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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023170220
(43)【公開日】2023-12-01
(54)【発明の名称】ドレーンカテーテル
(51)【国際特許分類】
   A61M 1/00 20060101AFI20231124BHJP
   A61M 27/00 20060101ALI20231124BHJP
【FI】
A61M1/00 160
A61M27/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022081792
(22)【出願日】2022-05-18
(71)【出願人】
【識別番号】000135036
【氏名又は名称】ニプロ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中村 拓真
(72)【発明者】
【氏名】松田 裕介
【テーマコード(参考)】
4C077
4C267
【Fターム(参考)】
4C077AA15
4C077CC02
4C077DD21
4C077EE04
4C267AA39
4C267BB02
4C267BB12
4C267BB31
4C267BB40
4C267CC06
4C267JJ08
(57)【要約】
【課題】形状を安定して保持することができるとともに、十分な流路面積を確保できるドレーンカテーテルをもたらす。
【解決手段】集液部110と、移行部140と、排液部160と、主流路101と、を備えたフラット型のドレーンカテーテル100であって、集液部110は、主流路101を形成する主ルーメン101Aと、径方向断面において主ルーメン101Aの外壁102Aにおける互いに対向する位置に外方に向かってそれぞれ立設されるとともに、軸方向に延びる2つの隔壁部105と、を有しており、2つの隔壁部105の各々は、軸方向に延びる第1溝部111を含む。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
集液部と、
前記集液部の近位側に設けられた移行部と、
前記移行部の近位側に設けられた排液部と、
前記集液部、前記移行部及び前記排液部の全長に亘って軸方向に延びる主流路と、を備えたフラット型のドレーンカテーテルであって、
前記集液部は、
前記主流路を形成する主ルーメンと、
径方向断面において前記主ルーメンの外壁における互いに対向する位置に外方に向かってそれぞれ立設されるとともに、軸方向に延びる2つの隔壁部と、を有しており、
前記2つの隔壁部の各々は、軸方向に延びる第1溝部を含む、ドレーンカテーテル。
【請求項2】
前記隔壁部は、径方向断面において、
前記主ルーメンの外壁に接続された第1隔壁と、
前記第1隔壁の先端部からさらに外方に向かって延設された2つの第2隔壁と、
前記2つの第2隔壁の各々の先端部からさらに外方に向かって延設された2つの第3隔壁と、を有しており、
前記第1溝部は、前記2つの第2隔壁と、前記2つの第3隔壁と、により囲まれた空間からなる、請求項1に記載のドレーンカテーテル。
【請求項3】
前記第1隔壁及び前記2つの第2隔壁は、径方向断面において、Y字状に配置されている、請求項2に記載のドレーンカテーテル。
【請求項4】
前記2つの第2隔壁における前記第1隔壁が存在しない側の互いのなす角度は、60°以上180°未満である、請求項3に記載のドレーンカテーテル。
【請求項5】
前記2つの第3隔壁の先端部の各々は、互いに近づく方向に向かって延設された湾曲部を備えており、
前記湾曲部の先端により、軸方向に延びる第1スリットが形成されている、請求項2又は請求項3に記載のドレーンカテーテル。
【請求項6】
前記集液部の近位端部は、前記2つの第3隔壁の先端部が互いに接続されることにより前記2つの第2隔壁及び前記2つの第3隔壁により形成され、前記第1溝部に接続された第1ルーメンを含む、請求項2又は請求項3に記載のドレーンカテーテル。
【請求項7】
前記隔壁部は、径方向断面において、さらに、前記第2隔壁の先端部に接続され且つ前記主ルーメン側に向かって延設された第4隔壁を有しており、
前記集液部は、さらに、前記第1隔壁と、前記第2隔壁と、前記第4隔壁と、前記主ルーメンの外壁と、により囲まれた空間からなり、軸方向に延びる第2溝部を有する、請求項2又は請求項3に記載のドレーンカテーテル。
【請求項8】
前記集液部の近位端部は、前記2つの第3隔壁の先端部が互いに接続されることにより前記2つの第2隔壁及び前記2つの第3隔壁により形成され、前記第1溝部に接続された第1ルーメンを含み、
前記集液部の近位端部は、前記第4隔壁の先端部が前記主ルーメンの外壁に接続されることにより前記第1隔壁、前記第2隔壁、前記第4隔壁及び前記主ルーメンの外壁により形成され、前記第2溝部に接続された第2ルーメンを含む、請求項7に記載のドレーンカテーテル。
【請求項9】
前記第2ルーメンの軸方向の長さは、前記第1ルーメンの軸方向の長さよりも短い、請求項8に記載のドレーンカテーテル。
【請求項10】
前記移行部は、
前記主ルーメンに接続されて前記主流路を形成する中央ルーメンと、
前記中央ルーメンの側方に配置されたサイドルーメンと、を有しており、
前記サイドルーメンは、前記第1ルーメン及び前記第2ルーメンに接続されている、請求項8又は請求項9に記載のドレーンカテーテル。
【請求項11】
前記集液部は、バリウムを含む樹脂材料製である、請求項1又は請求項2に記載のドレーンカテーテル。
【請求項12】
前記主ルーメンを形成する前記外壁は、前記第1溝部を形成していない、請求項1に記載のドレーンカテーテル。
【請求項13】
集液部と、
前記集液部の近位側に設けられた移行部と、
前記移行部の近位側に設けられた排液部と、
前記集液部、前記移行部及び前記排液部の全長に亘って軸方向に延びる主流路と、を備えたフラット型のドレーンカテーテルであって、
前記集液部は、
前記主流路を形成する主ルーメンと、
前記主ルーメンの外周側に配置され、軸方向に延びる複数の溝部と、を有しており、
前記移行部は、
前記主ルーメンに接続されて前記主流路を形成する中央ルーメンと、
前記中央ルーメンの一方側に配置され、前記複数の溝部のうち前記主ルーメンの一方側に配置された溝部に通じる第1サイドルーメンと、
前記中央ルーメンの他方側に配置され、前記複数の溝部のうち前記主ルーメンの他方側に配置された溝部に通じる第2サイドルーメンと、を含むトリプルルーメン構造を有している、ドレーンカテーテル。
【請求項14】
