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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023170237
(43)【公開日】2023-12-01
(54)【発明の名称】触覚提示装具および物品
(51)【国際特許分類】
   H05K 1/02 20060101AFI20231124BHJP
   G06F 3/01 20060101ALI20231124BHJP
   H01L 25/00 20060101ALI20231124BHJP
【FI】
H05K1/02 L
G06F3/01 560
H01L25/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】25
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022081823
(22)【出願日】2022-05-18
(71)【出願人】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100122529
【弁理士】
【氏名又は名称】藤枡 裕実
(74)【代理人】
【識別番号】100135954
【弁理士】
【氏名又は名称】深町 圭子
(74)【代理人】
【識別番号】100119057
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英生
(74)【代理人】
【識別番号】100131369
【弁理士】
【氏名又は名称】後藤 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100171859
【弁理士】
【氏名又は名称】立石 英之
(72)【発明者】
【氏名】小川 健一
(72)【発明者】
【氏名】三好 徹
(72)【発明者】
【氏名】坂田 麻紀子
【テーマコード(参考)】
5E338
5E555
【Fターム(参考)】
5E338AA01
5E338BB71
5E338BB75
5E338CC01
5E338CD13
5E338EE60
5E555AA76
5E555BA22
5E555BA38
5E555BB22
5E555BB38
5E555BC04
5E555DA24
5E555FA00
(57)【要約】
【課題】 利用者がハプティクス素子を装着した状態においても、利用者が行う他の作業が困難になることを解消でき、振動による皮膚感覚を利用者に効率的にフィードバックすることが可能な、触覚提示装具および物品を提供する。
【解決手段】 触覚提示装具の構成を、配線基板と、振動を伝達する振動伝達部と、を備え、配線基板が、第1面及び第1面の反対側に位置する第2面を含む基材であって、第1の弾性係数を有する伸縮部と、基材の第1面の面内方向に伸縮部と隣接し且つ第1の弾性係数よりも大きい第2の弾性係数を有する固定部と、を備えた基材と、基材の伸縮部の第1面の側に位置する配線と、を有し、振動伝達部が、配線基板の固定部に接続されており、固定部から振動を伝達する対象となる箇所に到達する長さを有する構成とする。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
配線基板と、
振動を伝達する振動伝達部と、
を備え、
前記配線基板が、
第1面及び前記第1面の反対側に位置する第2面を含む基材であって、第1の弾性係数を有する伸縮部と、前記基材の前記第1面の面内方向に前記伸縮部と隣接し且つ前記第1の弾性係数よりも大きい第2の弾性係数を有する固定部と、を備えた基材と、
前記基材の前記伸縮部の前記第1面の側に位置する配線と、
を有し、
前記振動伝達部が、前記配線基板の前記固定部に接続されており、前記固定部から前記振動を伝達する対象となる箇所に到達する長さを有する、触覚提示装具。
【請求項2】
配線基板と、
振動を伝達する振動伝達部と、
を備え、
前記配線基板が、
第1面及び前記第1面の反対側に位置する第2面を含む基材であって、第1の弾性係数を有する伸縮部と、前記基材の前記第1面の面内方向に前記伸縮部と隣接し且つ前記第1の弾性係数よりも大きい第2の弾性係数を有する固定部と、を備えた基材と、
前記基材の前記伸縮部の前記第1面の側に位置する配線と、
前記配線と前記基材の前記第1面との間に位置し、前記基材の前記伸縮部が有する第1の弾性係数よりも大きい第3の弾性係数を有し、前記配線を支持する支持基板と、
を有し、
前記振動伝達部が、前記支持基板に接続されており、前記支持基板から前記振動を伝達する対象となる箇所に到達する長さを有する、触覚提示装具。
【請求項3】
配線基板と、
振動を伝達する振動伝達部と、
を備え、
前記配線基板が、
第1面及び前記第1面の反対側に位置する第2面を含む基材であって、第1の弾性係数を有する伸縮部と、前記基材の前記第1面の面内方向に前記伸縮部と隣接し且つ前記第1の弾性係数よりも大きい第2の弾性係数を有する固定部と、を備えた基材と、
前記基材の前記伸縮部の前記第1面の側に位置する配線と、
前記基材の前記固定部の前記第1面の側に位置し、前記配線に接続される電子部品と、
を有し、
前記振動伝達部が、前記電子部品に接続されており、前記電子部品から前記振動を伝達する対象となる箇所に到達する長さを有する、触覚提示装具。
