(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023170065
(43)【公開日】2023-12-01
(54)【発明の名称】防炎シート及びその製造方法、並びに電池モジュール
(51)【国際特許分類】
F16L 59/04 20060101AFI20231124BHJP
H01M 10/6555 20140101ALI20231124BHJP
H01M 10/625 20140101ALI20231124BHJP
H01M 10/643 20140101ALI20231124BHJP
H01M 10/647 20140101ALI20231124BHJP
H01M 10/651 20140101ALI20231124BHJP
H01M 10/658 20140101ALI20231124BHJP
【FI】
F16L59/04
H01M10/6555
H01M10/625
H01M10/643
H01M10/647
H01M10/651
H01M10/658
【審査請求】未請求
【請求項の数】21
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022081523
(22)【出願日】2022-05-18
(71)【出願人】
【識別番号】000000158
【氏名又は名称】イビデン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】川崎 浩徳
【テーマコード(参考)】
3H036
5H031
【Fターム(参考)】
3H036AA09
3H036AB13
3H036AB15
3H036AB18
3H036AB24
3H036AC03
3H036AE01
5H031AA09
5H031CC01
5H031EE03
5H031EE04
5H031HH08
5H031KK02
(57)【要約】
【課題】断熱効果や防炎効果により優れることに加えて、ある電池セルが熱暴走を起こしたときでも隣接する電池セルへの熱の伝搬を抑えることができる防炎シートを提供する。また、簡便な方法により、上記防炎シートを製造することができる防炎シートの製造方法を提供する。
【解決手段】防炎シート1は、無機繊維又は不融化繊維を含む断熱材10と、断熱材中に分散して存在する、セラミックス製の支持体20と、を有する。また、上記防炎シート1は、断熱材10の表面に支持体20を散布した状態で、あるいは複数枚の断熱材10を用意し、下層の断熱材10の表面に支持体20を散布し、その上に上層の断熱材10を載置した状態で、断熱材10の厚さ方向に押圧して製造される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
無機繊維又は不融化繊維を含む断熱材と、前記断熱材中に分散して存在する、セラミックス製の支持体と、を有することを特徴とする防炎シート。
【請求項2】
前記セラミックスが、アルミナ、シリカ、ジルコニア、ガラス及びムライトから選ばれる少なくとも1つであることを特徴とする請求項1に記載の防炎シート。
【請求項3】
前記セラミックスが、発泡セラミックスであることを特徴とする請求項1に記載の防炎シート。
【請求項4】
前記支持体の前記断熱材の厚さ方向における寸法が、前記断熱材の厚さの10%~90%であることを特徴とする請求項1に記載の防炎シート。
【請求項5】
前記支持体が、前記断熱材1m2当たり、20g~300gの密度で分散していることを特徴とする請求項1に記載の防炎シート。
【請求項6】
前記支持体が、球体であることを特徴とする請求項1に記載の防炎シート。
【請求項7】
前記無機繊維は、平均繊維径、形状及びガラス転移点から選択された少なくとも1種の性状が互いに異なる第1の無機繊維及び第2の無機繊維を有することを特徴とする請求項1に記載の防炎シート。
【請求項8】
前記第1の無機繊維の平均繊維径が、前記第2の無機繊維の平均繊維径よりも大きく、かつ、
前記第1の無機繊維が線状又は針状であり、前記第2の無機繊維が樹枝状又は縮れ状であることを特徴とする請求項7に記載の防炎シート。
【請求項9】
前記第1の無機繊維は非晶質の繊維であり、
前記第2の無機繊維は、前記第1の無機繊維よりガラス転移点が高い非晶質の繊維、及び、結晶質の繊維から選択される少なくとも1種の繊維であり、
前記第1の無機繊維の平均繊維径が、前記第2の無機繊維の平均繊維径よりも大きいことを特徴とする請求項7に記載の防炎シート。
【請求項10】
前記不融化繊維は、炭素含有量が55~95質量%であることを特徴とする請求項1に記載の防炎シート。
【請求項11】
前記不融化繊維は、短繊維からなることを特徴とする請求項10に記載の防炎シート。
【請求項12】
前記不融化繊維は、繊維径が1~30μmであることを特徴とする請求項10に記載の防炎シート。
【請求項13】
前記断熱材は、有機繊維を含むことを特徴とする請求項1に記載の防炎シート。
【請求項14】
前記断熱材は、無機粒子を含むことを特徴とする請求項1に記載の防炎シート。
【請求項15】
前記無機粒子は、互いに平均粒子径が異なる第1の無機粒子及び第2の無機粒子を含むことを特徴とする請求項14に記載の防炎シート。
【請求項16】
前記第1の無機粒子は、酸化物粒子、炭化物粒子、窒化物粒子及び無機水和物粒子から選択される少なくとも1種からなることを特徴とする請求項15に記載の防炎シート。
【請求項17】
前記第1の無機粒子は、ナノ粒子、中空粒子及び多孔質粒子から選択される少なくとも1種からなることを特徴とする請求項15に記載の防炎シート。
【請求項18】
前記第2の無機粒子は、金属酸化物粒子であることを特徴とする請求項15に記載の防炎シート。
【請求項19】
請求項1~18のいずれか1項に記載の防炎シートの製造方法であって、
前記断熱材の表面に前記支持体を散布した状態で、前記断熱材の厚さ方向に押圧することを特徴とする防炎シートの製造方法。
【請求項20】
請求項1~18のいずれか1項に記載の防炎シートの製造方法であって、
複数枚の前記断熱材を用意し、下層の前記断熱材の表面に前記支持体を散布し、その上に上層の前記断熱材を載置した状態で、前記断熱材の厚さ方向に全体を押圧することを特徴とする防炎シートの製造方法。
【請求項21】
複数の電池セルと、前記電池セルを収容する電池ケースと、請求項1~18のいずれか1項に記載の防炎シートと、を有する、電池モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防炎シート及びその製造方法、並びに防炎シートを備える電池モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境保護の観点から電動モータで駆動する電気自動車又はハイブリッド車などの開発が盛んに進められている。この電気自動車又はハイブリッド車などには、駆動用電動モータの電源となるための、複数の電池セルが直列又は並列に接続された組電池が搭載されている。
【0003】
この電池セルには、鉛蓄電池やニッケル水素電池などに比べて、高容量かつ高出力が可能なリチウムイオン二次電池が主に用いられている。しかし、内部短絡や過充電などが原因で、ある電池セルに熱暴走が生じた場合(すなわち、異常時)、隣接する他の電池セルへ熱の伝播が起こり熱暴走の連鎖を引き起こすおそれがある。
