(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023170041
(43)【公開日】2023-12-01
(54)【発明の名称】ガス処理システム
(51)【国際特許分類】
B01D 53/92 20060101AFI20231124BHJP
F25J 1/00 20060101ALI20231124BHJP
F25J 3/08 20060101ALI20231124BHJP
B01D 53/22 20060101ALI20231124BHJP
C01B 32/50 20170101ALI20231124BHJP
【FI】
B01D53/92 240
F25J1/00 D ZAB
F25J3/08
B01D53/22
B01D53/92 300
C01B32/50
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022081487
(22)【出願日】2022-05-18
(71)【出願人】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004185
【氏名又は名称】インフォート弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100121083
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 宏義
(74)【代理人】
【識別番号】100138391
【弁理士】
【氏名又は名称】天田 昌行
(74)【代理人】
【識別番号】100132067
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 喜雅
(74)【代理人】
【識別番号】100120444
【弁理士】
【氏名又は名称】北川 雅章
(72)【発明者】
【氏名】當山 広幸
(72)【発明者】
【氏名】安田 圭吾
(72)【発明者】
【氏名】福村 琢
(72)【発明者】
【氏名】高橋 邦幸
【テーマコード(参考)】
4D002
4D006
4D047
4G146
【Fターム(参考)】
4D002AA09
4D002AC04
4D002AC07
4D002AC10
4D002BA02
4D002BA13
4D002BA14
4D002BA16
4D002EA01
4D002EA02
4D002EA05
4D002FA01
4D002GA02
4D002GA04
4D002GB02
4D002GB04
4D002GB20
4D006GA41
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4D006JA52Z
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4D006PC80
4D047AA07
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4D047CA04
4D047CA06
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4D047EA00
4G146JA02
4G146JB09
4G146JC11
4G146JD05
4G146JD10
(57)【要約】
【課題】圧縮機の動力削減を図ること。
【解決手段】ガス処理システム(1)は、エンジン(10)から排出される排ガスを圧縮する第1圧縮機(30)と、第1圧縮機で圧縮された排ガスを、CO
2を含む透過成分と、透過成分よりもCO
2濃度の低い非透過成分とに分離する分離膜(41a、42a)を有する分離装置(40)と、透過成分を圧縮して圧縮済み透過成分とする第2圧縮機(50)と、圧縮済み透過成分を冷却して冷却済み透過成分とする冷却器(65)と、冷却済み透過成分を回収する回収装置(80)とを備えている。更に、ガス処理システム(1)は、第2圧縮機に導入前の透過成分におけるCO
2濃度を測定するCO
2濃度計(48)と、CO
2濃度計にて測定されたCO
2濃度が出力される制御部(90)とを更に備えている。制御部は、CO
2濃度に基づき、第2圧縮機の駆動を制御する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃焼器から排出される排ガスを圧縮する第1圧縮機と、
前記第1圧縮機で圧縮された前記排ガスを、二酸化炭素を含む透過成分と、前記透過成分よりも二酸化炭素濃度の低い非透過成分とに分離する分離膜を有する分離装置と、
前記透過成分を圧縮して圧縮済み透過成分とする第2圧縮機と、
前記圧縮済み透過成分を冷却して冷却済み透過成分とする冷却器と、
前記冷却済み透過成分を回収する回収装置とを備えた排ガス処理システムであって、
前記第2圧縮機に導入前の前記透過成分における二酸化炭素濃度を測定する濃度測定部と、
前記濃度測定部にて測定された前記二酸化炭素濃度が出力される制御部とを更に含み、
前記制御部は、前記二酸化炭素濃度に基づき、前記第1圧縮機または前記第2圧縮機の駆動を制御することを特徴とするガス処理システム。
【請求項2】
前記圧縮済み透過成分の圧力を測定する圧力測定部を更に備え、
前記制御部は、前記圧力測定部にて測定及び出力された圧力値と前記二酸化炭素濃度に基づき、前記第2圧縮機の駆動を制御することを特徴とする請求項1に記載のガス処理システム。
【請求項3】
