(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023170224
(43)【公開日】2023-12-01
(54)【発明の名称】充電装置および充電システム
(51)【国際特許分類】
H02J 7/00 20060101AFI20231124BHJP
B60L 53/30 20190101ALI20231124BHJP
B60L 53/66 20190101ALI20231124BHJP
【FI】
H02J7/00 P
H02J7/00 C
B60L53/30
B60L53/66
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022081796
(22)【出願日】2022-05-18
(71)【出願人】
【識別番号】000004606
【氏名又は名称】ニチコン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000475
【氏名又は名称】弁理士法人みのり特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼口 良輔
【テーマコード(参考)】
5G503
5H125
【Fターム(参考)】
5G503AA01
5G503BA01
5G503BB02
5G503CA01
5G503DA04
5G503FA06
5G503GB03
5G503GD03
5G503GD06
5H125AA01
5H125AC12
5H125AC23
5H125BC01
5H125BE02
5H125CC06
5H125CD10
5H125DD02
5H125EE61
(57)【要約】
【課題】利用者の利便性を向上させ、かつ充電料金の払い戻しの手段を不要にすることが可能な充電装置を提供する。
【解決手段】課金装置20および電動車30と通信可能に構成された充電装置10であって、電動車30に充電電流を供給する電力変換部11と、充電電流の電流値が目標値に一致するように電力変換部11に対して充電電流制御を行う制御部15と、を備え、制御部15は、課金装置20による決済完了通知を取得するまでの第1期間に、充電電流経路の絶縁診断を含む充電開始シーケンスを実行し、かつ充電開始シーケンスの完了後に目標値を0に設定して充電電流制御を開始し、決済完了通知を取得した後の第2期間に、目標値を変更して電動車30に充電電流を供給することを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
課金装置および電動車と通信可能に構成された充電装置であって、
前記電動車に充電電流を供給する電力変換部と、
前記充電電流の電流値が目標値に一致するように前記電力変換部に対して充電電流制御を行う制御部と、
を備え、
前記制御部は、
前記課金装置から充電料金に関する決済完了通知を取得するまでの第1期間に、充電電流経路の絶縁診断を含む充電開始シーケンスを実行し、かつ前記充電開始シーケンスの完了後に前記目標値を0に設定して前記充電電流制御を開始し、
前記決済完了通知を取得した後の第2期間に、前記目標値を変更して前記電動車に前記充電電流を供給する
ことを特徴とする充電装置。
【請求項2】
前記制御部は、
前記電動車に対して前記充電電流の出力可能電流値を送信し、
前記電動車から前記出力可能電流値を上限値とする範囲内で設定された充電電流指令値を受信し、
前記充電電流指令値を前記目標値に設定し、
前記第1期間において、前記出力可能電流値を0とし、
前記第2期間において、前記出力可能電流値を0から変更する
ことを特徴とする請求項1に記載の充電装置。
【請求項3】
前記制御部は、
前記電動車に対して前記充電電流の出力可能電流値を送信し、
前記電動車から前記出力可能電流値を上限値とする範囲内で設定された充電電流指令値を受信し、
前記充電電流指令値を上限値とする範囲内で前記目標値を設定し、
前記第1期間において、前記目標値を0に設定し、
前記第2期間において、前記目標値を前記充電電流指令値に変更する
ことを特徴とする請求項1に記載の充電装置。
【請求項4】
前記電力変換部は、
交流電圧を直流電圧に変換するPFC回路と、
前記PFC回路から出力された前記直流電圧に基づいて前記充電電流を生成するDC/DCコンバータ回路と、を備え、
前記制御部は、前記充電開始シーケンスの完了後から前記決済完了通知を取得するまでの間、前記DC/DCコンバータ回路を駆動させることなく前記PFC回路を駆動させる
ことを特徴とする請求項1に記載の充電装置。
【請求項5】
課金装置と、
