(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023170200
(43)【公開日】2023-12-01
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
H01L 29/739 20060101AFI20231124BHJP
H01L 21/8234 20060101ALI20231124BHJP
H01L 29/78 20060101ALI20231124BHJP
H01L 29/06 20060101ALI20231124BHJP
H01L 29/861 20060101ALI20231124BHJP
【FI】
H01L29/78 655C
H01L27/06 102A
H01L29/78 652Q
H01L29/78 655G
H01L29/78 657D
H01L29/78 655F
H01L29/78 653A
H01L29/78 652J
H01L29/78 655B
H01L29/78 655D
H01L29/78 652M
H01L29/78 652P
H01L29/06 301V
H01L29/06 301G
H01L29/91 D
H01L29/91 L
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022081761
(22)【出願日】2022-05-18
(71)【出願人】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】白川 徹
(72)【発明者】
【氏名】三塚 要
【テーマコード(参考)】
5F048
【Fターム(参考)】
5F048AB10
5F048AC06
5F048AC10
5F048BA01
5F048BB02
5F048BB05
5F048BB19
5F048BC03
5F048BC07
5F048BC12
5F048BD07
5F048BF02
5F048BF07
(57)【要約】
【課題】半導体装置のスイッチング損失を抑制する。
【解決手段】ドリフト領域と半導体基板の下面との間に設けられた第2導電型のコレクタ領域とを備え、前記コレクタ領域は、第1領域と、前記第1領域よりも前記ドリフト領域に対するキャリアの注入効率が低い第2領域とを含み、上面視における前記コレクタ領域の単位面積に占める前記第1領域の面積をS
1、前記第2領域の面積をS
2とし、前記第1領域の前記注入効率をη
1、前記第2領域の前記注入効率をη
2とした場合に、次式で与えられる平均注入効率η
Cが0.1以上、0.4以下である、η
C=(S
1×η
1+S
2×η
2)/(S
1+S
2)、半導体装置を提供する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面および下面を有し、第1導電型のドリフト領域が設けられた半導体基板と、
前記半導体基板の前記上面と接して設けられ、前記ドリフト領域よりもドーピング濃度の高い第1導電型のエミッタ領域と、
前記エミッタ領域に接して設けられた第2導電型のベース領域と、
前記ドリフト領域と前記半導体基板の前記下面との間に設けられた第2導電型のコレクタ領域と
を備え、
前記コレクタ領域は、第1領域と、前記第1領域よりも前記ドリフト領域に対するキャリアの注入効率が低い第2領域とを含み、
上面視における前記コレクタ領域の単位面積に占める前記第1領域の面積をS1、前記第2領域の面積をS2とし、前記第1領域の前記注入効率をη1、前記第2領域の前記注入効率をη2とした場合に、下式で与えられる平均注入効率ηCが0.1以上、0.4以下である
ηC=(S1×η1+S2×η2)/(S1+S2)
半導体装置。
【請求項2】
前記第1領域における前記コレクタ領域のドーピング濃度は、前記第2領域における前記コレクタ領域のドーピング濃度よりも高い
請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記第1領域における前記コレクタ領域の前記ドーピング濃度をD1、前記第2領域における前記コレクタ領域の前記ドーピング濃度をD2とした場合に、下式で与えられる平均ドーピング濃度DCが1×1015/cm3以上、1×1018/cm3以下である
DC=(S1×D1+S2×D2)/(S1+S2)
請求項2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記第2領域における前記コレクタ領域の前記ドーピング濃度が、1×1015/cm3以上、1×1017/cm3以下である
請求項3に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記第2領域における前記コレクタ領域の前記ドーピング濃度が、前記ドリフト領域のドーピング濃度より高い
請求項3に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記第2領域と前記ドリフト領域との間に形成され、前記ドリフト領域よりもドーピング濃度が高いバッファ領域を更に備え、
前記第2領域における前記コレクタ領域の前記ドーピング濃度が、前記第2領域と前記バッファ領域とのPN接合部におけるドナー濃度よりも高い
請求項3に記載の半導体装置。
【請求項7】
前記第1領域における前記コレクタ領域の前記ドーピング濃度D1は前記平均ドーピング濃度DCより高く、
前記平均ドーピング濃度DCは前記第2領域における前記コレクタ領域の前記ドーピング濃度D2より高く、
前記第1領域の面積S1に対する前記第2領域の面積S2の割合αは下式で与えられ、
α=S2/S1
割合βが前記第1領域における前記コレクタ領域の前記ドーピング濃度D1を含む下式で与えられ、
β=(D1/DC-1)+D2/(DC―D2)
前記割合αが前記割合β以上である
請求項3に記載の半導体装置。
【請求項8】
前記第1領域における前記コレクタ領域は、前記第2領域における前記コレクタ領域よりも、前記半導体基板の深さ方向において厚い
請求項1に記載の半導体装置。
【請求項9】
前記第2領域の第2導電型の不純物濃度が、前記第1領域の第2導電型の不純物濃度よりも高い
請求項8に記載の半導体装置。
【請求項10】
上面視における2つの前記第1領域の間の距離が、前記ドリフト領域における少数キャリアの拡散長以下である
請求項8に記載の半導体装置。
【請求項11】
前記エミッタ領域および前記ベース領域を含む活性部と、
上面視において前記活性部を囲み、前記半導体基板の前記上面に接して設けられた第2導電型のウェル領域と、
前記ウェル領域と前記半導体基板の端辺との間に配置されたエッジ終端構造部と
を備え、
前記活性部には前記第1領域および前記第2領域の両方が設けられ、
前記エッジ終端構造部には前記第2領域が設けられ、前記第1領域が設けられない
請求項1から10のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項12】
前記ウェル領域と重なる位置には前記第2領域が設けられ、前記第1領域が設けられない
請求項11に記載の半導体装置。
【請求項13】
前記エッジ終端構造部の前記第2領域が、前記活性部の前記エミッタ領域と重なる位置まで延伸して設けられている
請求項11に記載の半導体装置。
【請求項14】
前記半導体基板の前記上面から前記ドリフト領域まで設けられ、前記エミッタ領域および前記ベース領域に接するゲートトレンチ部を更に備え、
前記第1領域が前記ゲートトレンチ部と重なる位置に設けられている
請求項1から10のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項15】
前記半導体基板の前記上面と接して設けられ、前記ベース領域よりもドーピング濃度の高いコンタクト領域を更に備え、
前記第1領域のコンタクト面積比は、前記第2領域のコンタクト面積比よりも高く、
前記コンタクト面積比は、前記半導体基板の前記上面に露出する前記コンタクト領域の面積の、単位面積に対する割合である
請求項1から10のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項16】
上面および下面を有し、第1導電型のドリフト領域が設けられた半導体基板と、
前記ドリフト領域と前記半導体基板の前記上面との間に設けられ、前記ドリフト領域よりもドーピング濃度の高い第1導電型のエミッタ領域と、
前記エミッタ領域に接して設けられた第2導電型のベース領域と、
前記ドリフト領域と前記半導体基板の前記下面との間に設けられた第2導電型のコレクタ領域と
を備え、
前記コレクタ領域は、第1領域と、前記第1領域よりも前記ドリフト領域に対するキャリアの注入効率が低い第2領域とを含み、
上面視における前記コレクタ領域の単位面積に占める前記第1領域の面積をS1、前記第2領域の面積をS2とし、前記第1領域における前記コレクタ領域の前記ドーピング濃度をD1、前記第2領域における前記コレクタ領域の前記ドーピング濃度をD2とした場合に、下式で与えられる平均ドーピング濃度DCが1×1015/cm3以上、1×1018/cm3以下である
DC=(S1×D1+S2×D2)/(S1+S2)
半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、IGBT等を備える半導体装置が知られている(例えば特許文献1、2参照)。
特許文献1 特開2015-023118号公報
特許文献2 特開2018-049866号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
半導体装置においては、スイッチング損失を抑制することが好ましい。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決するために、本発明の第1の態様においては、半導体装置を提供する。上記半導体装置は、上面および下面を有し、第1導電型のドリフト領域が設けられた半導体基板を備えてよい。上記半導体装置は、前記半導体基板の前記上面と接して設けられ、前記ドリフト領域よりもドーピング濃度の高い第1導電型のエミッタ領域を備えてよい。上記いずれかの半導体装置は、前記エミッタ領域に接して設けられた第2導電型のベース領域を備えてよい。上記いずれかの半導体装置は、前記ドリフト領域と前記半導体基板の前記下面との間に設けられた第2導電型のコレクタ領域を備えてよい。上記いずれかの半導体装置において前記コレクタ領域は、第1領域と、前記第1領域よりも前記ドリフト領域に対するキャリアの注入効率が低い第2領域とを含んでよい。上記いずれかの半導体装置において上面視における前記コレクタ領域の単位面積に占める前記第1領域の面積をS1、前記第2領域の面積をS2とし、前記第1領域の前記注入効率をη1、前記第2領域の前記注入効率をη2とした場合に、下式で与えられる平均注入効率ηCが0.1以上、0.4以下であってよい。
ηC=(S1×η1+S2×η2)/(S1+S2)
【0005】
上記いずれかの半導体装置において、前記第1領域における前記コレクタ領域のドーピング濃度は、前記第2領域における前記コレクタ領域のドーピング濃度よりも高くてよい。
【0006】
