(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023170077
(43)【公開日】2023-12-01
(54)【発明の名称】後方画像表示システム
(51)【国際特許分類】
H04N 7/18 20060101AFI20231124BHJP
B60R 1/26 20220101ALI20231124BHJP
【FI】
H04N7/18 J
B60R1/26
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022081545
(22)【出願日】2022-05-18
(71)【出願人】
【識別番号】000010098
【氏名又は名称】アルプスアルパイン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099748
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 克志
(74)【代理人】
【識別番号】100103171
【弁理士】
【氏名又は名称】雨貝 正彦
(74)【代理人】
【識別番号】100105784
【弁理士】
【氏名又は名称】橘 和之
(74)【代理人】
【識別番号】100098497
【弁理士】
【氏名又は名称】片寄 恭三
(72)【発明者】
【氏名】大森 太輔
【テーマコード(参考)】
5C054
【Fターム(参考)】
5C054CA04
5C054CC02
5C054EA05
5C054FD03
5C054FE14
5C054FE18
5C054HA30
(57)【要約】
【課題】近傍の領域を含む自動車後方の画像を距離感の把握が容易な形態で表示する「後方画像表示システム」を提供する。
【解決手段】ドライバモニタ5に表示する拡張後方提示画像430(c)の中央の長方形の領域420に、撮影画像(a)の中央の画角範囲に対応する領域300を投影し、撮影画像の、領域300の左側の水平画角範囲の領域411を、拡張後方提示画像430の、領域420の左に隣接した、上辺と下辺が左斜め下方向に傾斜した領域421に投影し、撮影画像の、領域300の右側の水平画角範囲の領域412を、拡張後方提示画像430の、領域420の右に隣接した、上辺と下辺が右斜め下方向に傾斜した領域422に投影する。撮影画像の領域411の垂直画角範囲は、左に向かうにつれて下方に漸次的に拡大し、撮影画像の領域412の垂直画角範囲は、右側に向かうにつれて下方に漸次的に拡大する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車に搭載される後方画像表示システムであって、
撮影方向を前記自動車の後方方向とするカメラと、
前記自動車の後方のようすを表す後方提示画像を表示するモニタと、
前記モニタに表示する後方提示画像を生成する後方提示画像生成手段とを有し、
前記後方提示画像は基本画像領域と左拡張画像領域と右拡張画像領域とを有し、
前記後方提示画像生成手段は、前記カメラで撮影した画像である撮影画像の基本領域の画像部分を、前記基本画像領域に投影し、前記撮影画像の左拡張領域の画像部分を、前記左拡張画像領域に投影し、前記撮影画像中の右拡張領域の画像部分を、前記右拡張画像領域に投影して前記後方提示画像を生成し、
前記左拡張領域は、前記基本領域に表れる実空間の範囲である基本範囲よりも前記自動車の前後方向について前記自動車に近い範囲であって、前記自動車の左右方向について当該自動車の左側の実空間の範囲である左近傍範囲を含む、前記カメラから見て前記基本範囲の左側となる実空間の範囲である左拡張範囲が表れる前記撮影画像中の領域であり、
前記右拡張領域は、前記基本領域に表れる実空間の範囲である基本範囲よりも前記自動車の前後方向について前記自動車に近い範囲であって、前記自動車の左右方向について当該自動車の右側の実空間の範囲である右近傍範囲を含む、前記カメラから見て前記基本範囲の右側となる実空間の範囲である右拡張範囲が表れる前記撮影画像中の領域であり、
前記左拡張画像領域は、前記基本画像領域の左に隣接した、上辺が前記基本画像領域の上辺よりも大きく傾斜した領域であり、前記右拡張画像領域は、前記基本画像領域の右に隣接した、上辺が前記基本画像領域の上辺よりも大きく、前記左拡張画像領域の上辺と左右対称となる方向側に傾斜した領域であることを特徴とする後方画像表示システム。
