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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023170205
(43)【公開日】2023-12-01
(54)【発明の名称】レベリングバルブ
(51)【国際特許分類】
   B61F 5/10 20060101AFI20231124BHJP
   F16K 11/07 20060101ALI20231124BHJP
【FI】
B61F5/10 D
F16K11/07 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022081770
(22)【出願日】2022-05-18
(71)【出願人】
【識別番号】000000929
【氏名又は名称】カヤバ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】弁理士法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高下 拓哉
【テーマコード(参考)】
3H067
【Fターム(参考)】
3H067AA16
3H067BB02
3H067BB12
3H067CC22
3H067CC33
3H067DD04
3H067DD12
3H067ED02
3H067FF11
3H067GG03
(57)【要約】
【課題】ピストンとハウジングとの接触面の摩耗を抑制できるレベリングバルブを提供する。
【解決手段】レベリングバルブ100は、ケース10内に形成された収容孔11内に収容され、レバー4の回転に伴って軸方向に移動するピストン20と、一端がピストン20に形成された貫通孔22に挿通され、ピストン20とともに軸方向に移動するステム50と、ステム50が中立位置から一方向へ移動することによって空気ばね3とコンプレッサ7とを連通させ、ステム50が中立位置から他方向へ移動することによって空気ばね3と排気通路8とを連通させる給排弁80と、を備え、ピストン20は、軸方向及び径方向に移動可能にステム50に嵌合されている。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄道車両の台車に対する車体の相対変位に応じて回転するレバーの回転方向に応じて、前記台車と前記車体の間に設けられる空気ばねを圧縮空気源又は排気通路とに選択的に連通させて前記空気ばねの高さを調整するレベリングバルブであって、
ハウジングに形成された収容孔内に収容され、前記レバーの回転に伴って前記収容孔の軸方向に移動するピストンと、
一端が前記ピストンに形成された貫通孔に挿通され、前記ピストンとともに前記軸方向に移動するステムと、
前記ステムが中立位置から一方向へ移動することによって前記空気ばねと前記圧縮空気源とを連通させ、前記ステムが前記中立位置から他方向へ移動することによって前記空気ばねと前記排気通路とを連通させる給排弁と、を備え、
前記ピストンは、軸方向及び径方向に移動可能に前記ステムに嵌合されていることを特徴とするレベリングバルブ。
【請求項2】
請求項1のレベリングバルブであって、
前記ステムは、
先端に前記給排弁の一部を構成する弁部が設けられた本体部と、
前記本体部より小径で、かつ、前記ピストンの前記貫通孔よりも小径に形成され、前記ピストンの前記貫通孔を挿通する挿通部と、
前記本体部と前記挿通部との境界部分によって形成され、前記ピストンの前記貫通孔よりも大径の第1段部と、を有し、
前記ピストンは、前記第1段部と前記挿通部に固定された係止部材との間において移動可能であることを特徴とするレベリングバルブ。
【請求項3】
請求項2のレベリングバルブであって、
前記ステムは、
前記挿通部の前記本体部とは反対側の端部に形成され、前記挿通部より小径の小径部と、
前記小径部の外周面に形成され、ナットが締結されるおねじ部と、
前記挿通部と前記小径部との境界部分によって形成された第2段部と、をさらに有し、
前記係止部材は、前記小径部が挿通され、前記ピストンの前記貫通孔の内径より大径のワッシャであり、
前記ワッシャは、前記ナットを前記おねじ部に締結することにより、前記ナットと前記第2段部の間に固定され、
前記第1段部と前記第2段部との間の長さは、前記ピストンの前記貫通孔の軸方向における長さより長いことを特徴とするレベリングバルブ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レベリングバルブに関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、鉄道車両の空気ばねに圧縮空気を供給し、あるいは空気ばねから空気を放出することで、空気ばねによる鉄道車両の支持位置を一定に保つレベリングバルブが記載されている。
【0003】