上記いずれかの半導体装置において、前記第1領域における前記コレクタ領域の前記ドーピング濃度をD1、前記第2領域における前記コレクタ領域の前記ドーピング濃度をD2とした場合に、下式で与えられる平均ドーピング濃度DCが1×1015/cm3以上、1×1018/cm3以下であってよい。
DC=(S1×D1+S2×D2)/(S1+S2)
【0007】
上記いずれかの半導体装置において、前記第2領域における前記コレクタ領域の前記ドーピング濃度が、1×1015/cm3以上、1×1017/cm3以下であってよい。
【0008】
上記いずれかの半導体装置において、前記第2領域における前記コレクタ領域の前記ドーピング濃度が、前記ドリフト領域のドーピング濃度より高くてよい。
【0009】
上記いずれかの半導体装置は、前記第2領域と前記ドリフト領域との間に形成され、前記ドリフト領域よりもドーピング濃度が高いバッファ領域を備えてよい。上記いずれかの半導体装置において、前記第2領域における前記コレクタ領域の前記ドーピング濃度が、前記第2領域と前記バッファ領域とのPN接合部におけるドナー濃度よりも高くてよい。
【0010】
上記いずれかの半導体装置において、前記第1領域における前記コレクタ領域の前記ドーピング濃度D1は前記平均ドーピング濃度DCより高くてよい。上記いずれかの半導体装置において、前記平均ドーピング濃度DCは前記第2領域における前記コレクタ領域の前記ドーピング濃度D2より高くてよい。上記いずれかの半導体装置において、前記第1領域の面積S1に対する前記第2領域の面積S2の割合αは下式で与えられてよい。
α=S2/S1
上記いずれかの半導体装置において、割合βが前記第1領域における前記コレクタ領域の前記ドーピング濃度D1を含む下式で与えられてよい。
β=(D1/DC-1)+D2/(DC―D2)
上記いずれかの半導体装置において、前記割合αが前記割合β以上であってよい。
【0011】
上記いずれかの半導体装置において、前記第1領域における前記コレクタ領域は、前記第2領域における前記コレクタ領域よりも、前記半導体基板の深さ方向において厚くてよい。
【0012】
上記いずれかの半導体装置において、前記第2領域の第2導電型の不純物濃度が、前記第1領域の第2導電型の不純物濃度よりも高くてよい。
【0013】
上記いずれかの半導体装置において、上面視における2つの前記第1領域の間の距離が、前記ドリフト領域における少数キャリアの拡散長以下であってよい。
【0014】
上記いずれかの半導体装置は、前記エミッタ領域および前記ベース領域を含む活性部を備えてよい。上記いずれかの半導体装置は、上面視において前記活性部を囲み、前記半導体基板の前記上面に接して設けられた第2導電型のウェル領域を備えてよい。上記いずれかの半導体装置は、前記ウェル領域と前記半導体基板の端辺との間に配置されたエッジ終端構造部を備えてよい。前記活性部には前記第1領域および前記第2領域の両方が設けられてよい。前記エッジ終端構造部には前記第2領域が設けられ、前記第1領域が設けられなくてよい。
【0015】
上記いずれかの半導体装置において、前記ウェル領域と重なる位置には前記第2領域が設けられ、前記第1領域が設けられなくてよい。
【0016】
上記いずれかの半導体装置において、前記エッジ終端構造部の前記第2領域が、前記活性部の前記エミッタ領域と重なる位置まで延伸して設けられていてよい。
【0017】
上記いずれかの半導体装置は、前記半導体基板の前記上面から前記ドリフト領域まで設けられ、前記エミッタ領域および前記ベース領域に接するゲートトレンチ部を備えてよい。上記いずれかの半導体装置において、前記第1領域が前記ゲートトレンチ部と重なる位置に設けられていてよい。
【0018】
上記いずれかの半導体装置は、前記半導体基板の前記上面と接して設けられ、前記ベース領域よりもドーピング濃度の高いコンタクト領域を備えてよい。上記いずれかの半導体装置において、前記第1領域のコンタクト面積比は、前記第2領域のコンタクト面積比よりも高くてよい。前記コンタクト面積比は、前記半導体基板の前記上面に露出する前記コンタクト領域の面積の、単位面積に対する割合であってよい。
【0019】
本発明の第2の態様においては、半導体装置を提供する。上記半導体装置は、上面および下面を有し、第1導電型のドリフト領域が設けられた半導体基板を備えてよい。上記半導体装置は、前記ドリフト領域と前記半導体基板の前記上面との間に設けられ、前記ドリフト領域よりもドーピング濃度の高い第1導電型のエミッタ領域を備えてよい。上記いずれかの半導体装置は、前記エミッタ領域に接して設けられた第2導電型のベース領域を備えてよい。上記いずれかの半導体装置は、前記ドリフト領域と前記半導体基板の前記下面との間に設けられた第2導電型のコレクタ領域を備えてよい。上記いずれかの半導体装置において、前記コレクタ領域は、第1領域と、前記第1領域よりも前記ドリフト領域に対するキャリアの注入効率が低い第2領域とを含んでよい。上記いずれかの半導体装置において、上面視における前記コレクタ領域の単位面積に占める前記第1領域の面積をS1、前記第2領域の面積をS2とし、前記第1領域における前記コレクタ領域の前記ドーピング濃度をD1、前記第2領域における前記コレクタ領域の前記ドーピング濃度をD2とした場合に、下式で与えられる平均ドーピング濃度DCが1×1015/cm3以上、1×1018/cm3以下であってよい。
DC=(S1×D1+S2×D2)/(S1+S2)
【0020】
なお、上記の発明の概要は、本発明の必要な特徴の全てを列挙したものではない。また、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた、発明となりうる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の一つの実施形態に係る半導体装置100の一例を示す上面図である。
【
図3】
図2におけるe-e断面の一例を示す図である。
【
図4A】上面視における第1領域26および第2領域28の配置例を示す図である。
【
図4B】第1領域26の面積S1に対する第2領域28の面積S2の特性を示す図である。
【
図5】上面視における第1領域26および第2領域28の配置例を示す図である。
【
図8】上面視におけるエミッタ領域12およびコンタクト領域15の配置例を示す図である。
【
図10】上面視におけるエミッタ領域12およびコンタクト領域15の配置例を示す図である。
【
図13】
図3のc-c線におけるネット・ドーピング濃度分布の一例を示す図である。
【
図14】第1領域26および第2領域28の他の例を示す図である。
【
図15】コレクタ領域22に注入するP型不純物のドーズ量の設定値と、コレクタ領域22のドーピング濃度のばらつきとの関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0023】
本明細書においては半導体基板の深さ方向と平行な方向における一方の側を「上」、他方の側を「下」と称する。基板、層またはその他の部材の2つの主面のうち、一方の面を上面、他方の面を下面と称する。「上」、「下」の方向は、重力方向または半導体装置の実装時における方向に限定されない。
【0024】
本明細書では、X軸、Y軸およびZ軸の直交座標軸を用いて技術的事項を説明する場合がある。直交座標軸は、構成要素の相対位置を特定するに過ぎず、特定の方向を限定するものではない。例えば、Z軸は地面に対する高さ方向を限定して示すものではない。なお、+Z軸方向と-Z軸方向とは互いに逆向きの方向である。正負を記載せず、Z軸方向と記載した場合、+Z軸および-Z軸に平行な方向を意味する。
【0025】
本明細書では、半導体基板の上面および下面に平行な直交軸をX軸およびY軸とする。また、半導体基板の上面および下面と垂直な軸をZ軸とする。本明細書では、Z軸の方向を深さ方向と称する場合がある。また、本明細書では、X軸およびY軸を含めて、半導体基板の上面および下面に平行な方向を、水平方向と称する場合がある。
【0026】
半導体基板の深さ方向における中心から、半導体基板の上面までの領域を、上面側と称する場合がある。同様に、半導体基板の深さ方向における中心から、半導体基板の下面までの領域を、下面側と称する場合がある。
【0027】
本明細書において「同一」または「等しい」のように称した場合、製造ばらつき等に起因する誤差を有する場合も含んでよい。当該誤差は、例えば10%以内である。
【0028】
本明細書においては、不純物がドーピングされたドーピング領域の導電型をP型またはN型として説明している。本明細書においては、不純物とは、特にN型のドナーまたはP型のアクセプタのいずれかを意味する場合があり、ドーパントと記載する場合がある。本明細書においては、ドーピングとは、半導体基板にドナーまたはアクセプタを導入し、N型の導電型を示す半導体またはP型の導電型を示す半導体とすることを意味する。
【0029】
本明細書においては、ドーピング濃度とは、熱平衡状態におけるドナーの濃度またはアクセプタの濃度を意味する。本明細書においては、ネット・ドーピング濃度とは、ドナー濃度を正イオンの濃度とし、アクセプタ濃度を負イオンの濃度として、電荷の極性を含めて足し合わせた正味の濃度を意味する。一例として、ドナー濃度をND、アクセプタ濃度をNAとすると、任意の位置における正味のネット・ドーピング濃度はND-NAとなる。本明細書では、ネット・ドーピング濃度を単にドーピング濃度と記載する場合がある。
【0030】
ドナーは、半導体に電子を供給する機能を有している。アクセプタは、半導体から電子を受け取る機能を有している。ドナーおよびアクセプタは、不純物自体には限定されない。例えば、半導体中に存在する空孔(V)、酸素(O)および水素(H)が結合したVOH欠陥は、電子を供給するドナーとして機能する。本明細書では、VOH欠陥を水素ドナーと称する場合がある。
【0031】
本明細書において半導体基板は、N型のバルク・ドナーが全体に分布している。バルク・ドナーは、半導体基板の元となるインゴットの製造時に、インゴット内に略一様に含まれたドーパントによるドナーである。本例のバルク・ドナーは、水素以外の元素である。バルク・ドナーのドーパントは、例えばリン、アンチモン、ヒ素、セレンまたは硫黄であるが、これに限定されない。本例のバルク・ドナーは、リンである。バルク・ドナーは、P型の領域にも含まれている。半導体基板は、半導体のインゴットから切り出したウエハであってよく、ウエハを個片化したチップであってもよい。半導体のインゴットは、チョクラルスキー法(CZ法)、磁場印加型チョクラルスキー法(MCZ法)、フロートゾーン法(FZ法)のいずれかで製造されよい。本例におけるインゴットは、MCZ法で製造されている。MCZ法で製造された基板に含まれる酸素濃度は1×1017~7×1017/cm3である。FZ法で製造された基板に含まれる酸素濃度は1×1015~5×1016/cm3である。酸素濃度が高い方が水素ドナーを生成しやすい傾向がある。バルク・ドナー濃度は、半導体基板の全体に分布しているバルク・ドナーの化学濃度を用いてよく、当該化学濃度の90%から100%の間の値であってもよい。また、半導体基板は、リン等のドーパントを含まないノンドープ基板を用いてもよい。その場合、ノンドーピング基板のバルク・ドナー濃度(D0)は例えば1×1010/cm3以上、5×1012/cm3以下である。ノンドーピング基板のバルク・ドナー濃度(D0)は、好ましくは1×1011/cm3以上である。ノンドーピング基板のバルク・ドナー濃度(D0)は、好ましくは5×1012/cm3以下である。尚、本発明における各濃度は、室温における値でよい。室温における値は、一例として300K(ケルビン)(約26.9℃)のときの値を用いてよい。
