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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023170078
(43)【公開日】2023-12-01
(54)【発明の名称】画像ノイズ低減方法
(51)【国際特許分類】
   H01J 37/28 20060101AFI20231124BHJP
   H01J 37/24 20060101ALI20231124BHJP
   G06T 5/00 20060101ALI20231124BHJP
   G06V 10/30 20220101ALI20231124BHJP
   G06T 7/00 20170101ALI20231124BHJP
【FI】
H01J37/28 B
H01J37/24
G06T5/00 705
G06V10/30
G06T7/00 350B
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022081548
(22)【出願日】2022-05-18
(71)【出願人】
【識別番号】301014904
【氏名又は名称】東レエンジニアリング先端半導体MIテクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118500
【弁理士】
【氏名又は名称】廣澤 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100091498
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 勇
(72)【発明者】
【氏名】森 泰平
【テーマコード(参考)】
5B057
5C101
5L096
【Fターム(参考)】
5B057CA08
5B057CA12
5B057CA16
5B057CB08
5B057CB12
5B057CB16
5B057CC01
5B057CE02
5B057CE08
5C101AA03
5C101BB11
5C101FF02
5C101GG49
5C101HH56
5C101HH66
5C101HH68
5C101JJ04
5L096AA06
5L096BA18
5L096DA01
5L096EA05
5L096FA39
5L096FA67
5L096KA04
5L096MA03
(57)【要約】
【課題】走査電子顕微鏡により生成された画像からノイズを精度良く低減することができる画像ノイズ低減方法を提供する。
【解決手段】本画像ノイズ低減方法は、前記走査電子顕微鏡によりサンプルの基準画像を生成し、前記基準画像に人工ノイズを付加して人工ノイズ画像を生成し、走査電子顕微鏡の電子ビームのスキャン方向に人工ノイズを引き伸ばすように構成された異方性フィルターを人工ノイズ画像に適用することで、人工低画質画像を生成し、基準画像と人工低画質画像を含む訓練データを用いて機械学習を実行することにより、デノイズモデルを作成し、半導体デバイスの検査および形状計測の対象となるワークピースの画像を走査電子顕微鏡により生成し、ワークピースの画像をデノイズモデルに入力し、デノイズモデルからデノイズ画像を出力する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
走査電子顕微鏡により生成された画像からノイズを低減する画像ノイズ低減方法であって、
前記走査電子顕微鏡によりサンプルの基準画像を生成し、
前記基準画像に人工ノイズを付加して人工ノイズ画像を生成し、
前記走査電子顕微鏡の電子ビームのスキャン方向に前記人工ノイズを引き伸ばすように構成された異方性フィルターを前記人工ノイズ画像に適用することで、人工低画質画像を生成し、
前記基準画像と前記人工低画質画像を含む訓練データを用いて機械学習を実行することにより、前記デノイズモデルを作成し、
半導体デバイスの検査および形状計測の対象となるワークピースの画像を前記走査電子顕微鏡により生成し、
前記ワークピースの画像を前記デノイズモデルに入力し、
前記デノイズモデルからデノイズ画像を出力する、画像ノイズ低減方法。
【請求項2】
前記異方性フィルターは、少なくとも走査する電子ビームのスキャンレートとスキャン方向、ならびに前記走査電子顕微鏡の電子検出器の応答特性をパラメータに有しており、前記パラメータは、デノイズ対象である前記ワークピースの画像を撮像するときの前記パラメータと一致するように設定される、請求項1に記載の画像ノイズ低減方法。