【請求項4】
配線基板と、
振動を伝達する振動伝達部と、
を備え、
前記配線基板が、
第1面及び前記第1面の反対側に位置する第2面を含む基材であって、第1の弾性係数を有する伸縮部と、前記基材の前記第1面の面内方向に前記伸縮部と隣接し且つ前記第1の弾性係数よりも大きい第2の弾性係数を有する固定部と、を備えた基材と、
前記基材の前記伸縮部の前記第1面の側に位置する配線と、
前記基材の前記固定部の前記第1面の側に位置し、前記配線に接続される電子部品と、
前記配線および前記電子部品と前記基材の前記第1面との間に位置し、前記基材の前記伸縮部が有する第1の弾性係数よりも大きい第3の弾性係数を有し、前記配線を支持する支持基板と、
を有し、
前記振動伝達部が、前記電子部品に接続されており、前記電子部品から前記振動を伝達する対象となる箇所に到達する長さを有する、触覚提示装具。
【請求項5】
前記振動伝達部がU字状の形態を有する、請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の触覚提示装具。
【請求項6】
前記振動伝達部がリング状の形態を有する、請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の触覚提示装具。
【請求項7】
前記振動伝達部が、前記振動を伝達する対象となる箇所に位置する突起部を有する、請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の触覚提示装具。
【請求項8】
前記振動伝達部が、前記振動を伝達する対象となる箇所と異なる位置に、前記振動を吸収する振動吸収部を有する、請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の触覚提示装具。
【請求項9】
前記振動伝達部が、圧覚を提示する圧覚提示部と、前記圧覚提示部に繋がる流路と、を有し、
前記圧覚提示部が、前記流路内の流体の圧力変化に応じて膨張若しくは収縮する、
請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の触覚提示装具。
【請求項10】
前記基材の前記第1面の法線方向に沿って見た場合に、
前記固定部と重なる前記基材の前記第1面の側に、外骨格ワイヤーが接続される外骨格ワイヤー接続部を備える、請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の触覚提示装具。
【請求項11】
前記基材の前記第1面の法線方向に沿って見た場合に、
前記固定部と重なる前記基材の前記第2面の側にも前記伸縮部を備える、請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の触覚提示装具。
【請求項12】
前記配線は、複数の導電性粒子を含む、請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の触覚提示装具。
【請求項13】
前記配線は、山部及び谷部を含む蛇腹形状部を有する、請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の触覚提示装具。
【請求項14】
前記基材の前記第1面の法線方向に沿って見た場合に、
前記基材の前記第2面のうち前記蛇腹形状部に重なる部分に現れる山部及び谷部の振幅が、前記配線の前記蛇腹形状部に重なる部分に現れる山部及び谷部の振幅よりも小さい、請求項13に記載の触覚提示装具。
【請求項15】
前記基材の前記第1面の法線方向に沿って見た場合に、
前記基材の前記第2面のうち前記蛇腹形状部に重なる部分に現れる山部及び谷部の周期が、前記配線の前記蛇腹形状部に重なる部分に現れる山部及び谷部の周期よりも大きい、請求項13に記載の触覚提示装具。
【請求項16】
前記基材の前記第1面の面内方向に沿う引張応力が前記基材に加えられていない第1状態における前記配線の抵抗値を第1抵抗値と称し、前記基材に引張応力を加えて前記基材を前記第1面の面内方向において前記第1状態に比べて30%伸長させた第2状態における前記配線の抵抗値を第2抵抗値と称する場合、前記第1抵抗値に対する、前記第1抵抗値と前記第2抵抗値の差の絶対値の比率が、20%以下である、請求項13に記載の触覚提示装具。
【請求項17】
前記配線基板が、前記固定部を複数有する、請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の触覚提示装具。
【請求項18】
前記配線基板の前記基材の前記第2面の側に利用者の指が位置し、
前記固定部が前記利用者の前記指の爪の側に配置され、
前記振動を伝達する対象となる箇所が前記利用者の前記指の腹である、請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の触覚提示装具。
【請求項19】
前記配線基板の前記基材の前記第2面の側に利用者の指が位置し、
前記固定部が前記利用者の前記指の爪の側に配置され、
前記振動を伝達する対象となる箇所が前記利用者の前記指の腹であり、
前記振動伝達部が、前記振動を吸収する振動吸収部を、前記利用者の前記指の爪と前記指の腹との間の前記指の側部に対向する位置に有する、請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の触覚提示装具。