【0032】
本明細書においてP+型またはN+型と記載した場合、P型またはN型よりもドーピング濃度が高いことを意味し、P-型またはN-型と記載した場合、P型またはN型よりもドーピング濃度が低いことを意味する。また、本明細書においてP++型またはN++型と記載した場合には、P+型またはN+型よりもドーピング濃度が高いことを意味する。本明細書の単位系は、特に断りがなければSI単位系である。長さの単位をcmで表示することがあるが、諸計算はメートル(m)に換算してから行ってよい。
【0033】
本明細書において化学濃度とは、電気的な活性化の状態によらずに測定される不純物の原子密度を指す。化学濃度は、例えば二次イオン質量分析法(SIMS)により計測できる。上述したネット・ドーピング濃度は、電圧-容量測定法(CV法)により測定できる。また、拡がり抵抗測定法(SR法)により計測されるキャリア濃度を、ネット・ドーピング濃度としてよい。CV法またはSR法により計測されるキャリア濃度は、熱平衡状態における値としてよい。また、N型の領域においては、ドナー濃度がアクセプタ濃度よりも十分大きいので、当該領域におけるキャリア濃度を、ドナー濃度としてもよい。同様に、P型の領域においては、当該領域におけるキャリア濃度を、アクセプタ濃度としてもよい。本明細書では、N型領域のドーピング濃度をドナー濃度と称する場合があり、P型領域のドーピング濃度をアクセプタ濃度と称する場合がある。
【0034】
ドナー、アクセプタまたはネット・ドーピングの濃度分布がピークを有する場合、当該ピーク値を当該領域におけるドナー、アクセプタまたはネット・ドーピングの濃度としてよい。ドナー、アクセプタまたはネット・ドーピングの濃度がほぼ均一な場合等においては、当該領域におけるドナー、アクセプタまたはネット・ドーピングの濃度の平均値をドナー、アクセプタまたはネット・ドーピングの濃度としてよい。本明細書において、単位体積当りの濃度表示にatоms/cm3、または、/cm3を用いる。この単位は、半導体基板内のドナーまたはアクセプタ濃度、または、化学濃度に用いられる。atоms表記は省略してもよい。
【0035】
SR法により計測されるキャリア濃度が、ドナーまたはアクセプタの濃度より低くてもよい。拡がり抵抗を測定する際に電流が流れる範囲において、半導体基板のキャリア移動度が結晶状態の値よりも低い場合がある。キャリア移動度の低下は、格子欠陥等による結晶構造の乱れ(ディスオーダー)により、キャリアが散乱されることで生じる。
【0036】
CV法またはSR法により計測されるキャリア濃度から算出したドナーまたはアクセプタの濃度は、ドナーまたはアクセプタを示す元素の化学濃度よりも低くてよい。一例として、シリコンの半導体においてドナーとなるリンまたはヒ素のドナー濃度、あるいはアクセプタとなるボロン(ホウ素)のアクセプタ濃度は、これらの化学濃度の99%程度である。一方、シリコンの半導体においてドナーとなる水素のドナー濃度は、水素の化学濃度の0.1%から10%程度である。
【0037】
図1は、本発明の一つの実施形態に係る半導体装置100の一例を示す上面図である。
図1においては、各部材を半導体基板10の上面に投影した位置を示している。
図1においては、半導体装置100の一部の部材だけを示しており、一部の部材は省略している。
【0038】
半導体装置100は、半導体基板10を備えている。半導体基板10は、半導体材料で形成された基板である。一例として半導体基板10はシリコン基板である。半導体基板10は、上面視において端辺162を有する。本明細書で単に上面視と称した場合、半導体基板10の上面側から見ることを意味している。本例の半導体基板10は、上面視において互いに向かい合う2組の端辺162を有する。
図1においては、X軸およびY軸は、いずれかの端辺162と平行である。またZ軸は、半導体基板10の上面と垂直である。
【0039】
半導体基板10には活性部160が設けられている。活性部160は、半導体装置100が動作した場合に半導体基板10の上面と下面との間で、深さ方向に主電流が流れる領域である。活性部160の上方には、エミッタ電極が設けられているが
図1では省略している。活性部160は、上面視においてエミッタ電極で重なる領域を指してよい。また、上面視において活性部160で挟まれる領域も、活性部160に含めてよい。
【0040】
活性部160には、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)等のトランジスタ素子を含むトランジスタ部70が設けられている。活性部160には、還流ダイオード(FWD)等のダイオード素子を含むダイオード部80が更に設けられていてもよい。
図1の例では、半導体基板10の上面における所定の配列方向(本例ではX軸方向)に沿って、トランジスタ部70およびダイオード部80が交互に配置されている。本例の半導体装置100は逆導通型IGBT(RC-IGBT)である。
【0041】
図1においては、トランジスタ部70が配置される領域には記号「I」を付し、ダイオード部80が配置される領域には記号「F」を付している。本明細書では、上面視において配列方向と垂直な方向を延伸方向(
図1ではY軸方向)と称する場合がある。トランジスタ部70およびダイオード部80は、それぞれ延伸方向に長手を有してよい。つまり、トランジスタ部70のY軸方向における長さは、X軸方向における幅よりも大きい。同様に、ダイオード部80のY軸方向における長さは、X軸方向における幅よりも大きい。トランジスタ部70およびダイオード部80の延伸方向と、後述する各トレンチ部の長手方向とは同一であってよい。
【0042】
ダイオード部80は、半導体基板10の下面と接する領域に、N+型のカソード領域を有する。本明細書では、カソード領域が設けられた領域を、ダイオード部80と称する。つまりダイオード部80は、上面視においてカソード領域と重なる領域である。半導体基板10の下面には、カソード領域以外の領域には、P+型のコレクタ領域が設けられてよい。本明細書では、ダイオード部80を、後述するゲート配線までY軸方向に延長した延長領域81も、ダイオード部80に含める場合がある。延長領域81の下面には、コレクタ領域が設けられている。
【0043】
トランジスタ部70は、半導体基板10の下面と接する領域に、P+型のコレクタ領域を有する。また、トランジスタ部70は、半導体基板10の上面側に、N型のエミッタ領域、P型のベース領域、ゲート導電部およびゲート絶縁膜を有するゲート構造が周期的に配置されている。
【0044】
半導体装置100は、半導体基板10の上方に1つ以上のパッドを有してよい。本例の半導体装置100は、ゲートパッド164を有している。半導体装置100は、アノードパッド、カソードパッドおよび電流検出パッド等のパッドを有してもよい。各パッドは、端辺162の近傍に配置されている。端辺162の近傍とは、上面視における端辺162と、エミッタ電極との間の領域を指す。半導体装置100の実装時において、各パッドは、ワイヤ等の配線を介して外部の回路に接続されてよい。
【0045】
ゲートパッド164には、ゲート電位が印加される。ゲートパッド164は、活性部160のゲートトレンチ部の導電部に電気的に接続される。半導体装置100は、ゲートパッド164とゲートトレンチ部とを接続するゲート配線を備える。
図1においては、ゲート配線に斜線のハッチングを付している。
【0046】
本例のゲート配線は、外周ゲート配線130と、活性側ゲート配線131とを有している。外周ゲート配線130は、上面視において活性部160と半導体基板10の端辺162との間に配置されている。本例の外周ゲート配線130は、上面視において活性部160を囲んでいる。上面視において外周ゲート配線130に囲まれた領域を活性部160としてもよい。また、ゲート配線の下方には、ウェル領域が形成されている。ウェル領域とは、後述するベース領域よりも高濃度のP型領域であり、半導体基板10の上面からベース領域よりも深い位置まで形成されている。上面視においてウェル領域で囲まれる領域を活性部160としてもよい。
【0047】
外周ゲート配線130は、ゲートパッド164と接続されている。外周ゲート配線130は、半導体基板10の上方に配置されている。外周ゲート配線130は、アルミニウム等を含む金属配線であってよい。
【0048】
活性側ゲート配線131は、活性部160に設けられている。活性部160に活性側ゲート配線131を設けることで、半導体基板10の各領域について、ゲートパッド164からの配線長のバラツキを低減できる。
【0049】
外周ゲート配線130および活性側ゲート配線131は、活性部160のゲートトレンチ部と接続される。外周ゲート配線130および活性側ゲート配線131は、半導体基板10の上方に配置されている。外周ゲート配線130および活性側ゲート配線131は、不純物がドープされたポリシリコン等の半導体で形成された配線であってよい。
【0050】
活性側ゲート配線131は、外周ゲート配線130と接続されてよい。本例の活性側ゲート配線131は、活性部160を挟む一方の外周ゲート配線130から他方の外周ゲート配線130まで、活性部160をY軸方向の略中央で横切るように、X軸方向に延伸して設けられている。活性側ゲート配線131により活性部160が分割されている場合、それぞれの分割領域において、トランジスタ部70およびダイオード部80がX軸方向に交互に配置されてよい。
【0051】
半導体装置100は、ポリシリコン等で形成されたPN接合ダイオードである不図示の温度センス部や、活性部160に設けられたトランジスタ部の動作を模擬する不図示の電流検出部を備えてもよい。
【0052】
本例の半導体装置100は、上面視において、活性部160と端辺162との間に、エッジ終端構造部90を備える。本例のエッジ終端構造部90は、外周ゲート配線130と端辺162との間に配置されている。エッジ終端構造部90は、半導体基板10の上面側の電界集中を緩和する。エッジ終端構造部90は、活性部160を囲んで環状に設けられたガードリング、フィールドプレートおよびリサーフのうちの少なくとも一つを備えていてよい。
【0053】
図2は、
図1における領域Dの拡大図である。領域Dは、トランジスタ部70、ダイオード部80、および、活性側ゲート配線131を含む領域である。本例の半導体装置100は、半導体基板10の上面側の内部に設けられたゲートトレンチ部40、ダミートレンチ部30、ウェル領域11、エミッタ領域12、ベース領域14およびコンタクト領域15を備える。ゲートトレンチ部40およびダミートレンチ部30は、それぞれがトレンチ部の一例である。また、本例の半導体装置100は、半導体基板10の上面の上方に設けられたエミッタ電極52および活性側ゲート配線131を備える。エミッタ電極52および活性側ゲート配線131は互いに分離して設けられる。
【0054】
エミッタ電極52および活性側ゲート配線131と、半導体基板10の上面との間には層間絶縁膜が設けられるが、
