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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023170137
(43)【公開日】2023-12-01
(54)【発明の名称】電力変換装置
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/06 20060101AFI20231124BHJP
   H02H 3/16 20060101ALI20231124BHJP
【FI】
H02M7/06 U
H02M7/06 H
H02H3/16 B
H02H3/16 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022081648
(22)【出願日】2022-05-18
(71)【出願人】
【識別番号】000124591
【氏名又は名称】河村電器産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100175824
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100114937
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 裕幸
(74)【代理人】
【識別番号】100140718
【弁理士】
【氏名又は名称】仁内 宏紀
(72)【発明者】
【氏名】加藤 彰訓
【テーマコード(参考)】
5G004
5H006
【Fターム(参考)】
5G004AA02
5G004AA04
5G004AA05
5G004AB01
5G004BA01
5G004DA02
5H006CA07
5H006CB01
5H006CC01
5H006CC05
5H006CC08
5H006DC05
5H006FA02
(57)【要約】
【課題】直流電力および交流電力を出力でき、交流配線の漏電を検出できる電力変換装置を提供すること。
【解決手段】電力変換装置は、高圧三相交流電力を低圧多相交流電力に変換する多相変圧器と、前記低圧多相交流電力を直流電力に変換する整流回路と、前記多相変圧器によって前記高圧三相交流電力が変換された低圧三相交流電力を出力する配線の漏電検出を行う漏電検出回路とを備え、前記多段多相変圧器の2次側結線の中点は、前記漏電検出回路を介して接地されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
高圧三相交流電力を低圧多相交流電力に変換する多相変圧器と、
前記低圧多相交流電力を直流電力に変換する整流回路と、
前記多相変圧器によって前記高圧三相交流電力が変換された低圧三相交流電力を出力する配線の漏電検出を行う漏電検出回路と
を備え、
前記多相変圧器の2次側結線の中点は、前記漏電検出回路を介して接地されている、電力変換装置。
【請求項2】
前記漏電検出回路は、前記整流回路によって前記低圧多相交流電力が変換された前記直流電力を出力する配線の漏電検出を行う、請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項3】
前記整流回路によって前記低圧多相交流電力が変換された前記直流電力を出力する配線の漏電検出を行う直流漏電検出回路
をさらに備える、請求項1または請求項2に記載の電力変換装置。
【請求項4】
前記直流漏電検出回路は、前記直流電力を出力する配線間を接続する抵抗を備え、
前記抵抗の中点が接地されている、請求項3に記載の電力変換装置。
【請求項5】
前記漏電検出回路は、バリスタとコンデンサとを含む、請求項1に記載の電力変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
12相整流回路において、DCリアクトルを省略し、12相整流回路内における配線を簡略化する技術が知られている(例えば特許文献1参照)。この技術によれば、12相整流回路は、変圧器の3相Y結線の巻線の出力電圧を整流する3相ブリッジ整流回路と、3相Δ結線の巻線の出力電圧を整流する3相ブリッジ整流回路とを有し、3相ブリッジ整流回路の出力側と3相ブリッジ整流回路の出力側とを並列に接続して構成される。12相整流回路は、変圧器の一次入力側の各相にACリアクトル2U、2V、2Wを設備する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008-295155号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前述した技術では、2次側にスター結線とデルタ結線の2つの巻線を設け、それぞれ3相交流を生成することで12相の直流電力を生成している。前述した技術では、3相交流電力から直流電力が出力される。