【請求項2】
請求項1記載の後方画像表示システムであって、
前記左拡張画像領域は、前記基本画像領域の左に隣接した、上辺が前記基本画像領域の上辺よりも大きく傾斜し、下辺が前記基本画像領域の下辺よりも大きく傾斜した領域であり、前記右拡張画像領域は、前記基本画像領域の右に隣接した、上辺が前記基本画像領域の上辺よりも大きく傾斜し、下辺が前記基本画像領域の下辺よりも大きく、前記左拡張画像領域の下辺と左右対称となる方向側に傾斜した領域であることを特徴とする後方画像表示システム。
【請求項3】
請求項1記載の後方画像表示システムであって、
前記左拡張画像領域は、前記基本画像領域の左に隣接した、上辺が前記基本画像領域の上辺よりも左斜め下方向に大きく傾斜した領域であり、前記右拡張画像領域は、前記基本画像領域の右に隣接した、上辺が前記基本画像領域の上辺よりも右斜め下方向に大きく傾斜した領域であることを特徴とする後方画像表示システム。
【請求項4】
請求項3記載の後方画像表示システムであって、
前記基本画像領域は長方形の領域であり、
前記左拡張画像領域は、右辺が基本画像領域の左辺と一致し、左辺の上端と下端が基本画像領域の左辺の上端よりも下方の位置にある四角形の領域であり、
前記右拡張画像領域は、左辺が基本画像領域の右辺と一致し、右辺の上端と下端が基本画像領域の右辺の上端よりも下方の位置にある四角形の領域であることを特徴とする後方画像表示システム。
【請求項5】
請求項4記載の後方画像表示システムであって、
前記左拡張画像領域の左辺は右辺より長く、
前記右拡張画像領域の右辺は左辺より長いことを特徴とする後方画像表示システム。
【請求項6】
請求項3記載の後方画像表示システムであって、
前記後方提示画像の上辺と下辺は、弧状に上方向に凹んだ形状を有し、
前記基本画像領域は、前記後方提示画像の左右方向について中央の領域であり、前記左拡張画像領域は、前記後方提示画像の前記基本画像領域の左側の領域であり、前記右拡張画像領域は、前記後方提示画像の前記基本画像領域の右側の領域であることを特徴とする後方画像表示システム。
【請求項7】
請求項1、2、3、4、5または6記載の後方画像表示システムであって、
前記左拡張画像領域は、前記基本画像領域に対応する水平画角範囲の左側の水平画角範囲に対応すると共に、当該左拡張画像領域に対応する垂直画角範囲は、右端において前記基本画像領域の左辺に対応する垂直画角範囲と等しく、かつ、当該左拡張画像領域に対応する垂直画角範囲は左端方向に向かうにつれて下方に漸次的に拡大し、
前記右拡張画像領域は、前記基本画像領域に対応する水平画角範囲の右側の水平画角範囲に対応すると共に、当該右拡張画像領域に対応する垂直画角範囲は、左端において前記基本画像領域の右辺に対応する垂直画角範囲と等しく、かつ、当該左拡張画像領域に対応する垂直画角範囲は右端方向に向かうにつれて下方に漸次的に拡大していることを特徴とする後方画像表示システム。
【請求項8】
請求項1、2、3、4、5または6記載の後方画像表示システムであって、
前記後方提示画像生成手段は、前記自動車の車内後部のようすを模擬する図形を前記後方提示画像に重畳した画像を前記モニタに表示することを特徴とする後方画像表示システム。
【請求項9】
請求項1、2、3、4、5または6記載の後方画像表示システムであって、
前記カメラは仮想のカメラであり、
前記後方提示画像生成手段は、自動車左側部から後方を撮影する左サイドカメラで撮影した画像と、自動車右側部から後方を撮影する右サイドカメラで撮影した画像と、自動車後部から後方を撮影するバックカメラで撮影した画像のそれぞれを視点変換して合成し、前記仮想のカメラで撮影した前記撮影画像を、前記自動車の左側方の実空間の範囲と右側方の実空間の範囲が前記撮影画像中に表れるように生成し、
前記左近傍範囲は、前記自動車の左側方の実空間の範囲を含み、前記右近傍範囲は、前記自動車の右側方の実空間の範囲を含むことを特徴とする後方画像表示システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カメラで撮影した自動車後方の画像をモニタに表示する技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
