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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023170135
(43)【公開日】2023-12-01
(54)【発明の名称】電力変換装置および受配電設備
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/06 20060101AFI20231124BHJP
   H01F 27/12 20060101ALI20231124BHJP
   H01F 30/12 20060101ALI20231124BHJP
   H01F 27/24 20060101ALI20231124BHJP
【FI】
H02M7/06 T
H01F27/12
H01F30/12 A
H01F30/12 P
H01F30/12 T
H01F30/12 F
H01F27/24 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022081645
(22)【出願日】2022-05-18
(71)【出願人】
【識別番号】000124591
【氏名又は名称】河村電器産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100175824
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100114937
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 裕幸
(74)【代理人】
【識別番号】100140718
【弁理士】
【氏名又は名称】仁内 宏紀
(72)【発明者】
【氏名】加藤 彰訓
(72)【発明者】
【氏名】平下 英里
【テーマコード(参考)】
5E050
5H006
【Fターム(参考)】
5E050CA01
5E050JA01
5H006AA02
5H006CA07
5H006CB01
5H006CC02
5H006CC04
5H006CC08
5H006DC02
5H006FA00
5H006HA03
5H006HA05
5H006HA09
(57)【要約】
【課題】ファンを不要とし、小型化することができる電力変換装置を提供すること。
【解決手段】電力変換装置は、三相電力を多相電力に変換する変圧器と、多相電力を整流して直流変換する整流回路と、変圧器と整流回路とを収容する筐体とを備え、筐体は油が注入されており、変圧器と整流回路とは油浸されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
三相電力を多相電力に変換する変圧器と、
前記多相電力を整流して直流変換する整流回路と、
前記変圧器と前記整流回路とを収容する筐体と
を備え、
前記筐体は油が注入されており、前記変圧器と前記整流回路とのうち、少なくとも前記変圧器は油浸されている、電力変換装置。
【請求項2】
ヒートシンク
をさらに備える、請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項3】
ヒートシンク
をさらに備え、
前記ヒートシンクは油浸されている、請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項4】
前記変圧器は、入力側に三相交流の端子、出力側に直流端子と交流端子又は直流端子を備える、請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項5】
前記変圧器は、
鉄心と、
コイルと
を備え、
前記鉄心は、三つの単一鉄心を含み、
三つの前記単一鉄心の各々は角型であり、隣接する二つの前記単一鉄心が貼り合わされることで脚を構成し、各々の単一鉄心の横方向フレームがヨークとなり、
前記筐体は三角形の上部クランプと、三角形の下部クランプと、ボルトとを含み、
前記ボルトは前記上部クランプと、前記下部クランプとを連結し、
前記コイルは脚上に巻回され、
前記整流回路は前記筐体の空いている空間に配置されている、請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項6】
前記変圧器は、
三相電源が接続される1次側の第1巻線と、2次側を構成する第2巻線及び第3巻線とを有し、
前記第1巻線はデルタ結線或いはスター結線の何れかで結線される一方、前記第2巻線及び前記第3巻線はスター結線されて、何れも共通の鉄心に巻回され、且つ前記第2巻線と前記第3巻線の中性点同士は連結されている、請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項7】
前記変圧器は、
1次側巻線を構成する第1巻線と、2次側巻線を構成する第2~第5巻線の4つの異なる3相の位相を生成する巻線とを有し、
前記第1~第5巻線は共通する鉄心に巻回され、
前記第2巻線及び前記第3巻線の中性点同士が連結されている一方、前記第4巻線及び前記第5巻線は、前記第3巻線の途中の共通する所定の位置から分岐して形成され、
前記第2~第5巻線のそれぞれが異なる位相の3相電圧を出力し、3のn倍(nは2以上の整数)の交流電圧を出力する、請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項8】
前記変圧器は、
1次側巻線を構成する第1巻線と、2次側巻線を構成する第2~第5巻線の4つの異なる3相の位相を生成する巻線とを有し、全ての巻線が共通する鉄心に巻回され、
前記第3巻線は、前記第2巻線の0.73倍の巻数で前記第2巻線に対して極性が反転するよう前記鉄心に巻回されると共に、前記第2巻線及び前記第3巻線の中性点同士が連結され、
前記第4巻線及び前記第5巻線は、前記第2巻線の途中の共通する所定の部位から分岐して生成され、
前記第2~第5巻線のそれぞれが異なる位相の3相電力を出力し、多相の交流電圧を出力する、請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項9】
請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の電力変換装置を備える受配電設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力変換装置および受配電設備に関する。
【背景技術】
【0002】
電力変換装置は、変圧器と整流器とを使用して三相交流を直流に変換することで、高電圧の直流電力を出力する。
3相交流を直流に変換する技術に関して、簡易な構成にて変圧器を過熱から確実に保護する技術が知られている(例えば特許文献1参照)。
この技術によれば、多パルス整流変圧器は、3相交流電源から受電した3相交流電圧を入力し、この3相交流電圧に対して所定の角度だけ位相が進んだ第1の3相交流電圧及び所定の角度だけ位相が遅れた第2の3相交流電圧を出力する変圧器と、変圧器から出力される第1及び第2の3相交流電圧をそれぞれ全波整流して負荷に供給する第1及び第2の整流回路と、変圧器の温度を検出し、検出値が所定値を超えたとき、変圧器に入力される3相交流電圧の1相分の入力経路を開放するリレーとを備える。
【0003】
さらに変圧器、第1及び第2の整流回路を一体的に収納する筐体と、筐体の側壁に取り付けられ、内側面に第1及び第2の整流回路が装着されたヒートシンクと、を備え、リレーはヒートシンクの温度から変圧器の温度を間接的に検出する。
さらに変圧器、第1及び第2の整流回路を一体的に収納する筐体と、筐体の側壁に取り付けられ、内側面に第1及び第2の整流回路が装着されたヒートシンクと、筐体内の空気を換気するファンと、ヒートシンクの温度を検出し、検出値が所定値を超えたときに閉成してファンを運転し、検出値が前記所定値よりも降下したときに開放してファンを停止させるリレーと、を備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許4021803号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述した技術では、整流回路には冷却用ファンが備えられており、スペースを要する。このため、変圧器と整流回路とを備える電力変換装置のサイズが大型化する。
本発明の目的は、ファンを不要とし、小型化することができる電力変換装置および受配電設備を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)本発明の一態様は、三相電力を多相電力に変換する変圧器と、前記多相電力を整流して直流変換する整流回路と、前記変圧器と前記整流回路とを収容する筐体とを備え、前記筐体は油が注入されており、前記変圧器と前記整流回路とのうち、少なくとも前記変圧器は油浸されている、電力変換装置である。
