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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023170113
(43)【公開日】2023-12-01
(54)【発明の名称】テープ巻き装置
(51)【国際特許分類】
   B65B 13/18 20060101AFI20231124BHJP
   B65H 35/07 20060101ALI20231124BHJP
   B65B 27/00 20060101ALI20231124BHJP
【FI】
B65B13/18 A
B65H35/07 Z
B65B27/00 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022081598
(22)【出願日】2022-05-18
(71)【出願人】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】高野 陽一
(72)【発明者】
【氏名】末松 宏貴
(72)【発明者】
【氏名】山崎 克哉
【テーマコード(参考)】
3E052
3F062
【Fターム(参考)】
3E052AA41
3E052BA10
3E052CA20
3E052CB04
3E052CB05
3E052CB07
3E052FA12
3E052HA07
3E052JA01
3E052KA20
3E052LA03
3E052LA09
3E052LA12
3F062AB02
3F062BA08
3F062BB10
3F062BD01
3F062BD02
3F062BD08
3F062BD10
3F062BE01
3F062BF12
3F062BG04
3F062CA10
3F062FA25
(57)【要約】
【課題】コンパクトな構成で、テープの巻き付け精度向上が可能なテープ巻き装置を提供する。
【解決手段】テープ巻き装置5は、結束対象物Wの外周の少なくとも一部を覆い、内部空間15に配置された前記結束対象物の周りを回転する回転ドラム10と、回転ドラムを回転可能に保持するフレーム20と、を備える。フレーム20は、粘着テープ1が巻回されたテープリール100を支持するテープリール支持部21と、粘着テープ1を回転ドラム10に供給するテープ送り出し機構22と、を有する。回転ドラム10は、結束対象物Wを内部空間15へ導入する第1開口部11と、結束対象物Wに巻き付けられる粘着テープ1を、テープ送り出し機構22から内部空間15へ導入する第2開口部12と、第2開口部12を介して導入された粘着テープ1の先端を保持する樹脂シート片72と、を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
結束対象物の外周の少なくとも一部を覆い、内部空間に配置された前記結束対象物の周りを回転する回転ドラムと、
前記回転ドラムを回転可能に保持する保持部と、を備え、
前記保持部は、
粘着テープが巻回されたテープリールを支持するテープリール支持部と、
前記粘着テープを前記回転ドラムに供給する供給部と、を有し、
前記回転ドラムは、
前記結束対象物を前記内部空間へ導入する第1開口部と、
前記結束対象物に巻き付けられる前記粘着テープを、前記供給部から前記内部空間へ導入する第2開口部と、
前記第2開口部を介して導入された前記粘着テープの先端を保持するテープ端保持部と、を有する、
ことを特徴とするテープ巻き装置。
【請求項2】
前記テープ端保持部は、前記内部空間へ導入された前記結束対象物を保持する、
ことを特徴とする請求項1に記載のテープ巻き装置。
【請求項3】
前記回転ドラムは、前記粘着テープを前記結束対象物に押し付ける弾性体を有する、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のテープ巻き装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、結束対象物の外周に粘着テープを巻き付けることのできるテープ巻き装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等に搭載されるワイヤーハーネスを製造する工程の中に、複数の電線を粘着テープで巻いて束ねる工程がある。ここでは、電線の束にコルゲートチューブを被せて一緒にテープ巻きすることもあるので、以下、テープ巻きの対象を結束対象物という。
【0003】
この種のテープ巻き工程を行う場合、従来では、粘着テープを巻回したテープリール(テープロール)ごと結束対象物の周りで回転させることにより、テープリールから粘着テープを剥がしながら結束対象物の外周に巻き付けることが行われていた。
