(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023170152
(43)【公開日】2023-12-01
(54)【発明の名称】積層体、成形品及び成形品の製造方法
(51)【国際特許分類】
B32B 7/022 20190101AFI20231124BHJP
B32B 27/40 20060101ALI20231124BHJP
B32B 27/36 20060101ALI20231124BHJP
B29C 43/30 20060101ALI20231124BHJP
B29C 70/34 20060101ALI20231124BHJP
B29C 70/50 20060101ALI20231124BHJP
【FI】
B32B7/022
B32B27/40
B32B27/36
B29C43/30
B29C70/34
B29C70/50
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022081690
(22)【出願日】2022-05-18
(71)【出願人】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100127465
【弁理士】
【氏名又は名称】堀田 幸裕
(74)【代理人】
【識別番号】100217836
【弁理士】
【氏名又は名称】合田 幸平
(72)【発明者】
【氏名】金子 雅一
(72)【発明者】
【氏名】関口 英樹
(72)【発明者】
【氏名】谷村 俊之
【テーマコード(参考)】
4F100
4F204
4F205
【Fターム(参考)】
4F100AK25C
4F100AK41B
4F100AK42A
4F100AK51B
4F100AK51C
4F100BA02
4F100BA03
4F100BA04
4F100BA07
4F100BA10A
4F100BA10B
4F100BA10C
4F100BA10D
4F100CA02B
4F100DH02D
4F100EJ53
4F100GB32
4F100GB87
4F100JB13B
4F100JK12B
4F100JK12C
4F100JK15
4F100YY00B
4F204AA36
4F204AC03
4F204AD05
4F204AD08
4F204AD16
4F204AG03
4F204FB02
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4F204FG02
4F204FG09
4F204FN11
4F204FN15
4F204FN17
4F204FQ21
4F205AA36
4F205AC03
4F205AD05
4F205AD08
4F205AD16
4F205AG03
4F205HA08
4F205HA14
4F205HA26
4F205HA33
4F205HA35
4F205HA45
4F205HB02
4F205HB11
4F205HK03
4F205HK04
4F205HK24
4F205HT16
4F205HT26
(57)【要約】
【課題】成形品の表面の変形を抑制する。
【解決手段】積層体10は、基材11と、第1部材20と、を有する。第1部材20は、基材11に重ねられる。第1部材20は、形状維持層25を有する。形状維持層25のインデンテーション硬度は、20MPa以上300MPa以下である。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、
前記基材に重ねられた第1部材と、を備え、
前記第1部材は、形状維持層を有し、
前記形状維持層のインデンテーション硬度は、20MPa以上である、積層体。
【請求項2】
前記形状維持層のインデンテーション硬度は、300MPa以下である、請求項1に記載の積層体。
【請求項3】
前記形状維持層は、熱硬化性樹脂を含む、請求項1に記載の積層体。
【請求項4】
前記形状維持層は、イソシアネートを含む、請求項1に記載の積層体。
【請求項5】
基材と、
前記基材に重ねられた第1部材と、を備え、
前記第1部材は、形状維持層を有し、
前記形状維持層は、エステル系樹脂及びイソシアネートを含む、積層体。
【請求項6】
前記形状維持層の厚みは、0.5μm以上である、請求項1または5に記載の積層体。
【請求項7】
前記形状維持層の厚みは、0.5μm以上250μm以下である、請求項1または5に記載の積層体。
【請求項8】
前記第1部材は、前記基材と前記形状維持層との間に配置されたハードコート層及び/又は前記形状維持層に重ねられた機能層をさらに有する、請求項1または5に記載の積層体。
【請求項9】
形状維持層を有する第1部材と、
前記第1部材に重ねられた繊維強化樹脂基板と、を備え、
前記形状維持層のインデンテーション硬度は、20MPa以上である、成形品。
【請求項10】
前記形状維持層は、エステル系樹脂及びイソシアネートを含む、請求項9に記載の成形品。
【請求項11】
前記第1部材は、前記形状維持層に重ねられたハードコート層及び/又は機能層をさらに有する、請求項9に記載の成形品。
【請求項12】
前記形状維持層の厚みは、0.1μm以上である、請求項9に記載の成形品。
【請求項13】
前記形状維持層の厚みは、0.1μm以上250μm以下である、請求項9に記載の成形品。
【請求項14】
基材と前記基材に重ねられた第1部材とを備える積層体を、前記基材より前記第1部材が近くなるように、繊維強化樹脂基板に重ねる積層工程を備え、
前記第1部材は、形状維持層を有し、
前記積層工程後の前記形状維持層のインデンテーション硬度は、20MPa以上である、成形品の製造方法。
【請求項15】
前記積層工程において、前記積層体及び前記繊維強化樹脂基板は、加熱及び加圧される、請求項14に記載の成形品の製造方法。
【請求項16】
前記基材を剥離する剥離工程をさらに備える、請求項14に記載の成形品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、積層体、積層体を用いて製造される成形品及び積層体を用いた成形品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
スポーツ用具、自動車、船舶、航空機等に用いられる部材は、大きな衝撃や変形応力を受け得る。このような部材として、炭素繊維強化樹脂(CFRP)やガラス繊維強化樹脂(GFRP)等の繊維強化樹脂からなる基板を有する成形品を用いることが提案されている。繊維強化樹脂基板は、繊維を織って樹脂を含浸させることで形成される。繊維強化樹脂は、軽量且つ強靭な材料である。
【0003】
繊維強化樹脂基板を有する成形品は、耐傷性を向上させるためのハードコート層や種々の機能を発揮する機能層を有するように作製され得る。ハードコート層や機能層は、特許文献1に記載されているような積層体を用いて、繊維強化樹脂の基板に重ねて設けられる。ハードコート層や機能層は、積層体が有する第1部材に含まれる。積層体が有する構成要素によって、成形品の表面が形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
繊維強化樹脂基板の表面には、繊維強化樹脂を織って形成される織目模様等により凹凸形状が形成されている。繊維強化樹脂基板を有する成形品が長時間に亘って高温に晒されると、成形品の表面が意図せずに凹凸形状に変形することがある。成形品の表面は、繊維強化樹脂基板の表面に形成された凹凸形状に起因して変形すると考えられた。本開示は、成形品の表面の変形を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一実施の形態は、以下の[1]~[16]に関する。
[1]
基材と、
前記基材に重ねられた第1部材と、を備え、
前記第1部材は、形状維持層を有し、
前記形状維持層のインデンテーション硬度は、20MPa以上である、積層体。
[2]
前記形状維持層のインデンテーション硬度は、300MPa以下である、[1]に記載の積層体。
