(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023170085
(43)【公開日】2023-12-01
(54)【発明の名称】加熱調理器および加熱調理方法
(51)【国際特許分類】
F24C 7/04 20210101AFI20231124BHJP
【FI】
F24C7/04 301A
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022081556
(22)【出願日】2022-05-18
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100132241
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 博史
(74)【代理人】
【識別番号】100183276
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 裕三
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 晋介
【テーマコード(参考)】
3L087
【Fターム(参考)】
3L087AA03
3L087CA20
3L087CC03
3L087DA12
(57)【要約】
【課題】食材の内部をより確実に加熱し、食材を所望の態様で加熱することができる加熱調理器を提供すること。
【解決手段】加熱調理器(2)は、超音波を発生させる超音波発生装置(6)と、超音波発生装置(6)が発生させた超音波を食材(F)に伝搬させる超音波伝搬手段(4、8)と、制御部(14)と、を備え、制御部(14)は、超音波伝搬手段(4、8)による超音波の伝搬によって、食材(F)の内部を食材(F)の表層に比べて高温になるように加熱する加熱調理工程を実行する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
超音波を発生させる超音波発生装置と、
前記超音波発生装置が発生させた超音波を食材に伝搬させる超音波伝搬手段と、
制御部と、を備え、
前記制御部は、前記超音波伝搬手段による超音波の伝搬によって、前記食材の内部を前記食材の表層に比べて高温になるように加熱する加熱調理工程を実行する、加熱調理器。
【請求項2】
前記食材の内部を通過した超音波を受信する超音波受信装置をさらに備え、
前記制御部は、前記加熱調理工程において、前記超音波受信装置が受信する超音波波形の振幅の変化率に基づいて、前記超音波発生装置による超音波の発生を制御する、請求項1に記載の加熱調理器。
【請求項3】
前記食材の内部を通過した超音波を受信する超音波受信装置をさらに備え、
前記制御部は、前記加熱調理工程において、前記超音波受信装置が受信する超音波波形の振幅値に基づいて、前記超音波発生装置による超音波の発生を制御する、請求項1に記載の加熱調理器。
【請求項4】
ユーザが加熱条件を設定するための操作部をさらに備え、
前記加熱条件には、前記食材としての食肉の焼き加減が含まれており、
前記制御部は、前記加熱調理工程において、前記操作部で設定される前記焼き加減と、前記超音波波形の前記振幅値とに基づいて、前記超音波発生装置による超音波の発生を制御する、請求項3に記載の加熱調理器。
【請求項5】
前記制御部は、前記加熱調理工程において前記超音波発生装置による超音波の発生を制御する際に、超音波の発生/停止、および/又は強度を制御する、請求項2から4のいずれか1つに記載の加熱調理器。
【請求項6】
前記制御部は、前記加熱調理工程に加えて、前記超音波発生装置が発生させる超音波を用いて、前記食材を殺菌するための殺菌工程を実行する、請求項1に記載の加熱調理器。
【請求項7】
ユーザが加熱条件を設定するための操作部をさらに備え、
前記加熱条件には、前記殺菌工程における殺菌温度と殺菌時間が含まれる、請求項6に記載の加熱調理器。
【請求項8】
前記食材の表面温度を検知可能な温度センサをさらに備え、
前記制御部は、前記殺菌工程において、前記温度センサが検知する前記食材の表面温度と、前記操作部で設定される前記殺菌温度および前記殺菌時間とに基づいて、前記超音波発生装置による超音波の発生を制御する、請求項7に記載の加熱調理器。
【請求項9】
前記制御部は、前記超音波発生装置に、500kHz~2MHzの超音波を発生させる、請求項1に記載の加熱調理器。
【請求項10】
超音波以外の加熱手段をさらに有する、請求項1に記載の加熱調理器。
【請求項11】
超音波以外の加熱手段を有しない、請求項1に記載の加熱調理器。
【請求項12】
超音波発生装置により、超音波を発生させる工程と、
超音波伝搬手段により、前記超音波発生装置が発生させた超音波を食材に伝搬させる工程と、を含み、
前記超音波伝搬手段による超音波の伝搬によって、前記食材の内部を前記食材の表層に比べて高温になるように加熱する加熱調理工程を実行する、加熱調理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、加熱調理器および加熱調理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、食肉等の食材を鍋に収容して加熱調理する加熱調理器が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1の加熱調理器は、電磁波を放射するランプヒータを用いて食材を加熱調理する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、ヒータ等を用いた従来の伝熱加熱方法によれば、食材の外側から中心に向かって加熱していくため、食材の内部が加熱されにくい傾向にある。したがって、食材の内部が加熱されるのは、加熱動作開始後しばらく経過後であり、また、食材の内部が加熱されたかどうかの判断は難しいものであった。もちろん、食材の種類やユーザのニーズに応じて、食材の内部が高温となるように加熱できれば、食材を所望の態様で加熱することが可能となる。
【0006】