【0004】
しかし、テープリールごと回転させる場合、回転体が大きくなってしまうため、狭い作業スペースでテープ巻きを行うことが難しい。そこで、テープリールは、回転体(以下、回転ドラムという)とは別に装置本体に固定的に設けておき、その固定的に設けたテープリールから粘着テープを送り出して、送り出した粘着テープを、回転ドラムを回転させて結束対象物に巻き付ける装置が開発されている(例えば、特許文献1参照)。なお、「粘着テープを送り出す」とは、テープリールに巻回された粘着テープを、その先端から順次連続して繰り出すことをいう。
【0005】
この特許文献1に記載のテープ巻き装置は、テープリールの保持部と、回転ドラムと、テープ送り出し装置とを備えている。回転ドラムは、その内部空間に配置された結束対象物の周りを自身が回転することで、結束対象物の外周に粘着テープを巻き付けるものである。また、テープ送り出し機構は、回転ドラムの内部空間に向けて、固定的に設けたテープリールから粘着テープを順次送り出すものである。回転ドラムには、テープ送り出し機構により送り出した粘着テープと結束対象物とを、回転ドラムの内部空間に導入するための開口部が設けられている。
【0006】
一般的にこの種の用途に用いられる粘着テープは、片面に粘着材を有する片面粘着テープであって、粘着面を内面側に向けた状態で結束対象物の外周に貼り付けながら巻いていく。片面粘着テープの粘着面と反対側の面は非粘着面とされており、必要に応じて剥離性が付与されている。
【0007】
このテープ巻き装置によれば、回転ドラムの内部空間において粘着テープの先端が結束対象物の外周に貼り付いた状態で、回転ドラムを回転させることにより、結束対象物の外周に粘着テープを貼り付けながら巻き付けることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2008-168925号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、特許文献1に記載のテープ巻き装置は、粘着テープの先端を回転ドラム内に導入する際、粘着テープの先端にエアを吹き付けたり、粘着テープの先端を吸着したりすることで、粘着テープの先端位置を安定させている。
【0010】
しかしながら、上記テープ巻き装置においては、粘着テープの吸着やエアの吹き付けのための経路(空気流路)が必要となり装置サイズが大型化してしまう。また、粘着テープを吸着するための動力源(エア機器等)が必要となることから、機器の増加とコスト増加を抑えることができない。
【0011】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、コンパクトな構成で、テープの巻き付け精度向上が可能なテープ巻き装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前述した目的を達成するために、本発明に係るテープ巻き装置は、下記を特徴としている。
【0013】
結束対象物の外周の少なくとも一部を覆い、内部空間に配置された前記結束対象物の周りを回転する回転ドラムと、
前記回転ドラムを回転可能に保持する保持部と、を備え、
前記保持部は、
粘着テープが巻回されたテープリールを支持するテープリール支持部と、
前記粘着テープを前記回転ドラムに供給する供給部と、を有し、
前記回転ドラムは、
前記結束対象物を前記内部空間へ導入する第1開口部と、
前記結束対象物に巻き付けられる前記粘着テープを、前記供給部から前記内部空間へ導入する第2開口部と、
前記第2開口部を介して導入された前記粘着テープの先端を保持するテープ端保持部と、を有する、
テープ巻き装置。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、コンパクトな構成で、テープの巻き付け精度向上が可能なテープ巻き装置を提供できる。
【0015】
以上、本発明について簡潔に説明した。更に、以下に説明される発明を実施するための形態(以下、「実施形態」という。)を添付の図面を参照して通読することにより、本発明の詳細は更に明確化されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、本発明の実施形態に係るテープ巻き装置の概略側面図である。
図2図2は、テープ巻き装置の要部構成を示す概略斜視図である。
図3図3は、テープ巻き装置における図1の次の段階の動作を示す説明図である。
図4図4は、テープ巻き装置における図3の次の段階の動作を示す説明図である。
