(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023170187
(43)【公開日】2023-12-01
(54)【発明の名称】テープ巻き装置
(51)【国際特許分類】
B65B 13/18 20060101AFI20231124BHJP
B65H 19/12 20060101ALI20231124BHJP
B65H 35/07 20060101ALI20231124BHJP
B65B 27/00 20060101ALI20231124BHJP
【FI】
B65B13/18 A
B65H19/12 B
B65H35/07 Z
B65B27/00 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022081742
(22)【出願日】2022-05-18
(71)【出願人】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】高田 和彦
(72)【発明者】
【氏名】秋山 和義
(72)【発明者】
【氏名】山崎 克哉
(72)【発明者】
【氏名】高野 陽一
【テーマコード(参考)】
3E052
3F062
3F064
【Fターム(参考)】
3E052AA41
3E052BA10
3E052CB04
3E052CB05
3E052CB07
3E052FA12
3E052FA19
3E052HA07
3E052JA01
3E052KA20
3E052LA03
3E052LA09
3F062AB02
3F062BA08
3F062BG04
3F062FA16
3F064EB01
(57)【要約】
【課題】狭い作業スペースにおいても、結束対象物の外周に粘着テープを巻き付けることのできるテープ巻き装置を提供する
【解決手段】テープリール3から引き出した粘着テープの一部を切り取って巻回してテープ巻き済みボビンを用意するボビン巻きユニット30と、回転ドラム12を結束対象物の周りに回転させることで結束対象物の外周にボビンに巻回された粘着テープを巻き付けるテープ巻きツール10と、ツールホルダにセットされたテープ巻きツールとボビン巻きユニットとの間で、空のボビンとテープ巻き済みボビンとの入れ替えをするボビン交換ユニット20と、を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
テープリールから引き出された粘着テープの一部が切り取られて巻回されるボビンと、
前記粘着テープが巻回されたボビンを着脱自在に保持する回転ドラムを、該回転ドラムの内部空間に配置された結束対象物の周りに回転させることで、前記結束対象物の外周に、前記ボビンに巻回された粘着テープを巻き付けるテープ巻きツールと、
前記結束対象物に対するテープ巻き作業領域から離れた位置に配置され、前記テープ巻き作業前の前記テープ巻きツールが着脱可能にセットされるツールホルダと、
空の前記ボビンに対して、テープリールから引き出した粘着テープの一部を切り取って巻回してテープ巻き済みボビンを用意するボビン巻きユニットと、
前記ツールホルダにセットされたテープ巻きツールと前記ボビン巻きユニットとの間で、空のボビンとテープ巻き済みボビンとの入れ替えをするボビン交換ユニットと、
を有する、
テープ巻き装置。
【請求項2】
前記ボビン巻きユニットは、粘着テープを切り取る際に、粘着テープの切断端近傍にへたり防止のための曲げ癖を付ける癖付け機構を備えている、
請求項1に記載のテープ巻き装置。
【請求項3】
前記ボビン巻きユニットは、前記テープ巻きツールが前記結束対象物の外周に、一方の前記ボビンに巻回された粘着テープを巻き付けている間に、保持している他方の前記ボビンに対して粘着テープを巻回してテープ巻き済みボビンを用意する、
請求項1に記載のテープ巻き装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、狭い作業スペースにおいても、結束対象物の外周に粘着テープ(片面粘着テープ)を巻き付けることのできるテープ巻き装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等に搭載されるワイヤハーネスを製造する工程の中に、複数の電線を粘着テープで巻いて束ねる工程がある。ここでは、電線の束にコルゲートチューブを被せて一緒にテープ巻きすることや、クリップ等の外装部品をワイヤハーネスに一緒にテープ巻き固定することもあるので、テープ巻きの対象を「結束対象物」という。
【0003】
この種のテープ巻き工程を行う場合、従来では、長尺の粘着テープを巻回したテープリール(テープロールとも言う)ごと結束対象物の周りで回転させることにより、テープリールから粘着テープを剥がしながら結束対象物の外周に巻き付けることが行われていた(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、テープリールごと回転させる場合、回転体が大きくなってしまうため、狭い作業スペースでテープ巻きを行うことが難しかった。例えば、分岐部等の狭い部分でのテープ巻き作業は、ワイヤハーネスを組立治具板から取り外さなければできず、面倒を強いられていた。
【0006】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、狭い作業スペースにおいても、結束対象物の外周に粘着テープを巻き付けることのできるテープ巻き装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前述した目的を達成するために、本発明に係るテープ巻き装置は、下記を特徴としている。
【0008】
テープリールから引き出された粘着テープの一部が切り取られて巻回されるボビンと、