前記冷却器は、前記圧縮済み透過成分を冷媒によって冷却して前記圧縮済み透過成分に含まれる二酸化炭素を液化する液化器を備えていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のガス処理システム。
【請求項4】
前記冷却器は、前記圧縮済み透過成分と海水とを熱交換する熱交換器を備えていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のガス処理システム。
【請求項5】
前記分離装置で分離された前記非透過成分を膨張して膨張済み非透過成分とする膨張機を更に備え、
前記冷却器は、前記膨張済み非透過成分を冷熱源として、前記圧縮済み透過成分を冷却することを特徴とする請求項1または請求項2に記載のガス処理システム。
【請求項6】
前記制御部は、前記第1圧縮機または前記第2圧縮機の駆動を制御して前記圧縮済み透過成分の圧力を調整することで、前記冷却済み透過成分に含まれる二酸化炭素を液化しつつ、前記冷却済み透過成分に含まれる酸素及び窒素を気体に維持することを特徴とする請求項1または請求項2に記載のガス処理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排ガスの二酸化炭素を回収するガス処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
国際規制による船舶省エネ設計規制(EEDI:Energy Efficiency Design Index)では、新造船において二酸化炭素(CO2)の削減が求められている。将来の二酸化炭素排出量ゼロとする社会課題を達成するため、例えば、船舶エンジンにおける排気ガス中の二酸化炭素を分離回収する必要がある。
【0003】
排ガスから二酸化炭素を分離回収する方法は、種々の方式が採用されているが、ランニングコストの観点では膜分離方式(特許文献1参照)が優れている。膜分離方式は、排ガスが供給される膜の入口側と、分離された二酸化炭素の出口側とが膜によって隔てられている。
【0004】
膜分離方式は、膜の入口側と出口側との分圧差が二酸化炭素の分離の駆動力となり、分圧差を得るために膜の前段で圧縮機により排ガスを高圧にしている。膜の非透過側にて窒素や酸素などを主成分とするガスが高圧の状態で得られ、二酸化炭素を取り除いたガスとして排気される。また、膜の透過側にて低圧且つ高濃度なガス状態の二酸化炭素が得られる。得られた二酸化炭素は、例えば、特許文献2のように、圧縮機により高圧にしてから液化器で冷却して凝縮し、液体としてタンク等に二酸化炭素を貯留して分離回収する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2012-236181号公報
【特許文献2】特表平8-501142号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
膜分離後の二酸化炭素ガスの濃度は、排ガス発生源の負荷状況等によって常時変化する。かかる変化に対応するため、圧縮機にて二酸化炭素の液化に必要な圧力に対してマージンを設けた圧力で二酸化炭素ガスを圧縮する。例えば、膜分離後の二酸化炭素ガスの濃度が所定範囲で変化する場合、該範囲にて濃度が最も低くなる条件に合わせてマージンが設定される。よって、二酸化炭素ガスの濃度が前記範囲内にて高くなる程、前記マージン分を加えて必要以上に圧縮機で加圧した状態になる。このため、圧縮機の動力が大きくなり、ランニングコストが高くなる、という問題がある。
【0007】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、圧縮機の動力削減を図ることができるガス処理システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のガス処理システムは、燃焼器から排出される排ガスを圧縮する第1圧縮機と、前記第1圧縮機で圧縮された前記排ガスを、二酸化炭素を含む透過成分と、前記透過成分よりも二酸化炭素濃度の低い非透過成分とに分離する分離膜を有する分離装置と、前記透過成分を圧縮して圧縮済み透過成分とする第2圧縮機と、前記圧縮済み透過成分を冷却して冷却済み透過成分とする冷却器と、前記冷却済み透過成分を回収する回収装置とを備えた排ガス処理システムであって、前記第2圧縮機に導入前の前記透過成分における二酸化炭素濃度を測定する濃度測定部と、前記濃度測定部にて測定された前記二酸化炭素濃度が出力される制御部とを更に含み、前記制御部は、前記二酸化炭素濃度に基づき、前記第1圧縮機または前記第2圧縮機の駆動を制御することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、第2圧縮機に導入される前の分離装置における透過成分の二酸化炭素濃度を測定し、かかる二酸化炭素濃度に基づき、第1圧縮機や第2圧縮機の駆動を制御している。これにより、二酸化炭素濃度が変化しても、該変化に応じて第1圧縮機や第2圧縮機の圧力を適度に保つことができ、圧縮機の動力が無駄に大きくなることを抑制して動力の削減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】第1の実施の形態に係るガス処理システムの一例を示す概略構成図である。
【
図2】第1の実施の形態に係る前処理部の機能ブロック図である。
【
図3】圧縮済み透過成分のCO
2分圧と収率との関係を表すグラフである。
【
図4】透過成分のCO
2濃度と圧縮済み透過成分の圧力の目標値との関係を表すグラフである。
【
