】
支持部材110は、例えばボルトなどにより移動物70であるオーガモーターに固定されており、適宜に交換することが可能である。支持部材110は例えば図2の上方の図に示すように、2つの支持部材110a、110bが、ガイド50を外側から挟み込むように対向してオーガモーターに固定されて、ガイド50の上をスライドして移動する移動物70であるオーガモーターを、そのスライド方向D1にスライド自在に支持する。支持部材110の素材は例えばSS材、SM材などの金属であるが、ガイド50の材質等に応じて適宜の素材が用いられてよい。一般的に、ガイド50の素材よりも柔らかい素材が、支持部材110として用いられる。
【0033】
支持部材110は、ガイド50を延在方向から見た場合の、当該ガイド50の断面形状に対応した凹形状の面であって、ガイド50を幅方向D2に跨いで当該ガイド50の表面に接触する接触面111を有している。なお接触面111が支持部材110に固定手段により固定されており、接触面111を適宜に交換できるように構成されていてもよい。
【0034】
また支持部材110は、供給手段130から供給された潤滑材が流入する溝部113aを接触面111に有している。
【0035】
溝部113aは、図3に示すように、移動物70であるオーガモーターのスライド方向D1を上下方向とし、ガイド50の幅方向D2を左右方向としたときの、接触面111の左上部から右下部にわたって設けられている。又は溝部113aは、接触面111の右上部から左下部にわたって設けられる。すなわち溝部113aは、ガイド50の延在方向及び幅方向と交差する斜め方向に延びるように、接触面111上に設けられている。
【0036】
また、溝部113aの斜めの向きは、回転軸30の回転方向と、それに伴って移動物70がスライドする方向及びガイド50に接触面111が押し付けられる側との対応関係によって定まる。
【0037】
すなわち例えば右回りで回転軸30が回転した際に、移動物70が下方に移動するとともに、接触面111の右側がガイド50に押し付けられる場合には、図3に示すように接触面111の左上部から右下部にわたって設けられ、その反対に、左回りで回転軸30が回転した際に、移動物70が下方に移動するとともに、接触面111の左側がガイド50に押し付けられる場合には、接触面111の右上部から左下部にわたって設けられる。
【0038】
また、溝部113aの両端部には、供給手段130から供給されて当該溝部113に流入する潤滑材を受け入れる流入口115(115a、115b)が設けられている。流入口115は例えば、支持部材110の接触面111の側からその反対側の表面まで貫通する穴である。
【0039】
供給手段130は、ガイド50と支持部材との間に潤滑材を供給するように構成されている例えばポンプ機構である。供給手段は例えばオーガモーターに設けられた収納用の空間に配置される。潤滑材としては例えばカルシウム石けんグリース、有機モリブデングリースなどの液状の潤滑材が、使用条件に応じて適宜に選択されて用いられてよい。
【0040】
供給手段130は、流入口115それぞれに接続されて、供給手段130が備える潤滑材のタンク(図示せず)から流入口115それぞれに向けて潤滑材を供給する流路133を有している。
【0041】
流路133は、ポンプ機構による圧力に耐えうる任意の素材で形成された、例えばホース、チューブなどにより構成され、その一端が供給手段130に、他端が流入口115それぞれに接続されている。
【0042】
また供給手段130は、流路133それぞれについて潤滑材を供給する「供給状態」と、潤滑材の供給を停止する「停止状態」とに切り替えて、流入口115それぞれに対する潤滑材の供給の有無を制御する制御手段135とを有している。制御手段135としては、種々の既知の機構が用いられてよいが、例えばポンプ機構と各流路133との間に弁が設けられており、各弁が開いた状態にすることで供給状態とし、各弁が閉じた状態で停止状態としたうえでポンプ機構を作動させる。
【0043】
当該各弁は、例えば通常は停止状態であり、操作者がいずれかの弁に対して操作を行った際に、電源がONとなって当該弁が開き供給状態となったところでポンプ機構が作動し、弁が開いた状態の流路133には潤滑材が供給される。弁が閉じた状態の流路133には潤滑材が供給されない。
