(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023170064
(43)【公開日】2023-12-01
(54)【発明の名称】揚収システム及び水中航走体
(51)【国際特許分類】
B63G 8/00 20060101AFI20231124BHJP
B63C 11/00 20060101ALI20231124BHJP
B63B 45/02 20060101ALI20231124BHJP
【FI】
B63G8/00 L
B63C11/00 C
B63B45/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022081522
(22)【出願日】2022-05-18
(71)【出願人】
【識別番号】504194878
【氏名又は名称】国立研究開発法人海洋研究開発機構
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128107
【弁理士】
【氏名又は名称】深石 賢治
(72)【発明者】
【氏名】福田 達也
(72)【発明者】
【氏名】石原 靖久
(72)【発明者】
【氏名】永橋 賢司
(57)【要約】
【課題】 水中航走体を適切かつ確実に揚収する。
【解決手段】 揚収システム10は、水中航走体20を水中から揚収するシステムであって、水中航走体20が固定されて水中から引き上げるための引き上げ用索11を備え、引き上げ用索11は、長さ方向における間隔をあけた複数の位置に、水中航走体20を誘導するための誘導光を出射する出射部12を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水中航走体を水中から揚収する揚収システムであって、
水中航走体が固定されて水中から引き上げるための引き上げ用索を備え、
前記引き上げ用索は、長さ方向における間隔をあけた複数の位置に、水中航走体を誘導するための誘導光を出射する出射部を有する揚収システム。
【請求項2】
異なる位置に設けられる前記出射部は、互いに異なる波長の誘導光を出射する請求項1に記載の揚収システム。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の揚収システムの揚収対象である水中航走体であって、
前記揚収システムに備えられる引き上げ用索から出射される誘導光を検出して、引き上げ用索の位置を検出する検出手段と、
前記検出手段によって検出された引き上げ用索の位置に基づいて、自身を移動させる移動手段と、
前記移動手段による移動に応じて、自身を前記引き上げ用索に固定させる固定手段と、
を備える水中航走体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水中航走体を水中から揚収する揚収システム、及び当該揚収システムの揚収対象である水中航走体に関する。
【背景技術】
【0002】
AUV(Autonomous Underwater Vehicle)又はUUV(Unmanned Undersea Vehicle)等の水中航走体を船舶に揚収する方法として、特許文献1には、揚収用のケーブルを水中に投下し、水中航走体をケーブルに固定して引き上げる方法が示されている。特許文献1では、水中航走体をケーブルに誘導するのに音響装置が用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
水中航走体を揚収用の索に固定するためには、水中航走体の高精度な誘導が必要となる。しかしながら、特許文献1に示されるような音響での誘導では、揚収対象となる水中航走体が位置する環境等によっては、必ずしも水中航走体の高精度な誘導を行えないおそれがある。その結果、水中航走体の適切かつ確実な揚収が困難になり得る。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、水中航走体を適切かつ確実に揚収することができる揚収システム、及び当該揚収システムの揚収対象である水中航走体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明に係る揚収システムは、水中航走体を水中から揚収する揚収システムであって、水中航走体が固定されて水中から引き上げるための引き上げ用索を備え、引き上げ用索は、長さ方向における間隔をあけた複数の位置に、水中航走体を誘導するための誘導光を出射する出射部を有する。
【0007】