特許文献1に記載のレベリングバルブでは、車体の荷重変化により空気ばねによる車体の支持高さが変化すると、この変化がリンクを介してレバーを揺動させ、レバーの先端に連結されたピストンを介してステムが軸方向に移動する。そして、このステムの移動に応じて給排弁が開閉されることで、空気ばねに接続された空気ばね通路に、コンプレッサに接続された供給通路と大気に解放された排気通路のいずれかが選択的に接続される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2018-119641号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載のレベリングバルブでは、ピストンがナットによってステムに固定されている。さらに、特許文献1に記載のレベリングバルブでは、ステムの一部が弁ケースに形成された挿入孔に挿入されており、ステムは、この挿入孔にガイドされながら軸方向に移動する。
【0006】
特許文献1に記載のレベリングバルブのように、ナットを締め付けることによってピストンをステムに固定する場合には、ステムの中心軸とピストンの中心軸とがずれた状態で固定されてしまうことがある。このようにステムの中心軸とピストンの中心軸とがずれた状態で、ステムとピストンが軸方向に移動すると、ステムが弁ケースの挿入孔にガイドされているため、ピストンがハウジングに接触した状態で往復動するおそれがある。ピストンがハウジングに接触した状態で往復動を繰り返していると、ピストンとハウジングとの接触面が摩耗してしまい、レベリングバルブの信頼性が低下するおそれがある。
【0007】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、ピストンとハウジングとの接触面の摩耗を抑制できるレベリングバルブを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、鉄道車両の台車に対する車体の相対変位に応じて回転するレバーの回転方向に応じて、台車と車体の間に設けられる空気ばねを圧縮空気源又は排気通路とに選択的に連通させて空気ばねの高さを調整するレベリングバルブであって、ハウジングに形成された収容孔内に収容され、レバーの回転に伴って収容孔の軸方向に移動するピストンと、一端がピストンに形成された貫通孔に挿通され、ピストンとともに軸方向に移動するステムと、ステムが中立位置から一方向へ移動することによって空気ばねと圧縮空気源とを連通させ、ステムが中立位置から他方向へ移動することによって空気ばねと排気通路とを連通させる給排弁と、を備え、ピストンは、軸方向及び径方向に移動可能にステムに嵌合されていることを特徴とする。
【0009】
この発明では、ピストンは、軸方向及びの径方向に移動可能にステムに嵌合されている、言い換えると、ピストンがステムに固定されていないので、ピストンの外周面と収容孔の内周面が接触しても、ピストンが接触部分から離れる方向に移動することができるので、ピストンの外周面が収容孔の内周面に押し付けられた状態で往復動することを抑制できる。これにより、ピストンとハウジングとの接触面の摩耗を抑制できる。
【0010】
また、本発明は、ステムが、先端に給排弁の一部を構成する弁部が設けられた本体部と、本体部より小径で、かつ、ピストンの貫通孔よりも小径に形成され、ピストンの貫通孔を挿通する挿通部と、本体部と挿通部との境界部分によって形成され、ピストンの貫通孔よりも大径の第1段部と、を有し、ピストンは、第1段部と挿通部に固定された係止部材との間において移動可能であることを特徴とする。
【0011】
この発明では、新たに部品を追加せずに、ピストンを、軸方向及び径方向に移動可能にステムに嵌合させることができるので、コストの上昇を抑制できる。
【0012】
また、本発明は、ステムが、挿通部の本体部とは反対側の端部に形成され、挿通部より小径の小径部と、小径部の外周面に形成され、ナットが締結されるおねじ部と、挿通部と小径部との境界部分によって形成された第2段部と、をさらに有し、係止部材は、小径部が挿通され、ピストンの貫通孔より大径のワッシャであり、ワッシャは、ナットをおねじ部に締結することにより、ナットと第2段部の間に固定され、第1段部と第2段部との間の長さは、ピストンの貫通孔の軸方向における長さより長いことを特徴とする。
【0013】
この発明では、係止部材は、ナットと第2段部とによって軸方向に位置決めされる。これにより、ピストンの軸方向における移動許容量を精度良く設定することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、ピストンとハウジングとの接触面の摩耗を抑制できるレベリングバルブを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、本発明の実施形態に係るレベリングバルブの取付図である。
