(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023170146
(43)【公開日】2023-12-01
(54)【発明の名称】半導体装置及び電力変換装置
(51)【国際特許分類】
H01L 23/36 20060101AFI20231124BHJP
【FI】
H01L23/36 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022081681
(22)【出願日】2022-05-18
(71)【出願人】
【識別番号】509186579
【氏名又は名称】日立Astemo株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】下田 一郎
【テーマコード(参考)】
5F136
【Fターム(参考)】
5F136BA04
5F136BB04
5F136BC05
5F136CB06
5F136DA27
5F136DA41
5F136FA88
(57)【要約】
【課題】複数の半導体素子を備える半導体装置において、半導体素子同士を近づけて配置可能とすることで半導体装置を小型化可能とする。
【解決手段】各々に少なくとも1つの半導体チップ4が実装された複数の熱拡散部材9と、熱拡散部材9から伝達される熱を吸収する放熱器1とを備え、少なくとも1つの熱拡散部材9は、熱伝導の異方性を有する異方性熱拡散部材であり、異方性熱拡散部材が、他の熱拡散部材9との配列方向と半導体チップ4の実装面から放熱器1に向かう方向とに沿う断面にて、半導体チップ4の実装面から放熱器1に向かうに連れて隣接配置された他の熱拡散部材9から離間する方向へ熱を伝達する熱伝達特性を有する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
各々に少なくとも1つの半導体素子が実装された複数の熱拡散部材と、
前記熱拡散部材から伝達される熱を吸収する冷却部材と
を備え、
少なくとも1つの前記熱拡散部材は、熱伝導の異方性を有する異方性熱拡散部材であり、
前記異方性熱拡散部材は、他の前記熱拡散部材との配列方向と前記半導体素子の実装面から前記冷却部材に向かう方向とに沿う断面にて、前記半導体素子の実装面から前記冷却部材に向かうに連れて隣接配置された他の前記熱拡散部材から離間する方向へ熱を伝達する熱伝達特性を有する
ことを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
前記異方性熱拡散部材は、
前記半導体素子と前記冷却部材との配列方向に沿った方向から見て、隣接配置された他の前記熱拡散部材から離間する方向への熱伝達率が、隣接配置された他の前記熱拡散部材に近接する方向への熱伝達率よりも高い材料で形成されている
ことを特徴とする請求項1記載の半導体装置。
【請求項3】
前記異方性熱拡散部材は、
層状の結晶構造を有するグラファイトで形成され、
前記半導体素子と前記冷却部材との配列方向に沿った方向から見て、前記グラファイトの結晶面と直交する結晶積層方向が、隣接配置された他の前記熱拡散部材に向かう方向となるように形成されている
ことを特徴とする請求項1または2記載の半導体装置。
【請求項4】
前記熱拡散部材と前記冷却部材との間に介装される絶縁性伝熱部材を備え、
前記絶縁性伝熱部材は、
前記熱拡散部材が一方側の面に設けられる絶縁基板と、
前記絶縁基板の他方側の面に設けられると共に前記冷却部材に当接する金属層と
を備える
ことを特徴とする請求項1または2記載の半導体装置。
【請求項5】
前記冷却部材に一方向に冷媒が流され、
複数の前記熱拡散部材は、前記半導体素子と前記冷却部材との配列方向に沿った方向から見て、前記冷媒の流れ方向と直交する方向に配列されている
ことを特徴とする請求項1または2記載の半導体装置。
【請求項6】
各々に複数の前記半導体素子が実装された前記熱拡散部材を複数備えることを特徴とすることを特徴とする請求項1または2記載の半導体装置。
【請求項7】
請求項1または2記載の半導体装置からなることを特徴とする電力変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置及び電力変換装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、複数の半導体素子を備える半導体装置が開示されている。特許文献1に開示された半導体装置は、延在方向において熱伝導異方性を有する熱拡散板部材を備えている。また、特許文献1に開示された半導体装置では、複数の半導体素子のそれぞれは、他の全ての半導体素子に対して、延在方向のうち熱拡散板部材の熱伝導性が最も高い高熱伝導方向において重複することのない非重複領域を有するように、高熱伝導方向に直交する方向にオフセット配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、半導体装置には、半導体素子の熱を吸収する冷却部材が設置されている。例えば、特許文献1に開示された半導体装置では、熱拡散板部材は、半導体素子の熱を吸収する冷却器に接続されている。このような特許文献1に開示された半導体装置では、高熱伝導方向が半導体素子と冷却器との配列方向と平行である。このため、半導体素子から冷却器に伝わる熱は、冷却器の熱拡散板部材の設置面に対して直交する方向から冷却器に進入する。
