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  • 特開-直流開閉器および接続箱 図1
  • 特開-直流開閉器および接続箱 図2
  • 特開-直流開閉器および接続箱 図3
  • 特開-直流開閉器および接続箱 図4
  • 特開-直流開閉器および接続箱 図5
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023170090
(43)【公開日】2023-12-01
(54)【発明の名称】直流開閉器および接続箱
(51)【国際特許分類】
   H02S 40/34 20140101AFI20231124BHJP
【FI】
H02S40/34
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022081562
(22)【出願日】2022-05-18
(71)【出願人】
【識別番号】000124591
【氏名又は名称】河村電器産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】弁理士法人信栄事務所
(72)【発明者】
【氏名】加藤 彰訓
【テーマコード(参考)】
5F151
5F251
【Fターム(参考)】
5F151BA11
5F151JA08
5F151JA27
5F151JA30
5F251BA11
5F251JA08
5F251JA27
5F251JA30
(57)【要約】
【課題】小型化を図ることができる直流開閉器および接続箱を提供する。
【解決手段】直流開閉器2’は、太陽電池モジュールとパワーコンディショナとの間の直流電路を開閉する直流開閉部と、太陽電池モジュールへの逆流を防止する逆流防止部と、を備える。直流開閉部と逆流防止部は一体的に構成されている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
太陽電池モジュールとパワーコンディショナとの間の直流電路を開閉する直流開閉部と、
前記太陽電池モジュールへの逆流を防止する逆流防止部と、
を備え、
前記直流開閉部と前記逆流防止部は一体的に構成されていることを特徴とする、直流開閉器。
【請求項2】
前記逆流防止部は、定常損失が小さい半導体素子から構成されることを特徴とする、請求項1に記載の直流開閉器。
【請求項3】
前記定常損失は、所定値以下であることを特徴とする、請求項2に記載の直流開閉器。
【請求項4】
前記半導体素子は、ダイオードから構成されることを特徴とする、請求項2に記載の直流開閉器。
【請求項5】
前記半導体素子は、トランジスタから構成されることを特徴とする、請求項2に記載の直流開閉器。
【請求項6】
前記半導体素子は、SiCまたはGaNを含むことを特徴とする、請求項2に記載の直流開閉器。
【請求項7】
前記直流開閉部は、接点開放時にアークレスであることを特徴とする、請求項1に記載の直流開閉器。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか一項に記載の直流開閉器を備える接続箱。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、直流開閉器および接続箱に関する。
【背景技術】
【0002】
太陽光発電システムでは、太陽電池モジュールからの電力が接続箱で集電されて、パワーコンディショナへ送られる。ここで使用される接続箱には、発電電力を1つに集約する集電回路に加えて、太陽電池モジュールをパワーコンディショナ等の回路から切り離すための直流開閉器、太陽電池に電流が逆流するのを防止する逆流防止ダイオード等が組み込まれている(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014-239110号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1の太陽光発電システムでは、直流開閉器と逆流防止ダイオードとが別個に設けられていることから、装置の小型化の余地があった。
【0005】
本開示は、小型化を図ることができる直流開閉器および接続箱を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本開示の直流開閉器は、
太陽電池モジュールとパワーコンディショナとの間の直流電路を開閉する直流開閉部と、
前記太陽電池モジュールへの逆流を防止する逆流防止部と、
を備え、
前記直流開閉部と前記逆流防止部は一体的に構成されていることを特徴とする。
【0007】