図2図2は、本発明の実施形態に係るレベリングバルブの軸方向の断面図である。
図3図3は、本発明の実施形態に係るレベリングバルブの径方向の断面図である。
図4図4は、本発明の実施形態に係るレベリングバルブにおけるピストン近傍の拡大図である。
図5図5は、本発明の実施形態に係るレベリングバルブにおける給排弁近傍の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
【0017】
本発明の実施形態に係るレベリングバルブ100について説明する。まず、図1及び図2を参照して、レベリングバルブ100の概要について説明する。
【0018】
レベリングバルブ100は、鉄道車両の車体1と台車2の間に設けられる空気ばね3の高さを調整して、車体1を一定の高さに維持する機能を有するものである。
【0019】
図1に示すように、レベリングバルブ100は、車体1と台車2の間に亘って装着される。具体的には、レベリングバルブ100は、車体1に取り付けられ、レバー4と連結棒5を介して台車2に連結される。車体1の荷重変化により空気ばね3が伸縮して車体1の高さが変化すると、この変化が連結棒5及びレバー4を介してレベリングバルブ100に伝えられる。
【0020】
車体荷重が増加して空気ばね3が撓んだ場合には、レバー4が中立位置から上方に押し上げられ(図1中矢印A方向への回転)、それに伴ってレベリングバルブ100のピストン20(図2参照)が移動することによって後述する給気弁80Aが開弁し、空気ばね3に連通する空気ばね通路6と圧縮空気源としてのコンプレッサ7に連通する供給通路9とが連通する。これにより、コンプレッサ7からの圧縮空気が空気ばね3へ供給される。空気ばね3が一定の高さに復元すると、レバー4が中立位置に戻ってレベリングバルブ100の給気弁80Aが閉弁し、圧縮空気の供給が遮断される。
【0021】
一方、車体荷重が減少して空気ばね3が伸びた場合には、レバー4が中立位置から下方に引き下げられ(図1中矢印B方向への回転)、それに伴ってレベリングバルブ100の後述する排気弁80Bが開弁し、空気ばね通路6と排気通路8が連通する。排気通路8は大気に連通しているため、空気ばね3の圧縮空気は大気へ排出される。空気ばね3が一定の高さに復元すると、レバー4が中立位置に戻ってレベリングバルブ100の排気弁80Bが閉弁し、圧縮空気の排出が遮断される。
【0022】
このように、レベリングバルブ100は、台車2に対する車体1の相対変位に応じて回転するレバー4の回転方向に応じて空気ばね3をコンプレッサ7又は排気通路8に選択的に連通させることによって、車体1と台車2の間に生じた相対変位を自動的に調節して車体1を一定の高さに維持する。
【0023】
次に、図2及び図3を参照して、レベリングバルブ100の具体的な構成について説明する。図2は、レベリングバルブ100の軸方向の断面図であり、図3は、レベリングバルブ100の径方向の断面図である。なお、本実施形態の「軸方向」とは、ピストン20及びステム50における中心軸の方向を意味し、「径方向」とは、ピストン20及びステム50における半径方向を意味する。
【0024】
レベリングバルブ100は、車体1に固定され内部を貫通するように形成された収容孔11を有するケース10と、ケース10の一方の側面に取り付けられ収容孔11の一方の開口を閉塞する第1キャップ部材12と、ケース10の他方の側面に取り付けられる第2キャップ部材13と、収容孔11の他方の開口を閉塞する円筒状のバルブケース40と、を備える。
【0025】
第1キャップ部材12は、収容孔11に挿入される円柱状の挿入部12aと、挿入部12aに連続して形成され挿入部12aより大径のフランジ部12bと、を備える。第1キャップ部材12は、図示しないボルトがフランジ部12bに設けられた貫通孔(図示せず)を挿通してケース10に形成されたボルト穴に締結されることで、ケース10に取り付けられる。
【0026】
バルブケース40の外周面の一部にはおねじ部40bが形成される。バルブケース40は、おねじ部40bを境にして、第1円筒部40aと第2円筒部40cとを備える。第1円筒部40a及びおねじ部40bは、収容孔11内に挿入される。おねじ部40bは、収容孔11の開口部近傍に形成されためねじ部11aに螺合される。これにより、バルブケース40は、ケース10に固定される。
【0027】
第2キャップ部材13は、バルブケース40の第2円筒部40cの外周面を覆うとともに、おねじ部40bの第2円筒部40c側の側面を覆うようにしてケース10に固定される。これにより、バルブケース40がケース10から外れることが防止される。第2キャップ部材13には、ケース10に形成された流路10bとバルブケース40の内部と外部とを接続する貫通孔46とを接続する流路13aが形成される。
【0028】
