(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023170081
(43)【公開日】2023-12-01
(54)【発明の名称】フィルム、それを用いたテープおよび貼付剤
(51)【国際特許分類】
B29C 59/04 20060101AFI20231124BHJP
C08J 5/18 20060101ALI20231124BHJP
B29C 48/08 20190101ALI20231124BHJP
B29C 48/13 20190101ALI20231124BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20231124BHJP
C09J 7/20 20180101ALI20231124BHJP
C09J 7/38 20180101ALI20231124BHJP
【FI】
B29C59/04 Z
C08J5/18
B29C48/08
B29C48/13
B32B27/00 M
C09J7/20
C09J7/38
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022081551
(22)【出願日】2022-05-18
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000062
【氏名又は名称】弁理士法人第一国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山口 祐貴泰
【テーマコード(参考)】
4F071
4F100
4F207
4F209
4J004
【Fターム(参考)】
4F071AA15
4F071AA19
4F071AA20
4F071AA46
4F071AA50
4F071AA54
4F071AF15Y
4F071AF21
4F071AG29
4F071AH06
4F071AH12
4F071AH19
4F071BA01
4F071BB03
4F071BB06
4F071BC01
4F071BC08
4F071BC12
4F071BC17
4F100BA02
4F100BA07
4F100CB05B
4F100DD11A
4F100JK02A
4F207AA07
4F207AA24
4F207AG01
4F207AG03
4F207AH81
4F207AR01
4F207AR12
4F207KA01
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4F207KK64
4F207KL84
4F207KW41
4F209AA07
4F209AA24
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4F209AG05
4F209PA04
4F209PB02
4F209PC05
4F209PG05
4F209PG12
4F209PJ09
4F209PN04
4F209PN06
4J004AB01
4J004CB03
4J004CC02
4J004CC05
4J004FA08
(57)【要約】
【課題】例えば耐熱性やガスバリア性を有するような硬い材料を使用するフィルムにおいて、伸縮性と破断耐性を両立することができるフィルム、それを用いたテープおよび貼付剤を提供する。
【解決手段】表面および裏面ともに凸部と凹部が繰り返し配列された凹凸形状を有するフィルムにおいて、凹部表面と凸部表面の高低差hとフィルムの平均厚みtと形状角部rの関係がt<r<hを満たし、かつ前記フィルムの最薄部の厚みが平均厚みよりも-20%以上、0%以下であり、JISK7127:1999に従って測定される破断強度が5N/15mm以上、30N/15mmである。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面および裏面ともに凹凸形状を有したフィルムであって、前記凹凸形状は凸部と凹部が繰り返し配列され、隣接する前記凸部と前記凹部とは、その間に配置された斜面部を共有しており、前記裏面は前記表面の凹凸形状に追従した凹凸形状を有しており、
凹部表面と凸部表面の高低差hが前記フィルムの平均厚みtよりも大きいフィルムであって、