従って、本開示の目的は、前記問題を解決することにあって、食材の内部をより確実に加熱し、食材を所望の態様で加熱することができる加熱調理器および加熱調理方法を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するために、本開示の加熱調理器は、超音波を発生させる超音波発生装置と、前記超音波発生装置が発生させた超音波を食材に伝搬させる超音波伝搬手段と、制御部と、を備え、前記制御部は、前記超音波伝搬手段による超音波の伝搬によって、前記食材の内部を前記食材の表層に比べて高温になるように加熱する加熱調理工程を実行する。
【0008】
また、本開示の加熱調理方法は、超音波発生装置により、超音波を発生させる工程と、超音波伝搬手段により、前記超音波発生装置が発生させた超音波を食材に伝搬させる工程と、を含み、前記超音波伝搬手段による超音波の伝搬によって、前記食材の内部を前記食材の表層に比べて高温になるように加熱する加熱調理工程を実行する。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、食材の内部をより確実に加熱し、食材を所望の態様で加熱することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図3】超音波で食材を加熱した際の温度分布を示す概略図
【
図4】周波数の異なる超音波の伝搬方法を示す概略図
【
図5】周波数の異なる超音波の減衰度合いを示すグラフ
【
図6】超音波の発信と受信のタイミングを示す概略図
【
図8】実施形態1の加熱調理工程に関する処理の一例を示すフローチャート
【
図9】実施形態1の加熱調理工程における、食材の内部温度や硬さ、反射波の振幅値や振幅値の微分の推移を示すグラフ
【
図10】実施形態1の加熱調理工程に関する処理の一例を示すフローチャート
【
図12】実施形態2の加熱調理工程に関する処理の一例を示すフローチャート
【
図14】実施形態3の加熱調理工程における超音波の発信と受信のタイミングを示す概略図
【
図16】実施形態4の加熱調理工程における超音波の発信と受信のタイミングを示す概略図
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示に係る加熱調理器および加熱調理方法の例示的な実施形態について、添付の図面を参照しながら説明する。本開示は、以下の実施形態の具体的な構成に限定されるものではなく、同様の技術的思想に基づく構成が本開示に含まれる。
【0012】
(実施形態1)
まず
図1を参照して、本開示の一実施形態に係る加熱調理器について説明する。
【0013】
図1は、実施形態1に係る加熱調理器2の概略図である。
【0014】
図1に示す加熱調理器2は、食材Fを加熱調理するための調理器具である。食材Fは例えば、牛肉、豚肉、鶏肉、魚肉等の食肉である。実施形態1の加熱調理器2は、調理メニューごとに動作シーケンスが予めプログラムされた自動調理器である。
【0015】
実施形態1の加熱調理器2は特に、食材Fに対して超音波を付与することで、食材Fの表層に比べて内部が高温となるように食材Fを加熱することが可能な「超音波加熱調理器」である。
【0016】
実施形態1の加熱調理器2は、超音波以外の加熱手段を有しておらず、超音波加熱に特化した加熱調理器2を例示する。
【0017】
図1に示す加熱調理器2は、調理容器4と、超音波発生装置6と、受け台8と、超音波受信装置10と、操作部12と、制御部14と、発信回路16と、受信回路18とを備える。
【0018】
ユーザが加熱調理器2を利用する際は、調理容器4の調理空間5に食材Fを配置するとともに、操作部12を操作して調理メニューを選択し、加熱調理の実行を決定する。選択された調理メニュー(食肉の下ごしらえ・殺菌処理等)に応じて、加熱調理器2は、予め定められたプログラムに従って食材Fを加熱調理する加熱調理工程を実行するように動作する。
【0019】
調理容器4は、食材Fを収容するための箱状の部材である。調理容器4には、上方に開口した調理空間5が形成されている。調理容器4の底面には受け台8および超音波発生装置6が接続されており、調理容器4を通じて食材Fに超音波が伝搬可能に構成される。調理容器4および受け台8は、食材Fに超音波を伝搬する「超音波伝搬手段」として機能する。調理容器4および受け台8の材質は、超音波を伝搬できるものであれば、任意の材質であってもよい。なお、安全上の配慮のために調理容器4の上面の開口を塞ぐための開閉可能な蓋を設けてもよい。
【0020】
超音波発生装置6は、食材Fに付与する超音波を発生させるための装置である。本明細書での「超音波」は、例えば、周波数(振動数)が20kHz以上の音波である。実施形態1の超音波発生装置6は、電圧の印加によって超音波を発生可能な圧電素子で構成される。圧電素子は、後述する発信回路16によって所定の周波数で所定の電圧が印加されることで、予め定められた特定の周波数の超音波を発生させる。超音波発生装置6が発生させる超音波の周波数の範囲は例えば、500kHz~2MHzであってもよい。
【0021】
受け台8は、調理容器4を受けて支持するための部材である。受け台8は、調理容器4と超音波発生装置6の間に介在し、超音波発生装置6が発生させる超音波を調理容器4に伝搬する。受け台8は、調理容器4に収容された食材Fと超音波発生装置6との距離を調整するスペーサとしても機能する。
【0022】
受け台8と調理容器4は別体であってもよく、あるいは一体であってもよい。受け台8と調理容器4が別体である場合、異なる仕様の調理容器4を選択的に取り付けて使用することができる。受け台8と調理容器4が別体である構成において超音波発生装置6を駆動する場合には、受け台8と調理容器4を所定の押圧力で付勢することで、超音波を伝えることができる。
【0023】
超音波受信装置10は、食材Fに付与された超音波が反射されてくる反射波を受信するための装置である。実施形態1の超音波受信装置10は、超音波発生装置6と同様に受け台8の底面に取り付けられている。反射波は、調理容器4および受け台8を通じて超音波受信装置10に伝搬する。実施形態1の超音波受信装置10は、超音波発生装置6と同様に圧電素子で構成される。圧電素子としての超音波受信装置10は、受信した超音波の振動を電気信号(電圧値)に変換して、受信回路18に出力する。
【0024】
図1に示す例では、超音波受信装置10は、受け台8の中心部に配置されており、超音波発生装置6は、超音波受信装置10の周囲を囲むように配置される。