前記粘着テープが巻回されたボビンを着脱自在に保持する回転ドラムを、該回転ドラムの内部空間に配置された結束対象物の周りに回転させることで、前記結束対象物の外周に、前記ボビンに巻回された粘着テープを巻き付けるテープ巻きツールと、
前記結束対象物に対するテープ巻き作業領域から離れた位置に配置され、前記テープ巻き作業前の前記テープ巻きツールが着脱可能にセットされるツールホルダと、
空の前記ボビンに対して、テープリールから引き出した粘着テープの一部を切り取って巻回してテープ巻き済みボビンを用意するボビン巻きユニットと、
前記ツールホルダにセットされたテープ巻きツールと前記ボビン巻きユニットとの間で、空のボビンとテープ巻き済みボビンとの入れ替えをするボビン交換ユニットと、
を有するテープ巻き装置。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、狭い作業スペースにおいても、結束対象物の外周に粘着テープを巻き付けることができる。
【0010】
以上、本発明について簡潔に説明した。更に、以下に説明される発明を実施するための形態(以下、「実施形態」という。)を添付の図面を参照して通読することにより、本発明の詳細は更に明確化されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、実施形態に係るテープ巻き装置の全体構成を示す斜視図である。
【
図2】
図2は、実施形態に係るテープ巻き装置におけるテープ巻きツール(狭義のテープ巻き装置に相当)のテープ巻きする前の状態を示す斜視図である。
【
図3】
図3は、実施形態に係るテープ巻きツールによりワイヤハーネスに対してテープ巻きを行っている時の状態を示す斜視図である。
【
図4】
図4は、実施形態に係るテープ巻きツールの内部構成の概略を示す正面図である。
【
図5】
図5は、ワイヤハーネスに対するテープ巻きが終了した時の状態を示す斜視図である。
【
図6】
図6は、テープ巻きが終了して空のボビンを取り出した時の状態を示す斜視図である。
【
図7】
図7は、ワイヤハーネスの分岐部でテープ巻きツールが治具フォークと干渉しない状態を示す斜視図である。
【
図8】
図8は、テープ巻き装置におけるボビン交換ユニットのチャック側から見た構成を示す斜視図である。
【
図9】
図9は、テープ巻き装置におけるツールホルダとボビン巻きユニットの構成を示す斜視図である。
【
図10】
図10は、ボビン交換ユニットのボビンチャックとボビン巻きユニットのボビン巻き軸との間でボビンの受け渡しを行う構造の一例を示す断面図である。
【
図11】
図11は、ボビン巻きユニットに装備された癖付け駒およびカッターと、テープリールから繰り出される粘着テープとの関係を示す斜視図である。
【
図12】
図12は、
図11における癖付け駒を前進させて、粘着テープの切断端付近に曲げ癖を付けている様子を示す斜視図である。
【
図13】
図13は、
図12に示す作業後にカッターを前進させて、粘着テープを切断している様子を示す斜視図である。
【
図16】
図16は、ホルダに巻回した粘着テープの引出端(切断端付近)に丸まりやめくれ等のへたり防止のための曲げ癖が付けられている状態を示す斜視図である。
【
図17】
図17は、テープ巻き装置の全体動作の概略を示すフローチャートである。
【
図18】
図18は、テープ巻き装置におけるテープ巻きツールによるテープ巻き動作を示すフローチャートである。
【
図19】
図19は、テープ巻き装置におけるボビンの入れ替え動作を示すフローチャートである。
【
図20】
図20は、テープ巻き装置におけるボビン巻きユニットによるボビン巻き動作を示すフローチャートである。
【
図21】
図21は、実施形態に係るテープ巻き装置による作業例を説明するための図で、第1マニピュレータの保持したテープ巻きツールと第2マニピュレータの保持したクリップ支持ユニットとを用いて、ワイヤハーネスにクリップをテープ巻き固定している様子を示す斜視図である。
【
図23】
図23は、クリップ支持ユニットを有する第2マニピュレータのアーム先端の構成を示す図で、クリップを支持する前の状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明に関する具体的な実施形態について、各図を参照しながら以下に説明する。
【0013】
図1は、実施形態に係るテープ巻き装置100の全体構成を示す斜視図、
図2~
図7は、テープ巻き装置100におけるテープ巻きツールの構成と使用状態を示す斜視図である。
【0014】
また、
図8は、テープ巻き装置100におけるボビン交換ユニットのチャック側から見た構成を示す斜視図、
図9は、テープ巻き装置100におけるツールホルダとボビン巻きユニットの構成を示す斜視図である。
【0015】
このテープ巻き装置100は、長尺の粘着テープがロール状に巻回されたテープリール(例えば、粘着テープのメーカーより提供される提供品)そのものを、結束対象物の周りに回転させるものではなく、テープリールよりも格段に小径のテープ巻きボビンを用意し、そのテープ巻きボビンを結束対象物の周りに回転させることにより、結束対象物に粘着テープを巻き付けるものである。
【0016】
また、本実施形態のテープ巻き装置100は、2個のボビンを入れ替えて使用するようになっており、各ボビンには、1回(一箇所)の巻き付け作業に必要なだけの長さ(所定長)の粘着テープを巻回するようにしている。
【0017】
図1に示すように、テープ巻き装置100は、テープ巻きツール10と、ボビン交換ユニット20と、ボビン巻きユニット30と、テープ巻きツール10を着脱自在にセットするツールホルダ41と、を有している。ツールホルダ41と、ボビン交換ユニット20と、ボビン巻きユニット30は、共通ベース40に固定的に設けられている。それに対して、テープ巻きツール10は、ツールホルダ41から取り外して、独立して取り扱えるようになっている。
