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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023170089
(43)【公開日】2023-12-01
(54)【発明の名称】治具、及び玉軸受の製造方法
(51)【国際特許分類】
   F16C 43/06 20060101AFI20231124BHJP
   F16C 19/06 20060101ALI20231124BHJP
   F16C 33/41 20060101ALI20231124BHJP
【FI】
F16C43/06
F16C19/06
F16C33/41
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022081561
(22)【出願日】2022-05-18
(71)【出願人】
【識別番号】000004204
【氏名又は名称】日本精工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉川 武文
【テーマコード(参考)】
3J117
3J701
【Fターム(参考)】
3J117AA10
3J117HA03
3J701AA02
3J701AA32
3J701AA42
3J701AA52
3J701AA62
3J701BA25
3J701BA44
3J701DA14
3J701EA31
3J701EA32
3J701EA36
3J701EA37
3J701EA76
3J701FA46
(57)【要約】
【課題】保持器性能を損なうことなく、組み込み時に保持器に発生する応力を低減可能な、治具、及び玉軸受の製造方法を提供する。
【解決手段】冠型樹脂保持器を玉軸受の内外輪間に配された複数の玉に対して挿入するための治具は、治具は、冠型樹脂保持器の主部の軸方向他方側面を押圧することで、冠型樹脂保持器を複数の玉に対して挿入するための押込治具であり、治具は、複数のポケットに対応する位置に軸方向一方側に突出する複数の凸部を有する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
冠型樹脂保持器を玉軸受の内外輪間に配された複数の玉に対して挿入するための治具であって、
前記冠型樹脂保持器は、
円環状の主部と、
前記主部の軸方向一方側面から周方向に所定間隔で軸方向一方側に突出する複数の柱部と、
隣り合う前記柱部の間に形成され、前記複数の玉を保持可能な複数のポケットと、
を備え、
前記柱部は、先端部が互いに間隔をあけて配置される一対の爪部と、前記一対の爪部の根元部を接続する接続部と、を有し、
前記ポケットを構成する隣り合う二つの前記爪部の先端部同士の間には、前記玉の直径より短い幅を有し、かつ、前記玉に対して挿入するための、入口部が設けられ、
前記治具は、前記冠型樹脂保持器の前記主部の軸方向他方側面を押圧することで、前記冠型樹脂保持器を前記複数の玉に対して挿入するための押込治具であり、
前記治具は、前記複数のポケットに対応する位置に軸方向一方側に突出する複数の凸部を有する
ことを特徴とする治具。
【請求項2】
それぞれの前記凸部は、前記ポケットを構成する隣り合う二つの前記爪部の前記根元部の間の領域内に形成される
請求項1に記載の治具。
【請求項3】
それぞれの前記凸部の軸方向寸法aは、前記ポケットの中心位置における前記主部の軸方向寸法bの1/10以上である
請求項1に記載の治具。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の治具によって、前記冠型樹脂保持器の前記主部の軸方向他方側面を押圧することで、前記冠型樹脂保持器を前記複数の玉に対して挿入する