【0025】
操作部12は、調理メニュー等の加熱条件をユーザが設定するための部材である。実施形態1の操作部12は、タッチパネルである。タッチパネルに限らず、加熱条件を選択可能な構成であれば任意の構成を用いてもよい。
【0026】
制御部14は、加熱調理器2の動作を制御するための部材である。制御部14は、加熱調理器2の各構成要素に電気的に接続されており、各構成要素の動作を制御する。制御部14は例えば、マイクロコンピュータを有して構成される。
【0027】
発信回路16は高周波回路であり、超音波発生装置6に供給する電力を制御するための回路である。発信回路16は、制御部14によってスイッチング制御され、所望のタイミングで超音波発生装置6に所定の周波数で所定の電圧を印加する。
【0028】
受信回路18は、超音波受信装置10から出力される電気信号をノイズ除去、増幅等の信号処理を施して、制御部14に出力するための回路である。
【0029】
上記構成の加熱調理器2によれば、発信回路16を用いて超音波発生装置6を駆動することにより所定周波数の超音波を発生させることができ、発生した超音波は、受け台8および調理容器4を介して食材Fに伝搬する。食材Fに伝搬した超音波は、食材Fの内部を通過しながら食材Fを振動させて摩擦熱により食材Fを加熱する。
【0030】
超音波による加熱方法は、他の伝熱加熱方法と異なり、食材Fの表層よりも内部が高温となるように食材Fを加熱することができる。具体的な原理について、
図2、
図3を用いて説明する。
【0031】
図2は、超音波による食材Fの加熱原理を示す概略図であり、
図3は、食材Fを超音波で加熱した際の温度分布を示す概略図である。
【0032】
図2に示すように、まず、超音波発生装置6が発生させた超音波が食材Fの内部を通過する際に、超音波ビームの集束特性によって、発振部である食材Fの表層から所定の距離に超音波が収束することで干渉が起きて、食材Fの表層に比べて食材Fの内部が強い超音波振動分布となる(1)。また、食材Fの表面に到達した超音波は、外側の空気との媒質の違いにより反射され、食材Fの内部に閉じ込められるように伝搬・減衰する(2)。また、食材Fの外側の空間は非加熱の状態であり、食材Fの表面から外部に放熱されやすい(3)。
【0033】
上述した(1)~(3)の作用によって、
図3に示すような加熱温度分布となり、食材Fの表層に比べて食材Fの内部が高温となるように食材Fを加熱することができる。
【0034】
食材Fの表層に比べて食材Fの内部が高温となるように加熱することで、食材Fの種類やユーザのニーズに応じて、食材Fを所望の態様で加熱調理することができる。例えば、食材Fが牛肉、豚肉、鶏肉等の食肉である場合、食材Fの表層は加熱されにくいため、筋の収縮による水分の流出が生じにくい。このため、旨味成分が外部に流出することを抑制することができ、食肉の下ごしらえに適している。
【0035】
食材Fを超音波で加熱調理した後は、食材Fの内部が充分加熱されているので、超音波以外の別の加熱手段(例えばヒータを用いた伝熱調理やマイクロ波加熱調理など)により食材Fの表面側から加熱すればよい。超音波加熱調理後の食材Fの表面は比較的低温で乾燥しているため、別の加熱手段による加熱で食材Fの表面にすぐに焦げ目をつけることができる。これにより、旨味やジューシーさを中に閉じ込めながら、食材Fの全体を加熱調理することができる。
【0036】
次に、超音波発生装置6が発生させる超音波の周波数について、
図4、
図5を用いて説明する。
図4は、周波数が異なる超音波の伝搬方法を示す概略図であり、
図5は、生体や食肉内部での周波数毎の減衰度合いを示すグラフである。
図5において、横軸は、超音波の伝搬距離(cm)を表し、縦軸は、減衰度(%)を表す。減衰度に関して、「100%」は減衰していない状態を意味し、「0%」は、完全に減衰した状態を意味する。
【0037】
図4では、周波数が1MHzの超音波を左側に示し、周波数が500kHzの超音波を右側に示す。
図4において、超音波における「腹」と「節」のうち、腹を黒丸で示している。
【0038】
図4に示すように、1MHzの場合は半波長(腹が生じる周期)が約1.5mmであるのに対し、500kHzの場合は半波長が約3mmである。超音波を食材Fに付与したときに、主に腹の部分が食材Fを振動させて熱エネルギーを発生させるため、腹の周期が短いほど、より短い距離で食材Fを加熱することができ、減衰も早くなる。
【0039】
図5において、周波数が100kHz、250kHz、500kHz、1MHz、2MHz、3MHzの場合のそれぞれの減衰度を示す。
図5に示すように、周波数が低いほど減衰が遅く、周波数が高いほど減衰が早くなっている。この結果より、周波数が低い超音波で加熱する場合は、食材Fの全体をより均一に加熱しやすく、周波数が高い超音波で加熱する場合は、食材Fをより局所的、且つ発生源から近い距離で加熱しやすいことが分かる。
【0040】
図4、
図5に示した傾向を利用して、食材Fの中心部を表層に比べて高温と加熱するために、超音波発生装置6が発生させる超音波の周波数を好ましい範囲に設定してもよい。例えば、加熱調理器2で調理される食材Fの厚み等に応じて、超音波の周波数を500kHz~2MHzの範囲に設定してもよい。このような範囲設定によれば、特に数mmから数cmほどの厚みを有する食肉等の食材Fを加熱する際に、食材Fの中心部をより集中的に加熱することができる。なお、周波数が可変である構成においては、食材Fの厚み等に応じて適切な周波数に調整する制御を実行してもよい。
【0041】
図1に戻ると、実施形態1の加熱調理器2では、超音波受信装置10を設けており、受信する超音波(反射波)の特性に応じて、制御部14が超音波の発生を制御する。
図1に示す例では、超音波発生装置6と超音波受信装置10が同じ媒質(調理容器4および受け台8)を介して超音波の発生と受信を行う構成であり、超音波の発生と受信のタイミングを異ならせている。
【0042】
具体的には、