図3に示すように、ケース10には、収容孔11に対して径方向に開口する凹部16が形成される。凹部16は、収容孔11と接続するように形成される。
【0029】
レベリングバルブ100は、凹部16を覆ってケース10に取り付けられるカバー部材70をさらに備える。カバー部材70がケース10に取り付けられることにより、後述するロータ30を収容する収容空間17が形成される。
【0030】
カバー部材70には、収容空間17と外部とを連通する連通孔72が形成される。連通孔72には、外部からの異物の侵入を防止するためのフィルタ73が設けられる。
【0031】
レベリングバルブ100では、ケース10、第1キャップ部材12、第2キャップ部材13、カバー部材70及びバルブケース40によってハウジングが構成される。
【0032】
図2及び図3に示すように、レベリングバルブ100は、ケース10の収容孔11内に収容されレバー4の回転に伴って軸方向に移動するピストン20と、レバー4の回転をピストン20に伝達するためのロータ30と、一端がピストン20に形成された貫通孔22に挿通され、ピストン20とともに軸方向に移動するステム50と、ステム50が中立位置から一方向へ移動することによって空気ばね3とコンプレッサ7とを連通させ、ステム50が中立位置から他方向へ移動することによって空気ばね3と排気通路8とを連通させる給排弁80と、をさらに備える。
【0033】
ピストン20は、ステム50によってケース10の収容孔11内に移動可能に支持される。ピストン20の外周面と収容孔11の内周面との間には若干の隙間が設けられる。これにより、ピストン20の外周面は収容孔11の内周面を摺動しないので、摩擦抵抗が生じることがない。ピストン20の外周面の一部には、図3に示すように、断面形状が半月状の溝21が形成される。
【0034】
図3に示すように、ロータ30は、カバー部材70に形成された支持孔71に軸受14、15を介して回転可能に支持される。ロータ30は、軸受14、15に支持される円筒状の本体部31と、本体部31の一方の端部から突出するように形成され、本体部31の外径よりも小さな二面幅を有する四角柱状のボス部32と、本体部31の他方の端部に設けられたフランジ部33と、フランジ部33の外周面から径方向外側に向かって突出するように形成されたアーム部34と、を有する。ボス部32は、レバー4に形成された嵌合穴4aに嵌合される(図1参照)。図2及び図3に示すように、アーム部34には、ピン35が圧入される。ピン35はスリーブ36内に挿入され、スリーブ36とともにピストン20の溝21内に移動可能に挿入される。これにより、レバー4の回転に伴ってボス部32が回転すると、アーム部34に圧入されたピン35が図2に示す矢印の方向に回転する。ピン35はピストン20の溝21内に挿入されているので、ピン35の回転に伴ってピストン20は収容孔11内を軸方向に移動する。
【0035】
図2に示すように、ステム50は、ピストン20の移動方向(収容孔11の軸方向)に延びる棒状に形成される。図2及び図4に示すように、ステム50は、先端に給排弁80の一部を構成する弁部53が設けられた本体部50Aと、本体部50Aより小径で、かつ、ピストン20の貫通孔22よりも小径に形成され、ピストン20に形成された貫通孔22を挿通する挿通部50Bと、本体部50Aと挿通部50Bとの境界部分によって形成され、ピストン20の貫通孔22よりも大径の第1段部としての段部50Cと、挿通部50Bの本体部50Aとは反対側の端部に形成され、挿通部50Bより小径の小径部50Dと、小径部50Dの外周面に形成され、ナット60が締結されるおねじ部50Eと、挿通部50Bと小径部50Dとの境界部分によって形成された第2段部としての段部50Fと、を有する。
【0036】
図2及び図4に示すように、ステム50の本体部50Aには、軸方向に延びる軸方向孔51が設けられる。本体部50Aの挿通部50B側には、軸方向孔51と収容孔11とを連通する貫通孔52が径方向に複数設けられる。軸方向孔51は、貫通孔52、収容孔11、収容空間17、及び連通孔72を通じて外部に連通する。軸方向孔51、貫通孔52、収容孔11、収容空間17、及び連通孔72にて、排気通路8が構成される。
【0037】
図2に示すように、ステム50の本体部50Aの外周面には、環状溝54が形成される。ステム50の先端側には、ステム50のピストン20側よりも小径で環状溝54よりも大径の弁部53が、環状溝54に隣接するように形成される。弁部53については、後で詳しく説明する。
【0038】
ステム50は、挿通部50Bをピストン20に形成された貫通孔22に挿通した状態で、ナット60をおねじ部50Eに締結することにより、ピストン20と連結される。また、図2及び図4に示すように、挿通部50Bとナット60との間には、外径がピストン20の貫通孔22の内径より大径で、小径部50Dに挿通されたワッシャ61が設けられる。ワッシャ61は、ナット60をおねじ部50Eに締結することにより、ナット60と段部50F(図4参照)の間に固定される。ワッシャ61は、ピストン20がステム50から抜け落ちることを防止する係止部材として機能する。
