(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023170231
(43)【公開日】2023-12-01
(54)【発明の名称】光学フィルム及び画像表示装置
(51)【国際特許分類】
G02B 1/18 20150101AFI20231124BHJP
G02B 1/111 20150101ALI20231124BHJP
C08F 290/06 20060101ALI20231124BHJP
B32B 27/30 20060101ALI20231124BHJP
B32B 27/20 20060101ALI20231124BHJP
C09K 3/00 20060101ALI20231124BHJP
C09D 4/02 20060101ALI20231124BHJP
C09D 5/16 20060101ALI20231124BHJP
C09D 7/61 20180101ALI20231124BHJP
G02B 5/02 20060101ALN20231124BHJP
【FI】
G02B1/18
G02B1/111
C08F290/06
B32B27/30 D
B32B27/30 A
B32B27/20 Z
C09K3/00 112D
C09D4/02
C09D5/16
C09D7/61
G02B5/02 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022081814
(22)【出願日】2022-05-18
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001276
【氏名又は名称】弁理士法人小笠原特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】木▲崎▼ 拓也
(72)【発明者】
【氏名】金田 怜士
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 匠
【テーマコード(参考)】
2H042
2K009
4F100
4J038
4J127
【Fターム(参考)】
2H042BA08
2H042BA12
2H042BA15
2H042BA20
2K009AA02
2K009AA04
2K009BB28
2K009CC09
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2K009CC47
2K009DD02
2K009EE05
4F100AA20B
4F100AJ06A
4F100AK17B
4F100AK25B
4F100BA02
4F100BA10A
4F100BA10B
4F100DE01B
4F100EJ54
4F100GB41
4F100JA07B
4F100JB14
4F100JK09
4F100JL06B
4F100JN01A
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4F100YY00B
4J038FA111
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4J038PC08
4J127AA04
4J127BA01
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4J127BB111
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4J127BB113
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4J127BD212
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4J127BD302
4J127BD303
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4J127BG081
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4J127BG08Y
4J127BG121
4J127BG122
4J127BG123
4J127BG12Y
4J127BG142
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4J127BG14Y
4J127BG271
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4J127BG27Y
4J127BG382
4J127BG383
4J127BG38Y
4J127CB341
4J127CB372
4J127CC091
4J127CC161
4J127CC162
4J127DA12
4J127EA12
4J127FA21
(57)【要約】
【課題】防汚性及び耐擦傷性に優れた光学フィルム及びこれを用いた画像表示装置を提供する。
【解決手段】透明支持体の最表層に位置する機能層が下記成分(A)及び組成物(B)を含有する組成物から形成され、全固形分に対する組成物(B)の含有量が1質量%以上15質量%以下であることを特徴とする光学フィルム。
(A)重合性不飽和基を有する多官能モノマー
(B)下記一般式(1)で表される構造を有し、フッ素原子を40質量%以上70質量%以下含有する防汚剤であって、主成分のRfの分子量が1000以上4000未満の防汚剤を1種類以上と、主成分のRfの分子量が4000以上7000未満の防汚剤を1種類以上とを含有する組成物