【0018】
図2~
図7に示すように、テープ巻きツール10は、狭義の「テープ巻き装置」に相当するものであり、結束対象物(本実施形態ではワイヤハーネス)WHに対して粘着テープ2を巻き付けるための装置である。
【0019】
ここで使用する粘着テープ2は、片面にのみ粘着材が設けられた一般的な片面粘着テープであり、粘着面を内側、非粘着面を外側にして、ロール状に巻回されて、テープリール3の形態(
図1参照)でテープメーカー等から提供される。この粘着テープ2は、ボビン1や結束対象物WHに巻き付ける際にも、粘着面を内面側に向けた状態で貼り付けながら巻いていく。片面粘着テープの粘着面と反対側の面は非粘着面とされており、必要に応じて剥離性が付与されている。
【0020】
2個のボビン1は、互いに同形状であり、内部が空洞となった円筒体により構成されている。本実施形態では、ボビン1の外周に、テープリール3から引き出した粘着テープ2の一部、即ち、1回(一箇所)の巻き付け作業に必要なだけの長さ(所定長)に切り取られた粘着テープ2が巻回されるようになっている。
【0021】
ボビン巻きユニット30は、空のボビン1に対して、テープリール3から引き出した粘着テープ2の一部(1回の巻き付け作業に必要なだけの所定長)を切り取って巻回してテープ巻き済みのボビン1を用意するものである。以下、粘着テープ2を巻かれたテープ巻き済みのボビン1を実ボビン1A、粘着テープ2の巻かれていない空のボビン1を空ボビン1Bとも言う。
【0022】
ボビン交換ユニット20は、ツールホルダ41にセットされたテープ巻きツール10とボビン巻きユニット30との間で、実ボビン1Aと空ボビン1Bの入れ替えを行うようになっている。具体的には、ボビン交換ユニット20は、第1の動作として、空ボビン1Bをボビン巻きユニット30にセットし、実ボビン1Aをテープ巻きツール10にセットする。そして、テープ巻きツール10によって、結束対象物WHに対してテープ巻き作業を実施し、一方、その作業の間に、ボビン巻きユニット30によって、空のボビン1に対し、テープリール3から繰り出した所定長の粘着テープ2を巻き付ける。
【0023】
また、ボビン交換ユニット20は、第2の動作として、ボビン巻きユニット30からテープ巻き済みの実ボビン1Aを受け取り、同時に、テープ巻きツール10から結束対象物に対するテープ巻き終了済みの空ボビン1Bを受け取る。そして、その後、受け取った実ボビン1Aと空ボビン1Bの位置を入れ替えて、次の上述の第1動作を実施する。こうすることにより、ツールホルダ41にセットされたテープ巻きツール10とボビン巻きユニット30との間で、実ボビン1Aと空ボビン1Bの入れ替えを行うことができる。
【0024】
以上のボビン入れ替え操作を行うために、ボビン入れ替えを行う対象の2つの機構であるボビン巻きユニット30とツールホルダ41は、ボビン交換ユニット20に対して、一定の位置関係を保つように配置されている。なお、共通ベース40は、結束対象物WH(例えば、組立治具板にセットされたワイヤハーネス)に対するテープ巻き作業の邪魔にならない位置に配置されている。
【0025】
以下、各部の構造をより詳細に説明する。
<ツールホルダ41>
ツールホルダ41は、テープ巻き作業後およびテープ巻き作業前のテープ巻きツール10が着脱可能にセットされるものであり、
図9に示すように、上方から差し込みセットできるようにツール差し込み部42を有している。ツール差し込み部42には、テープ巻きツール10がセットされていることを検出するためのツールセンサ(ツール着座スイッチ)43が設けられている。
【0026】
<テープ巻きツール>
図2~
図7に示すように、テープ巻きツール10は、粘着テープ2が巻回されたボビン1を着脱自在に保持する回転ドラム12を有しており、回転ドラム12を、該回転ドラム12の内部空間に配置された結束対象物WH(
図3参照)の周りに回転させることで、結束対象物WHの外周に、ボビン1に巻回された粘着テープ2を巻き付けるものである。
【0027】
回転ドラム12は、結束対象物WHを内部空間へ導入する開口部12aと、ボビン1を着脱自在に保持してボビン1に巻回された粘着テープ2を内部空間へ繰り出すボビン保持部13と、を有している。
図4に示すように、内部空間と開口部12aは、回転ドラム12の外周から中心にかけて形成したU字状溝によって一体に構成されている。
【0028】
ボビン保持部13は、開口部12aと反対側に設けられている。このボビン保持部13は、ボビン1を、該ボビン保持部13に対して、回転ドラム12の回転軸線方向に移動することで、ボビン1の着脱を可能にする開閉自在な保持爪14を有している。保持爪14は、円筒状のボビン1の中空部が嵌まるものであり、例えば、開状態になることで、挿入されたボビン1を保持することができ、閉状態になることで、保持したボビン1を保持解除することができる構成になっている。
【0029】
このテープ巻きツール10は、回転ドラム12を回転自在に支持するフレーム11と、回転ドラム12を一定の回転方向(
図4においては右回り)に回転駆動するギヤ式の回転駆動機構17と、回転駆動機構17の駆動源であるサーボモータ16と、を備えている。
【0030】
回転ドラム12は、
図4に示すように、内部空間に導入される結束対象物WHの軸中心線を回転中心として回転するようにフレーム11に支持されている。そのため、回転ドラム12の内部空間は、回転ドラム12の回転中心を含む範囲で設けられている。なお、フレーム11は、回転ドラム12の内部空間に対し、真下を向いた状態の開口部12aを通して結束対象物WHを出し入れするのを妨げない形状に形成されている。
【0031】