[3]
前記形状維持層は、熱硬化性樹脂を含む、[1]または[2]に記載の積層体。
[4]
前記形状維持層は、イソシアネートを含む、[1]乃至[3]のいずれかに記載の積層体。
[5]
基材と、
前記基材に重ねられた第1部材と、を備え、
前記第1部材は、形状維持層を有し、
前記形状維持層は、エステル系樹脂及びブロックイソシアネートを含む、積層体。
[6]
前記形状維持層の厚みは、0.5μm以上である、[1]乃至[5]のいずれかに記載の積層体。
[7]
前記形状維持層の厚みは、0.5μm以上250μm以下である、[1]乃至[5]のいずれかに記載の積層体。
[8]
前記第1部材は、前記基材と前記形状維持層との間に配置されたハードコート層及び/又は機能層をさらに有する、[1]乃至[7]のいずれかに記載の積層体。
[9]
形状維持層を有する第1部材と、
前記第1部材に重ねられた繊維強化樹脂基板と、を備え、
前記形状維持層のインデンテーション硬度は、20MPa以上である、成形品。
[10]
前記形状維持層は、エステル系樹脂及びイソシアネートを含む、[9]に記載の成形品。
[11]
前記第1部材は、前記形状維持層に重ねられたハードコート層及び/又は機能層をさらに有する、[9]または[10]に記載の成形品。
[12]
前記形状維持層の厚みは、0.1μm以上である、[9]乃至[11]のいずれかに記載の成形品。
[13]
前記形状維持層の厚みは、0.1μm以上250μm以下である、[9]乃至[11]のいずれかに記載の成形品。
[14]
基材と前記基材に重ねられた第1部材とを備える積層体を、前記基材より前記第1部材が近くなるように、繊維強化樹脂基板に重ねる積層工程を備え、
前記第1部材は、形状維持層を有し、
前記積層工程後の前記形状維持層のインデンテーション硬度は、20MPa以上である、成形品の製造方法。
[15]
前記積層工程において、前記積層体及び前記繊維強化樹脂基板は、加熱及び加圧される、[14]に記載の成形品の製造方法。
[16]
前記基材を剥離する剥離工程をさらに備える、[14]または[15]に期しあの成形品の製造方法。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、成形品の表面の変形を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図3】
図3は、成形品を製造する製造装置の一例の概略側面図である。
【
図4】
図4は、成形品を製造する製造装置の他の例の概略側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して本開示の一実施の形態について説明する。本件明細書に添付された図面における縮尺及び縦横の寸法比等は、図示と理解のしやすさのため、実物のそれらから変更され誇張されている。
【0010】
本明細書において、「層」、「フィルム」の用語は、呼称の違いのみに基づいて、互いから区別されるものではない。例えば、「形状維持層」はフィルムと呼ばれ得るような部材をも含む概念であり、したがって、「形状維持層」は、「形状維持フィルム」と呼ばれる部材と、呼称の違いのみにおいて区別され得ない。
【0011】
[成形品]
図1は、本開示の一実施の形態に係る成形品1の一例の断面図である。
図1Aは、本開示の一実施の形態に係る成形品1の他の例の断面図である。
図1及び
図1Aに示されている成形品1は、繊維強化樹脂基板5と、第1部材20と、を有している。繊維強化樹脂基板5は、第1部材20に重ねられている。
図1及び
図1Aに示されている例では、第1部材20は、繊維強化樹脂基板5の全体に重なっている。第1部材20は、繊維強化樹脂基板5の一部にのみ重なっていてもよい。第1部材20は、繊維強化樹脂基板5に重ねられることで設けられる。第1部材20は、成形品1の表面をなす。成形品1の厚みは、例えば、0.3mm以上50mm以下である。
【0012】
図1及び
図1Aに示されている例では、成形品1は、平板状である。図示されている例に限らず、成形品1は、湾曲または屈曲していてもよい。
【0013】
<繊維強化樹脂基板>
繊維強化樹脂基板5は、第1部材20に重ねられる。繊維強化樹脂基板5は、軽量且つ強靱な基板である。繊維強化樹脂基板5は、炭素繊維やガラス繊維等の強化繊維を織り、熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂といったマトリックス樹脂を含浸させ、硬化させることで製造される。本実施の形態では、強化繊維として炭素繊維を用いている。炭素繊維にマトリックス樹脂を含浸させたものは、プリプレグとも称される。繊維強化樹脂基板5は、複数のプリプレグを重ねることで製造されていてもよい。繊維強化樹脂基板5には、立体的で微細な織目模様が形成されている。織目模様等により、繊維強化樹脂基板5の表面には、凹凸形状が形成されている。繊維強化樹脂基板5の厚みは、例えば0.3mm以上50mm以下である。
【0014】
繊維強化樹脂基板5に形成される織目模様は、例えば、一方向に引き揃えられた長繊維、二方向織物、多軸織物、不織布、マット、ニット、組み紐であってもよい。長繊維とは、例えば10mm以上の連続な単繊維もしくは繊維束を意味する。
【0015】
炭素繊維は、例えば、ポリアクリロニトリル系炭素繊維、ピッチ系炭素繊維等、あるいは、それらの混合物である。
【0016】
マトリックス樹脂は、例えば、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、あるいは熱可塑性エラストマーである。熱硬化性樹脂は、例えば、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、シリコーン樹脂、ウレタン樹脂、ポリイミド樹脂である。熱可塑性樹脂は、例えば、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルイミド、ポリイミドである。
【0017】
<第1部材>
第1部材20は、繊維強化樹脂基板5に重ねられて設けられる。第1部材20は、様々な機能を発揮する。第1部材20は、機能を発揮するための複数の層を有している。
図1に示されている例では、第1部材20は、ハードコート層21と、機能層23と、形状維持層25と、接合層27と、を有している。
図1に示すように、ハードコート層21及び機能層23は、形状維持層25に直接的にまたは間接的に重ねられている。成形品1及び第1部材20の表面は、ハードコート層21によって形成されている。成形品1及び第1部材20の表面は、形状維持層25によって所望の形状に維持される。第1部材20は、ハードコート層21によって繊維強化樹脂基板5の表面を保護したり、機能層23によって発揮される種々の機能を成形品1に付与したりする。第1部材20は、接合層27によって繊維強化樹脂基板5に接合される。第1部材20は、図示しない他の部材を有していてもよい。
【0018】
図1に示されている例に限らず、接合層27は省略されていてもよい。形状維持層25によって、第1部材20が繊維強化樹脂基板5に接合されてもよい。形状維持層25と接合層27が同一の部材であってもよい。成形品1に付与する機能に応じて、第1部材20のハードコート層21や機能層23は、省略されていてもよい。
図1Aに示されているように、機能層23は、形状維持層25と接合層27との間に配置されていてもよい。第1部材20が複数の機能層23を有していてもよい。成形品1が、後述する基材11を有していてもよい。
【0019】
形状維持層25は、成形品1及び第1部材20の表面を所望の形状に維持するよう、十分な硬さを有している。形状維持層25のインデンテーション硬度は、20MPa以上、好ましくは80MPa以上、より好ましくは140MPa以上である。形状維持層25のインデンテーション硬度は、300MPa以下であることが好ましく、160MPa以下であることがより好ましい。
【0020】