図2では省略している。本例の層間絶縁膜には、コンタクトホール54が、当該層間絶縁膜を貫通して設けられる。
図2においては、それぞれのコンタクトホール54に斜線のハッチングを付している。
【0055】
エミッタ電極52は、ゲートトレンチ部40、ダミートレンチ部30、ウェル領域11、エミッタ領域12、ベース領域14およびコンタクト領域15の上方に設けられる。エミッタ電極52は、コンタクトホール54を通って、半導体基板10の上面におけるエミッタ領域12、コンタクト領域15およびベース領域14と接触する。また、エミッタ電極52は、層間絶縁膜に設けられたコンタクトホールを通って、ダミートレンチ部30内のダミー導電部と接続される。エミッタ電極52は、Y軸方向におけるダミートレンチ部30の先端において、ダミートレンチ部30のダミー導電部と接続されてよい。ダミートレンチ部30のダミー導電部は、エミッタ電極52およびゲート導電部と接続されなくてよく、エミッタ電極52の電位およびゲート導電部の電位とは異なる電位に制御されてもよい。
【0056】
活性側ゲート配線131は、層間絶縁膜に設けられたコンタクトホールを通って、ゲートトレンチ部40と接続する。活性側ゲート配線131は、Y軸方向におけるゲートトレンチ部40の先端部41において、ゲートトレンチ部40のゲート導電部と接続されてよい。活性側ゲート配線131は、ダミートレンチ部30内のダミー導電部とは接続されない。
【0057】
エミッタ電極52は、金属を含む材料で形成される。
図2においては、エミッタ電極52が設けられる範囲を示している。例えば、エミッタ電極52の少なくとも一部の領域はアルミニウムまたはアルミニウム‐シリコン合金、例えばAlSi、AlSiCu等の金属合金で形成される。エミッタ電極52は、アルミニウム等で形成された領域の下層に、チタンやチタン化合物等で形成されたバリアメタルを有してよい。さらにコンタクトホール内において、バリアメタルとアルミニウム等に接するようにタングステン等を埋め込んで形成されたプラグを有してもよい。
【0058】
ウェル領域11は、活性側ゲート配線131と重なって設けられている。ウェル領域11は、活性側ゲート配線131と重ならない範囲にも、所定の幅で延伸して設けられている。本例のウェル領域11は、コンタクトホール54のY軸方向の端から、活性側ゲート配線131側に離れて設けられている。ウェル領域11は、ベース領域14よりもドーピング濃度の高い第2導電型の領域である。本例のベース領域14はP-型であり、ウェル領域11はP+型である。
【0059】
トランジスタ部70およびダイオード部80のそれぞれは、配列方向に複数配列されたトレンチ部を有する。本例のトランジスタ部70には、配列方向に沿って1以上のゲートトレンチ部40と、1以上のダミートレンチ部30とが交互に設けられている。本例のダイオード部80には、複数のダミートレンチ部30が、配列方向に沿って設けられている。本例のダイオード部80には、ゲートトレンチ部40が設けられていない。
【0060】
本例のゲートトレンチ部40は、配列方向と垂直な延伸方向に沿って延伸する2つの直線部分39(延伸方向に沿って直線状であるトレンチの部分)と、2つの直線部分39を接続する先端部41を有してよい。
図2における延伸方向はY軸方向である。
【0061】
先端部41の少なくとも一部は、上面視において曲線状に設けられることが好ましい。2つの直線部分39のY軸方向における端部どうしを先端部41が接続することで、直線部分39の端部における電界集中を緩和できる。
【0062】
トランジスタ部70において、ダミートレンチ部30はゲートトレンチ部40のそれぞれの直線部分39の間に設けられる。それぞれの直線部分39の間には、1本のダミートレンチ部30が設けられてよく、複数本のダミートレンチ部30が設けられていてもよい。ダミートレンチ部30は、延伸方向に延伸する直線形状を有してよく、ゲートトレンチ部40と同様に、直線部分29と先端部31とを有していてもよい。
図2に示した半導体装置100は、先端部31を有さない直線形状のダミートレンチ部30と、先端部31を有するダミートレンチ部30の両方を含んでいる。
【0063】
ウェル領域11の拡散深さは、ゲートトレンチ部40およびダミートレンチ部30の深さよりも深くてよい。ゲートトレンチ部40およびダミートレンチ部30のY軸方向の端部は、上面視においてウェル領域11に設けられる。つまり、各トレンチ部のY軸方向の端部において、各トレンチ部の深さ方向の底部は、ウェル領域11に覆われている。これにより、各トレンチ部の当該底部における電界集中を緩和できる。
【0064】
配列方向において各トレンチ部の間には、メサ部が設けられている。メサ部は、半導体基板10の内部において、トレンチ部に挟まれた領域を指す。一例としてメサ部の上端は半導体基板10の上面である。メサ部の下端の深さ位置は、トレンチ部の下端の深さ位置と同一である。本例のメサ部は、半導体基板10の上面において、トレンチに沿って延伸方向(Y軸方向)に延伸して設けられている。本例では、トランジスタ部70にはメサ部60が設けられ、ダイオード部80にはメサ部61が設けられている。本明細書において単にメサ部と称した場合、メサ部60およびメサ部61のそれぞれを指している。
【0065】
それぞれのメサ部には、ベース領域14が設けられる。メサ部において半導体基板10の上面に露出したベース領域14のうち、活性側ゲート配線131に最も近く配置された領域をベース領域14-eとする。
図2においては、それぞれのメサ部の延伸方向における一方の端部に配置されたベース領域14-eを示しているが、それぞれのメサ部の他方の端部にもベース領域14-eが配置されている。それぞれのメサ部には、上面視においてベース領域14-eに挟まれた領域に、第1導電型のエミッタ領域12および第2導電型のコンタクト領域15の少なくとも一方が設けられてよい。本例のエミッタ領域12はN+型であり、コンタクト領域15はP+型である。エミッタ領域12およびコンタクト領域15は、深さ方向において、ベース領域14と半導体基板10の上面との間に設けられてよい。
【0066】
トランジスタ部70のメサ部60は、半導体基板10の上面に接して(つまり上面に露出した)エミッタ領域12を有する。エミッタ領域12は、ゲートトレンチ部40に接して設けられている。ゲートトレンチ部40に接するメサ部60は、半導体基板10の上面に露出したコンタクト領域15が設けられていてよい。
【0067】
メサ部60におけるコンタクト領域15およびエミッタ領域12のそれぞれは、X軸方向における一方のトレンチ部から、他方のトレンチ部まで設けられる。一例として、メサ部60のコンタクト領域15およびエミッタ領域12は、トレンチ部の延伸方向(Y軸方向)に沿って交互に配置されている。
【0068】
他の例においては、メサ部60のコンタクト領域15およびエミッタ領域12は、トレンチ部の延伸方向(Y軸方向)に沿ってストライプ状に設けられていてもよい。例えばトレンチ部に接する領域にエミッタ領域12が設けられ、エミッタ領域12に挟まれた領域にコンタクト領域15が設けられる。
【0069】
ダイオード部80のメサ部61には、エミッタ領域12が設けられていない。メサ部61の上面には、ベース領域14およびコンタクト領域15が設けられてよい。メサ部61の上面においてベース領域14-eに挟まれた領域には、それぞれのベース領域14-eに接してコンタクト領域15が設けられてよい。メサ部61の上面においてコンタクト領域15に挟まれた領域には、ベース領域14が設けられてよい。ベース領域14は、コンタクト領域15に挟まれた領域全体に配置されてよい。
【0070】
それぞれのメサ部の上方には、コンタクトホール54が設けられている。コンタクトホール54は、ベース領域14-eに挟まれた領域に配置されている。本例のコンタクトホール54は、コンタクト領域15、ベース領域14およびエミッタ領域12の各領域の上方に設けられる。コンタクトホール54は、ベース領域14-eおよびウェル領域11に対応する領域には設けられない。コンタクトホール54は、メサ部60の配列方向(X軸方向)における中央に配置されてよい。
【0071】
ダイオード部80において、半導体基板10の下面と隣接する領域には、N+型のカソード領域82が設けられる。半導体基板10の下面において、カソード領域82が設けられていない領域には、P+型のコレクタ領域22が設けられてよい。カソード領域82およびコレクタ領域22は、半導体基板10の下面23と、バッファ領域20との間に設けられている。
図2においては、カソード領域82およびコレクタ領域22の境界を点線で示している。
【0072】
カソード領域82は、Y軸方向においてウェル領域11から離れて配置されている。これにより、比較的にドーピング濃度が高く、且つ、深い位置まで形成されているP型の領域(ウェル領域11)と、カソード領域82との距離を確保して、耐圧を向上できる。本例のカソード領域82のY軸方向における端部は、コンタクトホール54のY軸方向における端部よりも、ウェル領域11から離れて配置されている。他の例では、カソード領域82のY軸方向における端部は、ウェル領域11とコンタクトホール54との間に配置されていてもよい。
【0073】
図3は、
図2におけるe-e断面の一例を示す図である。e-e断面は、エミッタ領域12およびカソード領域82を通過するXZ面である。本例の半導体装置100は、当該断面において、半導体基板10、層間絶縁膜38、エミッタ電極52およびコレクタ電極24を有する。
【0074】
層間絶縁膜38は、半導体基板10の上面に設けられている。層間絶縁膜38は、ホウ素またはリン等の不純物が添加されたシリケートガラス等の絶縁膜、熱酸化膜、および、その他の絶縁膜の少なくとも一層を含む膜である。層間絶縁膜38には、
図2において説明したコンタクトホール54が設けられている。
【0075】
エミッタ電極52は、層間絶縁膜38の上方に設けられる。エミッタ電極52は、層間絶縁膜38のコンタクトホール54を通って、半導体基板10の上面21と接触している。コレクタ電極24は、半導体基板10の下面23に設けられる。エミッタ電極52およびコレクタ電極24は、アルミニウム等の金属材料で形成されている。本明細書において、エミッタ電極52とコレクタ電極24とを結ぶ方向(Z軸方向)を深さ方向と称する。
【0076】
半導体基板10は、N型またはN-型のドリフト領域18を有する。ドリフト領域18は、トランジスタ部70およびダイオード部80のそれぞれに設けられている。
【0077】
トランジスタ部70のメサ部60には、N+型のエミッタ領域12およびP-型のベース領域14が、半導体基板10の上面21側から順番に設けられている。ベース領域14の下方にはドリフト領域18が設けられている。メサ部60には、N+型の蓄積領域16が設けられてもよい。蓄積領域16は、ベース領域14とドリフト領域18との間に配置される。蓄積領域16は、ドリフト領域18よりもドーピング濃度が高いN+型の領域である。ドリフト領域18とベース領域14との間に高濃度の蓄積領域16を設けることで、キャリア注入促進効果(IE効果)を高めて、オン電圧を低減できる。蓄積領域16は、各メサ部60におけるベース領域14の下面全体を覆うように設けられてよい。蓄積領域16は、ダイオード部80の各メサ部61にも設けられてよく、設けられていなくてもよい。