図6に示すように、制御部14は、(1)超音波発生装置6で超音波を発信した後、(2)超音波発生装置6による超音波の発信を停止している間に、(1)で発信した超音波の反射波を、(3)超音波受信装置10により受信する。(4)その後、超音波の発信を再開する。このように、超音波発生装置6による超音波の発生と、超音波受信装置10による反射波の受信を交互に繰り返すことで、食材Fに超音波を付与して食材Fを加熱しながら、反射波の特性に基づいて超音波の発生制御(例えばON/OFF)を実行することができる。具体的な制御方法については後述する。
【0043】
図1では、食材Fが調理容器4の内底面4Aに直接配置される場合を例示したが、このような場合に限らない。食材Fの配置方法の別の例を
図7に示す。
【0044】
図7に示す例では、食材Fは収容袋20に収容されるとともに、調理容器4に張られた水Wに浸されている。水Wは超音波を伝搬する性質を有しており、収容袋20も超音波を伝搬する材質で構成される。このため、超音波発生装置6が発生させた超音波は、受け台8および調理容器4を通じて水Wに伝搬し、収容袋20に収容された食材Fに伝搬する。このように、水Wや収容袋20などの別の媒質(超音波伝搬手段)に食材Fを配置してもよい。
【0045】
以下、加熱調理器2が実行する加熱調理工程について説明する。
【0046】
図8は、加熱調理器2による加熱調理工程の処理の一例を示すフローチャートである。
図8に示す各処理は、制御部14によって実行される。
図8に示すフローチャートは主に、牛肉を調理するための調理メニューの選択に応じて実行される。
【0047】
制御部14は、食材Fの焼き加減を含む加熱条件の設定を受け付ける(S1)。具体的には、ユーザが操作部12を操作して調理メニューを選択する際に、食材Fの焼き加減を含む加熱条件が設定される。食材Fが牛肉である場合、焼き加減として、例えばレア、ミディアムレア、ミディアム、ウェルダンの中から1つを選択することができる。
【0048】
制御部14は、超音波の発生を開始する(S2)。具体的には、制御部14が発信回路16を制御して、超音波発生装置6に所定の電圧を印加して超音波を発生させる。発生した超音波は、受け台8および調理容器4を介して調理容器4の内底面4Aに載置された食材Fに伝搬される。食材Fに伝搬した超音波は、前述したように食材Fの表層に比べて食材Fの内部(中心部)が高温となるように食材Fを加熱する。
【0049】
制御部14は、反射波を受信して、振幅値を取得する(S3)。具体的には、食材Fの内部を通過して反射されてくる反射波を超音波受信装置10が受信して電気信号(電圧値)に変換してから、受信回路18によって出力される電気信号に基づいて、制御部14が反射波の振幅値を取得する。
【0050】
制御部14は、振幅値の微分(変化率)<0か否かを判断する(S4)。振幅値の微分は、食材Fの硬さに関連する指標であるため、振幅値の微分が0よりも小さいか否かに応じて、食材Fの硬さを推定した加熱制御を実行することができる。
【0051】
ここで、超音波受信装置10が受信する反射波の振幅値のグラフを
図9に示す。
図9は、振幅値の推移を概略的に示すグラフ(実験データ)であり、横軸に時間を表し、縦軸に振幅値を表す。
図9では、振幅値に加えて、食材Fの内部温度、食材Fの硬さ、振幅値の微分のそれぞれの推移も示す。食材Fの内部温度は例えば熱電対で測定することができ、食材Fの硬さは例えばクリープメータで測定することができる。
【0052】
図9に示すように、食材Fの超音波加熱が進むにつれて、食材Fの内部温度は上昇していくとともに、温度の上昇率は徐々に緩やかになっていく。
【0053】
食材Fの硬さについては、加熱調理の開始から一旦下降した後、最下点に達し、その後緩やかに上昇し、ある硬さに到達すると、上昇率が向上する。この挙動は例えば、30度ぐらいまでは食材Fが柔らかくなった後、60度ぐらいまでは徐々に硬くなり、60度を過ぎると一層硬くなる挙動に対応する。
【0054】
振幅値については、一旦上昇した後、下降していく。具体的には、加熱当初は高い上昇率を示した後、上昇率は緩やかになり、最高点に達した後、下降していく。
【0055】
振幅値の微分については、振幅値の変化に対応した推移を示す。具体的には、加熱当初は上昇した後、最高点に達してから下降していく。
【0056】
図9のグラフに示すように、食材Fの硬さと、振幅値の微分については相関性がある。具体的には、食材Fの硬さが上昇する際にその上昇率が向上し始める点と、振幅値の微分が下降して0以下になる点が互いに対応する(一点鎖線のAで示す箇所)。これを利用して、振幅値の微分が0より小さいか否かを判断することで(S4)、食材Fが一層硬くなり始める前の適度な硬さに到達したか否かを推定することができる。
【0057】
振幅値の変化率が0よりも小さくないと判断した場合(S4でNO)、制御部14は、ステップS3を再度実行する。
【0058】
振幅値の変化率が0よりも小さいと判断した場合(S4でYES)、制御部14は、測定した振幅値が、設定された焼き加減に対応する振幅値か否かを判断する(S5)。
【0059】
図9のグラフにおいて、振幅値は、食材Fの焼き加減(レア、ミディアム、ウェルダン等)に関連する指標である。具体的には、振幅値は最高点に到達した後に下降していくところ、下降の度合いに応じて、食材Fの焼き加減がレア、ミディアム、ウェルダンに移行していく。このため、食材Fの焼き加減に対応する振幅値を予め設定しておくことで、当該振幅値を閾値として、測定した振幅値が閾値の振幅値よりも小さくなったか否かに応じて、ユーザが設定した焼き加減に到達したか否かを推定することができる。制御部14は、図示しない記憶部に、操作部12で設定可能な焼き加減のそれぞれに対応した振幅値(閾値)を記憶しておけばよい。
【0060】
測定した振幅値が設定された焼き加減に対応する振幅値よりも小さくないと判断した場合(S5でNO)、制御部14は、ステップS3を再度実行する。
【0061】
測定した振幅値が設定された焼き加減に対応する振幅値よりも小さいと判断した場合(S5でYES)、制御部14は、超音波発生装置6による超音波の発生を終了させる(S6)。
【0062】
制御部14は、ユーザに報知する(S7)。具体的には、操作部12に併設された表示画面に加熱調理が終了したことを示すメッセージを表示させる。
【0063】
