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特開2023-170071集光光学ユニット及びそれを用いたレーザ発振器、レーザ加工装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023170071
(43)【公開日】2023-12-01
(54)【発明の名称】集光光学ユニット及びそれを用いたレーザ発振器、レーザ加工装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 6/32 20060101AFI20231124BHJP
   G02B 6/42 20060101ALI20231124BHJP
   H01S 5/02251 20210101ALI20231124BHJP
   B23K 26/064 20140101ALI20231124BHJP
【FI】
G02B6/32
G02B6/42
H01S5/02251
B23K26/064 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022081534
(22)【出願日】2022-05-18
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】奥村 大志
(72)【発明者】
【氏名】瀧 成治
(72)【発明者】
【氏名】持山 智浩
(72)【発明者】
【氏名】河本 清時
(72)【発明者】
【氏名】大口 恒之
【テーマコード(参考)】
2H137
4E168
5F173
【Fターム(参考)】
2H137AA13
2H137AB06
2H137BA01
2H137BB02
2H137BB14
2H137BB17
2H137BC02
2H137BC71
2H137BC76
2H137CA15E
2H137CA22E
2H137CB01
2H137CB13
2H137CB32
2H137CB33
2H137CC01
2H137DA07
4E168AD07
4E168AD11
4E168BA00
4E168CA03
4E168CB12
4E168DA13
4E168DA26
4E168EA17
5F173MC15
5F173ME23
5F173ME67
5F173ME85
5F173MF39
(57)【要約】
【課題】簡便な構成で光ファイバのコアに対するレーザ光の入射ずれ量とずれの方向を評価可能な集光光学ユニットを提供する。
【解決手段】集光光学ユニット30は、レーザ光入射口31aとレーザ光出射口31bとを有する第2筐体31と、第2筐体31の内部に、集光レンズ32とを、集光レンズ32の位置を調整するレンズ位置調整機構33とを備えている。第2筐体31には、光ファイバ80で反射された第1反射光を受光する第1~第4光センサ35a~35dが取り付けられている。第2光センサ35bと第4光センサ35dは、X方向に沿って、かつレーザ光LBの光路を挟んで対向する位置に取り付けられている。第1光センサ35aと第3光センサ35cは、Y方向に沿って、かつレーザ光LBの光路を挟んで対向する位置に取り付けられている。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ光が入射されるレーザ光入射口と前記レーザ光を伝送する光ファイバが取り付けられたレーザ光出射口とを有する筐体と、
前記筐体の内部に配置され、前記レーザ光入射口から入射した前記レーザ光を集光し、前記光ファイバに入射させる集光レンズと、
前記集光レンズの位置を調整するレンズ位置調整機構と、を少なくとも備え、
前記筐体には、前記光ファイバで反射された第1反射光を少なくとも受光する光センサが複数取り付けられており、
複数の前記光センサは、前記筐体の内部における前記レーザ光の光軸方向である第3方向と直交する第1方向に沿って、かつ前記レーザ光の光路を挟んで対向する位置に取り付けられるとともに、前記第3方向と直交し、かつ前記第1方向と交差する第2方向に沿って、かつ前記レーザ光の光路を挟んで対向する位置に取り付けられており、
前記レンズ位置調整機構は、前記集光レンズを前記第1~第3方向のいずれにも移動可能に構成されていることを特徴とする集光光学ユニット。
【請求項2】
請求項1に記載の集光光学ユニットにおいて、
前記レンズ位置調整機構は、複数の前記光センサの出力信号に基づいて、前記集光レンズの位置を調整するように構成されていることを特徴とする集光光学ユニット。
【請求項3】
請求項1に記載の集光光学ユニットと、
前記レーザ光を出射するレーザ光源と、
複数の前記光センサの出力信号を受け取るとともに、複数の前記出力信号に基づいて、前記光ファイバのコアに対する前記レーザ光の位置ずれ量とすれの方向とを算出する演算部と、を少なくとも備えたことを特徴とするレーザ発振器。
【請求項4】
請求項3に記載のレーザ発振器において、
前記レンズ位置調整機構は、前記演算部の算出結果に基づいて、前記集光レンズの位置を調整するように構成されていることを特徴とするレーザ発振器。
【請求項5】
請求項3に記載のレーザ発振器において、
前記レーザ光源は、複数のレーザモジュールを含み、
前記レーザ発振器は、複数の前記レーザモジュールのそれぞれから出射されたモジュールレーザ光を合成して前記レーザ光として前記集光光学ユニットに出射するビーム合成器をさらに備えたことを特徴とするレーザ発振器。
【請求項6】
請求項3に記載のレーザ発振器において、
前記集光光学ユニットの前記レーザ光出射口には、石英ブロックを介して前記光ファイバが取り付けられており、
複数の前記光センサのそれぞれは、前記第1反射光とともに、前記石英ブロックで反射された第2反射光を受光するように構成され、
前記演算部は、前記出力信号と予め準備された数値テーブルとに基づいて、前記第1反射光に基づく第1信号成分と前記第2反射光に基づく第2信号成分とを算出するとともに、前記第1信号成分及び前記第2信号成分の少なくとも一方に基づいて、前記位置ずれ量と前記すれの方向とを算出するように構成されていることを特徴とするレーザ発振器。
【請求項7】
請求項3に記載のレーザ発振器と、
前記レーザ発振器に接続され、前記レーザ発振器から出射された前記レーザ光を伝送する前記光ファイバと、