【請求項3】
前記異方性フィルターは、少なくとも前記サンプル表面の材料と断面構造と、照射する電子ビームの加速電圧と電流をパラメータに有しており、前記パラメータは、デノイズ対象である前記ワークピースの画像を撮像するときの前記パラメータと一致するように設定される、請求項1に記載の画像ノイズ低減方法。
【請求項4】
前記人工ノイズは、統計分布に従ったノイズである、請求項1に記載の画像ノイズ低減方法。
【請求項5】
前記人工ノイズは、ポワソンノイズである、請求項4に記載の画像ノイズ低減方法。
【請求項6】
前記人工ノイズは、正規分布または対数正規分布に従ったノイズである、請求項4に記載の画像ノイズ低減方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走査電子顕微鏡により生成された画像上のノイズを低減するための画像ノイズ低減方法に関する。
【背景技術】
【0002】
走査電子顕微鏡により生成された画像には、光学的または電気的な要因などの様々な要因によりノイズが現れることがある。このような画像上のノイズを低減するための一つの解決策として、デノイズモデルを使用することがある。より具体的には、ノイズを含む画像をデノイズモデルに入力し、ノイズが低減されたデノイズ画像をデノイズモデルから出力する。このようなデノイズモデルは、機械学習により作成された学習済みモデルである。
【0003】
図4は、デノイズモデルを機械学習により作成する従来の方法の一例を示す模式図である。機械学習は、走査電子顕微鏡により生成された高画質画像と低画質画像の多数の組を含む訓練データを使用して実行される。各組の高画質画像と低画質画像は、ウェーハなどのサンプルの同じ箇所の画像である。高画質画像は、低スキャンレートの条件下で得られ、低画質画像は、高スキャンレートの条件下で得られる。
【0004】
しかしながら、この方法は、サンプルの同じ箇所の画像を異なる条件(すなわち異なるスキャンレート)で生成する必要がある。このような撮像方法は、走査電子顕微鏡にとっては非常に時間がかかる。
【0005】
図5は、デノイズモデルを機械学習により作成する従来の方法の他の例を示す模式図である。機械学習は、走査電子顕微鏡により生成された高画質画像と人工ノイズ画像の多数の組を含む訓練データを使用して実行される。高画質画像は、図4に示す方法と同じように、低スキャンレートの条件下で得られる。人工ノイズ画像は、得られた高画質画像に人工ノイズ(例えばガウスノイズ)を付加することで得られる。この方法によれば、走査電子顕微鏡は、同一条件(同スキャンレート)下で画像を生成することができる。
【0006】
しかしながら、ガウスノイズなどの人工ノイズは、走査電子顕微鏡で生成された画像上の実際のノイズとは似ていなく、結果として機械学習により作成されたデノイズモデルは、ノイズを十分に低減することができないことがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2021-197144号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、本発明は、走査電子顕微鏡により生成された画像からノイズを精度良く低減することができる画像ノイズ低減方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
一態様では、走査電子顕微鏡により生成された画像からノイズを低減する画像ノイズ低減方法であって、前記走査電子顕微鏡によりサンプルの基準画像を生成し、前記基準画像に人工ノイズを付加して人工ノイズ画像を生成し、前記走査電子顕微鏡の電子ビームのスキャン方向に前記人工ノイズを引き伸ばすように構成された異方性フィルターを前記人工ノイズ画像に適用することで、人工低画質画像を生成し、前記基準画像と前記人工低画質画像を含む訓練データを用いて機械学習を実行することにより、前記デノイズモデルを作成し、半導体デバイスの検査および形状計測の対象となるワークピースの画像を前記走査電子顕微鏡により生成し、前記ワークピースの画像を前記デノイズモデルに入力し、前記デノイズモデルからデノイズ画像を出力する、画像ノイズ低減方法が提供される。
【0010】
一態様では、前記異方性フィルターは、少なくとも走査する電子ビームのスキャンレートとスキャン方向、ならびに前記走査電子顕微鏡の電子検出器の応答特性をパラメータに有しており、前記パラメータは、デノイズ対象である前記ワークピースの画像を撮像するときの前記パラメータと一致するように設定される。