図5図5は、テープ巻き装置における図4の次の段階の動作を示す説明図である。
図6図6は、テープ巻き装置における図5の次の段階の動作を示す説明図である。
図7図7は、テープ巻き装置における図6の次の段階の動作を示す説明図である。
図8図8は、テープ巻き装置における図7の次の段階の動作を示す説明図である。
図9図9は、テープ巻き装置における図8の次の段階の動作を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明に関する具体的な実施形態について、各図を参照しながら以下に説明する。
【0018】
図1は、本発明の実施形態に係るテープ巻き装置の概略側面図、図2は、テープ巻き装置の要部構成を示す概略斜視図である。
【0019】
図1および図2に示すように、このテープ巻き装置5は、粘着テープ1を巻回したテープリール100が、結束対象物W(ここでは、図示するような複数の電線の束)の周りを回転せず、回転ドラム10だけが回転して、結束対象物Wに粘着テープ1を巻き付ける形式のものである。つまり、テープリール100は、回転体である回転ドラム10上には装備されておらず、回転ドラム10とは別に固定的にフレーム20に設けられている。
【0020】
<粘着テープ1>
ここで使用する粘着テープ1は、片面にのみ粘着材が設けられた一般的な片面粘着テープであり、粘着面1aを内側、非粘着面1bを外側にして、ロール状に巻回されて、テープリール100の形態でテープ巻き作業に供される。テープリール100においては、下層のテープの非粘着面1b(この非粘着面に剥離層を設けることもある)にその上層のテープの粘着面1aが当接しており、先端から粘着テープ1を容易に繰り出すことができるようになっている。
【0021】
<テープ巻き装置の主要素>
本実施形態のテープ巻き装置5は、回転ドラム10、テープリール支持部21、テープ送り出し機構22(供給部)、テープカッター30などを備えており、これらの要素は、装置本体であるフレーム20(保持部)に装備されている。そして、必要に応じてこのフレーム20が産業用ロボットのアームに取り付けられることにより、治具板などに支持された結束対象物Wに対して自動で移動操作される。
【0022】
回転ドラム10は、その内部空間15に導入される結束対象物Wの軸中心線を回転中心Oとして回転するようにフレーム20に支持されている。回転ドラム10の内部空間15は、回転中心Oを含む範囲で設けられている。テープリール100は、回転ドラム10とは別の位置にあるフレーム20上のテープリール支持部21に回転可能に支持されている。また、テープ送り出し機構22は、回転ドラム10とテープリール100との間に配置されている。
【0023】
回転ドラム10は、内部空間15に配置された結束対象物Wの周りを回転することで、結束対象物Wの外周に粘着テープ1を巻き付けるものである。テープ送り出し機構22は、テープリール100に巻回された粘着テープ1を回転ドラム10に向けて送り出すものである。テープ送り出し機構22には、回転ドラム10の直前に配したローラセット22aも含まれている。図1において、粘着テープ1の送り出し方向を矢印Aで表す。ローラセット22aの近傍には、粘着テープ1を切断するためのテープカッター30(テープ切断手段)が設けられている。テープカッター30は、粘着テープ1に触れない退避位置から粘着テープ1に触れるカット位置まで突出することにより、張力をもって張った状態の粘着テープ1を切断するようになっている。
【0024】
<回転ドラム10>
回転ドラム10は、円筒状のもので、周壁部に結束対象物Wを内部空間15へ導入する第1開口部11と、テープ送り出し機構22により送り出された粘着テープ1を内部空間15へ導入する第2開口部12と、を備えている。第1開口部11と第2開口部12は、回転中心Oを挟んで反対側にそれぞれ設けられている。
【0025】
第1開口部11は、長手方向に延伸する結束対象物Wを導入するための開口であり、回転ドラム10の軸線方向の両端まで開放している。一方、第2開口部12は、一定幅の粘着テープ1を導入するものであり、回転ドラム10の軸線方向の少なくとも一方の端部が何らかの部材(後述のギヤ等)で塞がれている。
【0026】
回転ドラム10は、外周に配置された複数個のローラ17によって、実体のある回転軸を持たずに、回転自在にフレーム20に支持されている。回転ドラム10には、回転ドラム10を回転させるためのリング状のギヤ(図示せず)が一体的に設けられている。このギヤは、回転ドラム10を回転駆動するための駆動機構の一要素である。このギヤは、連続したリング体ではなく、回転ドラム10の第1開口部11に対応する位置に、結束対象物Wの回転ドラム10へ導入を阻害しないための切欠部を有している。回転ドラム10は、このギヤに回転力を与えることにより、特定の一方向に回転駆動される。図1において、回転ドラム10の回転方向を矢印Bで表す。