一般式(1):Rf{--X-(Y)
Z}
2
(一般式(1)中、Rfは(パー)フルオロアルキル基又は(パー)フルオロポリエーテル基、Xは連結基、Yは重合性不飽和基、Zは2以上の整数を表す。)
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明支持体上に少なくとも1層の機能層を有する光学フィルムであって、
前記機能層が最表層に位置し、前記機能層が少なくとも下記成分(A)及び組成物(B)を含有する組成物から形成され、全固形分に対する組成物(B)の含有量が1質量%以上15質量%以下であることを特徴とする光学フィルム。
(A)重合性不飽和基を有する多官能モノマー
(B)下記一般式(1)で表される構造を有し、フッ素原子を40質量%以上70質量%以下含有する防汚剤であって、主成分のRfの分子量が1000以上4000未満の防汚剤を1種類以上と、主成分のRfの分子量が4000以上7000未満の防汚剤を1種類以上とを少なくとも含有する組成物
一般式(1):Rf{--X-(Y)Z}2
(一般式(1)中、Rfは(パー)フルオロアルキル基又は(パー)フルオロポリエーテル基、Xは連結基、Yは重合性不飽和基を表す。Zは2以上の整数を表す。)
【請求項2】
前記成分(A)が、(メタ)アクリロイル基を一分子中に3つ以上有することを特徴とする請求項1に記載の光学フィルム。
【請求項3】
前記機能層が、さらに平均粒径30nm以上150nm以下であり中空構造を有するシリカ微粒子を含有することを特徴とする請求項1又は2に記載の光学フィルム。
【請求項4】
前記機能層が反射防止機能を有することを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の光学フィルム。
【請求項5】
前記組成物(B)の一般式(1)における連結基Xが下記式(2)又は(3)で表される部分構造を含み、かつ官能基Yが(メタ)アクリロイル基であることを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の光学フィルム。
一般式(2):-O-Si(CH3)-
一般式(3):-N-C(=O)-
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の光学フィルムを備える画像表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学フィルム及びこれを備える画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
画像表示装置の最表面には、指紋などの汚れに対する耐性(防汚性)を備えた光学フィルムが設けられる。
【0003】
例えば、特許文献1には、透明支持体上に低屈折率層を設けた反射防止フィルムとして、低屈折率層を、重合性不飽和基を有する含フッ素防汚剤と、重合性不飽和基を有する含フッ素共重合体と、無機微粒子と、3つ以上の重合性不飽和基及び35質量%以上のフッ素を有し、架橋間分子量の計算値が500よりも小さい多官能モノマーとを含有する組成物で形成した構成が記載されている。
【0004】
特許文献2には、透明基材フィルム上に低屈折率層を有する反射防止フィルムとして、低屈折率層を、重合性不飽和基を有し、重量平均分子量が10000未満である含フッ素防汚剤と、重合性不飽和基を有する多官能モノマーと、無機微粒子とを含有する組成物で形成した構成が記載されている。
【0005】
特許文献3には、透明支持体からもっとも遠くに位置する屈折率1.28~1.48の層を、1分子中に2個以上のエチレン性不飽和基を含有する電離放射線硬化性化合物と、導電性金属酸化物被覆層を有する微粒子と、電離放射線硬化型の含フッ素防汚剤とを含有する組成物で形成した構成が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第5690866号公報
【特許文献2】特許第5656431号公報
【特許文献3】特許第5049542号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
画像表示装置の最表面に配置される光学フィルムには、防汚性に加え、耐擦傷性などの機械特性が要求される。従来、光学フィルムに防汚性を付与するために、最表層に含フッ素材料を導入する手法が行われてきた。しかしながら、最表面を含フッ素材料で十分満たすことができず、防汚性は不十分であった。また、防汚性付与を主目的として検討がなされてきたため、耐擦傷性との両立も必ずしも十分ではなかった。
【0008】
それ故に、本発明は、防汚性及び耐擦傷性に優れた光学フィルム及びこれを用いた画像表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る光学フィルムは、透明支持体上に少なくとも1層の機能層を有する光学フィルムであって、機能層が最表層に位置し、機能層が少なくとも下記成分(A)及び組成物(B)を含有する組成物から形成され、全固形分に対する組成物(B)の含有量が1質量%以上15質量%以下であることを特徴とするものである。
(A)重合性不飽和基を有する多官能モノマー
(B)下記一般式(1)で表される構造を有し、フッ素原子を40質量%以上70質量%以下含有する防汚剤であって、主成分のRfの分子量が1000以上4000未満の防汚剤を1種類以上と、主成分のRfの分子量が4000以上7000未満の防汚剤を1種類以上とを少なくとも含有する組成物