【請求項20】
前記配線基板の前記基材の前記第2面の側に利用者の指が位置し、
前記固定部が前記利用者の前記指の爪の側に配置され、
前記振動を伝達する対象となる箇所が前記利用者の前記指の腹であり、
前記基材の前記第1面の法線方向に沿って見た場合に、
前記固定部と重なる前記基材の前記第2面の側にも前記伸縮部を備える、請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の触覚提示装具。
【請求項21】
前記配線基板の前記伸縮部が、第1の音響インピーダンスを有し、
前記配線基板の前記固定部が、第2の音響インピーダンスを有し、
前記振動伝達部が、第3の音響インピーダンスを有し、
前記配線基板の前記伸縮部が有する第1の音響インピーダンスが、
前記配線基板の前記固定部が有する第2の音響インピーダンスより小さく、かつ、前記振動伝達部が有する第3の音響インピーダンスより小さい、請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の触覚提示装具。
【請求項22】
前記振動伝達部が、前記第3の音響インピーダンスよりも小さく、前記第1の音響インピーダンスより大きい、第4の音響インピーダンスを部分的に有する、請求項21に記載の触覚提示装具。
【請求項23】
前記振動伝達部が、
前記振動を伝達する対象となる箇所の中央側の位置に配置される第1突起部と、
前記振動を伝達する対象となる箇所の外縁側の位置に配置される第2突起部と、
を有し、
前記第2突起部が有する音響インピーダンスが、前記第1突起部が有する音響インピーダンスよりも小さい、請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の触覚提示装具。
【請求項24】
前記基材の前記第1面の法線方向に沿って見た場合に、
前記固定部と重なる位置の前記基材の前記第1面の側に配置され、前記配線と接続される電子部品を更に備える、請求項1または請求項2に記載の触覚提示装具。
【請求項25】
請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の触覚提示装具を有する、物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の実施形態は、配線基板と振動伝達部とを備える触覚提示装具、および、該触覚提示装具を有する物品に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、伸縮性などの変形性を有する電子デバイスの研究がおこなわれている。例えば特許文献1は、基材と、基材に設けられた配線と、を備え、伸縮性を有する配線基板を開示している。特許文献1においては、予め伸長させた状態の基材に回路を設け、回路を形成した後に基材を弛緩させる、という製造方法を採用している。特許文献1は、基材の伸長状態及び弛緩状態のいずれにおいても基材上の薄膜トランジスタを良好に動作させることを意図している。
【0003】
このような伸縮性を有する配線基板は人体への装着に適しており、その用途として、例えばハプティクス技術の分野がある。ハプティクス技術とは、例えば、利用者の皮膚に力、振動、動き等を与えることで、皮膚感覚をフィードバックする技術である。ハプティクス技術は、触覚技術とも呼ばれる。ハプティクス技術の一例として、例えば、VR(Virtual Reality)での触覚フィードバックを実現するため、物を触った際の触感や、物体を把持した際の力覚などを、指や手首に対する振動によって疑似触覚として利用者に体感させる技術が研究されている(特許文献2)。
また、ワイヤー部材等を備えるアクチュエータによって駆動される骨格構造(外骨格と呼ばれる)を指や手等に装着し、この骨格構造からの反力によって力覚が得られるようにする技術や、気体や液体等の流体を満たした流路構造を配して、流体制御により圧覚を与える技術も研究されている(特許文献3、4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007-281406号公報
【特許文献2】国際公開第2018/092595号公報
【特許文献3】特開2001-166676号公報
【特許文献4】特開2000-20218号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
物を触った際の触感や、物体を把持した際の力覚などを、利用者に体感させる際の一例として、指に対する振動によって疑似触覚として利用者に体感させる場合がある。多くの場合が、利用者の指の腹の側(爪とは反対側)に、振動による疑似触覚を提示することになる。それゆえ、従来においては、利用者の指の腹の側に、ハプティクス素子としての振動子を含む電子部品が配置されていた。さらに、ハプティクス素子としての振動子を含む電子部品には配線が接続されるため、複雑な構造が、利用者の指の腹の側に配置されることになっていた。
【0006】
