(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023170217
(43)【公開日】2023-12-01
(54)【発明の名称】浸漬ノズル交換装置
(51)【国際特許分類】
B22D 11/10 20060101AFI20231124BHJP
B22D 41/56 20060101ALI20231124BHJP
【FI】
B22D11/10 330M
B22D11/10 330Q
B22D41/56
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022081787
(22)【出願日】2022-05-18
(71)【出願人】
【識別番号】000170716
【氏名又は名称】黒崎播磨株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001601
【氏名又は名称】弁理士法人英和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】今長谷 俊洋
(72)【発明者】
【氏名】大塚 晶
【テーマコード(参考)】
4E004
4E014
【Fターム(参考)】
4E004FC02
4E004FC05
4E014DD02
(57)【要約】
【課題】ブランクプレートの待機位置への移動を迅速かつ簡便に行うことのできる浸漬ノズル交換装置を提供する。
【解決手段】タンディッシュの溶鋼排出口の下部に取り付けられる浸漬ノズル交換装置1であって、浸漬ノズル200のフランジ部の下面を押圧する押圧部と、浸漬ノズル200を取り付ける際に当該浸漬ノズルを前記押圧部に案内するための案内部4と、前記押圧部から浸漬ノズル200を取り外す際に当該浸漬ノズルを取り外し位置に案内する排出部5と、ブランクプレート300を保持する保持部6とを有する。保持部6は、ブランクプレート300を前記押圧部に支持された浸漬ノズル200に対向させる第1位置と、当該保持部6と案内部4とで浸漬ノズルのフランジ部の下面を支持可能な第2位置とに移動可能である。
【選択図】
図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
タンディッシュの溶鋼排出口の下部に取り付けられる浸漬ノズル交換装置であって、
浸漬ノズルのフランジ部の下面を押圧する押圧部と、浸漬ノズルを取り付ける際に当該浸漬ノズルを前記押圧部に案内するための案内部と、前記押圧部から浸漬ノズルを取り外す際に当該浸漬ノズルを取り外し位置に案内する排出部と、ブランクプレートを保持する保持部とを有し、
前記保持部は、前記ブランクプレートを前記押圧部に支持された浸漬ノズルに対向させる第1位置と、当該保持部と前記案内部とで浸漬ノズルのフランジ部の下面を支持可能な第2位置とに移動可能である、浸漬ノズル交換装置。
【請求項2】
前記保持部は、前記ブランクプレートを保持する第1保持部と、浸漬ノズルのフランジ部の下面を支持可能な第2保持部とを含む、請求項1に記載の浸漬ノズル交換装置
【請求項3】
前記保持部が前記第1位置にある状態において、浸漬ノズルと前記ブランクプレートとの間に隙間が存在する、請求項1又は2に記載の浸漬ノズル交換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タンディッシュの溶鋼排出口の下部に取り付けられる浸漬ノズル交換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
鋼の連続鋳造では、タンディッシュの底部に設けられた溶鋼排出口から浸漬ノズルを経由して鋳型へ溶鋼の注入を行う。このような鋼の連続鋳造において浸漬ノズルは、内孔は流動する溶鋼に接し、外面は外気に触れるという厳しい条件で使用されるため、溶損、欠落あるいは折損等の損傷が多い。そのため損傷に応じて、頻繁に交換を必要とする。
【0003】
そのため従前より、例えば特許文献1に開示されるような浸漬ノズル交換装置が用いられている。通常、浸漬ノズル交換装置は古い浸漬ノズルを新しい浸漬ノズルに交換するために使用されるが、緊急時に溶鋼の流出を止めるため浸漬ノズルを閉鎖用耐火物、すなわちブランクプレートに交換する場合がある。