【0044】
制御手段135は例えば、杭打機の操作席に備えられた操作スイッチ(図示せず)を介して、当該操作席にいる操作者からの潤滑材の供給を指示する操作に応じて、流路133それぞれについて「供給状態」と「停止状態」と切り替える制御を行う回路である。なお、操作者による操作内容は、有線又は無線通信を介して、操作スイッチから制御手段135伝達される。
【0045】
<動作の概要>
次に、図4、5を用いて、本実施形態のスライド補助機構の動作内容について説明する。以下においては、制御手段135が操作者の操作に応じて、移動物70の回転軸30の回転に伴ってガイド50に接触面111が押し付けられる側を認識する実施形態について説明するが、これに限定されない。
【0046】
すなわち例えば、杭打機の操作席に、それぞれの流路133への潤滑材の供給を開始させまたは停止させるための操作スイッチが備えられており、操作者自身がいずれの流入口115に潤滑材を供給するか又は潤滑材の供給を停止するかを決定して、当該流入口115に対応する操作スイッチを操作することにより、流路133それぞれについて供給状態と停止状態との切り替えを行うように構成されていてもよい。
【0047】
処理を開始するとまず制御手段135は、操作者による、潤滑材の供給操作が行われたか否かが判定される(図4/S10)。
【0048】
当該判定が否定的な場合(図4/S10:No)、制御手段135は制御を行わず、操作者による操作を待つ。一方当該判定が肯定的な場合(図4/S10:Yes)には、制御手段135は流路制御処理を行う(図4/S30)。流路制御処理の流れは後述する。
【0049】
そして制御手段135は、ポンプ機構を作動させて潤滑材の供給を行う(図4/S50)。このとき、流路制御処理において、供給状態にすべきと認識された流路133は供給状態とされ、停止状態にすべきと認識された流路133は停止状態とされているので、供給状態にすべきと認識された流路133にのみ潤滑材が供給され、停止状態にすべきと認識された流路133には潤滑材は供給されない。
【0050】
その後に制御手段135は操作者による供給操作が終了しない間(図4/S70:No)は潤滑材を供給し続ける。一方、操作者による供給操作が終了した場合(図4/S70:Yes)に制御手段135は、潤滑材の供給を停止(図4/S90)して一連の処理を終了する。
【0051】
<流路制御処理>
流路制御処理において制御手段135はまず、回転軸30の回転方向を認識する。制御手段135は例えば、杭打機の操作機構から現在の回転軸30の回転方向の情報を受信することにより回転軸30の回転方向を認識する(図5/S301)。
【0052】
そして制御手段135は例えば、回転軸30の回転方向と、回転軸30の回転に伴ってガイド50に接触面111が押し付けられる側との対応関係を示す対応テーブルを参照して、当該認識した回転軸30の回転方向に対応する、回転軸30の回転に伴ってガイド50に接触面111が押し付けられる側を認識する(図5/S303)。
【0053】
すなわち例えば制御手段135は、回転軸30が左回転していれば、回転軸30の回転に伴ってガイド50に接触面111が押し付けられる側は、向かい合う2つの支持部材の一方110aはオーガモーター側から見た手前側(図2中の左側)であり、支持部材の他方110bはオーガモーター側から見た奥側(図2中の右側)であることを認識する。
【0054】
なお、対応関係を示す対応テーブルは、回転軸30の回転方向と当該回転に伴ってガイド50に接触面111が押し付けられる側との対応関係に応じてあらかじめ設定されて、制御手段135が有する記憶機構などに記憶させておく。
【0055】
続いて制御手段135は、認識された側の情報に基づいて、供給状態とすべき流路と停止状態とすべき流路とを認識する(図5/S305)。例えば制御手段135は認識された側に設けられた流入口が流入口115bであれば、供給状態とすべき流路133は、流入口115bに接続された流路133であると認識し、他方の流入口115aに接続された流路133は停止状態にすべきであると認識する。
