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  • 特開-農作物の栽培方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023170057
(43)【公開日】2023-12-01
(54)【発明の名称】農作物の栽培方法
(51)【国際特許分類】
   A01G 25/02 20060101AFI20231124BHJP
   A01G 27/00 20060101ALI20231124BHJP
   A01G 22/05 20180101ALI20231124BHJP
【FI】
A01G25/02 601Z
A01G27/00 502L
A01G22/05 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022081513
(22)【出願日】2022-05-18
(71)【出願人】
【識別番号】522198302
【氏名又は名称】鈴木 浩仁
(71)【出願人】
【識別番号】303036429
【氏名又は名称】有限会社タイヨー種苗
(74)【代理人】
【識別番号】100085224
【弁理士】
【氏名又は名称】白井 重隆
(74)【代理人】
【識別番号】100140501
【弁理士】
【氏名又は名称】有我 栄一郎
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 浩仁
(72)【発明者】
【氏名】川名 和好
【テーマコード(参考)】
2B022
【Fターム(参考)】
2B022AA01
2B022AB15
2B022AB17
2B022AB20
2B022DA12
(57)【要約】
【課題】農作物の栽培において、病虫害に強く、早く収穫できる方法が求められている。
【解決手段】農作物に頭上潅水するための農業用水としてナノバブル水を用いることにより、農作物の生育を速めるだけでなく、肥料の使用量を低減し、さらに、病虫害に強い農作物を得ることができる。
【選択図】図1


【特許請求の範囲】
【請求項1】
露地またはハウス内で農作物を栽培する方法であって、頭上潅水により常温のナノバブル水を灌水することを特徴とする農作物の栽培方法。
【請求項2】
農作物が、花卉類、野菜類、あるいは果樹類である、請求項1記載の農作物の栽培方法。
【請求項3】
花卉類が、シクラメン、カーネーション、リシアンサス、ラナンキュラス、アネモネ、デルフィニウム、カンパニュラ、金魚草、ダリア、ヒマワリ、ストック、およびバラの群から選ばれた少なくとも1種であり、野菜類がイチゴ、ナス、トマト、キュウリ、ピーマン、インゲン、およびソラマメの群から選ばれた少なくとも1種であり、果樹類がビワ、サクランボ、およびマンゴーの群から選ばれた少なくとも1種である、請求項2記載の農作物の栽培方法。
【請求項4】
ナノバブル水が、空気、酸素、および二酸化炭素からなる群から選択される少なくとも1種の気体を含む泡を含むナノバブル水である、請求項1~3のいずれかに記載の栽培方法。
【請求項5】
請求項1~4のいずれかに記載の栽培方法を用いた、花卉類の切り花または切り葉の生産方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主としてイチゴやトマト等の果菜類、ホウレンソウやネギ等の葉菜類、シクラメン等の花卉類、さらにはビワ、サクランボ、マンゴーなどの果樹類などの農作物の栽培方法に関する。
【背景技術】
【0002】
農作物の栽培では、農作物を栽培する土壌に対して潅水するシステムは重要である。潅水の方法としては、これまでにも様々な方法が提案されており、例えば特許文献1には畝の上方に設置された潅水チューブから土壌に向かって潅水する方法が開示されている。また、特許文献2には、ハウスの壁面に沿って設置された潅水装置から水を噴出し、ハウス全体に潅水する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-068731号公報
【特許文献2】特開2015-122964号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献2の様に、上方から散水する潅水方法では、農作物全体に水がかかるため、気温や湿度等の条件および農作物の種類によっては、花や果実、葉茎にカビが発生し、成長を妨げたり、農作物が腐敗することがあった。