また、回転ドラム12の内部空間の周壁の一部には、スポンジやウレタン等の弾性材料よりなるクッション部材15が取り付けられている。クッション部材15は、回転ドラム12の内部空間に導入された結束対象物WHの外周面に対して、ボビン保持部13から内部空間に導入される粘着テープ2の粘着面を、弾性的に押し付けるためのガイド部材としての役割を果たすように設けられている。
【0032】
このように構成されたテープ巻きツール10は、フレーム11の上端に結合されたアタッチメント501を介して、第1マニピュレータM1(
図21参照)のアームの先端に取り付けられており、これにより、組立治具板などに支持された結束対象物WHの各所(例えば、
図7に示すワイヤハーネスの分岐近傍箇所WH2)に対して自動で移動操作される。そして、回転ドラム12の内部空間に収容した結束対象物WHの外周に粘着テープ2の先端を貼り付けた状態で、回転ドラム12を回転させることにより、結束対象物WHの外周に粘着テープ2を貼り付けながら巻き付けることができるようになっている。
【0033】
<ボビン巻きユニット>
図9に示すように、ボビン巻きユニット30は、巻き取り用のサーボモータ31と、テープリール保持部33と、クランプシリンダ34と、押し付けシリンダ35と、引出シリンダ36と、癖付けシリンダ37と、カットシリンダ38と、を備えている。
【0034】
サーボモータ31は、ボビン1が装着されるボビン巻き軸32を、制御信号に応じた回転角度だけ回転駆動するものである。テープリール保持部33は、提供される大径のテープリール3を回転自在に支持する部分である。クランプシリンダ34は、テープリール3から引き出した粘着テープ2を、ボビン巻き軸32に保持されたボビン1の手前でクランプして、粘着テープ2に適当な張力を付与するためのものである。押し付けシリンダ35は、切断された粘着テープ2の先端部をボビン1の外周に押し付けて貼り付けるためのものである。引出シリンダ36は、テープリール3から粘着テープ2をボビン1に向けて引き出すためのものである。
【0035】
癖付けシリンダ37(癖付け機構)は、ボビン1に所定長だけ巻いた粘着テープ2を切り取る際に、粘着テープ2の切断端近傍に癖付け駒301(癖付け機構)を押し付けて、へたり防止のための曲げ癖を付けるためのものである。カットシリンダ38は、粘着テープ2を切断するカッター302を切断のために前進させたり退避位置に後退させたりするためのものである。
【0036】
図11は、ボビン巻きユニット30に装備された癖付け駒301およびカッター302と、テープリール3から繰り出される粘着テープ2との関係を示す斜視図であり、
図12~
図15は、癖付け駒301やカッター302の動作を順に説明するための斜視図である。また、
図16は、ボビン1に巻回した粘着テープ2の引出端(切断端付近)に丸まりやめくれ等のへたり防止のための曲げ癖が付けられている状態を示す斜視図である。
【0037】
簡単に動作について述べると、
図11に示すように、ボビン巻きユニット30において、空のボビン1に所定長の粘着テープ2を巻き終わったら、ボビン1とテープリール3の間の粘着テープ2に張力を与えた状態で、
図12に示すように、切断端(切断予定端)近傍の粘着テープ2に対して、癖付け駒301を押し付ける(矢印F1の動作)。癖付け駒301の押し付け面は、例えば凹凸状になっており、癖付け駒301を粘着テープ2に押し付けると、
図16に示すように、粘着テープ2に曲げ癖2cを付けられるようになっている。これにより、曲げ癖2cが無い状態では、丸まりなどのへたりが起こりやすかった粘着テープ2の切断端近傍2aの剛性(自立真直性)アップを図ることができる。
【0038】
癖付け駒301を粘着テープ2に押し付けたら、次に
図13に示すように、カッター302を前進させて粘着テープ2をカットする(矢印G1の動作)。カットしたら、
図14に示すように、カッター302を後退させて元の位置に戻し(矢印G2の動作)、次いで
図15に示すように、癖付け駒301を元の位置に戻して(矢印F2の動作)、ボビン巻き作業を完了する。こうすることで、前述したように、ボビン1に巻いた粘着テープ2の切断端近傍2a(引出端)に、
図16に示すような曲げ癖2cを付けることができる。
【0039】
<ボビン交換ユニット>
次にボビン交換ユニット20について説明する。
図1および
図8に示すように、ボビン交換ユニット20は、一対のチャック25を装備した旋回アーム24と、旋回アーム24を180°旋回(
図8中の矢印Dの動作)させるチャック旋回モータ27と、旋回アーム24を介して一対のチャック25を前進後退(
図8中の矢印C1、C2の動作)させるチャック前進後退機構26と、を有している。そのために、旋回アーム24は、前進後退スライダ23上に旋回可能に搭載され、前進後退スライダ23は、ベースフレーム21上のスライドレール22に前後方向スライド可能に搭載されている。
【0040】
2つのチャック25、25の位置は、該チャック25、25が保持した2つのボビン1が、それぞれ、ツールホルダ41にセットしたテープ巻きツール10のボビン保持部13の位置と、ボビン巻きユニット30のボビン巻き軸32の位置とに、同時に対応するように設定されている。また、2つのチャック25、25を両端に有する旋回アーム24の回転中心の位置(旋回モータ27の軸中心)は、2つのチャック25、25を結ぶ直線の中間点に設定されている。これにより、旋回アーム24を180°回転させることにより、両方のチャック25で保持した2個のボビン1を、ツールホルダ41にセットしたテープ巻きツール10のボビン保持部13と、ボビン巻きユニット30のボビン巻き軸32とに、入れ替えながら位置決めできるようになっている。
【0041】
ところで、両方のチャック25は、各チャック25から、テープ巻きツール10のボビン保持部13およびボビン巻きユニット30のボビン巻き軸32に対してボビン1を受け渡すことができる共に、これと逆方向にボビン1を受け渡しできるようになっている。
