(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023170080
(43)【公開日】2023-12-01
(54)【発明の名称】能動型騒音制御システム
(51)【国際特許分類】
G10K 11/178 20060101AFI20231124BHJP
H04R 1/02 20060101ALI20231124BHJP
【FI】
G10K11/178 140
H04R1/02 102B
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022081550
(22)【出願日】2022-05-18
(71)【出願人】
【識別番号】000010098
【氏名又は名称】アルプスアルパイン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099748
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 克志
(74)【代理人】
【識別番号】100103171
【弁理士】
【氏名又は名称】雨貝 正彦
(74)【代理人】
【識別番号】100105784
【弁理士】
【氏名又は名称】橘 和之
(74)【代理人】
【識別番号】100098497
【弁理士】
【氏名又は名称】片寄 恭三
(72)【発明者】
【氏名】田地 良輔
(72)【発明者】
【氏名】丹野 慶太
【テーマコード(参考)】
5D017
5D061
【Fターム(参考)】
5D017AE18
5D061FF02
(57)【要約】
【課題】簡易な構成で複数のエラーマイクを用いて騒音をキャンセルできる「能動型騒音制御システム」を提供する。
【解決手段】左席左マイク16の出力と左席右マイク17の出力を加算してエラー信号Eを生成するエラー加算器182、参照信号Rとエラー信号Eを用いた適応動作を行って参照信号Rから騒音キャンセル音LCを生成する適応フィルタ183、左席左スピーカ12に出力する騒音キャンセル音LCのゲインを調整する左チャネルゲイン調整部184、左席右スピーカ13に出力する騒音キャンセル音LCのゲインを調整する右チャネルゲイン調整部186を設ける。左チャネルゲイン調整部184のゲインG_Lと右チャネルゲイン調整部186のゲインG_Rの比G_L/G_Rは、左席左マイク16に伝わる騒音の大きさM_Lと左席右マイク17の出力に伝わる騒音の大きさM_Rの比M_L/M_Rと一致させる。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
騒音を低減する能動型騒音制御システムであって、
ユーザに対して第1の方向側に偏った位置に配置されたマイクである第1マイクと、
ユーザに対して第2の方向側に偏った位置に配置されたマイクである第2マイクと、
前記第1マイクが配置された位置周辺に向けて音を放射するスピーカである第1スピーカと、
前記第2マイクが配置された位置周辺に向けて音を放射するスピーカである第2スピーカと、
前記第1マイクの出力と前記第2マイクの出力を加算して加算信号を生成するエラー信号生成手段と、
前記騒音と相関のある信号を参照信号とし、前記加算信号をエラーとして、当該エラーを最小化する適応動作を行って、前記第1スピーカと前記第2スピーカに出力される騒音キャンセル音を生成する適応フィルタと、
前記第1スピーカに出力される前記騒音キャンセル音である第1騒音キャンセル音の大きさと、前記第2スピーカに出力される前記騒音キャンセル音である第2騒音キャンセル音の大きさとの比の調整を行うゲイン調整手段とを有し、
前記ゲイン調整手段は、前記第1騒音キャンセル音の大きさに対する前記第2騒音キャンセル音の大きさの比が、前記騒音の騒音源から前記第1マイクに伝わる騒音の大きさに対する、前記騒音の騒音源から前記第2マイクに伝わる騒音の大きさの比と整合するように前記調整を行うことを特徴とする能動型騒音制御システム。
【請求項2】
騒音を低減する能動型騒音制御システムであって、
ユーザに対して第1の方向側に偏った位置に配置されたマイクである第1マイクと、
ユーザに対して第2の方向側に偏った位置に配置されたマイクである第2マイクと、
前記第1マイクが配置された位置周辺に向けて音を放射するスピーカである第1スピーカと、
