(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023170052
(43)【公開日】2023-12-01
(54)【発明の名称】コネクタ
(51)【国際特許分類】
H01R 13/58 20060101AFI20231124BHJP
【FI】
H01R13/58
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022081504
(22)【出願日】2022-05-18
(71)【出願人】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(71)【出願人】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001966
【氏名又は名称】弁理士法人笠井中根国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100147717
【弁理士】
【氏名又は名称】中根 美枝
(74)【代理人】
【識別番号】100103252
【弁理士】
【氏名又は名称】笠井 美孝
(72)【発明者】
【氏名】林 知宏
(72)【発明者】
【氏名】山田 祐介
(72)【発明者】
【氏名】水野 貴斗
(72)【発明者】
【氏名】逢澤 勝彦
【テーマコード(参考)】
5E021
【Fターム(参考)】
5E021FA03
5E021FA16
5E021FB07
5E021FB20
5E021FC02
5E021FC29
5E021GA05
5E021GB01
(57)【要約】
【課題】電線の保持力を向上し、外力遮断性能を安定して維持することができる、コネクタを開示する。
【解決手段】コネクタ10が、コネクタハウジング16と、コネクタハウジング16の外部に突出する電線12と、電線12の突出部位20を保持する本体部92と、本体部92を貫通して延びる金属製のボルト挿通筒部94とを一体的に有する電線保持部22と、コネクタハウジング16を覆う金属製のシールドシェル24と、第1方向で、電線保持部22をシールドシェル24との間で挟持しつつシールドシェル24に対して、ボルト挿通筒部94を挿通するボルト184によってボルト締結される金属製の押圧部26とを備え、ボルト挿通筒部94は、本体部92から突出する突出端部120を有しており、突出端部120がシールドシェル24又は押圧部26に当接することで、本体部92がシールドシェル24又は押圧部26から隙間178,180を隔てて離隔している。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電線引出口を有するコネクタハウジングと、
前記コネクタハウジングに収容された端子に接続されて、前記電線引出口から前記コネクタハウジングの外部に引き出される電線と、
前記電線引出口から外部に突出する前記電線の突出部位を保持する合成樹脂製の本体部と、前記電線の軸方向に交差する方向である第1方向で前記本体部を貫通して延びる金属製のボルト挿通筒部とを一体的に有する電線保持部と、
前記コネクタハウジングに固定されて前記コネクタハウジングを覆う金属製のシールドシェルと、
前記第1方向で、前記電線保持部を前記シールドシェルとの間で挟持しつつ前記シールドシェルに対して、前記ボルト挿通筒部を挿通するボルトによってボルト締結される金属製の押圧部と、を備え、
前記ボルト挿通筒部は、前記第1方向の少なくとも一方側で前記本体部から突出する突出端部を有しており、前記突出端部が前記シールドシェル又は前記押圧部に当接することで、前記本体部が前記シールドシェル又は前記押圧部から隙間を隔てて離隔している、コネクタ。
【請求項2】
前記ボルト挿通筒部は、前記第1方向の両側で前記本体部から突出する一対の前記突出端部を有しており、一対の前記突出端部が前記シールドシェルおよび前記押圧部に当接することで、前記本体部が前記シールドシェルおよび前記押圧部から前記隙間を隔てて離隔している、請求項1に記載のコネクタ。
【請求項3】
前記ボルト挿通筒部の前記突出端部は、前記第1方向で前記本体部から0.5mm以上の突出寸法で突出している、請求項1または請求項2に記載のコネクタ。
【請求項4】
前記電線保持部の前記本体部は、前記第1方向両側から前記電線を挟み込んで保持して相互に組み付けられることにより前記本体部を構成する第1保持部と第2保持部を有し、
前記第1保持部の前記第2保持部への接触面には、前記電線を収容して前記電線の外周面に接触する第1凹所が開口しており、
前記第2保持部の前記第1保持部への接触面には、前記電線を収容して前記電線の前記外周面に接触する第2凹所が開口しており、
前記第1保持部と前記第2保持部の組み付け時には、前記第1凹所と前記第2凹所が連接して電線貫通孔を構成し、
前記第1保持部は、前記第1保持部を前記第1方向で貫通して前記第1方向の両側に突出する一対の前記突出端部を有する第1ボルト挿通筒部を有し、
前記第2保持部は、前記第2保持部を前記第1方向で貫通して前記第1方向の両側に突出する一対の前記突出端部を有する第2ボルト挿通筒部を有し、
前記第1方向で前記押圧部と前記第1ボルト挿通筒部と前記第2ボルト挿通筒部と前記シールドシェルが順に重ね合わされて前記ボルトにてボルト締結されている、請求項2に記載のコネクタ。
【請求項5】
前記第1方向での前記本体部と前記シールドシェル又は前記押圧部との間の前記隙間は、下記式1により決定される、請求項1または請求項2に記載のコネクタ。
(式1)
隙間 >(a×(t1-t2)×c) + (b×(t1-t2)×d)
式1において、aは第1方向における第1保持部または第2保持部の板厚寸法、bは第1保持部または第2保持部に第1方向で接触する部位における押圧部またはシールドシェルの板厚寸法、cは第1保持部または第2保持部の材料の線膨張係数、dは押圧部またはシールドシェルの材料の線膨張係数、t1は電線の被覆の耐熱温度、t2は常温(5℃~35℃の範囲内)である。
【請求項6】
前記第1保持部の前記第1凹所と前記第2保持部の前記第2凹所は、前記電線引出口からの前記電線の突出方向で、前記第1ボルト挿通筒部と前記第2ボルト挿通筒部を越えてそれぞれ突出方向にさらに延び出しており、
前記第1凹所と前記第2凹所の延出端側の前記第1保持部と前記第2保持部の一方と他方に、前記第1保持部と前記第2保持部を連結する弾性ロック片とロック爪部がそれぞれ設けられている、請求項4に記載のコネクタ。
【請求項7】
前記第1凹所と前記第2凹所の少なくとも一方には、周方向に相互に離隔した複数箇所に、電線押えリブが設けられている、請求項4または請求項6に記載のコネクタ。
【請求項8】
前記第1凹所と前記第2凹所の少なくとも一方には、周方向に相互に離隔した複数箇所に設けられた複数の前記電線押えリブが、前記電線の前記軸方向で相互に離隔した2箇所に分散して設けられている、請求項7に記載のコネクタ。
【請求項9】
前記電線には、前記コネクタハウジング内への浸水を防ぐ防水部材が外挿されており、前記電線保持部が、前記防水部材の外部への離脱を阻止するリテーナ機能を有している、請求項1または請求項2に記載のコネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、車載機器間を電気的に接続するために、コネクタが用いられている。このようなコネクタは、コネクタハウジングと、コネクタハウジングに収容された端子と、端子に接続された電線とを含んでおり、電線がコネクタハウジングの電線引出口から外部に引き出されている。外部に引き出された電線には、車載時の振動等の外力が加わるため、電線に加わる外力が端子側に伝達されると、端子と相手側端子との接点にストレスが加わり、接点摩耗等の問題が生じるおそれがある。そこで、コネクタでは、電線に加わる外力が端子側に伝達されることを抑制する、いわゆる外力遮断性能が要求される。そのため、特許文献1に開示のコネクタは、電線を保持した状態でコネクタハウジングに組み付けられる樹脂製のリアホルダを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、特許文献1では、リアホルダは、コネクタハウジングに設けられた弾性突出片の先端に設けられたロック爪状の係止部が、リアホルダに設けられた被係止部を弾性変形しつつ乗り越えて弾性復帰した際に被係止部に係合することで、組み付けられるようになっている。それゆえ、係止部と被係止部との間にはわずかな隙間が生じることが避けられず、この隙間によるガタツキによって電線に伝達された外力が端子側に伝達されるおそれがあった。また、係止部と被係止部や電線を保持するリアホルダはいずれも樹脂製であることから、高温環境下での樹脂のクリープ現象により更なる隙間が発生し、コネクタの外力遮断性能がさらに悪化するおそれもあった。