【0042】
そのための構造としては、
図10に示す例のように、チャック25に、円筒状のボビン1の空洞部に差し込める開閉自在な保持爪25aを設けておき、チャッキング時に、その保持爪25aに設けた突起25bが、ボビン1の内周の凹部1eに係合する構造を採用することができる。
【0043】
次に作用を説明する。
まず、テープ巻きツール10の作用について述べる。
テープ巻きツール10は、ツールホルダ41から取り外して独立にテープ巻き作業に供することができる。その作業の前に、予め
図2に示すように、実ボビン1Aを回転ドラム12のボビン保持部13に装着する(
図12中の矢印A1の操作)。この操作は、ツールホルダ41にセットしたテープ巻きツール10に対して、ボビン交換ユニット20が行う。この段階では、回転ドラム12は初期位置にある。即ち、回転ドラム12の回転位置は、開口部12aを真下に向けた姿勢となっており、ボビン1に巻いた粘着テープ2の引出端が、回転ドラム12の内部空間に垂れ下がった状態になる。
【0044】
この状態で、ツールホルダ41からテープ巻きツール10を取り外して、作業すべき箇所に第1マニピュレータM1(
図21参照)で移動する。そして、更に第1マニピュレータM1を操作して、
図3および
図4に示すように、結束対象物Wを開口部12aから回転ドラム12の内部空間に取り込む。この状態で、クッション部材15と結束対象物WHの間に粘着テープ2の引出端が垂れ下がっており、更に第1マニピュレータM1を操作して、クッション部材15により粘着テープ2の粘着面を、結束対象物WHの外周に押し付けて貼り付ける。つまり、
図4において右方向にテープ巻きツール10を微小移動することで、粘着テープ2の粘着面を結束対象物WHの外周に押し付けて貼り付ける。
【0045】
次に、この状態で、テープ巻きツール10は、回転ドラム12を
図4中の右回りに回転させることで、結束対象物WHの外周に粘着テープ2を終端まで巻き付ける。巻き付けが終了したら、回転ドラム12を初期回転位置に保った状態で、第1マニピュレータM1は、
図5の実線矢印B1のようにテープ巻きツール10を上昇させる。そうすると、点線矢印B2のように、テープ巻きにより結束された結束対象物WHが、テープ巻きツール10から離脱する。その後は、次の作業のために再びツールホルダ41にテープ巻きツール10を戻す。
【0046】
以上の動作を
図17および
図18のフローチャートで説明する。
図17は、テープ巻き作業の全体の動作を示している。まず、ステップS1で、テープ巻きツール10を巻き付け作業しようとする結束対象物WHの該当位置に移動する。
【0047】
次にステップS2で、結束対象物WHに対するテープ巻き作業を実施する。テープ巻き作業が終了したら、ステップS3で、テープ巻きツール10をツールホルダ41の位置まで移動して、ツールホルダ41にテープ巻きツール10をセットする。そして、ステップS4で、テープ巻きツール10の空ボビン1Bを実ボビン1Aに入れ替える。同時に、ボビン巻きユニット30の実ボビン1Aを空ボビン1Bに入れ替える。この動作の詳細は後述する。
【0048】
そして次の動作として、ステップS1~ステップS4を繰り返す。一方、テープ巻きツール10が結束対象物WHに対するテープ巻き作業を行っている間に、ステップS5で、テープリール3から空のボビン1に1回の巻き付け作業に必要な長さ分の粘着テープ2を巻き付けて、次に使用する実ボビン1Aを用意する。
【0049】
図18は、テープ巻きツール10の動作を示している。まず、ステップS101で、テープ巻きツール10に対して空ボビン1Bと実ボビン1Aの入れ替えが終了しているかどうかをチェックする。このステップS101は、
図17のフローチャートにおけるステップS4の動作の確認である。実ボビン1Aへの入れ替えが完了していたら、次のステップS102に進み、第1マニピュレータM1が、テープ巻きツール10をテープ巻きを実施しようとする位置の上空へ移動する。次にステップS103で、テープ巻きツール10を結束対象物の位置まで下降させて、回転ドラム12の内部空間に結束対象物を取り込む。その際、粘着テープ2の引出端が、結束対象物(以下、ハーネスという)の側方に位置するように取り込む。即ち、
図4に示すように、粘着テープ2の引出端をハーネスに押し付ける手前の位置まで、テープ巻きツール10を移動する。
【0050】
次に、ステップS104で、テープ巻きツール10を横方向に微小移動させて、粘着テープ2の引出端の粘着面をハーネスの外周面に押し付けて貼り付ける。このように巻き始め端(引出端)をハーネスの外周面に貼り付けたら、ステップS105で、テープ巻きツール10をテープ巻き位置に戻す。つまり、引出端の貼り付けのために横方向に微小移動させていたテープ巻きツール10を、回転ドラム12の回転中心がハーネスの軸中心に位置するように移動する。
【0051】
そして、このように回転ドラム12とハーネスの中心合わせが済んだら、ステップS106で、テープ巻きツール10のサーボモータ16(ツールローター)により回転ドラム12を回転させる。これにより、ハーネスに対するテープ巻きが終了する。テープ巻きが終了したら、ステップS107で、テープ巻きツール10をテープ巻き作業位置の上方へ移動させ、ステップS108で、更にツールホルダ41の上方(ボビン交換位置上空)まで移動させる。そして、ステップS109で、ツールホルダ41にテープ巻きツール10をセット(ボビン交換位置へ移動)して、最初のステップS101に戻る。
【0052】
次に、ボビン交換ユニット20の動作を
図19のフローチャートに基づいて説明する。
この動作では、まず、ステップS201で、テープ巻き作業を終了したテープ巻きツール10がツールホルダ41まで戻されて、適切にツールホルダ41にセットされているかどうかをチェックする。この確認は、ツールセンサ(ツール着座スイッチ)43の信号に基づいて行う。