前記課金装置および電動車と通信可能に構成された請求項1~4のいずれかに記載の充電装置と、を含む
ことを特徴とする充電システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動車の充電を行う充電装置および充電システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、電気自動車やプラグインハイブリッド車等の電動車の充電を行う充電装置と、当該充電装置の利用料金(充電料金)に関する決済を行う課金装置とを備える充電システムが知られている(例えば、非特許文献1参照)。充電装置の利用者は、課金装置による決済完了後に、電動車の充電を行うことができる。
【0003】
具体的には、充電装置は、課金装置による決済完了後に充電開始シーケンス(コネクタロック、絶縁診断、および電動車のコンタクタONの検知を含む一連の制御)を開始し、当該充電開始シーケンスの完了後に、電動車に対する充電電流の供給を開始する。
【0004】
しかしながら、この場合、充電開始シーケンスに所定の時間(例えば、30秒程度)を要するため、決済完了後に待機時間が発生してしまう。利用者は、課金装置による決済完了後、充電電流の供給が開始されるのを確認することなくその場を離れてしまうと、充電コネクタの差し込み不良等で充電開始シーケンスの実行中にエラーが発生した場合、戻ってきた時に充電が全く行われていなかったという問題が起こり得る。
【0005】
さらに、電動車および/または充電装置に故障等があり充電できない場合、課金装置による決済完了後に充電料金の払い戻しが必要となるため、別途、充電料金の払い戻しの手段を設ける必要がある。
【0006】
なお、電動車の充電規格であるCHAdeMO規格では、充電開始シーケンスが完了してから充電装置が充電電流の制御を開始するまでの時間が1~2秒程度と定められている。このため、従来の充電装置および充電システムでは、決済完了前に充電開始シーケンスを実行しておき、決済完了を待って、決済完了後に充電電流の制御を開始することはできなかった。仮に、決済完了前に充電開始シーケンスを実行すると、決済完了前に電動車への充電電流の供給が開始されてしまい、充電システムの事業者が不利益を被るおそれがあった。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】ジャパンチャージネットワーク株式会社、“充電方法の説明”、[online]、ジャパンチャージネットワーク株式会社ホームページ、[令和4年4月6日検索]、インターネット[URL:https://www.evcharger-network.com/charging_method/]
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであって、その課題とするところは、利用者の利便性を向上させ、かつ充電料金の払い戻しの手段を不要にすることが可能な充電装置および充電システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明に係る充電装置は、
課金装置および電動車と通信可能に構成された充電装置であって、
前記電動車に充電電流を供給する電力変換部と、
前記充電電流の電流値が目標値に一致するように前記電力変換部に対して充電電流制御を行う制御部と、
を備え、
前記制御部は、
前記課金装置から充電料金に関する決済完了通知を取得するまでの第1期間に、充電電流経路の絶縁診断を含む充電開始シーケンスを実行し、かつ前記充電開始シーケンスの完了後に前記目標値を0に設定して前記充電電流制御を開始し、
前記決済完了通知を取得した後の第2期間に、前記目標値を変更して前記電動車に前記充電電流を供給することを特徴とする。
【0010】
この構成では、決済完了通知を取得するまでの第1期間に絶縁診断を含む充電開始シーケンスを実行する。これにより、決済完了後の待機時間を短縮することができる。さらに、充電開始シーケンスの実行中に起こりうるエラー(例えば、コネクタ部の差し込み不良によるエラー)が決済完了後に発生することがないため、充電料金の払い戻しの手段が不要となり、利用者は充電電流の供給が開始されるのを確認することなくその場を離れることができる。
【0011】
また、この構成では、第1期間の充電開始シーケンスの完了後から決済完了通知の取得までの間に、充電電流の目標値を0に設定して充電電流制御を開始し、第2期間に目標値を変更して電動車に充電電流を供給する。これにより、CHAdeMO規格を遵守した上で、決済完了前に電動車への充電(充電電流の供給)が開始されるのを回避することができる。