本発明は、農作物に頭上潅水するための農業用水としてナノバブル水を用いることにより、カビやその他の病虫害を発生させずに、かつ、農作物の生育を促進することが可能な、農作物の栽培方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、以下の<1>~<5>により構成される。
<1>
露地またはハウス内で農作物を栽培する方法であって、頭上潅水により常温のナノバブル水を灌水することを特徴とする農作物の栽培方法。
<2>
農作物が、花卉類、野菜類、あるいは果樹類である、請求項1記載の農作物の栽培方法。
<3>
花卉類が、シクラメン、カーネーション、リシアンサス、ラナンキュラス、アネモネ、デルフィニウム、カンパニュラ、金魚草、ダリア、ヒマワリ、ストック、およびバラの群から選ばれた少なくとも1種であり、野菜類がイチゴ、ナス、トマト、キュウリ、ピーマン、インゲン、およびソラマメの群から選ばれた少なくとも1種であり、果樹類がビワ、サクランボ、およびマンゴーの群から選ばれた少なくとも1種である、請求項2記載の農作物の栽培方法。
<4>
ナノバブル水が、空気、酸素、および二酸化炭素からなる群から選択される少なくとも1種の気体を含む泡を含むナノバブル水である、請求項1~3のいずれかに記載の栽培方法。
<5>
請求項1~4のいずれかに記載の栽培方法を用いた、花卉類の切り花または切り葉の生産方法。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、農作物の栽培において、農作物に頭上潅水する際に、農業用水としてナノバブル水を用いることにより、以下の効果が得られる。第一に、農作物の生育を促進し、出荷までの期間を短縮することができる。第二に、葉や茎が太く大きくなり光合成が活発になるため、肥料の使用量を削減することができる。第三に、病虫害に対する抵抗性が向上するため、農薬の使用量を削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】ハウス内の頭上潅水設備の一例を示した写真
図2】本件発明の方法で栽培されたシクラメンの写真
【発明を実施するための形態】
【0008】
<ハウス>
本発明に適用される「ハウス」とは、ビニールハウスまたはプラスチックハウス、あるいはガラス温室と呼ばれるもので、木材又は 鋼材を躯体とし合成樹脂のフィルムで外壁を被覆した、作物栽培のための農業施設である。被覆材料には、農業用ポリ塩化ビニルフィルム(農ビ)が使われることが多いことから、ビニールハウスと一般的に呼ばれる。一般的にイメージされるビニールハウスは、 鋼管(パイプ)を躯体としたものが圧倒的に多く、パイプハウスと呼ぶこともある。構造全てをフィルムで覆う場合が多い。
【0009】
本発明に用いられるハウスには、天井部分または側面の農作物よりも高い位置に潅漑用の装置が付設されている。そのほか自動消毒設備などの装置が付設されていてもよい。
また、本発明に用いられるハウスには、室温を調整するための窓や、暖房機器あるいは室温を冷却するための冷房機器が付設されたものが含まれる。
なお、本発明に用いられるハウスは、ビニールハウスに限定されるものではなく、農業用ビニールフィルムの代わりに、上記のように、ガラスを用いたガラス製のハウス(ガラス温室)であってもよい。
【0010】
<露地>
本発明における「露地」とは、上記ハウス以外の野外(露天)の畑を意味し、ビニールなどの保護材を一切使用していない状態を意味する。本発明においては、潅漑用の装置は、農作物よりも上方に設置されており、そのほか自動消毒設備などの装置が付設されていてもよい。
【0011】
<農作物>
本発明に適用される農作物は、花卉類、野菜類、さらには果樹類であり、特に限定されない。
このうち、花卉類としては、シクラメン、カーネーション、リシアンサス、ラナンキュラス、アネモネ、デルフィニウム、カンパニュラ、金魚草、ダリア、ヒマワリ、ストック、バラなどが挙げられる。
また、野菜類としては、イチゴ、ナス、トマト、キュウリ、ピーマン、インゲン、ソラマメなどが挙げられる。
さらに、果樹類としては、ビワ、サクランボ、マンゴーなどが挙げられる。
以上の花卉類、野菜類、果樹類は、これらの種類に限定されるものではなく、本発明は農作物全般に適用可能である。
【0012】
<ナノバブル水>