【0053】
テープ巻きツール10がツールホルダ41に適切にセットされていたら、次のステップS202で、ボビン交換ユニット20のチャック25を前進させる。このとき、両チャック25にはボビン1がチャッキングされていない。次にステップS203で、チャック25を開いて、テープ巻きツール10からテープ巻き終了後の空ボビン1Bをチャック25が受け取る(
図6における矢印A2の動作)と同時に、ボビン巻きユニット30から実ボビン1Aをチャック25が受け取る。
【0054】
その後、ステップS204でチャック25を後退させ、ステップS205でチャック25を180°旋回させて、実ボビン1Aと空ボビン1Bの位置を入れ替える。次に、ステップS206で、チャック25を前進させる。このとき、テープ巻きツール10の前に位置するチャック25には実ボビン1Aがチャッキングされ、ボビン巻きユニット30の前に位置するチャック25には空ボビン1Bがチャッキングされている。
【0055】
この状態で、ステップS206でチャック25を前進させ、ステップS207でチャック25を閉じる。そうすることにより、ボビン交換ユニット20からテープ巻きツール10に実ボビン1Aが受け渡され、ボビン交換ユニット20からボビン巻きユニット30に空ボビン1Bが受け渡され。これにより、実ボビン1Aと空ボビン1Bの入れ替えが完了する。
【0056】
ボビン1(1A、1B)の受け渡しが完了したら、ステップS209で、空のチャック25を180°旋回させて元の待機位置に戻り、以降は最初のステップS201に戻る。
【0057】
次に、ボビン巻きユニット30の動作を
図20のフローチャートに基づいて説明する。
新しい空ボビン1Bがボビン巻きユニット30のボビン巻き軸32に装着された段階で、この動作フローが始まる。この動作では、まず、ステップS301で、クランプシリンダ34を開放して、粘着テープ2に対するクランプを解除する。次にステップS302で、引出シリンダ36が作動して、テープリール3に巻回された粘着テープ2の先端を、空のボビン1に向けて引き出す。次にステップS303で、押し付けシリンダ35が作動して、粘着テープ2の先端近傍の粘着面をボビン1の外周面に押し付ける。そうすると、粘着テープ2の先端近傍がボビン1の外周に貼り付く。この状態で、ステップS304にて、ボビン1を所定角度だけ逆回転(巻き付け方向と逆方向に回転)させる。そうすると、押し付けによって最初に貼り付けた位置から先端縁に至るまで、粘着テープ2の先端全域がボビン1の外周に貼り付く。
【0058】
この状態で、ステップS305で、ボビン1を設定角度(例えば複数回転数分の角度)だけ巻き取り方向に回転させる。そうすると、設定した長さ(1回のテープ巻きに必要な長さ)の粘着テープ2をボビン1に巻き付けることができる。巻き付けが終了したら、ステップS306で、押し付けシリンダ35による押し付けを解除し、ステップS307で、引出シリンダ36による引き出し動作を解除する。その後、ステップS308で、クランプシリンダ34を作動させて、カット位置の手前で粘着テープ2を押し付ける。これにより、ボビン1とテープリール3との間の粘着テープ2に必要な張力を与えることができる。
【0059】
この状態で、ステップS309にて、癖付けシリンダ37で癖付け駒301を前進させる(
図12に示す状態)。そうすることで、ボビン1側の粘着テープ2の切断端近傍にへたり防止のための曲げ癖2c(
図16参照)を付けることができる。曲げ癖を付けたら、ステップS310に進んで、カットシリンダ38でカッター302を前進させて、粘着テープ2を切断する。切断後は、ステップS311で癖付け駒301を元の退避位置に戻し、ステップS312でカッター302を元の退避位置に戻す。次いで、ステップS313にて、ボビン巻き軸32に装着してあるテープ巻き済みボビン(実ボビン1A)と、次にボビン巻きする空のボビン(空ボビン1B)とを入れ替えて、最初のステップS301に戻る。
【0060】
以上のように、本実施形態のテープ巻き装置100においては、ボビン交換ユニット20が、ツールホルダ41にセットしたテープ巻きツール10に対してテープ巻き済みボビン(実ボビン1A)を装着すると共に、ボビン巻きユニット30に対して空のボビン(空ボビン1B)を装着する。そして、ツールホルダ41から取り外したテープ巻きツール10によって結束対象物WHに対するテープ巻きを行っている間に、ボビン巻きユニット30によって、空のボビンに対して、テープリール3から引き出した粘着テープ2の一部を巻回する。
【0061】
また、テープ巻きツール10によるテープ巻き作業が終わると共に、ボビン巻きユニット30によるボビン巻き工程が終わって、ツールホルダ41にテープ巻きツール10を戻すと、ボビン交換ユニット20が、空のボビン(空ボビン1B)をテープ巻きツール10から取り外すと共に、ボビン巻きユニット30からテープ巻き済みボビン(実ボビン1A)を取り外する。そして、空のボビンとテープ巻き済みボビンとを入れ替えて、再び、ツールホルダ41にセットしたテープ巻きツール10に対して、テープ巻き済みボビン(実ボビン1A)を装着すると共に、ボビン巻きユニット30に対して空のボビン(空ボビン1B)を装着する。
【0062】
以上の操作の繰り返しにより、結束対象物WHに対するテープ巻き作業を進めることができる。この場合、ボビンは2個を入れ替えて使用すれば済むので、コスト低減を図ることができる。
【0063】