本開示において、インデンテーション硬度は、以下の方法で測定される。測定の対象となる部材をミクロトームで切断して、切断面を露出させる。ナノインデンテーション装置(米国HYSITRON社製、商品名:トライボインデンターTI950 TriboIndenter)を用いて、荷重制御方式(最大荷重:50μN)で、先端形状が三角錐のダイヤモンドチップからなる圧子(Berkovich圧子TI-0039)を、切断面の側方に垂直方向に押し込む。荷重に対する圧子の変位を測定することで、インデンテーション硬度が得られる。測定の条件は、以下の通りである。
・測定温度:23℃
・相対湿度:70%
・押し込み加重:50μN
・押し込み深さ到達時間:10秒
・荷重保持時間:5秒
・押し込み深さ除荷時間:10秒
【0021】
成形品1において、形状維持層25は、成形品1及び第1部材20の表面を所望の形状に維持するよう、十分な厚みを有していることが好ましい。具体的には、成形品1において、形状維持層25の厚みは、0.1μm以上であることが好ましく、0.1μm以上250μm以下であることがより好ましい。
【0022】
[積層体]
第1部材20は、積層体10として繊維強化樹脂基板5に重ねられる。
図2には、積層体10の一例の断面図が示されている。
図2Aには、積層体10の他の例の断面図が示されている。
図2及び
図2Aに示すように、積層体10は、基材11と、第1部材20と、を有している。第1部材20は、上述したように、ハードコート層21と、機能層23と、形状維持層25と、接合層27と、を有している。ハードコート層21は、第1部材20の表面に配置されている。
図2に示す例では、ハードコート層21及び機能層23は、基材11と形状維持層25との間に配置されている。ハードコート層21は、基材11と機能層23との間に配置されている。機能層23と接合層27との間に、形状維持層25が配置されている。基材11、ハードコート層21と、機能層23と、形状維持層25と、接合層27が、この順で重ねられている。積層体10及び第1部材20は、他の部材を有していてもよい。図示されている例に限らず、機能層23は、形状維持層25に直接的にまたは間接的に重ねられていれば、基材11と形状維持層25との間でなくてもよい。例えば、
図2Aに示すように、基材11、ハードコート層21と、形状維持層25と、機能層23と、接合層27が、この順で重ねられていてもよい。
【0023】
積層体10及び第1部材20の各構成要素について説明する。
【0024】
<基材>
基材11は、第1部材20を支持する。基材11は、第1部材20の表面に重ねて設けられている。
図2に示されている例では、基材11は、ハードコート層21に接するように設けられている。基材11は、第1部材20から剥離可能に設けられている。基材11を第1部材20から容易に剥離するために、基材11と第1部材20との間に図示しない剥離層が設けられていてもよい。剥離層は、例えば、シリコーン樹脂からなる。基材11は第1部材20から剥離しなくてもよい。
【0025】
基材11が第1部材20から剥離する場合、基材11は、第1部材20を適切に支持し且つ第1部材20から容易に剥離するための適切な可撓性及び剛性を有している。基材11の厚みは、例えば5μm以上200μm以下である。
【0026】
基材11の材料は、例えば、ポリエチレンテレフタレート及びポリブチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリオレフィン、ポリスチレン、ビニル樹脂、(メタ)アクリル樹脂、アミド樹脂、イミド樹脂およびポリカーボネートである。本開示において、「(メタ)アクリル」は、「アクリル」および「メタクリル」の両方を包含し、「(メタ)アクリレート」は、「アクリレート」および「メタクリレート」の両方を包含する。積層体10を製造する際の熱収縮や、電離放射線の照射による収縮の生じにくさ、第1部材20の剥離性の高さを考慮すると、基材11の材料は、ポリエチレンテレフタレートまたはポリブチレンテレフタレートが好ましい。積層体10を製造する際の熱収縮や、電離放射線の照射による収縮の生じにくさを考慮すると、基材11の材料は、延伸フィルム、特に二軸延伸フィルムであることが好ましい。
【0027】
(ハードコート層)
ハードコート層21は、成形品1の表面を保護する。ハードコート層21は、成形品1及び第1部材20の表面をなす。ハードコート層21は、例えば、耐傷性、耐候性、耐摩耗性および耐薬品性を有する。ハードコート層21の厚みは、例えば、0.5μm以上50μm以下である。
【0028】
ハードコート層21は、硬化性樹脂を含む樹脂組成物からなる。硬化性樹脂は、例えば電離放射線硬化性樹脂、あるいは、紫外線硬化性樹脂である。耐傷性、耐候性、耐摩耗性および耐薬品性の観点から、硬化性樹脂は、電離放射線硬化性樹脂であることが好ましい。
【0029】
電離放射線硬化性樹脂は、例えば、重合性モノマー、重合性オリゴマーやプレポリマーである。重合性モノマー、重合性オリゴマーやプレポリマーは、例えば、アクリルモノマー系、エポキシ(メタ)アクリレート系、ウレタン(メタ)アクリレート系やポリエーテル系ウレタン(メタ)アクリレートやカプロラクトン系ウレタン(メタ)アクリレートやポリカーボネート系ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート系、ポリエーテル(メタ)アクリレート系、のオリゴマーやプレポリマーである。
【0030】
電離放射線硬化性樹脂に照射する電離放射線は、例えば、紫外線(UV)又は電子線(EB)、X線、γ線等の電磁波、α線、イオン線等の荷電粒子線である。
【0031】
紫外線硬化性樹脂は、例えば、分子中に2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する多官能(メタ)アクリレートである。多官能(メタ)アクリレートは、2官能以上の(メタ)アクリレートであれば特に制限はなく、オリゴマー及びモノマーのいずれでも良い。多官能(メタ)アクリレートモノマーは、例えば、ウレタン(メタ)アクリレートモノマー;トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートおよびジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の脂肪族モノマー;トリス(2-(メタ)アクリロキシエチル)イソシアヌレート等のイソシアヌレート骨格を有するモノマー;ならびにこれらの変性体である。
【0032】
上記変性体は、例えば、エチレンオキサイド(EO)変性体、プロピレンオキサイド(PO)変性体およびカプロラクトン(CL)変性体である。高湿度環境下において加水分解の影響が小さく、ハードコート層の耐候性をより向上できるという観点から、CL変性体が好ましい。上記変性体は、具体的には、EO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、PO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、EO変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、PO変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、CL変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートおよびCL変性トリス(2-(メタ)アクリロキシエチル)イソシアヌレートであることが好ましい。
【0033】
ウレタン(メタ)アクリレートモノマーは、ポリイソシアネートと、水酸基を有する(メタ)アクリレートとを反応させて得られ、分子中にウレタン結合および(メタ)アクリロイル基を有するモノマーである。
【0034】