上記フローによれば、振幅値の微分(変化率)が0よりも小さいと判断することで(S4でYES)、食材Fの硬さがある程度の硬さに到達したことを精度良く推定することができる。また食材Fがある程度硬くなった上で、測定した振幅値が設定された焼き加減に対応する振幅値よりも小さいと判断することで(S5でYES)、所望の焼き加減に到達したことを精度良く推定することができる。その後、超音波の発生を終了することで(S6)、牛肉等の食材Fを所望の硬さ、且つ所望の焼き加減に加熱調理することができる。
【0064】
図10は、加熱調理器2による加熱調理工程の処理の一例を示すフローチャートである。
図10に示すフローチャートは主に、豚肉又は鶏肉のように、所定の殺菌処理を必要とする調理メニューの選択に応じて実行される。
【0065】
図10のフローチャートでは、
図8のフローチャートのステップS1に代えて、ステップS11が設けられ、ステップS5とステップS6の間にステップS12、S13が追加されている。
【0066】
制御部14は、焼き加減と、殺菌温度・殺菌時間とを含む加熱条件の設定を受け付ける(S11)。具体的には、ユーザが操作部12を操作して鶏肉や豚肉等の調理メニューを選択する際に、食材Fの焼き加減に加えて、殺菌温度と殺菌時間を設定するための画面が表示される。設定可能な殺菌温度と殺菌時間は、食品衛生を意識し、温度と時間とを組み合わせて予め設定されている。例えば、90℃と3秒の組合せ、75℃と1分の組合せ、63℃と30分の組合せの中から1つの組合せを選択可能である。
【0067】
制御部14は、ステップS2~S5の加熱調理工程を実行した後、ステップS12、S13の殺菌工程を実行する。
【0068】
具体的には、制御部14は、超音波の強度を調整し、殺菌時間の計測を開始する(S12)。超音波の強度調整については、ステップS11で設定した殺菌温度(例えば90℃、75℃、63℃のいずれか)に対応して、発信回路16から超音波発生装置6に入力される電圧値が予め定められており、当該電圧値が印加された超音波発生装置6が、対応する強度の超音波を発生させる。電圧値によって殺菌温度の到達時間が異なるので、殺菌温度に到達したかどうかは超音波受信装置10によって検知した超音波振幅によって判断すればよい。これにより、食材Fを所定の殺菌温度以上に加熱することができる。制御部14は、図示しない記憶部に、操作部12で設定可能な殺菌温度のそれぞれに対応した、超音波発生装置6へ印加する電圧値を記憶しておけばよい。
【0069】
制御部14は、設定した殺菌時間に到達したか否かを判断する(S13)。具体的には、ステップS12で計測を開始した加熱時間が、ステップS11で設定された殺菌時間に到達したか否かを判断する。
【0070】
設定した殺菌時間に到達していないと判断した場合(S13でNO)、制御部14は、ステップS13を再度実行する。設定した殺菌時間に到達したと判断した場合(S13でYES)、制御部14は、ステップS6に移行して、超音波の発生を終了する。
【0071】
上記フローによれば、ステップS2~S5の超音波による加熱調理工程を実行した後に、ステップS12、S13の超音波による殺菌工程を実行することで、鶏肉や豚肉等の殺菌処理を必要とする食材Fを適切に殺菌して加熱調理することができる。また操作部12において、殺菌温度と殺菌時間を複数の選択肢の中から選択可能とすることで、ユーザが望む態様により食材Fを殺菌処理することができ、利便性を向上させることができる。
【0072】
上述したように、本実施形態の加熱調理器2は、超音波を発生させる超音波発生装置6と、超音波発生装置6が発生させた超音波を食材Fに伝搬させる調理容器4(超音波伝搬手段)と、制御部14と、を備え、制御部14は、調理容器4による超音波の伝搬によって、食材Fの内部を食材Fの表層に比べて高温になるように加熱する加熱調理工程(S2~S5)を実行する。
【0073】
このような構成によれば、超音波を用いて食材Fの内部を食材Fの表層に比べて高温になるように加熱することで、食材Fの表層から加熱していく他の加熱方法とは異なる態様で食材Fを加熱することができる。これにより、食材Fの内部をより確実に加熱し、食材Fの種類やユーザのニーズに応じて、食材Fを所望の態様で加熱することができる。
【0074】
また、食材Fの内部を加熱動作開始から加熱することができ、逆に食材Fの表面は遅れて加熱されるため、食材Fの表面が加熱できていれば、確実に食材Fの内部が加熱できており、食材内部の加熱不足を防止することができる。
【0075】
また、本実施形態の加熱調理器2は、食材Fの内部を通過した超音波を受信する超音波受信装置10をさらに備え、制御部14は、加熱調理工程において、超音波受信装置10が受信する超音波波形の振幅値の微分(変化率)に基づいて、超音波発生装置6による超音波の発生を制御する(S4、S6)。このような構成によれば、超音波波形の振幅の変化率と食材Fの「硬さ」には相関性があるため、振幅の変化率に基づいて超音波の発生を制御することで、食材Fの固さに応じた加熱制御が可能となる。
【0076】
また、本実施形態の加熱調理器2は、食材Fの内部を通過した超音波を受信する超音波受信装置10をさらに備え、制御部14は、加熱調理工程において、超音波受信装置10が受信する超音波波形の振幅値に基づいて、超音波発生装置6による超音波の発生を制御する(S5、S6)。このような構成によれば、超音波波形の振幅値と食材Fの焼き加減には相関性があるため、振幅値に基づいて超音波の発生を制御することで、所望の焼き加減を目指した加熱制御が可能となる。
【0077】
また、本実施形態の加熱調理器2は、ユーザが加熱条件を設定するための操作部12をさらに備え、加熱条件には、食材Fとしての食肉の焼き加減が含まれており、制御部14は、加熱調理工程において、操作部12で設定される焼き加減と、超音波波形の振幅値とに基づいて、超音波発生装置6による超音波の発生を制御する(S5、S6)。このような構成によれば、ユーザが設定した食肉の焼き加減を目指した加熱制御が可能となる。
【0078】
また、本実施形態の加熱調理器2では、制御部14は、加熱調理工程において超音波発生装置6による超音波の発生を制御する際に、超音波の発生/停止を制御する。このような構成によれば、簡単な方法で超音波の発生を制御することができる。なお、超音波発生装置6による超音波の発生を制御する際は、超音波の発生/停止を制御する場合に限らず、超音波の強度、すなわち、超音波発生装置6に入力する電力の大きさを調整・制御してもよい。言い換えれば、超音波発生装置6による超音波の発生を制御する際は、超音波の発生/停止、および/又は強度を制御してもよい。