ことを特徴とする玉軸受の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、治具、及び玉軸受の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、冠型樹脂保持器においては、軸受から保持器が容易に脱落しないようにするため、爪部同士の間のポケット入口径は挿入されるボールの直径に対し、狭く設計されている。このため、保持器が軸受に組み込まれる際、ボールが保持器の爪部同士の間を周方向に広げながら保持器は挿入されていく。ここで、保持器を軸受に押し込む押込治具は、押し込み面が平面状であるため、保持器底面が押込治具の押し込み面と接触する。したがって、保持器が変形できる部分は爪部だけとなり、保持器の爪部根元には過大な応力が発生し、保持器の寿命を損なう可能性があった。
【0003】
その対策として、保持器の寿命に影響の与えない範囲までポケット入口径を広げる方法が考えられる。しかし、この方法では、保持器に利用されている材料の伸びが小さくなるほど、入口径を広く設定する必要がある。また、入口径を広く取りすぎてしまうと、軸方向の振動を受けた際、保持器がボールから抜けやすくなる恐れが懸念される。
【0004】
また、特許文献1には、内輪と、外輪と、内外輪間に転動自在に配される複数の玉と、合成樹脂の射出成形により形成され、玉を軸方向一側が開放された複数のポケットに収容して周方向に等間隔で保持する冠形保持器と、を備えた玉軸受が開示されている。そして、冠形保持器の各ポケットのうちの一部のポケットだけを、軸方向の一側端に玉に沿って湾曲する爪を有するものとして、これらの爪を有するポケットを周方向で互いに隣り合わないように配している。
【0005】
すなわち、冠形保持器の一部のポケットを爪有り、他のポケットを爪無しとし、爪有りポケットが周方向で互いに隣り合わないようにすることにより、保持器の組立時に、爪の周辺部を爪無しポケット側へ変形しやすくして、爪の変形を小さくすることを図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006-170276号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1の技術のように爪の先端を切除した(爪無し)場合、保持器を玉に組み込みやすくはなるが、回転時に大きく振れ回りやすくなったり、軸受から抜けやすくなる等、性能面で問題が生じる可能性がある。
【0008】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、保持器性能を損なうことなく、組み込み時に保持器に発生する応力を低減可能な、治具、及び玉軸受の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の上記目的は、下記の構成により達成される。
【0010】
(1) 冠型樹脂保持器を玉軸受の内外輪間に配された複数の玉に対して挿入するための治具であって、
前記冠型樹脂保持器は、
円環状の主部と、
前記主部の軸方向一方側面から周方向に所定間隔で軸方向一方側に突出する複数の柱部と、
隣り合う前記柱部の間に形成され、前記複数の玉を保持可能な複数のポケットと、
を備え、
前記柱部は、先端部が互いに間隔をあけて配置される一対の爪部と、前記一対の爪部の根元部を接続する接続部と、を有し、
前記ポケットを構成する隣り合う二つの前記爪部の先端部同士の間には、前記玉の直径より短い幅を有し、かつ、前記玉に対して挿入するための、入口部が設けられ、
前記治具は、前記冠型樹脂保持器の前記主部の軸方向他方側面を押圧することで、前記冠型樹脂保持器を前記複数の玉に対して挿入するための押込治具であり、
前記治具は、前記複数のポケットに対応する位置に 軸方向一方側に突出する複数の凸部を有する
ことを特徴とする治具。
(2) それぞれの前記凸部は、前記ポケットを構成する隣り合う二つの前記爪部の前記根元部の間の領域内に形成される
(1)に記載の治具。
(3) それぞれの前記凸部の軸方向寸法aは、前記ポケットの中心位置における前記主部の軸方向寸法bの1/10以上である
(1)又は(2)に記載の治具。
(4) (1)~(3)のいずれかに記載の治具によって、前記冠型樹脂保持器の前記主部の軸方向他方側面を押圧することで、前記冠型樹脂保持器を前記複数の玉に対して挿入する