カメラで撮影した自動車後方の画像をモニタに表示する技術としては、自動車後部に配置したカメラで後方を撮影した画像を、フロントウインドシールドの上方の位置に配置したルームミラー型のモニタに表示する電子ミラーの技術が知られている(たとえば、特許文献1)。
【0003】
また、自動車後部に配置したカメラで後方を撮影した画像に、自動車の左右の側部に配置した左右のカメラで後方を撮影した画像を視点変換して合成し、車内に備えたモニタに表示する技術も知られている(たとえば、特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2016-195301号公報
【特許文献2】特開2009-206747号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
後方のようすを伝統的なルームミラーと同様に表すように、自動車後部に配置したカメラで後方を撮影した画像をモニタに表示する場合、後方の自動車近傍に、モニタに表示されない死角領域が発生する。
自動車後部に配置するカメラを広角のカメラとすれば、後方の自動車近傍の領域も含めて撮影することはできるが、表示面のサイズが限られるモニタに、広角のカメラで撮影した広い範囲の画像の全てを表示することは現実的ではない。
一方で、表示面に収まるように広角のカメラで撮影した画像を変形して表示することとすれば、表示が不自然となったり、表示画像からの距離感の把握が困難になったりするなどの問題が生じる。
そこで、本発明は、ドライバにとって重要度が高い自動車近傍の領域の画像を含む、自動車後方の画像を、自然で距離感の把握が容易な形態で表示することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題達成のために、本発明は、自動車に搭載される後方画像表示システムに、撮影方向を前記自動車の後方方向とするカメラと、前記自動車の後方のようすを表す後方提示画像を表示するモニタと、前記モニタに表示する後方提示画像を生成する後方提示画像生成手段とを設けたものである。前記後方提示画像は基本画像領域と左拡張画像領域と右拡張画像領域とを有し、前記後方提示画像生成手段は、前記カメラで撮影した画像である撮影画像の基本領域の画像部分を、前記基本画像領域に投影し、前記撮影画像の左拡張領域の画像部分を、前記左拡張画像領域に投影し、前記撮影画像中の右拡張領域の画像部分を、前記右拡張画像領域に投影して前記後方提示画像を生成する。ここで、前記左拡張領域は、前記基本領域に表れる実空間の範囲である基本範囲よりも前記自動車の前後方向について前記自動車に近い範囲であって、前記自動車の左右方向について当該自動車の左側の実空間の範囲である左近傍範囲を含む、前記カメラから見て前記基本範囲の左側となる実空間の範囲である左拡張範囲が表れる前記撮影画像中の領域であり、前記右拡張領域は、前記基本領域に表れる実空間の範囲である基本範囲よりも前記自動車の前後方向について前記自動車に近い範囲であって、前記自動車の左右方向について当該自動車の右側の実空間の範囲である右近傍範囲を含む、前記カメラから見て前記基本範囲の右側となる実空間の範囲である右拡張範囲が表れる前記撮影画像中の領域である。また、前記左拡張画像領域は、前記基本画像領域の左に隣接した、上辺が前記基本画像領域の上辺よりも大きく傾斜した領域であり、前記右拡張画像領域は、前記基本画像領域の右に隣接した、上辺が前記基本画像領域の上辺よりも大きく、前記左拡張画像領域の上辺と左右対称となる方向側に傾斜した領域である。
【0007】
ここで、このような後方画像表示システムにおいて、前記左拡張画像領域を、前記基本画像領域の左に隣接した、上辺が前記基本画像領域の上辺よりも大きく傾斜し、下辺が前記基本画像領域の下辺よりも大きく傾斜した領域とし、前記右拡張画像領域を、前記基本画像領域の右に隣接した、上辺が前記基本画像領域の上辺よりも大きく傾斜し、下辺が前記基本画像領域の下辺よりも大きく、前記左拡張画像領域の下辺と左右対称となる方向側に傾斜した領域としてもよい。
【0008】
