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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023170227
(43)【公開日】2023-12-01
(54)【発明の名称】電子制御装置
(51)【国際特許分類】
   G06N 20/00 20190101AFI20231124BHJP
【FI】
G06N20/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022081801
(22)【出願日】2022-05-18
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】100106149
【弁理士】
【氏名又は名称】矢作 和行
(74)【代理人】
【識別番号】100121991
【弁理士】
【氏名又は名称】野々部 泰平
(74)【代理人】
【識別番号】100145595
【弁理士】
【氏名又は名称】久保 貴則
(72)【発明者】
【氏名】山本 耕輔
(57)【要約】
【課題】最適な特徴量を自動的に選択することができる電子装置を提供すること。
【解決手段】第2ECUは、複数の特徴量の少なくとも一部である複数の特徴量候補と各特徴量候補における出力データとを含む候補特徴量集合を生成し、候補特徴量集合における特徴量候補の変更と、特徴量候補を変更した候補特徴量集合を用いた予測と、を繰り返し行い、予測の精度向上にかかわっている特徴量候補を選択する(S10~S12)。第2ECUは、目的変数と、選択された特徴量候補と各特徴量候補における複数の出力データを含む更新特徴量集合とをもとに、目的変数の予測に用いる基礎モデルを改良した改良モデルを生成する(S13)。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の特徴量と各特徴量における複数の出力データを含む特徴量集合と、各出力データに対応する目的変数とによって機械学習された基礎モデルを用いて前記目的変数の予測を行う電子制御装置であって、
複数の前記特徴量の少なくとも一部である複数の特徴量候補と各特徴量候補における前記出力データとを含む候補特徴量集合を生成し、前記候補特徴量集合における前記特徴量候補の変更と、前記特徴量候補を変更した前記候補特徴量集合を用いた前記予測と、を繰り返し行い、前記予測の精度向上にかかわっている前記特徴量候補を選択する選択部(S10~S12)と、
前記目的変数と、前記選択部で選択された前記特徴量候補と各特徴量候補における複数の前記出力データを含む更新特徴量集合とをもとに、前記目的変数の前記予測に用いる前記基礎モデルを改良した改良モデルを生成するモデル生成部(S13)と、を備えている電子制御装置。
【請求項2】
前記選択部は、前記特徴量候補を変更した前記候補特徴量集合を用いた前記予測の結果であるコスト値を算出し、前記特徴量候補を変更する際に、前記コスト値が適切な値に近くなる前記特徴量候補を選択する請求項1に記載の電子制御装置。
【請求項3】
前記選択部は、前記コスト値が適切な値に近くなる前記特徴量候補を選択する際に、連続値を予め決められた関数に代入して得られる値と閾値との比較によって、前記連続値を離散値に変換して、前記離散値に対応する前記特徴量候補を選択する請求項2に記載の電子制御装置。
【請求項4】
前記選択部は、前記コスト値が適切な値に近くなる前記特徴量候補を選択する際に、連続値を予め決められた関数に代入して得られる値と閾値との比較によって、前記連続値を離散値に変換して、前記離散値に対応する前記特徴量候補を選択するものであり、
前記関数は、前記値が0から1に収まる性質を有しており、
前記閾値は、0から1の間にある請求項2に記載の電子制御装置。
【請求項5】
前記選択部では、複数の前記特徴量と、複数の前記特徴量を組み合わせて得られる新規特徴量とを含む複数の前記特徴量候補を用いる請求項1に記載の電子制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電子制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1に記載されているように、教師ラベルとセンサ情報とに加えて、教師ラベルの判定に影響する要因を表す要因情報を用いて判定モデルの学習を行う学習方法がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-36379号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、機械学習のモデルの予測精度を向上するためには、既存の特徴量を用いて新たな特徴量を生成することが考えられる。しかしながら、モデルは、新たな特徴量を既存の特徴量に加えたとしても、必ずしも予測精度が向上するとは限らない。つまり、モデルは、目的変数への予測に寄与しない特徴量を加えることで、予測精度が低下する可能性がある。