連続鋳造中、ブランクプレートは使用中の浸漬ノズルの後側に待機させる。そのため従来は、古い浸漬ノズルを新しい浸漬ノズルに交換した後、作業者がブランクプレートをその待機位置に移動させていた。
【0004】
このようなブランクプレートの待機位置への移動には、迅速性と簡便性が要求されるところ、従来技術ではその要求を満たすことができていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、ブランクプレートの待機位置への移動を迅速かつ簡便に行うことのできる浸漬ノズル交換装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一観点によれば、次の浸漬ノズル交換装置が提供される。
タンディッシュの溶鋼排出口の下部に取り付けられる浸漬ノズル交換装置であって、
浸漬ノズルのフランジ部の下面を押圧する押圧部と、浸漬ノズルを取り付ける際に当該浸漬ノズルを前記押圧部に案内するための案内部と、前記押圧部から浸漬ノズルを取り外す際に当該浸漬ノズルを取り外し位置に案内する排出部と、ブランクプレートを保持する保持部とを有し、
前記保持部は、前記ブランクプレートを前記押圧部に支持された浸漬ノズルに対向させる第1位置と、当該保持部と前記案内部とで浸漬ノズルのフランジ部の下面を支持可能な第2位置とに移動可能である、浸漬ノズル交換装置。
【発明の効果】
【0008】
本発明の浸漬ノズル交換装置によれば、ブランクプレートの待機位置への移動を迅速かつ簡便に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1A】本発明の一実施形態である浸漬ノズル交換装置を後側下方から見た斜視図(保持部が第1位置にある状態)。
【
図1B】本発明の一実施形態である浸漬ノズル交換装置を前側上方から見た斜視図。
【
図2】
図1A及び
図1Bの浸漬ノズル交換装置をタンディッシュに取り付けた状態の要部の断面図(
図1BのA-A拡大断面図)。
【
図3】本発明の一実施形態である浸漬ノズル交換装置を後側下方から見た斜視図(保持部が第2位置にある状態)。
【
図4】本発明の一実施形態である浸漬ノズル交換装置を後側下方から見た斜視図(新しい浸漬ノズルを古い浸漬ノズルの後側に載置した状態)。
【
図6】プッシャーが
図5の上限位置から下方に回転した状態を示す図。
【
図12】使用中の浸漬ノズルがブランクプレートに交換された状態を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1A及び
図1Bに、本発明の一実施形態である浸漬ノズル交換装置をそれぞれ前側下方及び後側上方から見た斜視図で示している。
図2には、この浸漬ノズル交換装置をタンディッシュに取り付けた状態の要部を
図1BのA-A拡大断面図で示している。なお、本明細書において「前側」及び「後側」とは、浸漬ノズル交換装置において浸漬ノズルを交換する際の浸漬ノズルの移動方向を基準とする。すなわち、「前側」とは浸漬ノズルの移動方向の前側をいい、「後側」とは浸漬ノズルの移動方向の後側をいう。
【0011】
図2に示すように、浸漬ノズル交換装置1はタンディッシュ100の溶鋼排出口101の下部に取り付けられる。具体的には、浸漬ノズル交換装置1のフレーム2を、タンディッシュ100の底部の鉄皮102にボルト等で固定する。
【0012】
図2と共に
図1A及び
図1Bを参照すると、浸漬ノズル交換装置1は、浸漬ノズル200のフランジ部201の下面を押圧する押圧部3と、浸漬ノズル200を取り付ける際にこの浸漬ノズル200を押圧部3に案内するための案内部4と、押圧部3から浸漬ノズル200を取り外す際にこの浸漬ノズル200を取り外し位置に案内する排出部5と、ブランクプレート300を保持する保持部6とを有する。また、浸漬ノズル交換装置1は、タンディッシュノズル400を支持する支持部7を有する。タンディッシュノズル400は、フランジ部401と管状部402とを有する。そして、タンディッシュノズル400の管状部402がタンディッシュ100の溶鋼排出口101に挿入されている。また、タンディッシュノズル400のフランジ部401の下面が浸漬ノズル200のフランジ部201の上面に接合されている。これにより、タンディッシュ100内の溶鋼は、タンディッシュノズル400及び浸漬ノズル200を介して鋳型へ移送される。