一般式(1):Rf{--X-(Y)Z}2
(一般式(1)中、Rfは(パー)フルオロアルキル基又は(パー)フルオロポリエーテル基、Xは連結基、Yは重合性不飽和基を表す。Zは2以上の整数を表す。)
【0010】
本発明に係る画像表示装置は、上記の光学フィルムを備えるものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、防汚性及び耐擦傷性に優れた光学フィルム及びこれを用いた画像表示装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】実施形態に係る光学フィルムの一例を示す断面図
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1は、実施形態に係る光学フィルムの一例を示す断面図である。
【0014】
光学フィルム1は、透明支持体2と、透明支持体2の最表面の機能層3とを備える。本実施形態に係る光学フィルム1には、透明支持体2と機能層3との間に更に防眩層4が設けられている。
【0015】
透明支持体2は、光学フィルム1の基体となるフィルムであり、可視光線の透過性に優れた材料により形成される。透明支持体2の形成材料としては、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル、ポリメチルメタクリレート等のポリアクリレート、ナイロン6、ナイロン66等のポリアミド、ポリイミド、ポリアリレート、ポリカーボネート、トリアセチルセルロース、ポリアクリレート、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニル、シクロオレフィンコポリマー、含ノルボルネン樹脂、ポリエーテルサルフォン、ポリサルフォン等の透明樹脂や無機ガラスを利用できる。この中でも、ポリエチレンテレフタレートからなるフィルムを好適に利用できる。透明支持体2の厚みは、特に限定されないが、10~200μmとすることが好ましい。
【0016】
透明支持体2の表面には、積層する他の層との密着性を向上させるために、表面改質処理を施しても良い。表面改質処理としては、アルカリ処理、コロナ処理、プラズマ処理、スパッタ処理、界面活性剤やシランカップリング剤等の塗布、Si蒸着等を例示できる。
【0017】
機能層3は、光学フィルム1の最表面に設けられ、防汚性と耐擦傷性を付与する層である。
【0018】
機能層3は、(A)重合性不飽和基を有する多官能モノマーと、(B)2種以上の防汚剤を含有する組成物とを含有する組成物から形成される。
【0019】
(A)重合性不飽和基を有する多官能モノマー
重合性不飽和基を有する多官能モノマーとしては、(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリロイルオキシ基、ビニル基、スチリル基、アリル基等の重合性の官能基を有する化合物を使用することができる。重合性不飽和基を有する多官能モノマーとしては、2官能または3官能以上の(メタ)アクリレートを使用することが好ましく、3官能以上の(メタ)アクリレートを使用することがより好ましい。尚、本明細書において、「(メタ)アクリレート」は、アクリレートとメタクリレートの両方の総称であり、「(メタ)アクリロイル」は、アクリロイルとメタクリロイルの両方の総称である。
【0020】
2官能の(メタ)アクリレートの例としては、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、プロポキシ化ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコ-ルジ(メタ)アクリレート、エトキシ化ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート等のジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0021】
3官能以上の(メタ)アクリレートの例としては、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、プロポキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリス2-ヒドロキシエチルイソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート等のトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート等の3官能の(メタ)アクリレート化合物や、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンヘキサ(メタ)アクリレート等の3官能以上の多官能(メタ)アクリレート化合物や、これら(メタ)アクリレートの一部をアルキル基やε-カプロラクトンで置換した多官能(メタ)アクリレート化合物等が挙げられる。
【0022】
また、重合性不飽和基を有する多官能モノマーとして、ウレタン(メタ)アクリレートも使用できる。ウレタン(メタ)アクリレートとしては、例えば、ポリエステルポリオールにイソシアネートモノマー、もしくはプレポリマーを反応させて得られた生成物に水酸基を有する(メタ)アクリレートモノマーを反応させることによって得られるものを挙げることができる。
【0023】