【0005】
既存の特徴量を用いた新たな特徴量の生成は、人の経験などによる試行錯誤で行われていた。しかしながら、今後は、電子制御装置の制御などに、機械学習を用いたデータ活用を行う可能性がある。この場合、扱うデータの種類と数が膨大なものになることが予測される。よって、モデル生成方法では、予測精度を向上できる新たな特徴量を、人の経験などによって生成することが困難である。
【0006】
開示される一つの目的は、最適な特徴量を自動的に選択することができる電子装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
ここに開示された電子制御装置は、
複数の特徴量と各特徴量における複数の出力データを含む特徴量集合と、各出力データに対応する目的変数とによって機械学習された基礎モデルを用いて目的変数の予測を行う電子制御装置であって、
複数の特徴量の少なくとも一部である複数の特徴量候補と各特徴量候補における出力データとを含む候補特徴量集合を生成し、候補特徴量集合における特徴量候補の変更と、特徴量候補を変更した候補特徴量集合を用いた予測と、を繰り返し行い、予測の精度向上にかかわっている特徴量候補を選択する選択部(S10~S12)と、
目的変数と、選択部で選択された特徴量候補と各特徴量候補における複数の出力データを含む更新特徴量集合とをもとに、目的変数の予測に用いる基礎モデルを改良した改良モデルを生成するモデル生成部(S13)と、を備えていることを特徴とする。
【0008】
ここに開示された電子制御装置によると、選択した特徴量候補を含む更新特徴量集合をもとに、目的変数の予測に用いる基礎モデルを改良した改良モデルを生成する。また、電子制御装置は、特徴量候補を選択する際に、候補特徴量集合における特徴量候補の変更と、特徴量候補を変更した候補特徴量集合を用いた予測と、を繰り返し行い、予測の精度向上にかかわっている特徴量候補を選択する。このため、電子制御装置は、予測の精度向上にかかわっている最適な特徴量を自動的に選択することができる。
【0009】
この明細書において開示された複数の態様は、それぞれの目的を達成するために、互いに異なる技術的手段を採用する。請求の範囲およびこの項に記載した括弧内の符号は、後述する実施形態の部分との対応関係を例示的に示すものであって、技術的範囲を限定することを意図するものではない。この明細書に開示される目的、特徴、および効果は、後続の詳細な説明、および添付の図面を参照することによってより明確になる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】車載システムの概略構成を示すブロック図である。
図2】第2ECUのアルゴリズムの概要を示すフローチャートである。
図3】第2ECUのモデルフリー最適化手法を示すフローチャートである。
図4】第2ECUのコスト関数計算を示すフローチャートである。
図5】記号の明細書中の記載の対応関係を示す図である。
図6】数式1~数式4を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下において、図1図4を参照しながら、本開示を実施するための形態を説明する。
【0012】
本実施形態では、一例として、電子制御装置を、車両に搭載された車載システム100に適用する。車載システム100は、三つのECU11~13と、三つのセンサ21~23を備えている。しかしながら、本開示は、ECU11~13の機能を一つのECUが備えていてもよい。第2ECU12、第3ECU13は、電子制御装置に相当する。また、本開示は、四つ以上のセンサを備えていてもよい。ECUは、Electronic Control Unitの略称である。
【0013】
各ECU11~13は、プロセッサと、メモリ装置と、周辺I/Oなどを備えている。プロセッサは、CPUなどの演算処理装置である。メモリ装置は、揮発性メモリと不揮発性メモリを備えている。周辺I/Oは、通信インタフェースやADコンバータなどを備えている。プロセッサは、メモリ装置に記憶されているプログラムを実行する。プロセッサは、プログラムを実行することでして演算処理を行う。このとき、プロセッサは、メモリ装置に記憶されたデータや周辺I/Oから得られたデータなどを用いつつ演算処理を行う。そして、プロセッサは、演算結果を周辺I/Oから出力する。