多相変圧器を用いた交流・直流併用配線および漏電保護については記載されていない。
本発明の目的は、直流電力および交流電力を出力でき、交流配線の漏電を検出できる電力変換装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
(1)本発明の一態様は、高圧三相交流電力を低圧多相交流電力に変換する多相変圧器と、前記低圧多相交流電力を直流電力に変換する整流回路と、前記多相変圧器によって前記高圧三相交流電力が変換された低圧三相交流電力を出力する配線の漏電検出を行う漏電検出回路とを備え、前記多相変圧器の2次側結線の中点は、前記漏電検出回路を介して接地されている、電力変換装置である。
(2)本発明の一態様は、上記(1)に記載の電力変換装置において、前記漏電検出回路は、前記整流回路によって前記低圧多相交流電力が変換された前記直流電力を出力する配線の漏電検出を行う。
(3)本発明の一態様は、上記(1)または上記(2)に記載の電力変換装置において、前記整流回路によって前記低圧多相交流電力が変換された前記直流電力を出力する配線の漏電検出を行う直流漏電検出回路をさらに備える。
(4)本発明の一態様は、上記(3)に記載の電力変換装置において、前記直流漏電検出回路は、前記直流電力を出力する配線間を接続する抵抗を備え、前記抵抗の中点が接地されている。
(5)本発明の一態様は、上記(1)から上記(4)のいずれか一項に記載の電力変換装置において、前記漏電検出回路は、バリスタとコンデンサとを含む。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、直流電力および交流電力を出力でき、交流配線の漏電を検出できる電力変換装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の実施形態に係る電力変換装置の一例を示す図である。
図2】本実施形態に係る電力変換装置に含まれる多相変圧器の一例を示す図である。
図3】本実施形態に係る電力変換装置に含まれる多相変圧器の一例を説明するための図である。
図4】本実施形態に係る電力変換装置に含まれる多相変圧器の一例を説明するための図である。
図5】本実施形態に係る電力変換装置の他の例を示す回路図である。
図6】本実施形態に係る電力変換装置の他の例を示す回路図である。
図7】本実施形態に係る電力変換装置の他の例を説明するための図である。
図8】実施形態の変形例1に係る電力変換装置の一例を示す図である。
図9】実施形態の変形例1に係る電力変換装置の動作の一例を示す図である。
図10】実施形態の変形例1に係る電力変換装置の動作の一例を示す図である。
図11】実施形態の変形例2に係る電力変換装置の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
次に、本実施形態の電力変換装置を、図面を参照しつつ説明する。以下で説明する実施形態は一例に過ぎず、本発明が適用される実施形態は、以下の実施形態に限られない。なお、実施形態を説明するための全図において、同一の機能を有するものは同一符号を用い、繰り返しの説明は省略する。
【0009】
また、本願でいう「XXに基づいて」とは、「少なくともXXに基づく」ことを意味し、XXに加えて別の要素に基づく場合も含む。また、「XXに基づいて」とは、XXを直接に用いる場合に限定されず、XXに対して演算や加工が行われたものに基づく場合も含む。「XX」は、任意の要素(例えば、任意の情報)である。
【0010】
(実施形態)
(電力変換装置)
図1は、本発明の実施形態に係る電力変換装置の一例を示す図である。
本実施形態に係る電力変換装置1の一例は、高圧受電設備に組み込まれる。電力変換装置1は、高圧受電設備を収容するキュービクル等に収容され、高圧交流負荷開閉器(LBS)(図示なし)を介して高圧引き込み線が接続される多相変圧器3と、多相変圧器3の出力を整流する整流回路4と、直流漏電検出回路5と、漏電信号出力回路7と、補助スイッチ回路8と、直流遮断器9と、漏電保護補助回路11と、漏電信号出力回路13と、補助スイッチ回路14と、交流漏電遮断器15とを備えている。