ポリイソシアネートは、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネートおよびリジントリイソシアネートなどの脂肪族ポリイソシアネート;イソホロンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート、メチレンビス(4-シクロヘキシルイソシアネート)、1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、2-メチル-1,3-ジイソシアナトシクロヘキサンおよび2-メチル-1,5-ジイソシアナトシクロヘキサンなどの脂環式ポリイソシアネートである。ポリイソシアネートは、脂肪族ポリイソシアネートまたは脂環式ポリイソシアネートの多量体、例えばイソシアヌレート体などの三量体であってもよい。ポリイソシアネートにおけるイソシアネート基数は、好ましくは2以上であり、好ましくは12以下、より好ましくは8以下である。
【0035】
水酸基を有する(メタ)アクリレートは、例えば、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2-(メタ)アクリロイロキシエチル-2-ヒドロキシエチル-フタル酸、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、ビス((メタ)アクリロキシエチル)ヒドロキシエチルイソシアヌレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレートおよびジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート;ならびにこれらのEO、POまたはCL変性体である。これらの中でも、ハードコート層の耐摩耗性および耐候性の向上という観点から、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートおよびジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート;ならびにこれらのEO、POまたはCL変性体が好ましい。
【0036】
多官能(メタ)アクリレートオリゴマーは、例えばウレタン(メタ)アク リレート系オリゴマー、エポキシ(メタ)アクリレート系オリゴマー、ポリエステル(メ タ)アクリレート系オリゴマー、ポリエーテル(メタ)アクリレート系オリゴマー等である。ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーは、ポリオールおよびジイソシアネートを反応させて得られるイソシアネート化合物と、水酸基を有する(メタ)アクリレートとを反応させて得られ、分子中にウレタン結合および(メタ)アクリロイル基を有するオリゴマーである。
【0037】
ポリオールは、例えば、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオールおよびポリエステルポリオールである。ジイソシアネート、および水酸基を有する(メタ)アクリレートは、上述した化合物である。
【0038】
エポキシ(メタ)アクリレート系オリゴマーは、例えば、比較的低分子量のビスフェノール型エポキシ樹脂やノボラック型エポキシ樹脂のオキシラン環に、(メタ)アクリル酸を反応しエステル化することにより得ることができる。エポキシ(メタ)アクリレート系オリゴマーを部分的に二塩基性カルボン酸無水物で変性したカルボキシル変性型のエポキシ(メタ)アクリレートオリゴマーも用いることができる。ポリエステル(メタ)アクリレート系オリゴマーとしては、例えば多価カルボン酸と多価アルコールの縮合によって得られる両末端に水酸基を有するポリエステルオリゴマーの水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化することにより、あるいは、多価カルボン酸にアルキレンオキシドを付加して得られるオリゴマーの末端の水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得ることができる。ポリエーテル(メタ)アクリレート系オリゴマーは、ポリエーテルポリオールの水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得ることができる。
【0039】
硬化性樹脂を含む樹脂組成物には、各種添加剤を含有させてもよい。添加剤は、例えば、耐傷フィラー、紫外線吸収剤、光安定剤、重合禁止剤、架橋剤、帯電防止剤、接着性向上剤、酸化防止剤、レベリング剤、チクソ性付与剤、カップリング剤、可塑剤、消泡剤、充填剤、溶剤である。
【0040】
(機能層)
機能層23は、成形品1に付与する種々の機能を発揮する。機能層23は、例えば、加飾機能、紫外線吸収機能、赤外線吸収機能、ガス遮蔽機能、湿度遮蔽機能、電磁波遮蔽機能、絶縁機能、放熱機能、導電機能、傷復元機能、傷付防止機能、耐薬品機能、耐原子状酸素機能を発揮する。機能層23は、複数の機能を発揮してもよい。機能層23は、発揮する機能に適した形状及び材料で形成される。
【0041】
一例として、加飾機能を発揮する機能層23について説明する。加飾機能を発揮する機能層23を以下では加飾層と称する。加飾層は、意匠を形成する。形成される意匠により、加飾層は、成形品1に意匠を付与する加飾機能を発揮する。加飾層は、図形、パターン、デザイン、色彩、絵、写真、キャラクター、マーク、ピクトグラム、文字や数字などの絵柄を、意匠として形成できる。加飾層は、第1部材20の全面に配置されていてもよいし、一部にのみ配置されていてもよい。加飾層の厚みは、例えば、1μm以上40μm以下である。加飾層は、例えばグラビア印刷、オフセット印刷、シルクスクリーン印刷、転写シートからの転写印刷、昇華転写印刷、インクジェット印刷等の公知の印刷方法によって設けることができる。
【0042】
加飾層は、樹脂材料および着色剤を含む。樹脂材料は、例えば、(メタ)アクリル樹脂、ポリオレフィン、塩素化ポリオレフィン、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、ポリスチレン、ポリエステルおよびセルロース樹脂である。着色剤は、例えば、カーボンブラック、鉄黒、チタン白、アンチモン白、黄鉛、チタン黄、弁柄、カドミウム赤、群青およびコバルトブルー等の無機顔料;アゾ系、フタロシアニン系、アントラキノン系、ペリレン系、ペリノン系、キナクリドン系、チオインジゴ系、ジオキサジン系、イソインドリノン系、キノフタロン系、アゾメチンアゾ系、ジクトピロロピロール系もしくはイソインドリン系の有機顔料または染料である。
【0043】
図2Aに示すような積層体10を繊維強化樹脂基板5に重ねることによって作製される
図1Aに示すような成形品1において、加飾層として機能する機能層23は、形状維持層25と繊維強化樹脂基板5との間に位置している。このような成形品1を繊維強化樹脂基板5より形状維持層25の近くからは、加飾層による意匠と繊維強化樹脂基板5の意匠とが組み合わさって観察される。加飾層として機能する機能層23が形状維持層25と繊維強化樹脂基板5との間に位置していることで、成形品1はより優れた意匠を表示できる。
【0044】
(形状維持層)
形状維持層25は、成形品1及び第1部材20の表面を所望の形状に維持及び調整する。形状維持層25は、成形品1が長時間に亘って高温に晒されても、成形品1の表面の変形を抑制する。形状維持層25は、樹脂組成物からなる。
【0045】
形状維持層25は、十分に高い硬度となっている。具体的には、形状維持層25のインデンテーション硬度は、20MPa以上、好ましくは80MPa以上、より好ましくは140MPa以上である。形状維持層25のインデンテーション硬度は、300MPa以下であることが好ましく、160MPa以下であることがより好ましい。
【0046】
形状維持層25のインデンテーション硬度は、繊維強化樹脂基板5に重ねられる前において、すなわち積層体10の第1部材20において、20MPa以上、好ましくは80MPa以上、より好ましくは140MPa以上であってもよい。