【0004】
そこで、隣接する電池セルの間の空間に、断熱材や防炎シートを配設することが行われており、断熱性能に優れるエアロゲルを用いた断熱材も使用されている。しかし、このエアロゲル断熱材は強度が弱く、熱暴走を起こした電池セルが膨張して隣接する電池セルとの距離が縮まり、熱が伝播する問題があった。この問題を解決するために、特許文献1では、エアロゲル断熱材中に、支持体として、樹脂支柱を配設することにより、電池セル間の距離を保つようにしている。
【0005】
また、電池セル間の距離を確保する技術としては、特許文献2の熱伝達抑制シートでは、シート状の第1の断熱材に、圧縮強度を高めるために、支持体として、バルク状の第2の断熱材を埋め込んでいる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2017-215014号公報
【特許文献2】特開2020-187868号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1では、別途作製した樹脂支柱を、エアロゲルからなる断熱材に刺し込む必要がある。また、エアロゲルは、断熱性能に優れるものの高価であり、飛散性があることから作業負荷がかかるという問題もある。
【0008】
また、特許文献2でも、シート状の第1の断熱材の適所に貫通孔を形成する作業や、貫通孔にバルク状の第2の断熱材を埋め込む作業が必要である。
【0009】
そこで本発明は、断熱効果や防炎効果により優れることに加えて、ある電池セルが熱暴走を起こしたときでも隣接する電池セルへの熱の伝搬を抑えることができる防炎シートを提供することを目的とする。また、本発明は、簡便な方法により、上記防炎シートを製造することができる防炎シートの製造方法を提供することを目的とする。
さらに、本発明は、このような防炎シートを備え、断熱効果や防炎効果により優れる電池モジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の上記目的は、防炎シートに係る下記[1]の構成により達成される。
【0011】
[1] 無機繊維又は不融化繊維を含む断熱材と、前記断熱材中に分散して存在する、セラミックス製の支持体と、を有することを特徴とする防炎シート。
【0012】
また、防炎シートに係る本発明の好ましい実施形態は、以下の[2]~[18]に関する。
【0013】
[2] 前記セラミックスが、アルミナ、シリカ、ジルコニア、ガラス及びムライトから選ばれる少なくとも1つであることを特徴とする[1]に記載の防炎シート。
[3] 前記セラミックスが、発泡セラミックスであることを特徴とする[1]に記載の防炎シート。
[4] 前記支持体の前記断熱材の厚さ方向における寸法が、前記断熱材の厚さの10%~90%であることを特徴とする[1]に記載の防炎シート。
[5] 前記支持体が、前記断熱材1m2当たり、20g~300gの密度で分散していることを特徴とする[1]に記載の防炎シート。
[6] 前記支持体が、球体であることを特徴とする[1]に記載の防炎シート。
[7] 前記無機繊維は、平均繊維径、形状及びガラス転移点から選択された少なくとも1種の性状が互いに異なる第1の無機繊維及び第2の無機繊維を有することを特徴とする[1]に記載の防炎シート。
[8] 前記第1の無機繊維の平均繊維径が、前記第2の無機繊維の平均繊維径よりも大きく、かつ、
前記第1の無機繊維が線状又は針状であり、前記第2の無機繊維が樹枝状又は縮れ状であることを特徴とする[7]に記載の防炎シート。
[9] 前記第1の無機繊維は非晶質の繊維であり、
前記第2の無機繊維は、前記第1の無機繊維よりガラス転移点が高い非晶質の繊維、及び、結晶質の繊維から選択される少なくとも1種の繊維であり、
前記第1の無機繊維の平均繊維径が、前記第2の無機繊維の平均繊維径よりも大きいことを特徴とする[7]に記載の防炎シート。
[10] 前記不融化繊維は、炭素含有量が55~95質量%であることを特徴とする[1]に記載の防炎シート。
[11] 前記不融化繊維は、短繊維からなることを特徴とする[10]に記載の防炎シート。
[12] 前記不融化繊維は、繊維径が1~30μmであることを特徴とする[10]に記載の防炎シート。
[13] 前記断熱材は、有機繊維を含むことを特徴とする[1]に記載の防炎シート。
[14] 前記断熱材は、無機粒子を含むことを特徴とする[1]に記載の防炎シート。
[15] 前記無機粒子は、互いに平均粒子径が異なる第1の無機粒子及び第2の無機粒子を含むことを特徴とする[14]に記載の防炎シート。
[16] 前記第1の無機粒子は、酸化物粒子、炭化物粒子、窒化物粒子及び無機水和物粒子から選択される少なくとも1種からなることを特徴とする[15]に記載の防炎シート。
[17] 前記第1の無機粒子は、ナノ粒子、中空粒子及び多孔質粒子から選択される少なくとも1種からなることを特徴とする[15]に記載の防炎シート。
[18] 前記第2の無機粒子は、金属酸化物粒子であることを特徴とする[15]に記載の防炎シート。
【0014】
また、本発明の上記目的は、防炎シートの製造方法に係る下記[19]、[20]の構成により達成される。
【0015】
[19] [1]~[18]のいずれか1つに記載の防炎シートの製造方法であって、
前記断熱材の表面に前記支持体を散布した状態で、前記断熱材の厚さ方向に押圧する、防炎シートの製造方法。
[20] [1]~[18]のいずれか1つに記載の防炎シートの製造方法であって、
複数枚の前記断熱材を用意し、下層の前記断熱材の表面に前記支持体を散布し、その上に上層の前記断熱材を載置した状態で、前記断熱材の厚さ方向に全体を押圧する、防炎シートの製造方法。
【0016】
さらに、本発明の上記目的は、電池モジュールに係る下記[21]の構成により達成される。
【0017】
[21] 複数の電池セルと、前記電池セルを収容する電池ケースと、[1]~[18]のいずれか1つに記載の防炎シートと、を有する、電池モジュール。
【発明の効果】
【0018】
本発明の防炎シートは、断熱材中に支持体が分散しているため、ある電池セルが熱暴走を起こしたときでも、隣接する電池セルとの距離が確保され、熱の伝搬を抑えることができる。また、本発明の防炎シートの製造方法は、断熱材の表面に支持体を散布し、その状態で断熱材の厚さ方向に押圧するだけでよいため、簡便な方法により、上記防炎シートを製造することができる。
【0019】
さらに、本発明の電池モジュールは、電池セル間に上記の防炎シートを配設したものであり、熱暴走の連鎖をより確実に防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】
図1は、本発明の防炎シートの実施の形態を示す断面図である。
【
図2】
図2は、支持体の厚さを説明するための図であって、
図2(A)は直方体の支持体を用いた例であり、
図2(B)は長球の支持体を用いた例である。
【
図3】
図3は、本発明の電池モジュールの実施の形態を示す断面図である。
【
図4】