本発明に係る水中航走体は、上記の揚収システムの揚収対象である水中航走体であって、揚収システムに備えられる引き上げ用索から出射される誘導光を検出して、引き上げ用索の位置を検出する検出手段と、検出手段によって検出された引き上げ用索の位置に基づいて、自身を移動させる移動手段と、移動手段による移動に応じて、自身を引き上げ用索に固定させる固定手段と、を備える。
【0008】
本発明に係る揚収システムから出射される誘導光によれば、水中航走体が水中で高精度に引き上げ用索の位置を検出することができる。また、本発明に係る水中航走体では、本発明に係る揚収システムから出射される誘導光の検出によって、水中で高精度に引き上げ用索の位置を検出することができる。従って、本発明に係る揚収システム及び水中航走体によれば、水中航走体を引き上げ用索に高精度に誘導することができ、水中航走体を適切かつ確実に揚収することができる。
【0009】
異なる位置に設けられる出射部は、互いに異なる波長の誘導光を出射することとしてもよい。この構成によれば、水中航走体を引き上げ用索に更に高精度に誘導することができ、水中航走体を更に適切かつ確実に揚収することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、水中航走体を適切かつ確実に揚収することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の実施形態に係る揚収システム、及び水中航走体であるAUVを示す図である。
【
図2】AUVが揚収される際の揚収システム及びAUVを示す図である。
【
図3】航空機、揚収システム及びAUVのブロック図である。
【
図4】AUVが引き上げ用索に固定される際の引き上げ用索及びAUVを示す図である。
【
図6】AUVが水中に投入される際の揚収システム及びAUVを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面と共に本発明に係る揚収システム及び水中航走体の実施形態について詳細に説明する。なお、図面の説明においては同一要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。また、図面の寸法比率は、説明のものと必ずしも一致していない。
【0013】
図1及び
図2に、本実施形態に係る揚収システム10、及び当該揚収システム10の揚収対象である本実施形態に係る水中航走体であるAUV20を示す。また、
図1及び
図2に示されていない構成を
図3に示す。本実施形態における上下は、
図1及び
図2に示す状態を基準としたものとする。AUV20は、例えば、水中を航走して水中の調査を行う自律型の無人の水中航走体である。AUV20は、UUVとも呼ばれる。例えば、AUV20は、海中の調査を行う。なお、水中航走体は、AUV20以外のものであってもよい。例えば、水中航走体は、ユーザによって操作可能なもの、又は人が搭乗する有人機であってもよい。また、水中航走体は、水中の調査を行う目的以外のものであってもよい。AUV20は、以下に説明する構成を除いては従来のAUVと同様の構成を有していてもよい。
【0014】
AUV20は、母機に格納(搭載)されて、航走する領域(例えば、調査対象海域)に移動されて母機から水中(例えば、海中)に投入される。
図1及び
図2に示すようにAUV20を搭載する母機は、離着水が可能な構成を有する航空機30である。航空機30は、例えば、自律型の無人航空機(UAV(Unmanned Aerial Vehicle)、ドローン)である。また、航空機30は、ユーザによって操作可能なもの、又は人が搭乗する有人機であってもよい。
図3に示すように、航空機30は、AUV20を格納する格納部31を備える。揚収システム10は、航空機30に設けられ、揚収対象である水中のAUV20を航空機30に揚収するシステム(装置)である。
【0015】
母機を無人の航空機とすることで、船舶を用いる場合と比べて、AUV20で海中を調査するためのコスト及び所要人数を少なくし、期間を短くすることができる。但し、母機は、航空機である必要はなく、船舶であってもよい。例えば、母機は、USV(Unmanned Surface Vehicle)又はASV(Autonomous Surface Vehicle)であってもよい。
【0016】
引き続いて、本実施形態に係る揚収システム10、AUV20及び航空機30の構成を説明する。AUV20の揚収は、水中において引き上げ用索にAUV20を固定して引き上げて航空機30に収容することで行われる。まず、引き上げ用索にAUV20を固定する工程のための構成を説明し、その後に引き上げ用索に固定されたAUV20を航空機30の格納部31に収容する工程のための構成を説明する。
【0017】