【0005】
そこで、電線の保持力を向上し、外力遮断性能を安定して維持することができる、コネクタを開示する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示のコネクタは、電線引出口を有するコネクタハウジングと、前記コネクタハウジングに収容された端子に接続されて、前記電線引出口から前記コネクタハウジングの外部に引き出される電線と、前記電線引出口から外部に突出する前記電線の突出部位を保持する合成樹脂製の本体部と、前記電線の軸方向に交差する方向である第1方向で前記本体部を貫通して延びる金属製のボルト挿通筒部とを一体的に有する電線保持部と、前記コネクタハウジングに固定されて前記コネクタハウジングを覆う金属製のシールドシェルと、前記第1方向で、前記電線保持部を前記シールドシェルとの間で挟持しつつ前記シールドシェルに対して、前記ボルト挿通筒部を挿通するボルトによってボルト締結される金属製の押圧部と、を備え、前記ボルト挿通筒部は、前記第1方向の少なくとも一方側で前記本体部から突出する突出端部を有しており、前記突出端部が前記シールドシェル又は前記押圧部に当接することで、前記本体部が前記シールドシェル又は前記押圧部から隙間を隔てて離隔している、ものである。
【発明の効果】
【0007】
本開示のコネクタによれば、電線の保持力を向上し、外力遮断性能を安定して維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、実施形態1に係るコネクタを示す斜視図である。
【
図2】
図2は、
図1に示されたコネクタにおける底面図である。
【
図3】
図3は、
図2におけるIII-III断面の要部を拡大して示す縦断面図である。
【
図4】
図4は、
図2におけるIV-IV断面の要部を拡大して示す縦断面図である。
【
図5】
図5は、
図2におけるV-V断面を拡大して示す縦断面図である。
【
図6】
図6は、
図1に示されたコネクタにおける分解斜視図である。
【
図7】
図7は、
図1に示されたコネクタを底面側から示す分解斜視図である。
【
図8】
図8は、
図1に示されたコネクタを構成する第1保持部をボルト挿通筒部を備えた状態で示す斜視図である。
【
図9】
図9は、
図8に示された第1保持部をボルト挿通筒部を備えた状態で底面側から示す斜視図である。
【
図10】
図10は、
図1に示されたコネクタを構成するシールドシェルを示す斜視図である。
【
図11】
図11は、別の態様に係るコネクタを示す縦断面図であって、
図5に対応する図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<本開示の実施形態の説明>
最初に、本開示の実施態様を列記して説明する。
本開示のコネクタは、
電線引出口を有するコネクタハウジングと、前記コネクタハウジングに収容された端子に接続されて、前記電線引出口から前記コネクタハウジングの外部に引き出される電線と、前記電線引出口から外部に突出する前記電線の突出部位を保持する合成樹脂製の本体部と、前記電線の軸方向に交差する方向である第1方向で前記本体部を貫通して延びる金属製のボルト挿通筒部とを一体的に有する電線保持部と、前記コネクタハウジングに固定されて前記コネクタハウジングを覆う金属製のシールドシェルと、前記第1方向で、前記電線保持部を前記シールドシェルとの間で挟持しつつ前記シールドシェルに対して、前記ボルト挿通筒部を挿通するボルトによってボルト締結される金属製の押圧部と、を備え、前記ボルト挿通筒部は、前記第1方向の少なくとも一方側で前記本体部から突出する突出端部を有しており、前記突出端部が前記シールドシェル又は前記押圧部に当接することで、前記本体部が前記シールドシェル又は前記押圧部から隙間を隔てて離隔している、ものである。
【0010】
この構造によれば、コネクタハウジングの電線引出口から外部に突出する電線の突出部位を電線保持部の合成樹脂製の本体部が保持している。この電線保持部は、電線の軸方向に交差する方向である第1方向で本体部を貫通して延びる金属製のボルト挿通筒部を一体的に有している。さらに、コネクタは、コネクタハウジングに固定されてコネクタハウジングを覆う金属製のシールドシェルと、第1方向でシールドシェルと対向配置される押圧部を有し、シールドシェルと押圧部の間に電線保持部を挟持した状態で、電線保持部のボルト挿通筒部を挿通するボルトによって、押圧部がシールドシェルにボルト締結されている。ここで、電線保持部のボルト挿通筒部は、第1方向の少なくとも一方側で本体部から突出する突出端部を有しており、突出端部がシールドシェル又は押圧部に当接している。それゆえ、本体部において電線を保持する電線保持部を、金属製のボルト挿通筒部の突出端部を少なくともシールドシェル又は押圧部に直接当接させた状態で、ボルトの軸力によりシールドシェルと押圧部の間で安定して挟持することができる。その結果、従来構造のように、電線を保持するリアホルダの結合構造自体の隙間によるガタツキが避けられない場合と比べて、電線を保持する電線保持部を、ボルト挿通筒部において、シールドシェルと押圧部の間で確実に挟持することが可能となり、電線の保持力を向上させることができる。
【0011】
加えて、ボルト挿通筒部の突出端部が本体部から突出する側では、電線保持部の本体部とシールドシェル又は押圧部との対向面間には、隙間が形成されていることから、高温環境下における合成樹脂製の本体部の膨張を当該隙間により吸収することができる。その結果、高温時に電線保持部の樹脂膨張が電線の被覆に食い込み、被覆がクリープ現象により押圧された形状から戻らず、被覆と電線保持部との間に隙間が生じて、外力遮断性能が悪化するといった不具合の発生を未然に防止することも可能となる。それゆえ、高温の使用環境によって電線の保持力が悪化することを抑制または防止することができ、コネクタの外力遮断性能を安定して維持することができる。
【0012】
前記ボルト挿通筒部は、前記第1方向の両側で前記本体部から突出する一対の前記突出端部を有しており、一対の前記突出端部が前記シールドシェルおよび前記押圧部に当接することで、前記本体部が前記シールドシェルおよび前記押圧部から前記隙間を隔てて離隔している、ことが好ましい。
【0013】
電線保持部のボルト挿通筒部が、第1方向の両側で本体部から突出する一対の突出端部を有しており、一対の突出端部がそれぞれシールドシェルおよび押圧部に当接している。それゆえ、本体部において電線を保持する電線保持部を、金属製のボルト挿通筒部の突出端部をシールドシェル又は押圧部に直接当接させた状態で、ボルトの軸力によりシールドシェルと押圧部の間で安定して挟持することができる。その結果、電線を保持する電線保持部を、ボルト挿通筒部において、シールドシェルと押圧部の間で一層確実に挟持することが可能となり、電線の保持力の更なる向上を図ることができる。
【0014】
加えて、電線保持部の本体部は、シールドシェルおよび押圧部との両方の対向面から、隙間を隔てて離隔していることから、高温環境下における合成樹脂製の本体部の膨張をさらに吸収することができ、電線の被覆の押圧力の低減や被覆のクリープが生じるリスクの低減をさらに図ることができる。
【0015】
前記ボルト挿通筒部の前記突出端部は、前記第1方向で前記本体部から0.5mm以上の突出寸法で突出している、ことが好ましい。第1方向における突出端部の本体部からの突出寸法が、0.5mm以上に設定されることで、高温時における本体部の樹脂膨張を有利に吸収して、電線の被覆に及ぼされる押圧力やクリープ発生のリスクを有利に低減することができる。なお、より好ましくは0.6mm以上であるが、大型化回避のため過度な隙間は不要である。
【0016】