(2)本発明の一態様は、上記(1)に記載の電力変換装置において、ヒートシンクをさらに備える。
(3)本発明の一態様は、上記(1)に記載の電力変換装置において、ヒートシンクをさらに備え、前記ヒートシンクは油浸されている。
(4)本発明の一態様は、上記(1)から上記(3)のいずれか一項に記載の電力変換装置において、前記変圧器は、入力側に三相交流の端子、出力側に直流端子と交流端子又は直流端子のみを備える。
(5)本発明の一態様は、上記(1)から上記(4)のいずれか一項に記載の電力変換装置において、前記変圧器は、鉄心と、コイルとを備え、前記鉄心は、三つの単一鉄心を含み、三つの前記単一鉄心の各々は角型であり、隣接する二つの前記単一鉄心が貼り合わされることで脚を構成し、各々の単一鉄心の横方向フレームがヨークとなり、前記筐体は三角形の上部クランプと、三角形の下部クランプと、ボルトとを含み、前記ボルトは前記上部クランプと、前記下部クランプとを連結し、前記コイルは脚上に巻回され、前記整流回路は前記筐体の空いている空間に配置されている。
(6)本発明の一態様は、上記(1)から上記(5)のいずれか一項に記載の電力変換装置において、前記変圧器は、三相電源が接続される1次側の第1巻線と、2次側を構成する第2巻線及び第3巻線とを有し、前記第1巻線はデルタ結線或いはスター結線の何れかで結線される一方、前記第2巻線及び前記第3巻線はスター結線されて、何れも共通の鉄心に巻回され、且つ前記第2巻線と前記第3巻線の中性点同士は連結されている。
(7)本発明の一態様は、上記(1)から上記(5)のいずれか一項に記載の電力変換装置において、前記変圧器は、1次側巻線を構成する第1巻線と、2次側巻線を構成する第2~第5巻線の4つの異なる3相の位相を生成する巻線とを有し、前記第1~第5巻線は共通する鉄心に巻回され、前記第2巻線及び前記第3巻線の中性点同士が連結されている一方、前記第4巻線及び前記第5巻線は、前記第3巻線の途中の共通する所定の位置から分岐して形成され、前記第2~第5巻線のそれぞれが異なる位相の3相電圧を出力し、3のn倍(nは2以上の整数)の交流電圧を出力する。
(8)本発明の一態様は、上記(1)から上記(5)のいずれか一項に記載の電力変換装置において、前記変圧器は、1次側巻線を構成する第1巻線と、2次側巻線を構成する第2~第5巻線の4つの異なる3相の位相を生成する巻線とを有し、全ての巻線が共通する鉄心に巻回され、前記第3巻線は、前記第2巻線の0.73倍の巻数で前記第2巻線に対して極性が反転するよう前記鉄心に巻回されると共に、前記第2巻線及び前記第3巻線の中性点同士が連結され、前記第4巻線及び前記第5巻線は、前記第2巻線の途中の共通する所定の部位から分岐して生成され、前記第2~第5巻線のそれぞれが異なる位相の3相電力を出力し、多相の交流電圧を出力する。
(9)本発明の一態様は、上記(1)から上位(8)のいずれか一項に記載の電力変換装置を備える受配電設備である。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、ファンを不要とし、小型化することができる電力変換装置および受配電設備を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施形態に係る電力変換装置の一例を示す概略構成図である。
図2A】本実施形態に係る電力変換装置の一例を示す模式図である。
図2B】本実施形態に係る電力変換装置の他の一例を示す模式図である。
図3】本実施形態に係る電力変換装置の一例を示す回路図である。
図4】実施形態の変形例1に係る電力変換装置の一例を示す回路図である。
図5】実施形態の変形例1に係る電力変換装置に含まれる多相変圧器の一例を示す図である。
図6】実施形態の変形例1に係る電力変換装置に含まれる多相変圧器の一例を説明するための図である。
図7】実施形態の変形例1に係る電力変換装置に含まれる多相変圧器の一例を説明するための図である。
図8】実施形態の変形例1に係る電力変換装置に含まれる整流回路の一例を説明するための図である。
図9】実施形態の変形例1に係る電力変換装置の他の一例を示す回路図である。
図10】実施形態の変形例1に係る電力変換装置の他の一例を示す回路図である。
図11】実施形態の変形例2に係る電力変換装置の一例を示す回路図である。
図12】実施形態の変形例2に係る電力変換装置の他の一例を示す回路図である。
図13】実施形態の変形例2に係る電力変換装置に含まれる多相変圧器の一例を示す回路図である。
図14】実施形態の変形例2に係る電力変換装置に含まれる多相変圧器を説明するための図である。
図15】実施形態の変形例2に係る電力変換装置に含まれる多相変圧器を説明するための図である。
図16】実施形態の変形例2に係る電力変換装置の一例を示す回路図である。
図17】実施形態の変形例2に係る電力変換装置の一例を示す回路図である。
図18】実施形態の変形例2に係る電力変換装置の一例を示す回路図である。
図19】実施形態の変形例2に係る電力変換装置の一例を説明するための図である。
図20】実施形態の変形例2に係る電力変換装置の一例を示す回路図である。
図21】実施形態の変形例2に係る電力変換装置の一例を示す回路図である。
図22】実施形態の変形例2に係る電力変換装置の他の一例を示す回路図である。
図23】実施形態の変形例2に係る電力変換装置の他の一例を示す回路図である。
図24】実施形態の変形例2に係る電力変換装置の他の一例を示す回路図である。
図25】実施形態の変形例2に係る電力変換装置の他の一例を説明するための図である。
図26】実施形態の変形例2に係る電力変換装置の他の一例を説明するための図である。
図27】実施形態の変形例2に係る電力変換装置の他の一例を示す回路図である。
図28】実施形態の変形例2に係る電力変換装置の他の一例を示す回路図である。
図29】実施形態の変形例3に係る電力変換装置の一例を示す構成図である。
図30】実施形態の変形例3に係る電力変換装置に含まれる多相変圧器の一例を示す図である。
図31】実施形態の変形例3に係る電力変換装置に含まれる多相変圧器を説明するための図である。
図32】実施形態の変形例3に係る電力変換装置に含まれる多相変圧器を説明するための図である。
図33】実施形態の変形例3に係る電力変換装置を示す回路図である。
図34】実施形態の変形例3に係る電力変換装置を示す回路図である。
図35】実施形態の変形例3に係る電力変換装置を示す回路図である。
図36】第2巻線12から第4巻線14及び第5巻線15を引き出す位置を示すベクトル説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
次に、本実施形態の電力変換装置および受配電設備を、図面を参照しつつ説明する。以下で説明する実施形態は一例に過ぎず、本発明が適用される実施形態は、以下の実施形態に限られない。なお、実施形態を説明するための全図において、同一の機能を有するものは同一符号を用い、繰り返しの説明は省略する。
また、本願でいう「XXに基づいて」とは、「少なくともXXに基づく」ことを意味し、XXに加えて別の要素に基づく場合も含む。また、「XXに基づいて」とは、XXを直接に用いる場合に限定されず、XXに対して演算や加工が行われたものに基づく場合も含む。「XX」は、任意の要素(例えば、任意の情報)である。
【0010】
(実施形態)
(電力変換装置)
図1は本発明の実施形態に係る電力変換装置の一例を示す概略構成図である。図1は、本発明の実施形態に係る電力変換装置1の一例を、高圧受電設備に組み込んだ状態を示している。
電力変換装置1は、高圧受電設備を収容するキュービクル等に収容され、高圧交流負荷開閉器(LBS)2を介して高圧引き込み線が接続される多相変圧器3と、多相変圧器3の出力を整流する整流回路4と、多相変圧器3と整流回路4とを収容する筐体HOとを備えている。ここでは、一例として、電力変換装置1は、高圧受電設備を収容するキュービクル等に収容される場合について説明するが、この例に限られない。受配電設備は高圧受電設備に限定されず、低圧入力の盤でもよい。
【0011】
筐体HOは絶縁油が注入されており、多相変圧器3と整流回路4とは絶縁油で油浸されている。多相変圧器3と整流回路4とが絶縁油で油浸されることによって、多相変圧器3及び整流回路4を絶縁できるとともに、多相変圧器3及び整流回路4で発生した熱を冷却できる。
電力変換装置1の一例は、高圧3相電源10から受電した6600Vの高圧3相交流電力を、380V等の特定電圧の低圧交流電力に変換し、変換した電力を直流に変換して出力する。
【0012】
電力変換装置1の一例について説明する。
図2Aは、本実施形態に係る電力変換装置の一例を示す模式図である。図2において、水平面をX軸方向とY軸方向とで表し、X軸方向とY軸方向とに直交する方向をZ軸方向とする。図中の矢印の方向が正方向であり、反対方向が負方向である。図2において、(a)はZ軸の正方向から見た図であり、(b)はY軸の負方向から見た図である。