本発明に用いられる「ナノバブル」とは、直径が1mmの5,000分の1ほどの、目には見えない小さな泡であり、通常、直径が200ナノメートルよりも小さい泡であって、通常の大きさの泡と異なり、数カ月にわたって消えることがない。このような、ナノバブルを含む水(ナノバブル水、または微小気泡水)は、水の中でマイクロバブルを圧壊(衝撃波によって急激に潰すこと)させることで発生させることができる。ナノバブルは目には見えず、ナノバブル水は無色透明になる。
【0013】
ナノバブル水に含まれる泡を構成する気体は特に限定されないが、空気、酸素、または二酸化炭素などを用いることができる。農作物の成長をより促進することができるため、酸素、二酸化炭素、または空気を用いることが好ましい。
また、ナノバブル水の製造に使用する水は特に限定されないが、例えば、雨水、水道水、井水、農業用水、および、蒸留水等を使用することができる。
【0014】
ナノバブル水の発生装置の具体例は、本発明者が先に提案した実用新案登録第3208850号公報の「微小気泡水による動植物陸上生育設備」を用いることができる。
すなわち、このようなナノバブル水の製造装置としては、上記の実案にあるように、「動物または植物の生育を行う動植物生育場付近の屋外に付設された微小気泡水槽と、該微小気泡水槽に設けられ、水面下で微小気泡を発生させる微小気泡発生機と、前記微小気泡水槽から前記動植物生育場に前記微小気泡水を供給する給水配管と、該微小気泡水槽の上面開口を開閉自在に塞ぐ遮光性カバー材とを備えたことを特徴とする微小気泡水による動植物陸上生育設備」(同実案の請求項1)があげられ、これを用いて製造されたナノバブル水をもちいて、圃場に適宜散水すればよい。
なお、ナノバブル水の散水量は、栽培される農作物の種類や生育状況、天候などにより異なり、一律に定められるものではない。
【0015】
<頭上潅水>
本発明に用いられる「頭上潅水」とは、ハウス栽培においては、ハウスの天井または側面の天井付近に設置されたパイプにスプリンクラー、スプレー、またはノズルを取り付けて、農作物の上方から潅水する方法である。図1に、ハウス内に設置された頭上潅水設備の一例を示す。露地栽培の場合は、畝ごとにポールなどを設置し、農作物の上方に散水ノズルを設け潅水する方法や、地表近くに設置したスプリンクラーからナノバブル水を噴射して潅水する方法が考えられる。スプリンクラー等の形状は、栽培される農作物の種類および必要とされる潅水量によって異なる。なお、潅水装置は、手動で操作するまたは自動制御の装置とすることができる。
【0016】
<切り花、切り葉>
本発明でいう「切り花」または「切り葉」とは、植物体から剪定により切り取った花又は蕾、もしくは葉を意味し、生け花、フラワーアレンジメント、霊前、または仏前等に用いられるものである。
【0017】
本発明の栽培方法によると、ナノバブル水を潅水することによって、上述したように、出荷までの期間を短縮することができ、肥料および農薬の使用量を削減することができる。
また、それ以外の効果として、ナノバブル水を潅水することにより、農作物の生育が促進されるため、二酸化炭素吸収量が増加する。また、肥料や農薬の使用量が削減されるため、環境汚染の予防や、製造工場の稼働抑制による二酸化炭素排出量削減につながることが期待される。これらの効果は、SDGsの観点から好ましい。
さらに、太くしっかりとした茎に成長するため、切り花や切り葉に適した花卉類を得ることが可能になる。
【実施例0018】
以下、実施例をあげて、本発明をさらに具体的に説明する。
実施例1(シクラメンの栽培)
シクラメンの苗を自社農場内のハウスに植え付け、常温のナノバブル水を頭上潅水(1日に1回、1L/株)して栽培したところ、シクラメンは栄養成長と生殖成長を同時に行い、葉や茎が大きくなるとともに花芽を形成し開花した。当該方法で栽培されたシクラメンは通常の栽培方法(ナノバブル水を用いない栽培方法)に比べて1.5~3倍程度生育が速く、出荷までの期間を短縮することができた。また、通常の栽培方法では肥料を1か月に1回、農薬を1か月に1回程度使用するのに対し、実施例の栽培方法では肥料や農薬をほぼ使用せずに病虫害が発生することなく、出荷することができた。出荷時のシクラメンの外観を図2に示す。
【産業上の利用可能性】
【0019】
本発明の栽培方法は、花卉類や野菜類、さらには果樹類などの農作物の栽培に有用であり、本発明に具体的に挙げられていないその他の農作物全般に広く適用可能である。


図1
図2