【0014】
第1ECU11は、第1センサ21、第2センサ22、第3センサ23が電気的に接続されている。第1ECU11は、各センサ21~23からセンサデータ(センサ値)が入力される。第1ECU11は、車両の各センサ21~23から出力されたセンサデータを統括する。
【0015】
第1センサ21は、エンジン回転数に応じた電気信号であるセンサデータを出力する回転数センサである。第2センサ22は、エンジン温度に応じた電気信号であるセンサデータを出力する温度センサである。第3センサ23は、排ガス中の酸素濃度に応じた電気信号であるセンサデータを出力する酸素濃度センサである。
【0016】
しかしながら、本開示は、これに限定されず、他の物理量に応じた電気信号を出力するセンサであっても採用できる。なお、エンジン回転数、エンジン温度、酸素濃度は、特徴量(ラベル)に相当する。各センサ21~23が出力するセンサデータは、出力データに相当する。
【0017】
第2ECU12は、プロセッサがモデルを構築する。このモデルは、教師あり学習によって得られるものである。詳述すると、モデルは、複数の特徴量と各特徴量における複数の出力データを含む特徴量集合と、各出力データに対応する目的変数とによって機械学習されたものである。また、第2ECU12は、第3ECU13が予測に用いるモデルを構築するともいえる。さらに、第2ECU12は、第3ECU13が予測に用いるモデルである基礎モデルを改良して、改良モデルを生成する。特徴量集合と目的変数とは、例えば第2ECU12のメモリ装置に記憶されている。
【0018】
第2ECU12のプロセッサは、図2図3図4に示すフローチャートを実行することで、改良モデルを生成する。また、第2ECU12のプロセッサは、図6に示す数式1、数式2、数式3、数式4を計算する。第2ECU12の処理動作に関しては、後ほど詳しく説明する。
【0019】
第3ECU13は、モデルがメモリ装置に記憶されている。第3ECU13は、プロセッサが入力されたセンサデータからモデルを用いて目的変数を予測(出力)する。この予測は、識別もしくは回帰である。本実施形態では、エンジン回転数、エンジン温度、酸素濃度のセンサデータから、エンジンの故障予測を行うモデルを採用する。
【0020】
なお、本実施形態では、三つのECU11~13に機能を分散させた例を採用している。しかしながら、本開示は、各ECU11~13の機能を備えた一つのECUであっても採用できる。
【0021】
ここで、図2図6を用いて、第2ECU12(プロセッサ)による処理動作に関して説明する。まず、以下で用いる記号に関して説明する。Xは、既存の特徴量集合であり、n行m列の行列である。nはデータ数、mは特徴量数である。つまり、Xの列要素は、特徴量である。一方、Xの行要素は、各特徴量のデータ(出力データ)である。既存の特徴量集合Xの特徴量は、既存の特徴量ともいえる。Yは、既知の目的変数集合であり、n行1列の列ベクトルである。1は目的変数の数である。nは、目的変数の各データであり、特徴量の各出力データと同数である。
【0022】
train,xtestは、既存の特徴量集合Xを訓練用集合とテスト用集合に分割したものである。訓練用集合xtrainは、t行m列の行列である。tは訓練データのデータ数、mは特徴量の数である。テスト用集合xtestは、(n-t)行m列の行列である。
【0023】
allは、候補特徴量集合である。候補特徴量集合xallは、既存の特徴量集合xtrainの列要素を組み合わせることで得られる新規特徴量集合を、既存の特徴量集合xtrainに追加した特徴量集合である。ここでは、候補特徴量集合xallは、t行(m+l)列の行列であり、l(エル)は、既存の特徴量を用いて作成した新規特徴量の数である。ここでは、一例として、既存の特徴量集合として、訓練用集合xtrainを採用している。
【0024】
xotrは、図5の1段目に記載の記号で表現される。xotrは、候補特徴量集合xallの行列の中から目的変数の予測の精度向上に関わっている特徴量の列ベクトルのみを抽出した特徴量集合である。xotrは、訓練用集合の抽出特徴量集合である。xotrは、t行q列の行列である。qは、目的変数の予測の精度向上に関わっている特徴量の数(1<q<(m+l))である。
【0025】
xoteは、図5の2段目に記載の記号で表現される。xoteは、テスト用集合xtestを用いて候補特徴量集合xallのように、新規特徴量を追加した特徴量集合を作成し、その特徴量からxotrと同じ特徴量の列要素を抽出した特徴量集合である。xoteは、テスト用集合の抽出特徴量集合である。
【0026】