航空機30は、胴体にAUV20を格納する空間を有する格納部31を備える。航空機30の胴体における、着水する際に水に接する底面にAUV20を格納部31から出し入れするための部分が設けられる(詳細には後述する)。当該部分には、航空機30の底面の一部となるドア32が設けられる。航空機30の胴体における、ドア32の内側に格納部31が設けられる。ドア32は、AUV20の揚収の際等に開放される。例えば、ドア32は、自動で横(即ち、航空機30の底面に沿う方向)にスライドされて開放される。AUV20の揚収は、水中のAUV20を航空機30の胴体の底面から航空機30の格納部31内に収容することで行われる。
【0018】
図1に示すように揚収システム10は、引き上げ用索(ロープ、吊り上げ索)11と、出射部12(出射部12a,12b,12c,12dの総称)と、音波発生装置13とを備える。引き上げ用索11は、AUV20が固定されて水中から引き上げるための部材である。引き上げ用索11は、従来の引き上げ用索によって実現されればよい。引き上げ用索11としては、水中においてAUV20を引き上げ可能な強度及び長さのものが用いられる。引き上げ用索11の一方の先端は水中に吊り下げられて沈められる。
【0019】
引き上げ用索11のもう一方の先端は航空機30に保持される。また、引き上げ用索11は、水中に沈められる部分の長さが調整できるようにされる。
図3に示すように揚収システム10は、航空機30に設けられるウィンチ14を備える。引き上げ用索11は、ウィンチ14に巻かれた状態で保持され、ウィンチ14によって水中に沈められる部分の長さが調節される。引き上げ用索11の水中に沈む部分の長さ方向は概ね鉛直方向となる。これは、引き上げ用索11の水中に沈む部分の自重及び音波発生装置13の重みによるものである。また、引き上げ用索11は、航空機30の底面におけるAUV20を格納部31から出し入れする部分から、垂れ下がるように航空機30に配置される。
【0020】
それぞれの出射部12は、水中においてAUV20を引き上げ用索11に誘導するための誘導光を出射する装置である。それぞれの出射部12は、例えば、LED(発光ダイオード)等の水中で用いられ得る従来の光源によって実現されればよい。引き上げ用索11は、水中に沈む部分の長さ方向における間隔をあけた複数の位置に出射部12を有する。それぞれの出射部12は、引き上げ用索11の上記の位置に固定されて設けられる。それぞれの出射部12によって出射される誘導光は、AUV20が、出射部12の位置、即ち、誘導光の出射元の位置を適切に検出できるものである。
【0021】
異なる位置に設けられる出射部12は、互いに異なる波長の誘導光を出射するものであってもよい。例えば、
図1に示すように交互に、緑色の誘導光を出射する出射部12a,12cと、赤色の誘導光を出射する出射部12b,12dとが設けられていてもよい。それぞれの出射部12の間の間隔(長さ)は、後述する方法によってAUV20が引き上げ用索11の位置を適切に検出できるような間隔である。例えば、当該間隔は、0.5mである。また、同一の波長の誘導光を出射する出射部12間の距離を一定にしてもよい。これによって、引き上げ用索11の傾き具体をAUV20に認識させることができる。誘導光を上記のようにすることで、天候及び海象による視認性の変化に対応することができる。
【0022】
なお、誘導光の波長の種類は、上記のように2種類ではなく、3種類以上であってもよい。また、上記の通り、複数の出射部12の中に互いに異なる波長の誘導光を出射するものが含まれていればよく、複数の出射部12には互いに同一の波長の誘導光を出射するものが含まれていてもよい。
【0023】
音波発生装置13は、水中においてAUV20を引き上げ用索11に誘導するための誘導音波(音響)を出力する装置である。音波発生装置13は、例えば、水中で用いられ得る従来の音波発生装置によって実現されればよい。
図1に示すように、音波発生装置13は、引き上げ用索11の水中に沈む側の先端に固定されて設けられる。
【0024】
また、引き上げ用索11には、点滅によって通信を行う光通信装置が配置されていてもよい。これにより揚収システム10側から、近距離でのAUV20に対して制御を行えるようになっていてもよい。光による通信は、光の点滅によって実施される。
【0025】
図1に示すようにAUV20は、本体21と、固定用部材22とを備える。本体21は、例えば、
図1に示すように魚雷型の形状である。なお、本体21の形状は、魚雷型である必要はなく、AUVとして取り得る任意の形状であってもよい。本体21は、AUV20としての機能、例えば、水中での航走及び調査に係る機能を有する。本体21は、後述する本実施形態に係る機能を除いて、従来のAUVと同様の構成であってもよい。