ことを特徴とする玉軸受の製造方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明の治具及び玉軸受の製造方法によれば、保持器性能を損なうことなく、組み込み時に保持器に発生する応力を低減可能である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、第一実施形態に係る玉軸受を一部切り欠いて示す斜視図である。
図2図2は、第一実施形態に係る治具及び保持器の斜視図である。
図3図3は、図2のA部分を径方向外側から見た拡大図である。
図4図4(a)~(d)は、玉軸受の組立方法を説明するための図である。
図5図5は、図4(c)を別視点から示す図である。
図6図6は、冠型保持器を玉に挿入する前の状態を示す図である。
図7図7は、冠型保持器を玉に挿入する時の状態を示す図である。
図8図8は、第二実施形態に係る冠型保持器及び治具の一部を径方向外側から見た図である。
図9図9は、第三実施形態に係る冠型保持器及び治具の一部を径方向外側から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一実施形態に係る治具及び玉軸受の製造方法について、図面を用いて説明する。
【0014】
(第一実施形態)
図1は、第一実施形態に係る玉軸受を一部切り欠いて示す斜視図である。図2は、第一実施形態に係る治具及び保持器の斜視図である。図3は、図2のA部分を径方向外側から見た拡大図である。本実施形態の冠型樹脂保持器(以下、「冠型保持器」、又は単に「保持器」とも称す)10は、図1に示すように、内輪7と、外輪9と、内輪7及び外輪9間に配された複数の玉6と、を備える玉軸受11に適用され得る。
【0015】
図1図3に示すように、冠型保持器10は、略円環状の主部20と、主部20の上面20b(軸方向一方側面。図3中の破線で示された面。)から周方向に所定間隔で軸方向一方側(図2及び図3中、上側)に突出する複数の柱部30と、隣り合う柱部30,30の間に形成され、玉6を保持可能な複数のポケット40と、を備える。
【0016】
主部20の上面20bには、周方向に所定間隔で、複数の球面形状の球状凹面21が形成されている。この球状凹面21は、主部20の径方向全幅にわたって形成されており、ポケット40を構成する。なお、本発明のポケット40の形状は球面形状に限定されず、任意の形状が適用でき、例えば円筒形状としてもよい。
【0017】
柱部30は、一対の爪部31,31と、一対の爪部31,31の根元部31a,31aを接続する接続部33と、を有する。
【0018】
一対の爪部31,31の先端部は、互いに周方向に間隔をあけて配置されている。また、ポケット40を構成する隣り合う二つの爪部31,31の先端部同士の間には、玉6の直径よりも短い幅を有し、かつ、玉6を挿入するための、入口部35が設けられる。
【0019】
爪部31は、ポケット40を構成する球面形状の周方向第一面31bと、周方向第一面31bとは反対側の周方向第二面31cと、を有する。
【0020】
一対の爪部31,31の周方向第二面31c,31cは、それぞれ湾曲形状である。周方向第二面31cの根本部(爪部31の根元部31a)は、接続部33の上面33aと接続する。この接続部33の上面33aは、一対の周方向第二面31c,31cと接続部33の上面33aとによって形成される略U字形状の底面に相当する。
【0021】
隣り合う二つの爪部31,31の周方向第一面31b,31bと、主部20の球状凹面21と、はポケット40を構成する。これら、二つの周方向第一面31b,31bおよび球状凹面21は、互いに滑らかに接続し、ポケット40の球状凹面を構成する。ポケット40の球状凹面の曲率半径は、玉6の転動面の曲率半径よりも大きく設定される。
【0022】
このような冠型保持器10は、治具1によって、玉軸受の内外輪間に配された複数の玉6に対して挿入される。治具1は、冠型保持器10の主部20の底面(軸方向他方側面。図2及び図3中の下側の面)20aを押圧することで、冠型保持器10を複数の玉6に対して挿入するための押込治具である。
【0023】