【0078】
エミッタ領域12は半導体基板10の上面21に露出しており、且つ、ゲートトレンチ部40と接して設けられている。エミッタ領域12は、メサ部60の両側のトレンチ部と接していてよい。エミッタ領域12は、ドリフト領域18よりもドーピング濃度が高い。
【0079】
ベース領域14は、エミッタ領域12の下方に設けられている。本例のベース領域14は、エミッタ領域12と接して設けられている。ベース領域14は、メサ部60の両側のトレンチ部と接していてよい。
【0080】
ダイオード部80のメサ部61には、半導体基板10の上面21に接して、P-型のベース領域14が設けられている。ベース領域14の下方には、ドリフト領域18が設けられている。ダイオード部80のベース領域14を、アノード領域と称する場合がある。
【0081】
トランジスタ部70およびダイオード部80のそれぞれにおいて、ドリフト領域18の下にはN+型のバッファ領域20が設けられてよい。バッファ領域20のドーピング濃度は、ドリフト領域18のドーピング濃度よりも高い。バッファ領域20は、ドリフト領域18よりもドーピング濃度の高い濃度ピークを有してよい。濃度ピークのドーピング濃度とは、濃度ピークの頂点におけるドーピング濃度を指す。また、ドリフト領域18のドーピング濃度は、ドーピング濃度分布がほぼ平坦な領域におけるドーピング濃度の平均値を用いてよい。
【0082】
バッファ領域20は、半導体基板10の深さ方向(Z軸方向)において、2つ以上の濃度ピークを有してよい。バッファ領域20の濃度ピークは、例えば水素(プロトン)またはリンの化学濃度ピークと同一の深さ位置に設けられていてよい。バッファ領域20は、ベース領域14の下端から広がる空乏層が、P+型のコレクタ領域22およびN+型のカソード領域82に到達することを防ぐフィールドストップ層として機能してよい。
【0083】
トランジスタ部70において、バッファ領域20の下には、P+型のコレクタ領域22が設けられる。コレクタ領域22のアクセプタ濃度は、ベース領域14のアクセプタ濃度より高い。コレクタ領域22は、ベース領域14と同一のアクセプタを含んでよく、異なるアクセプタを含んでもよい。コレクタ領域22のアクセプタは、例えばボロンである。
【0084】
ダイオード部80において、バッファ領域20の下には、N+型のカソード領域82が設けられる。カソード領域82のドナー濃度は、ドリフト領域18のドナー濃度より高い。カソード領域82のドナーは、例えば水素またはリンである。なお、各領域のドナーおよびアクセプタとなる元素は、上述した例に限定されない。コレクタ領域22およびカソード領域82は、半導体基板10の下面23に露出しており、コレクタ電極24と接続している。コレクタ電極24は、半導体基板10の下面23全体と接触してよい。エミッタ電極52およびコレクタ電極24は、アルミニウム等の金属材料で形成される。
【0085】
半導体基板10の上面21側には、1以上のゲートトレンチ部40、および、1以上のダミートレンチ部30が設けられる。各トレンチ部は、半導体基板10の上面21から、ベース領域14を貫通して、ベース領域14の下方まで設けられている。エミッタ領域12、コンタクト領域15および蓄積領域の少なくともいずれかが設けられている領域においては、各トレンチ部はこれらのドーピング領域も貫通している。トレンチ部がドーピング領域を貫通するとは、ドーピング領域を形成してからトレンチ部を形成する順序で製造したものに限定されない。トレンチ部を形成した後に、トレンチ部の間にドーピング領域を形成したものも、トレンチ部がドーピング領域を貫通しているものに含まれる。
【0086】
上述したように、トランジスタ部70には、ゲートトレンチ部40およびダミートレンチ部30が設けられている。ダイオード部80には、ダミートレンチ部30が設けられ、ゲートトレンチ部40が設けられていない。本例においてダイオード部80とトランジスタ部70のX軸方向における境界は、カソード領域82とコレクタ領域22の境界である。
【0087】
ゲートトレンチ部40は、半導体基板10の上面21に設けられたゲートトレンチ、ゲート絶縁膜42およびゲート導電部44を有する。ゲート絶縁膜42は、ゲートトレンチの内壁を覆って設けられる。ゲート絶縁膜42は、ゲートトレンチの内壁の半導体を酸化または窒化して形成してよい。ゲート導電部44は、ゲートトレンチの内部においてゲート絶縁膜42よりも内側に設けられる。つまりゲート絶縁膜42は、ゲート導電部44と半導体基板10とを絶縁する。ゲート導電部44は、ポリシリコン等の導電材料で形成される。
【0088】
ゲート導電部44は、深さ方向において、ベース領域14よりも長く設けられてよい。当該断面におけるゲートトレンチ部40は、半導体基板10の上面21において層間絶縁膜38により覆われる。ゲート導電部44は、ゲート配線に電気的に接続されている。ゲート導電部44に所定のゲート電圧が印加されると、ベース領域14のうちゲートトレンチ部40に接する界面の表層に電子の反転層によるチャネルが形成される。
【0089】
ダミートレンチ部30は、当該断面において、ゲートトレンチ部40と同一の構造を有してよい。ダミートレンチ部30は、半導体基板10の上面21に設けられたダミートレンチ、ダミー絶縁膜32およびダミー導電部34を有する。ダミー導電部34は、エミッタ電極52に電気的に接続されている。ダミー絶縁膜32は、ダミートレンチの内壁を覆って設けられる。ダミー導電部34は、ダミートレンチの内部に設けられ、且つ、ダミー絶縁膜32よりも内側に設けられる。ダミー絶縁膜32は、ダミー導電部34と半導体基板10とを絶縁する。ダミー導電部34は、ゲート導電部44と同一の材料で形成されてよい。例えばダミー導電部34は、ポリシリコン等の導電材料で形成される。ダミー導電部34は、深さ方向においてゲート導電部44と同一の長さを有してよい。
【0090】
本例のゲートトレンチ部40およびダミートレンチ部30は、半導体基板10の上面21において層間絶縁膜38により覆われている。なお、ダミートレンチ部30およびゲートトレンチ部40の底部は、下側に凸の曲面状(断面においては曲線状)であってよい。本明細書では、ゲートトレンチ部40の下端の深さ位置をZtとする。
【0091】
半導体装置100においては、スイッチング損失が低いことが好ましい。特に動作周波数が20kHz以上の高速動作の製品に半導体装置100を用いた場合、半導体装置100のスイッチング損失が、製品における支配的な損失になる場合がある。このため、例えば半導体装置100のターンオフ損失Eoffが低ければ、製品損失を低くできる。
【0092】
コレクタ領域22のキャリアの注入効率を低くすれば、ターンオフ損失Eoffを小さくできる。一方で、コレクタ領域22の注入効率を低くすると、コレクタ領域22の注入効率の設計値に対するばらつきの割合が大きくなり、半導体装置100の個体間またはロット間の特性ばらつきが大きくなってしまう。
【0093】
例えばコレクタ領域22のドーピング濃度を小さくすることで注入効率を低くできるが、コレクタ領域22のドーピング濃度の設計値に対するばらつきの割合が大きくなる。このような場合、コレクタ領域22のシート抵抗のばらつきが大きくなる。コレクタ領域22のシート抵抗のばらつきが大きくなると、半導体装置100のオン電圧、ラッチアップ耐量のばらつき等が大きくなってしまう。また、複数の半導体装置100を並列で使用する回路においては、半導体装置100のオン電圧がばらつくと、特定の装置に電流が集中して回路の耐量が低下する場合がある。
【0094】
本例のコレクタ領域22は、第1領域26および第2領域28を有する。本例の第1領域26および第2領域28は、XY面において並んで配置されている。第1領域26および第2領域28は、それぞれが半導体基板10の下面23に露出している。また、第1領域26および第2領域28のそれぞれの上面は、N型の領域と接している。本例では第1領域26および第2領域28のそれぞれの上面はバッファ領域20と接しているが、ドリフト領域18と接していてもよい。
【0095】
第2領域28は、第1領域26よりもドリフト領域18に対するキャリア(本例では正孔)の注入効率が低い。注入効率とは、下記の通りである。例えば正孔の電流密度をJp、電子の電流密度をJnとする。コレクタ領域22の注入効率は、全電流密度に対する少数キャリアの電流密度の比率である。本例ではドリフト領域18の導電型がN型であり、コレクタ領域22の導電型がP型であるため、ドリフト領域18の少数キャリアは正孔である。この場合、コレクタ領域22における注入効率は、式(1)で定義できる。
Jp/(Jp+Jn)・・・式(1)
なお、注入効率は、コレクタ電極24またはエミッタ電極52などの電極における効率であるが、本例では少数キャリアがコレクタ領域22から注入されることから、コレクタ領域22における注入効率を指す場合がある。
【0096】
比較的に注入効率が低い第2領域28を設けることで、コレクタ領域22の全体的な注入効率を下げることができる。これにより、半導体装置100のターンオフ損失Eoffを低減できる。また、第1領域26の注入効率は比較的に大きいので、第1領域26の注入効率のばらつきは小さくできる。コレクタ領域22の注入効率においては、第1領域26の注入効率が支配的になるので、第1領域26の注入効率のばらつきを小さくすることで、コレクタ領域22の全体的な注入効率のばらつきを抑制できる。
【0097】
本例の第2領域28は、第1領域26よりもドーピング濃度が低い。各領域のドーピング濃度の最大値を、各領域のドーピング濃度として用いてよい。式(1)で示したように、第2領域28のドーピング濃度を小さくすることで、第2領域28の注入効率を小さくできる。本例において、第1領域26および第2領域28のZ軸方向の厚みは同一であってよい。第1領域26は、第2領域28よりもZ軸方向厚みが大きくてもよい。第1領域26の厚みは、第2領域28の厚みの1.5倍以上であってもよい。第1領域26の厚みは、第2領域28の厚みの2倍以下であってよい。
【0098】
図4Aは、上面視における第1領域26および第2領域28の配置例を示す図である。
図4Aでは、トランジスタ部70の一部を示している。コレクタ領域22の単位面積に占める第1領域26の面積をS1、第2領域28の面積をS2とする。
図4Aにおける単位面積はコレクタ領域22の一部であるが、単位面積はコレクタ領域22の全体であってもよい。この場合、半導体装置100における第1領域26の総面積をS1、第2領域28の総面積をS2としてよい。
【0099】
第1領域26の注入効率をη1、第2領域28の注入効率をη2(η1>η2)として、平均注入効率ηCを式(2)で定義する。
ηC=(S1×η1+S2×η2)/(S1+S2)・・・式(2)
平均注入効率ηCは、0.1以上、0.4以下である。これにより、半導体装置100の平均注入効率ηCを十分低くして、ターンオフ損失を低減できる。平均注入効率ηCは、0.15以上であってよく、0.2以上であってもよい。平均注入効率ηCは、0.35以下であってよく、0.3以下であってもよい。注入効率は、上述のように全電流密度に対する少数キャリアの電流密度である。本例では、注入効率は全電流密度に対する正孔の電流密度である。導通時にはドリフト領域18に過剰な少数キャリアおよび多数キャリアが蓄積され、伝導度変調が生じる。少数キャリアの電流密度の割合が上記範囲の場合、ドリフト領域18に蓄積されるコレクタ領域22側の少数キャリアの濃度が低くなり、相対的にエミッタ領域18側の少数キャリアの濃度を高くすることができる。これにより、ターンオフ損失が低減できる。平均注入効率ηCが0.5以上であると、ターンオフ損失が比較的に増大する。そのため、平均注入効率ηCは少なくとも0.5以下であってよい。