【0027】
<粘着テープ1の粘着面1aの向き>
粘着テープ1は、回転ドラム10の第2開口部12への進入時点において、回転ドラム10の矢印B方向の回転による第2開口部12の移動方向(図1では右方向)に粘着面1aを向けた姿勢(右向きに粘着面1aを向けた姿勢)で回転ドラム10に送り込まれる。したがって、回転ドラム10の矢印B方向への回転に伴い、粘着テープ1は、その非粘着面1bを、第2開口部12の回転方向後側の側面12a(図2参照)に接触させると共に、回転ドラム10の外周面に接触させることになる。
【0028】
つまり、回転ドラム10の回転に伴って、粘着テープ1が回転ドラム10の外周に沿って回転ドラム10側に引き込まれる際に、粘着テープ1の粘着面1aは、回転ドラム10の径方向外側を向いた状態となる。回転ドラム10の外周には、回転ドラム10を回転支持する複数のローラ17が接しているが、これらのローラ17には、粘着テープ1の粘着面1aに接触しても剥離しやすい構造が採用されている。そのため、回転ドラム10の回転を阻害することもないし、回転ドラム10の外周に沿って引き込まれた粘着テープ1に特段の影響を与えることもない。
【0029】
<保持ローラ50>
また、回転ドラム10のテープ導入用の第2開口部12には、第2開口部12から内部空間15に導入された粘着テープ1を保持する保持ローラ50が設けられている。この保持ローラ50は、回転ドラム10の第2開口部12の回転方向(矢印B方向)前側の側面12b(図2参照。図1中右側の側面)に、第2開口部12の回転方向後側の側面12a(図2参照。図1中左側の側面)に向けて進退可能に設けられている。そして、保持ローラ50は、第2開口部12の回転方向後側の側面12aに向けて前進した状態で、粘着テープ1を第2開口部12の回転方向後側の側面12aに押し付けて保持できるようになっている。
【0030】
この保持ローラ50は、一方向にのみ回転し、反対方向に回転阻止されたワンウェイローラからなる。回転を許容された方向は、第2開口部12に導入された粘着テープ1を、更に内部空間15に向けて送り出す方向である。すなわち、保持ローラ50は、粘着テープ1の結束対象物Wの方向への前進を可能とし且つテープ送り出し機構22の方向へ後退を不可とするものとして設けられている。図1において、矢印C1方向が回転を許容された方向(○印)、矢印C2方向が回転を規制された方向(×印)である。
【0031】
この保持ローラ50は、図示略のエアシリンダ等の駆動機構によって、進退動作(粘着テープ1を押し付ける位置への前進と退避位置への後退)を制御される。また、保持ローラ50は、押し付け位置に前進したとき、エアシリンダ等の付勢手段55によって、粘着テープ1に対し付勢力を与えることができるようになっている。
【0032】
<側面テープガイド60>
また、回転ドラム10の第2開口部12には、導入される粘着テープ1の幅方向における両側を覆い、粘着テープ1の幅方向の位置を規制する側面テープガイド60が設けられている。この側面テープガイド60は、粘着テープ1の幅方向の両側に位置する一対の規制壁面を備えた枠状のものであり、回転ドラム10の第2開口部12に後付けで設けることができるようになっている。側面テープガイド60は、回転ドラム10の回転時に、粘着テープ1が回転ドラム10の回転軸方向における両端面とフレーム20との隙間など、テープ巻き装置5内の隙間に入り込むことを抑制できる。
【0033】
<クッション部材70>
回転ドラム10の第2開口部12から内部空間15の中央領域にかけての範囲には、スポンジやウレタン等の弾性材料により形成されたクッション部材70(弾性体)が設けられている。クッション部材70は、回転ドラム10の内部空間15に導入された結束対象物Wに対して、第2開口部12から導入される粘着テープ1の粘着面1aを、弾性的に押し付けるためのガイド部材である。
【0034】
このクッション部材70は、図2に示すように、第2開口部12の回転方向後側の側面12aから反対側の第1開口部11の回転方向前側の側面11aにまで延びており、回転ドラム10に接合されている。クッション部材70は、回転ドラム10の回転中心Oに、傾斜したガイド面70aを距離を置いて向けた形状を有している。傾斜したガイド面70aは、第2開口部12の入口側から奥側に行くに従い回転ドラム10の回転中心Oに近づくように傾斜しており、第1開口部11側にまで延びた部分では半円弧状に湾曲している。