上の操作に使用するテープ巻きツール10によれば、回転ドラム12が結束対象物WHの周りを回転することで、ボビン1が結束対象物WHの周りを回転し、ボビン1に巻かれた粘着テープ2が、結束対象物WHに巻き付けられる。ここでは、粘着テープ2の一部をテープリール3から切り取ってボビン1に巻回したものを、回転ドラム12に保持させており、ボビン1はテープリール3と比べて径の小さいもので済むため、回転ドラム12を小さくすることができて、テープ巻きツール10自体の小型化および軽量化を図ることができる。よって、大径のテープリール3そのものを結束対象物WHの周りに回転させる場合と比べて、省スペースでテープ巻きを行うことができ、今までテープ巻きができなかったワイヤハーネスの分岐部(
図7参照)等の狭小部分のテープ巻きが可能となる。また、軽量化により、第1マニピュレータM1に搭載する以外に、作業者が手で持ってテープ巻き作業を行うことも可能になる。
【0064】
また、本実施形態では、ボビン1には、一箇所の結束に用いられる長さの粘着テープ2が卷回されているので、テープ巻きツール10(狭義のテープ巻き装置)にテープカット機能を持たせる必要がなくなり、より軽量化が可能となる。
【0065】
また、本実施形態では、粘着テープ2の切断端近傍に曲げ癖を付けることにより、粘着テープ2の引出端の丸まりやめくれ等のへたりを防止することができる。そのため、粘着テープ2の引出端の剛性が高まり、結束対象物WHやボビン1への粘着テープの端部の貼り付けをスムーズに行うことができる。
【0066】
ところで、テープ巻き作業の中には、ワイヤハーネスWH(結束対象物)に外装部品をテープ巻きにより固定する場合がある。例えば、ワイヤハーネスを車体に固定するためのクリップ(外装部品)をワイヤハーネスに取り付ける際に、粘着テープを巻き付けて固定することがある。
【0067】
そこで、そのような場合の実施例について説明する。
図21は、テープ巻き装置による作業例を説明するための図で、第1マニピュレータM1の保持したテープ巻きツール10と第2マニピュレータM2の保持したクリップ支持ユニット60とを用いて、組立治具板80上に載せたワイヤハーネスWH(結束対象物)にクリップをテープ巻き固定している様子を示す斜視図である。
図22は、
図21におけるテープ巻き作業部分の拡大斜視図、
図23は、クリップ支持ユニットを有する第2マニピュレータM2のアーム先端の構成を示す図で、クリップを支持する前の状態を示す斜視図、
図24は、
図23に示す状態からクリップを支持している状態を示す斜視図である。
【0068】
図23に示すように、クリップ70は、帯板状のクリップベース72の片面中間部に、車体側の係止孔に差し込み係止するクリップ突起71を突設したものである。このクリップ70をワイヤハーネスに固定する場合、
図22に示すように、帯板状のクリップベース72をワイヤハーネスWHにテープ巻きすることで固定する。
【0069】
このテープ巻き固定の補助手段として、
図22~
図24に示すように、クリップ支持ユニット60を使用する。マニピュレータのハンドで直接クリップを掴むこともできるが、そうすると、クリップを痛めるおそれがあるので、ここでは専用のクリップ支持ユニット60を使用することにしている。
【0070】
クリップ支持ユニット60は、
図23に示すように、第2マニピュレータM2(
図21参照)のアームの先端に取り付けられるアタッチメント502の湾曲アーム502aの下端に設けられた一対の保持ピン61と、クリップ支持ブロック63と、を備えている。保持ピン61を、クリップ支持ブロック63の保持溝63aと保持孔63bに係合させることで、保持ピン61にクリップ支持ブロック63を結合することができる。
【0071】
クリップ支持ブロック63には、クリップ70の上面に突出したクリップ突起71の嵌まるクリップ嵌合孔63cが設けられている。そして、クリップ70の上からクリップ支持ブロック63を下降させて、クリップ突起71をクリップ嵌合孔63cに嵌めることで、クリップ支持ユニット60がクリップ70をハンドリングできるようになっている。
【0072】
クリップ70をワイヤハーネスWHに固定する際には、
図24に示すように、クリップ突起71をクリップ嵌合孔63cに嵌めることで、クリップ支持ユニット60でクリップ70をハンドリングする。そして、
図21および
図22に示すように、第2マニピュレータM2でクリップ70を取り付け位置に移動すると共に、第1マニピュレータM1でテープ巻きツール10を、クリップ70に対するテープ巻き付け位置に移動し、その状態で、テープ巻きツール10を作動させてテープ巻き付けを行う。
【0073】
クリップ70のワイヤハーネスWHへのテープ巻き固定は、クリップ突起71の両側のクリップベース72に対して行う必要があるので、クリップベース72の片側に対するテープ巻き付けが終了したら、テープ巻きツール10をもう片側に移動して同様にテープ巻き付けを行えばよい。
【0074】
こうすることにより、クリップ70を第2マニピュレータM2でハンドリングしながら、簡単に自動で精度よくワイヤハーネスWHの所定位置に取り付けることができる。クリップ70の取り付け後は、クリップ支持ブロック63を上に持ち上げるだけで、クリップ70からクリップ支持ブロック63を容易に離脱させることができる。以上の操作を繰り返すことで、全数のクリップの取り付けを、ワイヤハーネスWHのテープ巻き付けによる結束と同時に行うことができる。
【0075】
したがって、ワイヤハーネスにクリップを取り付ける際に、取り付け精度を維持するため、組立治具板上に多数のクリップ受け治具を取り付ける必要がない。また、クリップ受け治具を必要としないので、ワイヤハーネスとの干渉を気にしながら作業する必要がない。また、第2マニピュレータM2にクリップ支持ブロック63を搭載することで、狭小部分でのクリップ取付けが可能になる。
【0076】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数、配置箇所、等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
【0077】
