(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023170138
(43)【公開日】2023-12-01
(54)【発明の名称】射出成形機の管理システム、および射出成形機
(51)【国際特許分類】
B29C 45/76 20060101AFI20231124BHJP
B29C 45/17 20060101ALI20231124BHJP
B29C 45/00 20060101ALI20231124BHJP
【FI】
B29C45/76
B29C45/17
B29C45/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022081655
(22)【出願日】2022-05-18
(71)【出願人】
【識別番号】000004215
【氏名又は名称】株式会社日本製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】粟井 藍
【テーマコード(参考)】
4F206
【Fターム(参考)】
4F206AM20
4F206AP01
4F206AP02
4F206AP03
4F206AP04
4F206AP05
4F206AP06
4F206AP07
4F206AP08
4F206AP10
4F206AP20
4F206AR20
4F206JA07
4F206JL02
4F206JP11
4F206JP13
4F206JP22
4F206JP23
4F206JP24
4F206JP27
4F206JT32
(57)【要約】
【課題】複数の射出成形機を含む管理システムにおいて、異なる射出成形機の射出成形処理に関連するデータを容易に比較できる射出成形機の管理システムを提供する。
【解決手段】射出成形機100と射出成形機100に類似する射出成形機200~500とを含む管理システム1である。管理システム1は、操作盤30と、制御装置40とを備える。制御装置40は、射出成形機100の射出成形処理に関連する第1データを取得し、第1データに対する比較対象として、射出成形機200の射出成形処理に関連する第2データを取得し、第1データと第2データとを比較可能な態様で操作盤30に表示させる。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ネットワークを介して接続された第1射出成形機と前記第1射出成形機に類似する第2射出成形機とを含む管理システムであって、
表示装置と、
制御装置とを備え、
前記制御装置は、
前記第1射出成形機の射出成形処理に関連する第1データを取得し、
前記第1データに対する比較対象として、前記第2射出成形機の射出成形処理に関連する第2データを取得し、
前記第1データと前記第2データとを比較可能な態様で前記表示装置に表示させる、管理システム。
【請求項2】
前記第1射出成形機は、前記第1射出成形機の状態を検出する第1センサをさらに備え、
前記第2射出成形機は、前記第1センサによって検出される前記第1射出成形機の状態に対応する前記第2射出成形機の状態を検出する第2センサをさらに備え、
前記第1データは、前記第1射出成形機の射出成形処理中における前記第1センサの検出値を時系列で示す第1波形データであり、
前記第2データは、前記第2射出成形機の射出成形処理中における前記第2センサの検出値を時系列で示す第2波形データである、請求項1に記載の管理システム。
【請求項3】
前記第1射出成形機は、射出材料を金型に射出する第1射出モータをさらに備え、
前記第2射出成形機は、射出材料を金型に射出する第2射出モータをさらに備え、
前記第1センサによって検出される前記第1射出成形機の状態は、前記第1射出モータの駆動に関連し、
前記第2センサによって検出される前記第2射出成形機の状態は、前記第2射出モータの駆動に関連する、請求項2に記載の管理システム。
【請求項4】
前記表示装置は、前記第1波形データに対して前記第2波形データを重畳させて表示する、請求項2に記載の管理システム。
【請求項5】
前記第1データは、成形条件として前記第1射出成形機に設定されたパラメータ値であり、
前記第2データは、成形条件として前記第2射出成形機に設定され、前記第1データに対応するパラメータ値である、請求項1に記載の管理システム。
【請求項6】
前記制御装置は、
前記第1データと前記第2データとの差が規定の範囲内である場合、前記第1データを第1態様で前記表示装置に表示させ、
前記第1データと前記第2データとの差が規定の範囲外である場合、前記第1データを前記第1態様と異なる第2態様で前記表示装置に表示させる、請求項5に記載の管理システム。
【請求項7】
前記制御装置は、前記第2射出成形機に取り付けられている金型の種類が前記第1射出成形機に取り付けられている金型の種類と同じである場合か、または、前記第2射出成形機の射出材料の種類が前記第1射出成形機の射出材料の種類と同じである場合には、前記第1データと前記第2データとを比較可能な態様で前記表示装置に表示させる、請求項1~請求項6のいずれか1項に記載の管理システム。
【請求項8】
記憶装置をさらに備え、
前記記憶装置は、波形データとパラメータ値との関係を学習した学習済みモデルを記憶し、
前記制御装置は、前記第1波形データと前記第2波形データとを前記学習済みモデルに入力し、前記第1波形データを前記第2波形データに近づけるためのパラメータ値を出力させる、請求項2~請求項4のいずれか1項に記載の管理システム。
【請求項9】
他の射出成形機とネットワークを介して接続された射出成形機であって、
表示装置と、
制御装置とを備え、
前記制御装置は、
前記射出成形機の射出成形処理に関連する第1データを取得し、
前記第1データに対する比較対象として、他の射出成形機の射出成形処理に関連する第2データを取得し、
前記第1データと前記第2データとを比較可能な態様で前記表示装置に表示させる、射出成形機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、射出成形機の管理システム、および射出成形機に関する。
【背景技術】
【0002】
複数の射出成形機を導入して、同形の製品または類似の製品を大量生産する工場が存在する。このような複数の射出成形機を導入するシステムの一例として、特許文献1(特開2021-45876号公報)に開示されている射出成形システムがある。
【0003】
特許文献1によって開示されている複数の射出成形機の各々は、タッチパネルを備えている。操作者は、タッチパネルを操作することによって、射出成形機の成形品の画像の確認、成形条件の入力などを行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような複数の射出成形機を含むシステムでは、ある1つの射出成形機から不良品が成形された場合、不良品が成形された射出成形機の状態と良品を成形している他の射出成形機の状態とを比較して、不良品成形の原因分析が行われ得る。