【0013】
電力変換装置1は、多相変圧器3と、整流回路4とを備える。
多相変圧器3は、端子台TP1と端子台TP2とを備える。整流回路4は、端子台TP3と端子台TP4とを備える。高圧3相電源10は、多相変圧器3の端子台TP1を介して多相変圧器3と接続され、多相変圧器3は、多相変圧器3の端子台TP2と整流回路4の端子台TP3と端子台TP4とを介して整流回路4と接続される。高圧3相電源10と多相変圧器3の端子台TP1との間が配線され、多相変圧器3の端子台TP2と整流回路4の端子台TP3と端子台TP4との間が配線される。
多相変圧器3の一例は、鉄心21と、高低圧コイル22とを備える。図2に示すように、鉄心21の形状は、三角柱である。つまり、鉄心21をZ軸の正の方向から見た場合に三角形であり、Y軸の負の方向から見た場合に四角形である。
【0014】
鉄心21の形状を三角柱とすることによって全高調波歪み率(THD: Total Harmonic Distortion)を改善できる。全高調波歪み率とは、様々な周波数の成分が含まれることによって、正弦波から形が歪んでしまう割合であり、信号に含まれる高調波成分すべての実効値の総和と、基本波成分の実効値との比で表される。
【0015】
鉄心21は、三個の単一鉄心を含んで構成される。三個の単一鉄心の各々の一例は、同一構造でアモルファス合金ストリップを巻回して作成される。単一鉄心の一例は、角型である。
単一鉄心のZ軸に平行な縁部の断面は、半円形である。隣接する二つの単一鉄心のZ軸に平行な部分である直立する二辺が貼り合わされて一体に固定されることで脚23を構成する。脚23の断面は、円形である。脚23上に高低圧コイル22は巻回されている。三個の単一鉄心の各々の水平面に平行なフレームがヨークとなる。
【0016】
筐体HOは、略三角形の上部クランプ51と、略三角形の下部クランプ52と、ボルト(図示なし)とを備える。ボルトは上部クランプ51と下部クランプ52とを連結する。
鉄心21は水平面上で、Z軸の正の方向から見た場合に三個の単一鉄心が三角形となるように配置されている。
筐体HOにおいて、多相変圧器3を配置した残りの空いている空間に整流回路4が配置される。例えば、Z軸の正の方向から見た場合に三角形となるように配置された三個の単一鉄心の重心を含む位置に整流回路4が配置されてもよい。空いているスペースに整流回路4を配置することによって、空いているスペースの有効活用が可能となる。
【0017】
図2Bは、本実施形態に係る電力変換装置に含まれる多相変圧器の他の一例を示す模式図である。水平面をX軸方向とY軸方向とで表し、X軸方向とY軸方向とに直交する方向をZ軸方向とする。図中の矢印の方向が正方向であり、反対方向が負方向である。図2Bにおいて、(a)はZ軸の正方向から見た図であり、(b)はY軸の負方向から見た図であり、(c)はX軸の負方向から見た図であり、(d)はY軸の正方向から見た図である。
【0018】
多相変圧器3は、端子台TP1と端子台TP2とを備える。整流回路4は、端子台TP3と端子台TP4とを備える。高圧3相電源10は、多相変圧器3の端子台TP1を介して多相変圧器3と接続され、多相変圧器3は、多相変圧器3の端子台TP2と整流回路4の端子台TP3と端子台TP4とを介して整流回路4と接続される。高圧3相電源10と多相変圧器3の端子台TP1との間が配線され、多相変圧器3の端子台TP2と整流回路4の端子台TP3と端子台TP4との間が配線される。
多相変圧器3の他の一例は、鉄心21aと、高低圧コイル22aとを備える。図2Bに示すように、多相変圧器3の他の一例は、鉄心21aと、一次巻線および二次巻線等(図示なし)とを有する。鉄心21aは、EIコアである。つまり、鉄心21をZ軸の正の方向から見た場合に四角形であり、Y軸の負の方向から見た場合に四角形である。
【0019】
鉄心21aは、複数のE字状の鋼板(以下E型コアという)と、複数のI字状の鋼板(以下I型コアという)とを有する。E型コアの開放側の端面が互いに反対方向を向くように一枚ずつ交互に積層される。二つのE型コアは、互いにZ方向に並んで積層されている。E型コアは、それぞれの開放側の端面が互いにY方向の反対側を向く状態に設けられる。I型コアは、E型コアの端面と面している。二つのI型コアは、端面に対応して互いにY方向の反対側に位置される。
【0020】
筐体HOは、略四角形の上部クランプ51aと、略四角形の下部クランプ52aと、ボルト(図示なし)とを備える。ボルトは上部クランプ51aと下部クランプ52aとを連結する。
鉄心21aは水平面上で、Z軸の正の方向から見た場合に三個の単一鉄心が四角形となるように配置されている。
筐体HOにおいて、多相変圧器3を配置した残りの空いている空間に整流回路4が配置される。例えば、Z軸の正の方向から見た場合に四角形となるように配置された三個の単一鉄心の下部に整流回路4が配置されてもよい。空いているスペースに整流回路4を配置することによって、空いているスペースの有効活用が可能となる。
【0021】
図3は、本実施形態に係る電力変換装置の一例を示す図である。
電力変換装置1において、多相変圧器3の一例は12相変圧器である。12相変圧器は、低圧12相の電圧を出力する。整流回路4の一例は、4つの3相全波整流回路を含んで構成される。4つの3相全波整流回路は、1組の直流出力を生成する。
前述した実施形態では、多相変圧器3の一例として、12相変圧器について説明したが、この例に限られない。例えば、3相変圧器でもよいし、6相変圧器でもよいし、24相変圧器でもよい。多相変圧器3は、入力側に三相交流の端子、出力側に直流端子と交流端子又は直流端子を備えるようにしてもよい。
前述した実施形態では、多相変圧器3と整流回路4とが同一の筐体HOに収容される場合について説明したが、この例に限られない。例えば、電力変換装置1に二つの筐体を備えるように構成し、多相変圧器3と整流回路4とが異なる筐体に収容されるようにしてもよい。
【0022】
前述した実施形態では、多相変圧器3と整流回路4とが筐体HOに収容される場合について説明したが、この例に限られない。例えば、多相変圧器3と整流回路4とのうち、少なくとも多相変圧器3が筐体HOに収容されるようにしてもよい。
前述した実施形態では、電力変換装置1に多相変圧器3と整流回路4とが含まれる場合について説明したが、この例に限られない。例えば、電力変換装置1にヒートシンクが含まれてもよい。例えば、ヒートシンクによって、多相変圧器3と整流回路4とのいずれか一方又は両方が冷却されてもよい。ヒートシンクは、筐体HOに収容されてもよいし、筐体HOに収容されていなくてもよい。
具体的には、多相変圧器3と整流回路4とが油浸されヒートシンクは油浸されなくてもよいし、多相変圧器3と整流回路4とヒートシンクとが油浸されてもよいし、多相変圧器3とヒートシンクとが油浸され整流回路4は油浸されなくてもよいし、多相変圧器3が油浸され整流回路4とヒートシンクとが油浸されなくてもよい。
【0023】
本実施形態に係る高圧受電設備によれば、電力変換装置1は、三相電力を多相電力に変換する変圧器としての多相変圧器3と、多相電力を整流して直流変換する整流回路4と、多相変圧器3と整流回路4とを収容する筐体HOとを備える。筐体HOは油が注入されており、多相変圧器3と整流回路4とのうち、少なくとも前記変圧器は油浸されている。
このように構成することによって、筐体HOに注入された油で多相変圧器3と整流回路4とのうち、少なくとも多相変圧器3で発生した熱を冷却できるため、冷却用のファンを不要とできる。このため、電力変換装置1を小型化することができる。
【0024】
電力変換装置1において、ヒートシンクをさらに備える。
このように構成することによって、筐体HOに注入された油で多相変圧器3と整流回路4とのうち、少なくとも多相変圧器3で発生した熱を冷却でき、ヒートシンクで筐体HOの収容されていない整流回路4で発生した熱を冷却できるため、冷却用のファンを不要とできる。このため、電力変換装置1を小型化することができる。
【0025】
電力変換装置1において、ヒートシンクをさらに備え、ヒートシンクは油浸されている。
このように構成することによって、筐体HOに注入された油とヒートシンクとで多相変圧器3と整流回路4とのうち、少なくとも多相変圧器3で発生した熱を冷却できるため、冷却用のファンを不要とできる。このため、電力変換装置1を小型化することができる。
【0026】
電力変換装置1において、多相変圧器3は、入力側に三相交流の端子、出力側に直流端子と交流端子又は直流端子を備える。
このように構成することによって、筐体HOに注入された油で入力側に三相交流の端子、出力側に直流端子と交流端子又は直流端子を備える多相変圧器3で発生した熱を冷却できるため、冷却用のファンを不要とできる。このため、電力変換装置1を小型化することができる。
【0027】