【0100】
注入効率η1は、0.5以上であってよい。これにより、注入効率η1のばらつきを抑制できる。注入効率η2は、0.3以下であってよい。これにより、平均注入効率ηCを小さくして、半導体装置100のスイッチング損失を低減できる。注入効率η1は、注入効率η2の1.2倍以上であってよく、1.5倍以上であってよく、2倍以上であってよく、3倍以上であってよい。
【0101】
第1領域26の面積S1は、第2領域28の面積S2と同一であってよく、異なっていてもよい。面積S1は、面積S2より小さくてよい。これにより、平均注入効率ηCおよび平均ドーピング濃度DCを小さくして、ターンオフ損失を低減しやすくなる。面積S1は、面積S2の80%以下であってよく、50%以下であってもよい。
【0102】
第1領域26におけるコレクタ領域22のドーピング濃度をD1、第2領域28におけるコレクタ領域22のドーピング濃度をD2(D1>D2)として、平均ドーピング濃度DCを式(3)で定義する。
DC=(S1×D1+S2×D2)/(S1+S2)・・・式(3)
平均ドーピング濃度DCは、1×1015/cm3以上、1×1018/cm3以下であってよい。これにより、コレクタ領域22の平均ドーピング濃度DCを十分低くして、ターンオフ損失を低減できる。平均ドーピング濃度DCは、5×1015/cm3以上であってよく、1×1016/cm3以上であってもよい。平均ドーピング濃度DCは、5×1017/cm3以下であってよく、1×1017/cm3以下であってもよい。
【0103】
ドーピング濃度D1は、1×1016/cm3以上であってよく、1×1017/cm3以上であってよく、1×1018/cm3以上であってもよい。これにより、ドーピング濃度D1のばらつきを抑制できる。ドーピング濃度D1は、1×1021/cm3以下であってよく、1×1020/cm3以下であってよく、1×1019/cm3以下であってもよい。
【0104】
ドーピング濃度D2は、平均ドーピング濃度Dcより低い。ドーピング濃度D2は、1×1017/cm3以下であってよく、5×1016/cm3以下であってもよく、1×1016/cm3以下であってもよく、5×1015/cm3以下であってもよい。これにより、平均ドーピング濃度DCを小さくして、半導体装置100のスイッチング損失を低減できる。ドーピング濃度D2は、半導体基板10のドーパント濃度以上であってよく、ドリフト領域18のドーピング濃度以上であってよい。ドーピング濃度D2は、1×1014/cm3以上であってよく、1×1015/cm3以上であってよい。これにより、コレクタ電極24との接触抵抗を小さくできる。ドーピング濃度D1は、ドーピング濃度D2の2倍以上であってよく、3倍以上であってよく、5倍以上であってよく、10倍以上であってよく、30倍以上であってよく、50倍以上であってよく、100倍以上であってもよい。
【0105】
半導体装置100は、式(2)および式(3)の少なくとも一方を満たしてよい。これにより、特性のばらつきを抑制しつつ、ターンオフ損失を低減できる。半導体装置100は、式(2)および式(3)の両方を満たしてもよい。
【0106】
図4Aに示すように、第1領域26および第2領域28のそれぞれは、Y軸方向に長手を有するストライプ形状であってよい。第1領域26および第2領域28のY軸方向の長さは同一であってよく、異なっていてもよい。本例の第1領域26および第2領域28は、X軸方向に交互に配置されている。第1領域26のX軸方向の幅W1は、第2領域28のX軸方向幅W2と同一であってよく、異なっていてもよい。幅W1は、幅W2より小さくてよい。これにより、平均注入効率η
Cおよび平均ドーピング濃度D
Cを小さくして、ターンオフ損失を低減しやすくなる。幅W1は、幅W2の80%以下であってよく、50%以下であってもよい。
【0107】
図4Bは、第1領域26の面積S1に対する第2領域28の面積S2の特性を示す図である。
図4Bでは、第1領域26のドーピング濃度D
1が、1×10
17/cm
3、8×10
16/cm
3、5×10
16/cm
3、3×10
16/cm
3、または、2×10
16/cm
3の場合の5通りの特性を示している。コレクタ領域22の第1領域26におけるドーピング濃度D
1は、平均ドーピング濃度D
Cより高くてよい。平均ドーピング濃度D
Cは、コレクタ領域22の第2領域28におけるコレクタ領域22のドーピング濃度D
2より高くてよい。コレクタ領域22における第1領域26の面積S1に対する、第2領域28の面積S2の割合をαとする。割合αは下式で与えられる。
α=S
2/S
1・・・式(4)
ここで、割合βを、下式で定義する。
β=(D
1/D
C-1)+D
2/(D
C―D
2)・・・式(5)
割合βは、第1領域26のドーピング濃度がD
1であり、且つ、第2領域28のドーピング濃度がD
2である場合において、第2領域28の面積S2が第1領域26の面積S1の何倍以上あれば、所望の平均ドーピング濃度D
Cが得られるかを見積もることができる指標である。割合αは、割合β以上であってよい。
【0108】
式(5)の右辺の第1項は、第2領域28の面積S2を、第1領域26の面積S1の少なくとも何倍とするか、を示す項である。右辺の第2項は第2領域28のドーピング濃度D2に応じた補正項である。第2領域28のドーピング濃度D2が第1領域26のドーピング濃度D1よりも十分小さい場合は、第2項は実質的に0となる。第2領域28のドーピング濃度D2が第1領域26のドーピング濃度D1に近い値であるほど、狙いの平均ドーピング濃度DCを得るためには、第2領域28の面積S2は大きくしなければならない。
【0109】
図4Bに示すように、第2領域28のドーピング濃度D
2が平均ドーピング濃度D
Cよりも十分小さければ、第1領域26のドーピング濃度D
1に実質的には依存せずに、割合βが安定する。割合βが安定することで、平均ドーピング濃度D
Cの揺らぎやばらつきが抑えられ、オン電圧が安定する。第2領域28のドーピング濃度D
2は、平均ドーピング濃度D
Cの0.8倍以下であってよく、0.6倍以下であってよく、0.4倍以下であってよく、0.2倍以下であってよく、0.1倍以下であってよい。第2領域28のドーピング濃度D
2は、平均ドーピング濃度D
Cに対して実質的に0倍であってよい。例えば第2領域28のドーピング濃度D
2は、平均ドーピング濃度D
Cに対して10
-5倍以上であってよく、10
-4倍以上であってよく、0.001倍以上であってよく、0.01倍以上であってよく、0.1倍以上であってよい。
【0110】
第1領域26のドーピング濃度D1は、平均ドーピング濃度DC以上であってよく、平均ドーピング濃度DCの1.5倍以上であってよく、2倍以上であってよく、3倍以上であってよい。第1領域26のドーピング濃度D1は、平均ドーピング濃度DCの100倍以下であってよく、30倍以下であってよく、10倍以下であってよく、5倍以下であってよい。
【0111】
ここで、平均ドーピング濃度D
Cは、
図4Aに示すように、単位面積における式(3)から求めてよい。第1領域26と第2領域28がストライプ状に分布している場合は、分布方向(
図4AではX軸方向)における第1領域26の単位長さL1を、式(3)のS1と置き換え、第2領域28の単位長さL2を、式(3)のS2と置き換えて計算してよい。
【0112】
図5は、上面視における第1領域26および第2領域28の配置例を示す図である。本例では、第1領域26がY軸方向にも離散的に配置されている点で、
図4Aの例と相違する。他の構造は
図4Aの例と同様である。本例の第1領域26と第2領域28は、点線で示す単位胞(または単位格子)が、コレクタ領域22に規則的に敷き詰められた構成をしている。本例の平均ドーピング濃度D
Cは、式(3)から求めてよい。単位胞における第1領域26の面積をs1とし、単位胞における第2領域28の面積をs2として、式(3)における第1領域26の面積S1をs1に置き換え、第2領域28の面積S2をs2に置き換えて計算してよい。
【0113】
図6は、
図1のa-a断面の一例を示す図である。a-a断面は、トランジスタ部70を通過するXZ面である。
図6においては、X軸方向における第1領域26および第2領域28の配置例を示している。第1領域26および第2領域28以外の構造は、
図1から
図5において説明した例と同様である。
【0114】
本例では、少なくとも一つの第1領域26が、ゲートトレンチ部40と重なる位置に設けられている。全ての第1領域26が、ゲートトレンチ部40と重なる位置に設けられてよい。第1領域26とゲートトレンチ部40とが重なるとは、第1領域26が設けられているX軸方向の範囲内に、少なくとも一つのゲートトレンチ部40が配置されていることを指す。第1領域26は、ダミートレンチ部30とも重なっていてよい。第1領域26をゲートトレンチ部40の下方に配置することで、ゲート構造の下方におけるキャリア密度を増大させて、オン電圧を低減できる。1つの第1領域26の上方に配置されるゲートトレンチ部40の本数は、1つの第2領域28の上方に配置されるゲートトレンチ部40の本数より多くてよい。これにより、トランジスタ部70の全体的なオン電圧を低減できる。1つの第1領域26の上方に配置されるゲートトレンチ部40の本数は、1つの第2領域28の上方に配置されるゲートトレンチ部40と同一であってよく、少なくてもよい。
【0115】
図6に示すように、少なくとも一つのゲートトレンチ部40の下方には、第2領域28が設けられていてもよい。それぞれのダミートレンチ部30の下方には、第2領域28が設けられてよい。全てのダミートレンチ部30の下方に第2領域28が設けられてよく、少なくとも一つのダミートレンチ部30の下方に第1領域26が設けられてもよい。
【0116】
図7は、a-a断面の他の例を示す図である。本例では、半導体基板10の上面21におけるコンタクト領域15の配置が
図6の例と相違する。他の構造は
図6の例と同様である。コンタクト領域15は、半導体基板10の上面21と接して設けられた、ベース領域14よりもドーピング濃度が高いP+型の領域である。
【0117】
本例のメサ部60の上面には、エミッタ領域12およびコンタクト領域15のいずれかが露出している。本例では、第1領域26に対して、第2領域28よりも多くのコンタクト領域15を配置する。これにより、第1領域26から注入された正孔を、コンタクト領域15を介して引き抜きやすくなり、ラッチアップ耐量の低下を抑制できる。
【0118】
図8は、上面視におけるエミッタ領域12およびコンタクト領域15の配置例を示す図である。
図8においては、コンタクト領域15に斜線のハッチングを付している。本例の各メサ部60の上面には、Y軸方向においてエミッタ領域12とコンタクト領域15とが交互に配置されている。半導体基板10の上面21に露出するコンタクト領域15の面積S