図5】第2圧縮機の制御を説明するためのフロー図である。
【
図6】圧縮済み透過成分の圧力の変動を示すグラフである。
【
図7】第2の実施の形態に係るガス処理システムの一部を示す概略構成図である。
【
図8】第3の実施の形態に係るガス処理システムの一部を示す概略構成図である。
【
図9】第4の実施の形態に係るガス処理システムの一部を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[第1の実施の形態]
以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照して詳細に説明する。
図1は、第1の実施の形態に係るガス処理システムの一例を示す概略構成図である。なお、本実施の形態に係るガス処理システムとしては、燃焼器として船舶に使用されるエンジンから排出される排ガスのCO
2(二酸化炭素)を回収するシステムを考える。ただし、これに限られず、本実施の形態に係るガス処理システムは、火力発電プラントや化学工業プラント、廃棄物焼却施設における排ガスの処理に適用可能である。
【0012】
図1は、第1の実施の形態に係るガス処理システムの一例を示す概略構成図である。
図1に示すように、ガス処理システム1は、排ガスの発生源となるエンジン(燃焼器)10と、前処理部20と、第1圧縮機30と、分離装置40と、第2圧縮機50と、液化器60と、回収装置80、制御部90とを主に備えている。
【0013】
エンジン10は、主機エンジンであってよく、補機エンジンであってもよい。主機エンジンは、主として船舶が航行中に稼働される。補機エンジンは、主として船舶が停泊中に稼働される。エンジン10には、燃料タンク(不図示)に貯留される燃料が供給される。なお、本実施の形態のガス処理システム1を各種プラント等に適用する場合には、エンジン10に代えてボイラを用いてもよい。
【0014】
前処理部20は、第1圧縮機30に流入する排ガスの前処理を実施する。前処理部20は、排ガスに含まれるCO2以外の不純物の少なくとも一部を処理する。不純物には、硫黄酸化物(SOx)、窒素酸化物(NOx)または粒子状物質(PM(Particulate matter))が含まれてよい。
【0015】
図2は、前処理部の構成の一例を示す図である。前処理部20は、窒素酸化物処理装置22、除塵装置23、硫黄酸化物処理装置24、及びミスト除去装置25を備えている。なお、前処理部20は、上記各装置22~25の少なくとも1つを有する構成に変更してもよい。
【0016】
窒素酸化物処理装置22は、エンジン10から供給される排ガスに含まれる窒素酸化物(NOx)を処理する。窒素酸化物(NOx)を処理するとは、窒素酸化物(NOx)を除去することを指してよい。窒素酸化物処理装置12は、脱硝装置であってよい。該脱硝装置は、例えば選択式触媒還元脱硝(SCR(Selective Catalytic Reduction))装置である。なお、前処理部20が窒素酸化物処理装置22を有することに代えて、エンジン10が排気再循環(EGR(Exhaust Gas Recirculation))の機能を有していてもよい。
【0017】
除塵装置23は、窒素酸化物処理装置22を経た後の排ガスに含まれる粒子状物質(PM)を除去する。除塵装置23は、電気集塵機(ESP(Electrostatic Precipitator))、ディーゼル・パーティキュレート・フィルタ(DPF(Diesel Paticulate Filter))または活性炭フィルタであってよい。
【0018】
硫黄酸化物処理装置24は、除塵装置23を経た後の排ガスに含まれる硫黄酸化物(SOx)を処理する。硫黄酸化物(SOx)を処理するとは、硫黄酸化物(SOx)を除去することを指してよい。ガス処理システム1が船舶に搭載される場合、硫黄酸化物処理装置24は、該船舶に搭載される湿式のスクラバであってよい。
【0019】
ミスト除去装置25は、硫黄酸化物処理装置24を経た後の排ガスに含まれる水分を除去する。ミスト除去装置25は、排ガスに含まれている水分をデミスタによって捕集分離除去する噴霧分離器であってよい。
【0020】
図1に戻り、前処理部20と第1圧縮機30とは、前処理部20にて不純物が除去された排ガスが流れるライン21で接続される。第1圧縮機30は、エンジン10から排出されて前処理部20を経た排ガスを圧縮し、分離装置40での受入圧力にまで排ガスを昇圧することができる性能を有する。第1圧縮機30としては、所定の駆動源となるモータによって駆動される羽根車やロータ(何れも不図示)を備えた構成を例示できる。
【0021】
第1圧縮機30と分離装置40とは、第1圧縮機30にて昇圧された排ガスが流れるライン31で接続される。かかるライン31には、第1海水冷却器(第1熱交換器)33が設けられる。
【0022】
第1海水冷却器33は、第1圧縮機30にて昇圧された排ガスと海水との熱交換を行う熱交換器によって構成される。第1海水冷却器33には海水ポンプ(不図示)によって海から汲み上げられた海水が導入され、第1海水冷却器33にて熱交換を終えた海水は海へと戻される。第1海水冷却器33に流入する排ガスは第1圧縮機30の昇圧によって過熱されているが、第1海水冷却器33を流れることで冷却される。
【0023】
分離装置40は、第1分離部41及び第2分離部42を含んで構成される。分離装置40は、第1圧縮機30で昇圧されて第1海水冷却器33で冷却された排ガスを透過成分と非透過成分とに分離する。透過成分は、CO2を含む。非透過成分のCO2濃度は、透過成分のCO2濃度よりも低くなる。