電力変換装置1において、多相変圧器3は、鉄心21と、コイルとしての高低圧コイル22とを備える。鉄心21は三つの単一鉄心を含む。三つの単一鉄心の各々は角型であり、隣接する二つの単一鉄心が貼り合わされることで脚23を構成し、各々の単一鉄心の横方向フレームがヨークとなり、筐体HOは三角形の上部クランプ51と、三角形の下部クランプ52と、ボルトとを含み、ボルトは上部クランプ51と、下部クランプ52とを連結し、コイル22は脚上に巻回され、整流回路4は筐体HOの空いている空間に配置されている。
このように構成することによって、筐体HOに注入された油で多相変圧器3及び整流回路4で発生した熱を冷却できるため、冷却用のヒートシンクやファンを不要とできる。このため、電力変換装置1を小型化することができる。さらに、鉄心21の形状を三角柱とすることができるため、全高調波歪み率を改善できる。整流回路4を筐体HOの空いている空間に配置できるため、筐体HOにおいて、空いているスペースの有効活用が可能となる。
【0028】
(実施形態の変形例1)
実施形態の変形例1に係る高圧受電設備は、図1を適用できる。ただし、電力変換装置1の代わりに電力変換装置1aを備える点で異なる。
図4は、実施形態の変形例1に係る電力変換装置の一例を示す回路図である。電力変換装置1aは、LBS2を介して高圧引き込み線が接続され、三相電力を多相に変換する多相変圧器3aと、多相変圧器3aの2次側出力を整流する整流回路4aとを備える。整流回路4aは、全波整流回路を含んで構成される。
【0029】
多相変圧器3aは、第1巻線11、第2巻線12、第3巻線13の3つの巻線を有し、何れも三相電力に対応するための3つの巻回部(11a~11c、12a~12c、13a~13c)を有し、スター結線されている。ここでは、三相をR相、S相、T相とし、図4では左からR相、S相、T相として説明する。
【0030】
第1巻線11が、LBS2が接続される1次側を構成する1次側巻線L1であり、Rin,Sin,Tinの3端子(1次側端子)を備えている。第2巻線12及び第3巻線13が多相化された電力を出力する2次側を構成する2次側巻線L2であり、第2巻線12は3つの出力端子(2次側端子)R1,S1,T1を有し、第3巻線13は3つの出力端子(2次側端子)R2,S2,T2を有している。第2巻線12と第3巻線13のスター結線された中性点同士は連結されている。
【0031】
図5は、実施形態の変形例1に係る電力変換装置に含まれる多相変圧器の一例を示す図である。図5は多相変圧器3aの鉄心30と巻線の構成の一例を示している。図5に示すように、鉄心30は三相を形成するための3本の鉄心脚31(第1脚31a、第2脚31b、第3脚31c)とこの鉄心脚31の両端を連結する継鉄32とを有している。
【0032】
各巻線11,12,13の巻回部(11a~11c、12a~12c、13a~13c)は、この3本の鉄心脚31にそれぞれ巻回され、第1脚31aに巻回された巻線(巻回部11a,12a,13a)がR相を構成し、第2脚31bに巻回された巻線(巻回部11b,12b,13b)がS相を構成し、第3脚31cに巻回された巻線(巻回部11c,12c,13c)がT相を構成している。
但し、第3巻線13は第2巻線12に比べて巻回数が少なく、第2巻線12と第3巻線13とは1:(√3-1)の比で巻回されている。具体的に、第3巻線は第2巻線に比べて約0.73倍の巻数で巻回されている。
【0033】
図6は、実施形態の変形例1に係る電力変換装置に含まれる多相変圧器の一例を説明するための図である。図6は、図5に示したように巻回した2次側の6端子に発生する電圧を示す。図6において、(a)は各相の電圧を示し、(b)は線間電圧を示している。
図6(a)に示すように、第2巻線12から出力される三相の電圧VR1、VS1、VT1、及び第3巻線13から出力される三相の電圧VR2,VS2,VT2は、それぞれ120度の位相差を有しているが、第3巻線13の出力は第2巻線12との巻線比に比例して小さい。そのため、出力される電圧が巻き数比に比例した大きさとなる。
【0034】
線間(相間)電圧は、図3(b)に示すように、R1端子-S1端子間の電圧VS1-R1の位相に対して、S1端子-S2端子間の電圧VS1-S2(VS1+VS2)は30進相で発生し、且つ絶対値は等しい。
また、S1端子-T1端子間の電圧VT1-S1の位相に対して、T1端子-T2端子間の電圧VT1-T2(VT1+VT2)は30進相で発生し、且つ絶対値は等しい。
更に、T1端子-R1端子間の電圧VR1-T1の位相に対して、R1端子-R2端子間の電圧VR1-R2(VR1+VR2)は30進相で発生し、且つ絶対値は等しい。
【0035】
図7は、実施形態の変形例1に係る電力変換装置に含まれる多相変圧器の一例を説明するための図である。図7は、図5に示したように各巻線を巻回した多相変圧器3aの出力電圧波形を示す。
図8は、実施形態の変形例1に係る電力変換装置に含まれる整流回路の一例を説明するための図である。多相変圧器3aの出力電圧は整流回路4aで整流され、整流後に並列接続されて出力される。
また、図8は整流後の電圧波形を示す。整流回路4aは、30度の位相差を有する6相12波から成る電圧波形を生成し、リップルの小さな直流電圧を出力する。
【0036】
このように、第1巻線11に加えて、2次側の電圧を生成する第2巻線12及び第3巻線13もスター結線するため、生成する電圧を一定にし易い。そして、第3巻線もスター結線されるため、従来のデルタ結線に比べて巻数を√3分の1減らすことができ、多相変圧器3aを小型にできる。
【0037】
また、第2巻線12から出力される線間電圧の位相に対して、第2巻線12と第3巻線13の同一相間の線間電圧は30度ズレた位相で発生するため、全波整流することで30度位相がズレた全12波の波形を生成することが可能であり、リップルの小さい直流を得ることが可能となる。
第2巻線12と第3巻線13の巻数比を1:(√3-1)とするため、第2巻線12と第3巻線13により生成される電圧の絶対値を等しくできる。全波整流した結果、30度位相がズレた同一ピークの波形が生成され、リップルの小さい直流を得ることができる。第3巻線13の巻数は第2巻線12に比べて少ないため、多相変圧器3aを小さくできる。
【0038】
図9は、実施形態の変形例1に係る電力変換装置の他の一例を示す回路図である。電力変換装置1aの他の一例の電力変換装置1aaは、電力変換装置1aと比較して、多相変圧器3aの代わりにLBS2を介して高圧引き込み線が接続され、三相電力を多相に変換する多相変圧器3aaを備え、整流回路4aの代わりに多相変圧器3aaの2次側出力を整流する整流回路4aaを備える。
【0039】
多相変圧器3aaは、多相変圧器3aと比較して、1次側巻線L1を構成する第1巻線11の構成が異なっている。第1巻線11は上記構成がスター結線であるのに対し、3つの巻回部11a~11cがデルタ結線されている。2次側巻線L2の構成は上記形態と同様であり、第2巻線12と第3巻線13はスター結線され、中性点同士は連結されている。
このように、第1巻線11をデルタ結線で構成してもよい。デルタ結線することで各相に均等の電圧を印加でき、出力電圧の変動を小さくできる。2次側巻線L2を構成する第2巻線12及び第3巻線13は上記形態と同様でスター結線される。このため、多相変圧器3aaを小型にでき、更にリップルを小さくできる等の上記形態と同様の効果を奏する。
【0040】
前述した実施形態では、第2巻線12と第3巻線13の巻数比を1:(√3-1)とした場合について説明したが、巻数比はそれに限定しなくともよい。例えば、巻数比は、リップル率の拡大や高周波抑制フィルタを使用することで変更可能である。ただし、リップル率は負荷側で要求される仕様に準拠することになる。また、高周波フィルタは、電源側で規定された規格内であることが条件となる。
また、3つの鉄心脚31を一体形成した鉄心30を使用した場合について説明したが、鉄心30の形状はこれに限定するもので無く、例えば鉄心脚31をそれぞれ独立に形成し、巻回した後一体化してもよい。
【0041】
図10は、実施形態の変形例1に係る電力変換装置の他の一例を示す回路図である。電力変換装置の他の一例の電力変換装置1aaaは、電力変換装置1aと比較して、LBS2を介して高圧引き込み線が接続され、三相電力を多相に変換する多相変圧器3aaaと、多相変圧器3aaaの2次側出力を整流する整流回路4aaaとを備える。
多相変圧器3aaaは、多相変圧器3aと比較して、1次側に第1巻線11を設ける代わりに第1巻線11を設けずにスター結線した第2巻線12及び第3巻線13を設けたものである。第2巻線12に電源を直接接続してもよい。整流回路4aaaは、全波整流する。
このように構成することで30度位相がズレた全12相の波形を生成することが可能であり、リップルの小さい直流を得ることが可能となる。1次側の巻線が無いため、変圧器を小型軽量化できる。
【0042】