一態様では、前記異方性フィルターは、少なくとも前記サンプル表面の材料と断面構造と、照射する電子ビームの加速電圧と電流をパラメータに有しており、前記パラメータは、デノイズ対象である前記ワークピースの画像を撮像するときの前記パラメータと一致するように設定される。
一態様では、前記人工ノイズは、統計分布に従ったノイズである。
一態様では、前記人工ノイズは、ポワソンノイズである。
一態様では、前記人工ノイズは、正規分布または対数正規分布に従ったノイズである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、走査電子顕微鏡に特有のノイズを模倣する異方性フィルターが人工ノイズ画像に適用されるので、実際のノイズを含む画像に似た人工低画質画像を作成することができる。このような人工低画質画像と基準画像(高画質画像)を含む訓練データを用いて機械学習を実行することにより、ノイズ低減精度の高いデノイズモデルを作成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】画像生成システムの一実施形態を示す模式図である。
図2】デノイズモデルを機械学習により作成する方法の一実施形態を説明する図である。
図3】基準画像、人工ノイズ画像、および人工低画質画像の一例を示す図である。
図4】デノイズモデルを機械学習により作成する従来の方法の一例を説明する図である。
図5】デノイズモデルを機械学習により作成する従来の方法の他の例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。図1は、画像生成システムの一実施形態を示す模式図である。画像生成システムは、ワークピースWの画像を生成する走査電子顕微鏡1と、走査電子顕微鏡1によって生成された画像を処理する処理システム5を備えている。ワークピースWの例としては、半導体デバイスの検査および形状計測の対象となるウェーハ、マスク、パネル、基板などが挙げられる。
【0014】
処理システム5は、少なくとも1台のコンピュータから構成される。処理システム5は、プログラムが格納された記憶装置5aと、プログラムに含まれる命令に従って演算を実行する演算装置5bを備えている。記憶装置5aは、ランダムアクセスメモリ(RAM)などの主記憶装置と、ハードディスクドライブ(HDD)、ソリッドステートドライブ(SSD)などの補助記憶装置を備えている。演算装置5bの例としては、CPU(中央処理装置)、GPU(グラフィックプロセッシングユニット)が挙げられる。ただし、処理システム5の具体的構成は本実施形態に限定されない。
【0015】
処理システム5は、走査電子顕微鏡1に通信線で接続されたエッジサーバであってもよいし、インターネットまたはローカルネットワークなどの通信ネットワークによって走査電子顕微鏡1に接続されたクラウドサーバであってもよいし、あるいは走査電子顕微鏡1に接続されたネットワーク内に設置されたフォグコンピューティングデバイス(ゲートウェイ、フォグサーバ、ルーターなど)であってもよい。処理システム5は、複数のサーバの組み合わせであってもよい。例えば、処理システム5は、インターネットまたはローカルネットワークなどの通信ネットワークにより互いに接続されたエッジサーバとクラウドサーバとの組み合わせであってもよい。他の例では、処理システム5は、ネットワークで接続されていない複数のサーバ(コンピュータ)を備えてもよい。
【0016】
走査電子顕微鏡1は、電子ビームを放出する電子銃15、電子銃15から放出された電子ビームを集束する集束レンズ16、電子ビームをX方向に偏向するX偏向器17、電子ビームをY方向に偏向するY偏向器18、電子ビームを試料の一例であるワークピースWにフォーカスさせる対物レンズ20、ワークピースWを支持するワークピースステージ31、ワークピースステージ31を並進移動させるステージ移動装置35を有する。電子銃15の構成は特に限定されない。例えば、フィールドエミッタ型電子銃、または半導体フォトカソード型電子銃などが電子銃15として使用できる。
【0017】