しかしながら、上記のような複雑な構造が、利用者の体の何等かの操作面側や可動する側等に配置される場合、例えば上記の例では指の腹の側に配置される場合、利用者にとって、他の作業を行うことが困難になってしまうという問題があった。例えば、電子機器の操作においてはキーボードを用いた入力操作が行われるが、このキーボードを用いた入力操作は、主に指の腹でキーを押すため、指の腹の側に複雑な構造が配置されていると、入力操作を行うことが困難になる。また、何かの物体を把持する場合も、通常、指の腹を使うことになり、上記と同様に、指の腹の側に複雑な構造が配置されていると、物体を把持することも困難になる。
【0007】
本開示の実施形態は、このような点を考慮してなされたものであり、利用者がハプティクス素子を装着した状態においても、利用者が行う他の作業が困難になることを解消でき、振動による皮膚感覚を利用者に効率的にフィードバックすることが可能な、触覚提示装具および物品を提供することを主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の一実施形態は、配線基板と、振動を伝達する振動伝達部と、を備え、前記配線基板が、第1面及び前記第1面の反対側に位置する第2面を含む基材であって、第1の弾性係数を有する伸縮部と、前記基材の前記第1面の面内方向に前記伸縮部と隣接し且つ前記第1の弾性係数よりも大きい第2の弾性係数を有する固定部と、を備えた基材と、前記基材の前記伸縮部の前記第1面の側に位置する配線と、を有し、前記振動伝達部が、前記配線基板の前記固定部に接続されており、前記固定部から前記振動を伝達する対象となる箇所に到達する長さを有する、触覚提示装具である。
【0009】
本開示の一実施形態は、配線基板と、振動を伝達する振動伝達部と、を備え、前記配線基板が、第1面及び前記第1面の反対側に位置する第2面を含む基材であって、第1の弾性係数を有する伸縮部と、前記基材の前記第1面の面内方向に前記伸縮部と隣接し且つ前記第1の弾性係数よりも大きい第2の弾性係数を有する固定部と、を備えた基材と、前記基材の前記伸縮部の前記第1面の側に位置する配線と、前記配線と前記基材の前記第1面との間に位置し、前記基材の前記伸縮部が有する第1の弾性係数よりも大きい第3の弾性係数を有し、前記配線を支持する支持基板と、を有し、前記振動伝達部が、前記支持基板に接続されており、前記支持基板から前記振動を伝達する対象となる箇所に到達する長さを有する、触覚提示装具である。
【0010】
本開示の一実施形態は、配線基板と、振動を伝達する振動伝達部と、を備え、前記配線基板が、第1面及び前記第1面の反対側に位置する第2面を含む基材であって、第1の弾性係数を有する伸縮部と、前記基材の前記第1面の面内方向に前記伸縮部と隣接し且つ前記第1の弾性係数よりも大きい第2の弾性係数を有する固定部と、を備えた基材と、前記基材の前記伸縮部の前記第1面の側に位置する配線と、前記基材の前記固定部の前記第1面の側に位置し、前記配線に接続される電子部品と、を有し、前記振動伝達部が、前記電子部品に接続されており、前記電子部品から前記振動を伝達する対象となる箇所に到達する長さを有する、触覚提示装具である。
【0011】
本開示の一実施形態は、配線基板と、振動を伝達する振動伝達部と、を備え、前記配線基板が、第1面及び前記第1面の反対側に位置する第2面を含む基材であって、第1の弾性係数を有する伸縮部と、前記基材の前記第1面の面内方向に前記伸縮部と隣接し且つ前記第1の弾性係数よりも大きい第2の弾性係数を有する固定部と、を備えた基材と、前記基材の前記伸縮部の前記第1面の側に位置する配線と、前記基材の前記固定部の前記第1面の側に位置し、前記配線に接続される電子部品と、前記配線および前記電子部品と前記基材の前記第1面との間に位置し、前記基材の前記伸縮部が有する第1の弾性係数よりも大きい第3の弾性係数を有し、前記配線を支持する支持基板と、を有し、前記振動伝達部が、前記電子部品に接続されており、前記電子部品から前記振動を伝達する対象となる箇所に到達する長さを有する、触覚提示装具である。
【0012】
本開示の一実施形態による触覚提示装具において、前記振動伝達部がU字状の形態を有していてもよい。
【0013】
本開示の一実施形態による触覚提示装具において、前記振動伝達部がリング状の形態を有していてもよい。
【0014】
本開示の一実施形態による触覚提示装具において、前記振動伝達部が、前記振動を伝達する対象となる箇所に位置する突起部を有していてもよい。
【0015】
本開示の一実施形態による触覚提示装具において、前記振動伝達部が、前記振動を伝達する対象となる箇所と異なる位置に、前記振動を吸収する振動吸収部を有していてもよい。
【0016】
本開示の一実施形態による触覚提示装具において、前記振動伝達部が、圧覚を提示する圧覚提示部と、前記圧覚提示部に繋がる流路と、を有し、前記圧覚提示部が、前記流路内の流体の圧力変化に応じて膨張若しくは収縮してもよい。
【0017】
本開示の一実施形態による触覚提示装具は、前記基材の前記第1面の法線方向に沿って見た場合に、前記固定部と重なる前記基材の前記第1面の側に、外骨格ワイヤーが接続される外骨格ワイヤー接続部を備えていてもよい。
【0018】
本開示の一実施形態による触覚提示装具は、前記基材の前記第1面の法線方向に沿って見た場合に、前記固定部と重なる前記基材の前記第2面の側にも前記伸縮部を備えていてもよい。
【0019】
本開示の一実施形態による触覚提示装具において、前記配線は、複数の導電性粒子を含んでいてもよい。
【0020】