train,ytestは、既存の目的変数集合Yを訓練用集合とテスト用集合に分割したものである。ytrainは、t行1列のベクトルである。ytestは、(n-t)行1列のベクトルである。
【0027】
方策パラメータθは、ステップS11に示すモデルフリーの最適化手法への入力ベクトルである。第2ECU12は、方策パラメータθをもとに、コスト関数(S23)で用いられる途中特徴量集合xtempに採用する列要素を決定する。途中特徴量集合xtempは、モデルフリーの最適化手法において、ロールアウトの途中の方策パラメータθの値に対するコスト値rの計算に使用される特徴量集合である。
【0028】
最適化パラメータθoptは、コスト関数(コスト値r)を最小化するように最適化された方策パラメータθである。言い換えると、θoptは、候補特徴量集合xallの中からどの列要素を抽出するかをつかさどるパラメータである。θoptは、1行(m+l)列の行ベクトルである。第2ECU12は、θoptとxallをもとにxotrを求める。
【0029】
なお、図5の3段面に示すように、数式2などにおけるθの上付き(1)~(m+l)は、θi(k)と記載する。図5の4段面に示すように、数式3におけるΘの上付き(1)~(m+l)は、Θi(k)と記載する。kは、1以上でm+lまでの自然数の連続値である。iは、iは、1以上でロールアウトするまでの自然数の連続値である。ロールアウトする値は、例えば、コスト値rが収束したとみなせる値など、任意に決めることができる。さらに、図5の5段面に示すように、数式4におけるθoptの上付き(j)は、θo(j)と記載する。jは、1≦j<m+lである。
【0030】
図2のフローチャートは、第2ECU12による特徴量を自動的に選択するための処理動作ともいえる。また、図2のフローチャートは、第2ECU12による改良モデルの生成方法ともいえる。さらに、図2のフローチャートは、改良モデルを生成するためのアルゴリズムの概要ともいえる。第2ECU12は、ユーザなどからの指示に応じて図2のフローチャートを開始する。
【0031】
なお、以下においては、基礎モデルおよび改良モデルとして、からエンジンの故障予測を行う予測モデルを構築する例を採用する。まず、各センサ21~23の出力データと、各出力データが出力された際のエンジンの状態(正常、異常)について、それぞれデータを10000個用意する。この場合、出力データ数nは10000である。特徴量は、エンジン回転数、エンジン温度、酸素濃度である。特徴量数mは3である。正常を示すデータと異常を示すデータは、目的変数のデータである。
【0032】
よって、既存の特徴量集合Xは、センサ1~3のセンサ値を列要素に持つ10000行3列の行列となる。既知の目的変数集合Yは、エンジンの状態を列要素に持つ10000行1列の列ベクトルとなる。
【0033】
次に、第2ECU12は、特徴量集合Xを訓練用集合xtrainとテスト用集合xtestに9対1の割合で分割する。同様に、第2ECU12は、目的変数集合Yを訓電用集合ytrain,とテスト用集合ytestに9対1の割合で分割する。訓練用集合xtrainは、9000行3列の行列となる。訓電用集合ytrainは、9000行1列の行列となる。テスト用集合xtestは、1000行3列の行列となる。テスト用集合ytestは、1000行1列の行列となる。なお、ここで採用している訓練用集合のテスト用集合の割合(9対1)は、一例に過ぎない。本開示は、その他の割合であっても採用できる。
【0034】
次に、第2ECU12は、訓練用集合xtrainから候補特徴量集合xallを生成する(選択部)。本実施形態では、各センサ21~23における出力データをかけ合わせて新規特徴量を生成する。つまり、新規特徴量は、第1センサ21、第2センサ22、第3センサ23の列要素を組み合わせたものである。ここでの新規特徴量は、センサb×センサc(1≦b≦3,1≦c≦3)となる。新規特徴量の出力データは、各センサ21~23の組み合わせに対応して、出力データをかけ合わせたデータとなる。
【0035】
そして、第2ECU12は、訓練用集合xtrainの列要素に加えることで、候補特徴量集合xallを生成する。この場合、候補特徴量集合xallは、9000行12列の行列となる。このように、第2ECU12は、候補特徴量集合xallの列要素として、複数の特徴量と、複数の特徴量を組み合わせて得られる新規特徴量とを含む複数の特徴量候補を用いる。
【0036】