直流漏電検出回路5は、保護回路6を備える。漏電保護補助回路11は、漏電検出回路12を備える。
【0011】
電力変換装置1は、高圧3相電源PSから受電した6600Vの高圧3相交流電力を、380V等の特定電圧の低圧交流電力に変換し、変換した電力を直流に変換して出力する。
電力変換装置1は、高圧3相電源PSから受電した6600Vの高圧3相交流電力を、低圧三相交流電力に変換し、出力する。
【0012】
多相変圧器3の一例は12相変圧器であり、整流回路4の一例は4つの3相全波整流回路を備える。以下、一例として、多相変圧器3が12相変圧器である場合について説明を続ける。
12相変圧器は、低圧12相の電圧を出力する。4つの3相全波整流回路は、1組の直流出力を生成する。1組の直流出力は、1組の電路である2本の出力線を含む直流線路M1によって直流負荷DLに供給される。直流負荷DLの筐体は接地されている。
保護回路6は、直流線路M1に含まれる2本の出力線と接続される。保護回路6の一例は、地絡保護回路であり、接地されている。
【0013】
漏電信号出力回路7は、直流線路M1に含まれる2本の出力線と接続される。漏電信号出力回路7は、2本の出力線間の電力に基づいて漏電を検出する。漏電信号出力回路7は、漏電を検出した場合に、漏電を検出したことを通知するための漏電信号を制御/出力回路10に出力する。
補助スイッチ回路8は、2本の出力線のうち、正極側電路に配置されている。補助スイッチ回路8は、主スイッチ(図示なし)がオン/オフされることでオン/オフ動作し、直流線路M1が開閉される。
制御/出力回路10は、整流回路4と直流負荷DLとを電気的に接続する直流線路M1に含まれる2本の出力線を接続又は開放する。例えば、制御/出力回路10は、漏電信号出力回路7が出力した漏電信号を取得した場合に、直流線路M1に含まれる2本の出力線を開放することによって、整流回路4と直流負荷DLとの間を遮断する。
【0014】
12相変圧器が出力する低圧12相の電圧のうち、低圧3相の電圧は、3本の出力線を含む交流線路M2によって交流負荷ALに供給される。交流負荷ALの筐体は接地されている。
漏電検出回路12は、多相変圧器3の2次側結線の中点と接続される。多相変圧器3の2次側結線の中点は、漏電検出回路12を介して接地されている。
漏電信号出力回路13は、漏電検出回路12と接続される。漏電信号出力回路13は、多相変圧器3の2次側結線の中点の電圧に基づいて漏電を検出する。漏電信号出力回路13は、漏電を検出した場合に、漏電を検出したことを通知するための漏電信号を制御/出力回路16に出力する。
【0015】
補助スイッチ回路14は、主スイッチ(図示なし)がオン/オフされることでオン/オフ動作し、交流線路M2が開閉される。
制御/出力回路16は、多相変圧器3と交流負荷ALとを電気的に接続する交流線路M2に含まれる3本の出力線を接続又は開放する。例えば、制御/出力回路16は、漏電信号出力回路13が出力した漏電信号を取得した場合に、直流線路M2に含まれる3本の出力線を開放する。
【0016】
図2は、本実施形態に係る電力変換装置に含まれる多相変圧器の一例を示す図である。多相変圧器3の一例として、12相変圧器3aの具体的構成について説明する。
図2に示すように、12相変圧器3aは、1次側巻線L1を構成する第1巻線21、2次側巻線L2を構成する4つの巻線(第2巻線22、第3巻線23、第4巻線24、第5巻線25)を備えている。何れの巻線も、入力される3相電力に対応する3つの巻回部(21a~21c、22a~22c、23a~23c、24a~24c、25a~25c)を有している。
【0017】
第1巻線21はデルタ結線され、3つの端子(Rin、Sin、Tin)に高圧の3相交流電力が接続される。第2~第5巻線22,23,24,25は、全てスター結線されている。但し、後述するように、第4巻線24、第5巻線25は完全な形でのスター結線ではない。以下、3相をR相、S相、T相として説明する。尚、第1巻線21はスター結線であってもよい。
【0018】
12相変圧器3aの2次側は、第2巻線22の出力端子R1,S1,T1、第3巻線23の出力端子R2,S2,T2、第4巻線24の出力端子R3,S3,T3、第5巻線25の出力端子R4,S4,T4を有し、全12端子を備えている。
第2巻線22と第3巻線23のスター結線された中性点Q同士は連結され、第3巻線23は第2巻線22に対して極性が反転するように鉄心18に巻回されている。また、第4巻線24と第5巻線25とは、第3巻線23の途中の同一点から分岐して形成され、第4巻線24と第5巻線25とは、第3巻線23の中性点Qを兼用している。