【0039】
レベリングバルブ100は、ステム50の先端外周に対向して配置され径方向に移動可能な環状のリング部材81をさらに備える。リング部材81は、一方の端面に弁座部81aが形成され、バルブケース40内に配置される。
【0040】
ここで、図2及び図5を参照して、バルブケース40と、バルブケース40の内部の構造について説明する。
【0041】
バルブケース40は、ステム50の先端側が挿入される第1貫通孔41と、第1貫通孔41より大径に形成される第2貫通孔42と、第1貫通孔41と第2貫通孔42との境界を形成する段部43と、を備える。
【0042】
第1貫通孔41のピストン20側の先端部近傍には、第1貫通孔41の内周面とステム50の外周面との間をシールするOリング44が設けられる。
【0043】
第2貫通孔42内には、リング部材81と、内部空間86aを有する円筒状のカラー部材86と、第2貫通孔42の開口部を閉塞するプラグ84と、が設けられる。プラグ84は、リング部材81をカラー部材86を介して段部43に押し当てるようにして、第2貫通孔42内に係合された止め輪87によって係止される。
【0044】
カラー部材86の内部空間86aには、リング部材81の弁座部81aに離着座する弁体82と、弁体82を弁座部81aに向けて付勢するスプリング83と、プラグ84に形成された弁座部84aに離着座し、スプリング83によって弁座部84aに付勢されるチェック弁体85と、が設けられる。
【0045】
リング部材81の外周面と第2貫通孔42の内周面との間には、隙間が設けられるとともに、隙間からの圧縮空気の漏れを防止するためにOリング90が設けられる。このOリング90は弾性を有するので、リング部材81は第2貫通孔42内において径方向に移動することができる。
【0046】
図5に示すように、リング部材81は、一方の端面に形成された弁座部81aと、一端側の内周面から径方向内側に突出するように形成された環状の突出部81bと、を備える。ステム50の先端部には、突出部81bの内周面とステム50の弁部53の外周面との隙間によって、給排弁80の開閉に伴う圧縮空気の流れを絞る微小な環状隙間Sが形成される(図5参照)。環状隙間Sは、環状溝54、バルブケース40に形成された貫通孔45、及びケース10に形成された通路10a、ケース10の内周面と第1キャップ部材12の挿入部12aとの間に形成された環状流路10cと、ケース10に形成され環状流路10cに接続する貫通流路10dと、を通じて空気ばね3に連通する。環状隙間S、環状溝54、貫通孔45、通路10a、環状流路10c及び貫通流路10dにて、空気ばね通路6が構成される。
【0047】
図2に示すように、プラグ84の内部には、流路84bが形成される。流路84bは、バルブケース40の貫通孔46、第2キャップ部材13の流路13a及びケース10の流路10bを通じてコンプレッサ7に連通する。
【0048】
チェック弁体85は、プラグ84の弁座部84aに離着座する。コンプレッサ7側(流路84b)の圧力がチェック弁体85の下流側(内部空間86a)の圧力よりも高いときには、チェック弁体85は、スプリング83の付勢力に抗して弁座部84aから離間する。逆に、コンプレッサ7側(流路84b)の圧力がチェック弁体85の下流側(内部空間86a)の圧力よりも低いときには、チェック弁体85は、弁座部84aに着座する。レベリングバルブ100では、内部空間86a、流路84b、貫通孔46、流路13a及び流路10bにて、供給通路9が構成される。
【0049】
バルブケース40は、内部に給排弁80を備える。給排弁80は、供給通路9と空気ばね通路6との連通または遮断を制御する給気弁80Aと、空気ばね通路6と排気通路8との連通または遮断を制御する排気弁80Bと、を備える。以下に、具体的に説明する。
【0050】
弁体82は、弾性を有するシート部82aを有する。シート部82aはリング部材81の弁座部81aに離着座する。弁体82のシート部82aがリング部材81の弁座部81aに着座することによって、供給通路9と空気ばね通路6との連通が遮断される。これに対して、弁体82のシート部82aがリング部材81の弁座部81aから離間することによって、供給通路9と空気ばね通路6とが連通する。このように、弁体82のシート部82aとリング部材81の弁座部81aとによって、空気ばね3への給気を制御する給気弁80Aが構成される。
【0051】