【0006】
しかしながら、2つの射出成形機の状態を比較するためには、2つの射出成形機から射出成形処理に関連するデータを取得する作業を別々に行う必要があり、ユーザの作業は煩雑なものであった。より具体的には、ユーザは、不良品が成形された射出成形機および良品を成形している他の射出成形機の両方のタッチパネルを操作する必要があった。
【0007】
本開示は、このような課題を解決するためになされたものであって、その目的は、複数の射出成形機を含む管理システムにおいて、ある射出成形機から別の射出成形機の射出成形処理に関連するデータを比較できる射出成形機の管理システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示に係る射出成形機は、第1射出成形機の射出成形処理に関連する第1データを取得し、第1データに対する比較対象として、第2射出成形機の射出成形処理に関連する第2データを取得し、第1データと第2データとを比較可能な態様で表示装置に表示させる。
【発明の効果】
【0009】
本開示に係る射出成形機の管理システムによれば、複数の射出成形機において異なる射出成形機の射出成形処理に関連するデータを比較できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施の形態1における射出成形機の管理システムを示す図である。
【
図2】実施の形態1における射出成形機の外観図である。
【
図4】実施の形態1における比較表示処理のフローチャートを示す図である。
【
図5】射出工程に関する波形データを比較表示した画面の一例を示す図である。
【
図6】射出工程に関する波形データを比較表示した画面の変形例である。
【
図7】実施の形態2における比較表示処理のフローチャートを示す図である。
【
図8】入力パラメータを比較表示した画面の一例である。
【
図9】加熱シリンダに配置されているヒータに設定された温度を比較表示した画面の一例である。
【
図10】実施の形態3における比較表示処理のフローチャートを示す図である。
【
図11】機械学習によって得られた学習済みモデルを用いて入力パラメータを調整する一例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
【0012】
[実施の形態1]
<射出成形機の管理システム>
以下では、
図1を用いて、実施の形態1における射出成形機の管理システム1について説明する。
図1は、実施の形態1における射出成形機の管理システム1を示す図である。
図1に示されるように、実施の形態1における射出成形機の管理システム1は、射出成形機100~500として示される5基の射出成形機を含む。射出成形機100~500の各々は、互いにネットワークNWを介して接続されている。射出成形機100~500は、同一の型式の射出成形機である。
【0013】
なお、実施の形態1の射出成形機の管理システム1に含まれる射出成形機の数は5基に限られず、2基以上の射出成形機を含んでいればよい。また、射出成形機100~500の全ては、同一の型式の射出成形機ではなくてもよく、射出成形機100~500の一部に、たとえば試験用の射出成形機または旧式の射出成形機などの類似の射出成形機が含まれていてもよい。
【0014】
たとえば、射出成形機100~500には、異なる種類の金型が取り付けられ得る。
図1に示されるように、射出成形機100に取り付けられている金型は形状S1を有する。射出成形機200に取り付けられている金型は形状S2を有する。射出成形機300に取り付けられている金型は形状S3を有する。射出成形機400に取り付けられている金型は形状S1を有する。射出成形機500に取り付けられている金型は形状S1を有する。
【0015】
また、射出成形機100~500には、異なる種類の射出材料が用いられ得る。射出成形機100に用いられる射出材料は樹脂R1である。射出成形機200に用いられる射出材料は樹脂R1である。射出成形機300に用いられる射出材料は樹脂R1である。射出成形機400に用いられる射出材料は樹脂R1である。射出成形機500に用いられる射出材料は樹脂R2である。
【0016】
このように実施の形態1における管理システム1では、多様な金型、射出材料を用いて、射出成形処理が行われている。射出成形機100と射出成形機400とには、同一の金型の形状S1が取り付けられ、同一の樹脂R1が射出材料として用いられている。また、射出成形機100~500の各々は、後述する記憶装置を含む。射出成形機100~500の各々に含まれている記憶装置には、各々が用いる金型の種類および射出材料の種類が記憶されている。用いられる金型の種類および射出材料の種類が変更されるとき、ユーザは、各々の記憶装置に記憶されている金型の種類と射出材料の種類とを更新する。
【0017】
<射出成形機の構成>
以下では、
図2を用いて実施の形態1における射出成形機100について説明する。
図2は、実施の形態1における射出成形機100の外観図である。
図2では、射出成形機100の構成について説明するが、射出成形機200~500も
図2にて説明する構成と同様の構成を有する。
【0018】
射出成形機100は、XY平面上に載置されている。XY平面に垂直な方向をZ軸方向とする。以下では、
図1におけるZ軸の正方向を上面側または上方、負方向を下面側または下方と称する場合がある。なお、実施の形態1における射出成形機100は、横型の射出成形機として示されているが、横型に限られず、竪型の射出成形機であってもよい。
【0019】
射出成形機100によって実行される射出成形処理は、型締工程、射出工程、保圧工程、冷却工程、型開工程、突出工程、および可塑化工程を含む。射出成形機100は、上記の射出成形処理のサイクルを繰り返し実行する。射出成形機100は、金型を型締めする型締装置10と、射出材料を溶融して射出する射出装置20と、操作盤30と、制御装置40とを備える。型締装置10は、射出装置20に対して、X軸の負方向側に配置されている。
【0020】
<型締装置について>
型締装置10は、ベッド11と、固定盤12と、型締ハウジング13と、可動盤14と、タイバー15と、型締機構16と、金型17,18と、ボールねじ19とを備える。ベッド11は、固定盤12、型締ハウジング13、可動盤14等の型締装置10が備える構成を保持する。固定盤12は、ベッド11に固定されている。型締ハウジング13は、ベッド11上をX軸方向にスライド可能であるように構成されている。同様に、可動盤14は、ベッド11上をX軸方向にスライド可能であるように構成されている。