【0019】
第4巻線24、第5巻線25は具体的に以下のように鉄心18に巻回されている。まず、第4巻線24の各相は次のように巻回されている。
R相巻線24aは、第3巻線23のR相巻線23aの途中から分岐して引き出され、1次側S相と共通の脚部鉄心18bに巻回されている。先端が出力端子R3である。
S相巻線24bは、第3巻線23のS相巻線23bの途中から分岐して引き出され、第1巻線21のT相(或いは第2巻線22のT相)と共通の脚部鉄心18cに巻回されている。先端が出力端子S3である。
T相巻線24cは、第3巻線23のT相巻線23cの途中から分岐して引き出され、1次側R相と共通の脚部鉄心18aに巻回されている。先端が出力端子T3である。
【0020】
第5巻線25の各相は次のように巻回されている。
R相巻線25aは、第4巻線24と同一部位である第3巻線23のR相巻線23aの途中から分岐して引き出され、第1巻線21のT相(或いは第2巻線22のT相)と共通の脚部鉄心18cに巻回されている。先端が出力端子R4である。
S相巻線25bは、第4巻線24と同一部位である第3巻線23のS相巻線23bの途中から分岐して引き出され、第1巻線21のR相(或いは第2巻線22のR相)と共通の脚部鉄心18aに巻回されている。先端が出力端子S4である。
T相巻線25cは、第4巻線24と同一部位である第3巻線23のT相巻線23cの途中から分岐して引き出され、第1巻線21のS相(或いは第2巻線22のS相)と共通の脚部鉄心18bに巻回されている。先端が出力端子T4である。
【0021】
図3は、本実施形態に係る電力変換装置に含まれる多相変圧器の一例を説明するための図である。図3は2次側巻線L2の個々の巻線のベクトル説明図であり、第2巻線22のR1相を基準に各相を示している。
図3に示すように、第2巻線22の3相の巻線22a,22b,22cは、入力される3相電力と同様にそれぞれ120度の位相差を有する電圧を出力端子R1,S1,T1から出力する。
第3巻線23の各巻線23a,23b,23cの位相は、この第2巻線22に対して上述したように正反対の極性を示し、出力端子R2,S2,T2の位相は、第2巻線22のR1,S1,T1の各相に対して180度の位相差を有している。尚、第2巻線22に対する第3巻線23の巻回数は、0.73倍(√3-1倍)となっている。
【0022】
第4巻線24の第3巻線23から引き出した巻線24a,24b,24cの各出力端子R3,S3,T3の位相は、第2巻線22の各相と同位相の電圧を発生する。
第5巻線25の第3巻線23から引き出した巻線25a,25b,25cの各出力端子R4,S4,T4の位相は、第4巻線24と同様に第2巻線22の対応する各相の出力端子R1,S1,T1と同位相の電圧を発生する。
【0023】
図4は、本実施形態に係る電力変換装置に含まれる多相変圧器の一例を説明するための図である。図4は2次側の位相説明図で、第2巻線22のR1端子の位相に対する第3巻線23,第4巻線24,第5巻線25の出力位相を示している。
図4に示すように、第2巻線22のR1端子とT1端子間の電圧絶対値及び位相に対して、第2巻線22のR1端子と第4巻線24のT3端子間の電圧絶対値は等しく、位相は15度遅れている。
また、第2巻線22のR1端子と第3巻線23のR2端子間の電圧絶対値は等しく、位相は30度遅れている。第2巻線22のR1端子と第5巻線25のS4端子間の電圧絶対値は等しく、位相は45度遅れている。
【0024】
前述した実施形態では、多相変圧器3が12相変圧器である場合について説明したが、この例に限られない。例えば、多相変圧器3が、3相変圧器でもよいし、6相変圧器でもよいし、24相変圧器でもよい。一例として、多相変圧器3が6相変圧器である場合について説明する。
図5は、本実施形態に係る電力変換装置の他の例を示す回路図である。図5は、多相変圧器3を6相変圧器3bとした電力変換装置1の構成図である。図5には、12相変圧器3aを使用した構成のうち、直流漏電検出回路5、整流回路4を示している。但し、整流回路4は、6相の交流電圧を整流すればよいため、ダイオード数は半減している。
【0025】
図6は、本実施形態に係る電力変換装置の他の例を示す回路図である。6相変圧器3bは、1次側巻線L1を構成する第1巻線41、2次側巻線L2を構成する第2巻線42及び第3巻線43の3つの巻線を有している。何れも3相電力に対応するための3つの巻回部(41a~41c、42a~42c、43a~43c)を有し、スター結線されている。