前記移行部は、径方向断面において、
長辺方向両側に配置され、前記第1サイドルーメン及び前記第2サイドルーメンの各々を形成する2つの第1壁部と、
短辺方向両側に配置され、前記第1サイドルーメン及び前記第2サイドルーメンの各々を形成する4つの第2壁部と、を有しており、
前記第1壁部の厚さは、前記第2壁部の厚さよりも大きい、請求項13に記載のドレーンカテーテル。
【請求項15】
前記移行部は、
透明又は半透明の樹脂材料製の本体部と、
前記本体部に設けられ、バリウムを含む樹脂材料製のマーカ部と、を有している、請求項13又は請求項14に記載のドレーンカテーテル。
【請求項16】
前記マーカ部は、前記中央ルーメンを形成する外壁に前記移行部の全長に亘って設けられている、請求項15に記載のドレーンカテーテル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ドレーンカテーテルに関する。
【背景技術】
【0002】
手術後に体内の例えば胸腔、腹腔、創部等において発生する血液、膿、滲出液等(以下、「滲出液等」ともいう。)を体外へ排出するために、ドレーンカテーテルと呼ばれるチューブが用いられる。一般的なドレーンカテーテルは、体内に留置され、滲出液等を捕集する集液部と、貯留バッグ、吸引装置等に接続される排液部と、集液部と排液部とを接続する移行部と、を有している。
【0003】
体内において発生する滲出液等は、種々の成分を含み凝固しやすい。また、凝血塊や体組織断片等の固形又は半固形物が含まれている場合も多い。このため、滲出液等を捕集して体外へ導くドレーンカテーテルには、狭窄や閉鎖が生じやすい。詰まりの発生を抑制して集液部を閉鎖しにくくするために、集液部を長辺方向に延びる複数の部分に分割するとともに、各部分に長辺方向に延びるスリット等を設けることが行われている(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-205939号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、集液部における流路面積を大きくするためには、集液部の肉厚を薄くすることが考えられる。しかしながら、集液部の肉厚を薄くすると、集液部の成形時やドレーンカテーテルの使用時において、集液部の形状を安定して保持することが困難になるという問題があった。
【0006】
そこで本開示では、形状を安定して保持することができるとともに、十分な流路面積を確保できるドレーンカテーテルをもたらすことを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、ここに開示するドレーンカテーテルの一態様は、集液部と、前記集液部の近位側に設けられた移行部と、前記移行部の近位側に設けられた排液部と、前記集液部、前記移行部及び前記排液部の全長に亘って軸方向に延びる主流路と、を備えたフラット型のドレーンカテーテルであって、前記集液部は、前記主流路を形成する主ルーメンと、径方向断面において前記主ルーメンの外壁における互いに対向する位置に外方に向かってそれぞれ立設されるとともに、軸方向に延びる2つの隔壁部と、を有しており、前記2つの隔壁部の各々は、軸方向に延びる第1溝部を含む。
【0008】
本構成では、第1溝部を含む隔壁部が2つ、主ルーメンの外壁における互いに対向する位置に設けられている。すなわち、集液部において、主ルーメンは、2つの第1溝部の間に配置されている。これにより、集液部の径方向断面において、長辺方向中央に主ルーメンが配置されているから、集液部の肉厚を薄くしても、集液部の形状を安定して保持できる。また、集液部の肉厚を薄くできることにより、集液部における十分な流路面積を確保できる。さらに、本構成では、第1溝部は隔壁部に含まれているから、主ルーメンの変形の影響を受けにくい。すなわち、例えば主ルーメンを形成する外壁に対して短辺方向両側から主ルーメンが押し潰されるような外力が作用した場合であっても、主ルーメンの変形の影響が第1溝部にまで及ぶことを抑制でき、第1溝部の形状をある程度保持できる。そうして、例えば主ルーメンが潰れても、第1溝部の流路を確保できる。
【0009】
前記隔壁部は、径方向断面において、前記主ルーメンの外壁に接続された第1隔壁と、前記第1隔壁の先端部からさらに外方に向かって延設された2つの第2隔壁と、前記2つの第2隔壁の各々の先端部からさらに外方に向かって延設された2つの第3隔壁と、を有しており、前記第1溝部は、前記2つの第2隔壁と、前記2つの第3隔壁と、により囲まれた空間からなることが好ましい。
【0010】
本構成によれば、第1溝部の十分な流路面積を確保できる。
【0011】
前記第1隔壁及び前記2つの第2隔壁は、径方向断面において、Y字状に配置されていることが好ましい。
【0012】
本構成によれば、第1隔壁及び2つの第2隔壁は、Y字状に配置されているから、集液部の成形時に、これらの隔壁がバランスよく形成される。そうして、集液部を薄肉化しても、集液部の成形時に、第1溝部の形状を確実に保持できる。また、第1隔壁及び2つの第2隔壁がY字状に配置されているから、隔壁部は適度な柔軟性を有する。これにより、集液部を臓器と臓器との間等の狭い部位に配置したときに、第1溝部の流路を保持しつつ、周囲の形状に追従して変形できる。そうして、滲出液等の効果的な排出と患者への負担軽減とを両立できる。
【0013】
前記2つの第2隔壁における前記第1隔壁が存在しない側の互いのなす角度は、60°以上180°未満であることが好ましい。
【0014】
本構成によれば、集液部の成形時に、これらの隔壁がバランスよく形成される。そうして、集液部を薄肉化しても、第1溝部の形状を確実に保持できる。また、隔壁部に適度な柔軟性を付与できる。
【0015】
前記2つの第3隔壁の先端部の各々は、互いに近づく方向に向かって延設された湾曲部を備えており、前記湾曲部の先端により、軸方向に延びる第1スリットが形成されていることが好ましい。
【0016】
本構成では、軸方向に延びる第1スリットを通じて第1溝部に滲出液等が案内される。これにより、第1溝部において詰まりが生じにくく、滲出液等の効果的な排出が可能となる。
【0017】
前記集液部の近位端部は、前記2つの第3隔壁の先端部が互いに接続されることにより前記2つの第2隔壁及び前記2つの第3隔壁により形成され、前記第1溝部に接続された第1ルーメンを含むことが好ましい。
【0018】
集液部の近位端は、移行部と接続されている。当該近位端を含む近位端部において、第1ルーメンを備えることにより、集液部から移行部にかけて、ドレーンカテーテルの硬度変化を段階的に変化させることができる。そうして、集液部と移行部との接続部分における耐キンク性を向上できる。