ステム50の弁部53は、弁体82のシート部82aに離着座する。ステム50の弁部53が弁体82のシート部82aに着座することによって、空気ばね通路6と排気通路8との連通が遮断される。これに対して、ステム50の弁部53が弁体82のシート部82aから離間することによって、空気ばね通路6と排気通路8とが連通する。このように、ステム50の弁部53と弁体82のシート部82aとによって、空気ばね3からの排気を制御する排気弁80Bが構成される。
【0052】
以上のように構成されたレベリングバルブ100の動作について説明する。
【0053】
上述のように、車体荷重が増加して空気ばね3が撓んだ場合には、レバー4が中立位置から上方に押し上げられる(図1中矢印A方向への回転)。それに伴ってレバー4に連結されたロータ30が、図2における右方向に回転することで、ロータ30のアーム部34に設けられたピン35が本体部31を中心にして右方向に回転する。ピン35は、ピストン20の溝21内を図2における下方向に向かって移動しながら、右方向に回転する。これにより、ピストン20は図2における右方向に移動する。これに伴い、ピストン20に連結されたステム50が、弁体82をスプリング83の付勢力に抗して押してリング部材81の弁座部81aから離間させる。これにより、供給通路9と空気ばね通路6とが連通する。具体的には、コンプレッサ7から吐出された圧縮空気は、流路10b、流路13a、貫通孔46、流路84b、内部空間86a、環状隙間S、環状溝54、貫通孔45、通路10a、環状流路10c及び貫通流路10dの経路を通って空気ばね3に供給される。
【0054】
このとき、ステム50の弁部53は、弁体82のシート部82aに押圧されているので、軸方向孔51と環状隙間Sとが遮断された状態に維持される。つまり、ピストン20が中立位置から右方向に移動すると、給気弁80Aが開放状態になって供給通路9と空気ばね通路6とが連通し、排気弁80Bが閉鎖状態になって排気通路8と空気ばね通路6とが遮断された状態になる。
【0055】
供給通路9と空気ばね通路6とが連通すると、コンプレッサ7からの圧縮空気が供給通路9及び空気ばね通路6を通じて空気ばね3に供給され、空気ばね3の高さが高くなる。したがって、車体1の高さが高くなり、それに伴ってレバー4も中立位置に近づく。レバー4が中立位置に近づくにつれて、ピストン20及びステム50も図1における左方向に移動する。やがて、車体1の高さが規定位置に戻ると、レバー4が中立位置に戻り、弁体82のシート部82aがリング部材81の弁座部81aに着座する。つまり、レベリングバルブ100の給気弁80Aは閉弁する。これにより、供給通路9と空気ばね通路6との連通が遮断され、空気ばね3への圧縮空気の供給が遮断される。
【0056】
これに対して、車体荷重が減少して空気ばね3が伸びた場合には、レバー4が中立位置から下方に押し下げられる(図1中矢印B方向への回転)。それに伴ってレバー4に連結されたロータ30が、図2における左方向に回転することで、ロータ30のアーム部34に設けられたピン35が本体部31を中心にして左方向に回転する。ピン35は、ピストン20の溝21内を図2における下方向に向かって移動しながら、左方向に回転する。これにより、ピストン20は図2における左方向に移動する。ステム50がピストン20とともに左方向に移動する。これに伴い、ステム50の弁部53は、弁体82のシート部82aから離間する。これにより、空気ばね通路6と排気通路8とが連通する。具体的には、空気ばね3内の圧縮空気は、貫通流路10d、環状流路10c、通路10a、貫通孔45、環状溝54、環状隙間S、軸方向孔51、貫通孔52、収容孔11、収容空間17、及び連通孔72の経路を通って大気へ放出される。
【0057】
このとき、弁体82のシート部82aはスプリング83の付勢力によってリング部材81の弁座部81aに押圧されているので、カラー部材86の内部空間86aと環状隙間Sとは遮断された状態になる。つまり、ピストン20が中立位置から左方向に移動すると、排気弁80Bが開放状態になって空気ばね通路6と排気通路8とが連通し、給気弁80Aが閉鎖状態になって供給通路9と空気ばね通路6とが遮断された状態になる。
【0058】
空気ばね通路6と排気通路8とが連通すると、空気ばね3からの圧縮空気が空気ばね通路6及び排気通路8を通じて大気に放出され、空気ばね3の高さが低くなる。したがって、車体1の高さが低くなり、それに伴ってレバー4も中立位置に近づく。レバー4が中立位置に近づくにつれて、ピストン20及びステム50も図1における右方向に移動する。やがて、車体1の高さが規定位置に戻ると、レバー4が中立位置に戻り、ステム50の弁部53が弁体82のシート部82aに着座する。つまり、レベリングバルブ100の排気弁80Bは閉弁する。これにより、空気ばね通路6と排気通路8との連通が遮断され、空気ばね3から圧縮空気の排気が遮断される。
【0059】
このようにして、レベリングバルブ100は、台車2に対する車体1の相対変位に応じて回転するレバー4の回転方向に応じて、空気ばね3をコンプレッサ7又は大気に選択的に連通させて空気ばね3の高さを調整する。