【0012】
前記充電装置において、
前記制御部は、
前記電動車に対して前記充電電流の出力可能電流値を送信し、
前記電動車から前記出力可能電流値を上限値とする範囲内で設定された充電電流指令値を受信し、
前記充電電流指令値を前記目標値に設定し、
前記第1期間において、前記出力可能電流値を0とし、
前記第2期間において、前記出力可能電流値を0から変更するよう構成できる。
【0013】
前記充電装置において、
前記制御部は、
前記電動車に対して前記充電電流の出力可能電流値を送信し、
前記電動車から前記出力可能電流値を上限値とする範囲内で設定された充電電流指令値を受信し、
前記充電電流指令値を上限値とする範囲内で前記目標値を設定し、
前記第1期間において、前記目標値を0に設定し、
前記第2期間において、前記目標値を前記充電電流指令値に変更するよう構成できる。
【0014】
前記充電装置において、
前記電力変換部は、
交流電圧を直流電圧に変換するPFC回路と、
前記PFC回路から出力された前記直流電圧に基づいて前記充電電流を生成するDC/DCコンバータ回路と、を備え、
前記制御部は、前記充電開始シーケンスの完了後から前記決済完了通知を取得するまでの間、前記DC/DCコンバータ回路を駆動させることなく前記PFC回路を駆動させるよう構成できる。
【0015】
上記課題を解決するために、本発明に係る充電システムは、
課金装置と、
前記課金装置および電動車と通信可能に構成された前記いずれかの充電装置と、を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、利用者の利便性を向上させ、かつ充電料金の払い戻しの手段を不要にすることが可能な充電装置および充電システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の一実施形態に係る充電装置および充電システムのブロック図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る充電装置の制御(充電開始シーケンスおよび充電実行シーケンス)を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、添付図面を参照して、本発明に係る充電装置および充電システムの実施形態について説明する。
【0019】
図1に、本発明の一実施形態に係る充電システム1を示す。充電システム1は、充電装置10および課金装置20を含む。充電装置10は、電動車30に対して充電電流を供給するよう構成され、課金装置20は、充電装置10の利用料金(充電料金)に関する決済を行うよう構成される。
【0020】
充電装置10は、電力変換部11(PFC(Power Factor Correction)回路12およびDC/DCコンバータ回路13)と、コネクタ部14と、制御部15と、操作部16と、交流端子T1とを備える。交流端子T1には、交流電源(例えば、電力系統)が接続され、交流電源の交流電圧が入力される。
【0021】
電力変換部11は、上記のとおり、PFC回路12とDC/DCコンバータ回路13とで構成される。交流端子T1側から順に、PFC回路12、DC/DCコンバータ回路13が設けられ、DC/DCコンバータ回路13から出力される直流の充電電流が、コネクタ部14を介して電動車30に供給される。
【0022】
PFC回路12は、制御部15の制御下で駆動し、交流端子T1側から入力された交流電圧の力率を改善しつつ、当該交流電圧を直流電圧に変換してDC/DCコンバータ回路13に出力するよう構成される。PFC回路12には、昇圧チョッパ方式またはブリッジレス方式等の回路方式が適用できる。
【0023】
DC/DCコンバータ回路13は、制御部15の制御下で駆動し、PFC回路12から入力された直流電圧に基づいて、直流の充電電流を生成するよう構成される。DC/DCコンバータ回路13は、例えば、絶縁トランスと、1次側スイッチング回路と、2次側整流回路とで構成される。
【0024】
コネクタ部14は、電動車30に接続可能に構成される。本実施形態では、コネクタ部14は、CHAdeMO規格に準拠した充電コネクタおよび充電ケーブルを備える。
【0025】
制御部15は、課金装置20および電動車30と相互に通信を行うとともに、充電開始シーケンスおよび充電実行シーケンスを行うよう構成される。電動車30との通信(例えば、CAN通信またはPLC通信)は、コネクタ部14を介して行われる。
【0026】