前記電線保持部の前記本体部は、前記第1方向両側から前記電線を挟み込んで保持して相互に組み付けられることにより前記本体部を構成する第1保持部と第2保持部を有し、前記第1保持部の前記第2保持部への接触面には、前記電線を収容して前記電線の外周面に接触する第1凹所が開口しており、前記第2保持部の前記第1保持部への接触面には、前記電線を収容して前記電線の前記外周面に接触する第2凹所が開口しており、前記第1保持部と前記第2保持部の組み付け時には、前記第1凹所と前記第2凹所が連接して電線貫通孔を構成し、前記第1保持部は、前記第1保持部を前記第1方向で貫通して前記第1方向の両側に突出する一対の前記突出端部を有する第1ボルト挿通筒部を有し、前記第2保持部は、前記第2保持部を前記第1方向で貫通して前記第1方向の両側に突出する一対の前記突出端部を有する第2ボルト挿通筒部を有し、前記第1方向で前記押圧部と前記第1ボルト挿通筒部と前記第2ボルト挿通筒部と前記シールドシェルが順に重ね合わされて前記ボルトにてボルト締結されている、ことが好ましい。
【0017】
電線保持部の本体部が、第1方向両側から組み付けられる第1保持部と第2保持部に分割されており、第1保持部と第2保持部とを電線を間に挟んで組み付けるだけで、第1保持部の第1凹所と第2保持部の第2凹所が連接して電線挿通孔を形成する。それゆえ、コネクタハウジングから外部に引き出される電線に対して電線保持部を容易に装着することができる。しかも、分割された第1保持部と第2保持部がそれぞれ第1方向に貫通して突出する第1ボルト挿通筒部と第2ボルト挿通筒部を有し、第1方向で押圧部と第1ボルト挿通筒部と第2ボルト挿通筒部とシールドシェルが順に重ね合わされてボルトにてボルト締結されている。それゆえ、電線保持部の強固な保持性を確保しつつ、電線保持部の電線への組付性の向上を図ることができる。
【0018】
前記第1方向での前記本体部と前記シールドシェル又は前記押圧部との間の前記隙間は、下記式1により決定される、ことが好ましい。
(式1)
隙間 >(a×(t1-t2)×c) + (b×(t1-t2)×d)
式1において、aは第1方向における第1保持部または第2保持部の板厚寸法、bは第1保持部または第2保持部に第1方向で接触する部位における押圧部またはシールドシェルの板厚寸法、cは第1保持部または第2保持部の材料の線膨張係数、dは押圧部またはシールドシェルの材料の線膨張係数、t1は電線の被覆の耐熱温度、t2は常温(5℃~35℃の範囲内)である。
【0019】
第1方向での本体部とシールドシェル又は本体部と前記押圧部との対向面間隙間を、式1を充足するように設定することで、高温時における本体部の樹脂膨張を有利に吸収して、電線の被覆に及ぼされる押圧力やクリープ発生のリスクを有利に低減することができる。なお、大型化回避のため過度な隙間は不要である。
【0020】
前記第1保持部の第1凹所と前記第2保持部の第2凹所は、前記電線引出口からの前記電線の突出方向で、前記第1ボルト挿通筒部と前記第2ボルト挿通筒部を越えてそれぞれ突出方向にさらに延び出しており、前記第1凹所と前記第2凹所の延出端側の前記第1保持部と前記第2保持部の一方と他方に、前記第1保持部と前記第2保持部を連結する弾性ロック片とロック爪部がそれぞれ設けられている、ことが好ましい。電線保持部が、シールドシェルと押圧部との間でボルト締結される第1・第2ボルト挿通筒部よりも電線の突出方向で離隔した部位において、第1保持部と第2保持部が弾性ロック片とロック爪部とのロック嵌合により、相互に連結される。これにより、電線への外力の伝達を一層有利に抑制することができる。さらに、ボルト締結前の状態において、第1保持部と第2保持部を電線を間に挟んだ状態で仮保持することができ、コネクタの組立作業性の向上を図ることもできる。
【0021】
前記第1凹所と前記第2凹所の少なくとも一方には、周方向に相互に離隔した複数箇所に、電線押えリブが設けられている、ことが好ましい。第1凹所と第2凹所の少なくとも一方に、周方向に相互に離隔して配置された複数の電線押えリブが設けられていることから、電線押えリブの電線の被覆への食い込みにより、電線の変位、例えば周方向周りの変位を有利に抑制することができる。また、電線押えリブが周方向に離隔していることから、電線の被覆の変形を有利に許容して、電線押えリブの被覆への食い込みを有利に実現できる。なお、好ましくは、第1凹所と第2凹所の両方に同じ周方向ピッチで設けられていることが望ましい。これにより、応力が分散され、一層安定した電線の保持が実現できるからである。
【0022】
前記第1凹所と前記第2凹所の少なくとも一方には、周方向に相互に離隔した複数箇所に設けられた複数の前記電線押えリブが、前記電線の前記軸方向で相互に離隔した2箇所に分散して設けられている、ことが好ましい。周方向に相互に離隔して配置された複数の電線押えリブが、電線の軸方向で相互に離隔した2箇所に分散して設けられていることから、電線の軸方向への変位も有利に抑制することができ、一層安定した電線の保持が実現できるからである。
【0023】
前記電線には、前記コネクタハウジング内への浸水を防ぐ防水部材が外挿されており、前記電線保持部が、前記防水部材の外部への離脱を阻止するリテーナ機能を有している、ことが好ましい。コネクタが防水部材を有している場合に、電線保持部のシールドシェルと押圧部間における強固な固定力を利用して、電線保持部に防水部材のリテーナとしての機能を併せ持たせることができる。これにより、少ない部品点数でコネクタの高機能性を確保することができる。
【0024】
<本開示の実施形態の詳細>
本開示のコネクタの具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、本開示は、これらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0025】
<実施形態1>
以下、本開示の実施形態1のコネクタ10について、
図1から
図10を用いて説明する。コネクタ10は、車載機器間を電気的に接続するものであり、
図1中の左下方向に延びる電線12に対して車載機器が電気的に接続されるとともに、
図1中の上方から、図示しない相手方車載機器の端子が電気的に接続されるようになっている。なお、コネクタ10は、任意の向きで配置することができるが、以下では、上方とは
図3中の上方、下方とは
図3中の下方、前方とは
図2中の左方、後方とは
図2中の右方、左方とは
図2中の下方、右方とは
図2中の上方として説明する。また、複数の同一部材については、一部の部材にのみ符号を付し、他の部材については符号を省略する場合がある。
【0026】
<コネクタ10>
実施形態1のコネクタ10は、電線引出口14を有するコネクタハウジング16と、コネクタハウジング16に収容された端子18と、を有している。そして、電線12が、端子18に接続されて電線引出口14からコネクタハウジング16の外部に引き出されている。また、コネクタ10は、電線12におけるコネクタハウジング16からの突出部位20を保持する電線保持部22と、コネクタハウジング16に固定されてコネクタハウジング16を覆う金属製のシールドシェル24と、シールドシェル24との間で電線保持部22を挟持してシールドシェル24に対してボルト締結される金属製の押圧部26と、を備えている。なお、実施形態1では、一対の端子18,18と一対の電線12,12とを有しており、各電線12が各端子18に接続されている。
【0027】
<電線12>
電線12は、
図3等にも示されるように、被覆電線である。すなわち、電線12は、芯線28の周囲が合成樹脂製の絶縁被覆30で覆われることにより構成されている。
図4や
図6にも示されるように、実施形態1では、各電線12は、全体として前後方向に延びており、後端部において上方に向かって湾曲している。電線12の後端部(上端部)では、絶縁被覆30が剥がされて芯線28が露出している。この露出した芯線28に端子18が溶着等により固着されることで、電線12が端子18に対して電気的に接続されている。
【0028】
<端子18>
端子18は、金属製であり、上下方向に開口する略筒状の接点部32を有している。この接点部32に、相手方車載機器のタブ状の端子が挿入されて、接点部32と相手方の端子とが相互に接触することで、コネクタ10の各端子18と相手方車載機器の端子とが電気的に接続されるようになっている。各接点部32の下端部には、上下方向に広がる平板形状とされた部分が設けられている。これら平板形状とされた部分が電線接続部34であり、各電線12の上端部において露出された芯線28が固着されている。
【0029】
<コネクタハウジング16>
コネクタハウジング16は、絶縁性を有する合成樹脂により形成されている。実施形態1のコネクタハウジング16は、
図6等にも示されるように、複数の部材により構成されており、略筒状の周壁36を有する筒状ハウジング38と、筒状ハウジング38に組み付けられる上部ハウジング40と、上部ハウジング40により上方開口部42が覆われる下部ハウジング44と、を備えている。