本開示の一実施形態による触覚提示装具において、前記配線は、山部及び谷部を含む蛇腹形状部を有していてもよい。
【0021】
本開示の一実施形態による触覚提示装具においては、前記基材の前記第1面の法線方向に沿って見た場合に、前記基材の前記第2面のうち前記蛇腹形状部に重なる部分に現れる山部及び谷部の振幅が、前記配線の前記蛇腹形状部に重なる部分に現れる山部及び谷部の振幅よりも小さくてもよい。
【0022】
本開示の一実施形態による触覚提示装具においては、前記基材の前記第1面の法線方向に沿って見た場合に、前記基材の前記第2面のうち前記蛇腹形状部に重なる部分に現れる山部及び谷部の周期が、前記配線の前記蛇腹形状部に重なる部分に現れる山部及び谷部の周期よりも大きくてもよい。
【0023】
本開示の一実施形態による触覚提示装具において、前記基材の前記第1面の面内方向に沿う引張応力が前記基材に加えられていない第1状態における前記配線の抵抗値を第1抵抗値と称し、前記基材に引張応力を加えて前記基材を前記第1面の面内方向において前記第1状態に比べて30%伸長させた第2状態における前記配線の抵抗値を第2抵抗値と称する場合、前記第1抵抗値に対する、前記第1抵抗値と前記第2抵抗値の差の絶対値の比率が、20%以下であってもよい。
【0024】
本開示の一実施形態による触覚提示装具において、前記配線基板が、前記固定部を複数有していてもよい。
【0025】
本開示の一実施形態による触覚提示装具においては、前記配線基板の前記基材の前記第2面の側に利用者の指が位置し、前記固定部が前記利用者の前記指の爪の側に配置され、前記振動を伝達する対象となる箇所が前記利用者の前記指の腹であってもよい。
【0026】
本開示の一実施形態による触覚提示装具においては、前記配線基板の前記基材の前記第2面の側に利用者の指が位置し、前記固定部が前記利用者の前記指の爪の側に配置され、前記振動を伝達する対象となる箇所が前記利用者の前記指の腹であり、前記振動伝達部が、前記振動を吸収する振動吸収部を、前記利用者の前記指の爪と前記指の腹との間の前記指の側部に対向する位置に有していてもよい。
【0027】
本開示の一実施形態による触覚提示装具においては、前記配線基板の前記基材の前記第2面の側に利用者の指が位置し、前記固定部が前記利用者の前記指の爪の側に配置され、前記振動を伝達する対象となる箇所が前記利用者の前記指の腹であり、前記基材の前記第1面の法線方向に沿って見た場合に、前記固定部と重なる前記基材の前記第2面の側にも前記伸縮部を備えていてもよい。
【0028】
本開示の一実施形態による触覚提示装具においては、前記配線基板の前記伸縮部が、第1の音響インピーダンスを有し、前記配線基板の前記固定部が、第2の音響インピーダンスを有し、前記振動伝達部が、第3の音響インピーダンスを有し、前記配線基板の前記伸縮部が有する第1の音響インピーダンスが、前記配線基板の前記固定部が有する第2の音響インピーダンスより小さく、かつ、前記振動伝達部が有する第3の音響インピーダンスより小さくてもよい。
【0029】
本開示の一実施形態による触覚提示装具において、前記振動伝達部が、前記第3の音響インピーダンスよりも小さく、前記第1の音響インピーダンスより大きい、第4の音響インピーダンスを部分的に有していてもよい。
【0030】
本開示の一実施形態による触覚提示装具において、前記振動伝達部が、前記振動を伝達する対象となる箇所の中央側の位置に配置される第1突起部と、前記振動を伝達する対象となる箇所の外縁側の位置に配置される第2突起部と、を有し、前記第2突起部が有する音響インピーダンスが、前記第1突起部が有する音響インピーダンスよりも小さくてもよい。
【0031】
本開示の一実施形態による触覚提示装具は、前記基材の前記第1面の法線方向に沿って見た場合に、前記固定部と重なる位置の前記基材の前記第1面の側に配置され、前記配線と接続される電子部品を更に備えていてもよい。
【0032】
本開示の一実施形態は、前記触覚提示装具を有する、物品である。
【発明の効果】
【0033】
本開示の実施形態によれば、利用者がハプティクス素子を装着した状態においても、利用者が行う他の作業が困難になることを解消でき、振動による皮膚感覚を利用者に効率的にフィードバックすることが可能な、触覚提示装具および物品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1】本開示の第1の実施形態に係る触覚提示装具の一例を示す斜視図
図2】本開示の第1の実施形態に係る触覚提示装具の一例を示す平面図
図3】本開示の第1の実施形態に係る触覚提示装具の配線基板の一例を示す断面図
図4図3に示す配線基板の製造方法の一例を示す工程図
図5図4に続く図3に示す配線基板の製造方法の一例を示す工程図
図6】本開示の第1の実施形態に係る触覚提示装具の一例を示す断面図
図7】本開示の第1の実施形態の第1の変形例に係る触覚提示装具の一例を示す断面図
図8】本開示の第1の実施形態の第2の変形例に係る触覚提示装具の一例を示す平面図
図9】本開示の第1の実施形態の第3の変形例に係る触覚提示装具の一例を示す断面図
図10】本開示の第1の実施形態の第4の変形例に係る触覚提示装具の一例を示す断面図
図11】本開示の第1の実施形態の第5の変形例に係る触覚提示装具の一例を示す断面図
図12】本開示の第1の実施形態の第6の変形例に係る触覚提示装具の一例を示す断面図