前記光ファイバの出射端に取り付けられたレーザヘッドと、を少なくとも備えたことを特徴とするレーザ加工装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、集光光学ユニット及びそれを用いたレーザ発振器、レーザ加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ダイレクトダイオードレーザ(以下、DDLという)の高出力化に伴い、DDLを用いたレーザ加工装置が広く使用されつつある。DDLを用いたレーザ発振器では、複数のレーザモジュールから出射されたレーザ光を合成することで数kWを超える高い出力を得ることができる。ビーム合成器から出射されたレーザ光は、光ファイバを介して所定の位置に設置されたレーザヘッドに伝送される。この際、ビーム合成器から出射されたレーザ光は集光レンズで集光され、光ファイバのレーザ光入射端面(以下、単に入射端面という)において、その集光スポット(以下、単にスポットという)がコアに収まるサイズまで縮小されて光ファイバに入射される(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
レーザ光と光ファイバのコアとの光結合状態を集光光学ユニットの内部に配置された光センサを用いて診断する技術も従来知られている(例えば、特許文献2,3参照)。特許文献2には、集光光学ユニットの内部で互いに間隔をあけて配置された2つの光センサを用いて、レーザ発振器の内部異常の有無を診断する構成が開示されている。特許文献3には、内部に集光レンズが配置され、かつ集光レンズがレーザ光の光軸方向に移動可能なスライダに保持された構成を有する集光光学ユニット及びレーザ発振器が開示されている。このレーザ発振器では、光ファイバの入射端面で反射され、集光光学ユニットの内部に戻ってきた反射光を、反射光センサで検出する。別途、設けられた出力光センサの出力信号と反射光センサの出力信号とに基づいて、スライダの位置を調整して、レーザ光と光ファイバのコアとの光結合効率を調整している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2016/152404号
【特許文献2】特開2019-201031号公報
【特許文献3】国際公開第2019/049914号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
通常、レーザ光と光ファイバのコアとの光結合効率を調整するため、集光光学ユニットに配置された集光レンズは、レーザ光の光軸方向それぞれ直交する2つの軸方向に移動可能に構成される。このような構成を採用することで、レーザ光を光ファイバのコアに確実に入射させることができる。
【0006】
一方、特許文献2,3に開示される光モニタを集光光学ユニットに設けたとしても、レーザ光が光ファイバのコアに対して、どの方向にどの程度ずれているのかを評価することは難しかった。
【0007】
本開示はかかる点に鑑みてなされたもので、その目的は、簡便な構成で光ファイバのコアに対するレーザ光の入射ずれ量とずれの方向を評価可能な集光光学ユニット及びそれを用いたレーザ発振器、レーザ加工装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本開示に係る集光光学ユニットは、レーザ光が入射されるレーザ光入射口と前記レーザ光を伝送する光ファイバが取り付けられたレーザ光出射口とを有する筐体と、前記筐体の内部に配置され、前記レーザ光入射口から入射した前記レーザ光を集光し、前記光ファイバに入射させる集光レンズと、前記集光レンズの位置を調整するレンズ位置調整機構と、を少なくとも備え、前記筐体には、前記光ファイバで反射された第1反射光を少なくとも受光する光センサが複数取り付けられており、複数の前記光センサは、前記筐体の内部における前記レーザ光の光軸方向である第3方向と直交する第1方向に沿って、かつ前記レーザ光の光路を挟んで対向する位置に取り付けられるとともに、前記第3方向と直交し、かつ前記第1方向と交差する第2方向に沿って、かつ前記レーザ光の光路を挟んで対向する位置に取り付けられていることを特徴とする。
【0009】
本開示に係るレーザ発振器は、前記集光光学ユニットと、前記レーザ光を出射するレーザ光源と、複数の前記光センサの出力信号を受け取るとともに、複数の前記出力信号に基づいて、前記光ファイバのコアに対する前記レーザ光の位置ずれ量とすれの方向とを算出する演算部と、を少なくとも備えたことを特徴とする。
【0010】
本開示に係るレーザ加工装置は、前記レーザ発振器と、前記レーザ発振器に接続され、前記レーザ発振器から出射された前記レーザ光を伝送する前記光ファイバと、前記光ファイバの出射端に取り付けられたレーザヘッドと、を少なくとも備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本開示の集光光学ユニットによれば、簡便な構成で光ファイバのコアに対するレーザ光の位置ずれ量とずれの方向をそれぞれ精度良く評価できる。
【0012】
本開示のレーザ発振器によれば、光ファイバのコアに対するレーザ光の位置ずれ量とずれの方向をそれぞれ精度良く評価して、集光レンズの位置を調整できる。このことにより、レーザ光の出力の低下や光ファイバの光学損傷の発生を抑制できる。
【0013】
本開示のレーザ加工装置によれば、レーザ光と光ファイバのコアとの光結合効率の低下を抑制でき、高出力のレーザ光をワークに向けて照射できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】実施形態1に係るレーザ加工装置の概略構成図である。
図2】集光光学ユニットの断面模式図である。
図3図2のIII-III線での断面図である。
図4図2のIV-IV線での断面図である。
図5】光ファイバの入射端面におけるレーザ光のスポット形状の一例を示す模式図である。
図6】光ファイバで反射された第1反射光と石英ブロックで反射された第2反射光が光センサに入射する様子を示す模式図である。
図7】第2テーブルの概要を示す模式図である。
図8】実施形態2に係る集光レンズの位置調整手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本開示の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本開示、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0016】