ウレタン(メタ)アクリレートの例としては、ペンタエリスリトールトリアクリレートヘキサメチレンジイソシアネートウレタンプレポリマー、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートヘキサメチレンジイソシアネートウレタンプレポリマー、ペンタエリスリト
ールトリアクリレートトルエンジイソシアネートウレタンプレポリマー、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートトルエンジイソシアネートウレタンプレポリマー、ペンタエリスリトールトリアクリレートイソホロンジイソシアネートウレタンプレポリマー、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートイソホロンジイソシアネートウレタンプレポリマー等が挙げられる。
【0024】
上述した多官能モノマーは1種を用いても良いし、2種以上を組み合わせて用いても良い。また、上述した多官能モノマーは、塗工液中でモノマーであっても良いし、一部が重合したオリゴマーであっても良い。
【0025】
また、重合性不飽和基を有する多官能モノマーとしては、上述したラジカル重合性官能基を有する化合物の他に、エポキシ基、ビニルエーテル基、オキセタン基等のカチオン重合性官能基を有するモノマー、オリゴマー、プレポリマーを単独でまたは混合して使用することができる。モノマーとしては、不飽和ポリエステル、エポキシアクリレート、テトラメチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、ビスフェノールAジグリシジルエーテルや各種脂環式エポキシ等のエポキシ系化合物、3-エチル-3-ヒドロキシメチルオキセタン、1,4-ビス{[(3-エチル-3-オキセタニル)メトキシ]メチル}ベンゼン、ジ[1-エチル(3-オキセタニル)]メチルエーテル等のオキセタン化合物を例示できる。
【0026】
上述した多官能モノマーは、光重合開始剤の添加を条件として、紫外線の照射により硬化させることができる。光重合開始剤としては、アセトフェノン系、ベンゾフェノン系、チオキサントン系、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル等のラジカル重合開始剤、芳香族ジアゾニウム塩、芳香族スルホニウム塩、芳香族ヨードニウム塩、メタロセン化合物等のカチオン重合開始剤を単独でまたは混合して使用できる。
【0027】
(B)2種以上の防汚剤を含有する組成物
組成物(B)は、下記一般式(1)で表され、フッ素原子を40質量%以上70質量%以下含有する防汚剤であって、一般式(1)中のRfの分子量が1000以上4000未満である防汚剤(以下、「第1の防汚剤」という)を1種類以上と、一般式(1)中のRfの分子量が4000以上7000未満である防汚剤(以下、「第2の防汚剤」という)を1種類以上を含有する。
一般式(1):Rf{-X-(Y)Z}2
【0028】
一般式(1)中のRfは、(パー)フルオロアルキル基又は(パー)フルオロポリエーテル基である。本明細書において、(パー)フルオロアルキル基は、フルオロアルキル基とパーフルオロアルキル基の両方の総称であり、(パー)フルオロポリエーテル基は、フルオロポリエーテル基とパーフルオロポリエーテル基の両方の総称である。フルオロアルキル基は、アルキル基の一部の水素原子がフッ素原子により置換されたものであり、パーフルオロアルキル基は、アルキル基の全ての水素原子がフッ素原子により置換されたものである。また、フルオロポリエーテル基は、オキシアルキレン基を繰り返し単位とするポリエーテル基の一部の水素原子がフッ素原子により置換されたものであり、パーフルオロポリエーテル基は、オキシアルキレン基を繰り返し単位とするポリエーテル基の全ての水素原子がフッ素原子により置換されたものである。尚、本実施形態で用いる第1の防汚剤及び第2の防汚剤は、上記一般式(1)で表される構造を有するものであって、フッ素原子の質量割合とRfの分子量とが上記の範囲を満たす限り、Rfの分子構造は特に限定されない。
【0029】
一般式(1)中のXは、連結基であり、下記式(2)又は(3)で表される部分構造を含んでいることが好ましい。
式(2):-O-Si(CH3)-
式(3):-N-C(=O)-
【0030】
連結基Xは、式(2)又は(3)で表される部分構造に加えて、あるいは、式(2)又は(3)で表される部分構造に代えて、アルキレン基、オキシアルキレン基、アリーレン基、ヘテロアルキレン基、カルボニル基、カルボニルオキシ基、カルボニルイミノ基、スルホンアミド基及びこれらを組み合わせた構造のいずれかを含んでいても良い。式(2)で表されるシロキサン単位の部分構造は、複数含まれてシロキサン結合を形成していても良い。
【0031】
一般式(1)中のYは、重合性不飽和基であり、(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリロイルオキシ基、ビニル基、スチリル基、アリル基等の重合性の官能基を例示することができる。これらの中でも、Yが(メタ)アクリロイル基であることが好ましい。
【0032】
一般式(1)中のZは、2以上の整数を表す。
【0033】
上記第1の防汚剤及び第2の防汚剤を併用する理由を説明する。
【0034】
本実施形態に係る機能層3において、防汚性の発現に寄与しているのは、防汚剤の分子構造中のRfの部分である。
【0035】
Rfの分子量が1000以上4000未満である第1の防汚剤のみを用いた場合、防汚剤同士の立体反発が小さいため機能層3の表面に存在する防汚剤の分子数は増加するが、防汚剤1分子に占めるRfの割合が小さいため(つまり、一般式(1)中のXとYの割合が大きいため)、機能層3の表面に存在するRfの密度は低く、防汚性は悪化する。