【0079】
また、本実施形態の加熱調理器2では、制御部14は、加熱調理工程に加えて、超音波発生装置6が発生させる超音波を用いて、食材Fを殺菌するための殺菌工程(S12、S13)を実行する。このような構成によれば、豚肉や鶏肉等の殺菌を必要とする食材Fについては、加熱調理にあわせて殺菌処理をすることができる。
【0080】
また、本実施形態の加熱調理器2は、ユーザが加熱条件を設定するための操作部12をさらに備え、加熱条件には、殺菌工程における殺菌温度と殺菌時間が含まれる。このような構成によれば、殺菌温度と殺菌時間を選択可能とすることで、ユーザにとって所望の態様で殺菌処理を行うことができる。
【0081】
また、本実施形態の加熱調理器2では、制御部14は、超音波発生装置6に、500kHz~2MHzの超音波を発生させる。このような構成によれば、食肉等の食材Fの厚みに応じて食材Fの中心部を加熱するのに適した周波数の超音波を発生させることができる。
【0082】
また、本実施形態の加熱調理器2は、超音波以外の加熱手段を有しない。このような構成によれば、超音波による加熱調理に特化した加熱調理器2を実現することができる。なお、超音波以外の加熱手段を有しない場合に限らず、加熱調理器2がヒータ加熱やマイクロ波加熱等、超音波以外の加熱手段を有する場合であってもよい。この超音波以外の加熱手段を有する場合は、少なくとも、食材Fの加熱開始時は、超音波加熱だけで始めた方が良い。もちろん、超音波加熱を開始した後は、それ以外の加熱を併用しても良いし、超音波加熱を終了後にそれ以外の加熱を用いても良い。理由としては、超音波以外の加熱手段は、ほぼ食材Fの表面から加熱することになり、食材Fの表面を熱により大きく変形させやすい。その結果、食材Fの表面が大きく変形すると調理容器4から食材Fに超音波が伝わりにくくなり、超音波による加熱性能が、低下することになるためである。このような構成によれば、超音波を用いた加熱調理とそれ以外の手段による加熱調理とをそれぞれ実行することができ、食材Fの加熱調理を1つの装置で完結させることができる。
【0083】
また、本実施形態の加熱調理方法は、超音波発生装置6により、超音波を発生させる工程(S2~S6)と、調理容器4(超音波伝搬手段)により、超音波発生装置6が発生させた超音波を食材Fに伝搬させる工程(S2~S6)と、を含み、調理容器4による超音波の伝搬によって、食材Fの内部を食材Fの表層に比べて高温になるように加熱する加熱調理工程を実行する。
【0084】
このような方法によれば、食材Fの内部を食材Fの表層に比べて高温になるように加熱することで、食材Fの種類やユーザの嗜好に応じて食材Fを所望の態様で加熱することができる。
【0085】
(実施形態2)
図11、
図12を参照して、実施形態2の加熱調理器100の構成および動作について説明する。実施形態2においては、実施形態1と同一または同様の構成については同じ名称や符号を付して説明する。また、実施形態2では、実施形態1と重複する記載は省略する。
【0086】
図11は、実施形態2の加熱調理器100の概略図である。
図11では、操作部12や制御部14等の図示を省略している。
【0087】
実施形態2では、加熱調理器100が温度センサ102、104を備える点で、実施形態1と異なる。
【0088】
図11に示すように、加熱調理器100は、調理容器4と、第1温度センサ102と、第2温度センサ104と、超音波発生装置106と、受け台108とを有する。
【0089】
第1温度センサ102および第2温度センサ104はそれぞれ、調理容器4の調理空間5に収容された食材Fの温度を測定するためのセンサである。第1温度センサ102は、調理容器4の内側面に取り付けられており、例えば赤外線センサである。第2温度センサ104は、調理容器4の底面に取り付けられており、例えばサーミスタである。第1温度センサ102は食材Fの表面温度を直接的に測定し、第2温度センサ104は、食材Fの表面温度を調理容器4を介して間接的に測定する。
【0090】
図11に示すように、実施形態2の第2温度センサ104は、調理容器4の底面の中心部に取り付けられている。超音波発生装置106および受け台108は、第2温度センサ104を取り囲むように第2温度センサ104の周囲に設けられている。
【0091】
実施形態2の加熱調理器100には、
図1に示した超音波受信装置10は設けられていない。あるいは、後述する実施形態4のように、超音波発生装置106が超音波受信装置を兼ねる構成(超音波発生/受信装置)であってもよい。
【0092】
図11に示した加熱調理器100は、加熱調理工程を実行する際に、温度センサ102、104の測定結果を利用する。
【0093】
図12は、加熱調理器100による加熱調理工程の処理の一例を示すフローチャートである。
図12に示す各処理は、制御部14によって実行される。
図12に示すフローチャートは、
図10に示したフローチャートと同様に、豚肉や鶏肉等、殺菌処理を必要とする調理メニューの選択に応じて実行される。
【0094】
図12のフローチャートでは、
図10のフローチャートのS3~S5に代えて、ステップS23、S24が設けられている。
【0095】
具体的には、超音波発生の開始に応じて(S2)、制御部14は、食材Fの表面温度を検知する(S23)。より具体的には、
図11に示した第1温度センサ102又は第2温度センサ104を用いて、食材Fの表面温度を検知する。
【0096】
ステップS2の超音波の発生によって、食材Fは超音波加熱されて温度が上昇していく。その過程で、食材Fの表層に比べて食材Fの内部が高温となるように食材Fが加熱される。
【0097】
制御部14は、検知した表面温度が、設定された殺菌温度に到達したか否かを判断する(S24)。具体的には、ステップS23で検知した食材Fの表面温度が、ステップS11で設定された殺菌温度に到達したか否かを判断する。
【0098】
検知した表面温度が設定された殺菌温度に到達していないと判断した場合(S24でNO)、制御部14は、ステップS23を再度実行する。
【0099】