図13】本開示の第1の実施形態の第7の変形例に係る触覚提示装具の一例を示す斜視図
図14】本開示の第1の実施形態の第8の変形例に係る触覚提示装具の一例を示す斜視図
図15】本開示の第2の実施形態に係る触覚提示装具の一例を示す平面図
図16】本開示の第2の実施形態に係る触覚提示装具の配線基板の一例を示す断面図
図17】本開示の第2の実施形態に係る触覚提示装具の配線基板の一例を示す断面図
図18図16に示す配線基板の製造方法の一例を示す工程図
図19】本開示の第3の実施形態に係る触覚提示装具の一例を示す平面図
図20】本開示の第3の実施形態に係る触覚提示装具の配線基板の一例を示す断面図
図21図20に示す配線基板の製造方法の一例を示す工程図
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、本開示の実施形態に係る配線基板の構成及びその製造方法について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下に示す実施形態は本開示の実施形態の一例であって、本開示はこれらの実施形態に限定して解釈されるものではない。また、本明細書において、「基板」、「基材」、「シート」や「フィルム」など用語は、呼称の違いのみに基づいて、互いから区別されるものではない。例えば、「基材」は、基板、シートやフィルムと呼ばれ得るような部材も含む概念である。更に、本明細書において用いる、形状や幾何学的条件並びにそれらの程度を特定する、例えば、「平行」や「直交」等の用語や長さや角度の値等については、厳密な意味に縛られることなく、同様の機能を期待し得る程度の範囲を含めて解釈することとする。また、本実施形態で参照する図面において、同一部分または同様な機能を有する部分には同一の符号または類似の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する場合がある。また、図面の寸法比率は説明の都合上実際の比率とは異なる場合や、構成の一部が図面から省略される場合がある。
【0036】
また、本明細書において、ある部材の上に他の部材を配置する態様を表現するにあたり、単に「上に」、あるいは「下に」と表記する場合、特に断りの無い限りは、ある部材に接するように、直上、あるいは直下に他の部材を配置する場合と、ある部材の上方、あるいは下方に、さらに別の部材を介して他の部材を配置する場合との両方を含むものとする。また、本明細書において、ある部材の面に他の部材を配置する態様を表現するにあたり、単に「面に」と表記する場合、特に断りの無い限りは、ある部材に接するように、直上、あるいは直下に他の部材を配置する場合と、ある部材の上方、あるいは下方に、さらに別の部材を介して他の部材を配置する場合との両方を含むものとする。
【0037】
以下、本開示の実施形態に係る触覚提示装具および物品について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0038】
<第1の実施形態>
(触覚提示装具)
まず、本開示の第1の実施形態に係る触覚提示装具について、図1図2を用いて説明する。ここで、図1は、本開示の第1の実施形態に係る触覚提示装具の一例を示す斜視図である。また、図2は、本開示の第1の実施形態に係る触覚提示装具の一例を示す平面図であり、より詳しくは、図1に示す触覚提示装具1を指2の爪3の側から見た触覚提示装具1の平面形態の要部を示す平面図である。
図1および図2においては、触覚提示装具1が、点線で輪郭を示す利用者の指2に装着された状態を例示している。そして、触覚提示装具1によって振動が伝達される対象となる箇所が利用者の指の腹である。
なお、触覚提示装具1が人体へ装着される際は、触覚提示装具1が人体(例えば皮膚の表面)に直接接触する形態や、触覚提示装具1と人体との間に他の物質(布、樹脂等)を介する形態がある。図1および図2においては、利用者の指2の爪3や腹と、触覚提示装具1との位置関係を理解容易とする目的で、触覚提示装具1が利用者の指2に直接接触する形態を例示している。
【0039】
図1および図2に示すように、触覚提示装具1は、配線基板10と、振動伝達部50とを備える。配線基板10は、基材20、配線41を備える。基材20は、伸縮部31と、固定部32と、を備えている。また、図1および図2に示す例において、電子部品42が、基材20の固定部32の上に配置され、配線41に接続されている。配線基板10に搭載される電子部品には、ハプティクス素子としての振動子を含む。配線基板10は、ハプティクス素子としての振動子に加えて、他の電子部品を有していてもよい。
配線基板10の固定部32は、利用者の指2の爪3の側に配置されており、振動伝達部50は、その一の端部が配線基板10の固定部32に接続されている。そして、振動伝達部50は、利用者の指2の爪3の側から利用者の指2の側部に沿って、利用者の指2の腹の側に到達する長さを有している。言い換えれば、振動伝達部50は、固定部32から振動を伝達する対象となる箇所(すなわち、利用者の指2の腹)に到達する長さを有している。
【0040】
触覚提示装具1においては、配線基板10の基材20の大部分が伸縮部31から構成されているため、人体への装着に適した伸縮性を有するものとなる。