【0036】
一方、Rfの分子量が4000以上7000未満である第2の防汚剤のみを用いた場合、防汚剤分子同士の立体反発が大きいため、機能層3の表面に存在する防汚剤の分子数が少なくなる。そのため、機能層3の表面に存在するRfの密度も低下し、防汚性が悪化する。
【0037】
本発明のように、Rfの分子量が1000以上4000未満である第1の防汚剤と、Rfの分子量が4000以上7000未満である第2の防汚剤とを併用した場合、第2の防汚剤の分子間に第1の防汚剤の分子が入り込むため、機能層3の表面に存在する防汚剤分子の密度と、機能層3の表面に存在するRfの密度とがいずれも高くなる。そのため、第1の防汚剤及び第2の防汚剤を併用することによって良好な防汚性が発現する。また、第1の防汚剤及び第2の防汚剤は、重合性不飽和基(一般式(1)中のY部分)が、上記の多官能モノマーの重合性不飽和基との間に共有結合を形成することで機能層3の表面に固定される。防汚剤と多官能モノマーとの結合箇所が多いほど、防汚剤の固定が強固になる。したがって、機能層3の表面に存在する防汚剤分子の密度が高くなることで、防汚性に加えて、機能層3の表面の耐擦傷性も良好となる。
【0038】
第1の防汚剤のRfの分子量が1000未満の場合、一般式(1)の分子構造中のRf以外の部分(X及びY)の表面密度が高くなるため、防汚性が低下する。また、第2の防汚剤のRfの分子量が7000以上の場合、防汚剤分子同士の立体反発が大きすぎ、機能層3の表面を防汚剤で十分に満たすことができなくなり、防汚性が低下する。
【0039】
また、第1の防汚剤及び第2の防汚剤のフッ素含有量が、防汚剤の固形分の40質量%未満の場合、一般式(1)の分子構造中のフッ素原子以外の部分(X及びY)の表面密度が高くなり、機能層3の表面のRfの密度が低下するため、防汚性が低下する。また、第1の防汚剤及び第2の防汚剤の分子中には、Rf、X及びYを構成するフッ素以外の原子が存在するため、フッ素原子の含有割合の上限は70質量%が現実的である。
【0040】
機能層形成用組成物には、更に、重合性不飽和基を有する成分(A)以外のモノマー、オリゴマー、ポリマーを配合しても良い。これらのモノマー、オリゴマー、ポリマーは、組成物(B)に含まれる化合物以外のフッ素原子を含む化合物であっても良い。
【0041】
機能層形成用組成物の全固形分のうち、組成物(B)の含有量は1質量%以上15質量%以下とする。組成物(B)の含有量が、反射防止層形成用組成物の全固形分の1質量%未満の場合、防汚剤の量が少ないことにより、防汚性が低下する。また、組成物(B)の含有量が、反射防止層形成用組成物の全固形分の15質量%を超える場合、最表面に満たされた防汚剤の下層にも防汚剤が存在するため、最表面の防汚剤が多官能モノマーと結合できず、耐擦傷性が低下する。
【0042】
機能層3は、その表面で反射する光を、機能層3及びその下層(
図1の例では防眩層4)の界面で反射する光との干渉で打ち消すことにより、表面反射を低減する反射防止層であることが好ましい。機能層3に反射防止機能を付与する場合、機能層3を低屈折率化するために、低屈折率微粒子やその他の低屈折率材料を添加しても良い。低反射層の屈折率が低くなるほど、透過率が向上するため、低反射層の屈折率は可能な限り低いことが好ましい。低屈折率微粒子としては、例えば、LiF、MgF、3NaF・AlF、AlF、Na
3AlF
6等の微粒子や、内部に空隙を有するシリカ微粒子を好適に使用することができる。内部に空隙を有するシリカ微粒子は、空隙の部分を空気の屈折率(約1)とすることができるので、機能層3の低屈折率化に有利である。具体的には、多孔質シリカ微粒子、シェル(殻)構造のシリカ微粒子を用いることができる。機能層3にシリカ微粒子を配合した場合、耐擦傷性の向上も期待できる。また、低屈折率微粒子以外の低屈折率材料としては、硬化後の屈折率が上記成分(A)及び組成物(B)よりも低い重合性化合物を使用しても良い。このような重合性化合物としては、重合性官能基を有するモノマー、オリゴマー、プレポリマー、ポリマー等を使用することができる。機能層3が反射防止機能を有する場合、後述する防眩層4と組み合わせることにより、高品位な反射防止フィルムを構成することができる。
【0043】
尚、機能層形成用組成物には、適宜溶剤を添加しても良い。溶剤としては、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、ブタノール、イソプロピルアルコール、イソブタノール等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、メチルイソブチルケトン等のケトン類、ジアセトンアルコール等のケトンアルコール類、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、エチレングリコール、プロピレングリコール、ヘキシレングリコール等のグリコール類、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、エチルカルビトール、ブチルカルビトール、ジエチルセロソルブ、ジエチルカルビトール、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のグリコールエーテル類、乳酸メチル、乳酸エチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸アミル等のエステル類、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル等のエーテル類、N-メチルピロリドン、ジメチルフォルムアミド、水等のうち、1種類または2種類以上を混合して使用できる。