または、このような後方画像表示システムにおいて、前記左拡張画像領域を、前記基本画像領域の左に隣接した、上辺が前記基本画像領域の上辺よりも左斜め下方向に大きく傾斜した領域とし、前記右拡張画像領域を、前記基本画像領域の右に隣接した、上辺が前記基本画像領域の上辺よりも右斜め下方向に大きく傾斜した領域としてもよい。
【0009】
または、この場合には、前記基本画像領域を長方形の領域とし、前記左拡張画像領域を、右辺が基本画像領域の左辺と一致し、左辺の上端と下端が基本画像領域の左辺の上端よりも下方の位置にある四角形の領域とし、前記右拡張画像領域を、左辺が基本画像領域の右辺と一致し、右辺の上端と下端が基本画像領域の右辺の上端よりも下方の位置にある四角形の領域としてもよい。ここで、前記左拡張画像領域の左辺を右辺より長くし、前記右拡張画像領域の右辺を左辺より長くしてもよい。
【0010】
または、この場合には、後方画像表示システムにおいて、前記後方提示画像の上辺と下辺は、弧状に上方向に凹んだ形状を有するものとし、前記基本画像領域を、前記後方提示画像の左右方向について中央の領域とし、前記左拡張画像領域を、前記後方提示画像の前記基本画像領域の左側の領域とし、前記右拡張画像領域を、前記後方提示画像の前記基本画像領域の右側の領域としてもよい。
【0011】
また、以上の後方画像表示システムにおいて、前記左拡張画像領域は、前記基本画像領域に対応する水平画角範囲の左側の水平画角範囲に対応すると共に、当該左拡張画像領域に対応する垂直画角範囲は、右端において前記基本画像領域の左辺に対応する垂直画角範囲と等しく、かつ、当該左拡張画像領域に対応する垂直画角範囲は左端方向に向かうにつれて下方に漸次的に拡大するものであり、前記右拡張画像領域は、前記基本画像領域に対応する水平画角範囲の右側の水平画角範囲に対応すると共に、当該右拡張画像領域に対応する垂直画角範囲は、左端において前記基本画像領域の右辺に対応する垂直画角範囲と等しく、かつ、当該左拡張画像領域に対応する垂直画角範囲は右端方向に向かうにつれて下方に漸次的に拡大するものであってよい。
【0012】
また、以上の後方画像表示システムにおいて、前記後方提示画像生成手段は、前記自動車の車内後部のようすを模擬する図形を前記後方提示画像に重畳した画像を前記モニタに表示してもよい。
また、以上の後方画像表示システムにおいて、前記カメラを仮想のカメラとし、前記後方提示画像生成手段が、自動車左側部から後方を撮影する左サイドカメラで撮影した画像と、自動車右側部から後方を撮影する右サイドカメラで撮影した画像と、自動車後部から後方を撮影するバックカメラで撮影した画像のそれぞれを視点変換して合成し、前記仮想のカメラで撮影した前記撮影画像を、前記自動車の左側方の実空間の範囲と右側方の実空間の範囲が前記撮影画像中に表れるように生成してもよい。ここで、この場合、前記左近傍範囲には、前記自動車の左側方の実空間の範囲を含め、前記右近傍範囲には、前記自動車の右側方の実空間の範囲を含める。
【0013】
以上のような後方画像表示システムによれば、拡張後方提示画像を立体として捉えるドライバの錯覚によって、左拡張画像領域の画像は、より左の部分ほど、より手前の部分を表しているように認識され、右拡張画像領域の画像は、より右の部分ほど、より手前の部分を表しているように認識される。そして、左近傍範囲内の自動車の前後方向について当該自動車により近い部分は、左拡張画像領域のより左側に表れ、右近傍範囲内の自動車の前後方向について当該自動車により近い部分は、右拡張画像領域のより右側に表れる。
【0014】
よって、ドライバは、拡張後方提示画像から、自動車の近傍の左右の領域のようすを、距離感をもって直感的に認知することができる。
【発明の効果】
【0015】
以上のように、本発明によれば、ドライバにとって重要度が高い自動車近傍の領域の画像を含む、自動車後方の画像を自然で距離感の把握が容易な形態で表示することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の実施形態に係る後方画像表示システムの構成を示すブロック図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る各種カメラとモニタの配置を示す図である。
【
図3】本発明の実施形態に係る基本後方提示画像の説明図である。
【
図4】本発明の実施形態に係る拡張後方提示画像の説明図である。