治具1は、円盤状の基部2と、基部2の上面2aから軸方向一方側に突出する複数の凸部3と、を有する。
【0024】
基部2は、中心に貫通孔2bを有する環状である。また、基部2の内径は、冠型保持器10の内径よりも小さく、基部2の外径は、冠型保持器10の外径よりも大きい。したがって、図2に示すように、治具1の上側(軸方向一方側)に、冠型保持器10を同心に配置したとき、基部2の内周面2c及び外周面2dは冠型保持器10よりも径方向内側及び径方向外側に延在する。なお、基部2の形状は、図示の例に限られるものではなく、適宜変更しても構わない。例えば、基部2は、貫通孔2bを有さない中実であってもよい。
【0025】
複数の凸部3は、冠型保持器10の複数のポケット40に対応する位置に形成される。より詳細には、凸部3は、ポケット40の中心線Oと交わる位置に形成されている。すなわち、複数の凸部3は、複数のポケット40と同一の周方向間隔で設けられている。凸部3は、基部2の内周面2cから外周面2dにわたって形成されている。図3に示すように、凸部3を径方向から見た形状は、略逆U字形状であるが、凸部3の形状は特に限定されない。
【0026】
このような治具1を用いて、冠型保持器10を玉6に対して挿入し、玉軸受11を組み立てる方法について、以下説明する。図4(a)~(d)は、玉軸受11の組立方法を説明するための図である。図5は、図4(c)を別視点から示す図である。
【0027】
玉軸受11を組み立てる際には、先ず、図4(a)に示すように、内輪7と外輪9との間に複数の玉6を周方向に均等配置する。次に、図4(b)に示すように、保持器10を軸方向に移動させ、内輪7と外輪9との間において、複数の玉6と保持器10の複数のポケット40との位相が合うように、保持器10を複数の玉6の上に置く。そして、図4(c)及び図5に示すように、治具1によって、冠型保持器10の主部20の底面20aを軸方向に押圧することで、冠型保持器10を複数の玉6に対して挿入することで、図4(d)に示すように玉軸受11が組み立てられる。
【0028】
図6は、冠型保持器10を玉6に挿入する前の状態を示す図である。図7は、冠型保持器10を玉6に挿入する時の状態を示す図である。なお、図8においては、冠型保持器10に発生する応力が濃淡によって表されている。
【0029】
図6及び図7に示すように、治具1の複数の凸部3によって、冠型保持器10の主部20の底面20aを押圧することで、冠型保持器10を複数の玉6に対して挿入する。ここで、複数の凸部3は、ポケット40に対応する位置に配置されているので、図7に矢印で示したように、一対の柱部30,30が凸部3を支点に互いに離れる方向に広がり、ひいては二つの爪部31,31の間の入口部35の幅が広がる。したがって、玉6が二つの爪部31,31の間を通る際に、爪部31に生じる応力が小さくすることができる。したがって、冠型保持器10が伸びの少ない材料からなる場合であっても、保持器の寿命に影響を与えることなく軸受に組み込むことができる。なお、本実施形態においては、特許文献1のように、保持器の爪部の形状自体を変更しているわけではないので、性能を損なうことはない。
【0030】
ここで、治具1の複数の凸部3の軸方向寸法a(図3参照)が大きいほど、治具1による押圧時に二つの爪部31,31の間の入口部35の幅が広がり、応力低減効果が大きい。しかしながら、凸部3の軸方向寸法aが小さすぎると、冠型保持器10が変形した際に治具1の基部2の上面2aに接触してしまい、応力低減効果が損なわれてしまうおそれがある。したがって、凸部3の軸方向寸法aは、ポケット40の中心位置における主部20の軸方向寸法bの1/10以上であることが好ましい(a≧b/10)。
【0031】
また、凸部3は、ポケット40を構成する二つの爪部31,31の根元部31a,31aの間の周方向領域d(図3参照)内に形成されることが好ましい。すなわち、凸部3の周方向形成領域c(図3参照)は、周方向領域d内であることが好ましい。これは、冠型保持器10が軸受に挿入される際、玉6によって、爪部31と接続部33の上面33aとが交差する部分(爪部31の根元部31a)を支点に、爪部31が変形するためである.