【0005】
このような特許文献1に開示された半導体装置では、複数の半導体素子を近づけて配置すると、これらの半導体素子から伝わった熱が冷却器において干渉する。このため、このような熱干渉を防止するためには、半導体素子同士を離して配置する必要がある。この結果、半導体素子同士を近づけて配置することができず、半導体装置が大型化する。特に、炭化ケイ素(SiC)を用いた半導体素子は、個々の半導体素子を大型化することが難しく、複数の半導体素子を設置する必要がある。このため、炭化ケイ素(SiC)を用いた半導体素子同士を近づけることができないと、半導体装置が大型化してしまう。
【0006】
本発明は、上述する問題点に鑑みてなされたもので、複数の半導体素子を備える半導体装置及び電力変換装置において、半導体素子同士を近づけて配置可能とすることで半導体装置を小型化可能とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記課題を解決するための手段として、以下の構成を採用する。
【0008】
本発明の第1の態様は、半導体装置であって、各々に少なくとも1つの半導体素子が実装された複数の熱拡散部材と、上記熱拡散部材から伝達される熱を吸収する冷却部材とを備え、少なくとも1つの上記熱拡散部材は、熱伝導の異方性を有する異方性熱拡散部材であり、上記異方性熱拡散部材が、他の上記熱拡散部材との配列方向と上記半導体素子の実装面から上記冷却部材に向かう方向とに沿う断面にて、上記半導体素子の実装面から上記冷却部材に向かうに連れて隣接配置された他の上記熱拡散部材から離間する方向へ熱を伝達する熱伝達特性を有するという構成を採用する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、異方性熱拡散部材が、半導体素子の実装面から冷却部材に向かうに連れて隣接配置された他の熱拡散部材から離間する方向へ熱を伝達する熱伝達特性を有する。このため、半導体素子同士を近づけて配置しても、これらの半導体素子からの熱が冷却部材において離れた位置に伝わり、熱干渉を抑止することができる。したがって、本発明によれば、複数の半導体素子を備える半導体装置において、半導体素子同士を近づけて配置可能とすることで半導体装置を小型化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の第1実施形態の電力変換装置の電気的な概略構成を示す回路図である。
【
図2】本発明の第1実施形態の電力変換装置のパワーデバイスを含む模式的な部分拡大断面図である。
【
図3】本発明の第1実施形態の電力変換装置のパワーデバイスの模式的な平面図である。
【
図4】本発明の第2実施形態の電力変換装置のパワーデバイスの模式的な平面図である。
【
図5】本発明の第3実施形態の電力変換装置のパワーデバイスの模式的な平面図である。
【
図6】本発明の第4実施形態の電力変換装置のパワーデバイスの模式的な平面図である。
【
図7】本発明の第5実施形態の電力変換装置のパワーデバイスの模式的な平面図である。
【
図8】本発明の第5実施形態の電力変換装置のパワーデバイスが複数配列された状態を示す模式図である。
【
図9】本発明の第5実施形態の電力変換装置において、U相、V相、W相に応じて3つ設けられたパワーデバイスと放熱器との位置関係を示す模式的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して、本発明に係る半導体装置の一実施形態について説明する。なお、以下の説明においては、本発明の半導体装置を車両に搭載される電力変換装置に適用した例について説明する。ただし、本発明は、電力変換装置に限定されるものではなく、半導体素子を備える半導体装置に適用可能である。
【0012】
(第1実施形態)
図1は、本実施形態の電力変換装置Aの電気的な概略構成を示す回路図である。本実施形態の電力変換装置Aは、ハイブリッド自動車や電気自動車等の車両に搭載されるPCU(パワーコントロールユニット)であり、昇降圧回路E1及び2つのインバータ回路(第1インバータ回路E2と第2インバータ回路E3)を備えている。また、本実施形態の電力変換装置Aは、昇降圧回路E1と2つのインバータ回路や、インバータ回路とモータを接続するバスバーBを備えている。
【0013】
このような本実施形態の電力変換装置Aは、バッテリから供給された電力を三相交流電力に変換してモータに供給する。また、電力変換装置Aは、モータからの回生電力をバッテリに供給する。
【0014】
昇降圧回路E1、第1インバータ回路E2及び第2インバータ回路E3は、各々が複数のパワーデバイスDを備えている。各々のパワーデバイスDは、パワートランジスタを有している。これらのパワートランジスタは、半導体チップ4(
図2参照)に形成されている。
【0015】