【
図5】本発明の実施形態に係る拡張後方提示画像の他の例を示す図である。
【
図6】本発明の実施形態に係る拡張後方提示画像の他の例を示す図である。
【
図7】本発明の実施形態に係る拡張後方提示画像の他の例を示す図である。
【
図8】本発明の実施形態に係る拡張後方提示画像の他の例を示す図である。
【
図9】本発明の実施形態に係る拡張後方提示画像の他の生成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について説明する。
図1に、本実施形態に係る後方画像表示システムの構成を示す。
後方画像表示システムは自動車に搭載されるシステムであり、図示するように、バックカメラ1、左サイドカメラ2、右サイドカメラ3、バックモニタ4、ドライバモニタ5、左サイドモニタ6、右サイドモニタ7、画像処理部8を備えている。
このような後方画像表示システムの構成において、
図2a1、a2に示すように、バックカメラ1は、自動車の車内後部に配置されており、当該位置から自動車の後ろ方向を撮影する。また、左サイドカメラ2は自動車の左側部に配置され、当該位置から自動車の後ろ方向を撮影し、右サイドカメラ3は自動車の右側部に配置され、当該位置から自動車の後ろ方向を撮影する。
【0018】
また、バックモニタ4、ドライバモニタ5、左サイドモニタ6、右サイドモニタ7とは画像を表示するディスプレイであり、たとえば、
図2bに示すように、バックモニタ4は、フロントウインドシールドの上方の左右方向について中央の位置に配置され、ドライバモニタ5は、ドライバ前方のメータフード内に配置され、左サイドモニタ6は運転席の左右方向中心より左側に位置するように配置され、右サイドモニタ7は運転席の左右方向中心より右側に位置するように配置される。
【0019】
図1に戻り、画像処理部8は、バックカメラ1で撮影した画像、左サイドカメラ2で撮影した画像、右サイドカメラ3で撮影した画像、バックカメラ1で撮影した画像の画像処理と、バックモニタ4、ドライバモニタ5、左サイドモニタ6、右サイドモニタ7への表示の制御を行う。
【0020】
すなわち、画像処理部8は、左サイドカメラ2で撮影した画像を左サイドモニタ6に表示し、右サイドカメラ3で撮影した画像を右サイドモニタ7に表示する。
また、画像処理部8は、バックカメラ1で撮影した画像に画像処理を施して基本後方提示画像を生成し、バックモニタ4に表示する。
以下、この基本後方提示画像の生成について説明する。
図3a1、a2に示すように、バックカメラ1は、水平画角がθH、垂直画角がθVの広角カメラである。
画像処理部8には、
図3b1、b2に示す水平画角範囲θHC(θHC<θH)、垂直画角範囲θVC(θVC<θV)の範囲に対応する、バックカメラ1の撮影画像中の領域が基本領域として設定されており、撮影画像の基本領域の画像部分をを基本後方提示画像として抽出しバックモニタ4に表示する。
【0021】
水平画角範囲θHCは、おおよそバックカメラ1の光軸を画角の中心軸とする水平方向の画角範囲であり、その大きさは、たとえば、約40度である。
また、垂直画角範囲θVCは、おおよそバックカメラ1の光軸を画角の中心軸とする垂直方向の画角範囲であり、その大きさは、たとえば、約10度である。
したがって、バックカメラ1の撮影画像が
図3cに示すものであれば、おおよそ中央にある、水平画角範囲θHC、垂直画角範囲θVCに対応する長方形の領域である基本領域300の画像が、基本後方提示画像をして抽出され、
図3dに示すようにバックモニタ4に表示される。
【0022】
さて、以上のように、基本後方提示画像は、広角カメラであるバックカメラ1の撮影範囲の全てを表す画像とはならず、水平面について示せば、
図3eの領域BAのようすのみを表すこととなる画像となり、後方の自動車近傍にバックモニタ4に表示されない死角領域が発生する。したがって、当該死角領域にいる他車をバックモニタ4の表示からドライバが認識できないことが生じる。
【0023】
そこで、画像処理部8は、バックモニタ4の死角領域のうちのドライバにとって重要度が高い自動車の左右後方の近傍の領域を含む、自動車後方のようすを表す拡張後方提示画像を生成し、ドライバモニタ5に表示する。
画像処理部8は、拡張後方提示画像を次のように生成する。