【0019】
前記隔壁部は、径方向断面において、さらに、前記第2隔壁の先端部に接続され且つ前記主ルーメン側に向かって延設された第4隔壁を有しており、前記集液部は、さらに、前記第1隔壁と、前記第2隔壁と、前記第4隔壁と、前記主ルーメンの外壁と、により囲まれた空間からなり、軸方向に延びる第2溝部を有することが好ましい。
【0020】
本構成によれば、第1溝部に加えて、主ルーメン周りの第2溝部においても滲出液の吸引が可能となるから、集液部周りの滲出液等を効率よく吸引できる。
【0021】
前記集液部の近位端部は、前記2つの第3隔壁の先端部が互いに接続されることにより前記2つの第2隔壁及び前記2つの第3隔壁により形成され、前記第1溝部に接続された第1ルーメンを含み、前記集液部の近位端部は、前記第4隔壁の先端部が前記主ルーメンの外壁に接続されることにより前記第1隔壁、前記第2隔壁、前記第4隔壁及び前記主ルーメンの外壁により形成され、前記第2溝部に接続された第2ルーメンを含むことが好ましい。
【0022】
本構成によれば、第2溝部の近位端側に第2ルーメンを形成することにより、移行部に形成されたルーメンへの接続が容易になる。
【0023】
前記第2ルーメンの軸方向の長さは、前記第1ルーメンの軸方向の長さよりも短いことが好ましい。
【0024】
第2ルーメンを設けることにより移行部のルーメンへの接続を容易にできる一方、第2溝部よりも流路面積の小さい第2ルーメンの軸方向の長さを長くすると、第2ルーメンにおける閉塞リスクが高まる。本構成によれば、第1ルーメンの軸方向の長さを長くすることにより耐キンク性を向上させつつ、第2ルーメンの軸方向の長さを必要最低限として、移行部のルーメンへのスムーズな接続が可能となる。
【0025】
前記移行部は、前記主ルーメンに接続されて前記主流路を形成する中央ルーメンと、前記中央ルーメンの側方に配置されたサイドルーメンと、を有しており、前記サイドルーメンは、前記第1ルーメン及び前記第2ルーメンに接続されていることが好ましい。
【0026】
本構成によれば、第1溝部及び第2溝部は、第1ルーメン及び第2ルーメンを介して、移行部のサイドルーメンに通じており、滲出液等のスムーズな排出が可能となる。
【0027】
前記集液部は、バリウムを含む樹脂材料製であることが好ましい。
【0028】
本構成によれば、体内に留置された集液部のX線透視下における視認性を向上できる。
【0029】
前記主ルーメンを形成する前記外壁は、前記第1溝部を形成していないことが好ましい。
【0030】
本構成によれば、主ルーメンを形成する外壁は、第1溝部を形成していないから、主ルーメンを形成する外壁に外力が作用して主ルーメンが変形した場合であっても、第1溝部の変形を抑制できる。そうして、例えば主ルーメンが潰れても、第1溝部の流路を確保できる。
【0031】
ここに開示するドレーンカテーテルの一態様は、集液部と、前記集液部の近位側に設けられた移行部と、前記移行部の近位側に設けられた排液部と、前記集液部、前記移行部及び前記排液部の全長に亘って軸方向に延びる主流路と、を備えたフラット型のドレーンカテーテルであって、前記集液部は、前記主流路を形成する主ルーメンと、前記主ルーメンの外周側に配置され、軸方向に延びる複数の溝部と、を有しており、前記移行部は、前記主ルーメンに接続されて前記主流路を形成する中央ルーメンと、前記中央ルーメンの一方側に配置され、前記複数の溝部のうち前記主ルーメンの一方側に配置された溝部に通じる第1サイドルーメンと、前記中央ルーメンの他方側に配置され、前記複数の溝部のうち前記主ルーメンの他方側に配置された溝部に通じる第2サイドルーメンと、を含むトリプルルーメン構造を有している。
【0032】
本構成によれば、移行部がトリプルルーメン構造を有していることにより、各ルーメンの流路面積を十分に確保できる。そうして、ドレーンカテーテル使用時における十分な流量を確保するとともに、流路の閉塞リスクを低減できる。
【0033】
前記移行部は、径方向断面において、長辺方向両側に配置され、前記第1サイドルーメン及び前記第2サイドルーメンの各々を形成する2つの第1壁部と、短辺方向両側に配置され、前記第1サイドルーメン及び前記第2サイドルーメンの各々を形成する4つの第2壁部と、を有しており、前記第1壁部の厚さは、前記第2壁部の厚さよりも大きいことが好ましい。
【0034】
ドレーンカテーテルの使用時、移行部の遠位側は体内に留置される一方、移行部の近位側は体外に配置される。このとき、移行部は糸等により患者の身体の皮膚に縫い付けられて固定される。移行部における第1壁部の厚さが第2壁部の厚さよりも大きいことにより、移行部の耐キンク性を向上できる。そうして、移行部を糸等で縛ったときに移行部が潰れて流路が閉塞するリスクを低減できる。
【0035】
前記移行部は、透明又は半透明の樹脂材料製の本体部と、前記本体部に設けられ、バリウムを含む樹脂材料製のマーカ部と、を有していることが好ましい。
【0036】
本体部が透明又は半透明であることにより、流路に案内された滲出液等の色、状態等を視認できる。また、マーカ部を設けていることにより、体内に留置された部分のX線透視下における視認性も向上できる。
【0037】
前記マーカ部は、前記中央ルーメンを形成する外壁に前記移行部の全長に亘って設けられていることが好ましい。
【0038】
マーカ部は、移行部の全長に亘って設けられているから、移行部における体内に留置された部分の割合に拘わらず、X線透視下における体内での視認性を向上できる。また、マーカ部は、中央ルーメンを形成する外壁に設けられている、すなわち移行部を形成する外壁の長辺方向中央に設けられているから、X線透視下における体内での視認性をさらに向上できる。
【発明の効果】
【0039】
以上述べたように、本開示によると、形状を安定して保持することができるとともに、十分な流路面積を確保できるドレーンカテーテルをもたらすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
図1】本開示に係るドレーンカテーテルの一例を示す全体図である。
図2図1のA-A線における断面図である。
図3図1のB-B線における断面図である。
図4図1のC-C線における断面図である。
図5図1のD-D線における断面図である。
図6図1のE-E線における断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