前記第2マイクが配置された位置周辺に向けて音を放射するスピーカである第2スピーカと、
前記第1マイクの出力と前記第2マイクの出力を加算して加算信号を生成するエラー信号生成手段と、
前記騒音と相関のある信号を参照信号とし、前記加算信号をエラーとして、当該エラーを最小化する適応動作を行って、前記第1スピーカと前記第2スピーカに出力される騒音キャンセル音を生成する適応フィルタと、
前記第1スピーカに出力される前記騒音キャンセル音である第1騒音キャンセル音と前記第2スピーカに出力される前記騒音キャンセル音である第2騒音キャンセル音との間の遅延時間の調整を行う遅延調整手段とを有し、
前記遅延調整手段は、前記第1騒音キャンセル音に対する前記第2騒音キャンセル音の遅延時間が、前記騒音の騒音源から前記第1マイクに伝わる騒音に対する、前記騒音の騒音源から前記第2マイクに伝わる騒音の遅延時間と整合するように前記調整を行うことを特徴とする能動型騒音制御システム。
【請求項3】
請求項2記載の能動型騒音制御システムであって、
前記第1スピーカに出力される前記騒音キャンセル音である第1騒音キャンセル音の大きさと、前記第2スピーカに出力される前記騒音キャンセル音である第2騒音キャンセル音の大きさとの比の調整を行うゲイン調整手段とを有し、
前記ゲイン調整手段は、前記第1騒音キャンセル音の大きさに対する前記第2騒音キャンセル音の大きさの比が、前記騒音の騒音源から前記第1マイクに伝わる騒音の大きさに対する、前記騒音の騒音源から前記第2マイクに伝わる騒音の大きさの比と整合するように前記調整を行うことを特徴とする能動型騒音制御システム。
【請求項4】
請求項1、2または3記載の能動型騒音制御システムであって、
前記ユーザの左耳近くの位置と右耳近くの位置とのうちの一方の位置を第1位置、他方の位置を第2位置として、前記第1マイクは、前記第1位置に配置され、前記前記第2マイクは、前記第2位置に配置されていることを特徴とする能動型騒音制御システム。
【請求項5】
請求項4記載の能動型騒音制御システムであって、
自動車の左席と右席のうちの一方を第1席とし他方を第2席として、前記ユーザは前記第1席に着座したユーザであり、
前記騒音は前記第2席近くのスピーカから当該第2席の着座者に向けて出力された音であることを特徴とする能動型騒音制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、騒音を打ち消す騒音キャンセル音を放射することにより騒音を低減する能動型騒音制御(ANC;Active Noise Control)の技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
能動型騒音制御の技術としては、
図5に示す能動型騒音制御システムのように、第1エリアのユーザ用の音源装置51から第1エリアのユーザ用のスピーカ52に出力されている音楽などの音声を、第2エリアのユーザにとっての騒音として、適応フィルタ53を用いて生成した騒音キャンセル音を第2エリアのスピーカ54から放射する能動型騒音制御システムが知られている(たとえば、特許文献1)。
【0003】
この能動型騒音制御システムにおいて、適応フィルタ53は、第2エリアに配置したエラーマイク55の出力をエラーとして、第2エリアのスピーカ54からエラーマイク55までの伝達関数C(z)として推定される伝達関数C^(z)を設定した推定フィルタ56の出力をフィルタード参照信号として、係数更新部532がLMSアルゴリズムを行うFiltered-X LMSアルゴリズムによって、音源装置51の出力から騒音キャンセル音を生成する可変フィルタ531のタップ係数を、エラーが最小となるように更新している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
自動車の各席において、各席のユーザが当該席用に設けられた左右のスピーカを用いて音楽を聴取するシステムに、
図5に示した能動型騒音制御システムを適用し、各ユーザに対して、他のユーザが聴いている音楽を騒音としてキャンセルする場合を考える。