フィルム断面において、前記凸部の頂部または前記凹部の底部と前記斜面部とを繋ぐ接続部の丸みr、あるいは、前記凸部の頂部または前記凹部の底部の断面中心線が円の一部で近似できる場合には、前記円の半径である丸みrが、前記フィルムの平均厚みtよりも大きく、かつ前記高低差hよりも小さく、
前記フィルムの最薄部の厚みが、前記フィルムの平均厚みtに対して-20%以上、0%以下の厚みであり、
前記凸部と前記凹部が繰り返し配列された方向に引っ張ったときに、JISK7127:1999に従って測定される破断強度が5N/15mm以上、30N/15mmである、
ことを特徴とするフィルム。
【請求項2】
前記フィルムの断面の凹凸形状が、前記凸部および前記凹部に平坦部を有する台形形状、または前記凸部および前記凹部に平坦部を有さない円弧形状である、
ことを特徴とする請求項1に記載のフィルム。
【請求項3】
前記フィルムの平均厚みtが10μm以上、50μm以下である、
ことを特徴とする請求項1に記載のフィルム。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載のフィルムを基材として、粘着剤層と積層させてなるテープ。
【請求項5】
請求項1から3のいずれか一項に記載のフィルムを基材として、粘着剤層と積層させてなる貼付剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィルム、それを用いたテープおよび貼付剤に関する。
【背景技術】
【0002】
一般にプラスチックフィルムは、軽量である、化学的に安定である、加工がしやすい、柔軟で強度がある、大量生産が可能、などの性質があり、様々なものに利用されている。その用途としては、例えば、食料品や医薬品等を包装する包装材や、テープ、光学フィルム、保護フィルム、建装材等々、多岐にわたる。具体的な材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどの熱可塑性樹脂やエポキシ樹脂、ポリウレタン、ポリイミドなどの熱硬化性樹脂などが挙げられる。
【0003】
プラスチックフィルムに用いられる材料は、機械的特性、熱的特性、化学的特性などの特性をそれぞれ固有に有しており、用途に応じて適切な材料が選択される。
【0004】
しかしながら、複数の特性を同時に満たすことが困難な場合がある。例えば、耐熱性やガスバリア性と伸縮性を材料の特性だけで同時に満たすことは難しい。耐熱性やガスバリア性を有する材料は比較的硬い材料に限られるためである。
【0005】
そこで、上記のような耐熱性やガスバリア性を有するような硬い材料に対して伸縮性を付与する技術として、特許文献1や特許文献2に示すように、フィルムに細かい折り目のような構造を設けて上記のように相反する特性を両立する試みが行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2019-89321号公報
【特許文献2】特開2020-185084号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1のようなフィルムは一般的な平滑なフィルムと比較すると破断強度が低下しやすい問題を抱えている。これは、伸縮時の応力が折り目の角部に集中しやすくなり、そこを起点として破断しやすくなるためである。
【0008】
一方、特許文献2では、上記のような破断強度の低下を抑制するために折り目の角部に丸みrをつけることで応力集中を抑制することが提案されている。しかしながら、破断強度の低下につながる要因は角部の応力集中だけでなく、フィルムに内在する厚み差による応力集中も挙げられる。すなわち、上記のような折り目のついたフィルムを作製するには、元々均一な厚みのフィルムを型に嵌めて凹凸構造を設けるため、構造形成時に斜面部が引き延ばされることによる厚み差が生じやすく、角部の丸みrだけでは破断強度の低下を抑制できない場合があった。
【0009】
その結果、例えば、テープや貼付剤の基材として使用する場合や、フィルム片面または両面にガスバリア層や導通層などの機能層を設けて伸びる機能性フィルムとして使用する際には、対象物に貼る作業や剥がす作業にて取り扱う際に、途中でフィルムが破けてしまうといった問題を招来する。
【0010】