以下、本開示の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本開示、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものでは全くない。
【0042】
(実施形態1)
<ドレーンカテーテル>
図1は、本開示に係るドレーンカテーテル100の一例を示す全体図である。
【0043】
図1に示すように、ドレーンカテーテル100は、集液部110と、集液部110の近位側に設けられた移行部140と、移行部140の近位側に設けられた排液部160と、を備えた管状の部材である。なお、図1に示すように、ドレーンカテーテル100の体内に留置される側を遠位側、体外に配置される側を近位側とする。
【0044】
ドレーンカテーテル100は、いわゆるマルチスリットタイプのフラット型のドレーンカテーテルである。すなわち、集液部110には、複数のスリットが設けられている。そして、集液部110及び移行部140の径方向断面は長方形、楕円形、長円形等の横長形状を有している。なお、例えば図2に示すように、集液部110及び移行部140の径方向断面において、長手方向及び短手方向をそれぞれ長辺方向及び短辺方向ということがある。また、長辺方向両側を一方側及び他方側ということがある。
【0045】
ドレーンカテーテル100は例えば以下のようにして使用される。すなわち、ドレーンカテーテル100における集液部110及び移行部140の遠位側を体内(胸腔、腹腔、創部等)における、特に臓器と臓器との間等に留置するとともに、移行部140の近位側及び排液部160を体外に配置する。そして、排液部160の近位側を、コネクタを介して貯留バッグ、吸引装置等に接続し、体内に貯留した滲出液等を体外へ排出させる。
【0046】
ドレーンカテーテル100は、集液部110、移行部140及び排液部160の全長に亘って軸方向に延びる主流路101を備えている。主流路101は、後述する主ルーメン101A、中央ルーメン101B及び排液部ルーメン101Cにより構成されている。これらの各ルーメンは互いに滑らかに接続されて、1つの主流路101を形成している。主流路101は、ドレーンカテーテル100を体内に留置した際に、滲出液等を案内する流路の1つとして機能する。
【0047】
なお、ドレーンカテーテル100は、創部の治癒状態等に応じて、サイズの異なるドレーンカテーテルに交換される場合がある。この場合、ドレーンカテーテル100を移行部140で切断し、移行部140の中央ルーメン101Bを介して集液部110の主ルーメン101Aにガイドワイヤを挿通させる。そうして、古いドレーンカテーテル100を除去した後、新しいドレーンカテーテルを、ガイドワイヤを伝って体内に留置させる。従って、主流路101を構成するルーメンのうち、主ルーメン101A及び中央ルーメン101Bは、交換作業で使用するガイドワイヤを挿通させるためのガイドワイヤルーメンとしても機能する。
【0048】
ドレーンカテーテル100の材質は、特に限定されるものではなく、ドレーンカテーテルに一般的に使用される、生体適合性のある材質であってよい。具体的には例えば、ドレーンカテーテル100は、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリエチレン等の樹脂材料製とすることができる。
【0049】
なお、集液部110は、体内に留置される部分であるから、バリウム等の造影剤を含む樹脂材料製であることが好ましい。これにより、体内に留置された集液部110のX線透視下における視認性を向上できる。
【0050】
また、移行部140も、その近位側の部分が体内に留置されるから、後述するように、バリウム等の造影剤を含む樹脂材料製のマーカ部を備えていてもよい。
【0051】
なお、ドレーンカテーテル100は、生体器官へ留置中に体液・組織などと接触して異物反応を生じるのをより効果的に防ぐために、内表面及び外表面の少なくとも一方に種々の生体適合性処理を施したものであってもよい。生体適合性処理の例としては、留置中に血液と接触して血栓が形成されるのを防ぐための抗血栓処理が挙げられる。抗血栓処理は、特に限定されないが、抗血栓性ポリマーを固定化あるいはコーティングする方法、ウロキナーゼ等のプラスミノーゲンアクチベーターを固定化する方法、又はヘパリン等の抗凝固因子を固定化あるいはコーティングする方法等とすることができる。
【0052】
[集液部]
集液部110は、体内に留置され、滲出液等を集液するための部分である。
【0053】
集液部110は、上述のごとく、主流路101を形成する主ルーメン101Aを有する。主ルーメン101Aは、集液部110の軸方向全長に亘って設けられている。
【0054】
なお、図1に示すように、集液部110は、ドレーンカテーテル100の遠位端を含む第1集液部110Aと、第1集液部110Aの近位端に接続された第2集液部110B(近位端部)と、第2集液部110Bの近位端に接続された第3集液部110C(近位端部)と、により構成されている。
【0055】
具体的には、後述する第1溝部111と第2溝部112とが併設されている部分を第1集液部110Aと称する。また、後述する第1ルーメン121と第2溝部112とが併設されている部分を第2集液部110Bと称する。さらに、後述する第1ルーメン121と第2ルーメン132とが併設されている部分を第3集液部110Cと称する。
【0056】
図2図4は、それぞれ第1集液部110A、第2集液部110B、及び第3集液部110Cの径方向断面を示している。なお、第3集液部110Cの近位端は、集液部110の近位端であり、移行部140の遠位端に接続されている。
【0057】
図1及び図2に示すように、集液部110は、主ルーメン101Aの外壁102Aから外方に向かって立設され且つ軸方向に延びる隔壁部105を2つ有している。2つの隔壁部105は、主ルーメン101Aの外壁102Aにおける互いに対向する位置に設けられている。
【0058】
2つの隔壁部105の各々は、当該隔壁部105により形成された空間からなり且つ軸方向に延びる第1溝部111を含む。
【0059】
詳細には、2つの隔壁部105の各々は、第1隔壁113と、2つの第2隔壁114と、2つの第3隔壁115と、を有している。
【0060】
第1隔壁113は、主ルーメン101Aの外壁102Aに接続されている。第2隔壁114は、第1隔壁113の先端部113Aからさらに外方に向かって延設されている。第3隔壁115は、2つの第2隔壁114の各々の先端部114Aからさらに外方に向かって延設されている。
【0061】