【0024】
第1分離部41は、分離膜41aを用い、分離装置40に導入される排ガスを第1透過成分と第1非透過成分とに分離する。具体的には、分離膜41aで透過したガスは第1透過成分として、第1分離部41と第2分離部42とを接続するライン43に送出される。また、分離膜41aで透過しなかったガスは第1非透過成分として、ライン44を介して大気中に排出される。
【0025】
第1透過成分は、CO2を含む。第1非透過成分のCO2濃度は、第1透過成分のCO2濃度よりも低くなる。
【0026】
第2分離部42は、分離膜42aを用い、第1分離部41から送出される第1透過成分を第2透過成分と第2非透過成分とに分離する。具体的には、分離膜42aで透過したガスは第2透過成分として、第2分離部42と第2圧縮機50とを接続するライン45に送出される。また、分離膜42aで透過しなかったガスは第2非透過成分として、ライン46を介して大気中に排出される。
【0027】
第2透過成分のCO2濃度は、第1透過成分のCO2濃度よりも高くなる。第2非透過成分のCO2濃度は、第2透過成分のCO2濃度よりも低くなる。
【0028】
分離装置40全体としての透過成分は、前記第2透過成分であり、また、分離装置40全体としての非透過成分は、第1非透過成分及び第2非透過成分の両方となる。
【0029】
第1分離部41の分離膜41aは有機材料または無機材料により構成することが例示できる。分離膜41aとしては、高分子や樹脂からなる中空糸状の多孔質材料を用い、無機材料の分離膜としては、酸化シリコン(SiO2)またはアルミノ珪酸塩(所謂ゼオライト)からなる中空糸状の材料を用いることが例示できる。また、第2分離部42の分離膜42aは有機材料により構成することが例示できる。分離膜42aとしては、高分子や樹脂からなる中空糸状の多孔質材料を用いることが例示でき、分離膜41aの有機材料と同じ材料であってよく、異なる材料であってもよい。
【0030】
分離装置40で分離された非透過成分は、排ガスからCO2が除去され、酸素及び窒素を主とするガスとなる。
【0031】
第2分離部42と第2圧縮機50とを接続するライン45にはCO2濃度計(濃度測定部)48が設けられる。CO2濃度計48は、例えば、レーザ式ガス分析計により構成される。CO2濃度計48は、分離装置40で分離された直後のガス状態となる透過成分のCO2濃度の変動を連続して測定し、制御部90に出力する。
【0032】
第2圧縮機50は、ライン45を通じて流入するCO2濃度が高い透過成分を吸引及び圧縮し、透過成分に含まれるCO2を液化に必要な圧力まで昇圧することが可能な性能を有する。第2圧縮機50としては、所定の駆動源となるモータ50aによって駆動される羽根車やロータ(何れも不図示)を備えた構成を例示できる。モータ50aは制御部90によってインバータ制御される。第2圧縮機50は、透過成分を圧縮した圧縮済み透過成分を液化器60に送出する。
【0033】
第2圧縮機50と液化器60とは、第2圧縮機50から圧縮済み透過成分が流れるライン51で接続される。かかるライン51には、圧力計(圧力測定部)52と第2海水冷却器(第2熱交換器、熱交換器)53とが設けられる。圧力計52は、第2圧縮機50で圧縮された直後のガス状態となる圧縮済み透過成分の圧力の変動を連続して測定し、制御部90に出力する。
【0034】
第2海水冷却器53は、第2圧縮機50による圧縮済み透過成分と海水との熱交換を行う熱交換器によって構成される。第2海水冷却器53においても、第1海水冷却器33と同様に海水ポンプ(不図示)によって海から汲み上げられた海水が導入され、第2海水冷却器53にて熱交換を終えた海水は海へと戻される。第2海水冷却器53に海水を導入する海水ポンプは、第1海水冷却器33に海水を導入する海水ポンプと同じでも別でもよい。また、第2海水冷却器53及び第1海水冷却器33の何れか一方に導入して排出された海水を、何れか他方に導入してから海へ戻すようにしてもよい。第2海水冷却器53に流入する圧縮済み透過成分は第2圧縮機50の昇圧によって過熱されているが、第2海水冷却器53を流れることで海水温度付近まで冷却される。
【0035】
液化器60は、ライン51を通じて第2海水冷却器53で冷却された後に導入される膨張済み透過成分と、冷凍機61から供給される冷媒との熱交換を行う熱交換器によって構成される。冷凍機61は、ターボ冷凍機により構成することが例示できる。なお、冷凍機61で生じる温熱は、エンジン10の燃料の加温や、暖房、その他熱源として有効利用できる。ここで、本実施の形態では、液化器60及び冷凍機61と、第2海水冷却器53とによって冷却器65が構成される。
【0036】
冷却器65は、ライン51を流れる圧縮済み透過成分を冷却し、この冷却によって、少なくとも圧縮済み透過成分に含まれるCO2が凝縮して液化された冷却済み透過成分とする。好ましくは、液化器60後段のライン62を流れる冷却済み透過成分は、CO2が液化し、酸素及び窒素が気体に維持される。
【0037】
液化器60と回収装置80とは、液化器60にて冷却された冷却済み透過成分が流れるライン62で接続される。回収装置80は、ライン62から送出された冷却済み透過成分をオフガスと液化CO2とに分離する気液分離器により構成される。回収装置80にて分離したオフガスは、ライン83を介して大気中に排出される。回収装置80にて分離した液化CO2は、ライン84を介して例えばタンク(不図示)に送出される。
【0038】