図4は、実施例1、実施例2、比較例1及び比較例2の各防炎シートの反対面の最高温度を示す図である。
【
図5】
図5は、実施例1、実施例2、比較例1及び比較例2の各防炎シートの作製直後と押圧加熱後の厚さを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態に関して図面を参照して詳細に説明する。なお、本発明は、以下で説明する実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、任意に変更して実施することができる。
【0022】
[防炎シートの全体構造]
図1に示すように、本実施形態の防炎シート1は、断熱材10の内部に、支持体20が分散している。なお、後述するように、断熱材10は無機繊維や無機粒子などを含むことから、これらが脱落しないように、また断熱材10の保護用に、表裏両面を表皮材30で被覆してもよい。
【0023】
<支持体>
支持体20は、ある電池セルが熱暴走を起こして膨張した際に、防炎シート1が押圧されて隣接する電池セルとの間隔が狭くなるのを防ぐためのスペーサとして機能する。また、支持体20は、耐熱性を有し、熱伝導率の低い材料からなることが好ましい。支持体20は、断熱材10の断熱性能を低下させないように、断熱性能に優れることが好ましい。
さらに、熱暴走を起こした電池セルが高温になっても、隣接する電池セルへの伝熱を抑えるために、熱伝導率は低いほど好ましい。このような特性を持つ材料としては、セラミックスであることが好ましく、具体的には、アルミナやシリカやジルコニア、ガラス、ムライトが好ましい。また、発泡セラミックスであってもよく、多数の空気孔により断熱性能が高められるとともに、防炎シート1の軽量化を図ることもできる。
【0024】
支持体20の形状には制限はなく、例えば、球、ラグビーボールのような長球、立方体、直方体、多面体、円柱、不定形の塊など種々可能である。中でも、電池セルとの接触部分、あるいは表皮材30がある場合は表皮材30との接触部分が点となり、接触面積が最も小さくなることから、球や長球が好ましい。接触面積が小さくなるほど、電池セル間の伝熱を抑制することができる。なお、特許文献2の熱伝達抑制シートでは、支持体として円柱状の第2の断熱材を埋め込んでいるが、第2の断熱材は、円形の面で電池セルと接触するため、接触面積が大きくなる。
【0025】
後述する製造方法に記載されているように、支持体20は、断熱材10の表面に散布される。その際、水平投影面積が最も大きい部分の直下部分が、断熱材10の表面上に載置された状態となる。
例えば、
図2(A)に示すように、直方体の支持体20では、長方形の面が断熱材10の表面上に載置され、その高さ(D)が、支持体20の断熱材10の厚さ方向における寸法(H)となる。また、
図2(B)に示すように、長球の支持体20では、最も楕円が大きくなる部分の直下部分が断熱材10の表面上に載置され、最も楕円が大きくなる部分の断面の短径(L)が支持体20の寸法(H)となる。
さらに、図示は省略するが、立方体の支持体20では、何れかの面が断熱材10の表面上に載置され、辺の長さが支持体20の寸法(H)になる。同じく図示は省略するが、支持体20が球の場合は、直径が支持体20の寸法(H)になる。
【0026】
また、支持体20の寸法(H)は、断熱材10の厚さの10%~90%であることが好ましい。これにより、異常時において、熱暴走を起こした電池セルと隣接する電池セルとは、断熱材10の厚さの10%以上の間隔を維持し、熱連鎖を確実に抑えることができる。なお、より好ましくは、支持体20の寸法(H)が断熱材10の厚さの20%以上、更に好ましくは、支持体20の寸法(H)が断熱材10の厚さの30%以上、最も好ましくは、支持体20の寸法(H)が断熱材10の厚さの40%以上である。
また、支持体20の寸法(H)は、断熱材10の厚さの100%、即ち断熱材10の厚さと同じでもってもよいが、防炎シート1は、電池セルとの接触状態をよくするために、電池セル間に圧縮状態で配設されるため、支持体20の寸法(H)が断熱材10の厚さと同じであると、防炎シート1を圧縮することができなくなる。そのため、支持体20の寸法(H)を、断熱材10の厚さの90%以下にすることが好ましい。なお、より好ましくは、支持体20の寸法(H)が断熱材10の厚さの80%以下、更に好ましくは、支持体20の寸法(H)が断熱材10の厚さの70%以下、最も好ましくは、支持体20の寸法(H)が断熱材10の厚さの60%以下である。
【0027】
断熱材10に対する支持体20の割合は、断熱材10の1m2当たり、20g~300gの密度で分散していることが好ましい。
上記値が20g/m2未満では、防炎シート1に支持体20が存在していない個所が多くなり、異常時に隣接する電池セルの距離を確保できないおそれがある。なお、より好ましくは、上記値が50g/m2以上、更に好ましくは、上記値が75g/m2以上、最も好ましくは、上記値が100g/m2以上である。
一方、上記値が300g/m2を超えると、断熱材10による断熱性能に悪影響を及ぼすおそれがある。なお、より好ましくは、上記値が250g/m2以下、更に好ましくは、上記値が200g/m2以下、最も好ましくは、上記値が150g/m2以下である。
【0028】
<断熱材>
断熱材10には制限はないが、断熱性能に優れることから下記の配合材料を含むことが好ましい。
【0029】
(無機繊維)
断熱材10は、無機繊維を含むことができるが、平均繊維径、形状及びガラス転移点から選択された少なくとも1種の性状が互いに異なる第1の無機繊維及び第2の無機繊維を有することが好ましい。性状が互いに異なる2種の無機繊維を含有することにより、断熱材10の機械的強度、並びに後述されるように無機粒子を含有する場合の無機粒子の保持性を向上させることができる。
【0030】
(平均繊維径及び繊維形状が異なる2種の無機繊維)
2種の無機繊維を含有する場合に、第1の無機繊維の平均繊維径が、第2の無機繊維の平均繊維径よりも大きく、第1の無機繊維が線状又は針状であり、第2の無機繊維が樹枝状又は縮れ状であることが好ましい。平均繊維径が大きい(太径の)第1の無機繊維は、断熱材10の機械的強度や形状保持性を向上させる効果を有する。2種の無機繊維のうち一方、例えば、第1の無機繊維を第2の無機繊維よりも太径にすることにより、上記効果を得ることができる。防炎シート1には、外部からの衝撃が作用することがあるため、断熱材10に第1の無機繊維が含まれることにより、耐衝撃性が高まる。外部からの衝撃としては、例えば電池セルの膨張による押圧力や、電池セルの発火による風圧などである。
【0031】
また、断熱材10の機械的強度や形状保持性を向上させるためには、第1の無機繊維が線状又は針状であることが特に好ましい。なお、線状又は針状の繊維とは、後述の捲縮度が例えば10%未満、好ましくは5%以下である繊維をいう。
【0032】
より具体的には、断熱材10の機械的強度や形状保持性を向上させるためには、第1の無機繊維の平均繊維径は1μm以上であることが好ましく、3μm以上であることがより好ましい。第1の無機繊維が太すぎると、成形性や加工性が低下するおそれがあるため、第1の無機繊維の平均繊維径は20μm以下であることが好ましく、15μm以下であることがより好ましい。