第1溝部111は、2つの第2隔壁114と、2つの第3隔壁115と、により囲まれた空間からなる。第1溝部111は、ドレーンカテーテル100を体内に留置した際に、滲出液等を集液するための流路として機能する。
【0062】
本構成では、第1溝部111を含む隔壁部が2つ、主ルーメン101Aの外壁102Aにおける互いに対向する位置に設けられている。すなわち、集液部110において、主ルーメン101Aは、2つの第1溝部111の間に配置されている。これにより、第1集液部110Aの径方向断面において、長辺方向中央に主ルーメン101Aが配置されているから、集液部110の肉厚を薄くしても、集液部110の形状を安定して保持できる。また、集液部110の肉厚を薄くできることにより、集液部110における十分な流路面積を確保できる。なお、集液部110の薄肉化により、集液部110における十分な流路面積を確保することができれば、集液部110のサイズを小さくすることもでき、患者への負担軽減にも繋がる。
【0063】
また、本構成では、第1溝部111は隔壁部105に含まれている。具体的には、第1溝部111は、上述のごとく、隔壁部105を構成する2つの第2隔壁114及び2つの第3隔壁115により形成されているから、主ルーメン101Aを形成する外壁102Aは、第1溝部111を形成していない。
【0064】
これにより、第1溝部111は主ルーメン101Aの変形の影響を受けにくい。すなわち、例えば主ルーメン101Aを形成する外壁102Aに対して短辺方向両側から主ルーメン101Aが押し潰されるような外力が作用した場合であっても、主ルーメン101Aの変形の影響が第1溝部111にまで及ぶことを抑制できる。そうして、第1溝部111の変形を抑制して第1溝部111の形状をある程度保持することができるから、例えば主ルーメン101Aが潰れても、第1溝部111の流路を確保できる。
【0065】
なお、集液部110の肉厚は、特に限定されるものではないが、例えば0.1mm以上0.7mm以下等とすることができる。
【0066】
また、2つの第3隔壁115の先端部115Aの各々は、軸方向に延びる第1スリット111Aを形成している。具体的には、2つの第3隔壁115の先端部115Aの各々は、互いに近づく方向に向かって延設された湾曲部115Bを備えている。互いに対向する湾曲部115Bの先端により、第1スリット111Aが形成されている。
【0067】
第1スリット111Aを通じて第1溝部111に滲出液等が案内される。これにより、第1溝部111において詰まりが生じにくく、滲出液等の効果的な排出が可能となる。また、例えば、短辺方向両側から集液部110に対して該集液部110が押し潰されるような外力が作用した場合であっても、湾曲部115Bの先端が互いに干渉し合って、第1溝部111の空間が潰れにくく流路を確保できる。
【0068】
また、集液部110は、隔壁部105及び主ルーメン101Aの外壁102Aにより形成された空間からなり且つ軸方向に延びる4つの第2溝部112を含む。
【0069】
詳細には、2つの隔壁部105の各々は、さらに、2つの第2隔壁114の各々の先端部114Aに接続され且つ主ルーメン101A側に向かって延設された2つの第4隔壁116を有している。
【0070】
第2溝部112は、第1隔壁113と、第2隔壁114と、第4隔壁116と、主ルーメン101Aの外壁102Aと、により囲まれた空間からなる。第2溝部112は、主ルーメン101Aの外周に4つ形成されている。第2溝部112も、第1溝部111と同様に、ドレーンカテーテル100を体内に留置した際に、滲出液等を集液するための流路として機能する。
【0071】
本構成によれば、第1溝部111に加えて、主ルーメン101A周りの第2溝部112においても滲出液の吸引が可能となるから、主ルーメン101A周りの滲出液等を効率よく吸引できる。特に、第1溝部111は集液部110の長辺方向両側、第2溝部112は集液部110の短辺方向両側に貯留する滲出液等を吸引できるから、集液部110周りの滲出液等を効率よく排出できる。
【0072】
本例のドレーンカテーテル100では、第1集液部110A、好ましくは第1集液部110A及び第2集液部110Bの径方向断面において、第1隔壁113及び2つの第2隔壁114は、Y字状に配置されている。
【0073】
本構成によれば、第1隔壁113及び2つの第2隔壁114は、Y字状に配置されているから、集液部110の成形時に、これらの隔壁がバランスよく形成される。そうして、集液部110を薄肉化しても、第1溝部111及び第2溝部112、好ましくは第1溝部111、第2溝部112及び第1ルーメン121の形状を確実に保持できる。
【0074】
また、第1隔壁113及び2つの第2隔壁114がY字状に配置されていることにより、隔壁部105は適度な柔軟性を有する。これにより、集液部110を臓器と臓器との間等の狭い部位に配置したときに、第1溝部111の流路を保持しつつ、周囲の形状に追従して変形できる。そうして、滲出液等の効果的な排出と患者への負担軽減とを両立できる。
【0075】
なお、2つの第2隔壁114における第1隔壁113が存在しない側の互いのなす角度αは、好ましくは50°以上180°未満、より好ましくは55°以上150°以下、特に好ましくは60°以上120°以下である。角度αが50°未満では、成形時及び使用時において、第1溝部111の形状が保たれず流量を確保できないおそれがある。角度αが180°以上では、例えば、短辺方向両側から集液部110に対して外力が作用した場合等に、該集液部110が潰れやすい構造となるおそれがある。また、集液部110、延いてはドレーンカテーテル100全体の短辺方向の厚みが大きくなるおそれがある。さらに、特に成形時において、第1スリット111A及び第2スリット112Aの形成が困難となり、第1溝部111及び第2溝部112の形状がうまく形成できないおそれがある。
【0076】
角度αを上記範囲とすることにより、集液部110における短辺方向の厚みの増大を抑制しつつ、第1溝部111及び第2溝部112の形状をバランスよく形成及び保持できる。また、隔壁部105に適度な柔軟性を付与できる。さらに、臓器と臓器との間のような外力が作用しやすい個所に留置しても潰れにくい構造とすることができ、流路を確保できる。
【0077】
図2に示すように、2つの隔壁部105は、主ルーメン101Aに関して、すなわち主ルーメン101Aの軸を含み且つ短辺方向に平行な平面P1に関して対称に配置されていることが好ましい。また、第1集液部110Aは、平面P1に関して対称な構造を有していることがより好ましい。
【0078】