【0021】
タイバー15は、固定盤12と型締ハウジング13との間に配置され、固定盤12と型締ハウジング13とを連結する。タイバー15は、複数のバーを含み、実施の形態1における射出成形機100は、タイバー15として4本のバーを備えている。ある局面では、タイバー15は、5本以上のバーを含んでもよい。
【0022】
可動盤14は、固定盤12と型締ハウジング13との間でX軸方向にスライド可能であるように構成される。型締機構16は、型締ハウジング13と可動盤14との間に設けられる。実施の形態1における型締ハウジング13は、トグル機構を含んで構成される。なお、型締機構16は、直圧式の型締機構を含んで構成されてもよい。直圧式の型締機構とは、すなわち型締シリンダを意味する。
【0023】
金型17は、固定盤12に対して固定されている。また、金型18は、可動盤14に対して固定されている。金型17,18は、固定盤12と可動盤14との間に設けられる。金型17,18は、型締機構16が駆動することにより、開閉されるように構成されている。金型17,18とが離れている状態から密着する状態へと移行する工程を「型締」と称する。また、金型17,18とが密着している状態から離れている状態へと移行する工程を「型開」と称する。サーボモータ81は、型締工程および型開工程に用いられるモータである。ボールねじ19は、回転運動を直線運動に変換することにより、型締機構16を開閉させる。
【0024】
射出成形機100は、型開工程の後に「突出」と称される工程を行う。突出工程は、金型17,18内に充填された後に固化された樹脂などの射出材料を、金型17,18から取り外す工程である。サーボモータ82は、突出工程に用いられるモータである。
【0025】
<射出装置について>
射出装置20は、基台21と、加熱シリンダ22と、スクリュ23と、駆動装置24と、ホッパ25と、射出ノズル26と、ノズルタッチ装置27と、ヒータ29A~29Cとを備える。基台21は、ベッド11のX軸の正方向側に配置され、駆動装置24等を保持する。駆動装置24の内部には、サーボモータ83,84が含まれる。基台21の内部には、制御装置40が含まれる。
【0026】
スクリュ23は、加熱シリンダ22の内部に格納されている。駆動装置24内のサーボモータ83は、X軸方向を中心軸としてスクリュ23を回転させる。すなわち、サーボモータ83は、可塑化工程に用いられるモータである。可塑化工程とは、加熱シリンダ22による加熱とスクリュ23の回転とによって、射出する樹脂を混錬する工程である。
【0027】
サーボモータ84の駆動によって、スクリュ23は、X軸方向にスライドする。すなわち、サーボモータ84は、射出工程または保圧工程に用いられるモータである。射出工程とは、可塑化工程によって可塑化された樹脂を金型17,18内に射出する工程である。保圧工程とは、射出工程によって射出された樹脂を金型17,18内に保持するために圧力を保持する工程である。射出工程は、成形品の基材となる射出材料を金型へと流し込む工程であるため、他の工程と比較して成形品の品質への影響度合いが大きい。言い換えれば、一般的な射出成形処理では、射出工程が不良品が成形されてしまう原因となる頻度が、他の工程が原因となる頻度よりも高い。
【0028】
ホッパ25は、可塑化される前の樹脂等の射出材料を保持する容器であり、加熱シリンダ22のZ軸の正方向側に設けられる。射出ノズル26は、加熱シリンダ22のX軸の負方向側の端部に設けられている。ノズルタッチ装置27は、たとえば油圧シリンダを用いた機構、あるいは、ボールねじを用いた機構によって構成される。ノズルタッチ装置27は、射出装置20における駆動装置24と型締装置10における固定盤12とを連結する。ノズルタッチ装置27がボールねじを用いた機構によって構成されている場合には、ノズルタッチ装置27は、駆動装置24内のサーボモータによって駆動され、駆動装置24および加熱シリンダ22をX軸方向に移動させる。
【0029】
なお、ノズルタッチ機構の構成については、上記のように固定盤12と駆動装置24との間に配置されたボールねじによって射出装置20全体を移動させる構成には限らず、他の構成であってもよい。たとえば、装置フレームと加熱シリンダ22後部の固定部材とをボールねじを用いて連結し、加熱シリンダ22自体を金型方向へ移動させる構成であってもよい。あるいは、ノズルタッチ機構の構成は、射出装置20が搭載されたスライドベースと装置フレームとをボールねじを用いて連結し、スライドベースとともに射出装置20を移動させて射出ノズル26を金型へ接触させる構成であってもよい。
【0030】
ノズルタッチ装置27は、射出装置20をX軸方向にスライドさせて、射出ノズル26を金型18に接触させる。ヒータ29A~29Cは、加熱シリンダ22を加熱する。ヒータ29A~29Cは、X軸の負方向側からヒータ29A,29B,29Cの順番で並んで配置されている。
【0031】
操作盤30は、射出成形機100のY軸の負方向側に設けられている。操作盤30は、射出成形機100と別体として設けられてもよい。操作盤30は、ディスプレイ31と入力装置32とを備える。入力装置32は、たとえば、複数のボタンを含む。ある局面では、操作盤30は、複数のディスプレイおよびスピーカーを備えてもよい。また、ディスプレイ31と入力装置32とは、タッチパネルとして一体的に設けられてもよい。
【0032】
制御装置40は、CPU、メモリ等を含む。制御装置40は、各種センサの検出値を取得し、射出成形機100を統括的に制御する。各種センサの検出値とは、たとえば、加熱シリンダ22の温度情報、型締機構16、金型17,18、射出ノズル26等の各種可動部品の位置情報、図示されないサーボアンプの温度情報等を含む。なお、制御装置40も、操作盤30同様に、射出成形機100と別体として設けられてもよい。
【0033】
<射出成形機の概略ブロック図>
図3は、射出成形機100の概略ブロック図である。
図3に示されるように、実施の形態1における射出成形機100は、圧力センサ28Aと、トルクセンサ28Bと、速度センサ28Cと、ヒータ29A~29Cと、操作盤30と、制御装置40と、サーボモータ81~84とを備える。
【0034】
制御装置40は、制御部41と、入力インターフェイス42と、出力インターフェイス43と、記憶装置44とを備える。制御部41は、CPU41aとメモリ41bとを備える。
【0035】
CPU41aは、ROM(Read Only Memory)に格納されているプログラムをRAM(Random Access Memory)に展開して実行する。メモリ41bは、ROMおよびRAMを含み、CPU41aにより実行されるプログラム等を記憶する。
【0036】