【0033】
なお、第1の無機繊維は長すぎても成形性や加工性が低下するおそれがあるため、繊維長を100mm以下とすることが好ましい。さらに、第1の無機繊維は短すぎても形状保持性や機械的強度が低下するため、繊維長を0.1mm以上とすることが好ましい。
【0034】
一方、平均繊維径が細い(細径の)第2の無機繊維は、有機繊維や無機粒子を配合する場合、これらの保持性を向上させるとともに、断熱材10の柔軟性を高める効果を有する。したがって、第2の無機繊維を第1の無機繊維よりも細径にすることが好ましい。
【0035】
より具体的に、有機繊維や無機粒子の保持性を向上させるためには、第2の無機繊維は変形が容易で、柔軟性を有することが好ましい。したがって、細径である第2の無機繊維は、平均繊維径が1μm未満であることが好ましく、0.1μm以下であることがより好ましい。ただし、細すぎると破断しやすく、有機繊維や無機粒子の保持能力が低下する。また、有機繊維や無機粒子を保持せずに、繊維が絡み合ったままで断熱材中に存在する割合が多くなり、有機繊維や無機粒子の保持能力の低下に加えて、成形性や形状保持性にも劣るようになる。そのため、第2の無機繊維の平均繊維径は1nm以上が好ましく、10nm以上がより好ましい。
【0036】
なお、第2の無機繊維は、長くなりすぎると成形性や形状保持性が低下するため、第2の無機繊維の繊維長は0.1mm以下であることが好ましい。
【0037】
また、第2の無機繊維は、樹枝状又は縮れ状であることが好ましい。第2の無機繊維がこのような形状であると、有機繊維や無機粒子と良好に絡み合い、有機繊維や無機粒子の保持能力が向上する。また、防炎シート1が押圧力や風圧を受けた際に、第2の無機繊維が滑って移動することが抑制され、このことにより、特に外部からの押圧力や衝撃に抗する機械的強度が向上する。
【0038】
なお、樹枝状とは、2次元的又は3次元的に枝分かれした構造であり、例えば羽毛状、テトラポット形状、放射線状、立体網目状である。
【0039】
第2の無機繊維が樹枝状である場合に、その平均繊維径は、SEMによって幹部及び枝部の径を数点測定し、これらの平均値を算出することにより得ることができる。
【0040】
また、縮れ状とは、繊維が様々な方向に屈曲した構造である。縮れ形態を定量化する方法の一つとして、電子顕微鏡写真からその捲縮度を算出することが知られており、例えば下記式から算出することができる。
捲縮度(%)=(繊維長さ-繊維末端間距離)/(繊維長さ)×100
ここで、繊維長さ、繊維末端間距離ともに電子顕微鏡写真上での測定値である。すなわち、2次元平面上へ投影された繊維長、繊維末端間距離であり、現実の値よりも短くなっている。この式に基づき、第2の無機繊維の捲縮度は10%以上が好ましく、30%以上がより好ましい。捲縮度が小さいと、有機繊維や無機粒子の保持能力が低下し、第2の無機繊維同士、第1の無機繊維と第2の無機繊維との絡み合い(ネットワーク)が形成されにくくなる。
【0041】
(ガラス転移点が互いに異なる2種の無機繊維)
2種の無機繊維を含有する場合に、第1の無機繊維は非晶質の繊維であり、第2の無機繊維は、第1の無機繊維よりガラス転移点が高い非晶質の繊維、及び結晶質の繊維から選択される少なくとも1種の繊維であることが好ましい。
【0042】
結晶質の無機繊維の融点は、通常非晶質の無機繊維のガラス転移点より高い。そのため、第1の無機繊維は、高温に晒されると、その表面が第2の無機繊維より先に軟化して、有機繊維や無機粒子を結着する。したがって、第1の無機繊維を含有させることにより、断熱材10の機械的強度を向上させることができる。
【0043】
第1の無機繊維としては、具体的には、融点が700℃未満である無機繊維が好ましく、多くの非晶質の無機繊維を用いることができる。中でも、SiO2を含む繊維であることが好ましく、安価で、入手も容易で、取扱い性等に優れることから、ガラス繊維であることがより好ましい。
【0044】
第2の無機繊維は、上述のとおり、第1の無機繊維よりガラス転移点が高い非晶質の繊維、及び結晶質の繊維から選択される少なくとも1種からなる繊維である。第2の無機繊維としては、多くの結晶性の無機繊維を用いることができる。
【0045】
第2の無機繊維が結晶質の繊維からなるものであるか、又は第1の無機繊維よりもガラス転移点が高いものであると、高温にさらされたときに、第1の無機繊維が軟化しても、第2の無機繊維は溶融又は軟化しない。したがって、例えば電池モジュールに適用した場合、熱暴走が起こっても形状を維持する。
【0046】
また、第2の無機繊維が溶融又は軟化しないと、粒子間、粒子と繊維との間、及び各繊維間における微小な空間が維持されるため、空気による断熱効果が発揮される。
【0047】
第2の無機繊維が結晶質である場合に、具体的には、シリカ繊維、アルミナ繊維、アルミナシリケート繊維、ジルコニア繊維、カーボンファイバ、ソルブルファイバ、リフラクトリーセラミックファイバ、エアロゲル複合材、マグネシウムシリケート繊維、アルカリアースシリケート繊維、チタン酸カリウム繊維等のセラミックス系繊維、ガラス繊維、グラスウール等のガラス系繊維、ロックウール、バサルトファイバ、ウォラストナイト等の鉱物系繊維等を使用することができる。
【0048】
また、融点が1000℃を超えるものであると、電池セルの熱暴走が発生しても、第2の無機繊維は溶融又は軟化せず、その形状を維持することができるため、好適に使用することができる。上記第2の無機繊維として挙げられた繊維のうち、例えば、シリカ繊維、アルミナ繊維及びアルミナシリケート繊維等のセラミックス系繊維、並びに鉱物系繊維を使用することがより好ましく、この中でも融点が1000℃を超えるものを使用することが更に好ましい。
【0049】
また、第2の無機繊維が非晶質である場合であっても、第1の無機繊維よりもガラス転移点が高い繊維であれば、使用することができる。例えば、第1の無機繊維よりガラス転移点が高いガラス繊維を第2の無機繊維として用いてもよい。
【0050】
なお、第2の無機繊維としては、例示した種々の無機繊維を単独で使用してもよいし、2種以上を混合使用してもよい。
【0051】
上記のとおり、第1の無機繊維は第2の無機繊維よりもガラス転移点が低く、高温にさらされたときに、第1の無機繊維が先に軟化するため、第1の無機繊維で有機繊維や無機粒子を結着することができる。しかし、例えば、第2の無機繊維が非晶質であって、その繊維径が第1の無機繊維の繊維径よりも細い場合に、第1の無機繊維と第2の無機繊維とのガラス転移点が接近していると、第2の無機繊維が先に軟化するおそれがある。したがって、第2の無機繊維が非晶質の繊維である場合に、第2の無機繊維のガラス転移点は、第1の無機繊維のガラス転移点よりも100℃以上高いことが好ましく、300℃以上高いことがより好ましい。
【0052】
なお、第1の無機繊維の繊維長は、100mm以下であることが好ましく、0.1mm以上とすることが好ましい。第2の無機繊維の繊維長は、0.1mm以下であることが好ましい。これらの理由については、上記したとおりである。