Cの、単位面積S
Rに対する割合S
C/S
Rをコンタクト面積比とする。単位面積S
Rは、1つのメサ部60の上面全体の面積であってよい。第1領域26のコンタクト面積比R1は、第2領域28のコンタクト面積比R2よりも高くてよい。各領域のコンタクト面積比とは、上面視において各領域と重なる領域のコンタクト面積比であってよい。これにより、第1領域26から注入した正孔をエミッタ電極52に引き抜く経路を低抵抗化でき、ラッチアップを抑制できる。コンタクト面積比R1は、コンタクト面積比R2の1.2倍以上であってよく、1.5倍以上であってよく、2倍以上であってもよい。
【0119】
本例では、第1領域26における一つのコンタクト領域15のY軸方向の長さが、第2領域28における一つのコンタクト領域15のY軸方向の長さより大きい。エミッタ領域12のY軸方向の長さは、第1領域26および第2領域28で同一であってよく、異なっていてもよい。他の例では、第1領域26における一つのエミッタ領域12のY軸方向の長さが、第2領域28における一つのエミッタ領域12のY軸方向の長さより小さくてもよい。この場合、コンタクト領域15のY軸方向の長さは、第1領域26および第2領域28で同一であってよく、異なっていてもよい。
【0120】
本例では、第1領域26と重なるメサ部60をメサ部60-aとし、第1領域26と重ならないメサ部60をメサ部60-bとする。第1領域26および第2領域28の両方と重なるメサ部60もメサ部60-aとしてよい。メサ部60-aにおけるコンタクト面積比を第1領域26のコンタクト面積比としてもよい。メサ部60-bにおけるコンタクト面積比を第2領域28のコンタクト面積比としてもよい。
【0121】
図9は、a-a断面の他の例を示す図である。本例では、半導体基板10の上面21におけるコンタクト領域15の配置が
図7の例と相違する。他の構造は
図7の例と同様である。本例のコンタクト領域15は、X軸方向においてエミッタ領域12と並んで配置されている。
【0122】
図10は、上面視におけるエミッタ領域12およびコンタクト領域15の配置例を示す図である。
図10においては、コンタクト領域15に斜線のハッチングを付している。本例の各メサ部60の上面には、X軸方向においてエミッタ領域12と隣り合うコンタクト領域15が、Y軸方向においてエミッタ領域12と隣り合うコンタクト領域15と繋がって配置されている。本例においても第1領域26のコンタクト面積比R1は、第2領域28のコンタクト面積比R2よりも高い。またエミッタ領域12と隣り合うコンタクト領域15が配置されることで、第1領域26から注入した正孔をエミッタ電極52に引き抜く経路がエミッタ領域12の隣に出来る為、当該経路を低抵抗化でき、ラッチアップを抑制できる。コンタクト面積比R1は、コンタクト面積比R2の1.2倍以上であってよく、1.5倍以上であってよく、2倍以上であってもよい。コンタクト領域15と、斜線のハッチングのコンタクト領域15-1およびコンタクト領域15-2は、同じドーピング濃度分布を有してよい。
【0123】
半導体装置100は、ゲートトレンチ部40と接するコンタクト領域15-2と、ダミートレンチ部30と接するコンタクト領域15-1を有してよい。本例では、それぞれのダミートレンチ部30に対して、X軸方向の両側にコンタクト領域15-1が配置されている。
【0124】
第1領域26に設けられるコンタクト領域15-2の面積比(第1領域26の面積に対するコンタクト領域15-2の面積)は、第2領域28に設けられるコンタクト領域15-2の面積比よりも高い。本例では、第1領域26の少なくとも一つのゲートトレンチ部40に対して一つのコンタクト領域15-2が設けられ、第2領域28にはコンタクト領域15-2が設けられていない。
【0125】
図11は、
図1のb-b断面の一例を示す図である。b-b断面は、エッジ終端構造部90と、活性部160(トランジスタ部70)の一部を通過するXZ面である。エッジ終端構造部90は、1つ以上のガードリング92を備えてよい。エッジ終端構造部90は、1つ以上のフィールドプレート93を備えてよい。ガードリング92は、半導体基板10の上面21に接して設けられたP+型の領域である。ガードリング92は、活性部160を囲んでいる。フィールドプレート93は、半導体基板10の上面21の上方に配置された金属部材である。フィールドプレート93と半導体基板10との間には、層間絶縁膜38が設けられてよい。フィールドプレート93とガードリング92は、電気的に接続されてよく、接続されていなくてもよい。本例では、半導体基板10の上面に設けられたポリシリコンの配線94を介してフィールドプレート93とガードリング92とが接続されている。
【0126】
ガードリング92およびフィールドプレート93よりも外側には、チャネルストッパ95と、電極96が設けられてよい。チャネルストッパ95は、活性部160から延びる空乏層が、半導体基板10の端辺162に達するのを防ぐ。チャネルストッパ95は、ドリフト領域18よりも高濃度のP型またはN型の領域である。電極96は、チャネルストッパ95と接続されている。電極96には、コレクタ電極24と同電位が印加されてよい。
【0127】
活性部160とエッジ終端構造部90との間には、外周ゲート配線130が設けられている。外周ゲート配線130と半導体基板10との間には、ポリシリコンのゲートランナー132が設けられてよい。外周ゲート配線130およびゲートランナー132の下方には、ウェル領域11が設けられている。ウェル領域11は、エミッタ電極52と接続してよい。ウェル領域11は、ベース領域14と接していてよい。
【0128】
活性部160には第1領域26および第2領域28の両方が設けられている。エッジ終端構造部90には第2領域28が設けられ、第1領域26が設けられなくてよい。エッジ終端構造部90の全体に第2領域28を設けることで、エッジ終端構造部90に対する正孔の注入効率を小さくして、エッジ終端構造部90の動的な耐圧を向上できる。これにより、半導体装置100の過電圧耐量(クランプ耐量)を向上できる。
【0129】
エッジ終端構造部90の第2領域28-1は、ウェル領域11の下方まで延伸していてよい。第2領域28-1は、ウェル領域11の全体と重なっていてよい。つまりウェル領域11と重なる位置には第2領域28-1が設けられ、第1領域26が設けられなくてよい。第2領域28-1は、エミッタ電極52と重なる位置まで延伸していてよい。第2領域28-1は、活性部160まで延伸していてよい。本例では、ウェル領域11の端辺162とは逆側の端部を、活性部160の端部とする。第2領域28-1を延伸させることで、エッジ終端構造部90における耐圧を向上しやすくなる。
【0130】
図12は、活性部160における第2領域28-1の配置例を示す図である。
図12は、第2領域28-1の活性部160側の端部の近傍を拡大している。本例の第2領域28-1は、活性部160のエミッタ領域12-1と重なる位置まで延伸して設けられている。本例のエミッタ領域12-1は、X軸方向においてエッジ終端構造部90に最も近いエミッタ領域12である。第2領域28-1のX軸方向の端部が、エミッタ領域12-1と重なってよい。第2領域28-1のX軸方向の端部は、エミッタ領域12-1が設けられたメサ部60のコンタクトホール54と重なる位置に設けられてもよい。当該メサ部60の下方に、第1領域26と第2領域28-1との境界が設けられてよい。
図11および
図12のような構成により、エッジ終端構造部90の耐圧を向上しつつ、トランジスタ部70の特性ばらつきを抑制し、ターンオフ損失を低減できる。
【0131】
図13は、
図3のc-c線におけるネット・ドーピング濃度分布の一例を示す図である。c-c線は、第2領域28、バッファ領域20およびドリフト領域18の一部を通過する。バッファ領域20のドーピング濃度は、ドリフト領域18のドーピング濃度D
dよりも高い。本例のバッファ領域20は、深さ方向の異なる位置に配置された1つ以上のドーピング濃度ピーク27を有する。
【0132】
第2領域28におけるコレクタ領域のドーピング濃度D
2は、ドリフト領域18のドーピング濃度D
dよりも高い。第1領域26におけるコレクタ領域のドーピング濃度D
1も、ドリフト領域18のドーピング濃度D
dよりも高くてよい。
図13においては、第1領域26のドーピング濃度を一点鎖線で示している。ドーピング濃度D
1は、ドーピング濃度D
dの10倍以上であってよく、50倍以上であってよく、100倍以上であってもよい。これにより、ドーピング濃度D
1のばらつきを抑制できる。
【0133】
第2領域28とバッファ領域20とのPN接合部の深さ位置をZ
1とする。深さ位置Z
1におけるドナー濃度をN
D1とする。ドナー濃度は、バッファ領域20を形成するために注入されたリンまたは水素等のドナーの濃度である。
図13においては、深さ位置Z
1の近傍におけるドナーおよびアクセプタの濃度を破線で示している。
【0134】
第2領域28におけるコレクタ領域のドーピング濃度D2は、深さ位置Z1におけるドナー濃度ND1よりも高い。これにより、低濃度の第2領域28を確実にP型にできる。ドーピング濃度D2は、ドナー濃度ND1の5倍以上であってよく、10倍以上であってもよい。ドーピング濃度D2は、ドーピング濃度ピーク27のドーピング濃度より高くてもよい。バッファ領域20が複数のドーピング濃度ピーク27を有する場合、ドーピング濃度D2は、複数のドーピング濃度ピーク27のそれぞれのドーピング濃度より高くてもよい。
【0135】
図14は、第1領域26および第2領域28の他の例を示す図である。
図1から
図13の例では、第1領域26のドーピング濃度D
1および第2領域28のドーピング濃度D
2により注入効率を調整する例を説明した。本例では、第1領域26および第2領域28の注入効率を調整する方法が異なる。第1領域26および第2領域28の注入効率を調整する方法以外は、
図1から
図13において説明したいずれかの例と同様である。例えば上面視において第1領域26および第2領域28が設けられる位置および範囲は、
図1から
図13において説明したいずれかの例と同様である。
【0136】
第1領域26におけるコレクタ領域22の厚みをT1とする。第2領域28におけるコレクタ領域22の厚みをT2とする。厚みは、半導体基板10の深さ方向(Z軸方向)における長さである。本例では、厚みT1が厚みT2よりも大きい。式(1)に示すように、厚みT1を厚みT2より大きくすることで、第1領域26の注入効率を、第2領域28の注入効率より高くできる。厚みT1は、厚みT2の2倍以上であってよく、4倍以上であってよく、10倍以上であってもよい。厚みT1は、厚みT2の20倍以下であってよい。厚みT1は、0.3μm以上であってよく、0.4μm以上であってよく、0.5μm以上であってもよい。厚みT2は、0.2μm以下であってよく、0.15μm以下であってよく、0.1μm以下であってもよい。
【0137】
第1領域26におけるドーピング濃度D
1および第2領域28におけるドーピング濃度D
2は、
図1から
図13において説明した例と同様にD
1>D
2であってよく、同一であってもよい。
【0138】