上記目的を達成するために、本開示の接続箱は、前記直流開閉器を備える。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、直流開閉器の小型化を図ることが可能な直流開閉器および接続箱を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】従来の接続箱の内部構成図である。
図2】本開示の実施形態に係る接続箱の内部構成図である。
図3】本開示の第一実施形態に係る接続箱の回路図である。
図4】本開示の第二実施形態に係る接続箱の回路図である。
図5】本開示の第三実施形態に係る接続箱の回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示に係る直流開閉器および接続箱の実施形態について、図面を参照して説明する。
【0011】
本実施形態に係る接続箱の内部構成を説明するために、比較対象として、従来の接続箱の内部構成図を図1に示す。
図1に示すように、接続箱1は、直流開閉器2と、逆流防止部3と、出力端子台4と、放熱板5と、筐体6と、を備える。逆流防止部3は、逆流防止ダイオード3Dを有する。
【0012】
直流開閉器2は、太陽電池モジュールとパワーコンディショナ(PCS)間の直流電路を開閉する。逆流防止ダイオード3Dは、誤接続等の場合に生じる電流の逆流を防止する。放熱板5は、逆流防止ダイオード3Dで発生する熱を直流開閉器2の外部に放熱する。出力端子台4は、直流開閉器2からの電力を集約するとともに、集約した電力をパワーコンディショナへ出力する。筐体6は、直流開閉器2と逆流防止ダイオード3Dと出力端子台4を収納する。
【0013】
逆流防止ダイオード3Dは、順電力損失等の定常損失が大きい場合、発熱量が大きくなり、周囲温度を大幅に上昇させる。そのため、直流開閉器2等の周辺部品の温度も大幅に上昇し、周辺部品の故障の原因となりえる。定常損失が大きいダイオードとして、例えば、Si製ダイオードがあげられる。
【0014】
従来の接続箱1では、逆流防止ダイオード3Dの背面に放熱板5を接触させて逆流防止ダイオード3Dの放熱効率を向上させていた。さらに、筐体6内で逆流防止ダイオード3Dと直流開閉器2を互いに離れた位置に配置していた。そのため、筐体6のサイズが大きくなり、接続箱1の小型化を図るのが困難という課題があった。
【0015】
図2は、本開示の実施形態に係る接続箱の内部構成図である。
図2に示すように、接続箱1は、直流開閉器2’と、出力端子台4と、放熱板5と、筐体6と、を備える。なお、図2の例示では、6個の直流開閉器2’が接続されている構成を示しているが、直流開閉器2’の個数はこれに限定されない。
【0016】
直流開閉器2’は、定常損失が小さい逆流防止用の半導体素子と、一体的に構成されている(例えば、同一基板上に実装されている)。定常損失が小さい逆流防止用の半導体素子として、例えば、SiC製やGaN製のダイオードや、SiC製やGaN製のトランジスタがあげられる。定常損失が小さい逆流防止用の半導体素子は、発熱量が小さく、周囲温度Tjの大幅な上昇を抑制できる。
【0017】
具体的には、逆流防止用の半導体素子の定常損失である順方向損失Pfと周囲温度Tjの上昇温度ΔTjは、以下の数式で表される。
(数1)
Pf=If×Vf
(数2)
ΔTj=Rth×Pf
ここで、Ifは順方向電流を、Vfは順方向電圧を、Rthは熱抵抗を表す。上記数式より、定常損失が小さい逆流防止用の半導体素子は、順方向損失Pfが小さいため、周囲温度Tjの上昇温度ΔTjも小さくなることが分かる。
【0018】
したがって、逆流防止用の半導体素子が直流開閉器2’と一体的に構成されていても、直流開閉器2’の温度上昇を抑制し、発熱による直流開閉器2’の故障リスクを低減できる。
【0019】
筐体6は、図1に示す従来の接続箱の筐体6と比較して、逆流防止ダイオードと直流開閉器2’が一体的に構成されているため、サイズが小さくなっている。したがって、直流開閉器2’の小型化を図ることができる。
【0020】
出力端子台4と放熱板5の構成は、図1に示す従来の接続箱の出力端子台4と放熱板5の構成と同様のため説明を省略する。
【0021】
図3は、本開示の第一実施形態に係る接続箱の回路図である。
図3に示すように、接続箱1は、複数の太陽電池モジュール20から構成される複数の太陽電池ユニット20Uと、パワーコンディショナ30の間に配置され、太陽電池ユニット20Uの数に対応した直流開閉器2’A~2’Nを備える。
直流開閉器2’A~2’Nは、それぞれ、対応する太陽電池ユニット20Uとパワーコンディショナ30間の直流電路を開閉する。直流開閉器2’A~2’Nは、それぞれ、直流開閉部SWA~SWNと、逆流防止部3A~3Nを有する。直流開閉部SWA~SWNは、それぞれ、正極開閉スイッチSW1A~SW1Nと、負極開閉スイッチSW2A~SW2Nを有する。逆流防止部3A~3Nは、それぞれ、逆流防止ダイオード3DA~3DNを有する。
【0022】