また、触覚提示装具1においては、配線基板10の固定部32が利用者の指2の爪3の側に配置されており、この固定部32の上に、ハプティクス素子としての振動子を含む電子部品42が配置される。このため、ハプティクス素子を装着した状態においても、指2の腹の側に、電子部品42や配線41などの複雑な構造が配置されることはなく、利用者において指2の腹を使う作業が困難になることを解消できる。
そして、触覚提示装具1においては、一の端部が配線基板10の固定部32に接続されている振動伝達部50を有し、振動伝達部50は、利用者の指2の爪3の側から指2の腹の側に到達している。このため、電子部品42として振動子を固定部32に搭載した場合、振動子の振動は、まず固定部32に伝わり、続いて固定部32から振動伝達部50を伝わって、利用者の指2の腹の側に伝達されることになり、利用者の指2の腹の側に、振動による疑似触覚を提示することができる。
なお、振動伝達部50は、電子部品42に接続されていてもよい。振動伝達部50が電子部品42に接続されていれば、電子部品42からの振動は、直接、振動伝達部50に伝わることになる。
【0041】
上記のように、触覚提示装具1によれば、利用者がハプティクス素子を装着した状態においても、指の腹を使う作業が困難になることを解消でき、振動による皮膚感覚を利用者に効率的にフィードバックすることが可能となる。
以下、触覚提示装具1の各構成要素について、詳しく説明する。
【0042】
(配線基板)
まず、配線基板10について、上記の図1図2に加えて図3も用いて説明する。ここで、図3は、本開示の第1の実施形態に係る触覚提示装具の配線基板の一例を示す断面図であり、より詳しくは、図2に示す触覚提示装具1の配線基板10を線A-Aに沿って切断した場合の図である。なお、図3においては、図1および図2において点線で輪郭を示した利用者の指2は図示していないが、図3における基材20の第2面22の側に、図1および図2において点線で輪郭を示した利用者の指2が位置することになる。
【0043】
上述したように、配線基板10は、基材20、配線41を備える。また、図1図3に示す例において、電子部品42が、基材20の固定部32の上に配置され、配線41に接続されている。
以下、配線基板10の各構成要素について説明する。
【0044】
[基材]
基材20は、伸縮性を有するよう構成された部材である。基材20は、第1面21と、第1面21の反対側に位置する第2面22と、を含む。この基材20は、基材20の第1面21の面内方向に、第1の弾性係数を有する伸縮部31と、基材20の第1面21の面内方向に伸縮部31と隣接し且つ第1の弾性係数よりも大きい第2の弾性係数を有する固定部32と、を備えている。
【0045】
基材20の伸縮部31と固定部32とは、接着剤等により接合されていてもよい。あるいは、平坦な面上に固定部32を置いて、伸縮部31となる液状の材料を流し込み、当該材料を固定部32と一体化させながら硬化させることで、基材20の伸縮部31と固定部32の構成を形成することもできる。この液状の材料を流し込むことにより、剛体である固定部32の断面形状がひし形や台形のような形状を有する場合にも、伸縮部31と固定部32を容易に形成することができる。
【0046】
基材20の厚みは、例えば10mm以下であり、より好ましくは1mm以下である。なお、基材20は、基材20の第1面21の面内方向に、伸縮部31と固定部32とを有するが、固定部32は基材20の必要な箇所にのみ設けるものであり、伸縮部31が基材20の大部分を占めることになる。それゆえ、本明細書において、基材20の厚みと言う場合は、特段の事情がない限り、伸縮部31の厚みとして扱うことができる。
【0047】
基材20の伸縮部31の厚みを小さくすることにより、基材20の伸縮に要する力を低減することができる。また、基材20の厚みを小さくすることにより、配線基板10を用いた製品全体の厚みを小さくすることができる。これにより、配線基板10の装着による違和感を低減することができる。なお、基材20の厚みは、10μm以上であってもよい。
【0048】
[基材の伸縮部]
基材20の伸縮部31は、自在に伸縮可能な弾性を有し、配線基板10の大部分を占める。これにより、配線基板10は人体への装着に適した伸縮性を有するものとなる。
基材20の伸縮部31の伸縮性を表すパラメータの例として、弾性係数を挙げることができる。伸縮部31の弾性係数は、例えば10MPa以下であり、より好ましくは1MPa以下である。このような弾性係数を有する伸縮部31を基材20に用いることにより、配線基板10全体に伸縮性を持たせることができる。以下の説明において、基材20の伸縮部31の弾性係数のことを、第1の弾性係数とも称する。基材20の伸縮部31の第1の弾性係数は、1kPa以上であってもよい。
【0049】
基材20の伸縮部31の第1の弾性係数を算出する方法としては、基材20の伸縮部31のサンプルを用いて、JIS K6251に準拠して引張試験を実施するという方法を採用することができる。また、基材20の伸縮部31のサンプルの弾性係数を、ISO14577に準拠してナノインデンテーション法によって測定するという方法を採用することもできる。ナノインデンテーション法において用いる測定器としては、ナノインデンターを用いることができる。基材20の伸縮部31のサンプルを準備する方法としては、配線基板10から基材20の伸縮部31の一部をサンプルとして取り出す方法や、配線基板10を構成する前の基材20の伸縮部Yの一部をサンプルとして取り出す方法が考えられる。その他にも、基材20の伸縮部31の第1の弾性係数を算出する方法として、基材20の伸縮部31を構成する材料を分析し、材料の既存のデータベースに基づいて基材20の伸縮部31の第1の弾性係数を算出するという方法を採用することもできる。なお、本願における弾性係数は、25℃の環境下における弾性係数である。