本発明は上記課題に対して、樹脂材料に伸縮性を付与しつつ破断しにくくしたフィルム、それを用いたテープおよび貼付剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明の代表的なフィルムの一つは、
表面および裏面ともに凹凸形状を有したフィルムであって、前記凹凸形状は凸部と凹部が繰り返し配列され、隣接する前記凸部と前記凹部とは、その間に配置された斜面部を共有しており、前記裏面は前記表面の凹凸形状に追従した凹凸形状を有しており、
凹部表面と凸部表面の高低差hが前記フィルムの平均厚みtよりも大きいフィルムであって、
フィルム断面において、前記凸部の頂部または前記凹部の底部と前記斜面部とを繋ぐ接続部の丸みr、あるいは、前記凸部の頂部または前記凹部の底部の断面中心線が円の一部で近似できる場合には、前記円の半径である丸みrが、前記フィルムの平均厚みtよりも大きく、かつ前記高低差hよりも小さく、
前記フィルムの最薄部の厚みが、前記フィルムの平均厚みtに対して-20%以上、0%以下の厚みであり、
前記凸部と前記凹部が繰り返し配列された方向に引っ張ったときに、JISK7127:1999に従って測定される破断強度が5N/15mm以上、30N/15mmであることにより達成される。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、樹脂材料に伸縮性を付与しつつ破断しにくくしたフィルム、それを用いたテープおよび貼付剤を提供することができる。
上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、本実施形態のフィルムの一例を示す断面図である。
【
図2】
図2は、本実施形態のフィルムの一例を示す断面図である。
【
図3】
図3は、本実施形態のフィルムにおける凹凸形状の延在方向例を示した斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本発明の実施形態について図面を参照しつつ説明する。
なお、各図は模式的に示した図であり、各部の大きさや形状等は理解を容易にするために適宜誇張、簡略化して示している。また、説明を簡単にするため、各図の対応する部位には同じ符号を付している。
【0015】
本実施形態のフィルム1は、
図1に示すように、凸部2、及び、凹部3が斜面部4を介して繰り返し凹凸形状が形成されている。また、フィルム1の裏面凹凸は表面凹凸に追従するように凹凸形状が形成されており、フィルム1は俯瞰してみると波打ったような形状を有している。
【0016】
また、フィルム1は
図3に示すように、延在方向(図で左右方向)に沿って凸部2と凹部3が繰り返し形成されている。凸部2と凹部3は、一様な高さでフィルム1の延在方向に交差する(ここでは直交する)方向に延びる。
【0017】
また、フィルム1の断面凹凸形状は、
図1に示すように凸部2および凹部3が頂部2aおよび底部3aに平坦部を有する台形形状、または
図2に示すように凸部2および凹部3が頂部2aおよび底部3aに平坦部を有さない円弧形状である。
【0018】
フィルム1が
図1のような台形形状となっている場合、隣接する凸部2および凹部3は、その間の斜面部4を共有しており(凸部または凹部の一部を構成し)、凸部2の頂部2aおよび凹部3の底部3aと、斜面部4とをつなぐ角部(接続部)5の断面は丸みrを有している。このとき、丸みrは、当該箇所の断面(凸部2又は凹部3が延びる方向(
図1,2で紙面垂直方向)に直交する面で切断した断面)において断面中心線(フィルム表面と裏面の中間点をつないだ線)を円の一部で近似したときに、該円の半径により算出されるものと定義する。
一方、フィルム1が
図2のような円弧形状となっている場合は、頂部2a全体あるいは底部3a全体の断面が丸みrを有している。換言すれば、凸部2の頂部2aまたは凹部3の底部3aの断面中心線が円の一部で近似できる場合、該円の半径を丸みrと定義する。
【0019】
フィルム1は、後述する凹凸形状の作製方法の関係上、フィルム1内で厚みが厚い箇所と薄い箇所が内在しており、これらの平均厚みをtとする。
【0020】