さらに、第1集液部110Aは、主ルーメン101Aの軸を含み且つ長辺方向に平行な平面P2に関して対称な構造を有していることが好ましい。
【0079】
本構成によれば、径方向断面において、主ルーメン101Aが2つの隔壁部105に挟まれた形で中央に配置されているため、集液部110の形状がより安定的に保持される。また、本構成では、2つの第1溝部111が主ルーメン101Aを挟んで両側に配置されるとともに、4つの第2溝部112が主ルーメン101Aの外周に規則正しく配置されている。すなわち、第1溝部111及び第2溝部112が主ルーメン101Aの周りにバランスよく配置されている。これにより、主ルーメン101Aの長辺方向両側は第1溝部111を通じて、主ルーメン101Aの短辺方向両側は第2溝部112を通じて、滲出液等の吸引が可能となる。すなわち、例えば主ルーメン101Aが長辺方向の端に配置されている場合等に比べて、主ルーメン101Aの全周に亘って、滲出液等を効果的に集液できる。
【0080】
2つの第2隔壁114の各々と第1隔壁113とのなす角度のうち小さい方の角度をβとすると、集液部110が平面P1及び平面P2に関して対称な形状を有している場合、角度αと、角度βとの間には、α+2β=360°の関係が成り立つ。
【0081】
また、第3隔壁115と第4隔壁116とは第2隔壁114の先端部114Aから互いに反対方向に延びていることが好ましい。言い換えると、第2隔壁114と第3隔壁115とのなす角度γと、第2隔壁114と第4隔壁116とのなす角度δとの和は、例えば150°以上210°以下であることが好ましい。これにより、成形時及び使用時において、第1溝部111及び第2溝部112の形状をより安定して保持できる。
【0082】
2つの第1溝部111の各々の流路面積は、主ルーメン101Aの流路面積と同程度であることが好ましい。
【0083】
また、4つの第2溝部112の流路面積の合計は、主ルーメン101Aの流路面積と同程度であることが好ましい。
【0084】
これにより、主ルーメン101Aに加えて、第1溝部111及び第2溝部112を通じて吸引できる滲出液等の流量を十分に確保できる。なお、この場合、流路面積が同程度とは、第1集液部110Aの径方向断面において、2つの第1溝部111の各々の流路面積又は4つの第2溝部112の流路面積の合計が主ルーメン101Aの流路面積の例えば60%以上120%以下であることをいう。
【0085】
また、4つの第2溝部112の流路面積の合計は、2つの第1溝部111の各々の流路面積と同程度であることが好ましい。本構成によれば、集液部110の短辺方向の厚みの増大化を抑制しつつ、第1溝部111及び第2溝部112を通じて吸引できる滲出液等の流量を十分に確保できる。なお、この場合、流路面積が同程度とは、第1集液部110Aの径方向断面において、4つの第2溝部112の流路面積の合計が2つの第1溝部111の各々の流路面積の例えば60%以上120%以下であることをいう。
【0086】
なお、主ルーメン101Aの内径は、一般的に使用されるガイドワイヤが余裕を持って挿通可能であれば、特に限定されるものではない。当該内径は、例えば、ガイドワイヤの約2倍、具体的には例えば1.3mm以上2.5mm以下等とすることができる。
【0087】
第2集液部110B及び第3集液部110Cは、第1集液部110Aと移行部140との接続のために設けられている。第3集液部110Cは、集液部110の近位端を含んでいる。
【0088】
図3に示すように、第2集液部110B及び第3集液部110Cは、2つの第3隔壁115の先端部115Aが互いに接続されることにより2つの第2隔壁114及び2つの第3隔壁115により形成された第1ルーメン121を含む。第1ルーメン121は、2つの第1溝部111に対応して、主ルーメン101Aの長辺方向両側に1つずつ、計2つ設けられている。2つの第1ルーメン121の各々の遠位端は、2つの第1溝部111の各々の近位端に接続されている。第1ルーメン121は、第2集液部110B及び第3集液部110Cの軸方向全長に亘って設けられている。
【0089】
集液部110の近位端は、移行部140と接続されている。第2集液部110B及び第3集液部110Cにおいて、第1ルーメン121を備えることにより、集液部110から移行部140にかけて、ドレーンカテーテル100の硬度変化を段階的に変化させることができる。そうして、集液部110と移行部140との接続部分における耐キンク性を向上できる。
【0090】
また、図4に示すように、第3集液部110Cは、第4隔壁116の先端部116Aが主ルーメン101Aの外壁102Aに接続されることにより第1隔壁113、第2隔壁114、第4隔壁116及び主ルーメン101Aの外壁102Aにより形成された第2ルーメン132を含む。第2ルーメン132は、4つの第2溝部112に対応して4つ設けられている。4つの第2ルーメン132の各々の遠位端は、4つの第2溝部112の各々の近位端に接続されている。第2ルーメン132は、第3集液部110Cの軸方向全長に亘って設けられている。
【0091】
本構成によれば、第2溝部112の近位端側に第2ルーメン132を形成することにより、移行部140に形成されたルーメン(後述するサイドルーメン143)への接続が容易になるとともに、集液部110から移行部140にかけて急激な硬度変化を抑制して耐キンク性を向上できる。なお、第2ルーメン132は必須の構成ではなく、第2溝部112の近位端が直接サイドルーメン143に接続されていてもよい。
【0092】
第2ルーメン132の軸方向の長さは、第1ルーメン121の軸方向の長さよりも短いことが好ましい。言い換えると、第1ルーメン121の軸方向の長さは、第2ルーメン132の軸方向の長さよりも長いことが好ましい。
【0093】
第2ルーメン132を設けることにより、第1溝部111から移行部140のサイドルーメン143へ滑らかな接続が得られる。一方で、第2ルーメン132は、第2スリット112Aを閉じることにより形成される都合上、第2溝部112よりも流路面積が小さくなる傾向がある。また、ドレーンカテーテル100はフラット型であり、短辺方向の厚みの増大を抑えて集液部110の大径化を抑制する観点から、そもそも、第2溝部112の流路面積は、主ルーメン101A及び第1溝部111の流路面積と比べて小さく設定されている。従って、第2ルーメン132の軸方向の長さを長くすると、第2ルーメン132における閉塞リスクが高まる。
【0094】