(実施形態1)
[レーザ加工装置の構成]
図1は、本実施形態に係るレーザ加工装置の構成の模式図を示す。なお、以降の説明において、ビーム合成器20から出射された、後述するレーザ光LBが集光光学ユニット30に向かう進行方向をZ方向または第3方向と呼ぶことがある。Z方向または第3方向は、集光光学ユニット30の第2筐体31の内部におけるレーザ光LBの光軸方向でもある。複数のレーザモジュールの配列方向をX方向または第1方向と呼ぶことがある。X方向及びZ方向とそれぞれ直交する方向をY方向または第2方向と呼ぶことがある。
【0017】
なお、本願明細書において、「直交」または「平行」とは、レーザ加工装置200やその構成部品の組立公差や加工公差を含んで直交しているか、または平行であるという意味であり、比較対象同士が厳密な意味で直交しているか、または平行であることまでを意味するものではない。
【0018】
また、本願明細書において、「断面視」とは、対象をZ方向に直交する断面で見た場合という意味である。
【0019】
レーザ加工装置200は、第1筐体40とレーザ発振器100と表示部70と光ファイバ80とレーザヘッド90とを備えている。レーザ発振器100と光ファイバ80のレーザ光LBが入射される端部(以下、単に入射端という。また、光ファイバ80のレーザ光LBが出射される端部を、以下、単に出射端という。)とは第1筐体40の内部に収容されている。
【0020】
レーザ発振器100は、複数のレーザモジュール10とビーム合成器20と集光光学ユニット30と制御部50と電源60とを有している。レーザモジュール10は、異なる波長のレーザ光を発する複数のレーザダイオードまたはレーザダイオードバーからなるレーザ光源である。レーザモジュール10内で波長合成されたモジュールレーザ光が各レーザモジュール10からそれぞれ出射される。
【0021】
ビーム合成器20は、複数のレーザモジュール10からそれぞれ出射されたモジュールレーザ光を一つのレーザ光(以下、レーザ光LBという)に結合して集光光学ユニット30に出射する。具体的には、各々のモジュールレーザ光の光軸を近接または一致させるとともに、互いの光軸が平行になるように結合する。ビーム合成器20は、複数のモジュールレーザ光が入射される筐体と、当該筐体の内部にモジュールレーザ光の光路を変更するための複数のミラーと2つ以上のモジュールレーザ光の光路を一致させるための偏光ビームスプリッタ(いずれも図示せず)とを有している。なお、ビーム合成器20の内部構成の詳細については図示及び説明を省略する。
【0022】
集光光学ユニット30は、第2筐体(筐体)31と、その内部に配置された集光レンズ32と、レンズ位置調整機構33と、第1~第4光センサ35a~35dと、を有している(図2~4参照)。集光光学ユニット30の各部の構造及び機能については、後で詳述する。また、第1~第4光センサ35a~35dを総称して、単に光センサ35と呼ぶことがある。
【0023】
制御部50は、レーザ発振器100のレーザ発振を制御する。具体的には、電源60に対して出力電圧やオン時間等の制御信号を供給することにより、各々のレーザモジュール10のレーザ発振制御を行う。各々のレーザモジュール10に対して個別にレーザ発振制御を行うことも可能である。例えば、レーザモジュール10毎にレーザ発振出力やオン時間等を異ならせるようにしてもよい。
【0024】
また、制御部50は、演算部52を有している。後で述べるように、演算部52は、第1~第4光センサ35a~35d(図4参照)の出力信号を受け取って、これらの出力信号に基づいて、光ファイバ80のコア81(図2参照)に対するレーザ光LBの位置ずれ量とすれの方向とを算出する。演算部52は、例えば、CPU(Central Processing Unit)で構成される。制御部50は、演算部52以外に、1または複数のCPUを備えていてもよい。
【0025】
また、制御部50は、記憶部51を有しており、記憶部51には、レーザ加工条件や加工用の動作プログラム等が格納されている。記憶部51は、RAM(Random Access Memory)やROM(Read Only Memory)等の半導体メモリで構成される。なお、記憶部51は、HDD(Hard Disk Drive)やSSD(Solid State Drive)等で構成されてもよい。
【0026】
また、後述するように、記憶部51には、光ファイバ80のコア81に対するレーザ光LBの位置ずれ量とすれの方向に対して、第1~第4光センサ35a~35dのそれぞれの出力信号がどのように変化するかが、予め実験的に求められた第1テーブルが保存されている。また、記憶部51には、第1~第4光センサ35a~35dのそれぞれの出力信号に対して、予め実験的に求められた反射光成分の寄与度がまとめられた第2テーブルが保存されている(図7参照)。第1テーブルと第2テーブルについては後で述べる。また、制御部50は、レーザヘッド90が取り付けられたロボットの動作を制御してもよい。
【0027】
電源60は、前述したように、レーザ発振を行うための電力を複数のレーザモジュール10のそれぞれに対して供給する。制御部50からの指令により、各々のレーザモジュール10に供給される電力を異ならせるようにしてもよい。また、電源60は、レーザ加工装置200の可動部、例えば、前述のロボットに対して電力を供給するようにしてもよい。なお、レーザ加工装置200の可動部向けには別の電源(図示せず)から電力を供給するようにしてもよい。
【0028】
レーザ発振器100をこのような構成とすることで、レーザ光LBの出力が数kWを超える高出力のレーザ加工装置200を得ることができる。なお、本実施形態では、4つのレーザモジュール10がレーザ発振器100に搭載されているが、特にこれに限定されない。レーザモジュール10の搭載個数は、レーザ加工装置200に要求される出力仕様や、個々のレーザモジュール10の出力仕様によって適宜変更されうる。
【0029】