フィルム1は、表面(裏面)における凸部2の最高位置と凹部3の最低位置との距離である高低差h(μm)に対して、丸みr(μm)、平均厚みt(μm)が以下の関係を満たし、かつ平均厚みtに対してフィルムの最も薄い箇所が-20%以上の厚みである。
式(1): t < r < h
【0021】
仮に、平均厚みtに対して高低差hが低いとすると(t>h)は、凹凸形状が波打ったような形状にならず、フィルム1の伸縮性付与の効果が発揮されなくなってしまう。このため、高低差hは平均厚みtより相対的に大きいことが必要である。
【0022】
また、仮に丸みrが平均厚みt以下であるとすると(r≦t)、引っ張り時に角部への応力集中が大きくなることから、破断強度が著しく低下してしまう。
【0023】
また、仮に高低差hが丸みr以下であるとすると(h≦r)、フィルム1全体として凹凸感が損なわれて平坦なフィルムに近い形状になることから、伸縮性の効果が薄れてしまう。このため、高低差hは丸みrより相対的に大きくした方が伸縮性の効果が得やすくなる。
【0024】
また、フィルム1内の厚み差は少ないことが好ましく、フィルム1内に存在する最も薄い箇所の厚みは平均厚みtに対して-20%以上、0%以下の範囲となっていることが必要である。仮に、最も薄い箇所の厚みが上記範囲から外れる場合、引っ張り時に薄膜部への応力集中が大きくなることから、破断強度が低下してしまう。
【0025】
また、フィルム1は凹凸形状を繰り返す方向に引っ張った際にJISK7127:1999に従って測定される破断強度が5N/15mm以上、30N/15mm以下であることが必要である。5N/15mmよりも破断強度が小さい場合、フィルム1を使用した製品、例えばテープや貼付剤といった用途にて、使用中に破けてしまいやすく、取り扱いにくくなる。また、破断強度が30N/15mmを超えている場合には、フィルムは式(1)を満たすことが困難となり、伸縮性の効果が発揮されにくくなる。
【0026】
フィルム1の平均厚みtは10μm以上、50μm以下であることが好ましい。平均厚みtが10μmよりも薄い場合、引っ張り時のフィルム1の破断が発生しやすくなる。また、平均厚みtが50μmよりも厚い場合には、フィルムの伸縮性低下につながる。
【0027】
フィルム1内の凹凸形状は全て同じである必要はなく、例えば
図1と
図2が組み合わさったような形状であっても良い。また、凹凸のピッチや高低差hも全ての凹凸でそろえる必要はなく、変化していても本発明の効果を得ることは可能である。
【0028】
また、凸部2および凹部3に存在する角部5の丸みrは全て同じである必要はなく、角部ごとに丸みrが異なっていても、式(1)を満たす範囲であれば本発明の効果を得ることは可能である。
【0029】
本発明のフィルム1は、
図3のように、必ずしも単層構成である必要はなく複数の層から構成されていても良いし、本発明のフィルム1の一方の面に機能層を積層しても良い。機能層とは、例えば、伸縮補助層、導電層、バリア層などが挙げられる。さらに、後工程でフィルム1表面もしくは裏面に印刷層や粘着層などを積層しても良い。
【0030】
フィルム1を構成する材料としては、熱硬化性樹脂やUV硬化性樹脂、熱可塑性樹脂などが挙げられる。硬化性樹脂としては例えばアクリル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂等が挙げられ、熱可塑性樹脂としては例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリメタクリル酸メチル、エチレン酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、エチレン-ビニルアルコール共重合体、ポリ塩化ビニリデン、ポリアクリロニトリル、ポリ乳酸、環状ポリオレフィン、ポリアセタール、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、及び、これらの誘導体等が挙げられる。ただし、これらの材料は特に限定されるものではなく、さらにこれらの材料は単独で用いられても良いし、これらのうちの複数の材料が組み合わされて用いられても良い。
【0031】
フィルム1の製造方法については、例えば、熱プレスによる製造方法や、押出成形による製造方法等、各種の方法を適宜選択して用いることが可能である。
【0032】