正極開閉スイッチSW1A~SW1Nは、太陽電池ユニット20Uの正極側の直流電路を開閉するスイッチであり、負極開閉スイッチSW2A~SW2Nは、太陽電池ユニット20Uの負極側の直流電路を開閉するスイッチである。正極開閉スイッチSW1A~SW1Nと負極開閉スイッチSW2A~SW2NがONされることで、複数の太陽電池モジュール20からパワーコンディショナ30に電力供給が行われる。このとき、逆流防止ダイオード3DA~3DNにおいて、パワーコンディショナ30から太陽電池ユニット20Uの負極側への方向はダイオードの順方向であるため電流が流れるが、太陽電池ユニット20Uの負極側からパワーコンディショナ30への方向はダイオードの逆方向であるため電流がほとんど流れない。したがって、逆流防止ダイオード3DA~3DNは太陽電池ユニット20Uの負極側からパワーコンディショナ30へ電流が逆流するのを防止する。
【0023】
図4は、本開示の第二実施形態に係る接続箱の回路図である。
図4に示すように、直流開閉器2’A~2’Nは、それぞれ、直流開閉部SWA~SWNと、逆流防止部4A~4Nを有する。直流開閉部SWA~SWNは、それぞれ、正極開閉スイッチSW1A~SW1Nと、負極開閉スイッチSW2A~SW2Nを有する。逆流防止部4A~4Nは、それぞれ、逆流防止トランジスタ4TA~4TNを有する。図4に示す例示では、逆流防止トランジスタ4TA~4TNは、N型のMOSFETであり、逆流防止ダイオードとしての機能を有する。
【0024】
正極開閉スイッチSW1A~SW1Nは、太陽電池ユニット20Uの正極側の直流電路を開閉するスイッチであり、負極開閉スイッチSW2A~SW2Nは、太陽電池ユニット20Uの負極側の直流電路を開閉するスイッチである。正極開閉スイッチSW1A~SW1Nと負極開閉スイッチSW2A~SW2NがONされることで、複数の太陽電池モジュール20からパワーコンディショナ30に電力供給が行われる。このとき、逆流防止トランジスタ4TA~4TNにおいて、ソースS-ドレインD間がPN接合であることから、パワーコンディショナ30から太陽電池ユニット20Uの負極側への方向に電流が流れる。しかし、ゲートGがグランドに接地していることからゲートG電圧がかかっておらず、逆流防止トランジスタ4TA~4TNがONされていないため、太陽電池ユニット20Uの負極側からパワーコンディショナ30への方向に電流がほとんど流れない。したがって、逆流防止トランジスタ4TA~4TNは太陽電池ユニット20Uの負極側からパワーコンディショナ30へ電流が逆流するのを防止する。
【0025】
図5は、本開示の第三実施形態に係る接続箱の回路図である。
図5に示すように、直流開閉器2’A~2’Nは、それぞれ、直流開閉部SWA~SWNと、逆流防止部4A~4Nを有する。直流開閉部SWA~SWNは、それぞれ、正極開閉スイッチSW1A~SW1Nと、負極開閉アークレススイッチSW’2A~SW’2Nを有する。逆流防止部4A~4Nは、それぞれ、逆流防止トランジスタ4TA~4TNを有する。
【0026】
正極開閉スイッチSW1A~SW1Nと逆流防止部の構成は、図4に示す本開示の第二実施形態に係る接続箱の正極開閉スイッチSW1A~SW1Nと逆流防止部の構成と同様のため、説明を省略する。
【0027】
負極開閉アークレススイッチSW’2A~SW’2Nは、それぞれ、スイッチがONからOFFに移行する途中の接点解離状態で所定の電流が流れるようにすることで、接点間の電位差によるアークの発生を防止する。
【0028】
したがって、負極開閉アークレススイッチSW’2A~SW’2Nは接点開放時のアークによる発火や発熱を抑止し、スイッチの接点の長寿命化を図ることができる。
【0029】
以上、本実施形態について説明をしたが、本実施形態に係る技術的範囲が本実施形態の説明によって限定的に解釈されるべきではないのは言うまでもない。本実施形態は単なる一例であって、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内において、様々な実施形態の変更が可能であることが当業者によって理解されるところである。本実施形態に係る技術的範囲は特許請求の範囲に記載された発明の範囲及びその均等の範囲に基づいて定められるべきである。
【符号の説明】
【0030】
1:接続箱
2、2’、2’A~2’N:直流開閉器
3:逆流防止部
3D、3DA~3DN:逆流防止ダイオード
4:出力端子台
5:放熱板
6:筐体
20:太陽電池モジュール
20U:太陽電池ユニット
30:パワーコンディショナ
SWA~SWN:直流開閉部
SW1A~SW1N:正極開閉スイッチ
SW2A~SW2N:負極開閉スイッチ
3DA~3DN:逆流防止ダイオード
4TA~4TN:逆流防止トランジスタ
SW’2A~SW’2N:負極開閉アークレススイッチ
図1
図2
図3
図4
図5