図2は、1つのパワーデバイスDを含む電力変換装置Aの模式的な部分拡大断面図である。この図に示すように、電力変換装置Aは、放熱器1(冷却部材)と、樹脂ケース2と、絶縁性熱伝導基板3と、半導体チップ4(半導体素子)と、外部端子5と、リードフレーム6と、リードワイヤ7と、封止材8と、熱拡散部材9とを備えている。なお、本実施形態では、パワーデバイスDは、絶縁性熱伝導基板3(絶縁性伝熱部材)と、半導体チップ4と、熱拡散部材9(異方性熱拡散部材)とで構成されている。
【0016】
放熱器1は、例えばウォータジャケットである。放熱器1は、半導体チップ4等を冷却する。放熱器1は、内部に冷却液X(冷媒)が流されており、絶縁性熱伝導基板3等を介して半導体チップ4から伝達された熱を冷却液Xによって回収する。なお、
図2においては、放熱器1の一部(天板部)のみを図示している。放熱器1の天板の表面(
図2における上面)には樹脂ケース2等が配置されている。一方、天板の裏面(
図2における下面)には複数のフィンが形成されている。フィンが形成された天板の裏面側には、例えば冷却液Xの水路が形成されている。
【0017】
樹脂ケース2は、接着剤20を介して、放熱器1に接着されている。樹脂ケース2は、パワーデバイスDが収容される開口部2aを有している。樹脂ケース2は、パワーデバイスDの数と同数の開口部2aを有している。各々の開口部2aに対して1つのパワーデバイスDが収容されている。この樹脂ケース2は、バスバーBを保持している。
図2に示すように、バスバーBは、リードフレーム6との接合箇所が開口部2aの内側に向けて露出された状態で保持されている。
【0018】
絶縁性熱伝導基板3は、絶縁性セラミックス基板3a(絶縁基板)と、絶縁性セラミックス基板3aの裏面(
図2における下面)に形成された金属層3bとを備えている。絶縁性セラミックス基板の表側(
図2における上面)には、熱拡散部材9が配置されている。絶縁性セラミックス基板3aの裏側に形成された金属層3bは、半導体チップ4等から伝わる熱を放熱器1に伝達する伝熱路の一部を形成する。
【0019】
絶縁性セラミックス基板3aは、例えば、酸化アルミニウム(Al2O3)、窒化アルミニウム(AlN)、シリコン系セラミックス(Si3Ni4)によって形成することができる。また、金属層3bは、例えば、銅(Cu)、アルミニウム(Al)によって形成することができる。
【0020】
半導体チップ4は、例えば、SiC-MOSFET等が形成されたチップである。半導体チップ4は、熱拡散部材9上に実装されている。半導体チップ4は、例えば半田を介して熱拡散部材9に接合されている。なお、熱拡散部材9は、絶縁性熱伝導基板3に実装されている。つまり、半導体チップ4は、熱拡散部材9を介して絶縁性熱伝導基板3に実装されている。
【0021】
図3は、パワーデバイスDの模式的な平面図である。この図に示すように、本実施形態においては、1つの絶縁性熱伝導基板3に対して、2つの半導体チップ4が実装されている。このような半導体チップ4は、炭化ケイ素(SiC)半導体を用いて形成することができる。また、半導体チップ4は、窒化ガリウム(GaN)半導体等を用いて形成することも可能である。また、半導体チップ4は、シリコン(Si)半導体を用いて形成することも可能である。
【0022】
図2に戻り、外部端子5は、樹脂ケース2に対して保持されている。外部端子5は、複数設けられており、各々がリードワイヤ7を介して半導体チップ4に接続されている。これらの外部端子5を介して外部から半導体チップ4が制御される。
【0023】
リードフレーム6は、パワーデバイスDとバスバーBとを接続する板状の導電部材である。このリードフレーム6は複数設けられていてもよい。これらのリードフレーム6は、制御信号が流れるリードワイヤ7と比較して、大きな電流が流れる導電部材である。リードフレーム6は、例えば半田を介して、バスバーB及びパワーデバイスDと接合されている。
【0024】
リードワイヤ7は、半導体チップ4と外部端子5とを接続する導電部材である。リードワイヤ7は、例えば半田を介して、パワーデバイスD及び外部端子5と接合されている。つまり、半導体チップ4と外部端子5とは、いわゆるワイヤボンディングによって電気的に接続されている。
【0025】
封止材8は、樹脂ケース2の開口部2aの内部に充填されている。封止材8は、絶縁性熱伝導基板3及び半導体チップ4等を覆い、絶縁性熱伝導基板3及び半導体チップ4等が空気等に触れることを抑止する。この封止材8は、例えば、シリコーンゲルによって形成することができる。
【0026】
熱拡散部材9は、半導体チップ4と絶縁性熱伝導基板3との間に介装されている。本実施形態において、熱拡散部材9は2つ設けられている。各々の熱拡散部材9は、1つの半導体チップ4が実装されている。つまり、本実施形態において熱拡散部材9と半導体チップ4とは同数設けられている。これらの熱拡散部材9は、導電性を有しており、電流が流れる回路の一部を形成している。
【0027】
本実施形態において、これらの熱拡散部材9は、熱伝導異方性を有する材料によって形成されている。つまり、本実施形態において熱拡散部材9は、いずれも熱伝導の異方性を有する異方性熱拡散部材である。具体的には、本実施形態において熱拡散部材9は、グラファイトによって形成されている。グラファイトは、層状の結晶構造を有しており、結晶面に沿った方向(以下、結晶面方向と称する)の熱伝導率が、結晶面と直交する方向(以下、結晶積層方向と称する)の熱伝導率よりも大きい材料である。