【0060】
次に、環状隙間Sの機能について説明する。
【0061】
例えば、鉄道車両が走行しているときには、振動などによって車体1の高さが小刻みに変化する。それに応じて空気ばね3の高さが小刻みに変化すると、乗り心地が悪化してしまう。このため、レベリングバルブ100では、環状隙間Sを設けている。これにより、車体1の高さの変化量が小さい場合、すなわち、ステム50の変化量小さいときには、給気弁80Aまたは排気弁80Bが開放されても、環状隙間Sが存在するため、空気ばね通路6に供給される流量または空気ばね通路6から排出される流量は制限される。これにより、空気ばね3の高さが車体1の高さの小刻みな変化に追従することが防止される。これにより、乗り心地が悪化することを防止できる。環状隙間Sを設けても、ステム50が、軸方向において弁部53と突出部81bとがずれる位置まで移動すると環状隙間Sはなくなり、大きな流量の圧縮空気を流すことができる。
【0062】
ところで、レベリングバルブ100において、例えば、ピストン20をナット60を締め付けることによってステム50に固定する場合には、ピストン20とステム50との中心軸がずれた状態で固定されてしまうことがある。このように、ピストン20とステム50との中心軸がずれて固定された状態で、ピストン20とステム50が軸方向に移動すると、ステム50はバルブケース40に形成された第1貫通孔41にガイドされているため、ピストン20がケース10の収容孔11に接触した状態で往復動してしまうおそれがある。このように、ピストン20がケース10の収容孔11に接触した状態で往復動すると、ピストン20とケース10の収容孔11との接触面が摩耗してしまう。
【0063】
そこで、本実施形態のレベリングバルブ100では、ピストン20を遊びをもってステム50に連結している。言い換えると、ピストン20は、軸方向及び径方向に移動可能にステム50に嵌合されている。ここで、図4を参照しながら、ピストン20とステム50の連結構造について具体的に説明する。
【0064】
図4に示すように、ピストン20の貫通孔22が形成される壁部23の軸方向の長さL1は、ステム50の段部50Cと段部50F(ワッシャ61)との間の軸方向の長さL2より短くなっている。これにより、ピストン20の壁部23とステム50の段部50C及び段部50F(ワッシャ61)との間には、軸方向にL2-L1分の隙間S1が存在することになるので、ピストン20は、軸方向において、この隙間S1分だけ移動が許容される。
【0065】
また、図4に示すように、ピストン20の貫通孔22の内径D1は、ステム50の挿通部50Bの外径D2よりも大きくなっている。ピストン20の貫通孔22とステム50の挿通部50Bとの間には、軸方向にD1-D2分の隙間S2が存在することになるので、ピストン20は、径方向において、この隙間S2分だけ移動が許容される。
【0066】
このように、本実施形態のレベリングバルブ100では、ピストン20は、ステム50に対して軸方向及び径方向の移動が隙間S1,S2分許容される。つまり、レベリングバルブ100では、ピストン20とステム50との中心軸がずれた状態で固定されない。このため、ピストン20の外周面とケース10の収容孔11の内周面が接触しても、ピストン20が接触部分から離れる方向、つまり、ピストン20が接触部分から逃げる方向に移動することができる。これにより、ピストン20の外周面が収容孔11の内周面に押し付けられた状態で往復動することを抑制できるので、ピストン20のケース10との接触面の摩耗を抑制できる。
【0067】
なお、上記実施形態では、ナット60とワッシャ61とを用いてピストン20をステム50に連結する場合を例に説明したが、これに限らず、例えば、ナット60とワッシャ61とを一体とした構成(いわゆる、鍔付きナット)でピストン20をステム50に連結してもよい。また、ワッシャ61を設けずに、ナット60のみによって、ピストン20をステム50に連結してもよい。
【0068】
さらに、ナット60とワッシャ61とを用いた構成に換えて、ステム50に割ピンや圧入ピンなどを取り付けることによって、ピストン20をステム50に連結してもよい。
【0069】
以上の実施形態によれば、以下の効果を奏する。
【0070】
レベリングバルブ100では、ピストン20は、軸方向及びの径方向に移動可能にステム50に嵌合されている。このため、ピストン20の外周面とケース10の収容孔11の内周面が接触しても、ピストン20が接触部分から離れる方向、つまり、ピストン20が接触部分から逃げる方向に移動することができる。これにより、ピストン20の外周面が収容孔11の内周面に押し付けられた状態で往復動することを抑制できる。よって、ピストン20のケース10との接触面の摩耗を抑制できるので、ピストン20及びケース10の耐久性及び信頼性を向上させることができる。