【0030】
図4にも示されるように、筒状ハウジング38は、周壁36の内周側に、上下方向に延びる略矩形筒状の保持筒部46を備えており、コネクタ10の組立時に、保持筒部46に端子18の接点部32が挿入されて保持されるようになっている。実施形態1では、一対の端子18,18が設けられていることから、筒状ハウジング38には、一対の保持筒部46,46が、左右方向で並んで設けられている。この保持筒部46に保持された接点部32に対して上方から相手方車載機器の端子が組み付けられることから、保持筒部46の上方開口部が、相手方端子が組み付けられる端子組付口48である。
【0031】
なお、周壁36の内周面において前後方向両側には、図示しない略枠状の係合枠体が設けられており、これらの係合枠体が、後述する上部ハウジング40における筒状部54の内周面において前後方向両側に設けられた図示しない係合突部と係合することで、筒状ハウジング38が、上部ハウジング40に組み付けられるようになっている。
【0032】
上部ハウジング40は、垂直方向(上下方向に直交する方向)に広がる蓋板部50を備えており、蓋板部50が、下部ハウジング44の上方開口部42を覆い得る大きさで形成されている。蓋板部50には、厚さ方向(上下方向)で貫通する貫通孔52が形成されており、当該貫通孔52の外周縁部には、上方に突出する略筒状の筒状部54が形成されている。要するに、上下方向に延びる筒状部54の内孔と蓋板部50に設けられた貫通孔52とが相互に連通しており、筒状部54および蓋板部50を上下方向で貫通する連通孔56が形成されている。また、蓋板部50において、左右方向両側には、下方に突出する係合枠体58が設けられている。
【0033】
図3,4や
図6にも示されるように、上部ハウジング40において蓋板部50の下面には、上部ハウジング40が下部ハウジング44に組み付けられた際に、下部ハウジング44内に入り込む略筒状の内挿筒部60が設けられている。すなわち、蓋板部50における外周部分には、下方に突出する内挿筒部60が設けられており、当該内挿筒部60の内孔も、上部ハウジング40における連通孔56と連通している。
【0034】
なお、上部ハウジング40の筒状部54は、筒状ハウジング38における周壁36に内挿されて上部ハウジング40と筒状ハウジング38とが組み付けられることとなるが、筒状部54の外周面において、上部ハウジング40と筒状ハウジング38との上下方向間には、環状の防水ゴム62が外挿状態で装着されている。これにより、上部ハウジング40と筒状ハウジング38との組付部位から水が浸入することが防止されている。また、下部ハウジング44に内挿される内挿筒部60の外周面には、Oリング64が装着されている。このOリング64が、内挿筒部60と下部ハウジング44との間で圧縮されることで、上部ハウジング40と下部ハウジング44との組付部位からの水の浸入が防止される。
【0035】
下部ハウジング44は、全体として上方に開口する略矩形の箱形状であり、底壁部66と、底壁部66の外周縁部から上方に突出する周壁部68とを備えている。すなわち、周壁部68は、何れも上下方向に広がる前壁70と、後壁72と、左右両側の側壁74,74とを備えている。そして、前壁70には、厚さ方向(前後方向)で貫通する略円形の電線引出口14が形成されている。実施形態1では、一対の電線12,12が設けられていることから、前壁70において、一対の電線引出口14,14が左右方向で並んで形成されている。さらに、前壁70には、前方に突出する収容筒部76が設けられており、この収容筒部76により一対の電線引出口14,14が外側から覆われている。収容筒部76は、左右方向に長い外形を有しており、角が丸められた略矩形または略長円形である。
【0036】
図7にも示されるように、この収容筒部76には、ゴム等の弾性体からなる防水部材としての防水ゴム78が収容される。防水ゴム78は、収容筒部76と略対応する形状であり、前壁70における電線引出口14,14と対応する位置において、厚さ方向に貫通する挿通孔80,80が形成されている。防水ゴム78は、収容筒部76よりも僅かに大きい大きさで形成されており、コネクタ10の組立時において、防水ゴム78は収容筒部76に対して略圧縮状態で組み付けられる。これにより、各電線引出口14を通じてのコネクタハウジング16内部への水の浸入が防止されている。なお、
図7では、見易さのために、コネクタハウジング16(筒状ハウジング38、上部ハウジング40および下部ハウジング44)が組み付けられた状態で示されているとともに、電線保持部22および押圧部26の図示を省略している。
【0037】
また、後壁72および左方の側壁74には、コネクタハウジング16とシールドシェル24とが固定される際に、後述するボルト186が締結されるナット82(後壁72におけるナットは図示を省略)が略埋設状態で設けられている。さらに、各側壁74の外面における上端部には、上部ハウジング40が組み付けられる際に、上部ハウジング40の各係合枠体58が係合する係合爪84が設けられている。
【0038】
ここにおいて、
図7に示されるように、底壁部66には上下方向で貫通する貫通孔が設けられており、当該貫通孔により検電穴86が構成されている。実施形態1では、一対の検電穴86,86が左右方向で相互に離隔して設けられている。すなわち、図示は省略するが、各電線12の長さ方向中間部分には絶縁被覆30が剥がされた芯線露出部が設けられており、各検電穴86を通じて検電プローブ等を挿入して、検電プローブ等を芯線露出部に接触させることで、例えば各電線12が通電状態にあるか否かを確認することができるようになっている。これらの各検電穴86は、後述する栓部材158により封止され得る。
【0039】
具体的には、底壁部66の下面には下方に突出する円筒部88が設けられており、当該円筒部88の内孔を含んで、上記の検電穴86が構成されている。すなわち、実施形態1では、一対の円筒部88,88が、左右方向で相互に離隔して設けられている。要するに、各検電穴86が、各円筒部88の内孔を通じて、コネクタハウジング16(下部ハウジング44における底壁部66)の下面に開口している。また、底壁部66の下面において、下方に突出する各円筒部88の左右方向間には、下方に開口する円形凹部90が形成されている。
【0040】
<電線保持部22>
図5にも示されるように、電線保持部22は、各電線引出口14から外部に突出する各電線12の突出部位20を保持する合成樹脂製の本体部92と、各電線12の軸方向(電線保持部22の配設位置では前後方向)に交差する方向である第1方向で本体部92を貫通して延びる金属製のボルト挿通筒部94とを一体的に有している。実施形態1では、ボルト挿通筒部94の延びる方向である第1方向が、各電線12の軸方向(前後方向)に直交する方向である上下方向である。
【0041】
特に、実施形態1の電線保持部22は、上下方向で分解および組付可能であり、上部電線保持部96と下部電線保持部98とから構成されている。なお、実施形態1では、上部電線保持部96と下部電線保持部98とが同一の部材により構成されており、一方の部材(例えば、上部電線保持部96)を上下反転させることで他方の部材(例えば、下部電線保持部98)となり得る。それゆえ、以下の説明では、
図8,9を示して主に上部電線保持部96について説明し、下部電線保持部98についての説明を部分的に省略する。
【0042】
すなわち、各電線12を保持する合成樹脂製の本体部92も上下方向で分解および組付可能であり、本体部92が上側の第1保持部100と下側の第2保持部102とから構成されている。すなわち、上部電線保持部96が第1保持部100を有しているとともに、下部電線保持部98が第2保持部102を有している。なお、第1保持部100と第2保持部102とは同一の形状である。
【0043】
同様に、ボルト挿通筒部94も上下方向で分解可能である。ボルト挿通筒部94は、全体として略円筒形状であり、上下方向に貫通するボルト挿通孔104を備えている。そして、ボルト挿通筒部94が、上側の円筒部分であり上側のボルト挿通孔106を有する第1ボルト挿通筒部108と、下側の円筒部分であり下側のボルト挿通孔110を有する第2ボルト挿通筒部112とから構成されている。また、ボルト挿通筒部94を上下方向で貫通するボルト挿通孔104が、上側のボルト挿通孔106と下側のボルト挿通孔110とから構成されている。すなわち、上部電線保持部96が第1ボルト挿通筒部108を有しているとともに、下部電線保持部98が第2ボルト挿通筒部112を有している。なお、第1ボルト挿通筒部108と第2ボルト挿通筒部112とは同一の形状である。