【0028】
つまり、このようなグラファイトで形成された熱拡散部材9は、結晶面方向が向けられた方向の熱伝導率が、結晶積層方向が向けられた方向の熱伝導率よりも大きい熱伝導異方性を有している。
【0029】
なお、説明の便宜上、2つの熱拡散部材9のうち、
図2の左側に位置する熱拡散部材9を第1熱拡散部材9aと称する。また、
図2の右側に位置する熱拡散部材9を第2熱拡散部材9bと称する。また、第1熱拡散部材9aに実装された半導体チップ4を第1半導体チップ4aと称する。また、第2熱拡散部材9bに実装された半導体チップ4を第2半導体チップ4bと称する。
【0030】
図2に示すように、第1熱拡散部材9aと第2熱拡散部材9bとは、隣接して配置されている。本実施形態では、第1熱拡散部材9aと第2熱拡散部材9bとは接触された状態で配置されている。なお、第1熱拡散部材9aと第2熱拡散部材9bとの間に隙間が形成されていてもよい。つまり、隣接して配置されるとは、2つの部材が接触している場合に限定されない。
【0031】
第1熱拡散部材9aは、第1半導体チップ4aの実装面から放熱器1に向かうに連れて隣接配置された第2熱拡散部材9bに近づく方向への熱の伝達を抑制する熱伝達特性を有する。具体的には、第1熱拡散部材9aにおいては、第1半導体チップ4aの実装面から放熱器1に向かうに連れてグラファイトの結晶面が第2熱拡散部材9bから離れるように、結晶面方向が実装面に対して傾斜されている。例えば、第1熱拡散部材9aを形成するグラファイトの結晶面方向は、第1半導体チップ4aの実装面に対して45°の角度で傾斜されている。ただし、第1熱拡散部材9aを形成するグラファイトの結晶面方向の実装面に対する角度は、45°に限定されない。
【0032】
このような第1熱拡散部材9aでは、第1半導体チップ4aの実装面の法線方向から見て、熱伝導率が小さい結晶積層方向が、第2熱拡散部材9bに向けられている。このため、第1半導体チップ4aの熱が第1熱拡散部材9aに向かうことが抑止される。さらに、第1熱拡散部材9aは、第1熱拡散部材9aと第2熱拡散部材9bとの配列方向と第1半導体チップ4aの実装面から放熱器1に向かう方向とに沿った断面(
図2に示す断面)にて、第1半導体チップ4aの実装面から放熱器1に向かうに連れて隣接配置された第2熱拡散部材9bから離間する方向へ熱を伝達する熱伝達特性を有している。
【0033】
このように、第1熱拡散部材9aは、第1半導体チップ4aと放熱器1との配列方向に沿った方向から見て、隣接配置された第2熱拡散部材9bから離間する方向への熱伝達率が、隣接配置された第2熱拡散部材9bに近接する方向への熱伝達率よりも高い材料で形成されている。
【0034】
第2熱拡散部材9bは、第2半導体チップ4bの実装面から放熱器1に向かうに連れて隣接配置された第1熱拡散部材9aに近づく方向への熱の伝達を抑制する熱伝達特性を有する。具体的には、第2熱拡散部材9bにおいては、第2半導体チップ4bの実装面から放熱器1に向かうに連れてグラファイトの結晶面が第1熱拡散部材9aから離れるように、結晶面方向が実装面に対して傾斜されている。例えば、第2熱拡散部材9bを形成するグラファイトの結晶面方向は、第2半導体チップ4bの実装面に対して45°の角度で傾斜されている。ただし、第2熱拡散部材9bを形成するグラファイトの結晶面方向の実装面に対する角度は、45°に限定されない。
【0035】
このような第2熱拡散部材9bでは、第2半導体チップ4bの実装面の法線方向から見て、熱伝導率が小さい結晶積層方向が、第1熱拡散部材9aに向けられている。このため、第2半導体チップ4bの熱が第2熱拡散部材9bに向かうことが抑止される。さらに、第2熱拡散部材9bは、第1熱拡散部材9aと第2熱拡散部材9bとの配列方向と第2半導体チップ4bの実装面から放熱器1に向かう方向とに沿った断面(
図2に示す断面)にて、第2半導体チップ4bの実装面から放熱器1に向かうに連れて隣接配置された第1熱拡散部材9aから離間する方向へ熱を伝達する熱伝達特性を有している。
【0036】
このように、第2熱拡散部材9bは、第2半導体チップ4bと放熱器1との配列方向に沿った方向から見て、隣接配置された第1熱拡散部材9aから離間する方向への熱伝達率が、隣接配置された第1熱拡散部材9aに近接する方向への熱伝達率よりも高い材料で形成されている。
【0037】
このように構成された本実施形態の電力変換装置Aにおいては、第1半導体チップ4aが発熱すると、第1半導体チップ4aの熱は、第1熱拡散部材9aの実装面から絶縁性熱伝導基板3に向かって伝達される。このとき、第1半導体チップ4aの熱の少なくとも一部は、第2熱拡散部材9bから離れるように伝達される。
【0038】
また、第2半導体チップ4bが発熱すると、第2半導体チップ4bの熱は、第2熱拡散部材9bの実装面から絶縁性熱伝導基板3に向かって伝達される。このとき、第2半導体チップ4bの熱の少なくとも一部は、第1熱拡散部材9aから離れるように伝達される。
【0039】