【0035】
このクッション部材70があることにより、回転ドラム10の内部空間15に導入された結束対象物Wに対して、粘着テープ1の粘着面1aを、適正な位置関係をもって押し当てることができる。すなわち、クッション部材70が粘着テープ1を結束対象物Wに押し付けることにより、テープ巻き装置5は、結束対象物のW位置を回転ドラム10の回転中心Oに近づけた状態に保持しながら、結束対象物Wに粘着テープ1を巻きつけることができる。よって、このテープ巻き装置5によれば、結束対象物Wの撓みや振れによる位置ずれを防止して、粘着テープ1の巻き付け精度を一層向上できる。なお、クッション部材70は、粘着テープ1との間で静電気を発生しにくい材料で構成することが好ましい。また、クッション部材70の形状や軟らかさは、結束対象物Wの断面形状や断面サイズ等に応じて選定するのが好ましい。例えば、結束対象物Wとしての電線の束は、外周に凸凹が多く現れるので、弾力性の高い材料の方が、粘着テープ1を、電線に対して広い接触面積で密着させることができるが、細い電線の場合は、ある程度硬めの材料を選ぶと好適である。
【0036】
<樹脂シート片72>
回転ドラム10の第1開口部11側には、第2開口部12を介して内部空間15に導入された粘着テープ1の先端を保持する、可撓性の樹脂シート片72(テープ端保持部)が設けられている。樹脂シート片72は、内部空間15に導入された粘着テープ1の先端を位置規制すると共に、第1開口部11から導入された結束対象物Wを脱落しないように位置規制する。この樹脂シート片72は、クッション部材70の半円弧状部分の第1開口部11の入口側に基端部が固定されたバネ片として設けられており、自由先端72aが、第1開口部11の反対側の側面(回転ドラム10の回転方向後側の側面11b)に近接するよう斜めに延びている。
【0037】
この樹脂シート片72は、第1開口部11から結束対象物Wを導入する際には、自由先端72aが導入方向に沿って斜めに延びていることにより、容易な導入を可能にする。しかし、内部空間15から結束対象物Wが出ようとする際には、自由先端72aの斜めに延びる方向が、脱出方向と逆方向になるので、樹脂シート片72は、結束対象物Wが容易に脱出するのを阻止する働きをなす。なお、粘着テープ1の巻き付けを終わってから結束対象物Wを回転ドラム10外に導出する際には、より強い力で導出が行われるので、樹脂シート片72は、弾性変形して結束対象物Wの導出を妨げることがない。この樹脂シート片72は、回転ドラム10の内部空間15への結束対象物Wの導入しやすさ、回転ドラム10の回転中における結束対象物Wの脱出のしにくさ、テープ巻きを終わってからの結束対象物Wの回転ドラム10からの導出しやすさ、などを考慮して、長さや角度や材質などを決めるのがよい。
【0038】
<動作と作用>
次に動作と作用について説明する。
図1図3図9は、順番にテープ巻き時の動作を示す説明図である。
【0039】
まず、図1中の矢印Aで示すように、回転ドラム10の内部に結束対象物Wを導入していない状態で、テープリール100から粘着テープ1を送り出す。このとき、回転ドラム10は、第2開口部12を、送り出された粘着テープ1の先端を受け入れることのできる方向に向けた初期位置にあり回転停止している。送り出した粘着テープ1の先端は、第2開口部12から回転ドラム10の内部空間15に導入されて、図3に示すように、クッション部材70のガイド面70a(図2)にガイドされながら、樹脂シート片72に突き当たって、あるいはその近傍に到達して、テープ送り停止により止まる。粘着テープ1の導入の際には、側面テープガイド60が粘着テープ1の幅方向の位置規制を行う。
【0040】
次にその段階で、図4に示すように、回転ドラム10に組み込んだ保持ローラ50が矢印D1のように前進し、粘着テープ1を、第2開口部12の壁に押し付ける。この保持ローラ50の押し付けにより、粘着テープ1は、送り出し方向には前進可能であるが、その反対方向には後退不可として、回転ドラム10内に保持される。
【0041】
次に、図5に示すように、テープ巻き装置5自体を矢印E1方向に移動することにより、回転ドラム10の第1開口部11から回転ドラム10の内部空間15に結束対象物Wを導き入れる。結束対象物Wのテープ巻き装置5に対する相対的な動きを矢印e1で示す。この際、樹脂シート片72は柔軟に弾性変形しながら、結束対象物Wの回転ドラム10への導入を許容する。このように結束対象物Wを回転ドラム10の内部空間15に導入することによって、粘着テープ1の先端の粘着面1aが結束対象物Wの外周に貼り付く。結束対象物Wに対するテープ巻き装置5の動かし方によって、粘着テープ1の粘着面1aの貼り付きを促進させることができる。