【0013】
上述の通り、通常、浸漬ノズル交換装置1は古い浸漬ノズルを新しい浸漬ノズルに交換するために使用されるが、緊急時に溶鋼の流出を止めるため浸漬ノズルをブランクプレートに交換する場合がある。そのため連続鋳造中、ブランクプレート300は
図1Aに示すように使用中の浸漬ノズル200の後側の待機位置に待機させる。すなわち連続鋳造中、ブランクプレート300を保持する保持部6は、ブランクプレート300を使用中の浸漬ノズル、すなわち押圧部3に支持された浸漬ノズル200に対向させる第1位置にある。
一方、古い浸漬ノズルを新しい浸漬ノズルに交換するとき、ブランクプレート300は、
図3に示すように浸漬ノズル交換の障害とならない退避位置に退避させる。すなわち、古い浸漬ノズルを新しい浸漬ノズルに交換するとき、ブランクプレート300を保持する保持部6を、
図1Aに示す第1位置から
図3に示す第2位置へ移動させる。そして、
図4に示すように、新しい浸漬ノズル200’を古い浸漬ノズル200の後側に載置する。
【0014】
図5に、
図4のB矢視図を示している。同図に明確に表れているように、新しい浸漬ノズル200’は、そのフランジ部201’の下面が、第2位置にある保持部6と案内部4とで支持されることにより、古い浸漬ノズル200の後側に載置されている。なお、本実施形態において案内部4は、新しい浸漬ノズル200’のフランジ部201’の下面の一側を支持するガイドレールであり、浸漬ノズル200’を取り付ける際に、第2位置にある保持部6と協働してこの浸漬ノズル200’を押圧部3に案内する。
また、本実施形態において押圧部3は、
図2に表れているように浸漬ノズル200をタンディッシュノズル400に押し付けるために鍵盤状の複数の押圧部材31によって形成されている。すなわち、複数の押圧部材31が浸漬ノズル200のフランジ部201の下面を支持する。そして、押圧部材31は、バネボックス8に収納されている弾性体としてのコイルバネ81による弾性力により、浸漬ノズル200をタンディッシュノズル400に押し付ける。
更に、本実施形態において排出部5は、
図1Bに表れているように、浸漬ノズル200のフランジ部201の下面の一側及び他側をそれぞれ支持可能な一対のガイドレールであり、押圧部3から浸漬ノズル200を取り外す際にこの浸漬ノズル200を取り外し位置に案内する。
【0015】
浸漬ノズル交換装置1は、
図4に示すように古い浸漬ノズル200の後側に載置された新しい浸漬ノズル200’を押して同図中のB方向へ前進させるための押圧具としてプッシャー9と、プッシャー9をB方向へ前進又はB方向とは反対方向へ後退させる駆動装置として油圧シリンダー10を備えている。油圧シリンダー10は案内部4側のフレーム2に固定されている。また、プッシャー9の基端部91は、油圧シリンダー10のシリンダーロッドの進退に伴い回転する回転部材に連結されており、油圧シリンダー10のシリンダーロッドの進退に伴い上下方向に回転する。具体的には、油圧シリンダー10のシリンダーロッドが後退限にあるときは
図5に示すようにプッシャー9は、新しい浸漬ノズル200’のフランジ部201’の上面より上方向に回転しており、油圧シリンダー10のシリンダーロッドを少し前進させると、プッシャー9は
図6に示すように、新しい浸漬ノズル200’のフランジ部201’と重なる位置まで下方向に回転し、油圧シリンダー10のシリンダーロッドを更に前進させることにより、新しい浸漬ノズル200’ のフランジ部201’を押して
図4中のB方向へ前進させることができる。その後、油圧シリンダー10のシリンダーロッドを後退限まで戻すと、プッシャー9は
図5の位置に戻る。
このように、油圧シリンダー10のシリンダーロッドが後退限にあるとき、プッシャー9は
図5の位置にあるから、新しい浸漬ノズル200’を古い浸漬ノズル200の後側に載置する際にプッシャー9が障害になることはない。そして、古い浸漬ノズル200の後側に新しい浸漬ノズル200’を載置した後に、油圧シリンダー10のシリンダーロッドを前進させることにより、新しい浸漬ノズル200’は古い浸漬ノズル200を押しながら案内部4から押圧部3へ移動する。これに伴い古い浸漬ノズル200は押圧部3から排出部5へ移動する。このようにして、古い浸漬ノズル200が新しい浸漬ノズル200’に交換される。