【0044】
そして、これら上部電線保持部96と下部電線保持部98とを、第1方向(上下方向)両側から各電線12を挟み込んで組み付けることにより、電線保持部22により各電線12が保持されるようになっている。要するに、1つの部材と上下反転させたもう1つの部材とを組み付けることにより電線保持部22が構成されて、各電線12が保持されるようになっている。これら上部電線保持部96と下部電線保持部98とは、全体として各電線12の軸方向(前後方向)に延びている。
【0045】
また、上部電線保持部96における第1保持部100において、下部電線保持部98における第2保持部102への接触面、すなわち第1保持部100と第2保持部102との重ね合わせ面には、各電線12を収容して各電線12の外周面に接触する第1凹所114が開口している。第1凹所114は、第1保持部100において前後方向の全長にわたって延びている。実施形態1では一対の電線12,12が設けられていることから、第1保持部100には、一対の第1凹所114,114が左右方向で相互に離隔して設けられている。
【0046】
そして、第1保持部100は、これら一対の第1凹所114,114の左右方向間において各第1凹所114を連結する連結部116と、各第1凹所114の後方部分において左右方向両側に突出する突出部118とを備えている。連結部116は、第1保持部100(各第1凹所114)の長さ方向(前後方向)の略全長にわたって設けられている。また、各突出部118は、平面視において略矩形の外形状を有している。そして、これら各突出部118において第1ボルト挿通筒部108が略埋設状態で配置されている。実施形態1では、第1保持部100と第1ボルト挿通筒部108とが一体的に形成されており、上部電線保持部96は、第1ボルト挿通筒部108を備える第1保持部100の一体成形品として形成されている。
【0047】
これら各第1ボルト挿通筒部108の長さ方向寸法(上下方向寸法)は、各突出部118の上下方向寸法(第1保持部100の上下方向寸法と略等しい)より僅かに大きくされている。これにより、各第1ボルト挿通筒部108の長さ方向両側の端部(上下方向両端部)により、各突出部118(第1保持部100)よりも上下方向両側に突出する突出端部120が構成されている。
【0048】
これら各突出端部120において第1保持部100(各突出部118)よりも上方に突出する部分の突出寸法α(
図5参照)は限定されるものではないが、例えば0.5mm以上とされることが好適であり、より好適には0.6mm以上とされる。各突出端部120における突出寸法αが0.5mm以上とされることで、後述する隙間178,180を安定して形成して、高温環境下における樹脂(本体部92)の膨張を許容することができる。なお、各突出端部120における突出寸法αの上限値は限定されるものではないが、例えば1.0mm以下とされる。これにより、隙間178,180が不必要に大きくなることが回避されて、ひいてはコネクタ10の大型化も回避される。
【0049】
なお、各第1凹所114において各電線12に重ね合わされる内周面には、電線押えリブ122が設けられている。実施形態1では、各第1凹所114の後方部分における内周面の複数箇所において複数の電線押えリブ122が周方向で相互に離隔して設けられており、
図5にも示されるように、各電線押えリブ122の突出先端部分が略半球形状とされている。実施形態1では、各第1凹所114における各電線押えリブ122が真っ直ぐ下方に延び出しており、略半球形状とされた突出先端部分の中心軸方向が上下方向とされている。特に、実施形態1では、周方向の複数箇所に設けられた複数の電線押えリブ122が、各電線12の軸方向(各第1凹所114の長さ方向であって前後方向)で相互に離隔した2箇所において分散して設けられている。具体的には、周方向で離隔する複数の各電線押えリブ122が、各突出部118の前端部分および後端部分と前後方向で略対応する位置に設けられている。
【0050】
さらに、第1保持部100において各第1凹所114の前方部分における左右方向両側には、第2保持部102との接触面(重ね合わせ面)側に突出する弾性ロック片124と、当該弾性ロック片124と係合可能なロック爪部126とが設けられている。換言すれば、第1保持部100における各第1凹所114は、各電線引出口14からの各電線12の突出方向(後方から前方に向かう方向)で各第1ボルト挿通筒部108を越えてさらに延び出しており、第1保持部100における各第1凹所114の延出端側(前端側)に、弾性ロック片124およびロック爪部126が設けられている。
【0051】
そして、上述のように、上部電線保持部96と下部電線保持部98は同一形状であり、相互に上下反転した状態で配置される。すなわち、下部電線保持部98における第2保持部102において、上部電線保持部96における第1保持部100への接触面には、各電線12を収容して各電線12の外周面に接触する第2凹所128が開口している。第2保持部102には、一対の第2凹所128,128が左右方向で相互に離隔して設けられている。
【0052】
第2保持部102において、一対の第2凹所128,128は連結部116により連結されているとともに、各第2凹所128の後方部分には左右方向両側に突出する突出部118が設けられている。そして、これら各突出部118において第2ボルト挿通筒部112が略埋設状態で配置されている。実施形態1では、下部電線保持部98が、第2ボルト挿通筒部112を備える第2保持部102の一体成形品として形成されている。また、各第2ボルト挿通筒部112の長さ方向両側の端部(上下方向両端部)により、各突出部118(第2保持部102)よりも上下方向両側に突出する突出端部120が構成されている。各第2ボルト挿通筒部112における突出端部120の第2保持部102からの突出寸法β(
図5参照)は、各第1ボルト挿通筒部108における突出端部120の第1保持部100からの突出寸法αと同様の値に設定される。
【0053】
また、各第2凹所128において各電線12に重ね合わされる内周面には、複数の電線押えリブ122が設けられている。各第2凹所128に設けられる各電線押えリブ122の形状や配置態様等は、各第1凹所114に設けられる各電線押えリブ122と同様である。さらに、第2保持部102において各第2凹所128の前方部分における左右方向両側には、相互に係合可能な弾性ロック片124およびロック爪部126が設けられている。
【0054】
そして、後述するように、上部電線保持部96と下部電線保持部98との組付時には、
各第1凹所114と各第2凹所128とが重ね合わされて連接され、前後方向に延びる電線貫通孔130が構成されるようになっている。この電線貫通孔130の内周面には、各第1凹所114における各電線押えリブ122と各第2凹所128における各電線押えリブ122により、各電線押えリブ122が略環状に配置される。このような各電線押えリブ122が設けられることにより、コネクタ10の組立時に各電線押えリブ122が各電線12の絶縁被覆30に食い込むことで、電線保持部22による各電線12の保持力を向上させることができる。
【0055】
<シールドシェル24>
図1等にも示されるように、上記のような構造とされたコネクタハウジング16の下方部分は、金属製のシールドシェル24に収容されている。
図10にも示されるように、シールドシェル24は、全体として上方に開口する略箱形状であり、平面視において略矩形とされた底壁132と、底壁132の外周縁部における後方および左右両側から上方に突出する後壁部134および一対の側壁部136,136とを備えている。そして、これら底壁132、後壁部134および一対の側壁部136,136に囲まれる領域により、コネクタハウジング16が収容される収容凹部138が構成されている。
【0056】
なお、実施形態1において、底壁132の前方部分は各側壁部136よりも前方まで延出しており、この延出部分により前方延出部140が構成されている。前方延出部140には、後述するボルト184が締結可能なボルト穴142が形成されている。それゆえ、前方延出部140に電線保持部22を載置し、更に当該電線保持部22の上方から押圧部26を重ね合わせてボルト184を締結することにより、何れも金属製とされた前方延出部140と押圧部26の上下方向間で電線保持部22を挟持することができるようになっている。
【0057】