絶縁性熱伝導基板3の熱拡散部材9の実装面には、第1半導体チップ4aから伝わった熱による高温域と、第2半導体チップ4bから伝わった熱による高温域との2つの高温域が形成される。上述のように第1半導体チップ4aの熱の少なくとも一部が、第2熱拡散部材9bから離れるように伝達され、第2半導体チップ4bの熱の少なくとも一部が、第1熱拡散部材9aから離れるように伝達される。このため、絶縁性熱伝導基板3の熱拡散部材9の実装面における2つの高温域の離間寸法は、第1半導体チップ4aと第2半導体チップ4bとの離間寸法よりも大きくなる。したがって、第1半導体チップ4aと第2半導体チップ4bとを近づけて配置した場合であっても、絶縁性熱伝導基板3において2つの高温域は離れる。
【0040】
絶縁性熱伝導基板3に伝わった熱は、放熱器1に伝わる。ここで、本実施形態においては、絶縁性熱伝導基板3の熱拡散部材9の実装面における2つの高温域の離間寸法が、第1半導体チップ4aと第2半導体チップ4bとの離間寸法よりも大きい。このため、第1半導体チップ4aから放熱器1に伝わった熱と、第2半導体チップ4bから放熱器1に伝わった熱とが干渉することを抑制できる。つまり、本実施形態においては、第1半導体チップ4aと第2半導体チップ4bとを近接して配置しても、これらの半導体チップ4の熱が熱拡散部材9によって離れるように絶縁性熱伝導基板3に伝熱される。したがって、放熱器1において、第1半導体チップ4aの熱と第2半導体チップ4bの熱とが干渉することが抑止される。
【0041】
放熱器1に伝達された熱は、放熱器1を流れる冷却液Xに吸収され、外部に排出される。このような熱の排出経路が形成されることにより、第1半導体チップ4aと第2半導体チップ4bとが冷却される。
【0042】
以上のような本実施形態の電力変換装置Aは、熱拡散部材9と、放熱器1とを備えている。熱拡散部材9は、複数設けられている。また、熱拡散部材9は、各々に1つの半導体チップ4が実装されている。放熱器1は、熱拡散部材9から伝達される熱を吸収する。複数の熱拡散部材9は、各々が熱伝導の異方性を有する異方性熱拡散部材である。異方性熱拡散部材である熱拡散部材9は、他の熱拡散部材9との配列方向と半導体チップ4の実装面から放熱器1に向かう方向とに沿う断面にて、半導体チップ4の実装面から放熱器1に向かうに連れて隣接配置された他の熱拡散部材9から離間する方向へ熱を伝達する熱伝達特性を有する。
【0043】
例えば、第1熱拡散部材9aは、隣接する第2熱拡散部材9bとの配列方向と第1半導体チップ4aの実装面から放熱器1に向かう方向とに沿う断面にて、第1半導体チップ4aの実装面から放熱器1に向かうに連れて第2熱拡散部材9bから離間する方向へ熱を伝達する熱伝達特性を有する。また、第2熱拡散部材9bは、隣接する第1熱拡散部材9aとの配列方向に沿った端面にて、第2半導体チップ4bの実装面から放熱器1に向かうに連れて第1熱拡散部材9aから離間する方向へ熱を伝達する熱伝達特定を有する。
【0044】
このような本実施形態の電力変換装置Aによれば、熱拡散部材9が、半導体チップ4の実装面から放熱器1に向かうに連れて隣接配置された他の熱拡散部材9から離間する方向へ熱を伝達する熱伝達特性を有する。このため、半導体チップ4同士を近づけて配置しても、これらの半導体チップ4からの熱が放熱器1において離れた位置に伝わり、熱干渉を抑止することができる。したがって、本実施形態の電力変換装置Aによれば、半導体チップ4同士を近づけて配置可能とすることで小型化することができる。
【0045】
また、本実施形態の電力変換装置Aにおいて、熱拡散部材9は、半導体チップ4と放熱器1との配列方向に沿った方向から見て、隣接配置された他の熱拡散部材9から離間する方向への熱伝達率が、隣接配置された他の熱拡散部材9に近接する方向への熱伝達率よりも高い材料(熱伝達異方性材料)で形成されている。
【0046】
例えば、第1熱拡散部材9aは、第1半導体チップ4aと放熱器1との配列方向に沿った方向から見て、第2熱拡散部材9bから離間する方向への熱伝達率が、第2熱拡散部材9bに近接する方向への熱伝達率よりも高い材料で形成されている。また、第2熱拡散部材9bは、第2半導体チップ4bと放熱器1との配列方向に沿った方向から見て、第1熱拡散部材9aから離間する方向への熱伝達率が、第1熱拡散部材9aに近接する方向への熱伝達率よりも高い材料で形成されている。
【0047】
このような本実施形態の電力変換装置Aによれば、熱拡散部材9の全体を熱伝達異方性材料で形成することで、半導体チップ4の実装面から放熱器1に向かうに連れて隣接配置された他の熱拡散部材9から離間する方向へ熱を伝達する熱伝達特性を有する熱拡散部材9を容易に形成することができる。したがって、微細な導電路を形成等する必要がなく、熱拡散部材9の形成が容易となる。
【0048】
また、本実施形態の電力変換装置Aにおいて、熱拡散部材9は、層状の結晶構造を有するグラファイトで形成されている。また、熱拡散部材9は、半導体チップ4と放熱器1との配列方向に沿った方向から見て、グラファイトの結晶面と直交する結晶積層方向が、隣接配置された他の熱拡散部材9に向かう方向となるように形成されている。
【0049】