【0032】
以上のような治具1で冠型保持器10を押圧して軸受に組み込んだ場合、図7に示すように、爪部31のみならず冠型保持器10全体が変形し、爪部31に発生する応力を分散することができる。
【0033】
(第二実施形態)
図8は、第二実施形態に係る冠型保持器10及び治具1の一部を径方向外側から見た図である。図8に示すように、本実施形態においては、治具1の凸部3の構成が第一実施形態と異なる。その他の構成は、第一実施形態と同様であるので、同様の符号を付すことで説明を省略又は簡略化する。
【0034】
本実施形態の凸部3は、周方向中央(ポケット40の中心線O)に向かうにしたがって軸方向一方側(図8中、上側)に傾斜する一対の傾斜面3a,3aと、一対の傾斜面3a,3aが接続する先端部3bと、を含む。
【0035】
このような構成の凸部3を有する治具1によっても、第一実施形態と同様、冠型保持器10を複数の玉6に対して挿入する際に、爪部31に生じる応力が小さくすることができる。
【0036】
また、第一実施形態と同様に、凸部3の軸方向寸法aは、ポケット40の中心位置における主部20の軸方向寸法bの1/10以上であることが好ましい(a≧b/10)。
【0037】
また、第一実施形態と同様に、凸部3は、ポケット40を構成する二つの爪部31,31の根元部31a,31aの間の周方向領域d(図3参照)内に形成されることが好ましい。すなわち、凸部3の周方向形成領域c(図3参照)は、周方向領域d内であることが好ましい。本実施形態によれば、治具1の先端部3bを介して保持器10を押圧するので、保持器10に対して押圧力を作用させるポイントの調整が容易となる。
【0038】
(第三実施形態)
図9は、第三実施形態に係る冠型保持器10及び治具1の一部を径方向外側から見た図である。図9に示すように、本実施形態においては、治具1の凸部3の構成が第一実施形態と異なる。その他の構成は、第一実施形態と同様であるので、同様の符号を付すことで説明を省略又は簡略化する。
【0039】
本実施形態の凸部3は、基部2の上面から軸方向一方側に突出する複数(図示の例では一対)の突起3c,3cを含む。一対の突起3c,3cは、ポケット40の中心線Oを挟んで周方向に離れて形成されている。突起3cの径方向から見た形状は、略半円形状であるが、突起3cの形状は特に限定されない。また、突起3cの個数も特に限定されない。
【0040】
このような構成の凸部3(一対の突起3c,3c)を有する治具1によっても、第一実施形態と同様、冠型保持器10を複数の玉6に対して挿入する際に、爪部31に生じる応力が小さくすることができる。また、ポケット40の中心線O上の部分に課題な応力が発生することを抑制できる。また、突起3c,3cの数が増えるにしたがい、押圧力を分散させることができ、治具1による押し込み痕が冠型保持器10に形成されることを抑制できる。
【0041】
また、第一実施形態と同様に、凸部3(一対の突起3c,3c)の軸方向寸法aは、ポケット40の中心位置における主部20の軸方向寸法bの1/10以上であることが好ましい(a≧b/10)。
【0042】
また、第一実施形態と同様に、凸部3は、ポケット40を構成する二つの爪部31,31の根元部31a,31aの間の周方向領域d(図3参照)内に形成されることが好ましい。すなわち、一対の突起3c,3cを含んだ凸部3の周方向形成領域c(図3参照)は、周方向領域d内であることが好ましい。
【0043】
なお、本発明の冠型保持器10の材料は、特に限定されないが、例えば熱可塑性樹脂又は繊維強化熱可塑性樹脂からなる。熱可塑性樹脂としては、ポリアミド6(PA6)、ポリアミド6,6(PA66)、ポリアミド46(PA46)、ポリアミド9T(PA9T)、ポリアミド10T(PA10T)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリアセタール(POM)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンテレフタレート(PET)などが例示される。また、強化繊維としては、ガラス繊維、炭素繊維、アラミド繊維、セルロースナノファイバー等が例示される。保持器10の用途に応じて、強化繊維を5~50wt%添加した樹脂組成物としてもよい。保持器10の製造方法としては、金型を利用して射出成形する方法や、3Dプリンターで製造する方法が例示される。
【符号の説明】
【0044】
1 治具
2 基部
2a 上面
2b 貫通孔
2c 内周面
2d 外周面
3 凸部
3a 傾斜面
3b 先端部
3c 突起
6 玉
7 内輪
9 外輪
10 冠型樹脂保持器
11 玉軸受
20 主部
20a 底面(軸方向他方側面)
20b 上面(軸方向一方側面)
21 球状凹面
30 柱部
31 爪部
31a 根元部
31b 周方向第一面
31c 周方向第二面
33 接続部
33a 上面
35 入口部
40 ポケット
a 軸方向寸法
b 軸方向寸法
c 周方向形成領域
d 周方向領域
O 中心線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9