【0026】
第1巻線41は高圧の3相電源のR相、S相、T相の各相が接続されるRin,Sin,Tinの3端子(1次側端子)を備えている。第2巻線42は3つの出力端子(2次側端子)R1,S1,T1を有し、第3巻線43は3つの出力端子(2次側端子)R2,S2,T2を有している。第2巻線42と第3巻線43のスター結線された中性点同士は連結されている。
【0027】
各巻線41,42,43の巻回部(41a~41c、42a~42c、43a~43c)は、この鉄心48の3本の脚にそれぞれ巻回されている。但し、第3巻線43は第2巻線42に比べて巻回数が少なく、第2巻線42と第3巻線43とは1:(√3-1)の比で巻回されている。具体的に、第3巻線43は第2巻線42に比べて約0.73倍の巻数で巻回されている。
【0028】
図7は、本実施形態に係る電力変換装置の他の例を説明するための図である。図7は、前述したように巻回した2次側の6端子に発生する電圧のベクトル図を示し、(a)は各相の電圧、(b)は線間電圧を示している。
図7の(a)に示すように、第2巻線42から出力される3相の電圧VR1、VS1、VT1、及び第3巻線43から出力される3相の電圧VR2,VS2,VT2は、それぞれ120度の位相差を有しているが、第3巻線43の出力は第2巻線42との巻線比に比例して小さい。そのため、出力される電圧が巻き数比に比例した大きさとなる。
【0029】
線間(相間)電圧は、図7(b)に示すように、R1端子-S1端子間の電圧VS1-R1の位相に対して、S1端子-S2端子間の電圧VS1-S2(VS1+VS2)は30進相で発生し、且つ絶対値は等しい。
S1端子-T1端子間の電圧VT1-S1の位相に対して、T1端子-T2端子間の電圧VT1-T2(VT1+VT2)は30進相で発生し、且つ絶対値は等しい。
T1端子-R1端子間の電圧VR1-T1の位相に対して、R1端子-R2端子間の電圧VR1-R2(VR1+VR2)は30進相で発生し、且つ絶対値は等しい。
各巻線を巻回した6相変圧器3bの出力電圧は全波整流する整流回路4で整流され、12相の電圧波形から成る直流が生成され、リップルの小さい直流電圧を得ることができる。
【0030】
このように、第1巻線41に加えて、2次側の電圧を生成する第2巻線42及び第3巻線43もスター結線するため、生成する電圧を一定にし易い。そして、第3巻線43もスター結線されるため、従来のデルタ結線に比べて巻数を√3分の1減らすことができるため、6相変圧器3bを小型にできる。
第2巻線42から出力される線間電圧の位相に対して、第2巻線42と第3巻線43の同一相間の線間電圧は30度の位相差を有して発生するため、6相の電圧を生成できる。全波整流することで30度位相がズレた全12相の波形を生成することができる。
よって、6相の多相の低圧交流電力を生成して整流回路4により全波整流して直流電力を生成することで、リップルの小さい直流を生成でき、高周波で切り替え動作するコンバータを使用することなく安定した直流電力の生成が可能となる。よって、高周波スイッチングによるノイズが発生することがない。
【0031】
本実施形態に係る電力変換装置1によれば、電力変換装置1は、高圧三相交流電力を低圧多相交流電力に変換する多相変圧器3と、低圧多相交流電力を直流電力に変換する整流回路4と、多相変圧器3によって高圧三相交流電力が変換された低圧三相交流電力を出力する配線の漏電検出を行う漏電検出回路12とを備える。多相変圧器3の2次側結線の中点は、漏電検出回路12を介して接地されている。
このように構成することによって、多相変圧器3の2次側結線の中点を、漏電検出回路12を介して接地できるため、漏電検出回路12は、多相変圧器3の2次側結線の中点の電圧に基づいて、多相変圧器3によって高圧三相交流電力が変換された低圧三相交流電力を出力する配線の漏電検出を行うことができる。このため、電力変換装置1は、直流電力および交流電力を出力できるとともに、交流配線の漏電を検出できる。
【0032】
電力変換装置1において、整流回路4によって低圧多相交流電力が変換された直流電力を出力する配線の漏電検出を行う直流漏電検出回路5をさらに備える。
このように構成することによって、直流漏電検出回路5は、直流電力を出力する配線の漏電検出を行うことができるため、交流配線の漏電に加え、直流配線の漏電を検出できる。
【0033】
(実施形態の変形例1)