画像処理部8には、予め、バックカメラ1の撮影画像中の左拡張領域と、バックカメラ1の撮影画像中の右拡張領域が設定されている。
左拡張領域に対応する水平画角範囲の右側境界は、基本領域300の水平画角範囲の左側境界と等しく、左拡張領域に対応する水平画角範囲の左側境界はバックカメラ1の撮影画像の水平画角範囲の左側境界と等しい。
また、左拡張領域に対応する垂直画角範囲は、右端において基本領域300の垂直画角範囲と同じである。そして、左拡張領域に対応する垂直画角範囲は、左に向かうにつれて漸次的に下方に拡大していき、左端において上側境界が基本領域300の垂直画角範囲の上側境界と等しくなり、下側境界がバックカメラ1の垂直画角範囲の下側境界と等しくなる。
【0024】
また、右拡張領域に対応する水平画角範囲の左側境界は、基本領域300の水平画角範囲の右側境界と等しく、左拡張領域に対応する水平画角範囲の右側境界はバックカメラ1の撮影画像の水平画角範囲の右側境界と等しい。
また、右拡張領域に対応する垂直画角範囲は、左端において基本領域300の垂直画角範囲と同じである。そして、右拡張領域に対応する垂直画角範囲は、右に向かうにつれて漸次的に下方に拡大していき、右端において上側境界が基本領域300の垂直画角範囲の上側境界と等しくなり、下側境界がバックカメラ1の垂直画角範囲の下側境界と等しくなる。
【0025】
よって、
図4aに示すバックカメラ1の歪みのない撮影画像で示せば、画像処理部8には、予め、
図4dに示すように、基本領域300の左側に隣接する、右辺が基本領域300の左辺と一致し、左に向かうほどに下方に拡大していく左拡張領域411と、基本領域300の右側に隣接する、左辺が基本領域300の右辺と一致し、右に向かうほどに下方に拡大していく右拡張領域412とが予め設定されている。
【0026】
ここで、左拡張領域411は、
図4bに示す、バックモニタ4の死角領域のうちの、自動車の左後方の近傍の領域NLのようすが、その内に表れる領域となり、右拡張領域412は、バックモニタ4の死角領域のうちの、自動車の右後方の近傍の領域NRのようすが、その内に表れる領域となる。
【0027】
また、この近傍の領域NL、NRは、基本領域300の画像が表す領域BAよりも、自動車の前後方向について当該自動車に近い部分を含むこととなる。
また、画像処理部8には、拡張後方提示画像の画像空間上の領域として、
図4cに示すように、基本画像領域420と左拡張画像領域421と右拡張画像領域422が予め定義されている。
基本画像領域420は、基本領域300と同形状の長方形の領域であり、拡張後方提示画像の画像空間の左右方向の中央の上よりの位置に配置される。
左拡張画像領域421は四角形の領域であり、その左辺と右辺は上下方向に延びている。また、左拡張画像領域421の右辺は基本画像領域420の左辺と一致し、左拡張画像領域421の左辺の上端は右辺の上端よりも下方に位置し、左拡張画像領域421の左辺は右辺よりも長い。
【0028】
また、右拡張画像領域422は四角形の領域であり、その左辺と右辺は上下方向に延びている。また、右拡張画像領域422の左辺は基本画像領域420の右辺と一致し、右拡張画像領域422の右辺の上端は左辺の上端よりも下方に位置し、右拡張画像領域422の右辺は左辺よりも長い。
【0029】
そして、画像処理部8は、バックカメラ1の撮影画像の基本領域300の画像部分を基本画像領域420に投影し、左拡張領域411の画像部分を左拡張画像領域421に投影し、右拡張領域412の画像部分を右拡張画像領域422に投影して、たとえば、
図4dに示すように拡張後方提示画像430を生成し、ドライバモニタ5に表示する。なお、ドライバモニタ5の、拡張後方提示画像430以外の表示領域は単色を表示し、拡張後方提示画像430の背景とする、
このような拡張後方提示画像430によれば、拡張後方提示画像430を立体として捉えるドライバの錯覚によって、左拡張画像領域421の画像は、より左の部分ほど、より手前の部分を表しているように認識され、右拡張画像領域422の画像は、より右の部分ほど、より手前の部分を表しているように認識される。
【0030】
また、