ある局面では、制御部41は、専用のハードウェア回路により構成され得る。すなわち、制御部41は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)等により実現され得る。また、制御部41は、プロセッサおよびメモリ、ASIC、FPGA等を適宜組み合わせて実現されてもよい。記憶装置44は、たとえば、HDD(Hard Disk Drive)またはSSD(Flash Solid State Drive)等を含んで構成され得る。
【0037】
制御部41は、入力インターフェイス42および出力インターフェイス43を介して、ネットワークNWと接続する。さらに、制御部41は、ネットワークNWを介して、射出成形機200~500(
図1参照)と接続し、射出成形機200~500に含まれるデータを取得できる。また、制御部41は、加熱シリンダ22に配置されているヒータ29A~29C、サーボモータ81~84、および操作盤30と、出力インターフェイス43を介して接続されている。
【0038】
制御部41は、入力インターフェイス42を介して、圧力センサ28A、トルクセンサ28B、速度センサ28Cと接続されている。圧力センサ28Aは、サーボモータ84によって射出される射出材料の圧力を検出する。制御部41は、射出材料に生じている圧力を圧力センサ28Aの検出値として取得する。圧力センサ28Aは、たとえば、ロードセルである。
【0039】
トルクセンサ28Bは、サーボモータ84に生じるトルクを検出する。また、速度センサ28Cは、サーボモータ84によって射出される射出材料の射出速度を検出する。制御部41は、トルクセンサ28Bの検出値および速度センサ28Cの検出値を取得する。トルクセンサ28Bは、たとえば電流センサである。速度センサ28Cは、たとえば、サーボモータ84に設けられるエンコーダである。
【0040】
制御部41は、入力インターフェイス42を介して受信した、圧力センサ28A、トルクセンサ28B、速度センサ28Cを含む各種センサの検出値に基づいて波形データを生成可能である。波形データとは、各種センサの検出値の推移を時系列で示すデータである。たとえば、制御部41は、圧力センサ28A、トルクセンサ28B、速度センサ28Cの検出値の推移を、射出成形処理の1サイクルごとに波形データを生成し、当該波形データを記憶装置44に記憶させる。すなわち、記憶装置44には、1サイクルごとに各種センサの検出値の推移を示す波形データが格納される。
【0041】
圧力センサ28A、トルクセンサ28B、速度センサ28Cは、射出用のサーボモータ84の駆動に関連するセンサである。すなわち、圧力センサ28A、トルクセンサ28B、速度センサ28Cの検出値は、射出用のサーボモータ84の駆動によって変化する。圧力センサ28A、トルクセンサ28B、速度センサ28Cによって検出される射出成形機100の状態は、成形品の品質への影響度合いの大きい射出工程と関連する。なお、制御部41は、圧力センサ28A、トルクセンサ28B、速度センサ28Cだけでなく各種センサの検出値およびフィードバック信号を、入力インターフェイス42を介して受信し、圧力センサ28A、トルクセンサ28B、速度センサ28C以外のセンサに基づいて波形データを生成できる。
【0042】
<比較表示処理>
実施の形態1における射出成形機100では、射出成形機200~500のいずれかの射出成形機から波形データを取得し、射出成形機100の波形データと比較可能な態様でディスプレイ31に表示する。以下では、射出成形機100に含まれるデータと射出成形機200~500のいずれかに含まれるデータとを比較させるために表示する処理を、単に「比較表示処理」と称する。
【0043】
比較表示処理は、たとえば、射出成形機100によって成形される成形品に不良品が発生した場合に実行される。ユーザは、不良品が成形された射出成形機100を操作して、射出成形機100の波形データと、射出成形機200~500のいずれかの波形データと比較することができる。これにより、ユーザは、射出成形機100によって不良品が成形された原因を分析できる。以下では、
図4,
図5を用いて比較表示処理について具体的に説明する。
【0044】
図4は、実施の形態1における比較表示処理のフローチャートを示す図である。
図4の例では、射出成形機200の波形データが比較対象となる。制御部41は、ユーザから比較表示処理の命令を受け付けたか否か判定する(ステップS110)。射出成形機100は、たとえば、操作盤30を介して比較表示処理の実行命令を受け付ける。ユーザから比較表示処理の命令を受け付けていない場合(ステップS110でNO)、制御部41は、ステップS110の処理を繰り返す。
【0045】
ユーザから比較表示処理の命令を受け付けた場合(ステップS110でYES)、制御部41は、射出成形機100の射出工程に関する波形データを取得する(ステップS120)。制御部41は、記憶装置44内の射出工程に関する波形データのうち、たとえば直近の射出成形処理における波形データを取得する。
【0046】
続いて、制御部41は、射出成形機200の射出工程に関する波形データを取得する(ステップS130)。制御部41は、ネットワークNWを介して射出成形機200の射出工程に関する波形データを比較対象として取得する。制御部41は、直近の射出成形処理における射出成形機200の波形データを取得する。なお、射出成形機100の制御部41は、射出成形機200~500のうち、不良品が成形されていない射出成形機であれば、射出成形機300,400,500のいずれかが比較対象となってもよい。
【0047】
制御部41は、たとえば、ユーザからの命令によって射出成形機200~500のうち、いずれの射出成形機を比較対象とするか判断してもよい。最後に、制御部41は、ステップS120で取得した波形データとステップS130で取得した波形データとを比較可能な態様で表示し(ステップS140)、処理を終了する。
【0048】
図5は、射出工程に関する波形データを比較表示した画面DS1の一例を示す図である。
図5には、操作盤30のディスプレイ31によって表示される画面DS1が示されている。画面DS1の上部には、ディスプレイ31によって表示される内容を切り替えるボタン50S~56Sが配置されている。
【0049】
図5に示されるように、画面DS1の中央には、射出成形機100の射出工程に関する波形データD100と、射出成形機200の射出工程に関する波形データD200とが並ぶように表示されている。波形データD100によって示される波形の形状は、波形データD200によって示される波形の形状と異なっている。
【0050】