第2ルーメン132の軸方向の長さを長くすることにより、耐キンク性が向上する可能性はあるが、第1ルーメン121の軸方向の長さを長くするだけで十分な耐キンク性を確保できる。従って、本構成では、第2ルーメン132の軸方向の長さを短くして、第2ルーメン132における閉塞リスクを抑制しつつ、移行部140のサイドルーメン143への滑らかな接続を可能としている。
【0095】
具体的には例えば、第1ルーメン121の軸方向の長さは、第2ルーメン132の軸方向の長さの1.8倍以上10倍以下とすることができる。
【0096】
第1ルーメン121の軸方向の長さは、集液部110と移行部140との接続部における耐キンク性向上の観点から、例えば5mm以上20mm以下とすることが好ましい。
【0097】
第2ルーメン132の軸方向の長さは、第2ルーメン132における閉塞リスクを抑制しつつ、移行部140のサイドルーメン143への滑らかな接続を得る観点から、例えば1mm以上5mm未満とすることが好ましい。
【0098】
なお、図3及び図4では、第1ルーメン121及び第2ルーメン132の径方向断面形状を略円形として記載しているが、当該形状は円形に限られず、例えば矩形、多角形等であってもよい。
【0099】
[移行部]
移行部140は、集液部110と排液部160とを接続している。すなわち、移行部140の遠位端は、集液部110の近位端に接続されている。また、移行部140の近位端は、排液部160の遠位端に接続されている。
【0100】
移行部140の構成の一例は、後述する実施形態2に係るドレーンカテーテル100の移行部140の構成であるが、実施形態2の構成に限られない。移行部140の構成としては、従来のドレーンカテーテルの移行部の構成を採用してもよい。
【0101】
[排液部]
排液部160は、上述のごとく、体外に配置され、貯留バッグ、吸引装置等と接続される部分である。
【0102】
図5は、排液部160の径方向断面を示している。排液部160は、シングルルーメン構造を有しており、主流路101を形成する排液部ルーメン101Cを有する。
【0103】
排液部160は、近位側の第1排液部160Aと、遠位側の第2排液部160Bとにより構成されている。
【0104】
第1排液部160Aは、排液部160の遠位端を含み、移行部140の近位端に接続されている。第1排液部160Aの内径は、第2排液部160Bの内径よりも大きく設定されている。排液部ルーメン101Cは、移行部140の中央ルーメン101B及びサイドルーメン143に接続されている。言い換えると、中央ルーメン101B及びサイドルーメン143は、第1排液部160Aにおいて1つの排液部ルーメン101Cに集約される。
【0105】
本構成により、集液部110の主ルーメン101A、第1溝部111及び第2溝部112を通じて集液された滲出液等は、第1ルーメン121、第2ルーメン132、中央ルーメン101B、サイドルーメン143、及び排液部ルーメン101Cを通じて体外に排出される。
【0106】
なお、図1では、第1排液部160A及び第2排液部160Bの接続部に段差部が設けられているが、当該構成に限られるものではなく、当該段差部は形成されていなくてもよい。
【0107】
<ドレーンカテーテルの製造方法>
ドレーンカテーテル100の製造方法としては、特に限定されるものではなく、公知の方法を適宜採用できる。
【0108】
具体的には例えば、集液部110及び移行部140を別体成形として、接着や熱溶着等の手段により互いに固着するようにしてもよい。集液部110及び移行部140は、それぞれ押出成形等で成形することにより得られる。また、集液部110及び移行部140は、一体成形されてもよい。
【0109】
排液部160としては、特に限定されるものではなく、例えば市販のチューブ等、ドレーンカテーテルに一般的に使用される材料を使用すればよい。排液部160と移行部140との接続も接着や熱溶着等の手段により互いに固着させることができる。
【0110】
上述の生体適合性処理を施す場合には、集液部110、移行部140及び排液部160を固着させた後、ドレーンカテーテル100全体に処理を施せばよい。
【0111】
(実施形態2)
以下、本開示に係る他の実施形態について詳述する。なお、これらの実施形態の説明において、実施形態1と同じ部分については同じ符号を付して詳細な説明を省略する。
【0112】
[集液部]
本実施形態に係るドレーンカテーテル100の集液部110の一例は、実施形態1の集液部110であるが、主ルーメン101A及び複数の溝部を有していれば、上記実施形態1の構成に限られない。従来のドレーンカテーテルの集液部の構成を採用してもよい。
【0113】
なお、以下では、集液部110は、実施形態1の構成を有しているものとして説明する。
【0114】
[移行部]
本実施形態に係るドレーンカテーテル100は、移行部140の構成に特徴がある。
【0115】
移行部140は、集液部110と排液部160とを接続している。すなわち、移行部140の遠位端は、集液部110の近位端に接続されている。また、移行部140の近位端は、排液部160の遠位端に接続されている。
【0116】
上述のごとく、ドレーンカテーテル100を体内に留置した際に、移行部140は、その遠位側部分が体内、近位側部分が体外に配置される。そして、ドレーンカテーテル100による滲出液の捕集の間、当該移行部140は身体に固定される。従って、移行部140の肉厚は、耐キンク性向上の観点から、集液部110の肉厚と比べて、厚くなるように構成されている。具体的には例えば、移行部140の肉厚は、集液部110の肉厚の1.1倍~5.0倍程度とすることができる。
【0117】
図6は、移行部140の径方向断面を示している。図6に示すように、移行部140は、トリプルルーメン構造を有しており、主ルーメン101Aに接続されて主流路101を形成する中央ルーメン101Bと、中央ルーメン101Bの側方に配置された2つのサイドルーメン143と、を含む。
【0118】
サイドルーメン143は、中央ルーメン101Bを挟んでその両側に1つずつ配置されている。2つのサイドルーメン143のうち、一方側に配置されたサイドルーメン143を第1サイドルーメン143A、他方側に配置されたサイドルーメン143を第2サイドルーメン143Bと称する。
【0119】
図1に示すように、一方側に配置された第1サイドルーメン143Aは、一方側に配置された第1ルーメン121及び2つの第2ルーメン132に接続されている。言い換えると、一方側に配置された第1ルーメン121及び2つの第2ルーメン132は、第1サイドルーメン143Aに集約されている。そうして、第1サイドルーメン143Aは、集液部110において主ルーメン101Aの一方側に配置された第1溝部111及び2つの第2溝部112に通じている。