例えば、第1熱拡散部材9aは、グラファイトで形成されている。第1熱拡散部材9aは、第1半導体チップ4aと放熱器1との配列方向に沿った方向から見て、グラファイトの結晶積層方向が、第2熱拡散部材9bに向かう方向となるように形成されている。また、第2熱拡散部材9bは、グラファイトで形成されている。第2熱拡散部材9bは、第2半導体チップ4bと放熱器1との配列方向に折った方向から見て、グラファイトの結晶積層方向が、第1熱拡散部材9aに向かう方向となるように形成されている。
【0050】
このような本実施形態の電力変換装置Aによれば、熱拡散部材9をグラファイトのみで形成することができる。したがって、熱拡散部材9の形成が容易となる。なお、グラファイトで熱拡散部材9を形成する場合には、結晶面方向及び結晶積層方向を定めることで、上述のような所望の熱伝導の異方性を熱拡散部材9に持たせることができる。
【0051】
また、本実施形態の電力変換装置Aは、絶縁性熱伝導基板3を備えている。絶縁性熱伝導基板3は、熱拡散部材9と放熱器1との間に介装される。また、絶縁性熱伝導基板3は、絶縁性セラミックス基板3aと、金属層3bとを備えている。絶縁性セラミックス基板3aは、熱拡散部材9が一方側の面に設けられる絶縁性の基板である。金属層3bは、絶縁性セラミックス基板3aの他方側の面に設けられると共に放熱器1に当接する。
【0052】
このような本実施形態の電力変換装置Aによれば、熱拡散部材9と放熱器1とを絶縁しかつ半導体チップ4の熱を放熱器1に伝達することができる。このため、例えば、熱拡散部材9を導電回路の一部として用いることが可能となる。
【0053】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について、
図4を参照して説明する。なお、本実施形態の説明において、上記第1実施形態と同様の部分については、その説明を省略あるいは簡略化する。
【0054】
図4は、本実施形態の電力変換装置が備えるパワーデバイスD1の模式的な平面図である。この図に示すように、本実施形態においてパワーデバイスD1は、1つの熱拡散部材9に対して、2つの半導体チップ4が実装されている。つまり、本実施形態では、第1熱拡散部材9aに対して2つの第1半導体チップ4aが実装されている。また、第2熱拡散部材9bに対して2つの第2半導体チップ4bが実装されている。
【0055】
このような本実施形態の電力変換装置においても、第1熱拡散部材9aは、隣接する第2熱拡散部材9bとの配列方向と第1半導体チップ4aの実装面から放熱器1に向かう方向とに沿った断面にて、第1半導体チップ4aの実装面から放熱器1に向かうに連れて第2熱拡散部材9bから離間する方向へ熱を伝達する熱伝達特性を有する。また、第2熱拡散部材9bは、隣接する第1熱拡散部材9aとの配列方向に沿った端面にて、第2半導体チップ4bの実装面から放熱器1に向かうに連れて第1熱拡散部材9aから離間する方向へ熱を伝達する熱伝達特定を有する。
【0056】
したがって、第1半導体チップ4aと第2半導体チップ4bとを近づけて配置しても、これらの半導体チップ4からの熱が放熱器1において離れた位置に伝わり、熱干渉を抑止することができる。したがって、本実施形態の電力変換装置によれば、半導体チップ4同士を近づけて配置可能とすることで小型化することができる。
【0057】
なお、各々の熱拡散部材9に実装される半導体チップ4の数は、2つに限定されるものではない。3つ以上の半導体チップ4を1つの熱拡散部材9に対して実装することも可能である。
【0058】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態について、
図5を参照して説明する。なお、本実施形態の説明において、上記第1実施形態と同様の部分については、その説明を省略あるいは簡略化する。
【0059】
図5は、本実施形態の電力変換装置が備えるパワーデバイスD2の模式的な平面図である。この図に示すように、本実施形態においてパワーデバイスD2は、4つの熱拡散部材9を備えている。各々の熱拡散部材9は、異方性熱拡散部材である。
【0060】
図5に示すように、各々の熱拡散部材9が平面視で矩形状に形成されており、4つの熱拡散部材9が縦横に2つずつ格子状に配列されている。各々の熱拡散部材9は、4つの辺のうち2つに対して他の熱拡散部材9が隣接するように配置されている。
【0061】
各々の熱拡散部材9は、結晶面が半導体チップ4の実装面に対して傾斜するように形成されている。さらに、各々の熱拡散部材9は、結晶積層方向が隣接する2つの熱拡散部材9のうち、1つの熱拡散部材9に向かうように形成されている。
【0062】
例えば、
図5に示すように、4つの熱拡散部材9を、熱拡散部材91、熱拡散部材92、熱拡散部材93及び熱拡散部材94とする。熱拡散部材91と熱拡散部材93とが対角に配置され、熱拡散部材92と熱拡散部材94とが対角に配置されている。このような場合、熱拡散部材91は、4つの辺のうち1つの辺に熱拡散部材92が隣接し、他の1つの辺に熱拡散部材94が隣接する。また、熱拡散部材92は、4つの辺のうち1つの辺に熱拡散部材93が隣接し、他の1つの辺に熱拡散部材91が隣接する。また、熱拡散部材93は、4つの辺のうち1つの辺に熱拡散部材94が隣接し、他の1つの辺に熱拡散部材92が隣接する。また、熱拡散部材94は、4つの辺のうち1つの辺に熱拡散部材91が隣接し、他の1つの辺に熱拡散部材93が隣接する。