また、第2領域28のP型不純物の濃度が、第1領域26のP型不純物の濃度より高くてもよい。第1領域26をレーザーアニールにより局所的にアニールすることで、第1領域26に注入されたP型の不純物を活性化してよい。第2領域28はレーザーアニールされなくてもよい。第2領域28に対するP型不純物のドーズ量(ions/cm2)は、第1領域26に対するP型不純物のドーズ量より多くてよい。第2領域28に対するドーズ量を多くして、且つ、第2領域28をアニールしないことで、第2領域28とコレクタ電極24との接触抵抗を低くしつつ、第2領域28の厚みT2を小さくできる。第2領域28のP型不純物の濃度は、第1領域26のP型不純物の濃度の2倍以上であってよく、5倍以上であってよく、10倍以上であってもよい。第2領域28におけるドーピング濃度D2が、第1領域26におけるドーピング濃度D1より高くてもよい。
【0139】
上面視における2つの第1領域26の間の距離(本例では第2領域28の幅W2)は、ドリフト領域18における少数キャリアである正孔の拡散長以下であってよい。拡散長Lpは、キャリアが消滅するまでに移動する距離であり、下式で与えられる。
Lp=√(DP×τP)
ただしDPは正孔の拡散係数であり、τPは正孔のライフタイムの平均値である。これにより、第2領域28から注入される正孔が、半導体装置100の動作に与える影響を抑制できる。2つの第1領域26の間の距離は、拡散長LPの80%以下であってよく、50%以下であってもよい。
【0140】
図15は、コレクタ領域22に注入するP型不純物のドーズ量の設定値と、コレクタ領域22のドーピング濃度のばらつきとの関係を示す図である。コレクタ領域22のドーピング濃度は、P型不純物を注入してアニールした後の値である。ドーピング濃度のばらつきは、複数の半導体装置100におけるドーピング濃度の標準偏差であってよい。
図15の例ではドーピング濃度のばらつきを示しているが、半導体装置100のオン電圧も同様にばらつく。
【0141】
一定のドーズ量を設定した場合でも、ドーズ量のばらつき、アニール条件のばらつき等により、ドーピング濃度にはばらつきが生じる。ドーズ量の設定値が小さくなると、ばらつきの占める割合が大きくなる。このため
図15に示すように、ドーズ量の設定値が小さいほど、ドーピング濃度のばらつきは大きくなる傾向がある。
図15の例では、ドーズ量の設定値が1×10
12/cm
2を超えると、ドーピング濃度のばらつきはほぼ一定となる。
【0142】
第1領域26に対するドーズ量は、1×1012/cm2以上であってよい。第1領域26のドーピング濃度のピーク波形を、深さ方向における半値全幅の範囲で積分した値を、第1領域26のドーズ量として用いてよい。第1領域26に対するドーズ量は、1×1013/cm2以上であってよく、1×1014/cm2以上であってもよい。
【0143】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【0144】
特許請求の範囲、明細書、および図面中において示した装置、システム、プログラム、および方法における動作、手順、ステップ、および段階等の各処理の実行順序は、特段「より前に」、「先立って」等と明示しておらず、また、前の処理の出力を後の処理で用いるのでない限り、任意の順序で実現しうることに留意すべきである。特許請求の範囲、明細書、および図面中の動作フローに関して、便宜上「まず、」、「次に、」等を用いて説明したとしても、この順で実施することが必須であることを意味するものではない。
【符号の説明】
【0145】
10・・・半導体基板、11・・・ウェル領域、12・・・エミッタ領域、14・・・ベース領域、15・・・コンタクト領域、16・・・蓄積領域、18・・・ドリフト領域、20・・・バッファ領域、21・・・上面、22・・・コレクタ領域、23・・・下面、24・・・コレクタ電極、26・・・第1領域、27・・・ドーピング濃度ピーク、28・・・第2領域、29・・・直線部分、30・・・ダミートレンチ部、31・・・先端部、32・・・ダミー絶縁膜、34・・・ダミー導電部、38・・・層間絶縁膜、39・・・直線部分、40・・・ゲートトレンチ部、41・・・先端部、42・・・ゲート絶縁膜、44・・・ゲート導電部、52・・・エミッタ電極、54・・・コンタクトホール、60、61・・・メサ部、70・・・トランジスタ部、80・・・ダイオード部、81・・・延長領域、82・・・カソード領域、90・・・エッジ終端構造部、92・・・ガードリング、93・・・フィールドプレート、94・・・配線、95・・・チャネルストッパ、96・・・電極、100・・・半導体装置、130・・・外周ゲート配線、131・・・活性側ゲート配線、132・・・ゲートランナー、160・・・活性部、162・・・端辺、164・・・ゲートパッド
【手続補正書】
【提出日】2023-03-10
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0058
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0058】
ウェル領域11は、活性側ゲート配線131と重なって設けられている。ウェル領域11は、活性側ゲート配線131と重ならない範囲にも、所定の幅で延伸して設けられている。本例のウェル領域11は、コンタクトホール54のY軸方向の端から、活性側ゲート配線131側に離れて設けられている。ウェル領域11は、ベース領域14よりもドーピング濃度の高い第2導電型の領域である。本例のベース領域14はP型であり、ウェル領域11はP+型である。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0077
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0077】
トランジスタ部70のメサ部60には、N+型のエミッタ領域12およびP型のベース領域14が、半導体基板10の上面21側から順番に設けられている。ベース領域14の下方にはドリフト領域18が設けられている。メサ部60には、N+型の蓄積領域16が設けられてもよい。蓄積領域16は、ベース領域14とドリフト領域18との間に配置される。蓄積領域16は、ドリフト領域18よりもドーピング濃度が高いN+型の領域である。ドリフト領域18とベース領域14との間に高濃度の蓄積領域16を設けることで、キャリア注入促進効果(IE効果)を高めて、オン電圧を低減できる。蓄積領域16は、各メサ部60におけるベース領域14の下面全体を覆うように設けられてよい。蓄積領域16は、ダイオード部80の各メサ部61にも設けられてよく、設けられていなくてもよい。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0080
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0080】
ダイオード部80のメサ部61には、半導体基板10の上面21に接して、P型のベース領域14が設けられている。ベース領域14の下方には、ドリフト領域18が設けられている。ダイオード部80のベース領域14を、アノード領域と称する場合がある。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0099
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0099】
第1領域26の注入効率をη1、第2領域28の注入効率をη2(η1>η2)として、平均注入効率ηCを式(2)で定義する。
ηC=(S1×η1+S2×η2)/(S1+S2)・・・式(2)
平均注入効率ηCは、0.1以上、0.4以下である。これにより、半導体装置100の平均注入効率ηCを十分低くして、ターンオフ損失を低減できる。平均注入効率ηCは、0.15以上であってよく、0.2以上であってもよい。平均注入効率ηCは、0.35以下であってよく、0.3以下であってもよい。注入効率は、上述のように全電流密度に対する少数キャリアの電流密度である。本例では、注入効率は全電流密度に対する正孔の電流密度である。導通時にはドリフト領域18に過剰な少数キャリアおよび多数キャリアが蓄積され、伝導度変調が生じる。少数キャリアの電流密度の割合が上記範囲の場合、ドリフト領域18に蓄積されるコレクタ領域22側の少数キャリアの濃度が低くなり、相対的にエミッタ領域12側の少数キャリアの濃度を高くすることができる。これにより、ターンオフ損失が低減できる。平均注入効率ηCが0.5以上であると、ターンオフ損失が比較的に増大する。そのため、平均注入効率ηCは少なくとも0.5以下であってよい。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0104
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0104】
ドーピング濃度D2は、平均ドーピング濃度Dcより低い。ドーピング濃度D2は、1×1017/cm3以下であってよく、5×1016/cm3以下であってもよく、1×1016/cm3以下であってもよく、5×1015/cm3以下であってもよい。これにより、平均ドーピング濃度DCを小さくして、半導体装置100のスイッチング損失を低減できる。ドーピング濃度D2は、半導体基板10のドーパントの濃度以上であってよく、ドリフト領域18のドーピング濃度以上であってよい。ドーピング濃度D2は、1×1014/cm3以上であってよく、1×1015/cm3以上であってよい。これにより、コレクタ電極24との接触抵抗を小さくできる。ドーピング濃度D1は、ドーピング濃度D2の2倍以上であってよく、3倍以上であってよく、5倍以上であってよく、10倍以上であってよく、30倍以上であってよく、50倍以上であってよく、100倍以上であってもよい。
【手続補正6】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0107
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0107】
図4Bは、第1領域26の面積S1に対する第2領域28の面積S2の特性を示す図である。
図4Bでは、第1領域26のドーピング濃度D
1が、1×10
17/cm
3、8×10
16/cm
3、5×10
16/cm
3、3×10
16/cm
3、または、2×10
16/cm
3の場合の5通りの特性を示している。コレクタ領域22の第1領域26におけるドーピング濃度D
1は、平均ドーピング濃度D
Cより高くてよい。平均ドーピング濃度D
Cは
、第2領域28におけるコレクタ領域22のドーピング濃度D
2より高くてよい。コレクタ領域22における第1領域26の面積S1に対する、第2領域28の面積S2の割合をαとする。割合αは下式で与えられる。
α=S
2/S
1・・・式(4)
ここで、割合βを、下式で定義する。
β=(D
1/D
C-1)+D
2/(D
C―D
2)・・・式(5)
割合βは、第1領域26のドーピング濃度がD
1であり、且つ、第2領域28のドーピング濃度がD
2である場合において、第2領域28の面積S2が第1領域26の面積S1の何倍以上あれば、所望の平均ドーピング濃度D
Cが得られるかを見積もることができる指標である。割合αは、割合β以上であってよい。