制御部90は、第2圧縮機50のモータ50aに接続され、第2圧縮機50の駆動を制御する機能等を有する。制御部90は、例えば、第2圧縮機50のモータ50aの回転数を制御するインバータを有している。制御部90には、CO2濃度計48や圧力計52の測定結果が出力される。
【0039】
制御部90は、CO2濃度計48や圧力計52の測定結果に基づき、第2圧縮機50(モータ50a)の駆動状態を制御する。更に述べると、制御部90は、液化器60で冷却後の透過成分に含まれるCO2を液化でき、且つ、第2圧縮機50での圧縮圧力が目標値に近付くよう、第2圧縮機50(モータ50a)の駆動状態を制御する。制御部90の具体的制御については後述する。
【0040】
次いで、第1の実施の形態のガス処理システム1における処理の流れを説明する。この説明では、
図1にて図示した検知位置P1~P5での温度、圧力(全圧またはCO
2分圧)、CO
2濃度の各条件のシミュレーション結果を用いる。かかるシミュレーション結果が下記表1に示される。なお、表1に示した各条件の数値は、一例に過ぎないものであり、エンジン10の運転負荷や海水温度、ガス処理システム1の各構成の運転条件等によって適宜変更される。
【0041】
【0042】
ガス処理システム1にて、エンジン10から排出されて前処理部20で処理された後のライン21(検知位置P1)での排ガスは、概ね常温大気圧(温度40℃、圧力(全圧)0.15Mpa)とされる。また、検知位置P1での排ガスのCO2濃度が20%とされる。ライン21を経た排ガスは、第1圧縮機30での圧縮によって昇圧され、且つ、過熱される。第1圧縮機30での圧縮後、ライン31を流れる排ガスは第1海水冷却器33にて海水によって冷却される。
【0043】
ライン31を経た排ガスは、昇圧された状態で分離装置40にて2段階で分離される。具体的には、排ガスのCO2が第1分離部41で粗分離され、第2分離部42でCO2濃度が上昇される。第1分離部41での粗分離後にライン43(検知位置P2)を流れる第1透過成分は、検知位置P1に対し温度が概ね維持されつつ所定量昇圧した状態とされる(温度40℃、圧力(全圧)0.5Mpa)。第1分離部41での膜分離によって、検知位置P2での第1透過成分のCO2濃度は検知位置P1に比べて上昇して60%とされる。
【0044】
分離装置40の第2分離部42での分離完了後にライン45(検知位置P3)を流れる透過成分は、検知位置P2に対し温度が概ね維持されつつ所定量減圧した状態とされる(温度40℃、圧力(全圧)0.15Mpa)。また、ライン45(検知位置P3)では、CO2濃度計48によって透過成分のCO2濃度が測定され、第2分離部42での膜分離によって、検知位置P3での透過成分のCO2濃度は検知位置P2に比べて上昇して80%とされる。また、窒素濃度が15%、酸素濃度が5%とされる。
【0045】
ライン45を経た透過成分は、第2圧縮機50での圧縮によって昇圧され、且つ、過熱される。第2圧縮機50を経た圧縮済み透過成分は、ライン51にて圧力計52によって圧力が測定される。ここで、第2圧縮機50の圧縮にあっては、モータ50aの駆動(回転数)が制御部90によって制御される。第2圧縮機50を経た圧縮済み透過成分の圧力は、制御部90の後述する制御によって変動する。ここでは、例として、第2圧縮機50を経た圧縮済み透過成分の圧力が4.0MPaであり、CO2分圧が3.2MPaとなる制御を行うこととする。
【0046】
第2圧縮機50を経た圧縮済み透過成分は、第2海水冷却器53にて海水によって冷却される。この冷却によって、第2海水冷却器53後段でのライン51(検知位置P4)を流れる圧縮済み透過成分は、検知位置P3に対し、CO2分圧及びCO2濃度が概ね維持されつつ温度低下される(温度20℃、CO2分圧3.2Mpa、CO2濃度80%)。
【0047】
ライン51を経た圧縮済み透過成分は、液化器60によって更に冷却される。かかる冷却によって、圧縮済み透過成分に含まれるCO2が凝縮して液化した状態となり、酸素及び窒素は気体状態が維持された冷却済み透過成分となる。液化器60の冷熱源には、冷凍機61からの冷媒が循環され、冷却済み透過成分の温度が-20℃に調整される。よって、ライン62(検知位置P5)を流れる冷却済み透過成分は、検知位置P5に対しCO2分圧及びCO2濃度が概ね維持されつつ温度低下される(温度-20℃、CO2分圧3.2Mpa、CO2濃度80%)。
【0048】
液化器60にて冷却された冷却済み透過成分は、回収装置80にてオフガスと液化CO2を含む回収液とに分離され、分離された回収液はライン84を通じて回収される。かかる回収液のCO2濃度は、95%とされる。
【0049】
ここで、上記処理の流れの説明にて、第2圧縮機50による圧縮済み透過成分のCO
2分圧を3.2MPaに制御した場合を例としたが、かかる圧力値は
図3のグラフによって求めることができる。
図3は、圧縮済み透過成分のCO
2分圧と収率との関係を表すグラフである。
【0050】
図3にて、丸形状でプロットしたグラフが第1の実施の形態における圧縮済み透過成分のCO
2分圧と収率との関係を示している。このグラフは、CO
2濃度が80%となるガス状態の圧縮済み透過成分を、冷却器65にて-20℃に冷却する条件にて、圧縮済み透過成分のCO
2分圧に対するCO
2の収率のシミュレーション結果を示している。
図3のグラフにて、ガス処理システム1におけるCO
2の収率の最小値を70%とした場合、収率70%の圧縮済み透過成分のCO
2分圧(