【0053】
(ガラス転移点及び平均繊維径が互いに異なる2種の無機繊維)
2種の無機繊維を含有する場合に、第1の無機繊維は非晶質の繊維であり、第2の無機繊維は、第1の無機繊維よりガラス転移点が高い非晶質の繊維、及び、結晶質の繊維から選択される少なくとも1種の繊維であり、第1の無機繊維の平均繊維径が、第2の無機繊維の平均繊維径よりも大きいことが好ましい。
【0054】
上述のとおり、第1の無機繊維の平均繊維径が、第2の無機繊維よりも大きいことが好ましい。また、太径の第1の無機繊維が非晶質の繊維であり、細径の第2の無機繊維が、第1の無機繊維よりガラス転移点が高い非晶質の繊維、及び結晶質の繊維から選択される少なくとも1種からなる繊維であることが好ましい。これにより、第1の無機繊維のガラス転移点が低く、早く軟化するため、温度の上昇に伴って膜状となって硬くなる。一方、細径である第2の無機繊維が、第1の無機繊維よりガラス転移点が高い非晶質の繊維、及び結晶質の繊維から選択される少なくとも1種からなる繊維であると、温度が上昇しても細径の第2の無機繊維が繊維の形状で残存するため、断熱材10の構造を保持し、粉落ちを防止することができる。
【0055】
なお、この場合であっても、第1の無機繊維の繊維長は、100mm以下であることが好ましく、0.1mm以上とすることが好ましい。第2の無機繊維の繊維長は、0.1mm以下であることが好ましい。これらの理由については、上記したとおりである。
【0056】
(第1の無機繊維及び第2の無機繊維の各含有量)
2種の無機繊維を含有する場合に、第1の無機繊維の含有量は、断熱材10の全質量に対して3質量%以上30質量%以下であることが好ましく、第2の無機繊維の含有量は、断熱材10の全質量に対して3質量%以上30質量%以下であることが好ましい。
【0057】
また、第1の無機繊維の含有量は、断熱材10の全質量に対して、5質量%以上15質量%以下であることがより好ましく、第2の無機繊維の含有量は、断熱材10の全質量に対して、5質量%以上15質量%以下であることがより好ましい。このような含有量にすることにより、第1の無機繊維による形状保持性や押圧力耐性、抗風圧性、及び第2の無機繊維による無機粒子の保持能力がバランスよく発現される。
【0058】
(その他の配合材料)
断熱材10には、上記第1の無機繊維及び第2の無機繊維の他に、異なる無機繊維が含まれていてもよい。また、有機バインダや有機繊維、無機粒子を含んでもよい。
【0059】
(樹脂バインダ)
上記無機繊維は、樹脂バインダにより結着することもできる。樹脂バインダとしては、後述する有機繊維のガラス転移点よりも低いガラス転移点を有するものであれば、特に限定されない。例えば、スチレン-ブタジエン樹脂、アクリル樹脂、シリコン-アクリル樹脂及びスチレン樹脂から選択された少なくとも1種を含む樹脂バインダを使用することができる。
【0060】
樹脂バインダのガラス転移点は特に規定しないが、-10℃以上であることが好ましい。なお、樹脂バインダのガラス転移点が室温以上であると、樹脂バインダを有する断熱材10が室温で使用された場合に、断熱材10の強度をより一層向上させることができる。したがって、樹脂バインダのガラス転移点は、例えば20℃以上であることがより好ましく、30℃以上であることがさらに好ましく、50℃以上であることがさらにより好ましく、60℃以上であることが特に好ましい。
【0061】
樹脂バインダの含有量は、断熱材10の全質量に対して0.5質量%以上であることが好ましく、1質量%以上であることがより好ましい。また、20質量%以下であることが好ましく、10質量%以下であることがより好ましい。
【0062】
(有機繊維)
上記無機繊維の他に、有機繊維を含有してもよい。有機繊維としては、例えば、ポリビニルアルコール(PVA)繊維、ポリエチレン繊維、ナイロン繊維、ポリウレタン繊維及びエチレン-ビニルアルコール共重合体繊維から選択された少なくとも1種を使用することができる。
【0063】
なお、断熱材10の製造は抄造法にて行うことができるが、その際に加熱温度を250℃よりも高くすることは困難であるため、有機繊維のガラス転移点は、250℃以下とすることが好ましく、200℃以下とすることがより好ましい。
【0064】
有機繊維のガラス転移点の下限値も特に限定されないが、上記樹脂バインダのガラス転移点との差が10℃以上であれば、製造時の冷却工程において、半溶融状態であった有機繊維が完全に固化した後に、樹脂バインダが固化するため、樹脂バインダによる骨格の補強効果を十分に得ることができる。したがって、樹脂バインダのガラス転移点と、有機繊維のガラス転移点との差は、10℃以上であることが好ましく、30℃以上であることがより好ましい。
【0065】
一方、両者のガラス転移点の差が130℃以下であると、有機繊維が完全に固化してから、樹脂バインダが固化し始めるまでの時間を適切に調整することができ、樹脂バインダが良好な分散状態のまま固化するため、より一層骨格の補強効果を得ることができる。したがって、樹脂バインダのガラス転移点と、有機繊維のガラス転移点との差は、130℃以下であることが好ましく、120℃以下であることがより好ましく、100℃以下であることがさらに好ましく、80℃以下であることがさらにより好ましく、70℃以下であることが特に好ましい。
【0066】
また、2種類以上の有機繊維を含むこともできるが、その場合に、少なくとも1種の有機繊維が骨格として作用する有機繊維、すなわち、樹脂バインダのガラス転移点よりも高いガラス転移点を有する有機繊維であればよい。なお、樹脂バインダのガラス転移点と、少なくとも1種の有機繊維のガラス転移点との差は、上記と同様に、10℃以上であることが好ましく、30℃以上であることがより好ましく、130℃以下であることが好ましく、120℃以下であることがより好ましく、100℃以下であることがさらに好ましく、80℃以下であることがさらにより好ましく、70℃以下であることが特に好ましい。
【0067】
有機繊維及び樹脂バインダの含有量が適切に制御されていると、有機繊維による骨格としての機能を十分に得ることができるとともに、樹脂バインダによる骨格の補強効果を十分に得ることができる。有機繊維の含有量は、断熱材10の全質量に対して0.5質量%以上であることが好ましく、1質量%以上であることがより好ましい。また、12質量%以下であることが好ましく、8質量%以下であることがより好ましい。なお、樹脂バインダのガラス転移点よりも高いガラス転移点を有する複数の有機繊維を含む場合に、これら複数の有機繊維の合計量が、上記有機繊維の含有量の範囲内であることが好ましい。
【0068】
上述のとおり、2種類以上の有機繊維を含む場合に、少なくとも1種の有機繊維が、樹脂バインダのガラス転移点よりも高いガラス転移点を有するものであればよいが、その他の有機繊維として、ガラス転移点を有さない結晶状態の有機繊維を含有することがより好ましい。
【0069】
ガラス転移点を有さない結晶状態の有機繊維を含有することもできるが、この結晶状態の有機繊維は軟化点を持たないため、骨格となる有機繊維が軟化するような高温に晒された場合であっても、断熱材10の強度を維持することができる。また、結晶状態の有機繊維を含有することにより、常温において、この有機繊維も断熱材の骨格として作用する。