ここで、上述した本発明の実施形態に係るテープ巻き装置の特徴をそれぞれ以下[1]~[3]に簡潔に纏めて列記する。
[1] テープリール(3)から引き出された粘着テープ(2)の一部が切り取られて巻回されるボビン(1)と、
前記粘着テープ(2)が巻回されたボビン(1)を着脱自在に保持する回転ドラム(12)を、該回転ドラム(12)の内部空間に配置された結束対象物(WH)の周りに回転させることで、前記結束対象物(WH)の外周に、前記ボビン(1)に巻回された粘着テープ(2)を巻き付けるテープ巻きツール(10)と、
前記結束対象物(WH)に対するテープ巻き作業領域から離れた位置に配置され、前記テープ巻き作業前の前記テープ巻きツール(10)が着脱可能にセットされるツールホルダ(41)と、
空の前記ボビン(1B)に対して、テープリール(3)から引き出した粘着テープ(2)の一部を切り取って巻回してテープ巻き済みボビン(1A)を用意するボビン巻きユニット(30)と、
前記ツールホルダ(41)にセットされたテープ巻きツール(10)と前記ボビン巻きユニット(30)との間で、空のボビン(1B)とテープ巻き済みボビン(1A)との入れ替えをするボビン交換ユニット(20)と、
を有する、
テープ巻き装置(100)。
【0078】
上記[1]の構成のテープ巻き装置(100)によれば、テープ巻きツール(10)の回転ドラム(12)を結束対象物(WH)の周りで回転させることにより、ボビン(1)を結束対象物(WH)の周りで回転させることができ、ボビン(1)に巻かれた粘着テープ(2)を、結束対象物(WH)に巻き付けすることができる。ここでは、粘着テープ(2)の一部をテープリール(3)から切り取ってボビン(1)に巻回したものを回転ドラム(12)に保持させており、ボビン(1)はテープリール(3)と比べて径の小さいもので済むため、回転ドラム(12)を小さくすることができ、テープ巻きツール(10)の小型化および軽量化を図れる。よって、大径のテープリール(3)そのものを結束対象物(WH)の周りに回転させる場合と比べて、省スペースでテープ巻きを行うことができ、今までテープ巻きができなかったワイヤハーネスの分岐部等の狭小スペースでのテープ巻きが可能となる。また、軽量化により、マニピュレータに搭載する以外に、作業者が手で持ってテープ巻き作業を行うことも可能になる。
また、ボビン交換ユニット(20)が、ツールホルダ(41)にセットしたテープ巻きツール(10)に対して、テープ巻き済みボビン(1A)を自動で装着すると共に、ボビン巻きユニット(30)に対して、空のボビン(1B)を自動で装着する。そして、ボビン巻きユニット(30)が、空のボビン(1)に対して、テープリール(3)から引き出した粘着テープ(2)の一部を巻回する。また、テープ巻きツール(10)によるテープ巻き作業が終わると共に、ボビン巻きユニット(30)によるボビン巻き工程が終わったら、ツールホルダ(41)にテープ巻きツール(10)を戻す。そうすると、ボビン交換ユニット(20)が、空のボビン(1B)をテープ巻きツール(10)から取り外すと共に、ボビン巻きユニット(30)からテープ巻き済みボビン(1A)を取り外し、空のボビン(1B)とテープ巻き済みボビン(1A)とを入れ替えて、再び、ツールホルダ(41)にセットしたテープ巻きツール(10)に対して、テープ巻き済みボビン(1A)を装着すると共に、ボビン巻きユニット(30)に対して空のボビン(1B)を装着する。そして、以上の操作の繰り返しにより、結束対象物(WH)に対するテープ巻き作業を進めることができる。したがって、自動的に2個のボビン(1)を入れ替えながら、効率的にテープ巻き作業を進めることができる。
【0079】
[2] 前記ボビン巻きユニット(30)は、粘着テープ(2)を切り取る際に、粘着テープ(2)の切断端近傍にへたり防止のための曲げ癖(2c)を付ける癖付け機構(37、301)を備えている、
上記[1]に記載のテープ巻き装置(100)。
【0080】
上記[2]の構成によれば、粘着テープ(2)の切断端近傍に曲げ癖(2c)を付けることにより、粘着テープ(2)の引出端の丸まりやめくれ等のへたりを防止することができる。そのため、粘着テープ(2)の引出端の剛性が高まり、結束対象物(WH)やボビン(1)への粘着テープ(2)の端部の貼り付けをスムーズに行うことができる。
【0081】
[3] 前記ボビン巻きユニット(30)は、前記テープ巻きツール(10)が前記結束対象物(WH)の外周に、一方の前記ボビン(1)に巻回された粘着テープ(2)を巻き付けている間に、保持している他方の前記ボビン(1B)に対して粘着テープ(2)を巻回してテープ巻き済みボビン(1A)を用意する、
上記[1]に記載のテープ巻き装置(100)。
【0082】
上記[3]の構成によれば、テープ巻きツール(10)によって結束対象物(WH)に対するテープ巻きを行っている間に、ボビン巻きユニット(30)が、空のボビン(1)に対して、テープリール(3)から引き出した粘着テープ(2)の一部を巻回する。したがって、ボビン(1)テープを巻き付ける作業に起因した待ち時間を発生させることなく、ボビン交換ユニット(20)が、空のボビン(1B)をテープ巻きツール(10)から取り外すと共に、ボビン巻きユニット(30)からテープ巻き済みボビン(1A)を取り外し、空のボビン(1B)とテープ巻き済みボビン(1A)とを入れ替えることができ、効率的にテープ巻き作業を進めることができる。
【符号の説明】
【0083】
1 ボビン
1A テープ巻き済みボビン
1B 空ボビン
2 粘着テープ
3 テープリール
10 テープ巻きツール(テープ巻き装置)
11 フレーム
12 回転ドラム
12a 開口部
13 ボビン保持部
20 ボビン交換ユニット
30 ボビン巻きユニット
37 癖付けシリンダ(癖付け機構)
301 癖付け駒(癖付け機構)
100 テープ巻き装置
WH 結束対象物