表示部70は、演算部52で算出された、光ファイバ80のコア81に対するレーザ光LBの位置ずれ量及びすれの方向を可視化して表示するように構成されている。なお、表示部70には、上記以外のデータを表示させてもよい。例えば、各モジュールレーザ光の出力を表示させるようにしてもよい。レーザ加工時の加工パラメータを同時に表示させるようにしてもよい。表示部70は、通常、液晶ディスプレイや有機ELディスプレイ等の表示デバイスを含んでいる。
【0030】
光ファイバ80は、集光光学ユニット30の集光レンズ32に光学的に結合され、集光レンズ32を介してレーザ発振器100から受け取ったレーザ光LBをレーザヘッド90に伝送する。光ファイバ80の構造については後で述べる。
【0031】
レーザヘッド90は、光ファイバ80で伝送されたレーザ光LBを外部に向けて照射する。例えば、図1に示すレーザ加工装置200では、所定の位置に配置された加工対象物であるワークWに向けてレーザ光LBを出射する。このようにすることで、ワークWがレーザ加工される。
【0032】
[集光光学ユニットの内部構成]
図2は、集光光学ユニットの断面模式図を示し、図3は、図2のIII-III線での断面図を示し、図4は、図2のIV-IV線での断面図を示す。なお、図2は、集光光学ユニット30をX方向に直交する断面で見た場合の断面図を示している。
【0033】
図2に示すように、集光光学ユニット30は、第2筐体(筐体)31と集光レンズ32とレンズ位置調整機構33と光センサ35とを有している。
【0034】
第2筐体31は、外形が四角柱である中空の箱体である。ただし、第2筐体31の形状は特にこれに限定されず、例えば、外形が円柱である中空の箱体であってもよい。この場合は、円柱の2つの底面がZ方向と直交するように第2筐体31が配置される。また、第2筐体31は、外形がn角柱(nは4以上の整数)である中空の箱体であってもよい。
【0035】
第2筐体31において、Z方向に対向する2つの壁面のそれぞれに開口が設けられている。ビーム合成器20に近い側に設けられた開口は、ビーム合成器20から出射されたレーザ光LBが入射するレーザ光入射口31aである。一方、レーザ光入射口31aとZ方向に対向する位置に設けられた開口には、石英ブロック34を介して、光ファイバ80の入射端が接続されている。以降の説明において、当該開口をレーザ光出射口31bという。また、石英ブロック34は、接着材(図示せず)により、光ファイバ80の入射端面に接着されている。当該接着材は、石英ブロック34と光ファイバ80との間で所定以上の屈折率差が生じないように、屈折率が調整されている。
【0036】
また、図2に示すように、光ファイバ80は、軸心に断面視で円形で、レーザ光LBを伝送するためのコア81と、コア81の外周側に、コア81と同軸に設けられた断面視で同心円状のクラッド82とを有している。なお、コア81及びクラッド82は、それぞれ石英からなるが、クラッド82の屈折率はコア81の屈折率よりも低くなるように構成されており、クラッド82はレーザ光LBをコア81の内部に閉じ込める機能を有している。また、クラッド82の外周面は、保護皮膜83で覆われている。なお、光ファイバ80の構造は、図2に示すものに特に限定されない。例えば、クラッド82の外側に断面視で同心円状の第2コア(図示せず)と、その外側に断面視で同心円状の第2クラッド(図示せず)とが、さらに設けられていてもよい。また、保護皮膜83の外周面に接して、光ファイバ80を冷却するための冷却管(図示せず)が設けられていてもよい。
【0037】
集光レンズ32は、ビーム合成器20から出射されたレーザ光LBを受け取って集光し、光ファイバ80の入射端面に入射させる。この際、レーザ光LBの光軸が、光ファイバ80のコア81から所定以上にずれてしまうと、レーザ光LBとコア81との光結合効率が急激に低下してしまう。つまり、光ファイバ80に伝送されるレーザ光LBの光量が大幅に低下してしまう。このようなことが起こると、所望のレーザ加工が行えない。よって、レンズ位置調整機構33を用いて、レーザ光LBと光ファイバ80のコア81との光結合効率が所定値以上になるように集光レンズ32の位置を調整している。
【0038】
レンズ位置調整機構33は、例えば、図2,3に示すように、第2筐体31の内部に取り付けられた枠体33aと枠体33aに取り付けられた4本の調整ねじ33bとボールねじ33cとを有している。集光レンズ32は、枠体33aに保持されている。また、枠体33aは、ボールねじ33cとこれに連結されたアクチュエータ(図示せず)とにより、第2筐体31の内部でZ方向に移動可能に構成されている。また、4本の調整ねじ33bは、集光レンズ32の中心を通り、Z方向に延びる仮想軸の周りに略等角度間隔で、この場合は、略90度ずつ離れて配置されている。つまり、調整ねじ33bは、前述の仮想軸を挟んでX方向に対向して設けられるとともに、当該仮想軸を挟んでY方向に対向して設けられている。なお、レーザ光LBの光軸が集光レンズ32の中心を通る場合、前述の仮想軸とレーザ光LBの光軸とは略一致する。
【0039】
なお、図2,3に示すレンズ位置調整機構33の構造はあくまで一例であり、特にこれに限定されない。例えば、調整ねじ33bやボールねじ33cの位置や個数は適宜変更されうる。レンズ位置調整機構33は、第2筐体31の内部で集光レンズ32の位置をX方向、Y方向及びZ方向のそれぞれに移動させられる構成であればよい。ただし、その場合、X方向、Y方向及びZ方向のそれぞれに対して、前述の仮想軸を挟んだ両側にそれぞれ移動させられることは必要である。
【0040】
レーザ光LBが石英ブロック34を透過して光ファイバ80に入射する際、レーザ光LBの光軸がコア81の中心を通らずに所定以上、コア81の中心からずれる場合がある。この場合、レーザ光LBは、光ファイバ80の入射端面や石英ブロック34の端面で反射されて、第2筐体31の内部に戻ってくる場合がある。
【0041】
光センサ35は、光ファイバ80で反射した反射光(以下、第1反射光と呼ぶことがある。)や石英ブロック34で反射した反射光(以下、第2反射光と呼ぶことがある。)を受光する位置に取り付けられている。
【0042】
図4に示すように、光センサ35は、第2筐体31の内部に計4箇所取り付けられている。具体的には、第2筐体31の内壁であって、X方向に沿って、かつレーザ光LBの光路を挟んで対向する位置にそれぞれ1つずつ、第2光センサ35bと第4光センサ35dとが取り付けられている。さらに、第2筐体31の内壁であって、Y方向に沿って、レーザ光LBの光路を挟んで対向する位置にそれぞれ1つずつ、第1光センサ35aと第3光センサ35cとが取り付けられている。