この場合、各ユーザの左耳と右耳のそれぞれに対して、他のユーザが聴いている音楽をキャンセルできるように、ユーザの左耳の位置と右耳の位置に配置した左右のエラーマイクと、当該ユーザの席用の左右のスピーカの組み合わせの各々に対応する適応フィルタを設け、左右のスピーカから、対応する適応フィルタで生成した騒音キャンセル音を出力することにより、ユーザの左耳の位置と右耳のそれぞれについて騒音のキャンセルを行うことが好ましい。
【0006】
しかし、このようにすると、適応フィルタの数が多くなり、その規模や処理負荷が過大となってしまうことがある。
そこで、左右のエラーマイクの出力音声を合成してモノラル音声とし、このモノラル音声を単一のエラーマイクの出力として1つの適応フィルタで生成した騒音キャンセル音を、左右のスピーカから出力する騒音キャンセル音として共用することにより、適応フィルタの数を減らすことが考えられる。しかし、このようにすると、左右のスピーカから同じ騒音キャンセル音が出力されることになるため、騒音源である他のユーザのスピーカから、左右のエラーマイク(ユーザの左右の耳)までのゲインや遅延時間等の伝達関数に比較的大きな差がある場合には、他のユーザのスピーカの出力音である騒音を、適正に、キャンセルできなくなる。
【0007】
そこで、本発明は、複数のエラーマイクを備えた能動型騒音制御システムにおいて、比較的簡易な構成によって、騒音源から各エラーマイクまでの伝達関数に比較的大きな差がある場合にも騒音を良好にキャンセルすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題達成のために、本発明は、騒音を低減する能動型騒音制御システムに、ユーザに対して第1の方向側に偏った位置に配置されたマイクである第1マイクと、ユーザに対して第2の方向側に偏った位置に配置されたマイクである第2マイクと、前記第1マイクが配置された位置周辺に向けて音を放射するスピーカである第1スピーカと、前記第2マイクが配置された位置周辺に向けて音を放射するスピーカである第2スピーカと、前記第1マイクの出力と前記第2マイクの出力を加算して加算信号を生成するエラー信号生成手段と、前記騒音と相関のある信号を参照信号とし、前記加算信号をエラーとして、当該エラーを最小化する適応動作を行って、前記第1スピーカと前記第2スピーカに出力される騒音キャンセル音を生成する適応フィルタと、前記第1スピーカに出力される前記騒音キャンセル音である第1騒音キャンセル音の大きさと、前記第2スピーカに出力される前記騒音キャンセル音である第2騒音キャンセル音の大きさとの比の調整を行うゲイン調整手段とを備えたものである。ここで、前記ゲイン調整手段は、前記第1騒音キャンセル音の大きさに対する前記第2騒音キャンセル音の大きさの比が、前記騒音の騒音源から前記第1マイクに伝わる騒音の大きさに対する、前記騒音の騒音源から前記第2マイクに伝わる騒音の大きさの比と整合するように前記調整を行う。
【0009】
ここで、このような能動型騒音制御システムには、前記ゲイン調整手段に代えて、もしくは、前記ゲイン調整手段と共に、前記第1スピーカに出力される前記騒音キャンセル音である第1騒音キャンセル音と前記第2スピーカに出力される前記騒音キャンセル音である第2騒音キャンセル音との間の遅延時間の調整を行う遅延調整手段を設けてもよい。ここで、前記遅延調整手段は、前記第1騒音キャンセル音に対する前記第2騒音キャンセル音の遅延時間が、前記騒音の騒音源から前記第1マイクに伝わる騒音に対する、前記騒音の騒音源から前記第2マイクに伝わる騒音の遅延時間と整合するように前記調整を行う。
【0010】
また、以上の能動型騒音制御システムは、前記ユーザの左耳近くの位置と右耳近くの位置とのうちの一方の位置を第1位置、他方の位置を第2位置として、前記第1マイクを、前記第1位置に配置し、前記前記第2マイクを、前記第2位置に配置してもよい。
また、この場合には、自動車の左席と右席のうちの一方を第1席とし他方を第2席として、前記ユーザを前記第1席に着座したユーザとし、前記騒音を前記第2席近くのスピーカから当該第2席の着座者に向けて出力された音としてもよい。