また、シールドシェル24においてコネクタハウジング16の底壁部66が重ね合わされる底壁132には、底壁部66から下方に突出する各円筒部88が挿通される挿通孔144が、底壁132を厚さ方向(上下方向)で貫通して形成されている。この挿通孔144は、各円筒部88と対応する位置に形成されており、一対の挿通孔144,144が左右方向で相互に離隔して設けられている。そして、各挿通孔144の左右方向間には、底壁132から上方に突出する円筒状の円形凸部146が設けられており、この円形凸部146の内孔により、後述するボルト166が締結可能なボルト穴148が構成されている。
【0058】
さらに、シールドシェル24における後壁部134および左方の側壁部136において、コネクタハウジング16の後壁72および左方の側壁74に設けられるナット82と対応する位置には、後述するボルト186が挿通されるボルト挿通孔150(後壁部134におけるボルト挿通孔は図示を省略)が設けられている。そして、後壁部134の上端部には、後方に突出する外部接続部152が設けられているとともに、当該外部接続部152には、厚さ方向(上下方向)で貫通するボルト挿通孔154が形成されている。この外部接続部152において、図示しない外部電線等の末端に設けられた端子部を重ね合わせて、各ボルト挿通孔154に図示しないボルトを挿通し締結することで、シールドシェル24と外部電線等とが電気的に接続されるようになっている。また、外部接続部152の後端面における左端部には、後述する検電穴封止部材160の爪部172が係合可能な位置決め部156が形成されている。位置決め部156は、爪部172の係合位置の左右方向両側が後方に突出することで相対的に凹となる形状をもって構成されている。
【0059】
実施形態1では、シールドシェル24の下面に対して、コネクタハウジング16の各検電穴86を封止する栓部材158を備える検電穴封止部材160が組み付けられる。栓部材158は各検電穴86に対応して2つ設けられており、一対の栓部材158,158が左右方向で相互に離隔して配置されている。各栓部材158は、全体として略円柱形状であり、例えばゴム等の弾性体により形成される。各栓部材158において各検電穴86に挿入される部分の最大外径寸法は、各検電穴86を構成する各円筒部88の内径寸法よりも大きくされており、各検電穴86に対して各栓部材158を下方から略圧入状態で挿入することで、各検電穴86に対して各栓部材158が固定される。
【0060】
また、これら各栓部材158は、各栓部材158を保持する栓部材ホルダ162に組み付けられている。栓部材ホルダ162は、シールドシェル24における底壁132、後壁部134および外部接続部152に沿って屈曲しつつ、全体として前後方向に延びており、例えば金属により形成されている。すなわち、栓部材ホルダ162の一方の端部(前端部)には、各栓部材158が保持される保持部164が設けられているとともに、保持部164の左右方向中央部分には、ボルト166が挿通されるボルト挿通孔168が形成されている。また、栓部材ホルダ162の他方の端部(後端部)には、ボルト挿通孔170が形成されており、栓部材ホルダ162がシールドシェル24に固定された際に、ボルト挿通孔170と外部接続部152におけるボルト挿通孔154とが相互に連通されるようになっている。さらに、栓部材ホルダ162の他方の端部(後端部)には、爪部172が形成されており、栓部材ホルダ162がシールドシェル24に固定された際に、爪部172が外部接続部152の後端部に設けられた位置決め部156に係合されるようになっている。
【0061】
実施形態1では、これら各栓部材158と栓部材ホルダ162とが一体的に形成されており、検電穴封止部材160が構成されている。この検電穴封止部材160が、シールドシェル24を介してコネクタハウジング16に対して下方から重ね合わされて固定されることで、各検電穴86が、各栓部材158により封止される。すなわち、シールドシェル24の挿通孔144を介して下方に開口する各検電穴86(各円筒部88)に各栓部材158が圧入されるとともに、爪部172が外部接続部152における位置決め部156に係合され、ボルト挿通孔168にボルト166が挿通されてシールドシェル24におけるボルト穴148に締結されることで、検電穴封止部材160が、シールドシェル24に固定され得る。要するに、シールドシェル24に対するボルト166の締結を解除し、検電穴封止部材160(栓部材ホルダ162)を把持して各検電穴86(各円筒部88)から各栓部材158を引き抜くことで、各検電穴86がシールドシェル24における各挿通孔144を通じて下方に開口する状態とされる。
【0062】
<押圧部26>
押圧部26は、電線12の軸方向(前後方向)に交差する方向である第1方向(上下方向)で、電線保持部22をシールドシェル24との間で挟持しつつシールドシェル24にボルト締結される部材である。実施形態1では、シールドシェル24の前方延出部140に載置された電線保持部22に対して上方から押圧部26が重ね合わされた状態で、押圧部26がシールドシェル24に対してボルト締結されている。
【0063】
図1や
図3にも示されるように、押圧部26は、電線保持部22を上方から覆い押圧する押圧壁部174を有している。押圧壁部174は平面視において略矩形状であり、押圧壁部174の左右方向両側には、上下方向で貫通するボルト挿通孔176,176が形成されている。すなわち、押圧部26がシールドシェル24に固定された際には、電線保持部22が、押圧壁部174と前方延出部140との上下方向間で挟持されるようになっている。
【0064】
ここで、前述のように、電線保持部22における上部電線保持部96では、第1ボルト挿通筒部108の端部である突出端部120が第1保持部100よりも上方に突出しているとともに、下部電線保持部98では、第2ボルト挿通筒部112の端部である突出端部120が第2保持部102よりも下方に突出している。したがって、押圧部26がシールドシェル24に固定された際には、
図3や
図5に示されるように、押圧壁部174と第1ボルト挿通筒部108における突出端部120とが当接して、第1保持部100と押圧壁部174との間には隙間178が形成されている。また、前方延出部140と第2ボルト挿通筒部112における突出端部120とが当接して、第2保持部102と前方延出部140との間には隙間180が形成されている。すなわち、上下方向の両側で第1および第2保持部100,102から第1および第2ボルト挿通筒部108,112の各突出端部120が突出して押圧壁部174および前方延出部140に当接することで、第1および第2保持部100,102が、押圧壁部174および前方延出部140から隙間178,180を隔てて離隔している。がなお、
図3や
図5では、第1保持部100や第2保持部102における肉抜穴が図示されているため分かりにくいが、第1保持部100の上端面および第2保持部102の下端面は、第1および第2保持部100,102に設けられる突出部118の端面と同一平面上に位置している。
【0065】
なお、これら隙間178,180の上下方向寸法は、前述の第1ボルト挿通筒部108における第1保持部100からの突出寸法αや第2ボルト挿通筒部112における第2保持部102からの突出寸法βによって設定される他、以下の(式1)によって決定されるようになっていてもよい。
(式1)
隙間 >(a×(t1-t2)×c) + (b×(t1-t2)×d)
ここで、上記(式1)において、a(
図5参照)は第1方向(上下方向)における第1保持部100または第2保持部102の板厚寸法である。b(
図5参照)は、第1保持部100または第2保持部102に対して第1方向(上下方向)で接触する部位における押圧部26またはシールドシェル24の板厚寸法であって、実施形態1では、押圧壁部174または前方延出部140の板厚寸法である。cは、本体部92(第1保持部100および第2保持部102)の材料の線膨張係数であり、dは、押圧部26またはシールドシェル24の材料の線膨張係数である。t1は、各電線12における絶縁被覆30の耐熱温度であり、t2は、常温(例えば5℃~35℃の範囲内)である。
【0066】
押圧壁部174の前端部には、前方に突出する筒状部182が設けられており、筒状部182の内孔が前後方向両側で開口している。コネクタ10の組立時には、筒状部182により電線保持部22(第1保持部100および第2保持部102)の前方部分が覆われるようになっている。
【0067】
<コネクタ10の組立方法>