【0043】
なお、第2筐体31への光センサ35の取り付けは、種々の態様を取りうる。例えば、第2筐体31の内壁面に光センサ35が直接設置されてもよい。その場合、光センサ35の受光面がレーザ光出射口31bの方を向くように、第2筐体31の内壁面に対して、光センサ35が所定の角度、傾いて取り付けられてもよい。また、第2筐体31の内壁に図示しない凹部を設け、凹部の底面に光センサ35が配置されてもよい。いずれの場合も、光ファイバ80で反射された反射光(以下、第1反射光と呼ぶことがある。)や石英ブロック34で反射された反射光(以下、第2反射光と呼ぶことがある。)を受光可能な位置に、光センサ35が配置されていればよい。
【0044】
また、光センサ35は、それぞれ、フォトダイオードアレイやイメージセンサ等の受光素子からなり、受光した第1反射光や第2反射光の光量に基づいた出力信号をそれぞれ発生させる。図4に示すように、第1~第4光センサ35a~35dからそれぞれ出力された出力信号は、制御部50に送られる。さらに、演算部52において、光ファイバ80のコア81に対するレーザ光LBの位置ずれ量とすれの方向とを算出する。
【0045】
なお、演算部52は、記憶部51から前述した第1テーブルを読み出して、入力された各信号の大きさと第1テーブルに記述された各信号の大きさとを対比し、位置ずれ量とずれの方向を算出する。この場合、第1テーブルに記述された各信号の大きさと入力された各信号の大きさとの間に差があれば、線形近似等の補間処理が行われる。また、光ファイバ80のコア81に対するレーザ光LBの位置ずれ量とすれの方向と第1~第4光センサ35a~35dの出力信号の大きさとの関係が実験的に近似式として導出されている場合がある。この場合は、演算部52は、第1テーブルに代えて、入力された第1~第4光センサ35a~35dの出力信号の大きさと当該近似式とに基づいて、位置ずれ量とずれの方向を算出する。
【0046】
なお、第2筐体31の内部に取り付けられる光センサ35の個数は、4つ以上であってもよい。その場合、Z方向から見て、レーザ光LBの光路を挟んで対向する位置に配置された一対の光センサ35が複数組設けられているのが好ましい。光センサ35をこのように配置することで、光ファイバ80のコア81に対するレーザ光LBの位置ずれ量とすれの方向とを簡便に算出できる。
【0047】
また、演算部52での演算結果に基づいて、レンズ位置調整機構33の4本の調整ねじ33bとボールねじ33cの少なくとも1つを操作して、集光レンズ32の位置を調整する。つまり、集光レンズ32を透過したレーザ光LBの光軸とコア81の中心とのずれ量が許容値に収まるように、集光レンズ32の位置が調整される。また、光ファイバ80の入射端面において、集光レンズ32を透過したレーザ光LBが光ファイバ80のコア81に収まるように、集光レンズ32の位置が調整される。具体的な例を図面を用いて説明する。
【0048】
図5は、光ファイバの入射端面におけるレーザ光のスポット形状の一例を示す。
【0049】
レーザ光LBの光軸がコア81の中心を通り、かつ、集光レンズ32を透過したレーザ光LBの焦点位置が光ファイバ80の出射端面に来るように集光レンズ32の位置が調整されているとする。この場合、図5のパターンIに示すように、光ファイバ80の出射端面において、レーザ光LBのスポットは、コア81の内部に収まる。つまり、レーザ光LBの全量が光ファイバ80に伝送され、レーザ光LBと光ファイバ80のコア81との光結合効率が所定値以上である良好な状態である。図5では、この状態を判定結果がOKであるとしている。
【0050】
また、パターンIの状態から、集光レンズ32の位置がZ方向にずれていたとしても、光ファイバ80の出射端面において、レーザ光LBのスポットの外形がコア81の外形に略一致する場合(図5に示すパターンII)も、レーザ光LBと光ファイバ80のコア81との光結合効率が所定値以上であり、判定結果はOKである。なお、レーザ光LBと光ファイバ80のコア81との光結合効率が所定値以上であれば、レーザ光LBのスポットの直径が、コア81の直径よりも大きくてもよい。なお、本実施形態では、パターンI及びパターンIIに示す場合に、第1~第4光センサ35a~35dのそれぞれから出力される出力信号の大きさが同じである。ただし、パターンIIに示す場合は、第1~第4光センサ35a~35dの出力信号の大きさは、パターンIに示す場合と異なる。光センサ35のZ方向の位置に応じて、パターンIIに示す場合における光センサ35の出力信号の大きさは、パターンIに示す場合よりも大きくなる場合もあれば小さくなる場合もある。これらの情報も第1テーブルに記述されている。
【0051】
一方、レーザ光LBの光軸がコア81の中心から所定値を超えてY方向にずれている場合(図5に示すパターンIII)やX方向にずれている場合(図5に示すパターンIV)は、レーザ光LBと光ファイバ80のコア81との光結合効率が所定値未満となる。図5では、これらの状態を判定結果がNGであるとしている。前者の場合は、Y方向に対向する一対の光センサ35(第1光センサ35aと第3光センサ35c)のうち、一方の出力信号が他方よりも大きくなる。後者の場合は、X方向に対向する一対の光センサ35(第2光センサ35bと第4光センサ35d)のうち、一方の出力信号が他方よりも大きくなる。
【0052】
よって、パターンIIIの場合であれば、レンズ位置調整機構33を用いて、集光レンズ32をY方向に移動させて、パターンIの状態になるように調整する。また、パターンIVの場合であれば、レンズ位置調整機構33を用いて、集光レンズ32をX方向に移動させて、パターンIの状態になるように調整する。
【0053】
また、パターンIの状態から、集光レンズ32の位置がZ方向に大きくずれた場合、光ファイバ80の出射端面において、レーザ光LBのスポットの直径が、コア81の直径よりも所定値を超えて大きくなり、レーザ光LBのスポットがコア81からはみ出してしまう(図5に示すパターンV)。判定結果はNGである。パターンVに示す場合は、第1~第4光センサ35a~35dの出力信号の大きさは、パターンIに示す場合から変化する。光センサ35のZ方向の位置に応じて、光センサ35の出力信号の大きさは、パターンIに示す場合よりも大きくなる場合もあれば小さくなる場合もある。