したがって、断熱材10の柔軟性や取り扱い性を向上させることができる。
【0070】
なお、結晶状態の有機繊維としては、ポリエステル(PET)繊維が挙げられる。
【0071】
また、断熱材10の製造において抄造法を行う際に、分散液として水を使用することが好ましいが、有機繊維は水への溶解度が低いことが好ましい。水への溶解度を示す指標として「水中溶解温度」を使用できるが、有機繊維の水中溶解温度は60℃以上であることが好ましく、70℃以上であることがより好ましく、80℃以上であることがさらに好ましい。
【0072】
有機繊維の繊維長についても特に限定されないが、成形性や加工性を確保する観点から、平均繊維長は10mm以下とすることが好ましい。一方、有機繊維を骨格として機能させ、断熱材の圧縮強度を確保する観点から、平均繊維長は0.5mm以上とすることが好ましい。
【0073】
(無機粒子)
さらに、無機粒子を含有することもできる。無機粒子の平均二次粒子径が0.01μm以上であると、入手しやすく、製造コストの上昇を抑制することができる。また、200μm以下であると、所望の断熱効果を得ることができる。したがって、無機粒子の平均二次粒子径は、0.01μm以上200μm以下であることが好ましく、0.05μm以上100μm以下であることがより好ましい。
【0074】
無機粒子として、単一の無機粒子を使用してもよいし、2種以上の無機粒子(第1の無機粒子及び第2の無機粒子)を組み合わせて使用してもよい。第1の無機粒子及び第2の無機粒子としては、熱伝達抑制効果の観点から、酸化物粒子、炭化物粒子、窒化物粒子及び無機水和物粒子から選択される少なくとも1種の無機材料からなる粒子を使用することが好ましく、酸化物粒子を使用することがより好ましい。また、第1の無機粒子及び第2の無機粒子の形状についても特に限定されないが、ナノ粒子、中空粒子及び多孔質粒子から選択される少なくとも1種を含むことが好ましく、具体的には、シリカナノ粒子、金属酸化物粒子、マイクロポーラス粒子や中空シリカ粒子等の無機バルーン、熱膨張性無機材料からなる粒子、含水多孔質体からなる粒子等を使用することもできる。
【0075】
なお、2種以上の熱伝達抑制効果が互いに異なる無機粒子を併用すると、多段に冷却することができ、吸熱作用をより広い温度範囲で発現できる。具体的には、大径粒子と小径粒子とを混合使用することが好ましい。例えば、一方の無機粒子として、ナノ粒子を使用する場合に、他方の無機粒子として、金属酸化物からなる無機粒子を含むことが好ましい。以下、小径の無機粒子を第1の無機粒子、大径の無機粒子を第2の無機粒子として、無機粒子についてさらに詳細に説明する。
【0076】
(第1の無機粒子)
(酸化物粒子)
第1の無機粒子として、酸化物粒子が好ましい。酸化物粒子は屈折率が高く、光を乱反射させる効果が強いため、特に異常発熱などの高温度領域において輻射伝熱を抑制することができる。酸化物粒子としては、シリカ、チタニア、ジルコニア、ジルコン、チタン酸バリウム、酸化亜鉛及びアルミナから選択された少なくとも1種の粒子を使用することができる。特に、シリカは断熱性が高い成分であり、チタニアは他の金属酸化物と比較して屈折率が高い成分であって、500℃以上の高温度領域において光を乱反射させ輻射熱を遮る効果が高いため、酸化物粒子としてシリカ及びチタニアを用いることが最も好ましい。
【0077】
酸化物粒子の粒子径は、輻射熱を反射する効果に影響を与えることがあるため、平均一次粒子径を所定の範囲に限定すると、より一層高い断熱性を得ることができる。すなわち、酸化物粒子の平均一次粒子径が0.001μm以上であると、加熱に寄与する光の波長よりも十分に大きく、光を効率よく乱反射させるため、500℃以上の高温度領域において防炎シート内における熱の輻射伝熱が抑制され、より一層断熱性を向上させることができる。一方、酸化物粒子の平均一次粒子径が50μm以下であると、圧縮されても粒子間の接点や数が増えず、伝導伝熱のパスを形成しにくいため、特に伝導伝熱が支配的な通常温度域の断熱性への影響を小さくすることができる。
【0078】
なお、本発明において平均一次粒子径は、顕微鏡で粒子を観察し、標準スケールと比較し、任意の粒子10個の平均をとることにより求めることができる。
【0079】
(ナノ粒子)
第1の無機粒子としてナノ粒子が好ましく、ナノ粒子は低密度であるため伝導伝熱を抑制し、更に空隙が細かく分散するため、対流伝熱を抑制する優れた断熱性を得ることができる。このため、通常の常温域の電池使用時において、隣接するナノ粒子間の熱の伝導を抑制することができる点で、ナノ粒子を使用することが好ましい。
【0080】
なお、ナノ粒子とは、球形又は球形に近い平均一次粒子径が1μm未満のナノメートルオーダーの粒子を表す。
【0081】
また、酸化物粒子として、平均一次粒子径が小さいナノ粒子を使用すると、電池セルの熱暴走に伴う膨張によって断熱材10の内部密度が上がった場合であっても、断熱材10の伝導伝熱の上昇を抑制することができる。これは、ナノ粒子が静電気による反発力で粒子間に細かな空隙ができやすく、かさ密度が低いため、クッション性があるように粒子が充填されるからであると考えられる。
【0082】
なお、第1の無機粒子としてナノ粒子を使用する場合に、上記ナノ粒子の定義に沿ったものであれば、材質について特に限定されない。例えば、シリカナノ粒子は、断熱性が高い材料であることに加えて、粒子同士の接点が小さいため、シリカナノ粒子により伝導される熱量は、粒子径が大きいシリカ粒子を使用した場合と比較して小さくなる。また、一般的に入手されるシリカナノ粒子は、かさ密度が0.1(g/cm3)程度であるため、例えば、断熱材10に対して大きな圧縮応力が加わった場合であっても、シリカナノ粒子同士の接点の大きさ(面積)や数が著しく大きくなることはなく、断熱性を維持することができる。したがって、ナノ粒子としてはシリカナノ粒子を使用することが好ましい。シリカナノ粒子としては、湿式シリカ、乾式シリカ及びエアロゲル等を使用することができる。
【0083】
ナノ粒子の平均一次粒子径を所定の範囲に限定すると、より一層高い断熱性を得ることができる。すなわち、ナノ粒子の平均一次粒子径を1nm以上100nm以下とすると、特に500℃未満の温度領域において、断熱材内における熱の対流伝熱及び伝導伝熱を抑制することができ、断熱性をより一層向上させることができる。また、圧縮応力が印加された場合であっても、ナノ粒子間に残った空隙と、多くの粒子間の接点が伝導伝熱を抑制し、防炎シート1の断熱性を維持することができる。また、ナノ粒子の平均一次粒子径は、2nm以上であることがより好ましく、3nm以上であることが更に好ましい。一方、ナノ粒子の平均一次粒子径は、50nm以下であることがより好ましく、10nm以下であることが更に好ましい。
【0084】
(無機水和物粒子)
無機水和物粒子は、発熱体からの熱を受けて熱分解開始温度以上になると熱分解し、自身が持つ結晶水を放出して発熱体及びその周囲の温度を下げる、所謂「吸熱作用」を発現する。また、結晶水を放出した後は多孔質体となり、無数の空気孔により断熱作用を発現する。