なお、候補特徴量集合xallを生成する方法は、これに限定されない。さらに、候補特徴量集合xallは、既存の特徴量集合Xにおける少なくとも一部である複数の特徴量候補と、各特徴量候補における出力データとを含む候補特徴量集合であれば採用できる。よって、候補特徴量集合xallは、既存の特徴量集合Xであっても採用できる。また、候補特徴量集合xallは、既存の特徴量におけるセンサデータの平均値や分散などを用いてもよい。
【0037】
そして、第2ECU12は、ステップS10でθ=θintとする(選択部)。つまり、第2ECU12は、方策パラメータθに初期値θintを代入する。初期値θintは、最初の特徴量選択の際に、既存の特徴量のみを選択するように値が設定される。これは、改良モデルが、既存の特徴量集合Xに基づく基礎モデルよりも予測精度が低下しないようにするためである。例えば、初期値θint=[0.1,0.1,0.1,-0.2,-0.2,…,-0.2]とする。初期値θintは、1行12の行ベクトルである。ここでは、-0.2などの負の値とすることで、最初の特徴量選択の際に、既存の特徴量のみが選択されるようにしている。なお、負の値とする場合は、できるだけ正の値に近い値が好ましい。
【0038】
第2ECU12は、ステップS11でモデルフリーの最適化手法を実行する(選択部)。ステップS11に関しては、図3を用いて説明する。なお、以下におけるθとΘは、数式2、数式3の関係を有している。
【0039】
まず、図3のステップS21では、第2ECU12は、入力の初期値θ=θintを代入する。そして、第2ECU12は、ステップS22で第1ループ処理を行う。第2ECU12は、iの値が1からロールアウトする値までループ処理を行う。つまり、第2ECU12は、図4で定義されたコスト関数を最小化するような方策パラメータθである最適化パラメータθoptを繰り返し計算により求める。言い換えると、第2ECU12は、コスト関数の計算を行うことでコスト値rを求める。第2ECU12は、コスト値rが適切な値に近くなるように繰り返し計算を行うことで、最適化パラメータθoptを求める。また、第2ECU12は、最適化パラメータθoptを求めることで、コスト値rが適切な値に近くなる特徴量候補を選択するともいえる。xotrは、コスト値rが適切な値に近くなる特徴量候補を含んでいる。
【0040】
ここで、ステップS22の第1ループ処理に関して詳しく説明する。第2ECU12は、ステップS23でコスト関数を計算する。ステップS23に関しては、図4を用いて説明する。
【0041】
第2ECU12は、ステップS31で数式1を計算する。第2ECU12は、途中特徴量集合xtempを計算するために、θを数式1のロジスティックシグモイド関数に代入して計算を行う。言い換えると、第2ECU12は、ステップS32の第2ループ処理で、候補特徴量集合xallから途中特徴量集合xtempを選択するためにステップS31を行っている。後ほどステップS24で説明するが、ステップS31で代入される方策パラメータθは、コスト値rが小さくなるように計算された値である。方策パラメータθは、連続値である。
【0042】
なお、ロジスティックシグモイド関数は、予め決められた関数に相当する。ロジスティックシグモイド関数は、Θの値が0から1に収まる性質をもっている。そして、Θの値と比較する第1閾値は、0から1の間にある値を採用する。このように、ロジスティックシグモイド関数は、値の範囲が限定されている。このため、途中特徴量集合xtempを選択するための第1閾値の設定を容易にできる。しかしながら、本開示は、予め決められた関数として、ガウス関数であっても採用できる。
【0043】
第2ECU12は、ステップS32では、第2ループ処理を行う。第2ECU12は、ステップS33でΘi(k)>0.5(第1閾値)であるか否かを判定する。第2ECU12は、Θi(k)>0.5であると判定するとステップS34へ進み、でΘi(k)>0.5であると判定しないとステップS34をスキップする。第1閾値は、閾値に相当する。
【0044】
第2ECU12は、ステップS34で、候補特徴量集合xallのk列の列要素を途中特徴量集合xtempに追加する。k列の列要素とは、候補特徴量集合xallの特徴量のうち、0.5より大きな値のΘi(k)に対応する特徴量である。
【0045】
このように、第2ECU12は、ロジスティックシグモイド関数から得られる値Θi(k)と第1閾値とを比較して、第1閾値より大きな値の値Θi(k)を選択する。よって、第2ECU12は、コスト値rが適切な値に近くなる特徴量候補を選択する際に、ロジスティックシグモイド関数から得られる値Θi(k)と第1閾値との比較によって、連続値を離散値に変換するといえる。
【0046】