【0047】
繊維強化樹脂基板5に重ねられる前から十分に高いインデンテーション硬度となっている形状維持層25を構成する樹脂組成物は、熱硬化性樹脂を含んでいることが好ましい。熱硬化性樹脂は、例えば、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、ウレタン系樹脂である。
【0048】
繊維強化樹脂基板5に重ねられる前から十分に高いインデンテーション硬度となっている形状維持層25は、硬化剤を含んでいてもよい。硬化剤は、ヘキサメチレンジイソシアヌレート(HDIヌレート)やブロックイソシアネート等のイソシアネートであることが好ましい。硬化剤を含むことで、形状維持層25のインデンテーション硬度を高めることができる。
【0049】
形状維持層25のインデンテーション硬度は、繊維強化樹脂基板5に重ねられる前においては20MPa未満であるが、繊維強化樹脂基板5に重ねられた後において、すなわち成形品1において、20MPa以上、好ましくは80MPa以上、より好ましくは140MPa以上となってもよい。
【0050】
繊維強化樹脂基板5に重ねられた後にインデンテーション硬度が高くなる形状維持層25を構成する樹脂組成物は、熱可塑性樹脂を含んでいてもよい。熱可塑性樹脂は、例えば、エステル系樹脂である。
【0051】
形状維持層25のインデンテーション硬度が繊維強化樹脂基板5に重ねられた後に高くなる場合、形状維持層25は、硬化剤を含んでいる。硬化剤は、貯蔵安定性及び硬化速度を考慮すると、例えば、100℃以上250℃以下の温度に10秒以上3時間以下の時間に亘って晒すことで硬化するものであることが好ましい。硬化剤は、ブロックイソシアネートであることが好ましい。形状維持層25をなす樹脂組成物がエステル系樹脂を含んでいる場合、硬化剤としてブロックイソシアネートを含んでいることで、繊維強化樹脂基板5に重ねられる際や重ねられた後に加熱されると、ブロックイソシアネートが架橋反応する。この結果、形状維持層25のインデンテーション硬度が高くなる。繊維強化樹脂基板5に重ねられる前にインデンテーション硬度が低くても、繊維強化樹脂基板5に重ねられた後に十分に高くできる。繊維強化樹脂基板5に重ねられた後の成形品1においても、形状維持層25は、エステル系樹脂及びブロックイソシアネート等のイソシアネートを含んでいる。
【0052】
形状維持層25は、十分なインデンテーション硬度となるよう、十分な厚みとなっている。形状維持層25は、成形品1の軽量化のために、十分な薄さとなっている。具体的には、積層体10において、形状維持層25の厚みは、0.5μm以上、好ましくは0.5μm以上250μm以下、より好ましくは10μm以上50μm以下である。繊維強化樹脂基板5に重ねられた後の成形品1において、形状維持層25の厚みは、0.1μm以上、好ましくは0.1μm以上250μm以下となり得る。
【0053】
成形品1の厚み、積層体10の厚み、及び成形品1及び積層体10に含まれる各部材の厚み、特に形状維持層25の厚みは、成形品1または積層体10の断面を走査電子顕微鏡(SEM)によって観察することで特定できる。断面は、成形品1または積層体10をミクロトームで切断することで観察できる。成形品1の厚み、積層体10の厚み、及び成形品1及び積層体10に含まれる各部材の厚みは、走査電子顕微鏡によって観察された断面の画像において、対象となる各部材の5箇所の厚みの平均として特定される。厚みを測定する5箇所は、断面の画像において厚み方向に直交する方向に25μm間隔で並んだ位置である。
【0054】
(接合層)
接合層27は、積層体10及び第1部材20を繊維強化樹脂基板5に接合する。接合層27は、繊維強化樹脂基板5の表面の凹凸形状に追従して埋まり込む。接合層27は繊維強化樹脂基板5の表面に強固に接合される。接合層27は、ハードコート層21によって形成される第1部材20の表面とは逆の表面を形成する。接合層27の厚みは、例えば、1μm以上10μm以下である。
【0055】
接合層27は、種々の接着性または粘着性を有する材料からなる。接合層27は、ヒートシール性を有する材料からなることが好ましい。接合層27の材料は、例えば、(メタ)アクリル樹脂、ポリオレフィン、塩素化ポリオレフィン、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、ポリスチレン、ポリエステル、アミド樹脂およびウレタン樹脂等の熱可塑性樹脂である。
【0056】
上述したように、接合層27は省略されていてもよいが、形状維持層25のインデンテーション硬度が十分に高い場合、繊維強化樹脂基板5と積層体10とを適切に接合するために、第1部材20は、接合層27を有していることが好ましい。
【0057】
(その他)
第1部材20は、ハードコート層21または機能層23と形状維持層25との間に、図示しないプライマー層を有していてもよい。プライマー層は、ハードコート層21または機能層23と形状維持層25との密着性を向上させる。プライマー層は、例えばウレタン樹脂からなる。プライマー層の厚みは、例えば0.1μm以上10μm以下である。
【0058】
積層体10は、図示しないカバーフィルムを有していてもよい。カバーフィルムは、第1部材20の接合層27に接するように配置される。カバーフィルムは、接合層27を保護する。カバーフィルムは、積層体10から第1部材20を繊維強化樹脂基板5に重ねられる際に、接合層27から剥離される。カバーフィルムが剥離されることで、接合層27が露出する。カバーフィルムは、例えば、ポリオレフィン等の樹脂材料からなる。
【0059】
[第1の例の製造方法]
積層体10を用いた成形品1の製造方法の第1の例について、
図3を参照しながら説明する。
図3には、積層体10を繊維強化樹脂基板5に重ねる積層装置50の一例が示されている。積層装置50は、第1ベルト51と、第2ベルト52と、ヒーター53と、クーラー54と、フィルム用ローラー58と、を有している。第1ベルト51と第2ベルト52とは、互いに向かい合っている。第1ベルト51と第2ベルト52との間の距離は、製造される成形品1の厚みとほぼ同一である。
【0060】
成形品1の製造方法は、積層体10を繊維強化樹脂基板5に重ねる積層工程を有する成形品1の製造方法は、基材11を剥離する剥離工程をさらに有してもよい。
【0061】
繊維強化樹脂基板5が、第1ベルト51に沿って積層装置50に配置される。
図3に示されているように、繊維強化樹脂基板5を構成する複数の要素が、それぞれ別個に配置されてもよい。繊維強化樹脂基板5は、第1ベルト51によって搬送される。
【0062】
積層体10が、複数のフィルム用ローラー58の間に張架される。積層体10は、繊維強化樹脂基板5に重なる際に、基材11より第1部材20が繊維強化樹脂基板5に近くなるように配置される。積層体10が接合層27を保護するためのカバーフィルムを有する場合、カバーフィルムは積層体10から剥離される。積層体10は、第2ベルト52によって搬送される。
【0063】
<積層工程>
第1ベルト51と第2ベルト52とで挟持することで、積層体10を基材11より第1部材20が繊維強化樹脂基板5に近くなるように、繊維強化樹脂基板5に重ねる。第1ベルト51と第2ベルト52とに挟持されることで、積層体10及び繊維強化樹脂基板5は加圧される。繊維強化樹脂基板5が加圧されることで、繊維強化樹脂基板5を構成する複数の要素が一体となる。積層体10及び繊維強化樹脂基板5に加えられる圧力は、例えば、1MPa以上6MPa以下である。積層体10及び繊維強化樹脂基板5は、加圧されながら、ヒーター53によって加熱される。積層体10及び繊維強化樹脂基板5が加熱及び加圧されることで、積層体10及び繊維強化樹脂基板5が一体となる。積層体10及び繊維強化樹脂基板5を加熱する温度は、例えば、130℃以上200℃以下になる。積層体10及び繊維強化樹脂基板5を加熱する時間は、例えば、10秒以上180秒以下である。積層体10及び繊維強化樹脂基板5は、加熱された後、クーラー54によって冷却されることが好ましい。積層体10及び繊維強化樹脂基板5を冷却する温度は、例えば、常温以上60℃以下である。積層体10及び繊維強化樹脂基板5を冷却する時間は、例えば、5秒以上150秒以下である。積層体10及び繊維強化樹脂基板5を冷却することで、加熱された積層体10及び繊維強化樹脂基板5が膨張して強度が低下することが抑制される。