図4a、bから理解されるように、自動車の左後方の近傍の領域NLの、自動車の前後方向について自動車により近い部分は左拡張画像領域421のより左側に表れ、自動車の右後方の近傍の領域NRの、自動車の前後方向について自動車により近い部分は右拡張画像領域422のより右側に表れる。
【0031】
よって、ドライバは、自動車の左右後方の近傍の領域NL、NRのようすを、距離感をもって認知することができる。
たとえば、左から自動車に接近する他車の像は、自動車により近づくほど左拡張画像領域421のより左側に移動し、右から自動車に接近する他車の像は、自動車により近づくほど右拡張画像領域422のより右側に移動する。よって、ドライバは、拡張後方提示画像430から他車の接近を直感的に認知することができる。
【0032】
また、歪みのない撮影画像上において、左拡張領域411の形状は左拡張画像領域421の形状に近似し、右拡張領域412の形状は右拡張画像領域422の形状と近似しているので、左拡張画像領域421、右拡張画像領域422の像が大きく変形してしまうことはない。
【0033】
また、左拡張領域411、基本領域300、右拡張領域412は連続するように設定しているので、左拡張画像領域421、基本画像領域420、右拡張画像領域422の画像の連続性は保たれる。
よって、本実施形態によれば、拡張後方提示画像430として、ドライバにとって重要度が高い自動車近傍の領域の画像を含む、自動車後方の画像を、自然で距離感の把握が容易な形態で表示することができる。
以上、本発明の実施形態について説明した。
ここで、以上の実施形態において、画像処理部8は、前方より車内後方を観察したようすを摸擬する図形を拡張後方提示画像430に重畳して表示してもよい。
すなわち、
図5aに示すように前方より車内後方を観察したようすを摸擬する図形である車内模擬図形500を予め設定しておき、この図形を、
図5bに示すように、拡張後方提示画像430に重ねて表示してもよい。
ここで、
図5bに示すように、車内模擬図形500は、その下の、拡張後方提示画像430が視認できるように所定の透明度を持たせて表示する。また、車内模擬図形500の車内左側部の左リアウインドウ周辺の後方部分のようすを表す部分が左拡張画像領域421に重なり、車内模擬図形500の車内右側部の右リアウインドウ周辺の後方部分のようすを表す部分が右拡張画像領域422に重なり、車内模擬図形500の車内左側部と車内右側部の間のリアウインドウやリアシート上部の後方部分のようすを表す部分が基本画像領域420に重なるように、車内模擬図形500は作成する。
【0034】
また、以上の実施形態において、
図4cに示した基本画像領域420、左拡張画像領域421、右拡張画像領域422は、
図6aに示すように設定してもよい。
すなわち、拡張後方提示画像430の形状を、左辺と右辺として上下方向に延びた同じ長さの同じ上下方向の位置にある辺を持ち、上辺と下辺として上方向に弧状に凹んだ湾曲した辺を持つ形状とする。
そして、拡張後方提示画像430の中央の領域を基本画像領域420とし、拡張後方提示画像430の基本画像領域420の左側の領域を左拡張画像領域421とし、拡張後方提示画像430の基本画像領域420の右側の領域を右拡張画像領域422とする。
そして、
図6bに示すようにバックカメラ1の撮影画像の基本領域300の画像部分を基本画像領域420に投影し、左拡張領域411の画像部分を左拡張画像領域421に投影し、右拡張領域412の画像部分を右拡張画像領域422に投影して、
図6cに示すように拡張後方提示画像430を生成し、ドライバモニタ5に表示する。
【0035】
また、
図6aに示したものの他、拡張後方提示画像430、基本画像領域420、左拡張画像領域421、右拡張画像領域422としては、
図7a、b、cに示すようなものも用いることができる。
図6a、
図7a、b、cのいずれの場合も、拡張後方提示画像430の撮影画像からの変形の度合いは、
図4に示したものより大きくなるが、左拡張画像領域421、右拡張画像領域422の少なくとも上辺を、基本画像領域420の上辺より大きく、左右対称となる方向側に傾斜させることにより、拡張後方提示画像430を立体として捉えるドライバの錯覚を誘引でき、ドライバに自動車の左右後方の近傍の領域NL、NRのようすを、距離感をもって認知させることができる。
【0036】