検知した表面温度が設定された殺菌温度に到達したと判断した場合(S24でYES)、制御部14は、ステップS12、S13の殺菌工程を実行し、その後、ステップS6、S7を実行して、
図12に示すフローチャートの処理を終了する。ステップS12では、超音波の強度調整は必ずしも必要ではなく、殺菌時間の計測を開始すればよい。
【0100】
前述したように、超音波を用いた加熱調理工程では食材Fの表層よりも内部が高温となるため、食材Fの表面温度が所定の殺菌温度に到達している場合(S24でYES)、食材Fの内部温度もそれ以上の温度であることをより確実に殺菌できていると推定することができる。温度センサ102、104で検知される食材Fの表面温度に基づいて超音波発生装置6による超音波の発生を制御することで、鶏肉や豚肉等の殺菌処理を必要とする食材Fの内部温度を確認するために食材Fに直接温度センサを差し込むことをせずに、より適切な殺菌処理を実行することができる。
【0101】
ステップS23、S24では、第1温度センサ102と第2温度センサ104のうちのいずれか一方あるいは両方の検知結果を利用してもよい。また、第1温度センサ102と第2温度センサ104の両方を有する構成に限らず、いずれか一方の温度センサのみを有する構成であってもよく、あるいは、他の場所に別の温度センサを設けてもよい。
【0102】
上述したように、実施形態2の加熱調理器100によれば、食材Fの表面温度を検知可能な温度センサ102、104をさらに備え、制御部14は、殺菌工程において、温度センサ102、104が検知する食材Fの表面温度と、操作部12で設定される殺菌温度および殺菌時間とに基づいて、超音波発生装置106による超音波の発生を制御する(S23、S24、S12、S13、S6)。
【0103】
このような構成によれば、食材Fの内部を所望の加熱温度以上に加熱して行う殺菌工程をより適切に実行することができる。もちろん、実施形態2の構成であれば、温度センサを使って食材Fの表面温度を検知できるので、殺菌目的以外に食材の下ごしらえ等の仕上がりを所定の状態に安定化させることにも応用できる。
【0104】
(実施形態3)
図13、
図14を参照して、実施形態3の加熱調理器200の構成および動作について説明する。実施形態3においては、実施形態1、2と同一または同様の構成については同じ名称や符号を付して説明する。また、実施形態3では、実施形態1、2と重複する記載は省略する。
【0105】
図13は、実施形態3の加熱調理器200の概略図であり、
図14は、加熱調理器200における超音波の発信/受信のタイミングを示すグラフを示す。
【0106】
実施形態3では、加熱用の超音波とセンシング用の超音波を使い分ける点で、実施形態1、2と異なる。
【0107】
図13に示すように、実施形態3の加熱調理器200は、実施形態1の超音波受信装置10に代えて、超音波発生/受信装置202を備えるとともに、超音波発生/受信装置202に接続された発信回路204および受信回路206を備える。
【0108】
超音波発生/受信装置202は、超音波を発生させる機能と、超音波を受信する機能とを兼ねた装置である。超音波発生/受信装置202は例えば、圧電素子で構成される。圧電素子の場合、発信回路204によって電圧が印加されることで超音波を発生させることができ、逆に、超音波等の振動を受けることで、当該振動に応じた電気信号(電圧値)を受信回路206に出力する。これにより、超音波の発生と受信の両方を行う機能を発揮する。
【0109】
制御部14は、超音波発生装置6に電圧を印加するための発信回路16の動作と、超音波発生/受信装置202に接続された発信回路204の動作を制御することで、加熱用の超音波の発信と、センシング用の超音波の発信/受信のタイミングを異ならせている。
【0110】
具体的には、
図14に示すように、制御部14は、超音波発生装置6に加熱用の超音波を発信させた後、超音波発生装置6による超音波の発信を停止している間に、超音波発生/受信装置202にセンシング用の超音波を発信させる。その後、超音波発生/受信装置202により、センシング用の超音波の反射波を受信する。その後、超音波発生装置6による加熱用の超音波の発信を再開する。このように、超音波発生装置6による超音波の発生と、超音波発生/受信装置202による超音波の発信/反射波の受信を周期的に繰り返すことで、食材Fに超音波を付与して食材Fを加熱しながら、反射波の特性に基づいて超音波の発生制御(例えばON/OFF)を実行することができる。
【0111】
特に実施形態3では、超音波発生装置6で発生させる超音波を用いて食材Fを加熱しつつ、超音波発生/受信装置202で発生させる超音波を用いて反射波の特性を取得(センシング)して、振幅値や振幅値の微分を算出する。このため、センシングの際に加熱用の超音波による影響を受けにくくなり、より正確にセンシングすることができる。一方、実施形態1の加熱調理器2の構成では発信回路204を省略できるため、コストを低減することができる。
【0112】
(実施形態4)
図15、
図16を参照して、実施形態4の加熱調理器300の構成および動作について説明する。実施形態4においては、実施形態1~3と同一または同様の構成については同じ名称や符号を付して説明する。また、実施形態4では、実施形態1~3と重複する記載は省略する。
【0113】
図15は、実施形態4の加熱調理器300の概略図であり、
図16は、加熱調理器300における超音波の発信/受信のタイミングを示すグラフを示す。
【0114】
実施形態4では、食材Fの加熱制御と、センシング制御の両方を、超音波発生装置と超音波受信装置を兼ねた1つの装置で行う点で、実施形態1~3と異なる。
【0115】
図15に示すように、実施形態4の加熱調理器300は、実施形態1の超音波発生装置6と超音波受信装置10に代えて、超音波発生/受信装置302を備えるとともに、超音波発生/受信装置302に接続された発信回路304および受信回路306を備える。
【0116】
超音波発生/受信装置302は、実施形態3の超音波発生/受信装置202と同様に、超音波を発生させる機能と受信する機能とを兼ねた装置であり、例えば圧電素子で構成される。
【0117】