以下、コネクタ10の組立方法の具体的な一例を説明する。なお、コネクタ10の組立方法は、以下に記載の態様に限定されるものではない。
【0068】
先ず、各電線12における端部において絶縁被覆30を剥いで芯線28を露出させて各端子18を固着する。その後、各電線12において各端子18が固着される側の端部を上部ハウジング40における連通孔56内に挿通するとともに、各電線12において各端子18が固着されている側と反対側の端部を下部ハウジング44における各電線引出口14に挿通しつつ、各電線12を湾曲させて、上部ハウジング40と下部ハウジング44とを上下方向で対向させる。そして、上部ハウジング40と下部ハウジング44とを上下方向で相互に接近させて、上部ハウジング40における各係合枠体58と下部ハウジング44における各係合爪84とを係合させることで、上部ハウジング40と下部ハウジング44とを相互に固定する。
【0069】
さらに、各電線12における各端子18が固着されている側と反対側の端部を、防水ゴム78における各挿通孔80に挿通させて、防水ゴム78を下部ハウジング44における収容筒部76に収容する。また、上部ハウジング40に対して上方から防水ゴム62および筒状ハウジング38を組み付ける。これにより、コネクタハウジング16が、各電線12が組み付けられた状態で完成する。
【0070】
続いて、各電線引出口14から外部に突出する各電線12の突出部位20に対して、上下方向両側から上部電線保持部96および下部電線保持部98を対向させて、上部電線保持部96と下部電線保持部98とを相互に接近させる。そして、これら上部および下部電線保持部96,98における各弾性ロック片124と各ロック爪部126とを係合させて、上部および下部電線保持部96,98を相互に組み付ける。これにより、各第1ボルト挿通筒部108におけるボルト挿通孔106と各第2ボルト挿通筒部112におけるボルト挿通孔110とが上下方向で連通して、電線保持部22における各ボルト挿通孔104が構成される。その後、電線保持部22の前方部分を押圧部26における筒状部182に挿通して、電線保持部22における各ボルト挿通孔104と押圧部26における各ボルト挿通孔176とを上下方向で連通させる。
【0071】
そして、上記のコネクタハウジング16における下方部分をシールドシェル24における収容凹部138に収容するとともに、電線保持部22をシールドシェル24における前方延出部140上に載置する。その後、押圧部26および電線保持部22をボルト184によりシールドシェル24に固定する。すなわち、電線保持部22を前方延出部140上に載置することで、上下方向で押圧部26(押圧壁部174)と各第1ボルト挿通筒部108と各第2ボルト挿通筒部112とシールドシェル24(前方延出部140)とが順に重ね合わされ、それぞれの各ボルト挿通孔176,106,110および各ボルト穴142が連通して、各ボルト184によりボルト締結される。
【0072】
また、シールドシェル24における後方および左方からボルト186を挿通してコネクタハウジング16に設けられた各ナット82に締結することで、シールドシェル24とコネクタハウジング16とをボルト186により固定する。なお、シールドシェル24における底壁132とコネクタハウジング16における底壁部66とを重ね合わせて収容凹部138にコネクタハウジング16を収容する際に、各挿通孔144に各円筒部88が挿通されるとともに、円形凸部146が円形凹部90に挿入される。それゆえ、これら各挿通孔144および各円筒部88や、円形凸部146および円形凹部90により、シールドシェル24とコネクタハウジング16との位置決め効果が発揮され得る。
【0073】
その後、シールドシェル24に対して下方から検電穴封止部材160を重ね合わせてボルト166を締結することにより、各検電穴86が各栓部材158により封止される。これにより、コネクタ10が完成する。
【0074】
このようなコネクタ10の組立状態では、
図3にも示されるように、電線保持部22がコネクタハウジング16に設けられる防水ゴム78の前方に位置している。この結果、電線保持部22により防水ゴム78の外部への離脱が阻止されており、電線保持部22は、防水ゴム78の外部への離脱を阻止するリテーナ機能を有している。
【0075】
実施形態1のコネクタ10によれば、各電線12におけるコネクタハウジング16からの突出部位20を保持する電線保持部22が、何れも金属製とされた押圧部26(押圧壁部174)およびシールドシェル24(前方延出部140)により挟持されている。特に、電線保持部22は合成樹脂製の本体部92に一体的に設けられた金属製の各ボルト挿通筒部94を備えており、本体部92からボルト挿通筒部94における突出端部120が上下方向両側に突出して、押圧部26(押圧壁部174)およびシールドシェル24(前方延出部140)に対して直接当接している。このような状態で電線保持部22をボルト固定することで、各ボルト184の軸力を押圧部26およびシールドシェル24間に安定して及ぼすことができる。それゆえ、電線保持部22をシールドシェル24と押圧部26との間で強固に保持することができ、振動により上部電線保持部96と下部電線保持部98とががたつくことが抑制される。この結果、電線保持部22による各電線12の保持力が向上されて、振動等による外力が各電線12の端部に設けられた各端子18まで伝達されることが防止される。
【0076】
また、電線保持部22を構成する本体部92からボルト挿通筒部94における突出端部120が上下方向外方に突出しており、本体部92(第1および第2保持部100,102)と押圧部26(押圧壁部174)との上下方向間およびシールドシェル24(前方延出部140)との上下方向間に隙間178,180が設けられている。これら隙間178,180が設けられることにより、高温環境下において合成樹脂製とされた第1および第2保持部100,102の膨張変形が許容されて、隙間が設けられない場合に比べて、高温環境下における各絶縁被覆30への食い込みが抑制され、絶縁被覆30のクリープ破壊が発生するリスクを有利に低減できる。この結果、例えば常温環境下において第1および第2保持部100,102の膨張変形が解除された際にも、各絶縁被覆30が初期の形状に安定して復帰することができて、各絶縁被覆30と第1および第2保持部100,102との間に隙間が生じることが抑制される。これにより、例えば高温環境下に晒される場合にも電線保持部22による保持性能の低下が回避されて、電線保持部22による各電線12の保持が良好な状態で維持され得る。
【0077】
特に、ボルト挿通筒部94は本体部92の第1方向(上下方向)両側に突出することから、本体部92(第1および第2保持部100,102)の上下方向両側に隙間178,180を形成することができて、高温環境下において第1および第2保持部100,102の膨張変形がより安定して許容される。この結果、例えば常温環境下においても各絶縁被覆30と第1および第2保持部100,102との間に隙間が発生することがより確実に回避されて、保持性能の低下がさらに抑制される。
【0078】
ボルト挿通筒部94において、本体部92からの突出寸法α,βは、0.5mm以上とされることが好ましい。これにより、本体部92(第1および第2保持部100,102)と押圧部26およびシールドシェル24との間に安定して隙間178,180を形成することができる。
【0079】
第1保持部100と押圧部26との間の隙間178、および第2保持部102とシールドシェル24との間の隙間180の上下方向寸法は、前述の(式1)によって決定されてもよい。これによっても、隙間178,180を安定して形成することができる。
【0080】
電線保持部22が上側の上部電線保持部96と下側の下部電線保持部98とから構成されている。すなわち、本体部92が第1保持部100と第2保持部102とから構成されているとともに、ボルト挿通筒部94が第1ボルト挿通筒部108と第2ボルト挿通筒部112とから構成されている。このように電線保持部22を上下の分割構造とすることで、各電線12の上下方向両側から上部電線保持部96と下部電線保持部98とを組み付けることができて、組付作業における作業性の向上が図られる。特に、上部電線保持部96と下部電線保持部98とを相互に同じ部材とすることで、製造コストや部品管理の労力等を削減することができる。
【0081】