【0056】
そして制御手段135は、供給状態にすべきと認識された流路133を供給状態とし、停止状態にすべきと認識された流路133を停止状態として(図5/S307)、流路制御処理の一連の処理を終了する。
【0057】
このようにして供給状態となった流路133から、続く処理において流入口115bに供給される潤滑材は、溝部113aに流れ込み、ガイド50の表面と溝部113aとが形成する空間の中を他端に設けられた流入口115aの方向に向けて流れていく。潤滑材は、当該空間が形成されている区間(すなわちガイド50と接触面111とが接触している区間)及び、ガイド50と接触面111とが接触していないが十分に近接している区間までは少なくとも届けられる。そして支持部材110は下方向に移動しているので、溝部113aの上記区間が通過した、ガイド50の表面に潤滑材が塗布される。
【0058】
<変更実施形態>
次に図6、7を用いて、本発明の第2実施形態のスライド補助機構10の構成について、説明する。図6の上方の図は、スライド補助機構10が搭載された状態のオーガモーターを上方からみた図であり、下方の図は、側方から見た図である。図7は、支持部材110cの構造を説明する模式図である。なお、支持部材111dも支持部材110cと同一の構造を有している。
【0059】
本実施形態においても、支持部材110cに対向するように、支持部材110dが配置されており、これらの支持部材110が、ガイド50を外側から挟み込むように対向してオーガモーターに固定されて、ガイド50の上をスライドして移動する移動物70であるオーガモーターを、そのスライド方向D1にスライド自在に支持する。
【0060】
また支持部材110cは、供給手段130から供給された潤滑材が流入する2つの溝部113(113a、113b)を接触面111に有している。
【0061】
溝部の一方113aは、移動物70であるオーガモーターのスライド方向D1を上下方向とし、ガイド50の幅方向D2を左右方向としたときの、接触面111の左上部から右下部にわたって設けられている。そして、溝部の他方113bは、接触面111の右上部から左下部にわたって設けられている。すなわち2つの溝部113a、113bは、互いに交差し、かつガイド50の延在方向及び幅方向と交差する斜め方向に延びるように、接触面111上に設けられている。
【0062】
また、2つの溝部113a、113bそれぞれの両端部には、供給手段130から供給されて当該溝部113に流入する潤滑材を受け入れる流入口115(115a~115d)が設けられている。
【0063】
<流路制御処理の変更実施形態>
第2実施形態においては、制御手段135は回転軸30の回転方向を認識(図5/S301)した後の工程(図5/S303)において、回転軸30の回転方向と、移動物70であるオーガモーターのスライド方向及び回転軸30の回転に伴ってガイド50に接触面111が押し付けられる側との対応関係を示す対応テーブルを参照して、当該認識した回転軸30の回転方向に対応する、回転軸30の回転に伴ってガイド50に接触面111が押し付けられる側に加えて、移動物70であるオーガモーターのスライド方向を認識する。
【0064】
すなわち例えば制御手段135は、回転軸30が右に回転していれば移動物70であるオーガモーターのスライド方向は、上方向(地面から離れる方向)であると認識し、回転軸30の回転に伴ってガイド50に接触面111が押し付けられる側は、向かい合う2つの支持部材の一方(110c)はオーガモーター側から見た奥側(図6中の右側)であり、支持部材の他方(110d)はオーガモーター側から見た手前側(図6中の左側)であることを認識する。
【0065】
なお、対応関係を示す対応テーブルは、回転軸30の回転方向と、移動物70のスライド方向及び当該回転に伴ってガイド50に接触面111が押し付けられる側との対応関係に応じてあらかじめ設定されて、制御手段135が有する記憶機構などに記憶させておく。
【0066】
続いて制御手段135は、認識された方向及び側の情報に基づいて、供給状態とすべき流路と停止状態とすべき流路とを認識する(図5/S305)。例えば制御手段135は認識された方向及び側に設けられた流入口が流入口115cであれば、供給状態とすべき流路133は、流入口115cに接続された流路133であると認識し、その他の流入口(115a、115b、115d)に接続された流路133は停止状態にすべきであると認識する。