図3中(1)参照)が約3.2MPaとなる。よって、上述した処理の流れの説明における各条件にて、収率を70%以上得るには、第2圧縮機50による圧縮済み透過成分のCO
2分圧を3.2MPa以上に制御することが求められる。
【0051】
図4は、透過成分のCO
2濃度と圧縮済み透過成分の圧力の目標値との関係を表すグラフである。
図4のグラフは、制御部90での第2圧縮機50の制御に利用される。本実施の形態のガス処理システム1にて、分離装置40による透過成分のCO
2濃度は、80~90%となる。
図4にて横軸となるCO
2濃度80~90%の範囲にて、縦軸の圧力(全圧)の目標値は約3~4MPaの範囲とされる。このように、
図4のグラフから、分離装置40により分離された透過成分のCO
2濃度となるCO
2濃度計48の測定結果に基づき、第2圧縮機50による圧縮済み透過成分の圧力(全圧)の目標値を求めることができる。
【0052】
続いて、制御部90による第2圧縮機50の制御について、
図5のフロー図を用いて説明する。
図5は、第2圧縮機の制御を説明するためのフロー図である。
【0053】
第2圧縮機50の制御にあたり、第2圧縮機50の前段となり分離装置40により膜分離された後の透過成分について、CO2濃度計48によりCO2濃度Cinが測定される(ステップS01)。CO2濃度計48の測定結果となるCO2濃度Cinは制御部90に出力される。
【0054】
次いで、制御部90にて、CO
2濃度計48の測定結果となるCO
2濃度C
inに応じて、
図4のグラフを用いて第2圧縮機50による圧縮済み透過成分の圧力(全圧)の目標値SVが算出される(ステップS02)。
【0055】
ステップS01、S02と同時または前後して、第2圧縮機50の後段となり第2海水冷却器53で冷却される前の圧縮済み透過成分について、圧力計52により圧力の現在値PVが測定される(ステップS03)。圧力計52の測定結果となる圧力の現在値PVは制御部90に出力される。
【0056】
ステップS03で測定された圧力の現在値PVと、ステップS02で算出された圧力の目標値SVとに基づき、制御部90は、PID制御によって第2圧縮機50のモータ50aの回転数となる操作量MVを算出する(ステップS04)。PID制御とは、PV(現在値)がSV(目標値)に一致するようにMV(操作量)を決定する制御方式のことである。
【0057】
そして、制御部90は、算出した操作量MVに応じ、第2圧縮機50におけるモータ50aの回転数をインバータ制御する(ステップS05)。これにより、第2圧縮機50での圧縮後の圧力となる現在値PVを圧力計52により測定し、第2圧縮機50を経た圧縮済み透過成分の圧力が目標値SVになるようにフィードバック制御が行われる。
【0058】
図5に示すステップS01~S05の制御は、時間Δt毎に繰り返し行われる。よって、時間Δt毎に、第2圧縮機50のモータ50aの回転数が補正制御され、第2圧縮機50を経た圧縮済み透過成分の圧力が目標値SVになるよう維持される。より具体的には、
図6のグラフに示すように圧縮済み透過成分の圧力が維持される。
図6は、圧縮済み透過成分の圧力の変動を示すグラフである。
【0059】
図6に示すグラフは、横軸が時間t、縦軸が第2圧縮機50による圧縮済み透過成分の圧力Pとされる。
図6にて二点鎖線Pnで示すように、冷却器65での冷却によって冷却済み透過成分に含まれるCO
2の液化に必要な圧力(以下、「必要な圧力」と省略する場合がある)が変動すると仮定する。該仮定は、分離装置40で分離された透過成分のCO
2濃度が80~90%の範囲で変動する場合に対応する。更に、該仮定にて、
図4のグラフより、CO
2濃度が90%のときに必要な圧力を3MPa、CO
2濃度80%のときに必要な圧力を4MPaが求められる。よって、該仮定にて、必要な圧力が3~4MPaの範囲で変動される。
【0060】
従来にあっては、冷却器での冷却によって液化したCO
2の収率を確保すべく、
図6にて破線Pcで示すように圧縮済み透過成分の圧力を一定としていた。より具体的には、従来にあっては、上記のように仮定した条件において、必要な圧力の最大値となる4MPaに所定の安全率として例えば1.1を乗じ、必要な圧力を4.4MPaと一定として圧縮機を駆動していた。よって、CO
2濃度90%のときに4.4-3.0=1.4MPaの最大マージンMcを設けて運転していた。
【0061】
この点、第1の実施の形態では、上記の第2圧縮機50の制御によって、
図6にて実線Paで示すように圧縮済み透過成分の圧力を増減させることができる。より具体的には、
図6にて二点鎖線Pnで示す必要な圧力の変動に応じ、実線Paで示す圧縮済み透過成分の圧力も変動可能となり、マージンMaを概ね一定(例えば0.2MPa)に維持することができる。
【0062】
このように、第1の実施の形態によれば、
図6のマージンMaを概ね一定に維持できるので、第2圧縮機50の動力が無駄に大きくなることを抑制でき、第2圧縮機50の動力の削減を図ることが可能となる。これにより、第2圧縮機50の動力を低減し、ランニングコストを抑えることができる。
【0063】
また、第1海水冷却器33及び第2海水冷却器53にて海水を冷媒として熱交換を行うので、冷却設備の小型化、冷却動力の削減を図ることができる。更に、第1海水冷却器33の冷却によって、分離装置40に高圧の排ガスを供給可能として透過成分のCO2濃度を高めてCO2の分離性能を高めることができる。
【0064】
続いて、本発明の前記以外の実施の形態について説明する。なお、以下の説明において、説明する実施の形態より前に記載された実施の形態と同一若しくは同等の構成部分については同一符号を用いる場合があり、説明を省略若しくは簡略にする場合がある。