【0120】
また、他方側に配置された第2サイドルーメン143Bは、他方側に配置された第1ルーメン121及び2つの第2ルーメン132に接続されている。言い換えると、他方側に配置された第1ルーメン121及び2つの第2ルーメン132は、第2サイドルーメン143Bに集約されている。そうして、第2サイドルーメン143Bは、集液部110において主ルーメン101Aの他方側に配置された第1溝部111及び2つの第2溝部112に通じている。
【0121】
移行部140がトリプルルーメン構造を有していることにより、移行部140における各ルーメンの流路面積を十分に確保できる。そうして、ドレーンカテーテル100の使用時における十分な流量を確保するとともに、流路の閉塞リスクを低減できる。また、第1溝部111及び第2溝部112は、第1ルーメン121及び第2ルーメン132を介して、移行部140のサイドルーメン143に通じているから、集液部110周りの滲出液等を効率よく吸引できる。
【0122】
なお、移行部の径方向断面において、第1サイドルーメン143A及び第2サイドルーメン143Bは、中央ルーメン101Bに関して対称に設けられていることが好ましい。
【0123】
これにより、上述のごとく、集液部110が平面P1及び平面P2に関して対称な形状を有している場合に、第1ルーメン121及び第2ルーメン132のサイドルーメン143への接続が容易となる。
【0124】
なお、上述のごとく、ドレーンカテーテル100は、創部の治癒状態等に応じて、サイズの異なるドレーンカテーテルに交換される場合がある。この場合、ドレーンカテーテル100を移行部140で切断し、移行部140の中央ルーメン101Bを介して集液部110の主ルーメン101Aにガイドワイヤを挿通させる。従って、主ルーメン101A及び中央ルーメン101Bは、交換作業で使用するガイドワイヤを挿通させるためのガイドワイヤルーメンとしても機能する。
【0125】
ガイドワイヤを第1溝部111や第2溝部112等のスリットを有するルーメンに挿通させると、ルーメンからのガイドワイヤの飛び出しにより組織を損傷するおそれがある。従って、ガイドワイヤが挿通されるルーメン、すなわちガイドワイヤルーメンは、集液部110の全長に亘ってスリットのないルーメンであることが望ましい。本構成では、中央ルーメン101Bは、移行部140の3つのルーメンのうち中央に配置されている。従って、移行部140が4つ以上のルーメンを有する場合や、ガイドワイヤルーメンが長辺方向一方側又は他方側に形成されている場合と比較して、ガイドワイヤの挿通個所を誤る可能性が低減される。
【0126】
移行部140は、径方向断面において、長辺方向両側に配置され、第1サイドルーメン143A及び第2サイドルーメン143Bの各々を形成する2つの第1壁部141と、短辺方向両側に配置され、第1サイドルーメン143A及び第2サイドルーメン143Bの各々を形成する4つの第2壁部142と、を有している。
【0127】
第1壁部141の厚さT1は、第2壁部142の厚さT2よりも大きいことが好ましい。
【0128】
上述のごとく、ドレーンカテーテル100の使用時、移行部140は糸等により患者の身体の皮膚に縫い付けられて固定される。横長形状の移行部140を糸等で縛ると、長辺方向両側へかかる荷重が短辺方向両側へかかる荷重よりも大きくなる傾向がある。第1壁部141の厚さT1が第2壁部142の厚さT2よりも大きいことにより、移行部140の耐キンク性を向上できる。そうして、移行部140を糸等で縛ったときに移行部140が潰れて流路が閉塞するリスクを低減できる。
【0129】
具体的には例えば、第1壁部141の厚さT1は、第2壁部142の厚さT2の1.3倍以上3倍以下、好ましくは1.5倍以上2.5倍以下とすることができる。
【0130】
移行部140は、透明又は半透明の樹脂材料製の本体部144と、本体部144に設けられ、バリウム等の造影剤を含む樹脂材料製のマーカ部145と、を有していることが好ましい。
【0131】
本体部144が透明又は半透明であることにより、流路に案内された滲出液等の色、状態等を視認できる。また、マーカ部145を設けていることにより、体内に留置された部分のX線透視下における視認性も向上できる。
【0132】
マーカ部145は、中央ルーメン101Bを形成する外壁102Bに移行部140の全長に亘って設けられていることが好ましい。
【0133】
マーカ部145は、移行部140の全長に亘って設けられているから、移行部140における体内に留置された部分の割合に拘わらず、X線透視下における体内での視認性を向上できる。また、マーカ部145は、中央ルーメン101Bを形成する外壁102Bに設けられている、すなわち移行部140を形成する外壁の長辺方向中央に設けられているから、X線透視下における体内での視認性をさらに向上できる。
【0134】
なお、集液部110全体がバリウム等の造影剤を含む樹脂材料製の場合、移行部140が本体部144及びマーカ部145を有することにより、X線透視下における集液部110と移行部140との境界部分の視認性も向上する。
【0135】
図6では、中央ルーメン101Bの径方向断面形状を略円形として記載している。また、サイドルーメン143の径方向断面形状を略矩形として記載している。中央ルーメン101B及びサイドルーメン143の径方向断面形状は上記形状に限られず、円形、矩形、多角形等の他の形状であってもよい。なお、サイドルーメン143の径方向断面形状は、流路面積を増加させる観点からは略矩形が好ましい。
【産業上の利用可能性】
【0136】
本開示は、形状を安定して保持することができるとともに、十分な流路面積を確保できるドレーンカテーテルをもたらすことができるので、極めて有用である。
【符号の説明】
【0137】
100 ドレーンカテーテル
101 主流路
101A 主ルーメン
101B 中央ルーメン
102A (主ルーメンの)外壁
102B (中央ルーメンの)外壁
105 隔壁部
110 集液部
110A 第1集液部
110B 第2集液部(近位端部)
110C 第3集液部(近位端部)
111 第1溝部
111A 第1スリット
112 第2溝部
113 第1隔壁
114 第2隔壁
115 第3隔壁
115B 湾曲部
116 第4隔壁
121 第1ルーメン
132 第2ルーメン
140 移行部
141 第1壁部
142 第2壁部
143 サイドルーメン
143A 第1サイドルーメン
143B 第2サイドルーメン
144 本体部
145 マーカ部
160 排液部
図1
図2
図3
図4
図5
図6