電子銃15から放出された電子ビームは集束レンズ16で集束された後に、X偏向器17、Y偏向器18で偏向されつつ対物レンズ20により集束されてワークピースWの表面に照射される。ワークピースWに電子ビームの一次電子が照射されると、ワークピースWからは二次電子および反射電子などの電子が放出される。ワークピースWから放出された電子は電子検出器(シンチレータ)26により検出される。電子検出器26の電子検出信号は、画像取得装置28に入力され画像に変換される。このようにして、走査電子顕微鏡1は、ワークピースWの表面の画像を生成する。画像取得装置28は処理システム5に接続されている。
【0018】
処理システム5は、走査電子顕微鏡1により生成された画像からノイズを低減するデノイズモデルを作成するためのプログラムを記憶装置5a内に有している。以下、デノイズモデルを機械学習により作成する方法の一実施形態について図2を参照して説明する。
【0019】
処理システム5は、走査電子顕微鏡1に指令を発して、サンプルの基準画像を生成させる。サンプルは、図1に示すワークピースWと同じ構造を有してもよいし、別の構造を有してもよい。サンプルの例としては、半導体デバイスの検査および形状計測の対象となるウェーハ、マスク、パネル、基板などが挙げられる。基準画像は、機械学習の正解ラベルとして使用される画像であり、高画質画像である。より具体的には、走査電子顕微鏡1は、低いスキャンレートでサンプルの表面を電子ビームで走査することで、高画質画像である基準画像を生成することができる。
【0020】
処理システム5は、走査電子顕微鏡1から基準画像を取得する。さらに、処理システム5は、基準画像に人工ノイズを付加して人工ノイズ画像を生成する。人工ノイズは基準画像のピクセル間で統計的に独立したノイズである。言い換えれば、人工ノイズは、基準画像のピクセル間で相関関係のないノイズである。より具体的には、人工ノイズは、統計分布に従ったノイズであり、その具体例としては、ポワソンノイズ、ガウスノイズ、対数正規分布に従ったノイズが挙げられる。
【0021】
本実施形態では、人工ノイズとして、ポワソンノイズが使用されている。これは、ポワソンノイズは、走査電子顕微鏡1によって生成された画像上に現れるノイズに似ているからである。したがって、後述する機械学習によって構築されるデノイズモデルは、走査電子顕微鏡1によって生成された画像上のノイズを精度良く低減できると期待される。
【0022】
処理システム5は、上述のようにして生成された人工ノイズ画像に異方性フィルターを適用することで、人工低画質画像を生成する。異方性フィルターは、人工ノイズ画像上の人工ノイズを、走査電子顕微鏡1によって生成された画像上の実際のノイズに近づけることができるように構成されている。画像上の実際のノイズは、電子ビームのスキャン動作、電子検出器(シンチレータ)26に起因する残光、および撮像対象の帯電の影響を受ける。異方性フィルターは、このような走査電子顕微鏡1に特有のノイズを模倣するためのフィルターである。
【0023】
異方性フィルターは、走査電子顕微鏡1の電子ビームのスキャン方向に人工ノイズを引き伸ばすように構成されている。一実施形態では、異方性フィルターは、次の式により構成される。
【数1】
ここで、v(x,y)は異方性フィルター適用後の座標(x,y)でのピクセルの輝度値を表し、Isampled(x,y)は座標(x,y)でのピクセルの輝度値を表し、eはネイピア数を表し、τは減衰定数を表し、記号*は畳み込み演算を表す。減衰定数τは、電子ビームのスキャン方向およびスキャン速度、サンプルの材料、電子検出器(シンチレータ)26の応答特性から決定される理論値であり、計算により求めることができる。本実施形態では、電子ビームのスキャン方向はX方向に相当する。
【0024】
一実施形態では、異方性フィルターは、少なくとも走査する電子ビームのスキャンレートとスキャン方向、ならびに電子検出器26の応答特性をパラメータに有しており、これらのパラメータはデノイズ対象の画像を撮像するときのパラメータと一致するように設定される。
【0025】
一実施形態では、異方性フィルターは、少なくともサンプル表面の材料と断面構造と、照射する電子ビームの加速電圧と電流をパラメータに有しており、これらのパラメータはデノイズ対象の画像を撮像するときのパラメータと一致するように設定される。
【0026】
図3は、基準画像と、基準画像に人工ノイズが付加された人工ノイズ画像と、人工ノイズ画像に異方性フィルターが適用された人工低画質画像の一例を示す図である。人工低画質画像は、走査電子顕微鏡1により生成された実際の低画質画像に近い画像となる。
【0027】