熱プレスによる製造方法では、元となる平坦に製膜したフィルムを、表面に凹凸形状を設けた一対の加熱ロール間、又は、一対の加熱した平板状のプレス機に通すことで、凹凸形状を設けたフィルム1を製造することが可能である。この際、一対の加熱ロール間、又は一対の平板が有する上下の凹形状と凸形状との精密な位置合わせを行い、熱プレス後のフィルム1の表面と裏面が、連続的な凹凸形状となっていることが重要となる。
【0033】
さらに、熱プレスによる別の製造方法では、離形性を有する複数のフラットフィルムを重ね、又は、離形性を有する複数の層を保持するフラットフィルムを、凹凸形状を設けた加熱ロール間、又は、加熱した平板状のプレス機に通すことで、凹凸形状を付与することが可能である。この際、プレスの深さやプレス圧を調整することによって、フラットフィルムの表面及び層界面に所望の凹凸形状が付与され、冷却後に凹凸形状を付与した複数の層のフィルムを剥離することにより、フィルム1を製造することが可能である。
【0034】
押出成形による製造方法では、樹脂を加熱溶融してTダイから押し出し、フィルム化するための冷却工程において、凹凸形状が設けられた冷却ロール及びニップロールを用いて、ニップ圧力を付加しながら冷却することで、フィルムの表面と裏面に連続的な凹凸形状を設けることが可能である。押出成形による製造方法においても、冷却ロールとニップロールが有する凹凸形状との精密な位置合わせが必要になる。
【0035】
さらに、押出成形による別の製造方法では、複数の押出機を使用し、複数種類の樹脂を、フィードブロック法、又はマルチマニホールド法により共押出することで、フィルム1を片側表面に配置した、2層以上の多層構成のフィルムを得ることが可能である。この際、フィルム化するための冷却工程において、フィルムを配置した面に、凹凸形状に対応する凹凸が表面に設けられた冷却ロールを用いて、ニップ圧力を付加しながら冷却することで、凹凸形状を形成することが可能である。この時、冷却ロールと接するフィルムの厚さに対し、凹凸形状の高低差が大きいときには、フィルムの冷却ロールと反対面の界面にも同様に凹凸形状が付加されるため、冷却後に凹凸形状を付与したフィルムを多層フィルムから剥離することにより、断面がうねった凹凸形状を持つフィルム1を得ることが可能である。
【0036】
以上で示したフィルム1の作製方法は、いずれも元々平坦なフィルムまたは、平坦に押し出した溶融樹脂を型に嵌めて凹凸形状を付与するものとなっている。このようにして凹凸形状を設ける場合、フィルム1の斜面部4で元々平坦であったフィルムが引き延ばされることから、フィルム1内で厚み差が生じてしまうことは避けられない。
【0037】
この時、厚み差をなるべく少なくする方法としては、斜面部4の傾斜角度をなるべく緩くしたり、高低差hを大きくしすぎないといったことが挙げられ、これらをバランスよく制御することによって、式(1)を達成するような凹凸形状を得ることが可能となる。
【0038】
作製したフィルム1は、後工程で、表面に印刷層や蒸着層、アンカーコート層等、機能層を積層することも可能である。さらに、フィルム1は、別の樹脂と積層することも可能である。
【0039】
作製したフィルム1は、伸びやすく破断しにくい特性を生かして、テープ基材(粘着剤層を積層してテープを形成する基材)、貼付剤基材(粘着剤層を積層して貼付剤を形成する基材)、導通層を設けた伸びる回路基材、エレクトロニクス部材、ガスバリア層を設けた伸びるガスバリアフィルムなどの用途に使用することができる。
【0040】
以上、本発明の実施形態を例示したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。
【実施例0041】
以下に、本発明に基づく実施例を説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0042】
(実施例1)
フィルム1の材料として、株式会社ベルポリエステルプロダクツ製のポリエチレンテレフタレート(PET)である、製品名EFG70を選択した。また、フィルム1と共押出する樹脂の材料として、日本ポリエチレン株式会社製の低密度ポリエチレン(LDPE)である、製品名ノバテックLD LC600Aを選択した。