図8は、実施形態の変形例1に係る電力変換装置の一例を示す図である。図8において、多相変圧器3は12相変圧器の2次側巻線L2のベクトル図で示している。
実施形態の変形例1に係る電力変換装置1aは、電力変換装置1において、直流漏電検出回路5の代わりに直流漏電検出回路5aを備え、保護回路6の代わりに保護回路6aを備え、漏電保護補助回路11の代わりに漏電保護補助回路11aを備え、漏電検出回路12の代わりに漏電検出回路12aを備える。
【0034】
保護回路6aは、2個の抵抗Rrを含んで構成される。保護回路6aにおいて、直流線路M1に含まれる2本の出力線(配線)の各々は、抵抗Rrを介して接地される。抵抗Rrの抵抗値の一例は、10kΩ~50kΩである。
換言すれば、保護回路6aは、直流線路M1に含まれる2本の出力線(配線)間を接続する抵抗を備え、抵抗の中点が接地されている。
漏電検出回路12aは、バリスタVとコンデンサCとを含んで構成される。漏電検出回路12aは、多相変圧器3の2次側結線の中点とバリスタVおよびコンデンサCの一方の端子とが接続され、バリスタVおよびコンデンサCの他方の端子は接地される。
【0035】
(電力変換装置1aの動作)
図9は、実施形態の変形例1に係る電力変換装置の動作の一例を示す図である。図9を参照して交流配線側で漏電等の電路異常が発生した場合について説明する。交流配線側で漏電が発生した場合の電流の経路を破線で示す。
一例として、R相が漏電した場合について説明する。R相からの漏電電流は大地から漏電検出回路12aを介して多相変圧器3の2次側結線の中点に流れる。
漏電電流が漏電検出回路12aから多相変圧器3の2次側結線の中点に流れるときに、漏電検出回路12aのバリスタVにより電流が制限される。地絡電流が漏電検出回路12aのバリスタVで制限されるため、交流配線側で電路異常が発生した場合に、バリスタVにより漏電電流を抑制でき、被害を抑制できる。
【0036】
R相が漏電した場合に限らず、S相、T相が漏電した場合についても同様に、漏電電流が漏電検出回路12aから多相変圧器3の2次側結線の中点に流れるときに、漏電検出回路12aのバリスタVにより電流が制限される。地絡電流が漏電検出回路12aのバリスタVで制限されるため、交流配線側で電路異常が発生した場合に、バリスタVにより漏電電流を抑制でき、被害を抑制できる。
【0037】
漏電信号出力回路13は、漏電検出回路12aのコンデンサCの端子間の電位差を計測し、電位差の計測結果を監視している。漏電検出回路12aのコンデンサCの端子間の電位差は、正常時には零である。
漏電信号出力回路13は、コンデンサCの端子間の電位差が所定の範囲を外れた場合に、異常が発生したと判断する。例えば、漏電信号出力回路13は、コンデンサCの電位差が閾値以上になった場合に、地絡事故が発生した判断する。漏電信号出力回路13は、異常が発生したと判断した場合に、漏電信号を制御/出力回路16に出力する。
制御/出力回路16は、漏電信号出力回路13が出力した漏電信号を取得し、取得した漏電信号に基づいて、交流線路M2に含まれる3本の出力線を開放することによって多相変圧器3と交流負荷ALとの間を遮断する。
【0038】
図10は、実施形態の変形例1に係る電力変換装置の動作の一例を示す図である。図10を参照して直流配線側で漏電等の電路異常が発生した場合について説明する。直流配線側で漏電が発生した場合の電流の経路を破線で示す。
一例として、直流電路M1に含まれる2本の出力線の一方で地絡が発生した場合について説明する。地絡電流は大地から保護回路6aを介して他方の出力線へ流れ、その後整流回路4、多相変圧器3を経由して地絡した出力線に流れる。
地絡電流が保護回路6aから他方の出力線へ流れるときに、保護回路6aの抵抗素子Rrにより電流が制限される。地絡電流が保護回路6aの抵抗素子Rrで制限されるため、直流電力出力側で電路異常が発生した場合に、抵抗素子Rrにより漏電電流を抑制でき、被害を抑制できる。
【0039】
漏電信号出力回路7は、保護回路6aの抵抗素子Rrに流れる電流あるいは抵抗素子Rrの両端電圧を計測し、電流あるいは電圧の計測結果を監視している。保護回路6の抵抗素子Rrには、正常時一定の電流が流れている。例えば、直流電路に380Vの電圧が通電されている場合、抵抗素子Rrが10kΩであれば、19mAが常時流れている。
漏電信号出力回路7は、抵抗素子Rrに流れる電流あるいは抵抗素子Rrの両端電圧の計測結果が所定の範囲を外れた場合に、異常が発生したと判断する。例えば、漏電信号出力回路7は、抵抗素子Rrに流れる電流の計測結果が10mA以下になった場合に、地絡事故が発生した判断するようにしてもよい。