【0063】
熱拡散部材91は、熱拡散部材94との配列方向と半導体チップ4から放熱器1に向かう方向とに沿った断面にて、
図5の矢印で示すように、熱拡散部材94から離れるように熱を放熱器1に向けて伝達する。このため、熱拡散部材91に実装された半導体チップ4の熱が熱拡散部材94に実装された半導体チップ4の熱と干渉することを抑制することができる。
【0064】
また、熱拡散部材92は、熱拡散部材91との配列方向と半導体チップ4から放熱器1に向かう方向とに沿った断面にて、
図5の矢印で示すように、熱拡散部材91から離れるように熱を放熱器1に向けて伝達する。このため、熱拡散部材92に実装された半導体チップ4の熱が熱拡散部材91に実装された半導体チップ4の熱と干渉することを抑制することができる。
【0065】
また、熱拡散部材93は、熱拡散部材92との配列方向と半導体チップ4から放熱器1に向かう方向とに沿った断面にて、
図5の矢印で示すように、熱拡散部材92から離れるように熱を放熱器1に向けて伝達する。このため、熱拡散部材93に実装された半導体チップ4の熱が熱拡散部材92に実装された半導体チップ4の熱と干渉することを抑制することができる。
【0066】
また、熱拡散部材94は、熱拡散部材93との配列方向と半導体チップ4から放熱器1に向かう方向とに沿った断面にて、
図5の矢印で示すように、熱拡散部材93から離れるように熱を放熱器1に向けて伝達する。このため、熱拡散部材94に実装された半導体チップ4の熱が熱拡散部材91に実装された半導体チップ4の熱と干渉することを抑制することができる。
【0067】
(第4実施形態)
次に、本発明の第4実施形態について、
図6を参照して説明する。なお、本実施形態の説明において、上記第3実施形態と同様の部分については、その説明を省略あるいは簡略化する。
【0068】
図6は、本実施形態の電力変換装置が備えるパワーデバイスD3の模式的な平面図である。本実施形態において、熱拡散部材91は、熱拡散部材93との配列方向と半導体チップ4から放熱器1に向かう方向とに沿った断面にて、
図6の矢印で示すように、熱拡散部材93から離れるように熱を放熱器1に向けて伝達する。このため、熱拡散部材91に実装された半導体チップ4の熱が熱拡散部材93に実装された半導体チップ4の熱と干渉することを抑制することができる。
【0069】
また、熱拡散部材92は、熱拡散部材94との配列方向と半導体チップ4から放熱器1に向かう方向とに沿った断面にて、
図6の矢印で示すように、熱拡散部材94から離れるように熱を放熱器1に向けて伝達する。このため、熱拡散部材92に実装された半導体チップ4の熱が熱拡散部材94に実装された半導体チップ4の熱と干渉することを抑制することができる。
【0070】
また、熱拡散部材93は、熱拡散部材91との配列方向と半導体チップ4から放熱器1に向かう方向とに沿った断面にて、
図6の矢印で示すように、熱拡散部材91から離れるように熱を放熱器1に向けて伝達する。このため、熱拡散部材93に実装された半導体チップ4の熱が熱拡散部材91に実装された半導体チップ4の熱と干渉することを抑制することができる。
【0071】
また、熱拡散部材94は、熱拡散部材92との配列方向と半導体チップ4から放熱器1に向かう方向とに沿った断面にて、
図6の矢印で示すように、熱拡散部材92から離れるように熱を放熱器1に向けて伝達する。このため、熱拡散部材94に実装された半導体チップ4の熱が熱拡散部材92に実装された半導体チップ4の熱と干渉することを抑制することができる。
【0072】
(第5実施形態)
次に、本発明の第5実施形態について、
図7~
図9を参照して説明する。なお、本実施形態の説明において、上記第1実施形態と同様の部分については、その説明を省略あるいは簡略化する。
【0073】
図7は、本実施形態の電力変換装置が備えるパワーデバイスD4の模式的な平面図である。上記第2実施形態においては、各々に2つの半導体チップ4が設けられた熱拡散部材9が2つ設けられており、これらの熱拡散部材9が2つの半導体チップ4の配列方向と直交する方向に配列された構成について説明した。
【0074】
しかしながら、
図7に示すように、2つの熱拡散部材9を半導体チップ4の配列方向に沿うように配列してもよい。
図8は、パワーデバイスD4が複数配列された状態を示す模式図である。
図8に示すように、例えば、このようなパワーデバイスD4をモータのU相、V相、W相に応じて3つ設けることも可能である。
【0075】
図9は、U相、V相、W相に応じて3つ設けられたパワーデバイスD4と放熱器1との位置関係を示す模式的な断面図である。
図9に示すように、各々のパワーデバイスD4において、2つの熱拡散部材9は、放熱器1の内部を流れる冷却液Xの流れ方向に対して直交する方向に配列されている。このように、熱拡散部材9を放熱器1の内部を流れる冷却液Xの流れ方向に対して直交する方向に配列することで、一方の熱拡散部材9から冷却液Xに伝わった熱が他方の熱拡散部材9の真下を伝わることを防止し、より確実に熱干渉を抑止することが可能となる。
【0076】