充電開始シーケンスは、電動車30に充電電流を供給する前に行う一連の制御であり、充電電流経路の絶縁診断等を含む。充電実行シーケンスは、充電開始シーケンスの完了後に続いて行われる一連の制御であり、充電電流の電流値を所定の目標値に一致させるための充電電流制御を含む。充電開始シーケンスおよび充電実行シーケンスの詳細については、後述する。
【0027】
制御部15は、アナログ回路で構成されてもよいし、マイクロコントローラやDSP等のデジタル回路で構成されてもよいし、アナログ回路とデジタル回路とを組み合わせた回路で構成されてもよい。また、制御部15は、充電電流の電流値を検出するための検出回路を含み、当該検出回路の検出値に基づいて上記の充電電流制御を行う。
【0028】
操作部16は、利用者が操作できるように構成され、操作パネルおよび/または操作ボタンを含む。例えば、利用者は、操作部16において充電開始操作を行うことで、充電時間を設定して、制御部15に充電開始シーケンスを開始させることができる。
【0029】
課金装置20は、課金受付部21と、決済処理部22とを備える。本実施形態の課金装置20は、充電装置10の外部に設けられているが、少なくとも一部の構成が充電装置10に搭載されていてもよい。
【0030】
課金受付部21は、利用者による課金操作を受け付けるよう構成される。課金受付部21は、利用者が現金を投入できる現金投入部、プリペイドカード等のカードの読み取りを行うカード読取部、およびスマートフォン等の携帯端末を利用した電子マネーによる課金を受け付ける電子マネー受付部の少なくとも1つを備える。また、課金受付部21は、充電料金を表示する表示部を備える。
【0031】
決済処理部22は、充電料金の決済に関する各種処理を実行するよう構成される。決済に関する各種処理には、課金受付部21において課金操作の受け付けを可能にする課金受付処理と、課金操作に応じて決済を実行する決済処理と、決済完了後に充電装置10に決済完了通知を送信する通知処理とが含まれる。
【0032】
電動車30は、電気自動車またはプラグインハイブリッド車であり、コンタクタ31と、車載電池32と、車両制御部33とを備える。
【0033】
コンタクタ31は、コネクタ部14と車載電池32とを接続する電流経路に介装され、車両制御部33の制御下で、閉状態(ON)と開状態(OFF)とが切換わる。コンタクタ31がONのときはコネクタ部14と車載電池32との電気的接続が確立される一方、コンタクタ31がOFFのときはコネクタ部14と車載電池32との電気的接続が遮断される。
【0034】
車載電池32は、例えば、リチウムイオン電池である。車両制御部33は、コンタクタ31の制御、車載電池32の監視、および制御部15との通信を行うよう構成される。
【0035】
ところで、CHAdeMO規格では、充電装置が「出力可能電流値」を電動車に送信すると、電動車は「出力可能電流値」の範囲内で「充電電流指令値」を充電装置に送信することが定められている。充電装置は、電動車から受信した「充電電流指令値」を「目標値」として、充電電流の電流値を「目標値」に一致させるための充電電流制御を行う。
【0036】
原則として、「出力可能電流値」は充電装置が出力可能な電流値の上限値であり、充電装置が「出力可能電流値」を可変させることはできない。しかしながら、充電装置がダイナミックコントロール機能を有し、かつ電動車がダイナミックコントロール対応車両の場合、充電装置は、一定値であるはずの「出力可能電流値」を可変させることができる。
【0037】
また、原則として、充電装置が「目標値」を「充電電流指令値」と異なる値に可変させることはできない。しかしながら、充電装置が一般社団法人電動車両用電力供給システム協議会によって規定された「電動自動車用充放電システムガイドライン」の充放電モードでの動作を可能とし、かつ電動車が上記「電動自動車用充放電システムガイドライン」に対応した充放電モード対応車両の場合、充電装置は、「充電電流指令値」を上限値とする範囲内で「目標値」を可変させることができる。
【0038】
本実施形態では、充電装置10は、ダイナミックコントロール機能を有し、かつ「電動自動車用充放電システムガイドライン」の充放電モードでの動作を可能とする。また、電動車30は、ダイナミックコントロール対応車両であるか、または「電動自動車用充放電システムガイドライン」に対応した充放電モード対応車両(以下、単に「充放電モード対応車両」という)であるものとする。
【0039】
次に、