そして、第2ECU12は、Θi(k)に対応する特徴量候補を選択する。また、第2ECU12は、Θi(k)と第1閾値との比較により、候補特徴量集合xallから選択する特徴量の種類を決定し、選択された特徴量の種類のみを抜き出すともいえる。また、第2ECU12は、候補特徴量集合xallにおける特徴量候補を変更するともいえる。また、第2ECU12は、特徴量候補を変更した候補特徴量集合である途中特徴量集合xtempを用いた予測の結果であるコスト値rを算出し、特徴量候補を変更する際に、コスト値rが適切な値に近くなる特徴量候補を選択するといえる。
【0047】
モデルフリーの最適化手法は、本来、連続値の最適化に用いられるものである。しかしながら、本開示は、第2ECU12が第2ループ処理S32を行うことで、モデルフリーの最適化手法を特徴量選択の有無という離散値の最適化に適用可能となる。
【0048】
第2ECU12は、ステップS35で、識別手法を用いてコスト値rを計算する。詳述すると、第2ECU12は、訓練用集合ytrain,途中特徴量集合xtempを目的変数とそれに対応する特徴量とし、使用する識別手法を用いてコスト値rを計算する。コスト値rは、損失関数の値に相当する。損失関数の計算は、交差検証を用いる。なお、コスト値rは、回帰や識別などの予測結果の正確さ、精度と言い換えることもできる。本実施形態では、識別手法を用いる例を採用している。しかしながら、本開示は、これに限定されず回帰手法を用いてもよい。
【0049】
第2ECU12は、ステップS36で、コスト値rを戻り値として返す。つまり、第2ECU12は、モデルフリー最適化手法の戻り値とする。よって、コスト値rは、ステップS24で用いられる。
【0050】
ここで、図3の説明に戻る。第2ECU12は、ステップS24で、コスト値rが小さくなるような方策パラメータθi+1を計算する。第2ECU12は、戻り値であるコスト値rと、前回の方策パラメータθとから、方策パラメータθi+1を計算する。
【0051】
第2ECU12は、ステップS25で、最適化された最適化パラメータθoptを戻り値として返す。最適化パラメータθoptは、ステップS12で用いられる。
【0052】
ここで、図2の説明に戻る。第2ECU12は、ステップS12で最適化パラメータθoptと候補特徴量集合xallをもとに、xotrを計算する(選択部)。このとき、第2ECU12は、候補特徴量集合xallのj列の特徴量を抽出するかどうかを判断するために数式4を計算する。そして、第2ECU12は、数式4の値と、第2閾値(0.5)とを比較する。
【0053】
第2ECU12は、数式4の値が0.5よりも大きい場合、その時のjの値が示す、候補特徴量集合xallにおける列要素を抽出する。一方、第2ECU12は、数式4の値が0.5よりも大きくない場合、その時のjの値が示す、候補特徴量集合xallにおける列要素を抽出しない。
【0054】
抽出した列要素は、目的変数の予測精度の向上にかかわっている特徴量とみなす。一方、抽出していない列要素は、目的変数の予測精度の向上にかかわっていない特徴量とみなす。よって、第2ECU12は、抽出した列要素と、その出力データとの行列をxotrとする。このように、第2ECU12は、数式4の計算と比較を、jの値を1からm+lまで切り替えながら繰り返し行いxotrを求める。ここで抽出された列要素は、選択された特徴量候補に相当する。また、xotrは、更新特徴量集合に相当する。
【0055】
以上のように、第2ECU12は、候補特徴量集合xallにおける特徴量候補の変更と、特徴量候補を変更した候補特徴量集合である途中特徴量集合xtempを用いた予測と、を繰り返し行い、予測の精度向上にかかわっている特徴量候補を選択する。そして、第2ECU12は、選択した特徴量候補を含むxotrを求める。
【0056】
第2ECU12は、ステップS13で、ytrain,xotrで学習を行い、訓練済みモデルを求める(モデル生成部)。つまり、第2ECU12は、ytrain,xotrを目的変数と、それに対応する特徴量として学習を行い、訓練済みモデルを求める。言い換えると、第2ECU12は、ステップS12で算出したxotrと、ytrainにおける目的変数とをもとに、目的変数の予測に用いる基礎モデルを改良した改良モデルを生成する。
【0057】
なお、第2ECU12は、最適化パラメータθoptとテストデータxtestをもとに、xoteを求めてもよい。これは、改良モデルを評価するためである。xoteは、xotrと同様の方法で求めることができる。つまり、第2ECU12は、訓練用データxtrainではなく、テスト用データxtestを用いて候補特徴量集合をつくり、ステップS12と同様の処理を行う。そして、第2ECU12は、評価用集合にytest,xoteを用いる。