【0085】
無機水和物の具体例として、水酸化アルミニウム(Al(OH)3)、水酸化マグネシウム(Mg(OH)2)、水酸化カルシウム(Ca(OH)2)、水酸化亜鉛(Zn(OH)2)、水酸化鉄(Fe(OH)2)、水酸化マンガン(Mn(OH)2)、水酸化ジルコニウム(Zr(OH)2)、水酸化ガリウム(Ga(OH)3)等が挙げられる。
【0086】
例えば、水酸化アルミニウムは約35%の結晶水を有しており、下記式に示すように、熱分解して結晶水を放出して吸熱作用を発現する。そして、結晶水を放出した後は多孔質体であるアルミナ(Al2O3)となり、断熱材として機能する。
2Al(OH)3→Al2O3+3H2O
【0087】
なお、熱暴走を起こした電池セルでは、200℃を超える温度に急上昇し、700℃付近まで温度上昇を続ける。したがって、無機粒子としては熱分解開始温度が200℃以上である無機水和物からなることが好ましい。
【0088】
上記に挙げた無機水和物の熱分解開始温度は、水酸化アルミニウムは約200℃、水酸化マグネシウムは約330℃、水酸化カルシウムは約580℃、水酸化亜鉛は約200℃、水酸化鉄は約350℃、水酸化マンガンは約300℃、水酸化ジルコニウムは約300℃、水酸化ガリウムは約300℃であり、いずれも熱暴走を起こした電池セルの急激な昇温の温度範囲とほぼ重なり、温度上昇を効率よく抑えることができることから、好ましい無機水和物であるといえる。
【0089】
また、無機水和物粒子の平均粒子径が大きすぎると、断熱材10の中心付近にある無機水和物粒子が、その熱分解温度に達するまでにある程度の時間を要するため、断熱材10の中心付近の無機水和物粒子が熱分解しきれない場合がある。このため、無機水和物粒子の平均二次粒子径は、0.01μm以上200μm以下であることが好ましく、0.05μm以上100μm以下であることがより好ましい。
【0090】
(熱膨張性無機材料からなる粒子)
熱膨張性無機材料としては、バーミキュライト、ベントナイト、雲母、パーライト等を挙げることができる。
【0091】
(含水多孔質体からなる粒子)
含水多孔質体の具体例としては、ゼオライト、カオリナイト、モンモリロナイト、酸性白土、珪藻土、湿式シリカ、乾式シリカ、エアロゲル、マイカ、バーミキュライト等が挙げられる。
【0092】
(無機バルーン)
無機バルーンが含まれると、500℃未満の温度領域において、断熱材内における熱の対流伝熱又は伝導伝熱を抑制することができ、断熱材10の断熱性をより一層向上させることができる。
【0093】
無機バルーンとしては、シラスバルーン、シリカバルーン、フライアッシュバルーン、バーライトバルーン、及びガラスバルーンから選択された少なくとも1種を用いることができる。
【0094】
無機バルーンの含有量としては、断熱材10の全質量に対し、60質量%以下が好ましい。
【0095】
また、無機バルーンの平均粒子径としては、1μm以上100μm以下が好ましい。
【0096】
(第2の無機粒子)
第2の無機粒子は、第1の無機粒子と材質や粒子径等が異なっていれば特に限定されない。第2の無機粒子としては、酸化物粒子、炭化物粒子、窒化物粒子、無機水和物粒子、シリカナノ粒子、金属酸化物粒子、マイクロポーラス粒子や中空シリカ粒子等の無機バルーン、熱膨張性無機材料からなる粒子、含水多孔質体からなる粒子等を使用することができ、これらの詳細については、上述のとおりである。
【0097】
なお、ナノ粒子は伝導伝熱が極めて小さいとともに、防炎シート1に圧縮応力が加わった場合であっても、優れた断熱性を維持することができる。また、チタニア等の金属酸化物粒子は、輻射熱を遮る効果が高い。さらに、大径の無機粒子と小径の無機粒子とを使用すると、大径の無機粒子同士の隙間に小径の無機粒子が入り込むことにより、より緻密な構造となり、熱伝達抑制効果を向上させることができる。したがって、上記第1の無機粒子として、ナノ粒子を使用した場合に、さらに、第2の無機粒子として、第1の無機粒子よりも大径である金属酸化物からなる粒子を、断熱材10に含有させることが好ましい。
【0098】
金属酸化物としては、酸化ケイ素、酸化チタン、酸化アルミニウム、チタン酸バリウム、酸化亜鉛、ジルコン、酸化ジルコニウム等を挙げることがでる。特に、酸化チタン(チタニア)は他の金属酸化物と比較して屈折率が高い成分であり、500℃以上の高温度領域において光を乱反射させ輻射熱を遮る効果が高いため、チタニアを用いることが最も好ましい。
【0099】
第2の無機粒子の平均一次粒子径は、1μm以上50μm以下であると、500℃以上の高温度領域で効率よく輻射伝熱を抑制することができる。第2の無機粒子の平均一次粒子径は、5μm以上30μm以下であることが更に好ましく、10μm以下であることが最も好ましい。
【0100】
(断熱材の製造方法)
断熱材10を製造するには、抄造法を用いることが好ましい。すなわち、断熱材10の形成材料である無機繊維や他の配合材料を水に分散させ、その分散液を脱水、成形、乾燥して製造する。
【0101】
(不融化繊維)
無機繊維に代えて、又はその一部を不融化繊維としてもよい。不融化繊維は、ポリアクリロニトリル、セルロース、ピッチなどの熱可塑性樹脂を不融化処理した繊維などが挙げられる。なお、不融化繊維とは、例えば不融化処理された繊維であり、不融化処理としては、放射線、電子線などを照射し架橋させる方法、酸素や水蒸気中で高温に曝し、酸素の作用により不融化させる方法などがある。
【0102】
(炭素含有量)
不融化繊維は、炭素含有量が55~95質量%であることが好ましい。炭素含有量が55質量%以上であると、熱分解による重量減少が既に進行しているので、熱分解による収縮は少なく、熱暴走時、火炎に直接さらされても、原形をとどめ、断熱性を維持することができる。炭素含有量が95質量%以下であると、炭素以外の成分を脱離させ炭素だけの構造に変化するために吸熱反応が起こるので、防炎シートの裏面に熱が到達する時間を遅らせることができる。
【0103】
好ましい炭素含有量の下限は、60質量%以上である。また、好ましい炭素含有量の上限は90質量%以下、さらに好ましい炭素含有量の上限は85質量%以下である。
【0104】
炭素含有量は、熱処理することにより調整することができる。例えば150~300℃の範囲内の大気中あるいは酸素中での熱処理は、不融化をさらに促進するとともに炭素以外の成分を除去し炭素含有量を高めることができる。例えば300~1000℃の範囲内の熱処理は、縮合多環芳香族構造の形成を進行させるとともに分解ガスを発生し炭素含有量を高めることができる。
【0105】
なお、不融化繊維は、熱可塑性繊維を不融化した繊維に限定されない。上記炭素含有量の範囲であれば、無機繊維であってもよい。
【0106】
(繊維形状)
不融化繊維は短繊維からなり、これらが集成して全体の形態としてマット、抄造体、ブランケットを構成することが好ましい。
【0107】