【0026】
固定用部材22は、AUV20を揚収システム10の引き上げ用索11に固定するための部材である。例えば、固定用部材22は、引き上げ用索11を挟むことができる2本の触覚状(棒状)の部材である。固定用部材22は、本体21の予め設定された位置、例えば、
図1に示すように魚雷型の形状の先端部の位置に設けられる。
【0027】
2本の固定用部材22は、動くことができるように本体21に設けられる。
図4(a)に示すように、2本の固定用部材22は開いた状態とされており、2本の固定用部材22の間に引き上げ用索11が位置した状態で引き上げ用索11を挟むように動く。固定用部材22の動きの制御は、後述するように行われる。なお、AUV20を引き上げ用索11に固定する構成は、必ずしも上記の構成である必要はなく、AUV20を引き上げ用索11に固定できればどのような構成であってもよい。
【0028】
図3に示すように、AUV20は、上記に加えてカメラ23と、制御装置24とを備える。カメラ23及び制御装置24は、本体21に設けられる。カメラ23は、出射部12から出射される誘導光を撮像して、引き上げ用索11の位置を検出するための画像を得る装置である。例えば、カメラ23は、固定用部材22の近傍に、AUV20の先端部からその前方を撮像できるように設けられる。カメラ23は、水中の撮像が可能な従来の光学カメラ等によって実現されればよい。カメラ23は、撮像された画像を制御装置24に出力する。
【0029】
制御装置24は、AUV20の揚収に係る制御を行う装置である。制御装置24は、本体21の水中での航走の機能及び固定用部材22の動きの制御を行うようにされている。また、制御装置24は、それ以外のAUV20における構成要素の動作を制御してもよい。制御装置24は、例えば、従来のAUVで用いられるコンピュータ等の制御装置によって実現されればよい。
【0030】
図3に示すように、制御装置24は、機能的な構成として、検出部241と、移動部242と、固定部243とを備える。検出部241は、揚収システム10に備えられる引き上げ用索11から出射される誘導光を検出して、引き上げ用索11の位置を検出する検出手段である。検出部241は、カメラ23から画像を入力する。検出部241は、入力した画像から誘導光を検出して、検出した誘導光に基づいて水中における引き上げ用索11の位置を検出する。
【0031】
上記の通り、水中では引き上げ用索11は鉛直方向に延びているので、誘導光の出射位置である出射部12は鉛直方向に並んでいる。検出部241は、画像から検出した誘導光に基づいて、鉛直方向に延びる引き上げ用索11のAUV20に対する水中での相対位置を検出する。検出部241は、引き上げ用索11の状態(例えば、傾き及び直線性)を認識してもよい。画像に基づく、引き上げ用索11の位置の検出は、AI(人工知能)等の従来の画像認識技術によって行われればよい。検出部241は、検出した引き上げ用索11の位置を示す情報を移動部242に出力する。
【0032】
また、AUV20は、引き上げ用索11に固定された音波発生装置13から出力される水中での誘導音波を検出する水中用のマイク等の装置を備えていてもよい。検出部241は、検出された誘導音波にも基づいて引き上げ用索11の位置を検出してもよい。例えば、検出部241は、検出された誘導音波とカメラ23から入力された画像との両方に基づいて引き上げ用索11の位置を検出してもよい。あるいは、検出部241は、誘導光が写った画像が撮像されるまで、検出された誘導音波に基づいて引き上げ用索11の位置を検出してもよい。検出された誘導音波に基づく、引き上げ用索11の位置の検出は、従来の技術によって行われればよい。
【0033】
移動部242は、検出部241によって検出された引き上げ用索11の位置に基づいて、自身(AUV20)を移動させる移動手段である。移動部242は、検出部241から引き上げ用索11の位置を示す情報を入力する。移動部242は、入力した情報に基づいて、AUV20を引き上げ用索11に近づけるように移動させる。また、移動部242は、固定用部材22が引き上げ用索11を挟むことができる位置にAUV20を移動させる。移動部242によるAUV20の移動の制御は、水中での航走に係る機能の制御、例えば、AUV20が備えるスラスタの制御によって行われる。
【0034】
固定部243は、移動部242による移動に応じて、自身(AUV20)を引き上げ用索11に固定させる固定手段である。
図4(a)に示すように、移動部242による制御によって、固定用部材22が引き上げ用索11を挟むことができる位置にAUV20が移動すると、