【0058】
そして、第2ECU12は、ytest,xoteを用いて、改良モデルの評価を行う。つまり、第2ECU12は、新規特徴量を追加した改良モデルが有効かどうかの判断を行う。言い換えると、第2ECU12は、基礎モデルよりも改良モデルの方が予測精度が向上しているか否かを判断する。第2ECU12は、有効と判断した改良モデルを正式に採用してもよい。この場合は、第3ECU13は、改良モデルを用いて、エンジンの故障予測を行う。
【0059】
<効果>
ここに開示された第2ECU12によると、選択した特徴量候補を含む更新特徴量集合xotrをもとに、基礎モデルを改良した改良モデルを生成する。また、第2ECU12は、特徴量候補を選択する際に、途中特徴量集合xtempにおける特徴量候補の変更と、特徴量候補を変更した途中特徴量集合xtempを用いた予測と、を繰り返し行い、予測の精度向上にかかわっている特徴量候補を選択する。そして、第2ECU12は、選択した特徴量候補を含むxotrを求める。このため、第2ECU12は、予測の精度向上にかかわっている最適な特徴量を自動的に選択することができる。
【0060】
なお、第2ECU12は、モデルフリー最適化手法を用いて、識別や回帰などの予測に用いる特徴量の選択を自動化する機能を有しているといえる。第2ECU12は、モデルフリーの自作コスト関数を最小化する手法を実行するものである。この自作コスト関数は、選択する特徴量の種類を入力し、選択した特徴量を用いて識別や回帰などの予測を行った際のコスト関数の値を、自作コスト関数のリターン値として、特徴量を自動で選択するともいえる。
【0061】
以上、本開示の好ましい実施形態について説明した。しかしながら、本開示は、上記実施形態に何ら制限されることはなく、本開示の趣旨を逸脱しない範囲において、種々の変形が可能である。
【0062】
この明細書には、以下に列挙する複数の技術的思想と、それらの複数の組み合わせが開示されている。
【0063】
(技術的思想1)
複数の特徴量と各特徴量における複数の出力データを含む特徴量集合と、各出力データに対応する目的変数とによって機械学習された基礎モデルを用いて目的変数の予測を行う電子制御装置であって、
複数の特徴量の少なくとも一部である複数の特徴量候補と各特徴量候補における出力データとを含む候補特徴量集合を生成し、候補特徴量集合における特徴量候補の変更と、特徴量候補を変更した候補特徴量集合を用いた予測と、を繰り返し行い、予測の精度向上にかかわっている特徴量候補を選択する選択部(S10~S12)と、
目的変数と、選択部で選択された特徴量候補と各特徴量候補における複数の出力データを含む更新特徴量集合とをもとに、目的変数の予測に用いる基礎モデルを改良した改良モデルを生成するモデル生成部(S13)と、を備えている電子制御装置。
【0064】
(技術的思想2)
選択部は、特徴量候補を変更した候補特徴量集合を用いた予測の結果であるコスト値を算出し、特徴量候補を変更する際に、コスト値が適切な値に近くなる特徴量候補を選択する技術的思想1に記載の電子制御装置。
【0065】
(技術的思想3)
選択部は、コスト値が適切な値に近くなる特徴量候補を選択する際に、連続値を予め決められた関数に代入して得られる値と閾値との比較によって、連続値を離散値に変換して、離散値に対応する特徴量候補を選択する技術的思想2に記載の電子制御装置。
【0066】
(技術的思想4)
選択部は、コスト値が適切な値に近くなる特徴量候補を選択する際に、連続値を予め決められた関数に代入して得られる値と閾値との比較によって、連続値を離散値に変換して、離散値に対応する特徴量候補を選択するものであり、
関数は、値が0から1に収まる性質を有しており、
閾値は、0から1の間にある技術的思想2に記載の電子制御装置。
【0067】
(技術的思想5)
選択部では、複数の特徴量と、複数の特徴量を組み合わせて得られる新規特徴量とを含む複数の特徴量候補を用いる技術的思想1~4のいずれか1項に記載の電子制御装置。
【0068】
本開示は、実施形態に準拠して記述されたが、本開示は当該実施形態や構造に限定されるものではないと理解される。本開示は、様々な変形例や均等範囲内の変形をも包含する。加えて、様々な組み合わせや形態が本開示に示されているが、それらに一要素のみ、それ以上、あるいはそれ以下、を含む他の組み合わせや形態をも、本開示の範畴や思想範囲に入るものである。
【符号の説明】
【0069】
11…第1ECU、12…第2ECU、13…第3ECU、21…第1センサ、22…第2センサ、23…第3センサ、100…車載システム
図1
図2
図3
図4
図5
図6