【0042】
次に、図6に示すように、回転ドラム10を矢印B方向に回転させる。同時に、テープ送り出し機構22により、テープリール100に巻回された粘着テープ1を回転ドラム10に向けて送り出す。回転ドラム10が、その回転中心O(図1)付近に配置された結束対象物Wの周りを回転すると、結束対象物Wの外周に次々に粘着テープ1が巻き付いていく。同時に、テープ送り出し機構22によって送り出された粘着テープ1が、連続して回転ドラム10の外周に沿って引き込まれていく。
【0043】
この際、保持ローラ50が、回転ドラム10内に導入された粘着テープ1を第2開口部12で前進可能且つ後退不可の状態で確実に保持しているので、回転ドラム10内に導入された粘着テープ1が回転ドラム10の外周側に引き戻されることはない。
【0044】
所定量(テープ巻き必要量)だけ回転ドラム10が回転し且つ粘着テープ1の送り出しが完了した段階で、テープカッター30が矢印Fのように突出して、粘着テープ1がその位置でカットされる。これにより、必要な長さの粘着テープ1が回転ドラム10に供給されたことになる。
【0045】
図7に示すように、更に回転ドラム10が回転することにより、回転ドラム10の外周に沿って引き込まれた粘着テープ1が、側面テープガイド60に幅方向位置規制されながら、回転ドラム10の内部に引き込まれ、結束対象物Wの外周に巻き付いていく。
【0046】
カットされた粘着テープ1の全部が結束対象物Wの外周に巻き付いて、図8に示すように、回転ドラム10が初期位置に戻ると、次に図9に示すように、テープ巻き装置5自体が移動して(図では上昇移動して)、テープ巻きが完了した結束対象物Wが、回転ドラム10外に導出される。このときのテープ巻き装置5の動きを矢印E1、結束対象物Wのテープ巻き装置5に対する相対的な動きを矢印e2で示す。また、その動きに前後して、保持ローラ50が矢印D2で示すように退避位置に後退し、次の巻き付け作業の準備状態に移行する。
【0047】
なお、以上のすべての動作は、図示しないサーボ機構や制御機構の働きや、テープ巻き装置を装備したロボットの働きによって、タイミングや速度などをコントロールされながら行われる。
【0048】
以上説明したように、実施形態のテープ巻き装置5によれば、保持ローラ50が、回転ドラム10に導入された粘着テープ1を引き戻しできないように保持しながら、回転ドラム10と共に結束対象物Wの周りを回転する。したがって、粘着テープ1の先端が結束対象物Wの外周に強く貼り付いていない場合であっても、回転ドラム10の回転に伴って粘着テープ1が送り出されないというミスを無くすことができる。その結果、結束対象物Wに粘着テープ1が巻き付かない現象(テープ巻き不良)やテープ詰まりを防止することができる。特に、結束対象である電線の本数が少ない場合は、粘着テープ1の先端が電線に確実に貼り付いていない現象が発生しやすいが、そのような場合であっても、テープの送りミスを防止し、テープの巻き付け不良やテープ詰まりを抑制することができる。
【0049】
また、保持ローラ50は、回転ドラム10の第2開口部12に対し進退可能とされ、回転ドラム10の回転時のみ第2開口部12内に突出するように設けられているので、一連の粘着テープ1の挙動の邪魔になることもない。また、保持ローラ50は、粘着テープ1に対して付勢力を発揮するように装備されているので、粘着テープ1に対する押し付け力を適正に保つことができる。
【0050】
また、本実施形態のテープ巻き装置5では、回転ドラム10の内部にクッション部材70を設けているので、粘着テープ1の粘着面1aの結束対象物Wへの貼り付きを促進することができる。また、回転ドラム10の第1開口部11側に樹脂シート片72を設けているので、粘着テープ1の先端が樹脂シート片72に保持されて、結束対象物Wが粘着テープ1の粘着面1aと接触することなく、回転ドラム10内の内部空間15に導入可能となる。よって、結束対象物Wへの粘着テープ巻き付け精度を向上できる。さらに、樹脂シート片72が結束対象物Wを保持するので、いったん回転ドラム10内に収容した結束対象物Wが、回転ドラム10の回転中に外に脱落するのを防ぐことができる。
【0051】
また、本実施形態のテープ巻き装置5では、回転ドラム10の第2開口部12に側面テープガイド60を設けているので、回転ドラム10の内部に送り出した粘着テープ1が、幅方向の位置ずれにより装置の隙間などに入り込むのを防ぐことができる。また、結束対象物Wが撓んでいたり、装置に対する姿勢が傾いていたりしても、それに引きずられて粘着テープ1の位置がずれることがないようにすることができる。したがって、巻き付けるに従って適正な位置から粘着テープ1がずれていく巻きずれを防止することができる。