なお、本実施形態では、油圧シリンダー10のシリンダーロッドの進退に伴い、自動的にプッシャー9が上下方向に回転するようにしたが、例えばヒンジ機構を使用するなどして、手動でプッシャー9を上下方向に回転させるようにしてもよい。
【0016】
次に、保持部6について詳しく説明する。
図7に、保持部6とその付属部材を分解斜視図で示している。
上述の通り保持部6は、
図1Aに示している第1位置と、
図3に示している第2位置とに移動可能である。具体的に本実施形態では保持部6は、ヒンジピン11を回転中心として回転することにより第1位置と第2位置とに移動する。すなわち、本実施形態において保持部6は平面視で略矩形状であり、その一つの隅部にヒンジ部61が形成されている。そしてヒンジ部61が、ヒンジブラケット12のヒンジ挟持部121に挟持されており、ヒンジ部61の貫通孔61aとヒンジ挟持部121の貫通孔121aとにヒンジピン11が貫通している。これにより、保持部6はヒンジピン11を回転中心として回転可能となっている。
【0017】
図1A及び
図3に表れているように、ヒンジブラケット12は、ヒンジ挟持部121が
図2に示した押圧部3と隣接するように、バネボックス8の後側に取り付けられている。これによりヒンジピン11の位置は押圧部3と後側に隣接する位置となる。すなわち、本実施形態において保持部6は、押圧部3と後側に隣接する位置にある回転軸であるヒンジピン11を回転中心として回転することにより第1位置と第2位置とに移動する。
【0018】
また、本実施形態においてヒンジ挟持部121の下板121bは上板121cよりも大きい。下板121bは保持部6の下面を支持する部材であることから、この下板121bを大きくすることで、ブランクプレート300を保持した保持部6が回転する際に下方に撓むことを抑制することができ、保持部6が正確に第1位置と第2位置とに移動することができる。
更に本実施形態では、第1位置において案内部4と対向する保持部6の側面部62、及び第2位置においてブランクプレート300と対向する保持部6の側面部63に、それぞれ磁石62a及び磁石63aを設けている。なお、これらの磁石62a、63aは耐熱磁石を使用している。磁石62aは
図3に表れており、この磁石62aは第1位置において案内部4と対向する。このとき磁石62aは、保持部6が不意に第2位置へ移動しないように位置決めする機能を発揮する。また、磁石63aは
図1A及び
図7に表れており、この磁石63aは第2位置においてヒンジブラケット12と対向する。このとき磁石63aは、保持部6が不意に第1位置へ移動しないように位置決めする機能を発揮する。
【0019】
図8に、保持部8に保持されるブランクプレート300を下方から見た斜視図で示している。ブランクプレート300は緊急時に溶鋼の流出を止めるため、使用中の浸漬ノズル、すなわち押圧部3に支持された浸漬ノズル200と交換されるものである。そのため、ブランクプレート300は、浸漬ノズル200のフランジ部201と実質的に同一の外形形状を有する。
図8に表れているように、ブランクプレート300の下面部には突起301がある。一方、ブランクプレート300を保持する保持部6には、
図7に表れているように一端に開口641を有する切欠き64がある。そしてブランクプレート300は、突起301が切欠き64の一端側から挿入された状態で、保持部6に保持されている。
ここで、保持部6の開口641は、
図1Aに示しているように保持部6が第1位置にあるときに前側、すなわち押圧部3側を向く。ブランクプレート300は、緊急時には押圧部3に向けて前側に押される。このときブランクプレート300の突起301は、保持部6の切欠き64の開口641から抜ける。そのため、ブランクプレート300は押圧部3に向けて移動できる。また、このときブランクプレート300は、下面部の突起301が切欠き64に案内されながら移動する。そのため、ブランクプレート300は押圧部3に向けて円滑に移動できる。
【0020】
ブランクプレート300の移動方向の長さL1は、保持部6の長さL2より小さい。そのため、
図4に示すように保持部6が第2位置にあるとき、