【0044】
その他、必要に応じて、機能層形成用組成物に、消泡剤、レベリング剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、重合禁止剤、光増感剤等の各種添加剤を配合しても良い。
【0045】
防眩層4は、表面に微細な凹凸を有し、この凹凸で外光を散乱させることにより外光の映り込みを低減する光学機能層である。防眩層4は、バインダー樹脂と、有機微粒子及び/または無機微粒子とを含有する塗工液を透明支持体2に塗布し、塗膜を硬化させることによって形成される。
【0046】
バインダー樹脂としては、電離放射線または紫外線の照射により硬化する活性エネルギー線硬化型樹脂を使用でき、例えば、単官能、2官能または3官能以上の(メタ)アクリレートを使用できる。
【0047】
単官能の(メタ)アクリレートの例としては、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、アクリロイルモルフォリン、N-ビニルピロリドン、テトラヒドロフルフリールアクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2-エトキシエチル(メタ)アクリレート、3-メトキシブチル(メタ)アクリレート、エチルカルビトール(メタ)アクリレート、リン酸(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性リン酸(メタ)アクリレート、フェノキシ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性フェノキシ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド変性フェノキシ(メタ)アクリレート、ノニルフェノー
ル(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ノニルフェノール(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド変性ノニルフェノール(メタ)アクリレート、メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシプロピレングリコール(メタ)アクリレート、2-(メタ)アクリロイルオキシエチル-2-ヒドロキシプロピルフタレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルハイドロゲンフタレート、2-(メタ)アクリロイルオキシプロピルハイドロゲンフタレート、2-(メタ)アクリロイルオキシプロピルヘキサヒドロハイドロゲンフタレート、2-(メタ)アクリロイルオキシプロピルテトラヒドロハイドロゲンフタレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、ヘキサフルオロプロピル(メタ)アクリレート、オクタフルオロプロピル(メタ)アクリレート、2-アダマンタン、アダマンタンジオールから誘導される1価のモノ(メタ)アクリレートを有するアダマンチルアクリレート等のアダマンタン誘導体モノ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0048】
2官能または3官能以上の(メタ)アクリレートとしては、成分(A)で例示した化合物を使用することができる。
【0049】
有機微粒子は、主として防眩層4の表面に微細な凹凸を形成し、外光を拡散させる機能を付与する材料である。有機微粒子としては、アクリル樹脂、ポリスチレン樹脂、スチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体、ポリエチレン樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化エチレン系樹脂等の透光性樹脂材料からなる樹脂粒子を使用できる。屈折率や樹脂粒子の分散を調整するために、材質(屈折率)の異なる2種類以上の樹脂粒子を混合して使用しても良い。
【0050】
光学機能層の基材樹脂に添加する無機微粒子は、平均粒径が10~200nmのナノ粒子であることが好ましい。
【0051】
無機微粒子は、主として防眩層4中の有機微粒子の沈降や凝集を調整するための材料である。無機微粒子としては、シリカ微粒子や、金属酸化物微粒子、各種の鉱物微粒子等を使用することができる。シリカ微粒子としては、例えば、コロイダルシリカや(メタ)アクリロイル基等の反応性官能基で表面修飾されたシリカ微粒子等を使用することができる。金属酸化物微粒子としては、例えば、アルミナや酸化亜鉛、酸化スズ、酸化アンチモン、酸化インジウム、チタニア、ジルコニア等を使用することができる。鉱物微粒子としては、例えば、雲母、合成雲母、バーミキュライト、モンモリロナイト、鉄モンモリロナイト、ベントナイト、バイデライト、サポナイト、ヘクトライト、スチーブンサイト、ノントロナイト、マガディアイト、アイラライト、カネマイト、層状チタン酸、スメクタイト、合成スメクタイト等を使用することができる。鉱物微粒子は、天然物及び合成物(置換体、誘導体を含む)のいずれであっても良く、両者の混合物を使用しても良い。鉱物微粒子の中でも、層状有機粘土がより好ましい。層状有機粘土とは、膨潤性粘土の層間に有機