図5の画面DS1を閲覧したユーザは、不良品を成形する射出成形機100のトルクが不良品を成形していない射出成形機200のトルクよりも増大していることを認識できる。また、ユーザは、射出成形機100の圧力が射出成形機200の圧力よりも増大していることを認識できる。これにより、ユーザは、トルクおよび圧力が過剰に増大していることが原因で不良品が成形されていると類推することができ、射出成形機100のトルクおよび圧力を低下させるように入力パラメータ等を調整できる。
【0051】
このように、管理システム1では、比較表示処理によって2つの波形データを、射出成形機100の操作盤30に並べて表示させることで、射出成形機100の操作盤30と射出成形機200の操作盤30との両方を操作してデータを取得せずとも、2つの波形データを容易に比較させることができる。すなわち、複数の射出成形機100~500を含む管理システム1では、異なる射出成形機100,200の射出成形処理に関連するデータを容易に比較させることができる。
【0052】
また、実施の形態1にて比較される波形データは、成形品の品質への影響度合いが大きい射出工程に関連するデータである。これによって、射出成形機100は、不良品の成形の原因と関連しやすいデータをユーザに表示することができる。
【0053】
図6は、射出工程に関する波形データを比較表示した画面DS1の変形例としての画面DS1-1である。
図6に示されるように、波形データD100と波形データD200とは、互いに重ねられて表示されてもよい。すなわち、操作盤30は、波形データD100に対して波形データD200を重畳させて表示する。
図6では、破線は波形データD200を示し、実線は波形データD100を示す。このように管理システム1では、波形データD100,D200を重ねて表示することによって、波形データD100と波形データD200とを比較しやすくする。
【0054】
実施の形態1では、射出成形機100は、本開示における「第1射出成形機」に対応し得る。射出成形機200は、本開示における「第2射出成形機」に対応し得る。波形データD100は、本開示における「第1データ」に対応し得る。波形データD200は、本開示における「第2データ」に対応し得る。
【0055】
[実施の形態2]
実施の形態1の比較表示処理では、射出工程に関連する波形データを比較表示する例について説明した。しかしながら、不良品成形の原因分析のために有用であるデータは、射出工程に関連する波形データに限られない。実施の形態2では、波形データに加えて、入力パラメータを表示する例について説明する。実施の形態2では、実施の形態1と同様の構成について、説明を繰り返さない。
【0056】
入力パラメータとは、射出成形機100~500の射出成形処理を行うため、成形条件として射出成形機100~500の各々に設定される値である。たとえば、入力パラメータには、サーボモータ84に発生するトルク、サーボモータ84によって射出される射出材料の圧力、射出速度が含まれる。制御部41は、入力パラメータに従って、サーボモータ84を駆動する。すなわち、制御部41は、入力パラメータとして設定されたトルク、射出材料の圧力、射出速度に適合するようにサーボモータ84を駆動させる。
【0057】
図7は、実施の形態2における比較表示処理のフローチャートを示す図である。制御部41は、ユーザから比較表示処理の命令を受け付けたか否か判定する(ステップS210)。ユーザから比較表示処理の命令を受け付けていない場合(ステップS210でNO)、制御部41は、ステップS210の処理を繰り返す。ユーザから比較表示処理の命令を受け付けた場合(ステップS210でYES)、制御部41は、射出成形機100の射出工程に関する波形データに加えて入力パラメータを取得する(ステップS220)。
【0058】
続いて、制御部41は、射出成形機200の射出工程に関する波形データに加えて入力パラメータを取得する(ステップS230)。最後に、制御部41は、ステップS220で取得した波形データと、ステップS230で取得した波形データと入力パラメータとを比較可能な態様で表示し(ステップS240)、処理を終了する。
【0059】
図8は、入力パラメータを比較表示した画面DS2の一例である。
図8には、射出成形機100に設定された入力パラメータP100と、射出成形機200に設定された入力パラメータP200とが示されている。
【0060】
実施の形態2の射出成形機100は、波形データと入力パラメータとを異なる画面で表示する。画面DS2の左側には、ボタンBt1に加えてボタンBt2が配置される。ボタンBt1には「波形データ」という文字が示されている。ボタンBt2には「パラメータ」という文字が示されている。制御部41は、ボタンBt1がユーザによって選択されたことに応じて、画面DS2から実施の形態1にて示した画面DS1に切り替える。さらに、制御部41は、ボタンBt2がユーザによって選択されたことに応じて、画面DS1から画面DS2に切り替えられる。すなわち、制御部41は、ボタンBt1,Bt2とを用いて画面DS1と画面DS2との間で表示画面を切り替える。なお、制御部41は、ボタンBt1,Bt2とを用いて、画面DS1-1と画面DS2との間で表示画面を切り替えてもよい。
【0061】
図8に示されるように、射出成形機100,200では、パラメータ項目Pr1~Pr6が設定されている。パラメータ項目Pr1は、射出期間を示す。射出期間は、射出工程が行われる期間である。パラメータ項目Pr2は、射出工程におけるサーボモータ84の射出速度である。パラメータ項目Pr3は、射出工程における射出材料に生じる圧力である。
【0062】
パラメータ項目Pr4は、保圧期間を示す。保圧期間は、保圧工程が行われる期間である。パラメータ項目Pr5は、保圧工程におけるサーボモータ84の射出速度である。パラメータ項目Pr6は、保圧工程における射出材料に生じる圧力である。
【0063】
射出成形機100では、射出工程では、射出期間に「5s」、速度に「40mm/s」、圧力に「15MPa」が設定されており、保圧工程では、保圧期間に「4s」、速度に「1mm/s」、圧力に「20MPa」が設定されている。一方で、射出成形機200では、射出工程では射出期間に「5s」、速度に「40mm/s」、圧力に「10MPa」が設定されており、保圧工程では、保圧期間に「4s」、速度に「1mm/s」、圧力に「20MPa」が設定されている。
【0064】
図8に示す例では、射出工程における圧力を除くパラメータ項目Pr1,Pr2,Pr4,Pr5,Pr6は、同一の値が設定されている。一方で、射出成形機100では、射出工程における圧力として「15MPa」が設定されており、射出成形機200では、射出工程における圧力として「10MPa」が設定されている。すなわち、射出成形機100に設定されているパラメータ項目Pr3の値と射出成形機200に設定されているパラメータ項目Pr3の値との差は「5MPa」である。