図4(b)に示すように、固定部243は、引き上げ用索11を挟むように固定用部材22を動かす。例えば、AUV20の先端部にセンサを設けておき、センサが引き上げ用索11との接触を検出すると、固定部243は、上記の固定を行うようにしてもよい。固定用部材22によって引き上げ用索11が挟まれることで、AUV20が引き上げ用索11に固定される。即ち、固定用部材22は、引き上げ用索11を捕縛する。
【0035】
なお、AUV20への引き上げ用索11の固定は、少なくとも、引き上げ用索11の長さ方向(鉛直方向)と垂直な方向に対して行われればよい。即ち、AUV20は、引き上げ用索11に対して、長さ方向(鉛直方向)に移動可能になっていてもよい。その場合、引き上げ用索11が引き上げられると、AUV20は音波発生装置13に引っかかって音波発生装置13と共に引き上げられる。
【0036】
AUV20への引き上げ用索11の固定の構成、引き上げ用索11に固定されたAUV20を引き上げ用索11と共に引き上げる構成は、上記の構成である必要はなく、任意の構成を取ることができる。以上が、引き上げ用索11にAUV20を固定する工程のための構成である。
【0037】
引き続いて、引き上げ用索11に固定されたAUV20を航空機30の格納部31に収容する工程のための構成を説明する。揚収システム10が備えるウィンチ14は、AUV20が固定された引き上げ用索11を引き上げる引き上げ手段である。なお、引き上げ用索11を航空機30に保持すると共に引き上げるための構成は、ウィンチ14以外のものであってもよい。
【0038】
図2に示すように揚収システム10は、支持部15と、位置調整部16とを備える。支持部15は、ウィンチ14によって引き上げ用索11と共に引き上げられたAUV20を水中において支持し、AUV20を支持した状態で回転移動してAUV20が格納された格納部31の一部となる部分(架台、台座)である。
図2(a)に示すように、AUV20を揚収する際、支持部15は、着水した航空機30の下面から突出するように、水中に位置するようにされる。
図2(b)及び
図2(c)に示すように、例えば、支持部15は、AUV20の長手方向の側面を、当該長手方向が概ね鉛直となった状態で支持する。
図2(c)に示すように、支持部15は、AUV20を支持した状態で、AUV20が水平になると共に航空機30の格納部31に向かうように回転移動する。即ち、支持部15は、AUV20を上架する。支持部15の回転移動が完了すると、AUV20は航空機30の格納部31に格納された状態となる。その状態では格納部31において、支持部15は、下側からAUV20を支持している。このように支持部15は、AUV20のベッドのような役割を果たす。
【0039】
図5(a)に、AUV20を支持する部分を側面から見た支持部15を示す。
図5(b)に、AUV20を支持する部分を正面から見た支持部15を示す。
図5(c)に、航空機30から突出し水中に位置するようにされた支持部15を示す。格納部31は、上記のように、水中でAUV20を支持可能であり、AUV20を格納部31に収容できるような形状及び強度とされる。
【0040】
例えば、
図2及び
図5に示すように、例えば、支持部15の形状は、AUV20の長手方向の側面を支持できるように、当該側面よりも少し大きい部分を有する薄い形状である。具体的には、
図5示すように、支持部15は、金属等の棒状の部材を組み合わせて構成されている。例えば、支持部15は、楕円状の棒状の部材とAUV20に接触する部材とを組み合わせて、網目状の形状に構成されてもよい。支持部15のAUV20に接触し、支持する部分は、AUV20の形状にあわせた窪みを設けて、より適切にAUV20を支持できるようにしてもよい。このように棒状の部材で構成されて隙間が設けられることで、支持部15が水中に位置している際に支持部15に対する水の抵抗を軽減させることができる。特に支持部15は、上記のように回転する際の移動方向に対して投影面積の小さい形状を採用してもよい。
【0041】
支持部15は、AUV20を揚収する際に上述した位置取り及び回転が可能となるように航空機30に固定される。例えば、支持部15が格納部31を構成する際にはAUV20を支持する部分が上を向き、AUV20を揚収する際には当該部分がAUV20を支持可能なように水中に位置するように、支持部15の一端部を回転軸として回転できるように支持部15は航空機30に固定される。なお、回転は、支持部15が格納部31を構成する際の位置、及び支持部15が水中でAUV20を支持可能な位置の間で行えればよい。例えば、支持部15が格納部31を構成する際の位置を基準として、120~150度程度回転ができればよい。