【0052】
また、本実施形態のテープ巻き装置5は、テープリール100を回転ドラム10と一緒に回転させる形式のものではないので、回転部分の小型化が可能である。そのため、ワイヤーハーネスの分岐部等の狭小部分のテープ巻き作業にも有用で、自動化の範囲の拡大に寄与することができる。
【0053】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数、配置箇所、等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
【0054】
ここで、上述した本発明の実施形態に係るテープ巻き装置の特徴をそれぞれ以下[1]~[3]に簡潔に纏めて列記する。
[1] 結束対象物(W)の外周の少なくとも一部を覆い、内部空間(15)に配置された前記結束対象物の周りを回転する回転ドラム(10)と、
前記回転ドラムを回転可能に保持する保持部(フレーム20)と、を備え、
前記保持部(フレーム20)は、
粘着テープ(1)が巻回されたテープリール(100)を支持するテープリール支持部(21)と、
前記粘着テープを前記回転ドラムに供給する供給部(テープ送り出し機構22)と、を有し、
前記回転ドラム(10)は、
前記結束対象物を前記内部空間へ導入する第1開口部(11)と、
前記結束対象物に巻き付けられる前記粘着テープを、前記供給部から前記内部空間へ導入する第2開口部(12)と、
前記第2開口部を介して導入された前記粘着テープの先端を保持するテープ端保持部(樹脂シート片72)と、を有する、
ことを特徴とするテープ巻き装置(5)。
【0055】
上記[1]に記載のテープ巻き装置5によれば、樹脂シート片72が粘着テープ1の先端を保持することにより、結束対象物Wが粘着テープ1の粘着面1aと接触することなく、回転ドラム10の内部空間15に導入可能となる。すなわち、結束対象物Wを内部空間51に導入する際に、意図せず粘着テープ1の先端が結束対象物Wに貼り付くことを防止できる。その結果、テープ巻き装置5は、粘着テープ1の先端が樹脂シート片72に保持されて安定した状態で、結束対象物Wへの粘着テープ1の巻き付けを開始することができる。よって、テープ巻き装置5は、結束対象物Wへの粘着テープ1の巻き付け精度を向上できる。また、テープ巻き装置5は、回転ドラム10に樹脂シート片72を設けることで粘着テープ1の先端位置を安定させており、例えばエア吹き付けや吸引のための機器や経路等が不要であるため、コンパクトな装置構成で、テープの巻き付け精度向上が可能となる。
【0056】
[2] 前記テープ端保持部(樹脂シート片72)は、前記内部空間へ導入された前記結束対象物を保持する、
上記[1]に記載のテープ巻き装置(5)。
【0057】
上記[2]に記載のテープ巻き装置5によれば、樹脂シート片72が結束対象物Wを保持するので、いったん回転ドラム10内に収容した結束対象物Wが、回転ドラム10の回転中に外に脱落するのを防ぐことができる。
【0058】
[3] 前記回転ドラムは、前記粘着テープを前記結束対象物に押し付ける弾性体(クッション部材70)を有する、
上記[1]または[2]に記載のテープ巻き装置(5)。
【0059】
上記[3]に記載のテープ巻き装置5によれば、クッション部材70が、回転ドラム10の内部空間15に導入された結束対象物Wに対して、粘着テープ1の粘着面1aを、適正な位置関係をもって押し当てることができる。すなわち、クッション部材70が粘着テープ1を結束対象物Wに押し付けることにより、テープ巻き装置5は、結束対象物のW位置を回転ドラム10の回転中心Oに近づけた状態に保持しながら、結束対象物Wに粘着テープ1を巻きつけることができる。よって、このテープ巻き装置5によれば、結束対象物Wの撓みや振れによる位置ずれを防止して、粘着テープ1の巻き付け精度を一層向上できる。
【符号の説明】
【0060】
1 粘着テープ
1a 粘着面
1b 非粘着面
5 テープ巻き装置
10 回転ドラム
11 第1開口部
12 第2開口部
15 内部空間
20 フレーム
21 テープリール支持部
22 テープ送り出し機構
30 テープカッター
50 保持ローラ
55 付勢手段
60 側面テープガイド
70 クッション部材
72 樹脂シート片
100 テープリール
W 結束対象物
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9