図2を参照して、制御部15が行う充電開始シーケンス(S201~S204)および充電実行シーケンス(S206~S210)について説明する。なお、本実施形態では、ステップS201~S207までの期間が本発明の「第1期間」に相当し、ステップS208~S210までの期間が本発明の「第2期間」に相当する。
【0040】
利用者がコネクタ部14を電動車30に接続し(S101)、操作部16において充電時間の設定等を含む充電開始操作を行うと(S102)、制御部15は、充電開始シーケンスを開始して、電動車30の車両制御部33と通信を開始する(S201)。
【0041】
制御部15は、車両制御部33との通信において、車両制御部33から電動車30の車両情報を取得する。車両情報には、電動車30がダイナミックコントロール対応車両であるか否かの情報、充放電モード対応車両であるか否かの情報、および車載電池32に関する情報等が含まれる。
【0042】
車両制御部33との通信を開始した制御部15は、コネクタ部14のコネクタロックを行う(S202)。これにより、コネクタ部14が電動車30にロックされる。なお、コネクタ部14の差し込み不良がある場合は、充電開始シーケンスにおいてエラーが発生し、制御部15は、エラーが発生したことを利用者に知らせる(例えば、操作部16にエラーを表示させる)。
【0043】
コネクタロックが正常に行われると、制御部15は絶縁診断を行う(S203)。絶縁診断において、制御部15は、PFC回路12およびDC/DCコンバータ回路13を駆動させ、DC/DCコンバータ回路13から出力可能な最大電圧を出力させて、充電電流経路における短絡等の異常の有無を診断する。異常がある場合、充電開始シーケンスにおいてエラーが発生し、制御部15はエラーが発生したことを利用者に知らせる。
【0044】
異常がない場合、制御部15は、PFC回路12を駆動させたまま、DC/DCコンバータ回路13の駆動を停止(OFF)させる。これにより、DC/DCコンバータ回路13にはPFC回路12から出力された電圧が印加されるが、DC/DCコンバータ回路13からコネクタ部14へは電圧が出力されない状態となる。また、制御部15は、充電電流経路に異常がないことを示す絶縁診断完了通知を、車両制御部33に送信する。
【0045】
絶縁診断完了通知を受信した車両制御部33は、コンタクタ31を閉状態(ON)に切換えて、コンタクタ31が閉状態(ON)であることを制御部15に通知する。これにより、制御部15は、コンタクタ31の閉状態(ON)を検知して(S204)、充電開始シーケンスを完了させる。
【0046】
充電開始シーケンスを完了させた制御部15は、操作部16に課金操作を促すメッセージ等を表示することで利用者に対して決済要求を通知するとともに、課金装置20に対しても決済要求を通知する(S205)。決済要求の通知を受けた課金装置20は、課金受付部21において充電料金を表示するとともに、決済処理部22において課金受付処理を行う(S301)。なお、充電料金は、例えばステップ102で利用者が設定した充電時間に応じて決定される。
【0047】
制御部15は、決済要求の通知と並行して充電実行シーケンスを開始し、充電電流の目標値を0[A]に設定して充電電流制御を開始する(S206)。目標値を0[A]に設定する際、制御部15は、車両制御部33に充電装置10の装置情報を提供する。装置情報には、「出力可能電流値」に関する情報が含まれる。
【0048】
電動車30がダイナミックコントロール対応車両の場合、制御部15は、「出力可能電流値」を上限値であるX[A](ただし、X>0)から0[A]に変更して車両制御部33に送信する。0[A]の「出力可能電流値」を受信した車両制御部33は、0[A]の「充電電流指令値」を制御部15に送信する。制御部15は、目標値を「充電電流指令値」の0[A]に設定する。
【0049】
電動車30が充放電モード対応車両の場合、制御部15は、X[A]の「出力可能電流値」を車両制御部33に送信する。X[A]の「出力可能電流値」を受信した車両制御部33は、Y[A](ただし、0<Y≦X)の「充電電流指令値」を制御部15に送信する。Y[A]の「充電電流指令値」を受信した制御部15は、Y[A]を上限値とする範囲内で目標値を任意に設定できるので、目標値を0[A]に設定する。
【0050】
目標値を0[A]に設定した制御部15は、DC/DCコンバータ回路13から出力される充電電流が0[A]になるように、充電電流制御を行う。具体的には、制御部15は、PFC回路12を駆動させる一方、DC/DCコンバータ回路13の駆動を停止(OFF)させた状態で、充電電流の電流値を検出するための検出回路の検出値を目標値0[A]に追従させる制御(例えば、フィードバック制御)を行う。これにより、DC/DCコンバータ回路13にはPFC回路12から出力された電圧が印加されるが、DC/DCコンバータ回路13からコネクタ部14へは充電電流が出力されない状態(充電電流が0[A]の状態)となる。