【0042】
図3に示すように揚収システム10は、航空機30に設けられる駆動部17を備える。駆動部17は、支持部15を回転移動させる駆動手段である装置である。駆動部17は、例えば、従来のアクチュエータ等によって実現されればよい。駆動部17による支持部15の回転は、例えば、水中で支持部15がAUV20を支持したことを検出するようにしておき、当該検出をトリガとして行われる。
【0043】
航空機30の格納部31において、揚収時のAUV20の破損、及び確実かつ適切なAUV20の保持を行うために、
図2(c)に示すように、揚収システム10には、格納部31内に設けられる低反発部材18が設けられていてもよい。低反発部材18は、格納部31において、格納部31を構成する支持部15と向かい合う位置に固定されて設けられる。低反発部材18は、支持部15が回転してAUV20が格納部31に格納される際に、AUV20の支持部15によって支持される側と逆側に接触して変形し、AUV20からの圧力を吸収又は分散する。格納部31においてAUV20が保持されている状態では、支持部15と低反発部材18とでAUV20が挟まれて、AUV20が格納部31内で動かないようにされる。低反発部材18の素材及び形状は、上記を達成し得るものであればよい。
【0044】
位置調整部16は、ウィンチ14によって引き上げ用索11と共に引き上げられたAUV20の少なくとも一部に固定されることが可能であり、固定されたAUV20を支持部15に支持される位置に移動させるための部分である。位置調整部16は、支持部15の近傍に自身が移動可能であるように設けられる。位置調整部16は、AUV20の先端部に被せられる形状であると共に、引き上げ用索11が貫通する孔を有する構成であってもよい。
【0045】
図2(a)及び
図2(b)に示すように、引き上げ用索11によってAUV20が航空機30の近くまで引き上げられても、単に引き上げるだけではAUV20の位置は、必ずしも支持部15に適切に支持できる位置にはならない。位置調整部16は、引き上げられたAUV20の位置を、支持部15に適切に支持できる位置にするためのものである。
【0046】
位置調整部16は、引き上げられるAUV20の先端部とあった形状である。例えば、
図2に示すようにAUV20の本体の先端部の形状が丸い球状である場合、位置調整部16の形状は、当該球状の形状に被せられるヘルメット状の形状である。位置調整部16は、支持部15の回転軸の近傍に、引き上げられたAUV20の先端部に被せられて固定できるように設けられる。例えば、AUV20の先端部がヘルメット状の位置調整部16に入って、AUV20が位置調整部16に固定されるように設けられる。位置調整部16は、支持部15に固定されていてもよい。
【0047】
確実に位置調整部16とAUV20とを固定できるように、位置調整部16には引き上げ用索11が貫通する孔を有していてもよい。孔は、例えば、ヘルメット状の形状の頂点を貫通するように設けられる。当該孔を貫通した引き上げ用索11が引き上げられることで、AUV20の先端部が位置調整部16に確実に入るようにすることができる。
【0048】
位置調整部16は、AUV20の位置調整のための移動が可能なように設けられる。AUV20が引き上げられてAUV20が位置調整部16に固定される際には、位置調整部16は、AUV20が支持部15に接触しない状態でAUV20に固定できる位置とされる。位置調整部16とAUV20とが固定されると、AUV20が支持部15に支持される位置になるように位置調整部16は移動される。位置調整部16の移動は、回転移動であってもよい。位置調整部16の移動は、例えば、航空機30に設けられる従来のアクチュエータ等の駆動部によって行われればよい。
【0049】
揚収システム10における上述した各構成要素の動作は、揚収システム10が備えるコンピュータ等の制御装置によって行われればよい。動作の制御は、自律的に行われてもよいし、外部からの操作によって行われてもよい。以上が、引き上げ用索11に固定されたAUV20を航空機30の格納部31に収容する工程のための構成である。
【0050】
引き続いて、
図1、
図2及び
図4を用いて本実施形態に係るAUV20を航空機30の格納部31に水中から揚収する際の本実施形態に係る揚収システム10及びAUV20の動作を説明する。
図1に示すように、航空機30は、まずAUV20の近傍に着水する。続いて、航空機30の底面のドア32が解放される。続いて、航空機30から、引き上げ用索11が水中に吊り下げられて沈められる。引き上げ用索11に設けられた水中の出射部12は誘導光を出射する。また、引き上げ用索11に設けられた水中の音波発生装置13は誘導音波を出力する。