実施形態の変形例1に係る高圧受電設備によれば、電力変換装置1aは、電力変換装置1において、多相変圧器3aは、三相電源が接続される1次側の第1巻線11と、2次側を構成する第2巻線12及び第3巻線13とを有する。第1巻線11はデルタ結線或いはスター結線の何れかで結線される一方、第2巻線12及び第3巻線13はスター結線されて、何れも共通の鉄心に巻回され、且つ第2巻線12と第3巻線13の中性点同士は連結されている。
【0043】
このように構成することによって、筐体HOに注入された油で多相変圧器3a及び整流回路4aで発生した熱を冷却できるため、冷却用のヒートシンクやファンを不要とできる。このため、電力変換装置1a(電力変換装置1aa、電力変換装置1aaa)を小型化することができる。
さらに、第1巻線11に加えて、2次側の電圧を生成する第2巻線12及び第3巻線13もスター結線するため、生成する電圧を一定にし易い。第3巻線もスター結線されるため、従来のデルタ結線に比べて巻数を√3分の1減らすことができ、電力変換装置1a(電力変換装置1aa、電力変換装置1aaa)を小型にできる。
また、第2巻線12から出力される線間電圧の位相に対して、第2巻線12と第3巻線13の同一相間の線間電圧は30度ズレた位相で発生するため、全波整流することで30度位相がズレた全12相の波形を生成することが可能であり、リップルの小さい直流を得ることが可能となる。
【0044】
(実施形態の変形例2)
実施形態の変形例2に係る高圧受電設備は、図1を適用できる。ただし、電力変換装置1の代わりに電力変換装置1bを備える点で異なる。
図11は、実施形態の変形例2に係る電力変換装置の一例を示す回路図である。電力変換装置1bは、LBS2を介して高圧引き込み線が接続され、三相電力を多相に変換する多相変圧器3bと、多相変圧器3bの2次側出力を整流する整流回路4bと、直流電路M1に設けられた地絡保護回路5bとを備える。2本の出力線から成る直流電路M1は、それぞれ10kΩ~50kΩの抵抗素子Rrを介して接地されている。
多相変圧器3bの一例は、12相変圧器であり、低圧12相の電圧を出力する。整流回路4bは、4つの3相全波整流回路を備え、1組の直流出力を生成する。
【0045】
図12は、実施形態の変形例2に係る電力変換装置の他の一例を示す回路図である。図12は、バイポーラ出力とした直流出力の他の構成を示す。
整流回路4bにより生成した直流出力に対して、図12に示すように2つのDC/DCコンバータ7b(第1コンバータ7b-1)、第2コンバータ7b-2)を並列に配置し、これら2つの出力を組み合わせることで、バイポーラ電源として使用する。ここでは、第1コンバータ7b-1、第2コンバータ7b-2共に380V出力とし、第1コンバータの0V端子と第2コンバータの380V端子を接続することによって、+380V/-380Vの直流電力を出力できる。
このように構成することによって、バイポーラ電源を備えることができ、負荷を選ばずどのような直流負荷であっても電力を供給できる。
尚、この2つのコンバータ7を接続せず、独立に使用してもよく、その場合何れか一方を100V出力とすれば、380V出力と100V出力の2種類の直流電力を出力できる。
【0046】
図13は、実施形態の変形例2に係る電力変換装置に含まれる多相変圧器の一例を示す回路図である。図13に示すように、多相変圧器3bは12相変圧器を含む。
12相変圧器の一例は、1次側巻線L1を構成する第1巻線11、2次側巻線L2を構成する4つの巻線(第2巻線12、第3巻線13、第4巻線14、第5巻線15)を備えている。何れの巻線も、入力される3相電力に対応する3つの巻回部(11a~11c、12a~12c、13a~13c、14a~14c、15a~15c)を有している。
【0047】
第1巻線11はデルタ結線され、3つの端子(Rin、Sin、Tin)に高圧の3相交流電力が接続される。第2~第5巻線12,13,14,15は、全てスター結線されている。但し、第4巻線14、第5巻線15は完全な形でのスター結線ではない。第4巻線14、第5巻線15については後述する。以下、3相をR相、S相、T相として説明する。尚、第1巻線11はスター結線であってもよい。
【0048】
12相変圧器の2次側は、第2巻線12の出力端子R1,S1,T1、第3巻線13の出力端子R2,S2,T2、第4巻線14の出力端子R3,S3,T3、第5巻線15の出力端子R4,S4,T4を有し、全12端子を備えている。
第2巻線12と第3巻線13のスター結線された中性点Q同士は連結され、第3巻線13は第2巻線12に対して極性が反転するよう鉄心8に巻回されている。また、第4巻線14と第5巻線15は、第3巻線13の途中の同一点から分岐して形成され、第4巻線14と第5巻線15とは、第3巻線13の中性点Qを兼用している。
【0049】
第4巻線14、第5巻線15は具体的に以下のように鉄心8に巻回されている。まず、第4巻線14の各相は次のように巻回されている。R相巻線14aは、第3巻線13のR相巻線13aの途中から分岐して引き出され、1次側S相と共通の脚部鉄心8bに巻回されている。先端が出力端子R3である。S相巻線14bは、第3巻線13のS相巻線13bの途中から分岐して引き出され、第1巻線11のT相(或いは第2巻線12のT相)と共通の脚部鉄心8cに巻回されている。先端が出力端子S3である。
またT相巻線14cは、第3巻線13のT相巻線13cの途中から分岐して引き出され、1次側R相と共通の脚部鉄心8aに巻回されている。先端が出力端子T3である。
【0050】
第5巻線15の各相は次のように巻回されている。R相巻線15aは、第4巻線14と同一部位である第3巻線13のR相巻線13aの途中から分岐して引き出され、第1巻線11のT相(或いは第2巻線12のT相)と共通の脚部鉄心8cに巻回されている。先端が出力端子R4である。
S相巻線15bは、第4巻線14と同一部位である第3巻線13のS相巻線13bの途中から分岐して引き出され、第1巻線11のR相(或いは第2巻線12のR相)と共通の脚部鉄心8aに巻回されている。先端が出力端子S4である。
またT相巻線15cは、第4巻線14と同一部位である第3巻線13のT相巻線13cの途中から分岐して引き出され、第1巻線11のS相(或いは第2巻線12のS相)と共通の脚部鉄心8bに巻回されている。先端が出力端子T4である。
【0051】
図14は、実施形態の変形例2に係る電力変換装置に含まれる多相変圧器を説明するための図である。図14は、2次側巻線L2の個々の巻線のベクトル説明図であり、第2巻線12のR1相を基準に各相を示している。
図14に示すように、第2巻線12の3相の巻線12a,12b,12cは、入力される3相電力と同様にそれぞれ120度の位相差を有する電圧を出力端子R1,S1,T1から出力する。
第3巻線13の各巻線13a,13b,13cの位相は、第2巻線12に対して上述したように正反対の極性を示し、出力端子R2,S2,T2の位相は、第2巻線12のR1,S1,T1の各相に対して180度の位相差を有している。尚、第2巻線12に対する第3巻線13の巻回数は、0.73倍(√3-1倍)となっている。
【0052】
第4巻線14の第3巻線13から引き出した巻線14a,14b,14cの各出力端子R3,S3,T3の位相は、第2巻線12の各相と同位相の電圧を発生する。更に、第5巻線15の第3巻線13から引き出した巻線15a,15b,15cの各出力端子R4,S4,T4の位相は、第4巻線14と同様に第2巻線12の対応する各相の出力端子R1,S1,T1と同位相の電圧を発生する。
【0053】
図15は、実施形態の変形例2に係る電力変換装置に含まれる多相変圧器を説明するための図である。図15は、2次側の位相説明図であり、第2巻線12のR1端子の位相に対する第3巻線13,第4巻線14,第5巻線15の出力位相を示している。
図15に示すように、第2巻線12のR1端子とT1端子間の電圧絶対値及び位相に対して、第2巻線12のR1端子と第4巻線14のT3端子間の電圧絶対値は等しく、位相は15度遅れている。
また、第2巻線12のR1端子と第3巻線13のR2端子間の電圧絶対値は等しく、位相は30度遅れている。
更に、第2巻線12のR1端子と第5巻線15のS4端子間の電圧絶対値は等しく、位相は45度遅れている。
【0054】
図16は、実施形態の変形例2に係る電力変換装置の一例を示す回路図である。電力変換装置1bの特定の相間電圧が負荷(直流グリッド)6に印加され、12相変圧器の出力電圧(ベクトルで示す)が整流回路4bで整流されて負荷6に印加される。
図17は、実施形態の変形例2に係る電力変換装置の一例を示す回路図である。第2巻線12のR1-T1端子間の出力が負荷6に印加される。
図18は、実施形態の変形例2に係る電力変換装置の一例を示す回路図である。第2巻線12のR1端子と第4巻線14のT3端子の間の出力が負荷6に印加される。