また、第1保持部100と第2保持部102は、何れも相互に係合可能な弾性ロック片124とロック爪部126とを備えている。これにより、第1保持部100(上部電線保持部96)と第2保持部102(下部電線保持部98)とを相互に同一の形状としつつ、相互に組み付けることができる。また、各弾性ロック片124と各ロック爪部126とのロック機構により、電線保持部22をシールドシェル24に対してボルト固定する前に、各電線12に対して仮固定することができる。これにより、各ボルト184による締結作業を安定して行うことができる。
【0082】
特に、これら弾性ロック片124およびロック爪部126が第1および第2保持部100,102の前方部分に設けられているとともに、各ボルト184が挿通される第1および第2ボルト挿通筒部108,112が第1および第2保持部100,102の後方部分に設けられている。すなわち、第1および第2保持部100,102の前方部分をロック機構により固定するとともに、第1および第2保持部100,102の後方部分をボルト締結により固定することができて、第1および第2保持部100,102の前後両側において各電線12との間に隙間が発生することがより確実に防止される。
【0083】
各第1凹所114と各第2凹所128の内周面には、周方向で離隔する複数箇所において、各電線押えリブ122が設けられている。これら各電線押えリブ122が各電線12における絶縁被覆30に食い込むことにより、電線保持部22内における各電線12の変位がより確実に防止される。特に、実施形態1では、各電線押えリブ122が、第1および第2保持部100,102において、各ボルト184が挿通される第1および第2ボルト挿通筒部108,112の近傍に設けられている。これにより、各ボルト184の締付力を各電線押えリブ122に及ぼすことができて、各電線押えリブ122による各電線12の保持性能が向上され得る。
【0084】
さらに、各第1凹所114と各第2凹所128の内周面において、周方向で離隔する複数の各電線押えリブ122は、各電線12の軸方向である前後方向で相互に離隔する2箇所に設けられている。これにより、電線保持部22に対する各電線12の前後方向の変位や上下方向の揺動変位(捻回)等をより効果的に防止することができる。
【0085】
電線保持部22は、コネクタハウジング16に設けられる防水ゴム78の前方に固定されており、電線保持部22により防水ゴム78の外部への離脱が阻止されている。これにより、電線保持部22は電線保持機能だけでなく防水ゴム78の離脱を阻止するリテーナの機能も有しており、例えば各電線を保持する部材と防水ゴムの離脱を阻止する部材とを別個に設ける必要がなく、コネクタ10における部品点数の削減や構造の簡素化も図られる。
【0086】
<変形例>
以上、本開示の具体例として、実施形態1について詳述したが、本開示はこの具体的な記載によって限定されない。本開示の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本開示に含まれるものである。例えば次のような実施形態の変形例も本開示の技術的範囲に含まれる。
【0087】
(1)前記実施形態では、上部電線保持部96と下部電線保持部98とが同一構造とされて、第1ボルト挿通筒部108における第1保持部100からの突出寸法αと第2ボルト挿通筒部112における第2保持部102からの突出寸法βとが等しくされていたが、この態様に限定されるものではない。例えば、上部電線保持部と下部電線保持部との構造は相互に異ならされてもよく、すなわち第1ボルト挿通筒部における第1保持部からの突出寸法αと第2ボルト挿通筒部における第2保持部からの突出寸法βとは相互に異ならされてもよい。具体的には、例えば
図11に示されるコネクタ190のように、第2ボルト挿通筒部192における第2保持部194からの突出寸法を0として、第2保持部194とシールドシェル24(前方延出部140)との間の隙間を設けなくてもよい。したがって、本開示に係るコネクタでは、ボルト挿通筒部は第1方向(上下方向)の一方側のみで本体部から突出して、本体部がシールドシェルと押圧部との一方に対して隙間を隔てて離隔している態様であってもよい。
【0088】
(2)前記実施形態では、2本の電線12,12が設けられていたが、電線は、1本でもよいし、3本以上でもよい。
【0089】
(3)電線保持部は、前記実施形態のように上部電線保持部と下部電線保持部が別体とされている態様の他、上部電線保持部と下部電線保持部における一方の端部同士がヒンジ部によりヒンジ連結された構造であってもよい。この場合、ヒンジ部を中心として上部電線保持部と下部電線保持部とを開閉させることが可能であり、上部電線保持部と下部電線保持部とを拡開させてその間に電線を挟み込んだ後、上部電線保持部と下部電線保持部における他方の端部同士を相互に固定することで電線保持部により電線が保持され得る。また、電線保持部の本体部を、電線貫通孔が貫通して設けられ、単一のボルト挿通筒部が埋設された単一の樹脂部品として構成してもよい。このような場合には、例えば電線に端子を接続する前に、電線を電線貫通孔に挿通して、電線の突出部位に予め電線保持部を装着するようにしてもよい。
【0090】
(4)前記実施形態では、第1保持部100における各第1凹所114の内周面と第2保持部102における各第2凹所128の内周面との両方に各電線押えリブ122が設けられていたが、何れか一方でもよいし、電線押えリブは設けられなくてもよい。電線押えリブが設けられる場合でも、電線押えリブは前記実施形態のように各第1凹所および/または各第2凹所の内周面において半円環形状に形成される態様に限定されるものではなく、突起状や、各電線の軸方向に延びる形状や、螺旋形状など、任意の形状が採用され得る。また、前記実施形態では、各第1および第2凹所114,128に設けられる各電線押えリブ122が上下方向に突出していたが、各電線押えリブは、各第1および第2凹所(電線貫通孔)の径方向に突出していてもよい。さらに、各第1凹所における各電線押えリブと各第2凹所における電線押えリブは前後方向で同じ位置に設けられる必要はなく、前後方向で異なる位置に設けられてもよい。
【0091】
(5)前記実施形態では、コネクタハウジング16とシールドシェル24とがボルト186の締結により固定されていたが、例えば相互に係合する係合突部と係合枠体とを設けて、これらの係合によりコネクタハウジングとシールドシェルとが固定されるようになっていてもよい。
【0092】
(6)前記実施形態に記載のコネクタハウジング16の形状は単なる例示であり、コネクタハウジングの形状は限定されるものではない。例えば、本開示に係るコネクタにおいて検電穴は必須なものではなく、検電穴および検電穴封止部材は設けられなくてもよい。
【符号の説明】
【0093】
10 コネクタ(実施形態1)
12 電線
14 電線引出口
16 コネクタハウジング
18 端子
20 突出部位
22 電線保持部
24 シールドシェル
26 押圧部
28 芯線
30 絶縁被覆
32 接点部
34 電線接続部
36 周壁
38 筒状ハウジング
40 上部ハウジング
42 上方開口部
44 下部ハウジング
46 保持筒部
48 端子組付口
50 蓋板部
52 貫通孔
54 筒状部
56 連通孔
58 係合枠体
60 内挿筒部
62 防水ゴム
64 Oリング
66 底壁部
68 周壁部
70 前壁
72 後壁
74 側壁
76 収容筒部
78 防水ゴム(防水部材)
80 挿通孔
82 ナット
84 係合爪
86 検電穴
88 円筒部
90 円形凹部
92 本体部
94 ボルト挿通筒部
96 上部電線保持部
98 下部電線保持部
100 第1保持部
102 第2保持部
104,106 ボルト挿通孔
108 第1ボルト挿通筒部
110 ボルト挿通孔
112 第2ボルト挿通筒部
114 第1凹所
116 連結部
118 突出部
120 突出端部
122 電線押えリブ
124 弾性ロック片
126 ロック爪部
128 第2凹所
130 電線貫通孔
132 底壁
134 後壁部
136 側壁部
138 収容凹部
140 前方延出部
142 ボルト穴
144 挿通孔
146 円形凸部
148 ボルト穴
150 ボルト挿通孔
152 外部接続部
154 ボルト挿通孔
156 位置決め部
158 栓部材
160 検電穴封止部材
162 栓部材ホルダ
164 保持部
166 ボルト
168,170 ボルト挿通孔
172 爪部
174 押圧壁部
176 ボルト挿通孔
178,180 隙間
182 筒状部
184,186 ボルト
190 コネクタ(
図11)
192 第2ボルト挿通筒部
194 第2保持部