【0051】
AUV20は、揚収システム10からの誘導光及び誘導音波を検出して、引き上げ用索11を見つけ引き上げ用索11に向かって移動する。誘導光の検出による移動は、以下のように行われる。AUV20では、カメラ23によって水中が撮像される。続いて、撮像された画像から、検出部241によって誘導光が検出されて、引き上げ用索11の位置が検出される。続いて、検出された引き上げ用索11の位置に基づいて、移動部242によってAUV20が引き上げ用索11に向かって移動させられる。
【0052】
図4(a)に示すようにAUV20の固定用部材22が引き上げ用索11を挟むことができる位置にAUV20が移動されると、
図4(b)に示すように固定部243による制御によって、固定用部材22が引き上げ用索11を挟み、これによりAUV20が引き上げ用索11に固定される。
【0053】
続いて、
図2(a)に示すように支持部15が水中に回転移動する。なお、
図2(a)に示すような支持部15の水中への回転移動は、引き上げ用索11が航空機30から水中に吊り下げられる前に行われてもよい。続いて、
図2(b)に示すように引き上げ用索11が、引き上げ用索11に固定されたAUV20と共に水中で引き上げられる。水中で引き上げられたAUV20は、水中で位置調整部16に固定される。続いて、位置調整部16の移動によって、AUV20は支持部15によって支持される位置に移動される。続いて、水中の支持部15が、AUV20を支持した状態で格納部31に向かうように回転移動し、AUV20を格納部31に収容する。AUV20が格納部31に収容されると、航空機30の底面のドア32が閉められる。以上が、本実施形態に係るAUV20を航空機30の格納部31に揚収する際の本実施形態に係る揚収システム10及びAUV20の動作である。
【0054】
続いて、
図6を用いて本実施形態に係るAUV20を航空機30の格納部31から水中に投入する際の本実施形態に係る揚収システム10及びAUV20の動作を説明する。
図6(a)に示すように、航空機30は、AUV20を投入する水域に着水する。続いて、航空機30の底面のドア32が解放される。続いて、
図6(b)に示すように、格納部31において、AUV20を支持している支持部15が、水中に向かうように回転移動する。この際、AUV20は、予め支持部15に固定されていてもよい。即ち、AUV20は、予め支持部15にロックされていてもよい。例えば、AUV20は、紐状の部材19で支持部15に括り付けられる。なお、この際、AUV20の向きは揚収される際と逆向きになっていてもよい。即ち、AUV20の固定用部材22が設けられる先端部が上向きではなく、下向きになっていてもよい。
【0055】
続いて、
図6(c)に示すように、支持部15に対するAUV20の固定が解かれる。即ち、AUV20のロックが解除される。例えば、紐状の部材19が切断される。紐状の部材19及び切断の機構は、従来のものが用いられてもよい。続いて、
図6(d)に示すように、AUV20は支持部15から離れて、自重によって水中で沈降する。以上が、本実施形態に係るAUV20を航空機30の格納部31から水中に投入する際の本実施形態に係る揚収システム10及びAUV20の動作である。
【0056】
本実施形態において、揚収システム10の出射部12から出射される誘導光によれば、AUV20が水中で高精度に引き上げ用索の位置を検出することができる。また、本実施形態に係る水中航走体であるAUV20では、誘導光の検出によって、水中で高精度に引き上げ用索11の位置を検出することができる。従って、本実施形態によれば、AUV20を引き上げ用索11に高精度に誘導することができ、AUV20を適切かつ確実に揚収することができる。
【0057】
また、本実施形態のように、異なる位置に設けられる出射部12は、互いに異なる波長の誘導光を出射してもよい。この構成によれば、AUV20を引き上げ用索11に更に高精度に誘導することができ、AUV20を更に適切かつ確実に揚収することができる。但し、複数の出射部12は、互いに異なる波長の誘導光を出射する必要はなく、全て同一の波長の誘導光を出射してもよい。
【0058】
また、本実施形態では、支持部15が、水中においてAUV20を支持し、支持した状態で回転移動してAUV20が格納された格納部31の一部となる。従って、適切にAUV20を母機である航空機30に格納できる。また、揚収を行うための機構と揚収したAUV20を格納する構成とが一部共通となっているため、母機である航空機30に広いスペースを必要としない。
【0059】