オニウムイオンを導入したものをいう。有機オニウムイオンは、膨潤性粘土の陽イオン交換性を利用して有機化することができるものであれば制限されない。鉱物微粒子として、層状有機粘土鉱物を用いる場合、上述した合成スメクタイトを好適に使用できる。合成スメクタイトは、防眩層形成用組成物の粘性を増加させ、樹脂粒子及び無機微粒子の沈降を抑制して、光学機能層の表面の凹凸形状を調整する機能を有する。
【0052】
また、防眩層形成用組成物には、消泡剤、レベリング剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、重合禁止剤、光増感剤等の各種添加剤や、溶剤等を必要に応じて配合しても良い。
【0053】
本実施形態に係る光学フィルム1は、透明支持体2上に防眩層形成用組成物を塗布して硬化させることによって防眩層4を形成した後、防眩層4上に機能層形成用組成物を塗布して硬化させることによって機能層3を形成することにより得ることができる。
【0054】
本実施形態に係る光学フィルム1は、液晶パネルや有機ELパネル等の画像表示パネルの最表面に貼合して画像表示装置を構成するのに利用することができる。光学フィルム1と画像表示パネルとの間にタッチパネルが設けられても良い。本実施形態1に係る光学フィルム1は、防汚性及び耐擦傷性に優れるため、画像表示装置の最表面に設ける光学フィルムとして好適である。また、光学フィルム1の機能層が反射防止機能を有する場合、画像表示装置の表面反射や映り込みを抑制し、表示画像の視認性を向上させることができる。
【0055】
尚、上記の実施形態では、透明支持体2上に防眩層4及び機能層3をこの順に積層した光学フィルム1を例として説明したが、透明支持体2と最表面の機能層3との間に設ける層は特に限定されない。例えば、透明支持体2と最表面の機能層3との間に、ハードコート層、高屈折率層、中屈折率層、帯電防止層、電磁波遮断層、赤外線吸収層、紫外線吸収層、色補正層等の機能層が1層以上積層されても良いし、透明支持体2上に機能層3が直接積層されていても良い。
【実施例0056】
以下、本発明を具体的に実施した実施例を説明する。
【0057】
実施例及び比較例で使用した材料は次の通りである。
【0058】
(A)重合性不飽和基を有する多官能モノマー
ビスコート#300(下記式(4)で表される、ペンタエリスリトールとアクリル酸の縮合物)、大阪有機工業(株)製
式(4):
【化1】
【0059】
(B)防汚剤
(B-1):下記式(5)で表される化合物
式(5):
【化2】
式中、Rf=-CF
2O(CF
2O)
4(CF
2CF
2O)
5CF
2-である。
【0060】
(B-2):下記式(6)で表される化合物
式(6):
【化3】
式中、Rf=-CF
2O(CF
2O)
21.2(CF
2CF
2O)
20.9CF
2-である。
【0061】
(B-3):下記式(7)で表される化合物
式(7):
【化4】
式中、Rf=-CF
2O(CF
2O)
p(CF
2CF
2O)
qCF
2-(ただし、p及びqは、q/p=0.9、p+q≒45)である。
【0062】
(B-4):上記式(6)で表される構造を有し、Rf=-CF2O(CF2O)38.1(CF2CF2O)38.5CF2-である化合物
【0063】
(B-5):上記式(7)で表される構造を有し、Rf=-CF2O(CF2O)r(CF2CF2O)sCF2-(ただし、r及びsは、s/r=1.3、s+r≒16)である。
【0064】
(B-6):下記式(8)で表される化合物
式(8):
【化5】
式中、Rf=-CF
2O(CF
2O)
t(CF
2CF
2O)
uCF
2-(ただし、t及びuは、u/t=0.9、t+u≒45)である。
【0065】
(B-7):下記式(9)で表される化合物
式(9):
【化6】
式中、Rf=-(X-O)
n-X-である。Rfは、パーフルオロオキシメチレン基及びパーフルオロオキシエチレン基がランダムに結合したパーフルオロポリエーテル基であり、Xはパーフルオロメチレン基及びパーフルオロエチレン基を表す。Rf中、パーフルオロメチレン基の数が平均で7個であり、パーフルオロエチレン基の数が平均で24個であり、フッ素原子の数が平均で46である。
【0066】
(B-8):上記式(9)で表される構造を有し、Rf=-(X-O)n-X-である化合物
Rfは、パーフルオロオキシメチレン基及びパーフルオロオキシエチレン基がランダムに結合したパーフルオロポリエーテル基であり、Xはパーフルオロメチレン基及びパーフルオロエチレン基を表す。Rf中、パーフルオロメチレン基の数が平均で21個であり、パーフルオロエチレン基の数が平均で24個であり、フッ素原子の数が平均で138である。
【0067】
上記各防汚剤の一般式(1):Rf{-X-(Y)Z}2中のZの値、Rfの分子量及びフッ素含有量(フッ素質量%)、Yの構造は以下の通りである。
(B-1):Z=2、Rfの分子量<1000、40%≦フッ素質量%≦70%、Yはアクリロイル基
(B-2):Z=3、1000≦Rfの分子量<4000、40%≦フッ素質量%≦70%、Yはアクリロイル基
(B-3):Z=3、4000≦Rfの分子量<7000、40%≦フッ素質量%≦70%、Yはメタクリロイル基
(B-4):Z=3、7000≦Rfの分子量、40%≦フッ素質量%≦70%、Yはアクリロイル基
(B-5):Z=3、1000≦Rfの分子量<4000、フッ素質量%<40%、Yはメタクリロイル基