【0065】
実施の形態2では、制御部41は、射出成形機100と射出成形機200との間でパラメータとして設定されている値の差が規定の範囲外である場合は、当該パラメータとして設定されている値を強調表示する。
図8に示されるように、射出成形機100におけるパラメータ項目Pr3の値は、ハイライトが付されて表示されている。規定の範囲は、パラメータ項目ごとにユーザによって設定され、パラメータ項目Pr3に対しては、たとえば、「±1MPa」が設定される。すなわち、パラメータ項目Pr3は、射出成形機100と射出成形機200との間の差が「5MPa」であり、規定の範囲である「±1MPa」を越えていることから、制御部41は、
図8に示されるように、射出成形機100のパラメータ項目Pr3に対して強調表示を行う。
【0066】
制御部41は、パラメータ項目Pr1,Pr2,Pr4,Pr5,Pr6に対しては、射出成形機100と射出成形機200との間のパラメータ値が規定の範囲内であるため、強調表示することなく、通常態様で表示している。これにより、ユーザは、射出成形機100と射出成形機200との間で、規定の範囲を越えた異なる値が設定されているパラメータ項目を容易に把握することができ、射出成形機100における射出工程の圧力を小さく調整することができる。
【0067】
しかしながら、射出成形機100における射出工程の圧力を小さく調整し、射出成形機200と同一の値に設定したとしても、波形データD100に示される圧力は、十分に低下しない場合があり得る。
図8に示されているように、ボタン50S~56Sのうち、ボタン51Sとボタン56Sとは、強調表示されている。このように、制御部41は、規定の範囲を越えて異なる値が設定されているパラメータが存在する画面へと遷移するボタンに対して強調表示を行う。
【0068】
図9は、加熱シリンダ22に配置されているヒータ29A~29Cに設定された温度を比較表示した画面DS3の一例である。
図9には、射出成形機100に設定された入力パラメータP110と、射出成形機200に設定された入力パラメータP210とが示されている。射出成形機100におけるヒータ29Aには「33.0℃」が設定されており、ヒータ29Bには「29.0℃」が設定されており、ヒータ29Cには「30.0℃」が設定されている。射出成形機200におけるヒータ29Aには「29.0℃」が設定されており、ヒータ29Bには「29.0℃」が設定されており、ヒータ29Cには「30.0℃」が設定されている。
【0069】
射出成形機100におけるヒータ29Aの設定温度と射出成形機200におけるヒータ29Aの設定温度との差は「4℃」である。制御部41は、ヒータ29Aの設定温度との差が「±3℃」を越える場合は、ハイライト表示するように設定されている。これにより、ユーザは、射出成形機100と射出成形機200との間で、ヒータ29Aの設定温度に規定の範囲を超えた値が設定されていることを容易に把握することができる。
【0070】
さらに、ユーザは、射出成形機100と射出成形機200との間で射出工程における圧力を調整したにもかかわらず、波形データとして示される射出成形機100の圧力が射出成形機200の圧力よりも増大する原因が、ヒータ29Aによる射出材料の加熱であることを類推できる。すなわち、可塑化工程でヒータ29Aによる加熱が過剰となることによって射出材料の硬度が増大し、圧力は増大したと考えられる。
【0071】
このように実施の形態2における管理システム1では、入力パラメータを比較して表示し、さらに、パラメータ値の差が規定の範囲を越えて設定されている場合は、強調表示する。これによって、実施の形態2における管理システム1では、射出成形機100と射出成形機200との間で異なる値が設定されているパラメータを容易にユーザに把握させることができる。
【0072】
また、実施の形態2の管理システム1でも、実施の形態1と同様に、比較表示処理によって入力パラメータを、射出成形機100の操作盤30に並べて表示させることで、射出成形機100の操作盤30と射出成形機200の操作盤30との両方を操作してデータを取得せずとも入力パラメータを容易に比較させることができる。すなわち、実施の形態2における管理システム1でも、異なる射出成形機100,200の射出成形処理に関連するデータを容易に比較させることができる。
【0073】
実施の形態2では、入力パラメータP100に含まれるパラメータ項目Pr3の圧力の値は、本開示における「第1データ」に対応し得る。入力パラメータP200に含まれるパラメータ項目Pr3の圧力の値は、本開示における「第2データ」に対応し得る。また、
図8,9のパラメータで強調表示されない表示態様は、本開示における「第1態様」に対応し、ハイライト表示は「第2態様」に対応し得る。
【0074】
[実施の形態3]
実施の形態1の比較表示処理では、射出成形機200が比較対象となる例について説明した。しかしながら、管理システム1は、射出成形機100~500のうちから予め定められた条件に基づき、比較対象となる射出成形機を定めてもよい。実施の形態3では、金型の種類、射出材料の種類に応じて、比較対象となる射出成形機が定められる例について説明する。実施の形態3では、実施の形態1と同様の構成について説明を繰り返さない。
【0075】
図10は、実施の形態3における比較表示処理のフローチャートを示す図である。制御部41は、ユーザから比較表示処理の命令を受け付けたか否か判定する(ステップS310)。ユーザから比較表示処理の命令を受け付けていない場合(ステップS310でNO)、制御部41は、ステップS310の処理を繰り返す。ユーザから比較表示処理の命令を受け付けた場合(ステップS310でYES)、制御部41は、他の射出成形機200~500に取り付けられている金型の種類および射出材料の種類を取得する(ステップS320)。上述したように、各射出成形機100~500の各々は、自身に取り付けられている金型の種類を示す情報と、射出材料の種類を示す情報とを各々の記憶装置44内に記憶している。
【0076】
続いて、制御部41は、射出成形機100と金型の種類および射出材料の種類が同じ射出成形機がネットワークNW内にあるか否かを判断する(ステップS330)。なお、制御部41は、ステップS330で金型の種類または射出材料の種類のいずれか一方が同じ射出成形機がネットワークNW内にあるか否かを判断してもよい。金型の種類および射出材料の種類が同じ射出成形機がネットワークNW内にない場合(ステップS330でNO)、制御部41は、比較対象となり得る射出成形機がネットワークNW内に接続されていない旨を操作盤30に表示させる(ステップS370)。
【0077】