走査電子顕微鏡1によって生成される実画像(SEM画像)における異方性は、サンプルの帯電によっても生じる。この場合、上記式(1)の代わりに、サンプル表面の材料、サンプルの断面構造、電子ビームの加速電圧、電流、電子ビームのスキャンレートに依存して決まる伝達関数を使用してもよい。
【0028】
人工ノイズ画像に異方性フィルターを適用することによって生成された人工低画質画像と、走査電子顕微鏡1により生成された上記基準画像は、訓練データとして機械学習に用いられる。すなわち、人工低画質画像は説明変数として用いられ、基準画像は目的変数(正解ラベル)として用いられる。処理システム5は、人工低画質画像をデノイズモデルに入力したときにデノイズモデルから出力される画像と、基準画像との差が最小となるようにデノイズモデルの機械学習を実行する。
【0029】
機械学習の例としては、SVR法(サポートベクター回帰法)、PLS法(部分最小二乗法:Partial Least Squares)、ディープラーニング法、ランダムフォレスト法、および決定木法などが挙げられる。一例では、デノイズモデルは、ディープラーニング法によって構築されたニューラルネットワークから構成されている。
【0030】
基準画像と人工低画質画像を含む訓練データを用いた機械学習により作成されたデノイズモデルは、学習済みモデルとして処理システム5の記憶装置5a内に格納される。
【0031】
このようにして作成されたデノイズモデルは、走査電子顕微鏡1により生成された画像上のノイズを精度よく低減することができる。すなわち、走査電子顕微鏡1は、半導体デバイスの検査および形状計測の対象となるワークピースWの画像を生成し、処理システム5は、走査電子顕微鏡1からワークピースWの画像(SEM画像)を取得し、ワークピースWの画像をデノイズモデルに入力し、ノイズが低減された画像であるデノイズ画像をデノイズモデルから出力する。
【0032】
本実施形態によれば、走査電子顕微鏡1に特有のノイズを模倣する異方性フィルターが人工ノイズ画像に適用されるので、実際のノイズを含む画像に似た人工低画質画像を作成することができる。このような人工低画質画像と基準画像(高画質画像)を含む訓練データを用いて機械学習を実行することにより、精度の高いデノイズモデルを作成することができる。
【0033】
以上のデノイズ処理による効果を、半導体デバイスの計測に適用した事例について述べる。ここではライン状のパターンが並んで配置されたような、単純なストライプ状のパターンを対象とし、各ラインのエッジラフネスを計測するケースを取り上げる。
【0034】
走査電子顕微鏡1は、スキャンレート3MHzでスキャンしたSEM像を複数枚生成する。処理システム5は、これらの画像に上記式(1)で表される異方性フィルターを適用し、100MHzのスキャンレートに相当する人工ノイズを付与した複数の人工低画質画像を作成する。
【0035】
次に、処理システム5は、前述のスキャンレート3MHzのSEM画像(基準画像)と、人工低画質画像のペアを訓練データに用いて、人工低画質画像からSEM画像(基準画像)を生成するような機械学習を行い、デノイズモデルを作成する。
【0036】
処理システム5は、得られたデノイズモデルを用いて、実際にスキャンレート100MHzで撮像したSEM像をデノイズする。スキャンレート3MHzの高画質条件の画像で計測したエッジラフネスを基準としたところ、前記デノイズした画像から計測したエッジラフネスとの相関は0.8程度であった。これは、スキャンレート25MHz条件で計測した結果と同等であり、すなわち本デノイズ処理を利用することで撮像スピードを4倍に高速化できる効果が認められた。
【0037】
上述した実施形態は、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者が本発明を実施できることを目的として記載されたものである。上記実施形態の種々の変形例は、当業者であれば当然になしうることであり、本発明の技術的思想は他の実施形態にも適用しうる。したがって、本発明は、記載された実施形態に限定されることはなく、特許請求の範囲によって定義される技術的思想に従った最も広い範囲に解釈されるものである。
【符号の説明】
【0038】
1 走査電子顕微鏡
5 処理システム
15 電子銃
16 集束レンズ
17 X偏向器
18 Y偏向器
20 対物レンズ
26 電子検出器
28 画像取得装置
31 ワークピースステージ
35 ステージ移動装置
図1
図2
図3
図4
図5