そして、選択した二種類の樹脂を用いて、押出成形により共押出を行い、その後、フィルム化するための冷却工程において、凹凸形状が設けられた冷却ロールを用いてニップ圧力を付加しながら冷却した。その後、共押出した低密度ポリエチレン層を剥離することで、フィルムの表面と裏面に連続的な台形の凹凸形状を設けたフィルム1を作製した。
作製したフィルム1の平均厚みtは16μm、最薄部の厚みは13μm、丸みrは20μm、高低差hは60μm、JISKK7127:1999に従って測定される破断強度は7.4N/15mmであった。
【0043】
(実施例2)
実施例1と同様の素材及び製法で、表面と裏面に連続的な台形の凹凸形状を設けたフィルム1を作製した。
作製したフィルム1の平均厚みtは16μm、最薄部の厚みは14μm、丸みrは40μm、高低差hは50μm、JISKK7127:1999に従って測定される破断強度は8.6N/15mmであった。
【0044】
(実施例3)
実施例1と同様の素材及び製法で、表面と裏面に連続的な台形の凹凸形状を設けたフィルム1を作製した。
作製したフィルム1の平均厚みtは11μm、最薄部の厚みは9μm、丸みrは30μm、高低差hは60μm、JISKK7127:1999に従って測定される破断強度は5.3N/15mmであった。
【0045】
(実施例4)
実施例1と同様の素材及び製法で、表面と裏面に連続的な台形の凹凸形状を設けたフィルム1を作製した。
作製したフィルム1の平均厚みtは27μm、最薄部の厚みは23μm、丸みrは50μm、高低差hは60μm、JISKK7127:1999に従って測定される破断強度は26.7N/15mmであった。
【0046】
(実施例5)
実施例1と同様の素材及び製法で、表面と裏面に連続的な円弧の凹凸形状を設けたフィルム1を作製した。
作製したフィルム1の平均厚みtは14μm、最薄部の厚みは12μm、丸みrは50μm、高低差hは60μm、JISKK7127:1999に従って測定される破断強度は7.8N/15mmであった。
【0047】
(実施例6)
実施例1と同様の素材及び製法で、表面と裏面に連続的な円弧の凹凸形状を設けたフィルム1を作製した。
作製したフィルム1の平均厚みtは20μm、最薄部の厚みは17μm、丸みrは75μm、高低差hは80μm、JISKK7127:1999に従って測定される破断強度は14.2N/15mmであった。
【0048】
(実施例7)
実施例1と同様の素材及び製法で、表面と裏面に連続的な台形の凹凸形状を設けたフィルム1を作製した。
作製したフィルム1の平均厚みtは35μm、最薄部の厚みは30μm、丸みrは45μm、高低差hは80μm、JISKK7127:1999に従って測定される破断強度は25.4N/15mmであった。
【0049】
(比較例1)
実施例1と同様の素材及び製法で、表面と裏面に連続的な台形の凹凸形状を設けたフィルム1を作製した。
作製したフィルム1の平均厚みtは16μm、最薄部の厚みは11μm、丸みrは20μm、高低差hは60μm、JISKK7127:1999に従って測定される破断強度は3.6N/15mmであった。
【0050】
(比較例2)
実施例1と同様の素材及び製法で、表面と裏面に連続的な台形の凹凸形状を設けたフィルム1を作製した。
作製したフィルム1の平均厚みtは16μm、最薄部の厚みは13μm、丸みrは40μm、高低差hは30μm、JISKK7127:1999に従って測定される破断強度は17N/15mmであった。
【0051】
(比較例3)
実施例1と同様の素材及び製法で、表面と裏面に連続的な台形の凹凸形状を設けたフィルム1を作製した。
作製したフィルム1の平均厚みtは16μm、最薄部の厚みは13μm、丸みrは10μm、高低差hは60μm、JISKK7127:1999に従って測定される破断強度は3.2N/15mmであった。
【0052】
(比較例4)
実施例1と同様の素材及び製法で、表面と裏面に連続的な円弧の凹凸形状を設けたフィルム1を作製した。
作製したフィルム1の平均厚みtは16μm、最薄部の厚みは13μm、丸みrは70μm、高低差hは60μm、JISKK7127:1999に従って測定される破断強度は8.7N/15mmであった。
【0053】
(比較例5)
実施例1と同様の素材及び製法で、表面と裏面に連続的な円弧の凹凸形状を設けたフィルム1を作製した。