【0064】
積層体10を繊維強化樹脂基板5に重ねた後において、形状維持層25のインデンテーション硬度は、20MPa以上、好ましくは80MPa以上、より好ましくは140MPa以上となっている。形状維持層25のインデンテーション硬度は、積層体10を繊維強化樹脂基板5に重ねる前から20MPa以上、好ましくは80MPa以上、より好ましくは140MPa以上であってもよいし、積層体10を繊維強化樹脂基板5に重ねた後に、20MPa以上、好ましくは80MPa以上、より好ましくは140MPa以上となってもよい。
【0065】
<剥離工程>
基材11を積層体10から剥離してもよい。剥離された基材11は、フィルム用ローラー58に巻き取られる。
【0066】
以上の工程により、第1部材20が繊維強化樹脂基板5に重なった成形品1が製造される。積層装置50を用いることで、成形品1を連続して製造できる。
【0067】
[第2の例の製造方法]
積層体10を用いた成形品1の製造方法の第2の例について、
図4を参照しながら説明する。
図4には、積層体10を繊維強化樹脂基板5に重ねる積層装置50の他の例が示されている。積層装置50は、第1ベルト51と、第2ベルト52と、ヒーター53と、クーラー54と、第2ヒーター55と、ヒートロール56と、剥離ロール57と、フィルム用ローラー58と、を有している。第1ベルト51と第2ベルト52とは、互いに向かい合っている。第1ベルト51と第2ベルト52との間の距離は、製造される成形品1の厚みとほぼ同一である。
【0068】
成形品の第2の製造方法も、積層体10を繊維強化樹脂基板5に重ねる積層工程を有する。成形品の第2の製造方法も、基材11を剥離する剥離工程をさらに有してもよい。
【0069】
繊維強化樹脂基板5が、第1ベルト51に沿って積層装置50に配置される。
図4に示されているように、繊維強化樹脂基板5を構成する複数の要素が、それぞれ別個に配置されてもよい。繊維強化樹脂基板5は、第1ベルト51によって搬送される。
【0070】
積層体10が、ヒートロール56及び剥離ロール57を介しながら、複数のフィルム用ローラー58の間に張架される。積層体10は、第1ベルト51及び第2ベルト52から離れた位置において、繊維強化樹脂基板5に重なる。積層体10は、繊維強化樹脂基板5に重なる際に、基材11より第1部材20が繊維強化樹脂基板5に近くなるように配置される。積層体10が接合層27を保護するためのカバーフィルムを有する場合、カバーフィルムは積層体10から剥離される。積層体10は、フィルム用ローラー58が回転することで搬送される。
【0071】
第1ベルト51と第2ベルト52とに挟持されることで、繊維強化樹脂基板5は加圧される。繊維強化樹脂基板5が加圧されることで、繊維強化樹脂基板5を構成する複数の要素が一体となる。繊維強化樹脂基板5に加えられる圧力は、例えば、1MPa以上6MPa以下である。繊維強化樹脂基板5は、加圧されながら、ヒーター53によって加熱される。繊維強化樹脂基板5を加熱する温度は、例えば、130℃以上200℃以下になる。繊維強化樹脂基板5を加熱する時間は、例えば、10秒以上180秒以下である。繊維強化樹脂基板5は、加熱された後、クーラー54によって冷却されることが好ましい。繊維強化樹脂基板5を冷却する温度は、例えば、常温以上60℃以下である。繊維強化樹脂基板5を冷却する時間は、例えば、5秒以上150秒以下である。繊維強化樹脂基板5を冷却することで、加熱された繊維強化樹脂基板5が膨張して強度が低下することが抑制される。
【0072】
<積層工程>
繊維強化樹脂基板5は、第2ヒーター55によって再度加熱される。積層体10は、ヒートロール56で加熱されながら、基材11より第1部材20が繊維強化樹脂基板5に近くなるように、繊維強化樹脂基板5に重ねられる。ヒートロール56と剥離ロール57との間において、積層体10が繊維強化樹脂基板5に向かって加圧される。積層体10及び繊維強化樹脂基板5が加熱及び加圧されることで、積層体10及び繊維強化樹脂基板5が一体となる。
【0073】
積層体10を繊維強化樹脂基板5に重ねた後において、形状維持層25のインデンテーション硬度は、20MPa以上、好ましくは80MPa以上、より好ましくは140MPa以上となっている。形状維持層25のインデンテーション硬度は、積層体10を繊維強化樹脂基板5に重ねる前から20MPa以上、好ましくは80MPa以上、より好ましくは140MPa以上であってもよいし、積層体10を繊維強化樹脂基板5に重ねた後に、20MPa以上、好ましくは80MPa以上、より好ましくは140MPa以上となってもよい。
【0074】
<剥離工程>
剥離ロール57から積層体10が離れる際に、基材11が積層体10から剥離されてもよい。剥離された基材11は、フィルム用ローラー58に巻き取られる。
【0075】
以上の工程により、第1部材20が繊維強化樹脂基板5に重なった成形品1が製造される。積層装置50を用いることで、成形品1を連続して製造できる。
【0076】
上述した積層装置50を用いて第1部材20を繊維強化樹脂基板5に重ねる成形品1の製造方法は一例に過ぎない。成形品1は、例えばドライラミネートによって第1部材20を繊維強化樹脂基板5に貼り合わせることで製造されてもよい。
【0077】
従来の成形品は、長時間に亘って高温に晒されると、表面が意図しない凹凸形状に変形することがある。成形品の温度が上昇した結果、成形品の構成要素が軟化して繊維強化樹脂基板の表面に形成された凹凸形状によって変形すると考えられた。表面が凹凸形状に変形した成形品は、外観が劣化する。
【0078】
本実施の形態の成形品1は、繊維強化樹脂基板5と、第1部材20と、を有する。第1部材20は、形状維持層25を有する。形状維持層25のインデンテーション硬度は、20MPa以上である。インデンテーション硬度が高い形状維持層25は、長時間に亘って高温に晒されても、変形しにくい。繊維強化樹脂基板5の表面に形成された凹凸形状によって成形品1の表面をなす第1部材20が変形することが抑制される。成形品1が長時間に亘って高温に晒されても、形状維持層25により、成形品1の表面の変形を抑制して、所望の形状を維持できる。例えば、成形品1の表面が平坦に維持される。
【0079】
本実施の形態の積層体10は、基材11と、第1部材20と、を有する。第1部材20は、形状維持層25を有する。形状維持層25のインデンテーション硬度は、20MPa以上である。あるいは、形状維持層25は、エステル系樹脂及びイソシアネートを含む。エステル系樹脂及びイソシアネートを含む形状維持層25は、繊維強化樹脂基板5に重ねられた後において、インデンテーション硬度が20MPa以上となる。積層体10を用いて製造される成形品1において、形状維持層25のインデンテーション硬度は、20MPa以上である。成形品1が長時間に亘って高温に晒されても、形状維持層25により、成形品1の表面の変形を抑制して、所望の形状を維持できる。
【0080】
形状維持層25のインデンテーション硬度は、300MPa以下である。形状維持層25のインデンテーション硬度が高すぎないことで、積層体10から第1部材20を繊維強化樹脂基板5に重ねられる際等の形状維持層25に圧力が加わる際に、形状維持層25の破損が抑制される。
【0081】
形状維持層25は、熱硬化性樹脂を含む。硬化した樹脂により、形状維持層25のインデンテーション硬度を高めることができる。形状維持層25により、成形品1の表面の変形を抑制して、所望の形状を維持できる。