このような能動型騒音制御システムによれば、騒音源から第1マイクと第2マイクまでの騒音のゲインや遅延時間の関係に整合するゲインや遅延時間の関係を、第1マイクが配置された位置周辺に向けて音を放射する第1スピーカと第2マイクが配置された位置周辺に向けて音を放射する第2スピーカとから出力する騒音キャンセル音の間に付与することができるので、当該騒音のゲインや遅延時間の差が比較的大きい場合にも、第1マイクと第2マイクの出力を加算した加算信号をエラーとする適応フィルタを用いつつ、騒音を良好にキャンセルすることができる。
【発明の効果】
【0011】
以上のように、本発明によれば、複数のエラーマイクを備えた能動型騒音制御システムにおいて、比較的簡易な構成によって、騒音源から各エラーマイクまでの伝達関数に比較的大きな差がある場合にも騒音を良好にキャンセルすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の実施形態に係る車載システムの構成を示すブロック図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る、マイクとスピーカの配置を示すブロック図である。
【
図3】本発明の実施形態に係る左席キャンセル音生成部の構成を示すブロック図である。
【
図4】本発明の実施形態に係るゲインと遅延時間の設定法を示すブロック図である。
【
図5】公知の能動型騒音制御システムの構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について、自動車の左前席と右前席のユーザが、それぞれ、当該席用に設けられた左右のスピーカを用いて音楽を聴取するシステムへの適用を例にとり説明する。
図1に、本実施形態に係る車載システムの構成を示す。
図示するように、車載システムは、車室内の左前席のユーザ用の音源装置である左席音源装置11、左前席のユーザ用の左チャネルのスピーカである左席左スピーカ12、左前席のユーザ用の右チャネルのスピーカである左席右スピーカ13、左席左チャネル加算器14、左席右チャネル加算器15、左席左マイク16、左席右マイク17、左席キャンセル音生成部18を備えている。
【0014】
また、車載システムは、車室内の右前席のユーザ用の右席音源装置21、右前席のユーザ用の左チャネルのスピーカである右席左スピーカ22、右前席のユーザ用の右チャネルのスピーカである右席右スピーカ23、右席左チャネル加算器24、右席右チャネル加算器25、右席左マイク26、右席右マイク27、右席キャンセル音生成部28を備えている。
【0015】
ここで、
図2a、bに示すように、左席左スピーカ12は左前席の当該席に着座したユーザの頭部の左側となる位置に配置され、左席右スピーカ13は左前席の当該席に着座したユーザの頭部の右側となる位置に配置される。また、左席左マイク16は左前席の当該席に着座したユーザの頭部の左側となる位置に配置され、左席右マイク17は左前席の当該席に着座したユーザの頭部の右側となる位置に配置される。
【0016】
また、右席左スピーカ22は右前席の当該席に着座したユーザの頭部の左側となる位置に配置され、右席右スピーカ23は右前席の当該席に着座したユーザの頭部の右側となる位置に配置される。また、右席左マイク26は右前席の当該席に着座したユーザの頭部の左側となる位置に配置され、右席右マイク27は右前席の当該席に着座したユーザの頭部の右側となる位置に配置される。
【0017】
図1に戻り、左席音源装置11は音楽等の左チャネルオーディオLA_Lと右チャネルオーディオLA_Rを出力し、左チャネルオーディオLA_Lは左席左チャネル加算器14で左席キャンセル音生成部18が出力する左席左チャネルキャンセル音LC_Lと加算され、左席左スピーカ12に出力され、右チャネルオーディオLA_Rは左席右チャネル加算器15で左席キャンセル音生成部18が出力する左席右チャネルキャンセル音LC_Rと加算され、左席右スピーカ13に出力される。
【0018】
右席音源装置21は音楽等の左チャネルオーディオRA_Lと右チャネルオーディオRA_Rを出力し、左チャネルオーディRA_Lは右席左チャネル加算器24で右席キャンセル音生成部28が出力する右席左チャネルキャンセル音RC_Lと加算され、右席左スピーカ22に出力され、右チャネルオーディオRA_Rは右席右チャネル加算器25で右席キャンセル音生成部28が出力する右席右チャネルキャンセル音RC_Rと加算され、右席右スピーカ23に出力される。
【0019】