図16から図18によれば、絶対値が等しい各相間電圧が整流されて負荷6に印加される。各相の関係は、第2巻線12のS1端子の位相に対する第3巻線13,第4巻線14,第5巻線15の出力位相、第2巻線12のT1端子の位相に対する第3巻線13,第4巻線14,第5巻線15の出力位相も同様であり、絶対値が等しい相間電圧が生成されて負荷6に印加される。
【0055】
図19は、実施形態の変形例2に係る電力変換装置の一例を説明するための図である。図19は、第3巻線13から第4巻線14及び第5巻線15を引き出す位置を示すベクトル説明図である。
このベクトル図を参照して第4巻線14、第5巻線15を引き出す位置Xを具体的に説明する。尚、E1(Q-R1間の電圧)は第2巻線12の出力電圧を示している。
R1-T3間の電圧(A+B)を200Vとすると、R1-R2間の電圧も同様に200Vであり、電圧E1は200/√3=115.4Vとなる。電圧A=電圧B/tan15°である。電圧A=電圧B×3.723であるため、電圧A=200-電圧Bを加味すると、電圧A=200/(1+tan15°)=157.73Vとなる。
【0056】
よって、電圧B=200-電圧A=200-157.73=42.27Vとなる。R1-X間の電圧=A/cos15°=163.3V、R2-X間の電圧=(R1-R2間の電圧)-(R1-X間の電圧)=36.7Vとなり、Q-X間の電圧=(R1-X間の電圧)-(R1-Q間の電圧)=163.3-115.46=47.83V、Q-R2間の電圧=200-(R1-Q間の電圧)=200-115.46=84.54Vとなる。尚、電圧B=200-電圧A=42.27V、X-T3間の電圧=電圧B×√2=59.77Vとなる。
これらの結果から、(Q-X間の電圧)/(Q-R2間の電圧)=47.83/84.54=0.565、即ち、位置Xは、中性点(Q点)から56.5%の位置となる。尚、2次側の各巻線を、巻数比でみると、第2巻線:第3巻線:第4巻線:第5巻線=1:0.73:0.52:0.52となる。
【0057】
以上から、2次側を構成する第2~第5の4つの巻線のうち、第4巻線14と第5巻線15は、第3巻線13の途中の中性点から56.5%の位置から分岐させるため、2分の1を超える領域で肩代わりさせることができる。このため、各相を単独で巻回形成するより巻回数を削減できる。よって、多相変圧器を小型化できる。
第3巻線13による出力電圧は、第2巻線12の出力位相に対して180度反転した位相の電圧となり、第4巻線14による出力電圧の位相は、第2巻線12の同一相の出力に対して15度の位相差を生成する。第5巻線15による出力電圧の位相は、第2巻線12の同一相の出力に対して15度の位相差を生成し、第4巻線14に対して第2巻線12の同一相を挟んで30度の位相差を生成する。結果、12相の電圧を生成する。
【0058】
12相の多相の低圧交流電力を生成して整流回路4により全波整流して直流電力を生成するため、リップルの小さい直流を生成でき、高周波で切り替え動作するAC/DCコンバータを使用することなく安定した直流電力の生成が可能となる。よって、高周波スイッチングによるノイズが発生することがない。
【0059】
図20は、実施形態の変形例2に係る電力変換装置の一例を示す回路図である。図20は、直流電路M1が被雷した場合の落雷電流(雷サージ)Itの流れを示している。
12相変圧器は図14に示す2次側巻線L2のベクトル図で示している。図20には、被雷点P1と、開閉器17と、開閉装置18と、避雷器(SPD)20とが示されている。開閉器17は12相変圧器の出力を開閉する。開閉装置18は負荷6を直流電路M1から開放する。避雷器20は12相変圧器の2次側中性点Qの接地線に設けられる。
【0060】
図20に示すように直流電路M1が被雷した場合に、その雷サージItは整流回路4b、12相変圧器、避雷器20を介して大地に流れ出る。被雷の極性が逆極性である場合には、雷サージItはこの逆の経路を通って(整流回路4bでは逆極性のダイオードを通って)流れる。
このように、直流電路M1に被雷がある場合に、整流回路4b、多相変圧器3bを介して避雷器20に雷サージItを流すことができ、多相変圧器3bの2次側を雷被害から保護することができる。
また、12相変圧器は、2次側巻線L2が共通する中性点Qを有し、この中性点Qの1ヶ所を、避雷器20を介して接地することで、1つの避雷器20のみで被雷対策を実施することができる。
【0061】
図21は、実施形態の変形例2に係る電力変換装置の一例を示す回路図である。図21は、直流電路M1で地絡が発生した場合の地絡電流Igの流れを示す。図21には、地絡点P2が示されている。
地絡電流Igは大地から地絡保護回路5bを介して他方の直流電路M1へ流れ、その後整流回路4b、多相変圧器3bを経由して地絡した直流電路M1に流れる。このとき、地絡保護回路5bの抵抗素子Rrにより電流が制限される。
このように、地絡電流Igが地絡保護回路5bの抵抗素子Rrで制限されるため、直流電力出力側で漏電や感電等の電路異常が発生した場合に、抵抗素子Rrにより漏電電流を抑制でき、被害を抑制できる。
【0062】
図22は、実施形態の変形例2に係る電力変換装置の他の一例を説明するための図である。図22は、電力変換装置1bに、地絡を検知する異常検知機構を備える。
地絡保護回路5bの抵抗素子Rrに流れる電流を検出して、電路の状態を監視している。多相変圧器3b、整流回路4b等は上記形態と同様であるが、多相変圧器3bの一次側に遮断器40を配置し、この遮断器40を遮断動作させる電流監視部41を備えている点が上記形態とは相違している。以下、相違点を説明する。
電流監視部41は、地絡保護回路5bの抵抗素子Rrに流れる電流を計測し、電流の変化を監視している。また、報知部41aを有すると共に、遮断器40と信号線42で接続され、遮断器40を遮断操作する。
【0063】
地絡保護回路5bの抵抗素子Rrには、正常時一定の電流が流れている。例えば、直流電路に380Vの電圧が通電されている場合、抵抗素子Rrが10kΩであれば、38mAが常時流れており、この電流を電流監視部41は監視している。
この電流が所定の範囲を外れたら(例えば10mA以下になったら)、異常発生(地絡事故発生)と判断して報知部41aから警報が発せられる。同時に異常発生信号が遮断器40に対して出力され、遮断器40が遮断動作する。
直流電路M1に地絡等の電路異常が発生した場合に、抵抗素子Rrに流れる電流が変化する。抵抗素子Rrに流れる電流の変化から電路異常を検知して報知部41aが報知動作する。よって電路異常の発生を認識でき対処し易い。
また、直流電路M1に地絡事故等の電路異常が発生したら、多相変圧器3bの入力電路が遮断される。よって、直流電路M1に異常が発生したら速やかに安全な状態を確保できる。
図23は、実施形態の変形例2に係る電力変換装置の他の一例を説明するための図である。電力変換装置1bは、多相変圧器3bを6相変圧器としたものである。12相変圧器を使用した構成と同様に、地絡保護回路5b、整流回路4bを備えている。整流回路4bは、6相の交流電圧を整流すればよいため、ダイオード数は半減している。
【0064】
図24は、実施形態の変形例2に係る電力変換装置の他の一例を示す回路図である。図24は、6相変圧器の具体的構成図であり、1次側巻線L1を構成する第1巻線41、2次側巻線L2を構成する第2巻線42及び第3巻線43の3つの巻線を有している。何れの巻線も3相電力に対応するための3つの巻回部(41a~41c、42a~42c、43a~43c)を有し、スター結線されている。
第1巻線41が高圧の3相電源のR相、S相、T相の各相が接続されるRin,Sin,Tinの3端子(1次側端子)を備えている。第2巻線42は3つの出力端子(2次側端子)R1,S1,T1を有し、第3巻線43は3つの出力端子(2次側端子)R2,S2,T2を有している。第2巻線42と第3巻線43のスター結線された中性点同士は連結されている。尚、この中性点Qは後述するように避雷器20を介して接地されている。
各巻線41,42,43の巻回部(41a~41c、42a~42c、43a~43c)は、鉄心48の3本の脚にそれぞれ巻回されている。但し、第3巻線43は第2巻線42に比べて巻回数が少なく、第2巻線42と第3巻線43とは1:(√3-1)の比で巻回されている。具体的に、第3巻線43は第2巻線42に比べて約0.73倍の巻数で巻回されている。
【0065】
図25は、実施形態の変形例2に係る電力変換装置の他の一例を説明するための図である。図25は、巻回した2次側の6端子に発生する電圧のベクトル図を示す。
図25において、(a)は各相の電圧、(b)は線間電圧を示している。図25(a)に示すように、第2巻線42から出力される3相の電圧VR1、VS1、VT1、及び第3巻線43から出力される3相の電圧VR2,VS2,VT2は、それぞれ120度の位相差を有し、第3巻線43の出力は第2巻線42との巻線比に比例して小さい。そのため、出力される電圧が巻き数比に比例した大きさとなる。
【0066】