【0065】
[第2の実施の形態]
次に、本発明の第2の実施の形態について
図7を参照して説明する。
図7は、第2の実施の形態に係るガス処理システムの一部を示す概略構成図である。
図7に示すように、第2の実施の形態では、第1の実施の形態に対し、液化器60及び冷凍機61を省略した構成としている。よって、第2の実施の形態の冷却器65は第2海水冷却器53により構成される。
【0066】
第2の実施の形態において、ライン51の下流側が回収装置80に接続される。第2圧縮機50で昇圧された圧縮済み透過成分は、第2海水冷却器53により冷却される。第2の実施の形態では、ライン51を流れる圧縮済み透過成分を第2海水冷却器53が冷却し、この冷却によって、少なくとも圧縮済み透過成分に含まれるCO2が凝縮して液化された冷却済み透過成分とする。
【0067】
第2の実施の形態において、第2圧縮機50にて調整する圧縮済み透過成分の圧力値は、
図3のグラフによって求めることができる。
図3にて、三角形状でプロットしたグラフが第2の実施の形態における圧縮済み透過成分のCO
2分圧と収率との関係を示している。このグラフにて、ガス処理システム1におけるCO
2の収率の最小値を70%とした場合、収率70%の圧縮済み透過成分のCO
2分圧(
図3中(2)参照)が約7.8MPaとなる。よって、第2の実施の形態にて収率を70%以上得るには、第2圧縮機50による圧縮済み透過成分のCO
2分圧が7.8MPa以上に調整される。
【0068】
第2の実施の形態にて検知位置P1~P3での温度、圧力、CO2濃度の各条件を第1の実施の形態の検知位置P1~P3での各条件と同一としてシミュレーションを行った。かかるシミュレーションにあっては、第2の実施の形態の検知位置P4にて、冷却済み透過成分の温度を10℃、CO2分圧を7.8MPaに制御することで、CO2濃度を80%にすることができた。また、かかる検知位置P4の各条件を制御することで、回収装置80により分離された回収液のCO2濃度が84%となった。
【0069】
よって、第2の実施の形態の方が第1の実施の形態に比べて回収液のCO2濃度が低下するが、液化器60及び冷凍機61を省略できる分、機器設置スペースを小さくすることができる。
【0070】
[第3の実施の形態]
次に、本発明の第3の実施の形態について
図8を参照して説明する。
図8は、第3の実施の形態に係るガス処理システムの一部を示す概略構成図である。
図8に示すように、第3の実施の形態では、第1の実施の形態の冷凍機61に代え、膨張機70を有する構成としている。
【0071】
第3の実施の形態では、第1分離部41の分離膜41aで透過しなかったガスは第1非透過成分として、第1分離部41と膨張機70とを接続するライン44に送出される。また、第2分離部42の分離膜42aで透過しなかったガスは第2非透過成分として、ライン46に送出され、該ライン46は膨張機70に接続されるライン44に合流する。分離装置40全体としての非透過成分は、ライン44、46によって合流する第1非透過成分及び第2非透過成分の両方となる。
【0072】
分離装置40の前段の第1圧縮機30にて排ガスが昇圧されるので、排ガスから分離された非透過成分は高圧な状態が維持されたままライン44、46を流れて膨張機70に導入される。
【0073】
膨張機70は、分離装置40で分離された非透過成分を膨張して膨張済み非透過成分とする。膨張機70は、高圧なガス状態の非透過成分を膨張させ、例えば、タービン翼を回転させる構成等により回転エネルギーが得られる性能を有する。膨張機70と液化器60とは、膨張済み非透過成分が流れるライン72で接続される。膨張済み非透過成分は、膨張に伴い温度が常温より低下する。ライン72によって送出される膨張済み非透過成分は、液化器60の冷熱源とされる。
【0074】
第3の実施の形態にて、液化器60は、ライン51を通じて第2海水冷却器53で冷却された後に導入される膨張済み透過成分と、ライン72を通じて膨張機70から送出される膨張済み非透過成分との熱交換を行う。液化器60にて熱交換を行った膨張済み非透過成分は、ライン63を介して大気中に排出される。
【0075】
第3の実施の形態において、第2圧縮機50にて調整する圧縮済み透過成分の圧力値は、
図3のグラフによって求めることができる。
図3にて、方形状でプロットしたグラフが第3の実施の形態における圧縮済み透過成分のCO
2分圧と収率との関係を示している。このグラフにて、ガス処理システム1におけるCO
2の収率の最小値を70%とした場合、収率70%の圧縮済み透過成分のCO
2分圧(
図3中(3)参照)が約5.6MPaとなる。よって、第3の実施の形態にて収率を70%以上得るには、第2圧縮機50による圧縮済み透過成分のCO
2分圧が5.6MPa以上に調整される。
【0076】
表2に示すように、第3の実施の形態にて検知位置P1~P3での温度、圧力、CO2濃度の各条件を第1の実施の形態の検知位置P1~P3での各条件と同一としてシミュレーションを行い、検知位置P4~P7のシミュレーション結果が得られた。
【0077】
【0078】
第3の実施の形態のシミュレーションにて、分離装置40で分離後にライン44(検知位置P6)を流れる非透過成分は、検知位置P1に対し温度が概ね維持されつつ所定量昇圧した状態とされる(温度40℃、圧力1.0MPa)。
【0079】