そして、左席キャンセル音生成部18は、右席左スピーカ22と右席右スピーカ23から出力される、右席音源装置21の左チャネルオーディオRA_Lと右チャネルオーディオRA_Rを騒音として、右方向から伝搬してくることとなる当該騒音をキャンセルする左席左チャネルキャンセル音LC_Lと左席右チャネルキャンセル音LC_Rを、左席左マイク16の出力LM_Lと左席右マイク17の出力LM_Rとをエラーとして用いて生成する。
【0020】
また、右席キャンセル音生成部28は、左席左スピーカ12と左席右スピーカ13から出力される、左席音源装置11の左チャネルオーディオLA_Lと右チャネルオーディオLA_Rを騒音として、左方向から伝搬してくることとなる当該騒音をキャンセルする右席左チャネルキャンセル音RC_Lと右席右チャネルキャンセル音RC_Rを、右席左マイク26の出力RM_Lと右席右マイク27の出力RM_Rとをエラーとして用いて生成する。
【0021】
以下、左席キャンセル音生成部18について説明する。
図3に、左席キャンセル音生成部18の構成を示す。
図示するように、左席キャンセル音生成部18は、右席音源装置21の左チャネルオーディオRA_Lと右チャネルオーディオRA_Rを加算して参照信号Rを生成する参照信号加算器181、左席左マイク16の出力LM_Lと左席右マイク17の出力LM_Rを加算してエラー信号Eを生成するエラー加算器182、参照信号Rとエラー信号Eを用いた適応動作を行って参照信号Rから騒音キャンセル音LCを生成する適応フィルタ183、左チャネルゲイン調整部184、左チャネル遅延部185、右チャネルゲイン調整部186、右チャネル遅延部187を備えている。
【0022】
適応フィルタ183は、適応フィルタ183の出力からエラー加算器182の出力までの伝達関数C(z)として推定される伝達関数C^(z)を設定した推定フィルタ1831と、係数更新部1832と、可変フィルタ1833を備えている。
参照信号加算器181が出力する参照信号Rは、推定フィルタ1831と可変フィルタ1833の入力となり、係数更新部1832は、推定フィルタ1831の出力をフィルタード参照信号としてLMSアルゴリズムを行うFiltered-X LMSアルゴリズムによって、エラー加算器182が出力するエラー信号Eのパワーが最小化するように、可変フィルタ1833のタップ係数を更新することにより、可変フィルタ1833の伝達関数W(z))を更新する。
【0023】
そして、可変フィルタ1833の出力が騒音キャンセル音LCとして適応フィルタ183から出力される。
可変フィルタ1833の出力する騒音キャンセル音LCは、左チャネルゲイン調整部184において、予め設定されているゲインG_Lで大きさが調整された後、左チャネル遅延部185において、予め設定されている遅延時間Z_L分遅延されて、左席左チャネルキャンセル音LC_Lとして、左席左チャネル加算器14を介して左席左スピーカ12に出力される。
【0024】
また、可変フィルタ1833の出力する騒音キャンセル音LCは、右チャネルゲイン調整部186において、予め設定されているゲインG_Rで大きさが調整された後、右チャネル遅延部187において、予め設定されている遅延時間Z_R分遅延されて、左席右チャネルキャンセル音LC_Rとして、左席右チャネル加算器15を介して左席右スピーカ13に出力される。
【0025】
ここで、左チャネルゲイン調整部184のゲインG_Lと右チャネルゲイン調整部186のゲインG_Rは、ゲインの比G_L/G_Rが、騒音源から左席左マイク16の出力LM_Lに伝わる騒音の大きさM_Lと騒音源から左席右マイク17の出力LM_Rに伝わる騒音の大きさM_Rの比M_L/M_Rと一致するように設定する。
【0026】
また、左チャネル遅延部185の遅延時間Z_Lと右チャネル遅延部187の遅延時間Z_Rは、遅延時間の差Z_L-Z_Rが、騒音源から左席左マイク16の出力LM_Lまでの騒音の遅延時間d_Lと騒音源から左席右マイク17の出力LM_Rまでの騒音の遅延時間d_Rとの差d_L-d_Rに一致するように設定する。
【0027】
ここで、左席キャンセル音生成部18がキャンセルする騒音の騒音源は右席左スピーカ22と右席右スピーカ23となるので、左チャネルゲイン調整部184のゲインG_Lと右チャネルゲイン調整部186のゲインG_Rと左チャネル遅延部185の遅延時間Z_Lと右チャネル遅延部187の遅延時間Z_Rは、たとえば、予め、次のように設定することができる。