線間(相間)電圧は、図25(b)に示すように、R1端子-S1端子間の電圧VS1-R1の位相に対して、S1端子-S2端子間の電圧VS1-S2(VS1+VS2)は30進相で発生し、且つ絶対値は等しい。
また、S1端子-T1端子間の電圧VT1-S1の位相に対して、T1端子-T2端子間の電圧VT1-T2(VT1+VT2)は30進相で発生し、且つ絶対値は等しい。
更に、T1端子-R1端子間の電圧VR1-T1の位相に対して、R1端子-R2端子間の電圧VR1-R2(VR1+VR2)は30進相で発生し、且つ絶対値は等しい。
【0067】
図26は、実施形態の変形例2に係る電力変換装置の他の一例を説明するための図である。図26は、各巻線を巻回した多相変圧器3bの出力電圧波形を示す。出力電圧は全波整流する整流回路4bで整流され、12相の電圧波形から成る直流が生成され、リップルの小さい直流電圧を得ることができる。
第1巻線41に加えて、2次側の電圧を生成する第2巻線42及び第3巻線43もスター結線するため、生成する電圧を一定にし易い。第3巻線43もスター結線されるため、従来のデルタ結線に比べて巻数を√3分の1減らすことができ、多相変圧器3bを小型にできる。
【0068】
第2巻線42から出力される線間電圧の位相に対して、第2巻線42と第3巻線43の同一相間の線間電圧は30度の位相差を有して発生するため、6相の電圧を生成できる。全波整流することで30度位相がズレた全12相の波形を生成することができる。
6相の多相の低圧交流電力を生成して整流回路4bにより全波整流して直流電力を生成することで、リップルの小さい直流を生成でき、高周波で切り替え動作するコンバータを使用することなく安定した直流電力の生成が可能となる。よって、高周波スイッチングによるノイズが発生することがない。
【0069】
図27は、実施形態の変形例2に係る電力変換装置の他の一例を示す回路図である。図27は、6相変圧器を使用した電力変換装置1bの、直流電路M1が被雷した場合の落雷電流(雷サージ)Itの流れを示している。但し、6相変圧器は2次側巻線のみ示している。図27には、被雷点P1、開閉器17、避雷器(SPD)20も示されている。6相変圧器の中性点Qは避雷器20を介して接地されている。
図27に示すように直流電路M1が被雷した場合に、その雷サージItは整流回路4b、6相変圧器、避雷器20を介し大地に流れ出る。尚、被雷の極性が逆極性である場合には、雷サージItはこの逆の経路を通って(整流回路4bでは逆極性のダイオードを通って)流れる。
【0070】
直流電路M1に被雷があると、整流回路4b、多相変圧器3bを介して避雷器20に雷サージItを流すことができ、多相変圧器3bの2次側を雷被害から保護することができる。また、6相変圧器の2次側巻線L2は共通する中性点Qを有しており、この中性点Qを、避雷器20を介して接地することで、1つの避雷器20のみで2次側電路の被雷に対して落雷被害を最小限に留めることができる。
【0071】
図28は、実施形態の変形例2に係る電力変換装置の他の一例を示す回路図である。図28は、多相変圧器3bに6相変圧器を使用した上記構成において、回路の直流電路M1で地絡が発生した場合の地絡電流Igの流れを示す。図28には、地絡点P2も示している。
図28に示すように、地絡電流Igは大地から地絡保護回路5bを介して他方の直流電路M1へ流れ、その後整流回路4b、多相変圧器3bを経由して地絡した直流電路M1に流れる。このとき、地絡保護回路5bの抵抗素子Rrにより電流が制限される。このように、地絡電流Igが地絡保護回路5bの抵抗素子Rrで制限されるため、感電事故等による被害を抑制できる。
【0072】
6相変圧器を使用した電力変換装置1bにおいても、12相変圧器を使用した図12に示すように直流出力をバイポーラ電源とすることができる。また、図22に示す構成のように、6相変圧器の1次側に遮断器40を配置して、抵抗素子Rrの電流値が異常値を示した場合に、1次側の遮断器を遮断させてもよい。
【0073】
実施形態の変形例2に係る高圧受電設備によれば、電力変換装置1bは、電力変換装置1において、多相変圧器3bは、1次側巻線を構成する第1巻線11と、2次側巻線を構成する第2~第5巻線の4つの異なる3相の位相を生成する巻線とを有し、第2~第5巻線は何れもスター結線されて、第1~第5巻線は共通する鉄心に巻回され、第2巻線及び第3巻線の中性点同士が連結されている一方、第4巻線及び第5巻線は、第3巻線の途中の共通する所定の位置から分岐して形成され、第2~第5巻線のそれぞれが異なる位相の3相電圧を出力し、3のn倍(nは2以上の整数)の交流電圧を出力する。
このように構成することによって、筐体HOに注入された油で多相変圧器3b及び整流回路4bで発生した熱を冷却できるため、冷却用のヒートシンクやファンを不要とできる。このため、電力変換装置1bを小型化することができる。2次側を構成する第2~第5の4つの巻線のうち、第4巻線14と第5巻線15は、第3巻線13の途中の中性点の位置から分岐させるため、2分の1を超える領域で肩代わりさせることができる。このため、各相を単独で巻回形成するより巻回数を削減できる。よって、多相変圧器を小型化できる。
【0074】
(実施形態の変形例3)
実施形態の変形例3に係る高圧受電設備は、図1を適用できる。ただし、電力変換装置1の代わりに電力変換装置1cを備える点で異なる。
図29は、実施形態の変形例3に係る電力変換装置の一例を示す構成図である。
電力変換装置1cは、LBS2を介して高圧引き込み線が接続され、受電した高圧三相電源10を降圧して380V等の特定電圧の低圧交流電圧に変換する多相変圧器3cと、多相変圧器3cの2次側出力を整流し、直流に変換する整流回路4cとを備える。
多相変圧器3cの一例は12相変圧器であり、12相の電圧を出力する。整流回路4cの一例は、4つの3相全波整流回路を備え、1組の直流出力を生成する。
【0075】
図30は、実施形態の変形例3に係る電力変換装置に含まれる多相変圧器の一例を示す図である。図30に示すように、12相変圧器は、1次側巻線L1を構成する第1巻線11、2次側巻線L2を構成する4つの巻線(第2巻線12、第3巻線13、第4巻線14、第5巻線15)を備えている。何れの巻線も、入力される3相電力に対応する3つの巻回部(11a~11c、12a~12c、13a~13c、14a~14c、15a~15c)を有している。
【0076】
第1巻線11はデルタ結線、スター結線の何れでもよいが、ここではスター結線した場合を示している。3つの端子(Rin、Sin、Tin)に高圧の3相交流電力が接続される。第2~第5巻線12,13,14,15は、全てスター結線されている。但し、後述するように、第4巻線14及び第5巻線15は完全な形でのスター結線ではない。以下、3相をR相、S相、T相として説明する。
【0077】
12相変圧器の2次側は、第2巻線12の出力端子R1,S1,T1、第3巻線13の出力端子R2,S2,T2、第4巻線14の出力端子R3,S3,T3、第5巻線15の出力端子R4,S4,T4を有し、全12端子を備えている。
第2巻線12と第3巻線13のスター結線された中性点Q同士は連結され、第3巻線13は第2巻線12に対して極性が反転するよう鉄心8に巻回され、且つ第2巻線の0.73倍の巻数で形成されている。
また、第4巻線14と第5巻線15とは、第2巻線12の途中の同一点から分岐して形成され、第4巻線14と第5巻線15とは、第2巻線12の中性点Qを兼用している。
【0078】
第4巻線14、第5巻線15は具体的に以下のように鉄心8に巻回されている。第4巻線は、T相巻線14aが、第2巻線12のR相巻線12aの途中から分岐して引き出され、1次側T相と共通の脚部鉄心8cに巻回されている。先端が出力端子T3である。
R相巻線14bは、第2巻線12のS相巻線12bの途中から分岐して引き出され、第1巻線11のR相と共通の脚部鉄心8aに巻回されている。先端が出力端子R3である。
【0079】
またS相巻線14cは、第2巻線12のT相巻線12cの途中から分岐して引き出され、1次側S相と共通の脚部鉄心8bに巻回されている。先端が出力端子S3である。
第5巻線15は、S相巻線15aが、第4巻線14と同一部位である第2巻線12のR相巻線12aの途中から分岐して引き出され、第1巻線11のS相と共通の脚部鉄心8cに巻回されている。先端が出力端子S4である。
T相巻線15bは、第4巻線14と同一部位である第2巻線12のS相巻線12bの途中から分岐して引き出され、第1巻線11のT相と共通の脚部鉄心8cに巻回されている。先端が出力端子T4である。
【0080】
またR相巻線15cは、第4巻線14と同一部位である第2巻線12のT相巻線12cの途中から分岐して引き出され、第1巻線11のR相と共通の脚部鉄心8aに巻回されている。先端が出力端子R4である。
【0081】
図31は、実施形態の変形例3に係る電力変換装置に含まれる多相変圧器を説明するための図である。