また、第3の実施の形態にて、液化器60の冷熱源は、分離装置40の非透過成分を膨張機70で膨張した膨張済み非透過成分となり、ライン72を通って液化器60に供給される。ライン72(検知位置P7)を流れる膨張済み非透過成分は、検知位置P6に対し減圧されて大きく温度低下される(温度-45℃、圧力0.2MPa)。ライン72からの膨張済み非透過成分を冷熱源として、液化器60にて圧縮済み透過成分が冷却され、冷却済み透過成分となる。
【0080】
一方、検知位置P4にて、第2海水冷却器53で冷却された圧縮済み透過成分の温度を10℃、CO2分圧を5.6MPaに制御することで、CO2濃度を80%にすることができた。また、ライン72からの膨張済み非透過成分を冷熱源として液化器60で冷却され、ライン62(検知位置P5)を流れる冷却済み透過成分は、CO2分圧及びCO2濃度が検知位置P4に対して概ね維持されつつ温度低下された(温度-4℃、CO2分圧5.6Mpa、CO2濃度80%)。そして、回収装置80により分離された回収液のCO2濃度が91%となった。
【0081】
よって、第3の実施の形態の方が第1の実施の形態に比べて回収液のCO2濃度が低下するが、冷凍機61を膨張機70に変更できる分、機器設置スペースを小さくすることができる。また、分離装置40の非透過ガスを膨張させて冷却源として利用するので、冷却動力の削減を図ることができる。
【0082】
ここで、上述した第1~第3の実施の形態にて、回収装置80に回収される前段での冷却済み透過成分の温度及びCO2分圧を下記表3に示すように制御可能としている。
なお、回収装置80に回収される前段は、第1及び第3の実施の形態では検知位置P5、第2の実施の形態では検知位置P4とされる。
【0083】
【0084】
冷却済み透過成分のCO2、窒素(N2)、酸素(O2)の割合によって、表3に示すように、冷却済み透過成分の窒素の分圧及び酸素の分圧を確認できる。ここで、第1~第3の実施の形態の各温度及び分圧の値をモリエル線図(不図示)に入力すると、CO2は気相(気体)となり、窒素及び酸素は液相(液体)となる。よって、回収装置80にて、CO2を液体として容易に分離回収することが可能となる。
【0085】
[第4の実施の形態]
次に、本発明の第4の実施の形態について
図9を参照して説明する。
図9は、第4の実施の形態に係るガス処理システムの一部を示す概略構成図である。
図9に示すように、第4の実施の形態では、第3の実施の形態に対し、制御部90によって第1圧縮機30を制御する構成としている。
【0086】
第4の実施の形態にて、第1圧縮機30は、所定の駆動源となるモータ30aを備えている。また、第4の実施の形態において、制御部90は、第1圧縮機30のモータ30aに接続され、第1圧縮機30の駆動を制御する機能等を有する。制御部90は、例えば、モータ30aの回転数を制御するインバータを有している。
【0087】
第4の実施の形態では、第1の実施の形態における
図5のフロー図の処理の流れに対し、同様のステップS01を行うことで、CO
2濃度計48により透過成分のCO
2濃度C
inが測定される。
【0088】
次いで、第1の実施の形態のステップS02~S04に代え、測定したCO2濃度Cinと、目標値となるCO2濃度(例えば80%)との差分を算出し、該差分が0になるように第1圧縮機30のモータ30aの回転数となる操作量MVを算出する。そして、制御部90は、算出した操作量MVに応じ、第1圧縮機30におけるモータ30aの回転数をインバータ制御する(ステップS05に対応)。
【0089】
このように制御部90でモータ30aの駆動を制御することで、検知位置P1~P7での各条件が、第3の実施の形態の検知位置P1~P7での各条件と同一なるシミュレーション結果を得ることができた。また、回収装置80により分離された回収液のCO2濃度が91%となった。
【0090】
第4の実施の形態によれば、第1~第3の実施の形態と同様にCO2を回収しつつ、第1圧縮機30の動力削減を図ることができる。
【0091】
本発明の実施の形態は上記の各実施の形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想の趣旨を逸脱しない範囲において様々に変更、置換、変形されてもよい。さらには、技術の進歩又は派生する別技術によって、本発明の技術的思想を別の仕方で実現することができれば、その方法を用いて実施されてもよい。したがって、特許請求の範囲は、本発明の技術的思想の範囲内に含まれ得る全ての実施態様をカバーしている。
【0092】
上記各実施の形態では、分離装置40にて2つの分離部41、42を設けて排ガスを複数段で分離したが、単一の分離部により構成して排ガスの分離回数を1回としてもよい。
【0093】
また、回収装置80は、冷却済みの透過成分を回収できる限りにおいて、適宜変更してもよく、例えば、他の装置や系外に供給するようにしてもよい。
【0094】
また、エンジン10に供給する燃料を天然ガスとする場合、液化天然ガスが気化して低温化する気化天然ガスを冷媒として圧縮済み透過成分と熱交換を行い、回収するCO2の高密度化、冷却動力の削減を図るようにしてもよい。
【符号の説明】
【0095】
1 :ガス処理システム
10 :燃焼器(エンジン)
30 :第1圧縮機
40 :分離装置
41a :分離膜
42a :分離膜
48 :濃度測定部(CO2濃度計)
50 :第2圧縮機
52 :圧力測定部(圧力計)
53 :第2海水冷却器(熱交換器、冷却器)
65 :冷却器
70 :膨張機
80 :回収装置
90 :制御部