【0028】
すなわち、右席左スピーカ22と右席右スピーカ23の双方、もしくは、右席左スピーカ22と右席右スピーカ23の中央の位置に配置した計測用スピーカからテスト音を出力する。
そして、出力したテスト音が、左席左マイク16の出力LM_Lに伝わる大きさM_Lと左席右マイク17の出力LM_Rに伝わる大きさM_Rを求め、求めたM_L/M_RにG_L/G_Rが一致するように左チャネルゲイン調整部184のゲインG_Lと右チャネルゲイン調整部186のゲインG_Rを設定する。
【0029】
また、出力したテスト音の、左席左マイク16の出力LM_Lまでの遅延時間と左席右マイク17の出力LM_Rまでの遅延時間の差d_L-d_Rを求め、求めたd_L-d_RにZ_L-Z_Rが一致するように左チャネル遅延部185の遅延時間Z_Lと右チャネル遅延部187の遅延時間Z_Rを設定する。
【0030】
より具体的には、たとえば、出力したテスト音に対して得られた左席左マイク16の出力LM_Lと左席右マイク17の出力LM_Rの波形が
図4に示すものであった場合には、最初に左席左マイク16の出力LM_Lに現れるピークの大きさをM_Lとし、最初に右席左マイク26の出力LM_Rに現れるピークの大きさをM_Rとして、M_L/M_RにG_L/G_Rが一致するように左チャネルゲイン調整部184のゲインG_Lと右チャネルゲイン調整部186のゲインG_Rを設定する。
【0031】
また、最初に左席左マイク16の出力LM_Lに最初に現れるピークに対する、最初に右席左マイク26の出力LM_Rに最初に現れるピークの遅延をd_L-d_Rとして、d_L-d_RとZ_L-Z_Rが一致するように左チャネル遅延部185の遅延時間Z_Lと右チャネル遅延部187の遅延時間Z_Rを設定する。
【0032】
ここで、d_L-d_Rが正である場合には、Z_L=d_L-d_R、Z_R=0としてもよい。また、この場合には、右チャネル遅延部187を省略してよい。また、d_L-d_Rが負である場合には、Z_L=0、Z_R=-(d_L-d_R)としてもよい。また、この場合には、左チャネル遅延部185を省略してよい
以上、左席キャンセル音生成部18について説明した。
【0033】
このような左席キャンセル音生成部18によれば、騒音源から左席左マイク16の出力LM_Lや左席右マイク17の出力LM_Rまでの騒音のゲインや遅延時間の関係に整合するゲインや遅延時間の関係を、左席左スピーカ12から出力する左席左チャネルキャンセル音LC_Lと左席右スピーカ13から出力する左席右チャネルキャンセル音LC_Rとの間に付与することができるので、当該騒音のゲインや遅延時間の差が比較的大きい場合にも、左席左マイク16の出力LM_Lと左席右マイク17の出力LM_Rを加算した加算信号をエラーとする適応フィルタ183を用いつつ、騒音を良好にキャンセルすることができる。
【0034】
次に、右席キャンセル音生成部28は、以上の左席キャンセル音生成部18の説明において、左席と右席とを入れ替えたものとなる。
以上、本発明の実施形態について説明した。
また、以上では、自動車の左前席と右前席のユーザが、それぞれ、当該席用に設けられた左右のスピーカを用いて音楽を聴取するシステムへの適用について説明したが、左前席と右前席との組み合わせ以外の席の組み合わせについても本実施形態は同様に適用できる。また、この場合において、各席は自動車車内の席でなくてもよい。
【符号の説明】
【0035】
11…左席音源装置、12…左席左スピーカ、13…左席右スピーカ、14…左席左チャネル加算器、15…左席右チャネル加算器、16…左席左マイク、17…左席右マイク、18…左席キャンセル音生成部、21…右席音源装置、22…右席左スピーカ、23…右席右スピーカ、24…右席左チャネル加算器、25…右席右チャネル加算器、26…右席左マイク、27…右席右マイク、28…右席キャンセル音生成部、181…参照信号加算器、182…エラー加算器、183…適応フィルタ、184…左チャネルゲイン調整部、185…左チャネル遅延部、186…右チャネルゲイン調整部、187…右チャネル遅延部、1831…推定フィルタ、1832…係数更新部、1833…可変フィルタ。