図31は、2次側巻線L2の個々の巻線のベクトル説明図であり、第2巻線12のR1相を基準に各相を示している。図31に示すように、第2巻線12の3相の巻線12a,12b,12cは、入力される3相電力と同様にそれぞれ120度の位相差を有する電圧を出力端子R1,S1,T1から出力する。
第3巻線13の各巻線13a,13b,13cの位相は、第2巻線12に対して上述したように正反対の極性を示し、出力端子R2,S2,T2の位相は、第2巻線12のR1,S1,T1の各相に対して180度の位相差を有している。尚、第2巻線12に対する第3巻線13の巻回数は、0.73倍(√3-1倍)となっている。
【0082】
また第4巻線14の第2巻線12から引き出した巻線14a,14b,14cの各出力端子R3,S3,T3の位相は、第3巻線13の各相と同位相の電圧を発生する。更に、第5巻線15の第2巻線12から引き出した巻線15a,15b,15cの各出力端子R4,S4,T4の位相は、第4巻線14と同様に第3巻線13の対応する各相の出力端子R2,S2,T2と同位相の電圧を発生する。
【0083】
図32は、実施形態の変形例3に係る電力変換装置に含まれる多相変圧器を説明するための図である。
図32は、2次側の位相説明図で、第2巻線12のR1端子の位相を基準に第3巻線13,第4巻線14,第5巻線15の出力位相を示している。
図32に示すように、第2巻線12のR1端子とT1端子間の電圧絶対値及び位相に対して、第2巻線12のR1端子と第5巻線15のR4端子間の電圧絶対値は等しく、位相は15度遅れている。
また、第2巻線12のR1端子と第3巻線13のR2端子間の電圧絶対値は等しく、位相は30度遅れている。
更に、第2巻線12のR1端子と第4巻線14のS3端子間の電圧絶対値は等しく、位相は45度遅れている。
【0084】
図33は、実施形態の変形例3に係る電力変換装置を示す回路図である。
図33は、図32に示す特定の相間電圧が負荷6に印加される様子を示す説明図であり、12相変圧器の出力電圧(ベクトルで示す)が整流回路4cで整流されて負荷6に印加される様子を示している。図33に示される電力変換装置1cでは、第2巻線12のR1-T1端子間の出力が負荷6に印加される。
【0085】
図34は、実施形態の変形例3に係る電力変換装置を示す回路図である。
図34は、図32に示す特定の相間電圧が負荷6に印加される様子を示す説明図であり、12相変圧器の出力電圧(ベクトルで示す)が整流回路4cで整流されて負荷6に印加される様子を示している。
図34に示される電力変換装置1cでは、第2巻線12のR1端子と第5巻線15のR4端子の間の出力が負荷6に印加される。
【0086】
図35は、実施形態の変形例3に係る電力変換装置を示す回路図である。
図35は、図32に示す特定の相間電圧が負荷6に印加される様子を示す説明図であり、12相変圧器の出力電圧(ベクトルで示す)が整流回路4cで整流されて負荷6に印加される様子を示している。
図35に示される電力変換装置1cでは、第2巻線12のR1端子と第3巻線13のR2端子の間の出力が負荷6に印加される。
【0087】
図33から図35に示すように、絶対値が等しい各相間電圧が整流されて負荷6に印加される。各相の関係は、第2巻線12のS1端子の位相に対する第3巻線13,第4巻線14,第5巻線15の出力位相、第2巻線12のT1端子の位相に対する第3巻線13,第4巻線14,第5巻線15の出力位相も同様であり、絶対値が等しい相間電圧が生成されて負荷6に印加される。
【0088】
図36は、第2巻線12から第4巻線14及び第5巻線15を引き出す位置を示すベクトル説明図である。以下このベクトル図を参照して第4巻線14、第5巻線15を引き出す位置Xを具体的に説明する。
図36に示すR1-R2端子間の電圧を200Vとすると、R1-R4端子間の電圧(A+B)も同様に200Vである。
Q-R1間の電圧E1は、第2巻線12の出力電圧であり、E1=200/√3=115.4Vとなる。電圧A=電圧B/tan15°であるため、電圧A=200-電圧Bを加味すると、電圧A=200/(1+tan15°)=157.73Vとなり、電圧B=200-電圧A=200-157.73=42.27Vとなる。
【0089】
ここで、第4,5巻線の引き出し位置Zを求めるために、Q-R2間に(R1-X)×cos15°=AとなるX点を設定した場合に、R1-X点間の電圧=A/cos15°=157.73/0.966=163.3Vである。また、Z-R4間の電圧=Q-X間の電圧に等しいため、Q-X間の電圧=(R1-X間の電圧)-(R1-Q間の電圧)=163.3-115.46=47.83Vとなる。これはZ-R4間の電圧(第5巻線15の電圧)E3でもある。
【0090】
また、(R1-X間の電圧)×sin15°×√2=X-R4間の電圧であるから、Q-Z間の電圧=X-R4間の電圧=163.3×0.259×1.41=59.7Vとなる。
よって、第4,第5巻線の引き出し位置Zは、(Q-Z間の電圧)/(Q-T1間の電圧)=59.7/115.4=0.518となる。引き出し位置は、中性点Qから51.8%の位置となる。
第2巻線12と第4巻線14の巻数比(第2巻線12と第5巻線15の巻数比)については、E3/E1=47.8/115.5=0.414となり、第4巻線14及び第5巻線15は第2巻線12の41.4%となる。
【0091】
以上から、2次側の各巻線を巻数比でみると、第2巻線:第3巻線:第4巻線:第5巻線=1:0.73:0.41:0.41となる。尚、Q-R2間の電圧=200-(R1-Q間の電圧)=200-115.4=84.54Vとなる。
【0092】
多相の交流電力を生成して全波整流回路により直流変換して直流電力を生成するため、リップルの小さい直流を生成でき、高周波で切り替え動作するAC/DCコンバータを使用することなく安定した直流電力の生成が可能となる。
さらに、2次側を構成する4つの巻線のうち、第3巻線13は第2巻線の0.73倍であり、第4巻線14と第5巻線15とは、第2巻線12の途中から分岐して形成されるため、各相を単独で巻回形成するより巻回数を削減でき、多相変圧器を小型化できる。多相変圧器を小型化できるため、電力変換装置を小型にできる。
具体的に、第4巻線14と第5巻線15の巻数は、第2巻線12の41.4%であるため、僅かな巻数で済み、多相変圧器を小型にできる。
尚、実施形態の変形例3では、第2巻線のR1端子と第3巻線のR2端子間の電圧を200Vとして説明したが、生成電圧は任意で有り、負荷形態に応じて出力電圧は変更できるものである。
【0093】
実施形態の変形例3に係る高圧受電設備によれば、電力変換装置1cは、電力変換装置1において、多相変圧器3cは、1次側巻線を構成する第1巻線11と、2次側巻線を構成する第2~第5巻線の4つの異なる3相の位相を生成する巻線とを有し、全ての巻線が共通する鉄心8に巻回され、第2~第5巻線は何れもスター結線され、第3巻線は、第2巻線の0.73倍の巻数で前記第2巻線に対して極性が反転するよう鉄心に巻回されると共に、第2巻線及び第3巻線の中性点同士が連結され、第4巻線及び第5巻線は、第2巻線の途中の共通する所定の部位から分岐して生成され、第2~第5巻線のそれぞれが異なる位相の3相電力を出力し、多相の交流電圧を出力する。
【0094】
このように構成することによって、筐体HOに注入された油で多相変圧器3c及び整流回路4cで発生した熱を冷却できるため、冷却用のヒートシンクやファンを不要とできる。このため、電力変換装置1cを小型化することができる。多相の交流電力を生成して全波整流回路により直流変換して直流電力を生成するため、リップルの小さい直流を生成でき、高周波で切り替え動作するAC/DCコンバータを使用することなく安定した直流電力の生成が可能となる。2次側を構成する4つの巻線のうち、第3巻線13は第2巻線の0.73倍であり、第4巻線14と第5巻線15は、第2巻線12の途中から分岐して形成されるため、各相を単独で巻回形成するより巻回数を削減でき、多相変圧器を小型化できる。ひいては、電力変換装置を小型にできる。
【0095】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。例えば、実施形態に係る電力変換装置1と、実施形態の変形例1に係る電力変換装置1aと、実施形態の変形例2に係る電力変換装置1bと、実施形態の変形例3に係る電力変換装置1cとのうち、少なくとも2つが適宜組み合わされてもよい。
【符号の説明】
【0096】
1、1a、1b、1c…電力変換装置、2…LBS、3、3a、3b、3c…多相変圧器、4、4a、4b、4c…整流回路、6…負荷、10…高圧3相電源、30…鉄心、40…遮断器、41…電流監視部
図1
図2A
図2B
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29
図30
図31
図32
図33
図34
図35
図36