【0082】
形状維持層25は、イソシアネートを含む。イソシアネートを含むことで、形状維持層25のインデンテーション硬度を高めることができる。形状維持層25により、成形品1の表面の変形を抑制して、所望の形状を維持できる。
【0083】
積層体10において、形状維持層25の厚みは、3μm以上である。形状維持層25が十分な厚みとなっているため、形状維持層25のインデンテーション硬度を十分に高くできる。形状維持層25の厚みは、250μm以下である。形状維持層25が厚すぎないことで、積層体10を用いて製造される成形品1を軽量化できる。
【0084】
成形品1において、形状維持層25の厚みは、0.1μm以上である。形状維持層25が十分な厚みとなっているため、成形品1において、形状維持層25のインデンテーション硬度が十分に高くなっている。形状維持層25の厚みは、250μm以下である。形状維持層25が厚すぎないことで、成形品1が軽量化されている。
【0085】
第1部材20は、ハードコート層21及び/又は機能層23をさらに有する。第1部材20は、ハードコート層21によって繊維強化樹脂基板5の表面を保護したり、機能層23によって発揮される種々の機能を成形品1に付与したりできる。ハードコート層21は、基材11と形状維持層25との間に配置される。形状維持層25によって、成形品1の表面となり得るハードコート層21の変形が抑制される。成形品1の表面の変形を抑制して、所望の形状を維持できる。機能層23は、形状維持層25に重ねられている。機能層23が基材11と形状維持層25との間に配置される場合、形状維持層25によって、機能層23の変形が抑制される。成形品1の表面の変形を抑制して、所望の形状を維持できる。
【0086】
本実施の形態の積層体10は、基材11と、基材11に重ねられた第1部材20と、を有する。第1部材20は、形状維持層25を有する。形状維持層25のインデンテーション硬度は、20MPa以上である。あるいは、形状維持層25は、エステル系樹脂及びイソシアネートを含む。積層体10を用いて製造される成形品1が長時間に亘って高温に晒されても、形状維持層25により、成形品1の表面の変形を抑制できる。
【0087】
本実施の形態に様々な変更を加えることが可能である。
【0088】
図1に示されている例では、成形品1は、1つの第1部材20を有しており、繊維強化樹脂基板5の一方の面に第1部材20が重ねられている。基材11が剥離されている場合、第1部材20が、成形品1の一方の表面をなしている。図示された例に限らず、成形品1は、2つの第1部材20を有していてもよい。繊維強化樹脂基板5の両面に、第1部材20が重ねられていてもよい。1つの第1部材20が成形品1の一方の表面をなし、他の1つの第1部材20が成形品1の他方の表面をなす。2つの積層体10を用いることで、繊維強化樹脂基板5の両面に第1部材20を重ねることができる。
【0089】
成形品1は、例えば、車両、船舶や航空機といった移動体の外装材や内装材、建築物の外装材や内装材、家具や家電製品の部材に用いられる。
【0090】
本開示の態様は、上述した実施の形態及びその変形例に限定されるものではなく、当業者が想到しうる種々の変形も含むものであり、本開示の効果も上述した実施の形態及びその変形例に係る内容に限定されない。特許請求の範囲に規定された内容およびその均等物から導き出される各開示の概念的な思想と趣旨を逸脱しない範囲で、種々の追加、変更および部分的削除が可能である。
【実施例0091】
本開示を実施例によりさらに詳細に説明する。本開示は、以下の実施例に限定されない。
【0092】
実施例及び比較例として、基材と第1部材とを有する積層体を用いて、繊維強化樹脂基板と第1部材とを有する複数の成形品を作製した。第1部材は、ハードコート層と、形状維持層とを有する。各実施例及び各比較例において、基材は、厚さ50μmのポリエチレンテレフタレートである。繊維強化樹脂基板は、格子状に編まれた炭素繊維にエポキシ樹脂を含浸させてなる厚さ200μmのプリプレグである。ハードコート層は、ウレタンアクリレートに電子線を照射することで作製される。各実施例及び各比較例において、ハードコート層の厚み、接合層の有無及び形状維持層の構成が異なる。
【0093】
(実施例1)
実施例1に係る積層体において、ハードコート層の厚みは、3μmである。第1部材は、厚さ1μmのアクリル系接着剤からなる接合層を有する。形状維持層は、樹脂組成物としてアクリル主鎖水酸基含有樹脂を含み、硬化剤としてヘキサメチレンジイソシアヌレート(HDIヌレート)(旭化成製TPA-100)を含む。形状維持層の厚みは、10μmである。
図3に示された積層装置を用いて、実施例1に係る積層体を繊維強化樹脂基板に重ねて、実施例1に係る成形品を作製した。実施例1に係る成形品の表面をなすハードコート層は、目視では平滑であった。
【0094】
(実施例2)
実施例2に係る積層体において、ハードコート層の厚みは、3μmである。第1部材は、厚さ1μmのアクリル系接着剤からなる接合層を有する。形状維持層は、樹脂組成物としてエポキシ樹脂を含み、硬化剤としてヘキサメチレンジイソシアヌレート(HDIヌレート)(旭化成製TPA-100)を含む。形状維持層の厚みは、10μmである。
図3に示された積層装置を用いて、実施例2に係る積層体を繊維強化樹脂基板に重ねて、実施例2に係る成形品を作製した。実施例2に係る成形品の表面をなすハードコート層は、目視では平滑であった。
【0095】
(実施例3)
実施例3に係る積層体において、ハードコート層の厚みは、3μmである。第1部材は、厚さ1μmのアクリル系接着剤からなる接合層を有する。形状維持層は、樹脂組成物としてウレタン主鎖水酸基含有樹脂を含み、硬化剤としてヘキサメチレンジイソシアヌレート(HDIヌレート)(旭化成製TPA-100)を含む。形状維持層の厚みは、10μmである。
図3に示された積層装置を用いて、実施例3に係る積層体を繊維強化樹脂基板に重ねて、実施例3に係る成形品を作製した。実施例3に係る成形品の表面をなすハードコート層は、目視では平滑であった。
【0096】
(実施例4)
実施例4に係る積層体において、ハードコート層の厚みは、3μmである。第1部材は、接合層を有していない。形状維持層は、樹脂組成物としてウレタン主鎖水酸基含有樹脂を含み、硬化剤としてブロックイソシアネート(旭化成製TPA-B80E)を含む。形状維持層の厚みは、10μmである。
図3に示された積層装置を用いて、実施例4に係る積層体を繊維強化樹脂基板に重ねて、実施例4に係る成形品を作製した。実施例4に係る成形品の表面をなすハードコート層は、目視では平滑であった。
【0097】
(実施例5)
実施例5に係る積層体において、ハードコート層の厚みは、3μmである。第1部材は、厚さ1μmのアクリル系接着剤からなる接合層を有する。形状維持層は、樹脂組成物としてウレタン主鎖水酸基含有樹脂を含み、硬化剤としてブロックイソシアネート(旭化成製TPA-B80E)を含む。形状維持層の厚みは、10μmである。
図3に示された積層装置を用いて、実施例5に係る積層体を繊維強化樹脂基板に重ねて、実施例5に係る成形品を作製した。実施例5に係る成形品の表面をなすハードコート層は、目視では平滑であった。
【0098】
(実施例6)
実施例6に係る積層体において、ハードコート層の厚みは、10μmである。第1部材は、厚さ1μmのアクリル系接着剤からなる接合層を有する。形状維持層は、樹脂組成物としてウレタン主鎖水酸基含有樹脂を含み、硬化剤としてブロックイソシアネート(旭化成製TPA-B80E)を含む。形状維持層の厚みは、10μmである。
図3に示された積層装置を用いて、実施例6に係る積層体を繊維強化樹脂基板に重ねて、実施例6に係る成形品を作製した。実施例6に係る成形品の表面をなすハードコート層は、目視では平滑であった。
【0099】
(実施例7)