漏電信号出力回路7は、異常が発生したと判断した場合に、漏電が検出されたことを通知するための漏電信号を制御/出力回路10に出力する。
制御/出力回路10は、漏電信号出力回路7が出力した漏電信号を取得し、取得した漏電信号に基づいて、直流線路M1に含まれる2本の出力線を開放することによって、整流回路4と直流負荷DLとの間を遮断する。
【0040】
前述した実施形態の変形例1において、漏電信号出力回路7は、保護回路6aの抵抗素子Rrに流れる電流および抵抗素子Rrの両端電圧を計測し、電流および電圧の計測結果を監視するようにしてもよい。漏電信号出力回路7は、抵抗素子Rrに流れる電流と抵抗素子Rrの両端電圧のいずれか一方又は両方の計測結果が所定の範囲を外れた場合に、異常が発生したと判断するようにしてもよい。 実施形態の変形例1に係る電力変換装置1aによれば、電力変換装置1aは、電力変換装置1において、直流漏電検出回路5は、直流電力を出力する配線間を接続する抵抗を備え、抵抗の中点が接地されている。
このように構成することによって、多相変圧器3の2次側結線の中点を、漏電検出回路12を介して接地できるため、漏電検出回路12は、多相変圧器3の2次側結線の中点の電圧に基づいて、多相変圧器3によって高圧三相交流電力が変換された低圧三相交流電力を出力する配線の漏電検出を行うことができる。
このため、電力変換装置1は、直流電力および交流電力を出力でき、交流配線の漏電を検出できる。さらに、直流電路M1に地絡が発生した場合に地絡電流を保護回路6aの抵抗素子Rrで制限されるため、直流電力出力側で電路異常が発生した場合に、抵抗素子Rrにより漏電電流を抑制でき、被害を抑制できる。
【0041】
電力変換装置1aにおいて、漏電検出回路12aは、バリスタとコンデンサとを含む。
このように構成することによって、交流配線側で漏電が発生した場合に地絡電流が漏電検出回路12aのバリスタVで制限されるため、交流配線側で電路異常が発生した場合に、バリスタVにより漏電電流を抑制でき、被害を抑制できる。
【0042】
(実施形態の変形例2)
図11は、実施形態の変形例2に係る電力変換装置の一例を示す図である。図11において、多相変圧器3は、12相変圧器の2次側巻線L2のベクトル図で示している。
実施形態の変形例2に係る電力変換装置1bは、電力変換装置1において、直流漏電検出回路5は省略され、漏電保護補助回路11の代わりに漏電保護補助回路11bを備え、漏電検出回路12の代わりに漏電検出回路12bを備える。
漏電検出回路12bは、バリスタVとコンデンサCと抵抗Rとを含んで構成される。漏電検出回路12bは、多相変圧器3の2次側結線の中点とバリスタV、コンデンサCおよび抵抗Rの一方の端子とが接続され、バリスタV、コンデンサCおよび抵抗Rの他方の端子は接地される。
漏電信号出力回路13と、制御/出力回路10とが接続される。
【0043】
(電力変換装置1bの動作)
交流配線側で漏電等の電路異常が発生した場合について説明する。一例として、R相が漏電した場合について説明する。R相からの漏電電流は大地から漏電検出回路12bを介して多相変圧器3の2次側結線の中点に流れる。
漏電電流が漏電検出回路12bから多相変圧器3の2次側結線の中点に流れるときに、漏電検出回路12bのバリスタVにより電流が制限される。地絡電流が漏電検出回路12bのバリスタVで制限されるため、交流配線側で電路異常が発生した場合に、バリスタVにより漏電電流を抑制でき、被害を抑制できる。
【0044】
R相が漏電した場合に限らず、S相、T相が漏電した場合についても同様に、漏電電流が漏電検出回路12bから多相変圧器3の2次側結線の中点に流れるときに、漏電検出回路12bのバリスタVにより電流が制限される。地絡電流が漏電検出回路12bのバリスタVで制限されるため、交流配線側で電路異常が発生した場合に、バリスタVにより漏電電流を抑制でき、被害を抑制できる。
【0045】
漏電信号出力回路13は、漏電検出回路12bのコンデンサCの端子間の電位差を計測し、電位差の計測結果を監視している。漏電検出回路12bのコンデンサCの端子間の電位差は、正常時には零である。
漏電信号出力回路13は、コンデンサCの端子間の電位差が所定の範囲を外れた場合に、異常が発生したと判断する。例えば、漏電信号出力回路13は、コンデンサCの電位差が閾値以上になった場合に、地絡事故が発生した判断する。漏電信号出力回路13は、異常が発生したと判断した場合に、漏電が発生したことを通知するための漏電信号を制御/出力回路16に出力する。