【0054】
よって、パターンVの場合も、レンズ位置調整機構33を用いて、集光レンズ32をZ方向に移動させて、パターンIまたはパターンIIの状態になるように調整する。
【0055】
なお、集光レンズ32の位置によっては、パターンIII~パターンVが混在した状態となる場合もありうる。その場合は、レンズ位置調整機構33を用いて、集光レンズ32をX方向、Y方向及びZ方向のそれぞれに移動させて、パターンIまたはパターンIIの状態になるように調整する。判定結果がNGであるそれぞれの場合において、集光レンズ32の移動方向及び移動量は、演算部52での演算結果に基づいて決定される。
【0056】
[効果等]
以上説明したように、本実施形態に係る集光光学ユニット30は、レーザ光LBが入射されるレーザ光入射口31aとレーザ光LBを伝送する光ファイバ80が取り付けられたレーザ光出射口31bとを有する第2筐体(筐体)31を少なくとも備えている。
【0057】
集光光学ユニット30は、第2筐体31の内部に配置され、レーザ光入射口31aから入射したレーザ光LBを集光し、光ファイバ80に入射させる集光レンズ32をさらに備えている。
【0058】
集光光学ユニット30は、集光レンズ32の位置を調整するレンズ位置調整機構33をさらに備えている。
【0059】
レンズ位置調整機構33は、集光レンズ32をX方向、Y方向及びZ方向のいずれにも、つまり、第1~第3方向のいずれにも移動可能に構成されている。
【0060】
第2筐体31には、光ファイバ80で反射された第1反射光を受光する光センサ35が複数、具体的には、4つ以上取り付けられている。第2光センサ35bと第4光センサ35dは、X方向(第1方向)に沿って、かつレーザ光LBの光路を挟んで対向する位置に取り付けられている。さらに、第1光センサ35aと第3光センサ35cは、Y方向(第2方向)に沿って、かつレーザ光LBの光路を挟んで対向する位置にも取り付けられている。
【0061】
集光光学ユニット30をこのように構成することで、第1~第4光センサ35a~35dのそれぞれから出力される出力信号は、光ファイバ80のコア81に対するレーザ光LBの位置ずれ量とすれの方向に応じて変化する。このことを利用して、光ファイバ80のコア81に対するレーザ光LBの位置ずれ量とずれの方向をそれぞれ精度良く評価することができる。
【0062】
また、従来、光ファイバ80のコア81に対するレーザ光LBの位置ずれ量とすれの方向とを作業者が手作業で試行しながら確定していた。このため、多くの時間を要していた。また、レーザ光LBと光ファイバ80のコア81との光結合効率を所定値以上にするのみ、作業者の熟練を要し、属人性の高い作業となっていた。
【0063】
一方、本実施形態によれば、作業者の経験に依存した手作業での位置ずれ量とすれの方向の確定作業が不要となるため、短時間でレーザ光LBと光ファイバ80のコア81との光結合効率を所定値以上に調整することが可能となる。
【0064】
また、特許文献2に開示される従来の構成では、光センサが2箇所に取り付けられているのみであり、例えば、集光レンズ32がY方向にずれているのか否か、また、位置ずれがある場合は、その位置ずれ量を評価できても、X方向やZ方向にずれているのか否か、また、その位置ずれ量を評価することは難しかった。
【0065】
一方、本実施形態によれば、例えば、位置ずれが無い場合の第1~第4光センサ35a~35dから出力されるそれぞれの出力信号の大きさを予め求めておき、第1テーブルに保存する。また、X方向、Y方向及びZ方向に予めわかった距離だけ集光レンズを移動させたときの、第1~第4光センサ35a~35dから出力されるそれぞれの出力信号の大きさも、第1テーブルに保存する。第1テーブルに保存された各値を利用して、集光レンズ32のずれの方向を評価できる。正常な位置からの集光レンズ32の位置ずれ量と第1~第4光センサ35a~35dの出力信号の大きさとの関係を予め実験的に求めておき、第1テーブルに保存し、これを利用して、集光レンズ32の位置ずれ量を評価できる。
【0066】
また、第1テーブルを利用することで、集光レンズ32のZ方向でのずれの方向、つまり、集光レンズ32が正常な位置からレーザ光入射口31aに近い側にずれているか、またはレーザ光出射口31bに近い側にずれているかを評価できる。一般に、集光レンズ32がレーザ光出射口31bに近い側にずれていれば、光センサ35の出力信号の大きさは、位置ずれが無い場合に比べて小さくなる。また、集光レンズ32のZ方向での位置ずれ量を評価できる。
【0067】
なお、X方向とY方向と第2筐体31の内部におけるレーザ光LBの光軸方向であるZ方向(第3方向)とは、互いに直交している。ただし、第2光センサ35bと第4光センサ35dをX方向に沿って対向して配置させる場合に、第1光センサ35aと第3光センサ35cは、必ずしもY方向に沿って配置しなくてもよい。第1光センサ35aと第3光センサ35cは、Z方向と直交し、かつX方向と交差する方向(当該方向も第2方向に含まれる)に沿って、かつレーザ光LBの光路を挟んで対向する位置にも取り付けられればよい。この場合も、光ファイバ80のコア81に対するレーザ光LBの位置ずれ量とずれの方向をそれぞれ精度良く評価することができることは言うまでもない。
【0068】
本実施形態に係るレーザ発振器100は、集光光学ユニット30と、レーザ光LBを出射するレーザ光源と、を少なくとも備えている。本実施形態では、レーザ光源は、4つのレーザモジュール10である。
【0069】
また、レーザ発振器100は、第1~第4光センサ35a~35dの出力信号を受け取って、光ファイバ80のコア81に対するレーザ光LBの位置ずれ量とすれの方向とを算出する演算部52をさらに備えている。
【0070】
演算部52を備えることで、光ファイバ80のコア81に対するレーザ光LBの位置ずれ量とずれの方向をそれぞれ精度良く評価することができる。
【0071】
また、レンズ位置調整機構33は、演算部52の算出結果に基づいて、集光レンズ32の位置を調整するように構成されている。
【0072】