このように本実施形態の電力変換装置によれば、放熱器1に一方向に冷却液Xが流されている。また、複数の熱拡散部材9は、半導体チップ4と放熱器1との配列方向に沿った方向から見て、冷却液Xの流れ方向と直交する方向に配列されている。このため、上述のように、互いの熱拡散部材9から放熱器1に伝わたった熱同士が干渉することを抑制することができる。
【0077】
なお、
図8に示すように、複数のパワーデバイスを備える場合には、各々のパワーデバイスが1つの熱拡散部材9を備えるようにし、パワーデバイス同士の熱が干渉を起こさないように熱拡散部材9の熱伝導の異方性を設定するようにしてもよい。例えば、U相に対応して設けられたパワーデバイスDの熱拡散部材9を結晶積層方向がV相に向かうように形成してもよい。また、W相に対応して設けられたパワーデバイスDの熱拡散部材9を結晶積層方向がV相に向かうように形成してもよい。
【0078】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されないことは言うまでもない。上述した実施形態において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の趣旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0079】
例えば、上記実施形態においては、複数の熱拡散部材9の全てが異方性熱拡散部材である構成について説明した。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、複数の熱拡散部材のうち、いずれかの熱拡散部材が熱伝導の異方性を有していなくてもよい。つまり、本発明においては、複数の熱拡散部材を備える場合に、少なくとも1つの熱拡散部材が異方性拡散部材であればよい。
【0080】
また、本実施形態においては、異方性熱拡散部材がグラファイトによって形成された構成について説明した。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではない。グラファイト以外の材料で異方性熱拡散部材が形成されていても良い。また、複数の部材を組み合わせることで異方性熱拡散部材が熱伝達の異方性を備えるようにしてもよい。
【0081】
なお、上記実施形態については、例えば以下の付記のようにも記載できる。
【0082】
(付記1)
各々に少なくとも1つの半導体素子が実装された複数の熱拡散部材と、
上記熱拡散部材から伝達される熱を吸収する冷却部材と
を備え、
少なくとも1つの上記熱拡散部材は、熱伝導の異方性を有する異方性熱拡散部材であり、
上記異方性熱拡散部材は、他の上記熱拡散部材との配列方向と上記半導体素子の実装面から上記冷却部材に向かう方向とに沿う断面にて、上記半導体素子の実装面から上記冷却部材に向かうに連れて隣接配置された他の上記熱拡散部材から離間する方向へ熱を伝達する熱伝達特性を有する
ことを特徴とする半導体装置。
【0083】
(付記2)
上記異方性熱拡散部材は、
上記半導体素子と上記冷却部材との配列方向に沿った方向から見て、隣接配置された他の上記熱拡散部材から離間する方向への熱伝達率が、隣接配置された他の上記熱拡散部材に近接する方向への熱伝達率よりも高い材料で形成されている
ことを特徴とする付記1記載の半導体装置。
【0084】
(付記3)
上記異方性熱拡散部材は、
層状の結晶構造を有するグラファイトで形成され、上記半導体素子と上記冷却部材との配列方向に沿った方向から見て、上記グラファイトの結晶面と直交する結晶積層方向が、隣接配置された他の上記熱拡散部材に向かう方向となるように形成されている
ことを特徴とする付記1または2記載の半導体装置。
【0085】
(付記4)
上記熱拡散部材と上記冷却部材との間に介装される絶縁性伝熱部材を備え、
上記絶縁性伝熱部材は、
上記熱拡散部材が一方側の面に設けられる絶縁基板と、
上記絶縁基板の他方側の面に設けられると共に上記冷却部材に当接する金属層と
を備える
ことを特徴とする付記1~3のいずれか一つに記載の半導体装置。
【0086】
(付記5)
上記冷却部材に一方向に冷媒が流され、
複数の上記熱拡散部材は、上記半導体素子と上記冷却部材との配列方向に沿った方向から見て、上記冷媒の流れ方向と直交する方向に配列されている
ことを特徴とする付記1~4のいずれか一つに記載の半導体装置。
【0087】
(付記6)
各々に複数の上記半導体素子が実装された上記熱拡散部材を複数備えることを特徴とする付記1~5のいずれか一つに記載の半導体装置。
【0088】
(付記7)
【0089】
付記1~6のいずれか一つに記載の半導体装置からなることを特徴とする電力変換装置。
【符号の説明】
【0090】
1……放熱器(冷却部材)、3……絶縁性熱伝導基板(絶縁性伝熱部材)、3a……絶縁性セラミックス基板(絶縁基板)、3b……金属層、4……半導体チップ(半導体素子)、4a……第1半導体チップ、4b……第2半導体チップ、9……熱拡散部材、9a……第1熱拡散部材、9b……第2熱拡散部材、91……熱拡散部材、92……熱拡散部材、93……熱拡散部材、94……熱拡散部材、A……電力変換装置(半導体装置)、D……パワーデバイス、D1……パワーデバイス、D2……パワーデバイス、D3……パワーデバイス、D4……パワーデバイス、X……冷却液(冷媒)