実施例7に係る積層体において、ハードコート層の厚みは、20μmである。第1部材は、厚さ1μmのアクリル系接着剤からなる接合層を有する。形状維持層は、樹脂組成物としてウレタン主鎖水酸基含有樹脂を含み、硬化剤としてブロックイソシアネート(旭化成製TPA-B80E)を含む。形状維持層の厚みは、10μmである。
図3に示された積層装置を用いて、実施例7に係る積層体を繊維強化樹脂基板に重ねて、実施例7に係る成形品を作製した。実施例7に係る成形品の表面をなすハードコート層は、目視では平滑であった。
【0100】
(実施例8)
実施例8に係る積層体において、ハードコート層の厚みは、10μmである。第1部材は、厚さ1μmのアクリル系接着剤からなる接合層を有する。形状維持層は、樹脂組成物としてエステル樹脂系熱可塑性エラストマー(東レ・デュポン社製ハイトレルHTD-741H)を含み、硬化剤としてブロックイソシアネート(旭化成製TPA-B80E)を含む。形状維持層の厚みは、10μmである。
図3に示された積層装置を用いて、実施例8に係る積層体を繊維強化樹脂基板に重ねて、実施例8に係る成形品を作製した。実施例8に係る成形品の表面をなすハードコート層は、目視では平滑であった。
【0101】
(実施例9)
実施例9に係る積層体において、ハードコート層の厚みは、3μmである。第1部材は、厚さ1μmのアクリル系接着剤からなる接合層を有する。形状維持層は、樹脂組成物としてウレタン主鎖水酸基含有樹脂を含み、硬化剤としてヘキサメチレンジイソシアヌレート(HDIヌレート)(旭化成製TPA-100)を含む。形状維持層の厚みは、3μmである。
図3に示された積層装置を用いて、実施例9に係る積層体を繊維強化樹脂基板に重ねて、実施例9に係る成形品を作製した。実施例9に係る成形品の表面をなすハードコート層は、目視では平滑であった。
【0102】
(実施例10)
実施例10に係る積層体において、ハードコート層の厚みは、3μmである。第1部材は、厚さ1μmのアクリル系接着剤からなる接合層を有する。形状維持層は、樹脂組成物としてウレタン主鎖水酸基含有樹脂を含み、硬化剤としてヘキサメチレンジイソシアヌレート(HDIヌレート)(旭化成製TPA-100)を含む。形状維持層の厚みは、6μmである。
図3に示された積層装置を用いて、実施例10に係る積層体を繊維強化樹脂基板に重ねて、実施例10に係る成形品を作製した。実施例10に係る成形品の表面をなすハードコート層は、目視では平滑であった。
【0103】
(実施例11)
実施例11に係る積層体において、ハードコート層の厚みは、3μmである。第1部材は、接合層を有していない。形状維持層は、樹脂組成物としてウレタン主鎖水酸基含有樹脂を含み、硬化剤としてヘキサメチレンジイソシアヌレート(HDIヌレート)(旭化成製TPA-100)を含む。形状維持層の厚みは、20μmである。
図3に示された積層装置を用いて、実施例11に係る積層体を繊維強化樹脂基板に重ねて、実施例11に係る成形品を作製した。実施例11に係る成形品の表面をなすハードコート層は、目視では平滑であった。
【0104】
(実施例12)
実施例12に係る積層体において、ハードコート層の厚みは、3μmである。第1部材は、接合層を有していない。形状維持層は、樹脂組成物としてウレタン主鎖水酸基含有樹脂を含み、硬化剤としてヘキサメチレンジイソシアヌレート(HDIヌレート)(旭化成製TPA-100)を含む。形状維持層の厚みは、50μmである。
図3に示された積層装置を用いて、実施例12に係る積層体を繊維強化樹脂基板に重ねて、実施例12に係る成形品を作製した。実施例12に係る成形品の表面をなすハードコート層は、目視では平滑であった。
【0105】
(実施例13)
実施例13に係る積層体において、ハードコート層の厚みは、3μmである。第1部材は、接合層を有していない。形状維持層は、樹脂組成物としてウレタン主鎖水酸基含有樹脂を含み、硬化剤としてヘキサメチレンジイソシアヌレート(HDIヌレート)(旭化成製TPA-100)を含む。形状維持層の厚みは、250μmである。
図3に示された積層装置を用いて、実施例13に係る積層体を繊維強化樹脂基板に重ねて、実施例13に係る成形品を作製した。実施例13に係る成形品の表面をなすハードコート層は、目視では平滑であった。
【0106】
(実施例14)
実施例14に係る積層体において、ハードコート層の厚みは、3μmである。第1部材は、接合層を有していない。形状維持層は、樹脂組成物としてウレタン主鎖水酸基含有樹脂を含み、硬化剤としてヘキサメチレンジイソシアヌレート(HDIヌレート)(旭化成製TPA-100)を含む。形状維持層の厚みは、1μmである。
図3に示された積層装置を用いて、実施例14に係る積層体を繊維強化樹脂基板に重ねて、実施例14に係る成形品を作製した。実施例14に係る成形品の表面をなすハードコート層は、目視では平滑であった。
【0107】
(比較例1)
比較例1に係る積層体において、ハードコート層の厚みは、10μmである。第1部材は、厚さ1μmのアクリル系接着剤からなる接合層を有する。形状維持層は、樹脂組成物としてウレタン樹脂を含むが、硬化剤を含まない。形状維持層の厚みは、10μmである。
図3に示された積層装置を用いて、比較例1に係る積層体を繊維強化樹脂基板に重ねて、比較例1に係る成形品を作製した。比較例1に係る成形品の表面をなすハードコート層は、目視では平滑であった。
【0108】
(比較例2)
比較例2に係る積層体において、ハードコート層の厚みは、10μmである。第1部材は、厚さ1μmのアクリル系接着剤からなる接合層を有する。形状維持層は、樹脂組成物としてエステル樹脂系熱可塑性エラストマー(東レ・デュポン社製ハイトレルHTD-741H)を含むが、硬化剤を含まない。形状維持層の厚みは、10μmである。
図3に示された積層装置を用いて、比較例2に係る積層体を繊維強化樹脂基板に重ねて、比較例2に係る成形品を作製した。比較例2に係る成形品の表面をなすハードコート層は、目視では平滑であった。
【0109】
(比較例3)
比較例3に係る積層体において、ハードコート層の厚みは、10μmである。第1部材は、厚さ1μmのアクリル系接着剤からなる接合層を有する。形状維持層は、樹脂組成物としてオレフィン樹脂系熱可塑性エラストマー(JSR社製TPO-EXCELINK1200B)を含むが、硬化剤を含まない。形状維持層の厚みは、10μmである。
図3に示された積層装置を用いて、比較例3に係る積層体を繊維強化樹脂基板に重ねて、比較例3に係る成形品を作製した。比較例3に係る成形品の表面をなすハードコート層は、目視では平滑であった。
【0110】
(評価)
各実施例及び各比較例に係る積層体及び成形品における形状維持層のインデンテーション硬度を測定した。各実施例及び各比較例に係る成形品を、80℃の温度に720時間晒した後、成形品の表面をなすハードコート層を目視で平滑性を確認した。ハードコート層に凹凸形状が確認できなかったものはA、ハードコート層に成形品の外観を損なうほどの凹凸形状が確認できなかったものはB、ハードコート層に部分的且つ若干の凹凸形状が確認できたものはC、ハードコート層の全体に広がったに凹凸形状がはっきりと確認できたものはDの評価とした。
【0111】
各実施例及び各比較例の構成の違い及び評価結果を、表1に示す。
【0112】
【0113】
表1に示された結果の実施例と比較例との比較から理解されるように、成形品における形状維持層のインデンテーション硬度が20MPa以上であることで、成形品が長時間に亘って高温に晒されても、成形品の表面をなすハードコート層の変形が抑制される。実施例1乃至7及び実施例9乃至12から理解されるように、積層体における形状維持層のインデンテーション硬度が20MPa以上であれば、成形品における形状維持層のインデンテーション硬度も20MPa以上となる。実施例8と比較例2との比較から理解されるように、形状維持層がエステル樹脂及びブロックイソシアネートを含んでいると、積層体における形状維持層のインデンテーション硬度が20MPa未満であっても、成形品における形状維持層のインデンテーション硬度を20MPa以上となる。