制御/出力回路16は、漏電信号出力回路13が出力した漏電信号を取得し、取得した漏電信号に基づいて、交流線路M2に含まれる3本の出力線を開放することによって多相変圧器3と交流負荷ALとの間を遮断する。
【0046】
直流配線側で漏電等の電路異常が発生した場合について説明する。図11において、直流配線側で漏電が発生した場合の電流の経路を破線で示す。
一例として、直流電路M1に含まれる2本の出力線の一方で地絡が発生した場合について説明する。地絡電流は大地から漏電検出回路12bを介して多相変圧器3の2次側結線の中点に流れる。
地絡電流が、漏電検出回路12bから多相変圧器3の2次側結線の中点に流れるときに、漏電検出回路12bの抵抗素子Rにより電流が制限される。地絡電流が漏電検出回路12bの抵抗素子Rで制限されるため、直流電力出力側で電路異常が発生した場合に、抵抗素子Rにより漏電電流を抑制でき、被害を抑制できる。
【0047】
漏電信号出力回路13は、漏電検出回路12bの抵抗素子Rに流れる電流あるいは抵抗素子Rの両端電圧を計測し、電流あるいは電圧の計測結果を監視している。漏電検出回路12bの抵抗素子Rには、正常時に電流は流れていない。
漏電信号出力回路13は、抵抗素子Rに流れる電流あるいは抵抗素子Rの両端電圧の計測結果が所定の範囲を外れた場合に、異常が発生したと判断する。例えば、漏電信号出力回路13は、抵抗素子Rに流れる電流の計測結果が所定の閾値以上になった場合に、地絡事故が発生した判断する。漏電信号出力回路13は、異常が発生したと判断した場合に、漏電が発生したことを通知するための漏電信号を制御/出力回路10に出力する。
制御/出力回路10は、漏電信号出力回路13が出力した漏電信号を取得し、取得した漏電信号に基づいて、直流線路M1に含まれる2本の出力線を開放することによって整流回路4と直流負荷DLとの間を遮断する。
前述した実施形態の変形例2において、漏電信号出力回路13は、漏電検出回路12bの抵抗素子Rに流れる電流および抵抗素子Rの両端電圧を計測し、電流および電圧の計測結果を監視するようにしてもよい。漏電信号出力回路7は、抵抗素子Rに流れる電流と抵抗素子Rの両端電圧のいずれか一方又は両方の計測結果が所定の範囲を外れた場合に、異常が発生したと判断するようにしてもよい。
【0048】
実施形態の変形例2に係る電力変換装置1bによれば、電力変換装置1bは、電力変換装置1において、漏電検出回路12bは、整流回路4によって低圧多相交流電力が変換された直流電力を出力する配線の漏電検出を行う。
このように構成することによって、多相変圧器3の2次側結線の中点を、漏電検出回路12を介して接地できるため、漏電検出回路12は、多相変圧器3の2次側結線の中点の電圧に基づいて、多相変圧器3によって高圧三相交流電力が変換された低圧三相交流電力を出力する配線の漏電検出を行うことができる。このため、電力変換装置1は、直流電力および交流電力を出力でき、交流配線の漏電を検出できる。
さらに、漏電検出回路12bは、多相変圧器3によって高圧三相交流電力が変換された低圧三相交流電力を出力する配線の漏電検出に加え、整流回路4によって低圧多相交流電力が変換された直流電力を出力する配線の漏電検出を行うことができる。整流回路4によって低圧多相交流電力が変換された直流電力を出力する配線の漏電検出を行う漏電検出回路を別途備える場合と比較して、電力変換装置1bを小型化できる。
【0049】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。例えば、実施形態に係る電力変換装置1と、実施形態の変形例1に係る電力変換装置1aと、実施形態の変形例2に係る電力変換装置1bとのうち、少なくとも2つが適宜組み合わされてもよい。
【符号の説明】
【0050】
1、1a、1b…電力変換装置、3…多相変圧器、3a…12相変圧器、3b…6相変圧器、4…整流回路、5、5a、5b…直流漏電検出回路、6、6a、6b…保護回路、7…漏電信号出力回路、8…補助スイッチ回路、9…直流遮断器、10…制御/出力回路、11、11a、11b…漏電保護補助回路、12、12a、12b…漏電検出回路、13…漏電信号出力回路、14…補助スイッチ回路、15…交流漏電遮断器、16…制御/出力回路。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11