図5に表れているように新しい浸漬ノズル200’のフランジ部201’の下面が、保持部6と案内部4とで支持される。このように、本実施形態において保持部6は、ブランクプレート300を保持する第1保持部6Aと、新しい浸漬ノズル200’のフランジ部201’の下面を支持可能な第2保持部6Bとを含む。本実施形態において第1保持部6A及び第2保持部6Bは、同一平面上にあり、第2保持部6Bはブランクプレート300の移動方向において第1保持部6Aの前側にある。なお、第1保持部6A及び第2保持部6Bは同一平面上にあり、しかも第1保持部6A及び第2保持部6Bの高さレベルは押圧部3の高さレベルと略同一であるから、ブランクプレート300の前側すなわち押圧部3側への移動が阻害されることはない。
一方、ブランクプレート300の移動方向と直交する方向の幅W1は、保持部6の幅W2より大きい。そのため、
図1Aに示すように保持部6が第1位置にあるとき、
図1AのB矢視図である
図9に表れているようにブランクプレート300の幅方向の一側の下面が案内部4で支持される。
なお、第1保持部6Aに保持されているブランクプレート300が不意に第2保持部6B側へ移動しないように、第1保持部6Aには、ブランクプレート300を位置決めするための磁石等の位置決め手段を設けることもできる。
【0021】
次に、浸漬ノズル交換装置1の動作、特に保持部6及びブランクプレート300の動作について説明する。
上述の通り連続鋳造中、保持部6は
図1Aに示すように第1位置にある。そして、古い浸漬ノズル200を新しい浸漬ノズル200’に交換するときには、
図3に示すように保持部6を第2位置へ移動させたうえで、
図4に示すように古い浸漬ノズル200の後側に新しい浸漬ノズル200’を載置する。このとき新しい浸漬ノズル200’は、
図5に表れているようにそのフランジ部201’の下面が、第2位置にある保持部6の第2保持部6Bと案内部4とで支持されている。その後、上述の通り油圧シリンダー10のシリンダーロッドを前進させることにより、新しい浸漬ノズル200’は古い浸漬ノズル200を押しながら案内部4から押圧部3へ移動する。これに伴い古い浸漬ノズル200は押圧部3から排出部5へ移動する。なお、保持部6が第2位置にある状態において第2保持部6Bは押圧部3と連続するような位置関係にある。また、案内部4も押圧部3と連続するような位置関係にある。そのため、新しい浸漬ノズル200’は古い浸漬ノズル200を押しながら案内部4から押圧部3へ円滑に移動することができる。
このようにして、古い浸漬ノズル200が新しい浸漬ノズル200’に交換される。なお、このような浸漬ノズルの交換作業は、一般的にタンディッシュノズル400に周知のストッパーを嵌合するなどして連続鋳造を中断してから実施する。ただし、この浸漬ノズルの交換作業は、連続鋳造中に行ってもよい。
【0022】
浸漬ノズル交換後、保持部6を、
図3に示す第2位置から
図1Aに示す第1位置へ移動させる。上述の通り本実施形態において保持部6は、ヒンジピン11を回転中心として回転することにより第1位置と第2位置とに移動する。なお、
図10には移動途中の状態を示している。
【0023】
保持部6を第1位置へ移動後、ブランクプレート300は、
図9に表れているように保持部6の第1保持部6Aで保持されると共に、幅方向の一側の下面が案内部4で支持される。また、このときブランクプレート300は、使用中の浸漬ノズル、すなわち押圧部3に支持されている浸漬ノズル200に対向するが、この使用中の浸漬ノズル200のフランジ部201とブランクプレート300との間には、
図1Aの底面図である
図11に表れているように隙間Sが存在する。この隙間Sがあることにより、保持部6が第1位置に移動した際にブランクプレート300が浸漬ノズル200に衝突して浸漬ノズル200やブランクプレート300が損傷する可能性を軽減できる。
緊急時に溶鋼の流出を止めるときには、浸漬ノズルの交換時と同じ要領で油圧シリンダー10のシリンダーロッドを前進させる。そうすると、ブランクプレート300は使用中の浸漬ノズル、すなわち押圧部3に支持されている浸漬ノズル200を押しながら案内部4から押圧部3へ移動し、これに伴い使用中の浸漬ノズル200は押圧部3から排出部5へ移動する。その結果、
図12に示すように使用中の浸漬ノズル200がブランクプレート300に交換されて、溶鋼の流出を止めることができる。