(B-6):Z=4、4000≦Rfの分子量<7000、フッ素質量%<40%、Yはアクリロイル基
(B-7):Z=1、1000≦Rfの分子量<4000、40%≦フッ素質量%≦70%、Yはアクリロイル基
(B-8):Z=1、4000≦Rfの分子量<7000、40%≦フッ素質量%≦70%、Yはアクリロイル基
【0068】
(C)低屈折率材料
LINC-202UA、共栄社化学(株)製
【0069】
(D)中空シリカ微粒子
下記平均粒径を有する中空シリカ微粒子
(D-1):平均粒径50nm
(D-2):平均粒径100nm
(D-3):平均粒径150nm
【0070】
(E)光重合開始剤
JRCure TPO(下記式(5)で表される、ジフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド)、TIANJIN JIURI NEW MATERIALS CO.,LTD製
式(5):
【化7】
【0071】
溶媒:イソプロピルアルコール(IPA)、ジアセトンアルコール(DAA)、メチルイソブチルケトン(MIBK)の混合溶剤で、各溶剤の質量比はIPA:DAA:MIBK=72:15:13
【0072】
(機能層形成用組成物の調整)
(A)多官能モノマー、(B)防汚剤を2種類、(C)低屈折率材料、(D)中空シリカ微粒子、(E)光重合開始剤を、下記表1に示す含有量となるように混合し、全固形分の濃度が3.5質量部となるように溶剤に溶解させて、実施例1~7及び比較例1~11に係る機能層形成用組成物を調整した。尚、表1に示す各成分の含有量の割合の単位は質量%(全固形分に対する割合)である。
【0073】
(防眩フィルム)
ペンタエリスリトールトリアクリレート100質量部、トルエンジイソシアネート30質量部、レベリング剤(商品名:BYK-350、ビックケミー・ジャパン(株)製)0.2質量部、光重合開始剤(商品名:イルガキュア184、チバケミカル(株)製)5質量部、アクリル微粒子(平均粒径4μm)8質量部、溶剤であるメチルエチルケトン25質量部及びトルエン25質量部を含有する防眩層形成用組成物を調製した。トリアセチルセルロースからなるフィルム基材(膜み40μm)の上に、防眩層形成用組成物を、乾燥後の膜厚が5μmとなるように塗工し、乾燥させ、紫外線を照射することにより防眩層を有する防眩フィルムを作製した。
【0074】
(光学フィルムの作製)
防眩フィルムの防眩層上に、表1に示す組成の機能層用組成物を、ワイヤーバーを用いて乾燥後の膜厚が100nmとなるように塗工した。オーブンに溶剤を揮発させた後、窒素雰囲気下で紫外線を照射して塗膜を硬化させ、光学フィルムを作製した。
【0075】
(防汚性評価)
光学フィルムを黒板に貼合した後、機能層表面に指を押し付けて指紋を付着させた。付着した指紋をティッシュペーパー(スコッティ、日本製紙クラシエ(株)製)で繰り返し拭き取った。目視にて指紋が完全に拭き取られたのを確認できるまで拭き取りを繰り返し、完全に拭き取られるまでの拭き取り回数により、以下の基準で評価した。
〇:拭き取り回数≦15回
△:15回<拭き取り回数≦30回
×:30回<拭き取り回数
【0076】
(耐擦傷性評価)
機能層表面をスチールウール(ボンスターNo.0000、日本スチールウール(株)製)を用いて500g/cm2の加重で10往復擦り、傷の有無を目視評価した。評価基準は以下の通りである。
〇:傷なし
×:傷あり
【0077】
表1に、実施例1~7及び比較例1~10に係る機能層形成用組成物の組成と、防汚性及び耐擦傷性の評価を併せて示す。
【0078】
【0079】
実施例1~7に係る光学フィルムは、最表層の機能層を形成するための組成物に、重合性不飽和基を有し、フッ素原子を40質量%以上70質量%以下含有する防汚剤であって、一般式(1)中のRfの分子量が1000以上4000未満である第1の防汚剤と、一般式(1)中のRfの分子量が4000以上7000未満である第2の防汚剤とを併用したことにより、防汚性及び耐擦傷性の両方が良好であった。
【0080】
これに対して、比較例1に係る光学フィルムは、第1の防汚剤及び第2の防護剤の配合量が少ないために、機能層表面における防汚剤の密度が小さくなり、防汚性が不十分であった。
【0081】
比較例2に係る光学フィルムは、第1の防汚剤及び第2の防汚剤の配合量が多いために、多官能モノマーの割合が減少し、防汚剤と多官能モノマーとの結合が少なくなったことで耐擦傷性が低下した。
【0082】
比較例3に係る光学フィルムは、含有フッ素が40質量%未満である防汚剤(B-5)及び(B-6)を使用したものである。比較例3に係る光学フィルムでは、防汚在中のフッ素含有量が少ないため、機能層の表面に防汚剤が偏在しにくく、機能層の表面のRfの密度が低下した結果、防汚性が低下したと考えられる。
【0083】
比較例4~6に係る光学フィルムは、一般式(1)中のRfの分子量が1000未満である防汚剤(B-1)を使用したため、機能層表面における防汚剤のRf以外の部分の表面密度が高くなり、防汚性が低下したと考えられる
【0084】
比較例7~9に係る光学フィルムは、一般式(1)中のRfの分子量が7000以上である防汚剤(B-4)を使用したため、防汚剤分子同士の立体反発が大きくなり、表面を防汚剤で十分に満たすことができず、防汚性が低下したと考えられる。
【0085】
比較例10に係る光学フィルムは、一般式(1)中のZの値が1である防汚剤(B-7)及び(B-8)を使用したため、機能層表面における多官能モノマーと防汚剤との共有結合箇所が少なくなり、耐擦傷性が低下したと考えられる。