図16に示すように、制御部14は、超音波発生/受信装置302に超音波を発信させた後、超音波の発信を停止している間に、同じ超音波発生/受信装置302により当該超音波の反射波を受信する。その後、超音波発生装置6による超音波の発信を再開する。このように、超音波発生装置/受信装置302による超音波の発生と反射波の受信を繰り返すことで、食材Fに超音波を付与して食材Fを加熱しながら、反射波の特性に基づいて超音波の発生制御(例えばON/OFF)を実行することができる。
【0118】
特に実施形態4では、加熱制御とセンシング制御を同一素子で実現できるため、センサ用の素子を少なくすることができ、コストを低減することができる。
【0119】
本発明の第1態様によれば、超音波を発生させる超音波発生装置と、前記超音波発生装置が発生させた超音波を食材に伝搬させる超音波伝搬手段と、制御部と、を備え、前記制御部は、前記超音波伝搬手段による超音波の伝搬によって、前記食材の内部を前記食材の表層に比べて高温になるように加熱する加熱調理工程を実行する、加熱調理器を提供する。
【0120】
本発明の第2態様によれば、前記食材の内部を通過した超音波を受信する超音波受信装置をさらに備え、前記制御部は、前記加熱調理工程において、前記超音波受信装置が受信する超音波波形の振幅の変化率に基づいて、前記超音波発生装置による超音波の発生を制御する、第1態様に記載の加熱調理器を提供する。
【0121】
本発明の第3態様によれば、前記食材の内部を通過した超音波を受信する超音波受信装置をさらに備え、前記制御部は、前記加熱調理工程において、前記超音波受信装置が受信する超音波波形の振幅値に基づいて、前記超音波発生装置による超音波の発生を制御する、第1態様又は第2態様に記載の加熱調理器を提供する。
【0122】
本発明の第4態様によれば、ユーザが加熱条件を設定するための操作部をさらに備え、前記加熱条件には、前記食材としての食肉の焼き加減が含まれており、前記制御部は、前記加熱調理工程において、前記操作部で設定される前記焼き加減と、前記超音波波形の前記振幅値とに基づいて、前記超音波発生装置による超音波の発生を制御する、第3態様に記載の加熱調理器を提供する。
【0123】
本発明の第5態様によれば、前記制御部は、前記加熱調理工程において前記超音波発生装置による超音波の発生を制御する際に、超音波の発生/停止、および/又は強度を制御する、第2態様から第4態様のいずれか1つに記載の加熱調理器を提供する。
【0124】
本発明の第6態様によれば、前記制御部は、前記加熱調理工程に加えて、前記超音波発生装置が発生させる超音波を用いて、前記食材を殺菌するための殺菌工程を実行する、第1態様から第5態様のいずれか1つに記載の加熱調理器を提供する。
【0125】
本発明の第7態様によれば、ユーザが加熱条件を設定するための操作部をさらに備え、前記加熱条件には、前記殺菌工程における殺菌温度と殺菌時間が含まれる、第1態様から第6態様のいずれか1つに記載の加熱調理器を提供する。
【0126】
本発明の第8態様によれば、前記食材の表面温度を検知可能な温度センサをさらに備え、前記制御部は、前記殺菌工程において、前記温度センサが検知する前記食材の表面温度と、前記操作部で設定される前記殺菌温度および前記殺菌時間とに基づいて、前記超音波発生装置による超音波の発生を制御する、第7態様に記載の加熱調理器を提供する。
【0127】
本発明の第9態様によれば、前記制御部は、前記超音波発生装置に、500kHz~2MHzの超音波を発生させる、第1態様から第8態様のいずれか1つに記載の加熱調理器を提供する。
【0128】
本発明の第10態様によれば、超音波以外の加熱手段をさらに有する、第1態様から第9態様のいずれか1つに記載の加熱調理器を提供する。
【0129】
本発明の第11態様によれば、超音波以外の加熱手段を有しない、第1態様から第9態様のいずれか1つに記載の加熱調理器を提供する。
【0130】
本発明の第12態様によれば、超音波発生装置により、超音波を発生させる工程と、超音波伝搬手段により、前記超音波発生装置が発生させた超音波を食材に伝搬させる工程と、を含み、前記超音波伝搬手段による超音波の伝搬によって、前記食材の内部を前記食材の表層に比べて高温になるように加熱する加熱調理工程を実行する、加熱調理方法を提供する。
【0131】
以上、上述の実施形態を挙げて本開示の発明を説明したが、本開示の発明は上述の実施形態に限定されない。例えば、実施形態1~4では、受け台8を設ける場合について説明したが、このような場合に限らず、受け台8を省略してもよい。この場合、調理容器4の底面に、超音波発生装置6や超音波受信装置10、あるいは超音波発生/受信装置を直接的に取り付けてもよい。なお、受け台8を設けることで、超音波発生源である超音波発生装置と食材Fとの間隔を容易に調整することができ、超音波の周波数に応じた適切な間隔に調整しやすくなる。
【0132】
また実施形態では、超音波発生装置6として圧電素子を用いる場合について説明したが、このような場合に限らない。超音波(20kHz以上の音波)を発生させることができる構成であれば、任意の構成を用いてもよい。圧電素子のように特定の周波数の超音波のみを発生できるものに限らず、複数段階あるいは無段階で周波数を可変とすることができる構成を用いてもよい。その場合、何らかの指標・センシング結果に基づいて、超音波の周波数を調理中に調整するように制御してもよい。
【0133】
本開示は、添付図面を参照しながら好ましい実施形態に関連して充分に記載されているが、この技術の熟練した人々にとっては種々の変形や修正は明白である。そのような変形や修正は、添付した特許請求の範囲による発明の範囲から外れない限りにおいて、その中に含まれると理解されるべきである。また、各実施形態における要素の組合せや順序の変化は、本開示の範囲および思想を逸脱することなく実現し得るものである。
【0134】
前記実施形態および様々な変形例のうち、任意の実施形態および変形例を適宜組み合わせることにより、それぞれの有する効果を奏するようにすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0135】
本開示は、食肉等の食材を加熱調理する加熱調理器であれば適用可能である。
【符号の説明】
【0136】
2 加熱調理器
4 調理容器(超音波伝搬手段)
4A 内底面
5 調理空間
6 超音波発生装置
8 受け台(超音波伝搬手段)
10 超音波受信装置
12 操作部
14 制御部
F 食材