また、本実施形態のようにAUV20を水中で捕捉することで、海象条件の影響を低減することができる。例えば、波浪による衝突でのAUV20又は母機である航空機30の破損を防止することができる。また、船舶の甲板上に引き上げる必要がないため、振れ止め索が不要となる。従って、本実施形態によれば、航空機30等の小型の母機にAUV20を揚収する場合であっても適切にAUV20を揚収することができる。
【0060】
また、本実施形態のように、支持部15が水中に位置している際には、支持部15自体が水中での抵抗となる。そのため、船舶のキールと同様の働きによって航空機30の同様を軽減することができる。
【0061】
また、水中から直接、AUV20を揚収することで、揚収システム10を小型及び軽量化することができる。通常、水中でのAUV20の重量(水中重量)はほぼ0(ゼロ)になるように設計されている。従って、ウィンチ14を使用してAUV20を引き寄せるときの力(張力)は無視できる。そのため、引き上げ用索11として軽量のものを使用することでき、また、ウィンチ14として小型及び軽量のものを用いることができる。また、支持部15が重くなると、支持部15を動かす駆動部17も大きくなるため、支持部15の構造を航空機30の機体とは切り離し、AUV20を格納することに特化した台座としている。
【0062】
また、本実施形態のように揚収システム10は、位置調整部16を更に備えてもよい。この構成によれば、より適切かつ確実にAUV20を支持部15に支持させることができ、その結果、より適切かつ確実にAUV20を揚収することができる。また、直接AUV20が支持部15に接触する場合、AUV20が支持部15に強く接触してAUV20が損傷するおそれがあるが、位置調整部16によってAUV20が支持部15されるようにされることでその可能性を低減することができる。
【0063】
また、位置調整部16は、AUV20の先端部に被せられる形状であると共に、引き上げ用索11が貫通する孔を有することとしてもよい。この構成によれば、適切かつ確実に位置調整部16を構成することができ、適切かつ確実に本実施形態に係る揚収システム10を実施することができる。但し、位置調整部16は、支持部15に対するAUV20の位置を調整できるものであれば、上記以外の構成であってもよい。また、揚収システム10は、位置調整部16を備えない構成であってもよい。
【0064】
また、本実施形態のように支持部15は、棒状の部材を組み合わせて構成されていてもよい。この構成によれば、支持部15に対する水の抵抗を軽減させることができ、その結果、より適切かつ確実に水中航走体を揚収することができる。但し、支持部15は、上記の構成である必要はなく、AUV20を支持して揚収できるものであれば、上記以外の構成であってもよい。
【0065】
なお、引き上げ用索11に固定されたAUV20を母機である航空機30に収容する工程に係る、上述した揚収システム10、AUV20及び航空機30の構成は、AUVを母機に収容可能なものであれば、必ずしも上記の構成でなくてもよい。
【0066】
また、本実施形態の揚収システム10を用いると共に母機である航空機30として自律型の無人航空機を用いることとすれば、無人でのAUV20の着水及び揚収が可能となる。
【0067】
本開示の揚収システム及び水中航走体は、以下の構成を有する。
[1]水中航走体を水中から揚収する揚収システムであって、
水中航走体が固定されて水中から引き上げるための引き上げ用索を備え、
前記引き上げ用索は、長さ方向における間隔をあけた複数の位置に、水中航走体を誘導するための誘導光を出射する出射部を有する揚収システム。
[2]異なる位置に設けられる前記出射部は、互いに異なる波長の誘導光を出射する[1]に記載の揚収システム。
[3][1]又は[2]に記載の揚収システムの揚収対象である水中航走体であって、
前記揚収システムに備えられる引き上げ用索から出射される誘導光を検出して、引き上げ用索の位置を検出する検出手段と、
前記検出手段によって検出された引き上げ用索の位置に基づいて、自身を移動させる移動手段と、
前記移動手段による移動に応じて、自身を前記引き上げ用索に固定させる固定手段と、
を備える水中航走体。
【符号の説明】
【0068】
10…揚収システム、11…引き上げ用索、12(12a,12b,12c,12d)…出射部、13…音波発生装置、14…ウィンチ、15…支持部、16…位置調整部、17…駆動部、18…低反発部材、19…紐状の部材、20…AUV、21…本体、22…固定用部材、23…カメラ、24…制御装置、241…検出部、242…移動部、243…固定部、30…航空機、31…格納部、32…ドア。