【0067】
そして制御手段135は、供給状態にすべきと認識された流路133を供給状態とし、停止状態にすべきと認識された流路133を停止状態として(図5/S307)、流路制御処理の一連の処理を終了する。
【0068】
以上、本発明のスライド補助機構について説明したが、これに限定されない。発明の目的を逸脱しない範囲で、種々の変更が行われてよい。
【0069】
すなわち例えば、上記においては操作者からの潤滑材の供給を指示する操作があった際に流路の制御処理を行って潤滑材の供給を行う実施形態について説明したが、これに限定されず、制御手段135は、回転軸30が回転している際に自律的に、回転軸30の回転方向に対応する、回転軸30の回転に伴ってガイド50に接触面111が押し付けられる側(又は当該側及び移動物70のスライド方向)を認識して、当該認識された側(又は当該側及び移動物70のスライド方向)に設けられた流入口115に接続された流路133を供給状態とし、他の流路133を停止状態とする制御を行うように構成されていてもよい。
【0070】
この場合、操作者による供給操作を受け付けたか否かを判定するステップ(図4/S10)は例えば、回転軸30が回転しているか否かを判定するステップ、あるいは回転軸30が回転しておりかつ潤滑材の塗布状態が十分でないか否かを判定するステップとなる。
【0071】
また操作者による供給操作が終了したか否かを判定するステップ(図4/S70)は例えば、回転軸30が回転を停止したか否かを判定するステップ、あるいは潤滑材の塗布状態が十分であるか否かを判定するステップとなる。
【0072】
潤滑材の塗布状態が十分であるか否かについては、例えば潤滑材を供給してからの経過時間が、あらかじめ定められた所定の時間(あるいは例えば天候の変化を認識し、雨天を挟んだ場合は当該所定の時間を短く変更するように構成されていてもよい。)を越えたか否か、ガイド50の濡れ具合を検知するセンサーの検知結果、ガイド50と接触面111との擦れる音の大きさ、高さその他の特性を検知する音センサーの検知結果などに基づいて判断するように構成されてよい。
【0073】
また、図2及び図6において、支持部材110は、ガイド50の延在方向に並ぶようにオーガモーターに固定されているが、支持部材110は、ガイド50の延在方向に1つ配置されていればよく、あるいは3つ以上がガイド50の延在方向に並ぶように移動物70であるオーガモーターに固定されていてもよい。また、複数の支持部材110がガイド50の延在方向に並ぶようにオーガモーターに固定されている場合において、そのうち少なくとも1つの支持部材110が本発明のスライド補助機構10として機能すればよい。
【0074】
また、上記においては、杭打機に用いられる場合について説明したが、これに限定されず、回転軸の回転に伴って回転軸に並行して延在するガイド上を移動物がスライドして移動する様々な移動機構に応用可能である。
【0075】
すなわち例えばボールねじ式のアクチュエーターに用いられてもよい。この場合、ねじ軸が回転軸30に該当し、支持部材110は、移動物70であるスライダーなどとガイド50との接触面に配置される。なお支持部材110は、上記の説明のようにガイド50を外側から挟み込んで対向するようにスライダーに固定されるとは限らず、スライダーとガイド50との位置関係に応じて、支持部材110の向きや配置が適宜に決定されて採用されてよい。支持部材110の個数も適宜に決定されてよい。すなわち例えばガイドが1本であれば、支持部材110は1つ以上が配置されればよい。
【符号の説明】
【0076】
10…スライド補助機構、30…回転軸、50…ガイド、70…移動物、90…移動機構、110…支持部材、111…接触面、113…溝部、115…流入口、130…供給手段、133…流路、135…制御手段、D1…スライド方向、D2…ガイドの幅方向。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7