短繊維であるとは、連続繊維ではないことを示している。連続繊維では、クロス、フィラメントワインディングのように繊維の配向方向が揃って繊維束を形成するのに対し、繊維を用いることにより、繊維がランダムな方向を向いた集合体(マットやブランケット、抄造体)となる。そして、短繊維を用いた断熱材10は、導電パスが短いので、炭素化の進んだ繊維や、熱暴走に伴って炭素化が進行しても、導電性を低くすることができる。また、繊維がランダムに配向し、繊維同士が点接触となりやすく、熱伝導を低くすることができる。
【0108】
抄造体は、不融化繊維のミルド繊維やチョップド繊維(繊維長0.01~10mm程度)を水に分散させ、抄造することによって得ることができる。マットやブランケットは、繊維長10~1000mm程度の不融化繊維を積層し、圧縮することによって得ることができる。その際、全体の強度や形状を保持するために、バインダを添加してもよい。なお、バインダとしては、樹脂などの有機バインダ、セラミックス前駆体などの無機バインダなどが利用できる。
【0109】
また、不融化繊維は、繊維径が1~30μmであることが好ましい。不融化繊維の繊維径が1μm以上であると、高温に曝されても空気酸化、昇華の速度を抑制し、防炎の効果を長時間維持することができる。一方、不融化繊維の繊維径が30μm以下であると、高温に曝され炭素化しても一定のしなやかさを保持し、変形、衝撃が生じても破損しにくくすることができる。
【0110】
なお、不融化繊維の他にも、上記した有機繊維や無機粒子を含むことができる。
【0111】
[防炎シートの製造]
防炎シート1の製造は、断熱材10の表面に、支持体20を散布した状態で、断熱材10の厚さ方向に押圧する。押圧の際に、支持体20が断熱材10に押し込まれ、一体化する。
【0112】
あるいは、複数枚の断熱材10を用意し、上下の断熱材10の間に支持体20を埋め込むこともできる。例えば、半分の厚さの2枚の断熱材10を用意し、一方の断熱材10の表面に支持体を散布した後、その上に他方の断熱材10を載置し、2枚の断熱材10を上下から押圧してもよい。
【0113】
また、上記製造方法において、支持体20を散布した後に、接着剤により支持体20を断熱材10の表面に固定してもよい。
【0114】
[電池モジュール]
図3に示すように、本実施形態に係る電池モジュール100は、直列又は並列に接続された複数の電池セル(蓄電池)110を、電池ケース120に収容したものである。そして、隣接する電池セル110と電池セル110との間の空間に上記の防炎シート1を配設している。
【0115】
このように構成された電池モジュール100においては、防炎シート1内に支持体20が分散しているため、ある電池セル110が熱暴走を起こしたとしても、支持体20により隣接する電池セル110との間隔を十分に確保できるため、電池セル間の熱の伝搬、すなわち熱連鎖をより効果的に防ぐことができる。
【0116】
なお、本実施形態の電池モジュール100は、
図3に例示した電池モジュールに限定されず、電池セル110と電池セル110との間のみでなく、電池セル110と電池ケース120との間に、防炎シート1を配置することもできる。
【0117】
このように構成された電池モジュール100においては、ある電池セル110が発火した場合に、電池ケース120の外側に炎が広がることを抑制することができる。
例えば、本実施形態に係る電池モジュール100は、電気自動車(EV:Electric Vehicle)等に使用され、搭乗者の床下に配置されることがある。この場合に、仮に電池セルが発火しても、搭乗者の安全を確保することができる。
また、防炎シート1を、各電池セル110間に介在させるだけでなく、電池セル110と電池ケース120との間に配置することができるため、新たに防炎材等を作製する必要がなく、容易に低コストで安全な電池モジュール100を構成することができる。
【0118】
本実施形態の電池モジュール100において、電池セル110と電池ケース120との間に配置された防炎シート1と、電池セル110とは、接触していても、隙間を有していてもよい。ただし、防炎シート1と電池セル110との間に隙間を有していると、複数ある電池セル110のうち、いずれかの電池セル110の温度が上昇し、体積が膨張した場合であっても、電池セルの変形を許容することができる。
【0119】
なお、本実施形態に係る防炎シート1は、その製造方法によって、種々の形状に作製することができる。したがって、電池セル110及び電池ケース120の形状に影響されず、どのような形状のものにも対応させることができる。具体的には、角型電池の他、円筒形電池、平板型電池等にも適用することができる。
【実施例0120】
本発明の防炎シートの効果を検証するために、下記の実施例及び比較例を行った。
【0121】
〔実施例1〕
断熱材として、耐炎繊維フェルト(旭化成株式会社製:「ラスタン(TOP 8150Z)」、厚さ2.5mm)を、60mm×60mmにカットしたものを用いた。その上に、支持体としてアルミナボール(ニッカトー社製:「CC印」、直径1mm)を0.14g散布し、その上からスプレー糊(3M社製:「77」)を吹きかけた。その後、もう一枚の同じ耐炎繊維フェルトを載置し、全体を断熱材の厚さ方向に押圧して防炎シートを作製した。
【0122】
そして、電池セル間での使用を模擬するために、作製した防炎シートの片面にヒータ板を接触させながら圧力を印加し、反対面の温度を熱電対で測定することを行なった。ヒータ板による加熱温度は600℃であり、圧力は5.0MPaとした。ヒータ板を防炎シートに接触させた後、ヒータを切り、反対面の最高温度を求めた。測定結果を
図4に示す。
【0123】
また、防炎シートの作製直後と、押圧加熱後のそれぞれの厚さを測定した。測定結果を
図5に示す。
【0124】
〔実施例2〕
断熱材として、耐炎繊維フェルト(旭化成株式会社製:「ラスタン(TOP 8150Z)」、厚さ2.5mm)を、60mm×60mmにカットしたものを用いた。その上に、支持体としてアルミナボール(ニッカトー社製:「CC印」、直径1mm)を0.14g散布し、その上にシリカ断熱材(Evonik社製:「カープレックス80」)を0.9g散布して防炎シートを作製した。
【0125】
そして、実施例1と同様にして防炎シートの反対面の最高温度、防炎シートの作製直後及び押圧加熱後の厚さを測定した。測定結果を
図4、
図5に示す。
【0126】
〔比較例1〕
断熱材として、耐炎繊維フェルト(旭化成株式会社製:「ラスタン(TOP 8150Z)」、厚さ2.5mm)を、60mm×60mmにカットしたものを用いた。また、支持体としてPPS樹脂製のスティック(1.2mm×1.2mm×40mm)を両端に埋め込んで防炎シートを作製した。
【0127】
そして、実施例1と同様にして防炎シートの反対面の最高温度、防炎シートの作製直後及び押圧加熱後の厚さを測定した。測定結果を
図4、
図5に示す。
【0128】
〔比較例2〕
Alison社製のエアロゲル断熱材1.5mmを、防炎シートとした。
【0129】
そして、実施例1と同様にして防炎シートの反対面の最高温度、防炎シートの作製直後及び押圧加熱後の厚さを測定した。測定結果を
図4、
図5に示す。
【0130】
図示されるように、本発明の条件を満足する実施例1及び実施例2の防炎シートは、断熱性能に優れるとともに、支持体が分散しているため、押圧加熱後でも所望の厚さを維持できることがわかる。