なお、
図12には、押圧部3を構成する複数の押圧部材31が表れている。
図12においてブランクプレート300は、上述した使用中の浸漬ノズル200と同様に、複数の押圧部材31によってタンディッシュノズル400に押し付けられている。
【0024】
以上の通り本実施形態において保持部6は、第1位置と第2位置とに移動可能である。ここで、第1位置はブランクプレート300の待機位置であり、第2位置はブランクプレート300の退避位置である。すなわち、本実施形態によれば保持部6を第1位置と第2位置とに移動させることにより、ブランクプレート300を待機位置と退避位置とに迅速かつ簡便に移動させることができる。
また、本実施形態では、保持部6がブランクプレート300の退避位置である第2位置にある状態において保持部6の第2保持部6Bは、1本のガイドレールよりなる案内部4と協働して新しい浸漬ノズル200’のフランジ部201’の下面を支持し、この浸漬ノズル200’を押圧部3に案内する。なお、従来の浸漬ノズル交換装置において本実施形態の案内部4に相当する構成要素は、例えば上記特許文献1にも開示されているように、一対(2本)のガイドレールにより構成していた。これに対して本実施形態では、上述の通り保持部6の第2保持部6Bがガイドレールの機能を発揮することから、案内部4は1本のガイドレールのみで構成できる。これにより、保持部6の回転軌跡が小さくなることと相まって、装置のコンパクト化を図ることができる。
また、保持部6の回転軌跡が小さくなることは、ブランクプレート300を待機位置と退避位置とに迅速かつ簡便に移動させることにも寄与する。
また、保持部6を浸漬ノズルの交換時に第2位置に置くことができるので、例えば、案内部4の外側に別途ブランクプレートの保持部を設ける場合と比較して装置をコンパクト化できる。そのため、タンディッシュの設置場所が狭所であっても浸漬ノズル交換装置の設置が可能となる。
【0025】
なお、本実施形態では、第1位置と第2位置とへの保持部6の移動を「回転」により行うようにしたが、「並進」により行うこともできる。ただし、浸漬ノズル交換装置を構成する他の構成要素との干渉を避けやすくする点などから、「回転」が好ましい。また、「回転」の場合、その回転中心は押圧部3と隣接する位置とすることが、保持部6の回転軌跡を小さくする点から好ましい。
【0026】
また、本実施形態では磁石による磁着力を利用して保持部6を第1位置又は第2位置に位置決めするようにしたが、機械的な嵌め合い力などを利用することもできる。更に、保持部6が第1位置へ移動する際に正確に第1位置に移動でき、かつ第1位置にある状態を確実に維持できるようにするため、
図9に仮想的に示しているように、保持部6及び案内部4にそれぞれ傾斜面を設け、これらの傾斜面同士が接触することで保持部6を案内部4との固定位置すなわち第1位置に案内するテーパー嵌合構造13を設けることもできる。
【0027】
また、本実施形態において浸漬ノズル交換装置1は、タンディッシュノズル400に直接接合するタイプの浸漬ノズル200を交換するものであるが、タンディッシュノズルと浸漬ノズルとの間に周知のスライディングノズル装置が介在し、そのスライディングノズル装置の下ノズルに接合するタイプの浸漬ノズルを交換するものとすることもできる。
【符号の説明】
【0028】
1 浸漬ノズル交換装置
2 フレーム
3 押圧部
31 押圧部材
4 案内部
5 排出部
6 保持部
6A 第1保持部
6B 第2保持部
61 ヒンジ部
61a 貫通孔
62,63 側面部
62a,63a 磁石
64 切欠き
641 開口
7 支持部
8 バネボックス
81 コイルバネ(弾性体)
9 プッシャー(押圧具)
91 プッシャーの基端部
10 油圧シリンダー(駆動装置)
11 ヒンジピン
12 ヒンジブラケット
121 挟持部
121a 貫通孔
121b 下板
121c 上板
13 テーパー嵌合構造
100 タンディッシュ
101 溶鋼排出口
102 鉄皮(タンディッシュの底部)
200 浸漬ノズル(使用中の又は古い浸漬ノズル)
200’ 浸漬ノズル(新しい浸漬ノズル)
201,201’ フランジ部
300 ブランクプレート
301 突起
400 タンディッシュノズル
401 フランジ部
402 管状部
S 隙間