レンズ位置調整機構33をこのように構成することで、演算部52で算出された光ファイバ80のコア81に対するレーザ光LBの位置ずれ量とすれの方向とに基づいて、集光レンズ32の位置を調整できる。このことにより、レーザ光LBと光ファイバ80のコア81との光結合効率の低下を抑制でき、ひいては、レーザ光LBの出力の低下や光ファイバ80の光学損傷の発生を抑制できる。
【0073】
また、レーザ光源が、複数のレーザモジュール10を含み、レーザ発振器100が、ビーム合成器20を備えているのが好ましい。ビーム合成器20は、複数のレーザモジュール10のそれぞれから出射されたモジュールレーザ光を合成してレーザ光LBとして集光光学ユニット30に出射する。
【0074】
レーザ発振器100をこのように構成することで、簡便な構成で高出力のレーザ光LBを出射することができる。このことにより、例えば、レーザ穴あけやレーザ切断やレーザ溶接等のレーザ加工に用いられるのに好適なレーザ発振器100を実現できる。
【0075】
本実施形態に係るレーザ加工装置200は、レーザ発振器100と、レーザ発振器100に接続され、レーザ発振器100から出射されたレーザ光LBを伝送する光ファイバ80と、光ファイバ80の出射端に取り付けられたレーザヘッド90と、を少なくとも備えている。
【0076】
レーザ加工装置200をこのように構成することで、レーザ発振器100から離れた位置にあるワークWに対して簡便にレーザ加工を行える。また、光ファイバ80を介して高出力のレーザ光LBをワークWに照射できる。さらに、光ファイバ80のコア81に対するレーザ光LBの位置ずれ量とずれの方向を精度良く評価できる。このことにより、集光レンズ32の位置を調整して、レーザ光LBと光ファイバ80のコア81との光結合効率の低下を抑制でき、高出力のレーザ光LBをワークWに向けて照射できる。また、光ファイバ80の光学損傷の発生を抑制できる。
【0077】
(実施形態2)
図6は、光ファイバで反射された第1反射光と石英ブロックで反射された第2反射光が光センサに入射する様子を示す模式図である。図7は、第2テーブルの概要を示す模式図である。なお、説明の便宜上、図6において実施形態1と同様の箇所については同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0078】
実施形態1に示す集光光学ユニット30では、前述したように、レーザ光出射口31bに、石英ブロック34を介して光ファイバ80が取り付けられている。また、第1~第4光センサ35a~35dのそれぞれは、光ファイバ80で反射された第1反射光だけでなく、石英ブロック34で反射された第2反射光も受光するように構成されている。
【0079】
一方、レーザ光LBの入射角度によっては、第1反射光が第2筐体31の内壁面に入射される位置と、第2反射光が第2筐体31の内壁面に入射される位置とが、Z方向で異なる場合がある。例えば、図6に示すように、第1反射光(実線矢印で図示)が入射される位置に光センサ35を配置した場合、集光レンズ32でのレーザ光LBの収束状態によっては、光センサ35に第2反射光(破線矢印で図示)が一部しか入射されない場合がある。なお、図6では、第2反射光が入射される位置に配置された場合の光センサ35を破線で示している。
【0080】
これは、石英ブロック34のZ方向の長さ分、光路長が異なることと、石英ブロック34の内部での屈折により、反射光の光路自体が変わってくることによる。同様の現象は、X方向でもY方向でも起こりうる。
【0081】
このような場合、例えば、光センサ35の配置個数をZ方向に沿って増やして対応することも考えられる。しかし、単なる光センサ35の個数増加では、第1反射光に基づく出力信号(以下、第1信号成分ともいう)と第2反射光に基づく出力信号(以下、第2信号成分ともいう)とを分離できず、光ファイバ80のコア81に対するレーザ光LBの位置ずれ量とずれの方向を正しく評価できない場合がある。また、光センサ35の個数増加は、集光光学ユニット30、ひいてはレーザ発振器100やレーザ加工装置200のコスト増加につながる。
【0082】
そこで、本実施形態では、前述した第2テーブルを用いて、第1~第4光センサ35a~35dのそれぞれの出力信号における反射光成分の寄与度を導出し、その結果に基づいて、演算部52で、光ファイバ80のコア81に対するレーザ光LBの位置ずれ量とずれの方向とを算出するようにしている。以下、さらに説明する。
【0083】
図7に示すように、数値テーブルである第2テーブルは、X方向、Y方向及びZ方向にそれぞれ集光レンズ32が移動した場合の第1~第4光センサ35a~35dのそれぞれの出力信号が記述されている。なお、レーザ光LBの光軸が光ファイバ80のコア81の中心を通る場合の集光レンズ32の位置(仮に(0,0,0)とする。)を原点位置としている。また、それぞれの出力に対して、反射光成分の寄与度、つまり、出力信号の大きさに占める第1信号成分の割合と第2信号成分の割合とが記述されている。
【0084】
反射光成分の寄与度は、予め実験的に求められる。例えば、第1信号成分のみを抽出する場合は、光ファイバ80の位置を固定した上で、石英ブロック34を除去し、レーザ光LBを出射させて、反射光を第1~第4光センサ35a~35dで受光する。この場合、不要な反射光を第1~第4光センサ35a~35dで受光しないように、光ファイバ80の周囲には吸光性の部材が配置されていることが好ましい。
【0085】
第2信号成分のみを抽出する場合は、石英ブロック34の位置を固定した上で、光ファイバ80を除去し、レーザ光LBを出射させて、反射光を第1~第4光センサ35a~35dで受光する。この場合、石英ブロック34のZ方向に対向する2つの端面のうち、集光レンズ32から遠い側を吸光性の部材で覆うのが好ましい。不要な反射光を第1~第4光センサ35a~35dで受光しないようにすることができる。
【0086】
なお、実験的に求められた第1信号成分と第2信号成分との和と、図2に示す構成の集光光学ユニット30を用いて取得された出力信号の大きさとを用いて、適宜、補正等の処理を行って、反射光成分の寄与度が算出される。本実施形態では、第2信号成分の寄与度(%)を100%から第1信号成分の寄与度(%)を引いた値としている。
【0087】
本実施形態における集光レンズ32の位置調整手順について、以下に説明する。
【0088】
図8は、実施形態2に係る集光レンズの位置調整手順を示すフローチャートである。
【0089】