作製したフィルム1の平均厚みtは20μm、最薄部の厚みは14μm、丸みrは75μm、高低差hは80μm、JISKK7127:1999に従って測定される破断強度は4.2N/15mmであった。
【0054】
(比較例6)
実施例1と同様の素材及び製法で、表面と裏面に連続的な円弧の凹凸形状を設けたフィルム1を作製した。
作製したフィルム1の平均厚みtは8μm、最薄部の厚みは7μm、丸みrは50μm、高低差hは60μm、JISKK7127:1999に従って測定される破断強度は3.2N/15mmであった。
【0055】
(伸縮性評価)
各実施例及び比較例の性能評価として、伸縮性の評価を実施した。
伸縮性の評価は、被験者の手感触にて十分な伸び感を感じたものを「○」、十分ではないと判断したものを「×」とした。なお、この評価は被験者5名にて各自評価を行い、最も多かった回答を最終評価結果として採用している。
(破断耐性評価)
各実施例及び比較例の性能評価として、破断耐性の評価を実施した。
破断耐性の評価は、破断耐がフィルムを手で引っ張った際に破断しない、または破断させるのに強い力を要するものを「○」、弱い力でも容易に破断したものを「×」とした。なお、この評価は被験者5名にて各自評価を行い、最も多かった回答を最終評価結果として採用している。
【0056】
各実施例、比較例における条件、及び評価結果の一覧表を表1に示す。
【0057】
【0058】
(評価結果)
表1の実施例の評価結果から、作製したフィルム1の平均厚みt、丸みr、高低差hが式(1)を充足し、かつ最薄部の厚みの平均厚みに対する厚みが-20%以上の場合に、破断強度が5N/15mmよりも大きくなり、結果として良好な伸縮性と破断耐性を示すことがわかる。また、この結果は断面形状が台形であっても円弧であっても同様であった。
一方で、平均厚みt<丸みr<高低差hの関係(式(1))を満たさない場合、もしくは最薄部の厚みが平均厚みtの20%より小さくなる場合には、伸縮性と破断耐性の双方を満たすことができなかった。特に、丸みrが平均厚みt以下となる場合と最薄部の厚みが薄い場合と平均厚みtが薄すぎる場合にて、破断耐性評価が「×」となり、丸みrが高低差以上である場合、平均厚みtが厚すぎる場合には伸縮性評価が「×」となることがわかった。
【0059】
本明細書は、以下の発明の開示を含む。
(発明A)
表面および裏面ともに凹凸形状を有したフィルムであって、前記凹凸形状は凸部と凹部が繰り返し配列され、隣接する前記凸部と前記凹部とは、その間に配置された斜面部を共有しており、前記裏面は前記表面の凹凸形状に追従した凹凸形状を有しており、
凹部表面と凸部表面の高低差hが前記フィルムの平均厚みtよりも大きいフィルムであって、
フィルム断面において、前記凸部の頂部または前記凹部の底部と前記斜面部とを繋ぐ接続部の丸みr、あるいは、前記凸部の頂部または前記凹部の底部の断面中心線が円の一部で近似できる場合には、前記円の半径である丸みrが、前記フィルムの平均厚みtよりも大きく、かつ前記高低差hよりも小さく、
前記フィルムの最薄部の厚みが、前記フィルムの平均厚みtに対して-20%以上、0%以下の厚みであり、
前記凸部と前記凹部が繰り返し配列された方向に引っ張ったときに、JISK7127:1999に従って測定される破断強度が5N/15mm以上、30N/15mmである、
ことを特徴とするフィルム。
【0060】
(発明B)
前記フィルムの断面の凹凸形状が、前記凸部および前記凹部に平坦部を有する台形形状、または前記凸部および前記凹部に平坦部を有さない円弧形状である、
ことを特徴とする発明Aのフィルム。
【0061】
(発明C)
前記フィルムの平均厚みtが10μm以上、50μm以下である、
ことを特徴とする発明Aまたは発明Bのフィルム。
【0062】
(発明D)
発明Aから発明Cのいずれかのフィルムを基材として、粘着剤層と積層させてなるテープ。
【0063】
(発明E)
発明Aから発明Cのいずれかのフィルムを基材として、粘着剤層と積層させてなる貼付剤。
本発明のフィルム1は良好な伸縮性と破断耐性を有することから、引っ張り時に大きな負荷がかかる用途、例えばテープや貼付剤の基材といった用途において、伸縮しつつも破れにくいフィルムとしての活用が期待される。