【0071】
また、レベリングバルブ100では、段部50Fの位置を調整することでピストン20とステム50の軸方向おける遊び量を簡単に調整することができる。同様に、ピストン20の貫通孔22の内径、あるいは、ステム50の挿通部50Bの外径を調整することで、ピストン20とステム50の径方向おける遊び量(隙間S1,S2)を簡単に調整することができる。
【0072】
以上のように構成された本発明の実施形態の構成、作用、及び効果をまとめて説明する。
【0073】
レベリングバルブ100は、鉄道車両の台車2に対する車体1の相対変位に応じて回転するレバー4の回転方向に応じて、台車2と車体1の間に設けられる空気ばね3を圧縮空気源(コンプレッサ7)又は排気通路8とに選択的に連通させて空気ばね3の高さを調整する。また、レベリングバルブ100は、ハウジング(ケース10)内に形成された収容孔11内に収容されレバー4の回転に伴って軸方向に移動するピストン20と、一端がピストン20に形成された貫通孔22に挿通され、ピストン20とともに軸方向に移動するステム50と、ステム50が中立位置から一方向へ移動することによって空気ばね3と圧縮空気源(コンプレッサ7)とを連通させ、ステム50が中立位置から他方向へ移動することによって空気ばね3と排気通路8とを連通させる給排弁80と、を備え、ピストン20は、軸方向及び径方向に移動可能にステム50に嵌合されている。
【0074】
この構成では、ピストン20は、軸方向及びの径方向に移動可能にステム50に嵌合されている、言い換えると、ピストン20がステム50に固定されていないので、ピストン20の外周面と収容孔11の内周面が接触しても、ピストン20が接触部分から離れる方向に移動することができるので、ピストン20の外周面が収容孔11の内周面に押し付けられた状態で往復動することを抑制できる。これにより、ピストン20とハウジング(ケース10)との接触面の摩耗を抑制できる。よって、ピストン20及びケース10の耐久性及び信頼性を向上させることができる。
【0075】
レベリングバルブ100では、ステム50は、先端に給排弁80の一部を構成する弁部53が設けられた本体部50Aと、本体部50Aより小径で、かつ、ピストン20の貫通孔22よりも小径に形成され、ピストン20の貫通孔22を挿通する挿通部50Bと、本体部50Aと挿通部50Bとの境界部分によって形成され、ピストン20の貫通孔22よりも大径の段部50C(第1段部)と、を有し、ピストン20は、段部50C(第1段部)と挿通部50Bに固定されたワッシャ61(係止部材)との間において移動可能である。
【0076】
この構成では、従来の構成に対して新たに部品を追加せずに、ピストン20を、軸方向及び径方向に移動可能にステム50に嵌合させることができるので、コストの上昇を抑制できる。
【0077】
レベリングバルブ100では、ステム50は、挿通部50Bの本体部50Aとは反対側の端部に、挿通部50Bより小径に形成された小径部50Dと、小径部50Dの先端側の外周面に形成され、ナット60が締結されるおねじ部50Eと、挿通部50Bと小径部50Dとの境界部分によって形成された段部50F(第2段部)と、をさらに有し、係止部材は、小径部50Dが挿通され、ピストン20の貫通孔22の内径より大径のワッシャ61であり、ワッシャ61は、ナット60をおねじ部50Eに締結することにより、ナット60と段部50F(第2段部)の間に固定され、段部50C(第1段部)と段部50F(第2段部)との間の長さは、ピストン20の貫通孔22の軸方向の長さより長い。
【0078】
この構成では、ワッシャ61(係止部材)は、ナット60と段部50F(第2段部)とによって軸方向に位置決めされる。これにより、ピストン20の軸方向における遊び量(移動許容量)を精度良く設定することができる。
【0079】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【符号の説明】
【0080】
100・・・レベリングバルブ、1・・・車体、2・・・台車、3・・・空気ばね、4・・・レバー、6・・・空気ばね通路、7・・・コンプレッサ(圧縮空気源)、8・・・排気通路、9・・・供給通路、10・・・ケース(ハウジング)、11・・・収容孔、12・・・第1キャップ部材(ハウジング)、12c・・・ガイド穴、13・・・第2キャップ部材(ハウジング)、20・・・ピストン、21・・・溝、30・・・ロータ、35・・・ピン、40・・・バルブケース(ハウジング)、50・・・ステム、50A・・・本体部、50B・・・挿通部、50C・・・段部(第1段部)、50D・・・小径部、50E・・・おねじ部、50F・・・段部(第2段部)、53・・・弁部、60・・・ナット、61・・・ワッシャ、80・・・給排弁、80A・・・給気弁、80B・・・排気弁
図1
図2
図3
図4
図5