また、以上の実施形態では、拡張後方提示画像430をドライバモニタ5に表示したが、拡張後方提示画像430は他のモニタに表示してもよい。
また、拡張後方提示画像430をバックモニタ4に表示する場合には、バックモニタ4の形状に合わせて拡張後方提示画像430をトリミングして表示してもよい。
すなわち、たとえば、
図8aに示す表示面を持つバックモニタ4に拡張後方提示画像430を表示する場合には、
図8bに示すように、拡張後方提示画像430の基本画像領域420と、左拡張画像領域421の上下方向の範囲が基本画像領域420と等しい部分と、右拡張画像領域422の上下方向の範囲が基本画像領域420と等しい部分よりなる抽出範囲701を設定し、拡張後方提示画像430の抽出範囲701の画像部分を抽出して
図8cに示すようにバックモニタ4に表示する。
【0037】
なお、この場合には、左拡張画像領域421と右拡張画像領域422のバックモニタ4に表示されない部分は、実際には生成しなくてよい。
また、以上の実施形態では、バックカメラ1の撮影画像のみを用いて拡張後方提示画像430を生成したが、バックカメラ1の撮影画像と、左サイドカメラ2で撮影した画像と、右サイドカメラ3で撮影した画像とを合成した画像を用いて拡張後方提示画像430を生成してもよい。
【0038】
すなわち、この場合には、たとえば、
図9aに水平画角について示すように、バックカメラ1が撮影した水平画角θHの画像と、左サイドカメラ2が撮影した水平画角θLの画像と、右サイドカメラ3が撮影した水平画角θRの画像を、
図9bに示すように、左サイドカメラ2や右サイドカメラ3よりも自動車前方側にある仮想視点801から後方を広角に観察した画像に視点変換する。
【0039】
そして、視点変換した各画像を、仮想視点801に配置した仮想カメラから後方を広角(水平画角θHV、垂直画角θVV)で撮影した場合に得られる1つの画像である仮想カメラ画像に合成する。
ここで、この合成においては、バックカメラ1で撮影した画像よりも、左サイドカメラ2や右サイドカメラ3で撮影した画像を優先して用いる。すなわち、仮想カメラ画像の同じ座標に対応する(仮想カメラに対する方向が同じとなる)バックカメラ1で撮影した画像の画素と左サイドカメラ2で撮影した画像の画素の双方が存在する場合には、左サイドカメラ2で撮影した画像の画素を、その座標の画素とし、仮想カメラ画像の同じ座標に対応するバックカメラ1で撮影した画像の画素と右サイドカメラ3で撮影した画像の画素の双方が存在する場合には、右サイドカメラ3で撮影した画像の画素を、その座標の画素とする。
【0040】
そして、バックカメラ1の画像に代えて、この仮想カメラ画像に対して、上述のように基本領域300、左拡張領域411、右拡張領域412を設定する。
この結果、基本領域300には、
図9cに水平面で示すように、仮想カメラの水平画角、垂直画角がθHV、θVVよりも狭角の所定の水平画角(たとえば、約40度)、垂直画角(たとえば、約10度)であった場合に撮影されることとなる領域BA’の画像が表れる。
【0041】
また、左拡張領域411には、自動車の左側方と左後方近傍の領域を含む領域NL’の画像が表れ、右拡張領域412には、自動車の右側方と右後方近傍の領域を含む領域NR’の画像が表れる。
そして、仮想カメラ画像の基本領域300の画像部分を基本画像領域420に投影し、左拡張領域411の画像部分を左拡張画像領域421に投影し、右拡張領域412の画像部分を右拡張画像領域422に投影してドライバモニタ5に表示すると、
図9dに示すように、拡張後方提示画像430の基本画像領域420には領域BA’のようすが表れ、左拡張画像領域421には領域NL’のようすが、その内に表れ、右拡張画像領域422には領域NR’のようすが、その内に表れる。
【0042】
したがって、バックカメラ1の撮影画像に加え、左サイドカメラ2で撮影した画像と右サイドカメラ3で撮影した画像を用いて拡張後方提示画像430を生成表示することにより、自動車の左右の側方のようすについても拡張後方提示画像430によってドライバに提示することができる。
【符号の説明】
【0043】
1…バックカメラ、2…左サイドカメラ、3…右サイドカメラ、4…バックモニタ、5…ドライバモニタ、6…左サイドモニタ、7…右サイドモニタ、8…画像処理部、430…拡張後方提示画像。