金型の種類および射出材料の種類が同じ射出成形機がネットワークNW内にある場合(ステップS330でYES)、制御部41は、射出成形機100の波形データD100および入力パラメータP100を取得する(ステップS340)。その後、制御部41は、金型の種類および射出材料の種類が同じ射出成形機から波形データ、入力パラメータを取得する(ステップS350)。実施の形態1にて説明したように、射出成形機100と射出成形機400とには、同一の金型の形状S1が取り付けられ、同一の樹脂R1が射出材料として用いられている。そのため、実施の形態3のステップS350では、制御部41は、射出成形機400の波形データおよび入力パラメータを取得する。
【0078】
最後に、制御部41は、ステップS340にて取得した射出成形機100の波形データD100、入力パラメータP100およびステップS350にて取得した射出成形機400の波形データ、入力パラメータを比較可能な態様で操作盤30に表示させる(ステップS360)。なお、ステップS330では、ネットワークNW内に、金型の種類および射出材料の種類が同じ射出成形機が複数ある場合、制御部41は、当該比較対象となり得る複数の射出成形機の全てをリストとして表示して、比較対象とする射出成形機をユーザに選択させてもよい。また、制御部41は、射出成形機100に対して、比較対象として複数の射出成形機を表示してもよい。すなわち、
図5,6,8,9において射出成形機100と射出成形機200とを比較している画面の例について説明したが、ディスプレイ31には、射出成形機100、射出成形機200の波形データ、入力パラメータに加えて、比較対象となり得る他の射出成形機の波形データ、入力パラメータが表示されてもよい。これにより、管理システム1では、ユーザに3基以上の射出成形機を容易に比較させることができる。
【0079】
このように、実施の形態3における管理システム1では、比較対象となる射出成形機は、金型の種類または射出材料の種類の少なくとも1つを用いて定められる。これにより、実施の形態3における管理システム1では、射出成形機100によって実行される射出成形処理と類似する射出成形処理を実行する他の射出成形機を比較対象とすることができる。
【0080】
また、実施の形態3の管理システム1でも、実施の形態1と同様に、比較表示処理によって波形データおよび入力パラメータを、射出成形機100の操作盤30に並べて表示させることで、射出成形機100の操作盤30と射出成形機400の操作盤30との両方を操作してデータを取得せずとも波形データおよび入力パラメータを容易に比較させることができる。すなわち、実施の形態3における管理システム1でも、異なる射出成形機100,400の射出成形処理に関連するデータを容易に比較させることができる。
【0081】
[実施の形態4]
実施の形態1では、射出成形機100,200の2つの波形データを比較したユーザによって射出成形機100の入力パラメータP100が調整される例について説明した。しかしながら、入力パラメータP100の調整は、ユーザによって行われるのではなく、機械学習によって得られた学習済みモデルを用いて行われてもよい。実施の形態4では、実施の形態1と同様の構成について説明を繰り返さない。
【0082】
図11は、機械学習によって得られた学習済みモデルを用いて入力パラメータを調整する一例を説明するための図である。実施の形態1にて説明したように、制御部41は、不良品が成形されている射出成形機100の波形データD100と不良品が成形されていない射出成形機200の波形データD200とを取得する。実施の形態4では、記憶装置44には、推定モデル70が記憶されている。
【0083】
推定モデル70は、射出成形機における波形データと入力パラメータとが対応付けられたデータセットを学習用データとして用いて、波形データと入力パラメータとの関係を学習し、入力された波形データを目標とする波形データに近づけるためのパラメータ値を推定するように機械学習が行われている。
【0084】
具体的には、学習フェーズでは、推定モデル70には、入力パラメータと該入力パラメータが設定されているときの波形データとが入力される。推定モデル70は、ニューラルネットワークによって、入力パラメータと波形データとの間の関係を示す特徴量を抽出する。これにより、推定モデル70は、入力パラメータに含まれる複数のパラメータ項目のうちのいずれのパラメータ項目が変化すれば、当該変化に応じて波形データにどのように影響が生じるかを学習する。
【0085】
なお、このような推定モデル70を学習することによって最適化された推定モデル70を、特に「学習済モデル」とも称する。つまり、学習前の推定モデル70および学習済みの推定モデル70をまとめて「推定モデル」と称する一方で、特に、学習済みの推定モデル70を「学習済モデル」とも称する。
【0086】
実施の形態4における推定モデル70は、2つの波形データを入力とし、一方の波形データを他方の波形データに近づけるための調整パラメータを出力する。すなわち、推定モデル70には、目標とする波形データと調整対象の波形データとを区別して、2つの波形データが入力される。実施の形態4の例では、不良品が成形されていない射出成形機200の波形データD200は、目標とする波形データとして入力される。一方、不良品が成形されている射出成形機100の波形データD100は、調整対象の波形データとして入力される。
【0087】
これにより、制御部41は、学習済の推定モデル70を用いて、波形データD100を波形データD200に近づけるためのパラメータ値を取得する。たとえば、学習済の推定モデル70は、
図9に示す例では、射出成形機100のヒータ29Aの設定温度を「29.0℃」とすることを調整パラメータとして出力する。制御部41は、調整パラメータに基づき、射出成形機100のヒータ29Aの設定温度を「33.0℃」から「29.0℃」に変更することができる。これにより、実施の形態4における管理システム1では、調整すべきパラメータ値が推定モデルを用いて出力されるため、ユーザに類推させる必要がない。
【0088】
また、実施の形態4でも、実施の形態1と同様に、比較表示処理によって波形データおよび入力パラメータを、射出成形機100の操作盤30に並べて表示させることで、射出成形機100の操作盤30と射出成形機200の操作盤30との両方を操作してデータを取得せずとも波形データおよび入力パラメータを容易に比較させることができる。これにより、ユーザは、推定モデル70の出力結果を用いて、調整すべきパラメータ値を類推することができる。
【0089】
実施の形態4では、機械学習によって得られた学習済みモデルを用いる例について説明したが、これに限られず、波形データの差とパラメータ項目に対する処理とが予め関連付けられているデータベースが用いられてもよい。たとえば、データベースには、圧力が増大していることに対して、ヒータ29A~29Cの温度を低下させる処理、または、射出速度を低下させる処理が紐付けられている。