まず、レーザ発振器100において、レーザ光LBを発生させ、光ファイバ80に向けて出射する(ステップS1)。次に、例えば、実施形態1で示したように、第1~第4光センサ35a~35dのそれぞれの出力信号に基づいて、演算部52は、第1テーブルを用いて、光ファイバ80のコア81に対するレーザ光LBの位置ずれ量とずれの方向とを算出する(ステップS2)。演算部52は、第1テーブルの代わりに前述の近似式を用いてもよい。この場合、第1信号成分と第2信号成分の両方と、第1テーブルまたは近似式とに基づいて、光ファイバ80のコア81に対するレーザ光LBの位置ずれ量とずれの方向とが算出されていると言える。
【0090】
演算部52の算出結果に基づいて、レンズ位置調整機構33を操作して、集光レンズ32を移動させる(ステップS3)。再度、レーザ光LBを光ファイバ80に向けて出射し、第1~第4光センサ35a~35dのそれぞれの出力信号を確認する(ステップS4)。
【0091】
第1~第4光センサ35a~35dのそれぞれの出力信号と第1テーブルとに基づいて、光ファイバ80のコア81に対するレーザ光LBの位置ずれ量が所定値以下である否かを判断する(ステップS5)。演算部52は、第1テーブルの代わりに前述の近似式を用いてもよい。制御部50に設けられたCPU上で所定のソフトウェアを実行することで、ステップS5における判断がなされる。このCPUは、演算部52を構成するCPUであってもよいし、別のCPUであってもよい。ステップS5の判断結果が肯定的、つまり、光ファイバ80のコア81に対するレーザ光LBの位置ずれ量が所定値以下であると判断された場合は、集光レンズ32の位置調整を終了する。
【0092】
一方、ステップS5の判断結果が否定的、つまり、光ファイバ80のコア81に対するレーザ光LBの位置ずれ量が所定値を超えている場合は、集光レンズ32を透過したレーザ光LBが散乱等により拡がった状態で、石英ブロック34や光ファイバ80の入射端面に入射している可能性がある。つまり、入射角度がばらついた状態で、レーザ光LBが石英ブロック34や光ファイバ80の入射端面に入射している可能性がある。あるいは、複数の方向からレーザ光LBが石英ブロック34や光ファイバ80の入射端面に入射している可能性がある。
【0093】
このような場合は、演算部52は、第2テーブルに基づいて、反射光成分の寄与度を算出する(ステップS6)。さらに、寄与度を考慮して、第1~第4光センサ35a~35dのそれぞれの出力信号における第1信号成分の大きさを算出する(ステップS7)。
【0094】
ステップS7の算出結果と、第1テーブルとに基づいて、演算部52は、光ファイバ80のコア81に対するレーザ光LBの位置ずれ量とずれの方向とを、再度、算出する(ステップS8)。演算部52は、第1テーブルの代わりに前述の近似式を用いてもよい。
【0095】
ステップS3に戻って、演算部52の算出結果に基づいて、レンズ位置調整機構33を操作して、集光レンズ32を移動させる。再度、レーザ光LBを出射させ、第1~第4光センサ35a~35dのそれぞれの出力信号を確認する(ステップS4)。さらに、ステップS5に進み、ステップS5の判断結果が肯定的になるまで、一連の処理を繰り返し実行する。
【0096】
以上説明したように、本実施形態において、演算部52は、第1~第4光センサ35a~35dの出力信号と予め準備された数値テーブルである第2テーブルとに基づいて、第1反射光に基づく第1信号成分と第2反射光に基づく第2信号成分とを算出する。さらに、演算部52は、第1信号成分及び第2信号成分に基づいて、光ファイバ80のコア81に対するレーザ光LBの位置ずれ量とすれの方向とを算出する(ステップS6~S8)ように構成されている。
【0097】
本実施形態によれば、実施形態1に示す構成が奏するのと同様の効果を奏することは言うまでもない。さらに、本実施形態によれば、第2筐体31の内部における光センサ35の配置を厳密に設定しなくても、また、光センサ35の配置個数を増加すること無く、光ファイバ80のコア81に対するレーザ光LBの位置ずれ量とずれの方向とを精度良く算出することができる。
【0098】
(その他の実施形態)
実施形態1,2におけるレーザ発振器100は、必ずしも演算部52を有していなくてもよい。その場合、例えば、作業者が、第1~第4光センサ35a~35dの出力信号の大きさと予め準備された第1テーブルや第2テーブルとを用いて、光ファイバ80のコア81に対するレーザ光LBの位置ずれ量とずれの方向とを算出する。また、作業者は、自らが算出した算出結果に基づいて、レンズ位置調整機構33を操作し、集光レンズ32の位置を調整する。
【0099】
この場合、レーザ加工装置200は、図示しない入力部を備えているのが好ましく、入力部への入力内容にしたがって、第1~第4光センサ35a~35dの出力信号の大きさや第1テーブルや第2テーブルが、表示部70に表示されるのが好ましい。入力部は、例えば、キーボードやタッチパネルなどの公知の入力デバイスで構成されるのが好ましい。
【0100】
あるいは、演算部52は、制御部50と別個に設けられた機器であってもよい。当該機器が、第1~第4光センサ35a~35dの出力信号を受け取って、演算部52がそれぞれの出力信号に基づいて、光ファイバ80のコア81に対するレーザ光LBの位置ずれ量とずれの方向とを算出可能であればよい。この場合も、演算部52はCPUで構成される。
【産業上の利用可能性】
【0101】
本開示の集光光学ユニットは、光ファイバのコアに対するレーザ光の入射ずれ量とずれの方向を簡便な構成で精度良く評価可能なため、有用である。
【符号の説明】
【0102】
10 レーザモジュール
20 ビーム合成器
30 集光光学ユニット
31 第2筐体(筐体)
31a レーザ光入射口
31b レーザ光出射口
32 集光レンズ
33 レンズ位置調整機構
33a 枠体
33b 調整ねじ
33c ボールねじ
34 石英ブロック
35 光センサ
35a~35d 第1~第4光センサ
40 第1筐体
50 制御部
51 記憶部
52 演算部
60 電源
70 表示部
80 光ファイバ
81 コア
82 クラッド
83 保護皮膜
90 レーザヘッド
100 レーザ発振器
200 レーザ加工装置
LB レーザ光
W ワーク
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8