【0051】
本実施形態では、充電開始シーケンスの完了(S204)から充電電流制御の開始(S206)までの時間は、CHAdeMO規格の時間制約(充電開始シーケンスが完了してから充電電流制御を開始するまでの時間が1~2秒程度と定められた時間制約)よりも短い時間に設定される。このため、本実施形態に係る充電装置10は、CHAdeMO規格を遵守した上で、決済完了前に電動車30への充電(充電電流の供給)が開始されるのを回避することができる。
【0052】
利用者が、課金受付部21において課金操作を行うと(S103)、決済処理部22は、課金操作に応じて決済を実行する決済処理を行い(S302)、決済処理が完了すると決済完了通知を制御部15に送信する通知処理を行う(S303)。
【0053】
制御部15は、決済処理部22から決済完了通知を取得すると(S207)、目標値を0[A]から変更して電動車30への充電(充電電流の供給)を開始する(S208)。
【0054】
電動車30がダイナミックコントロール対応車両の場合、制御部15は、「出力可能電流値」を0[A]からX[A]に変更して車両制御部33に送信する。これにより、車両制御部33から受信する「充電電流指令値」がY[A]となるので、制御部15は、目標値をY[A]に設定する。一方、電動車30が充放電モード対応車両の場合、制御部15は、Y[A]を上限値とする範囲内で目標値を任意に設定できるので、目標値をY[A]に設定する。すなわち、電動車30がダイナミックコントロール対応車両の場合、制御部15は決済完了通知を取得するまで(S207)、出力可能電流値を0[A]に設定可能であり、車両制御部33から受信する充電電流指令値が0[A]からY[A]に変更されることはなく(そのため、制御部15が目標値をY[A]に変更することもない)、電動車30が充放電モード対応車両の場合、制御部15は車両制御部33からY[A]の充電電流指令値を受信するものの、決済完了通知を取得するまで(S207)、目標値を0[A]からY[A]に変更することがない。
【0055】
ステップ102で設定された充電時間が経過するか、または車載電池32が満充電状態になると、制御部15は、電動車30への充電を終了させて(S209)、コネクタ部14のコネクタロックを解除する(S210)。その後、充電装置10は待機状態に移行する。
【0056】
上記のとおり、本実施形態の充電装置10は、決済完了通知の取得(S207)までに充電開始シーケンス(S201~S204)を完了させるので、利用者は、決済完了通知後の待機時間を短縮することができる。すなわち、本実施形態の充電装置10によれば、利用者の利便性を向上させることができる。
【0057】
さらに、本実施形態では、充電開始シーケンスの実行中に起こりうるエラー(例えば、コネクタ部14の差し込み不良によるエラー)が決済完了通知後に発生することがないため、充電料金の払い戻しの手段を不要にすることができ、利用者は充電電流の供給が開始されるのを確認することなくその場を離れることができる。
【0058】
以上、本発明に係る充電装置および充電システムの実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。
【0059】
本発明に係る充電装置は、課金装置および電動車と通信可能に構成された充電装置であって、電動車に充電電流を供給する電力変換部と、充電電流の電流値が目標値に一致するように電力変換部に対して充電電流制御を行う制御部と、を備え、制御部は、課金装置から充電料金に関する決済完了通知を取得するまでの第1期間に、充電電流経路の絶縁診断を含む充電開始シーケンスを実行し、かつ充電開始シーケンスの完了後に目標値を0に設定して充電電流制御を開始し、決済完了通知を取得した後の第2期間に、目標値を変更して電動車に充電電流を供給するのであれば、適宜構成を変更できる。
【0060】
例えば、充電装置は、上記の構成に加えて、さらに電動車の車載電池を放電させることができるよう構成されていてもよい。
【符号の説明】
【0061】
1 充電システム
10 充電装置
11 電力変換部
12 PFC回路
13 DC/DCコンバータ回路
14 コネクタ部
15 制御部
16 操作部
20 課金装置
21 課金受付部
22 決済処理部
30 電動車
31 コンタクタ
32 車載電池
33 車両制御部