【0090】
制御部41は、波形データD100と波形データD200とを比較して、波形データD100が波形データD200よりも圧力が増大していると判断したときにデータベースに対応付けられているヒータ29A~29Cの温度を低下させる処理を実行する。さらに、制御部41は、圧力の増大が改善されない場合、射出速度を低下させる処理を実行する。このように、波形データD100と波形データD200との差に対応付けられているパラメータ項目に対する処理を取得して、パラメータ値を調整する。これにより、制御部41は、予め実験等によって波形データの差とパラメータ項目の処理とが関連付けられたデータベースを用いてパラメータ値の調整をすることができる。
【0091】
[付記]
上述した複数の例示的な実施の形態は、以下の態様の具体例であることが当業者により理解される。
【0092】
(第1項) 一態様に係る管理システムは、ネットワークを介して接続された第1射出成形機と第1射出成形機に類似する第2射出成形機とを含む管理システムである。管理システムは、表示装置と、制御装置とを備える。制御装置は、第1射出成形機の射出成形処理に関連する第1データを取得し、第1データに対する比較対象として、第2射出成形機の射出成形処理に関連する第2データを取得し、第1データと第2データとを比較可能な態様で表示装置に表示させる。
【0093】
第1項に記載の射出成形機によれば、複数の射出成形機のデータをユーザに容易に比較させることができる。
【0094】
(第2項) 第1項に係る管理システムであって、第1射出成形機は、第1射出成形機の状態を検出する第1センサをさらに備える。第2射出成形機は、第1センサによって検出される第1射出成形機の状態に対応する第2射出成形機の状態を検出する第2センサをさらに備える。第1データは、第1射出成形機の射出成形処理中における第1センサの検出値を時系列で示す第1波形データであり、第2データは、第2射出成形機の射出成形処理中における第2センサの検出値を時系列で示す第2波形データである。
【0095】
第2項に記載の射出成形機によれば、射出成形処理中におけるセンサの検出値を示す波形データをユーザに容易に比較させることができる。
【0096】
(第3項) 第2項に係る管理システムであって、第1射出成形機は、射出材料を金型に射出する第1射出モータをさらに備える。第2射出成形機は、射出材料を金型に射出する第2射出モータをさらに備える。第1センサによって検出される第1射出成形機の状態は、第1射出モータの駆動に関連し、第2センサによって検出される第2射出成形機の状態は、第2射出モータの駆動に関連する。
【0097】
第3項に記載の射出成形機によれば、成形品の品質と関連度の高い射出モータの駆動に関連するデータをユーザに比較させることができる。
【0098】
(第4項) 第2項または第3項に係る管理システムであって、表示装置は、第1波形データに対して第2波形データを重畳させて表示する。
【0099】
第4項に記載の射出成形機によれば、波形データを重ねて表示することによって、第1波形データと第2波形データを比較させやすくなる。
【0100】
(第5項) 第1項に係る管理システムであって、第1データは、成形条件として第1射出成形機に設定されたパラメータ値であり、第2データは、成形条件として第2射出成形機に設定され、第1データに対応するパラメータ値である。
【0101】
第5項に記載の射出成形機によれば、射出成形機に設定されたパラメータをユーザに容易に比較させることができる。
【0102】
(第6項) 第5項に係る管理システムであって、制御装置は、第1データと第2データとの差が規定の範囲内である場合、第1データを第1態様で表示装置に表示させ、第1データと第2データとの差が規定の範囲外である場合、第1データを第1態様と異なる第2態様で表示装置に表示させる。
【0103】
第6項に記載の射出成形機によれば、第1データと第2データとの差が規定の範囲外のパラメータを強調表示することができる。
【0104】
(第7項) 第1項~第6項のいずれか1項に係る管理システムであって、制御装置は、第2射出成形機に取り付けられている金型の種類が第1射出成形機に取り付けられている金型の種類と同じ場合か、または、第2射出成形機の射出材料の種類が第1射出成形機の射出材料の種類と同じ場合には、第1データと第2データとを比較可能な態様で表示装置に表示させる。
【0105】
第7項に記載の射出成形機によれば、同一の金型と材料の射出成形機を比較対象にすることができる。
【0106】
(第8項) 第2項~第4項のいずれか1項に係る管理システムであって、記憶装置をさらに備える。記憶装置は、波形データとパラメータ値との関係を学習した学習済みモデルを記憶し、制御装置は、第1波形データと第2波形データとを学習済みモデルに入力し、第1波形データを第2波形データに近づけるためのパラメータ値を出力させる。
【0107】
第8項に記載の射出成形機によれば、学習済みモデルを用いて、パラメータを調整することができる。
【0108】
(第9項) 一態様に係る射出成形機は、他の射出成形機とネットワークを介して接続された射出成形機である。射出成形機は、表示装置と、制御装置とを備える。制御装置は、射出成形機の射出成形処理に関連する第1データを取得し、第1データに対する比較対象として、他の射出成形機の射出成形処理に関連する第2データを取得し、第1データと第2データとを比較可能な態様で表示装置に表示させる。
【0109】
第9項に記載の射出成形機によれば、複数の射出成形機のデータを容易に比較することができる。
【符号の説明】
【0110】
1 管理システム、10 型締装置、11 ベッド、12 固定盤、13 型締ハウジング、14 可動盤、15 タイバー、16 型締機構、17,18 金型、19 ボールねじ、20 射出装置、21 基台、22 加熱シリンダ、23 スクリュ、24 駆動装置、25 ホッパ、26 射出ノズル、27 ノズルタッチ装置、28A 圧力センサ、28B トルクセンサ、28C 速度センサ、29A~29C ヒータ、30 操作盤、31 ディスプレイ、32 入力装置、40 制御装置、41 制御部、41b メモリ、42 入力インターフェイス、43 出力インターフェイス、44 記憶装置、50S~56S,Bt1,Bt2 ボタン、70 推定モデル、81~84 サーボモータ
100~500 射出成形機、D100,D200 波形データ、DS1~DS3,DS1-1 画面、NW ネットワーク、Pr1~Pr6 パラメータ項目、P100,P110,P200,P210 入力パラメータ、R1,R2 樹脂、S1~S3 形状。