【0050】
基材20の伸縮部31の伸縮性を表すパラメータのその他の例として、基材20の伸縮部31の曲げ剛性を挙げることができる。曲げ剛性は、対象となる部材の断面二次モーメントと、対象となる部材を構成する材料の弾性係数との積であり、単位はN・m2又はPa・m4である。基材20の伸縮部31の断面二次モーメントは、配線基板10の伸縮方向に直交する平面によって、基材20の伸縮部31のうち配線41と重なっている部分を切断した場合の断面に基づいて算出される。以下の説明において、基材20の伸縮部31の曲げ剛性のことを、第1の曲げ剛性とも称する。
【0051】
基材20の伸縮部31を構成する材料の例としては、熱可塑性エラストマー、シリコーンゴム、ウレタンゲル、シリコンゲル等を挙げることができる。また、基材20の伸縮部31の材料として、例えば、織物、編物、不織布などの布を用いることもできる。熱可塑性エラストマーとしては、ポリウレタン系エラストマー、スチレン系熱可塑性エラストマー、オレフィン系熱可塑性エラストマー、塩ビ系熱可塑性エラストマー、エステル系熱可塑性エラストマー、アミド系熱可塑性エラストマー、1,2-BR系熱可塑性エラストマフッ素系熱可塑性エラストマー等を用いることができる。機械的強度や耐磨耗性を考慮すると、ウレタン系エラストマーを用いることが好ましい。更に、シリコーンゴムは、耐熱性・耐薬品性・難燃性に優れており、基材20の伸縮部31の材料として好ましい。
【0052】
[基材の固定部]
基材20の固定部32は、基材20の伸縮を制御するために配線基板10に設けられる部材である。また、固定部32は、固定部32の上に配置されるハプティクス素子としての振動子を含む電子部品42からの振動を、振動伝達部50に伝える作用も奏する。
【0053】
図3に示すように、固定部32は、基材20の厚み方向の断面において、第1面21の側に位置し、固定部32の少なくとも一部が、第1面21に露出する。そして、この露出する部分にハプティクス素子としての振動子を含む電子部品42が配置される。このような構成を有するため、触覚提示装具1においては、電子部品42からの振動を固定部32に直接伝達することができ、電子部品42から固定部32に伝わる振動が減衰してしまうことを抑制できる。そして、触覚提示装具1においては、固定部32に接続される振動伝達部50に対しても、電子部品42からの振動を効率的に伝達することができる。それゆえ、目的とする箇所(利用者の指の腹)に電子部品42からの振動を、効率的に伝えることができる
【0054】
また、図3に示すように、触覚提示装具1においては、固定部32の下側(基材20の第2面22の側)にも伸縮部31を備えている。言い換えれば、触覚提示装具1は、基材20の第1面21の法線方向に沿って見た場合に、固定部32と重なる基材20の第2面22の側にも伸縮部31を備えている。このような構成を有するため、触覚提示装具1においては、電子部品42から固定部32に伝わる振動は、利用者の指に直接伝達されず、固定部32の下側に位置する伸縮部31によって減衰することになる。それゆえ、目的としない箇所(例えば、利用者の指の爪)に電子部品42からの振動が伝わることを抑制できる。
【0055】
固定部32が有する振動を伝搬する物性の例として、音響インピーダンスを挙げることができる。音響インピーダンスとは、物体(媒質)の音の伝搬のしやすさを数値で表したものであり、物体はそれぞれ固有の音響インピーダンスを有している。音響インピーダンス(Zo)は、下記のように、媒質の密度(ρ)と媒質中の音速(c)の積で求めることができる。

Zo=ρ×c
【0056】
触覚提示装具1において、固定部32は伸縮部31よりも大きい音響インピーダンスを有する。固定部32の音響インピーダンスは、例えば2.0×106kg/m2・s以上であり、好ましくは2.5×106kg/m2・s以上であり、より好ましくは3.0×106kg/m2・s以上である。固定部32の音響インピーダンスが、2.5×106kg/m2・sec以上であれば、多くの弾性体よりも大きい音響インピーダンスとなり、伸縮部31に比べて十分に高い効率で振動を伝搬することができる。これにより、触覚提示装具1においては、固定部32の上に配置される電子部品42からの振動による皮膚感覚を、利用者に効率的にフィードバックすることができる。
なお、固定部32の音響インピーダンスの値は大きいほどよく、上限値については特に制限されないが、例えば、50×106kg/m2・sとすることができる。音響インピーダンスが、50×106kg/m2・s以下であれば、多くの金属材料を含めることができ、金属材料は通常、振動を伝搬する効率が高い。
【0057】
基材20の固定部32の音響インピーダンスを算出する方法としては、例えば、アルキメデス法等により固定部32の密度を計測し、超音波音速計により固定部32の音速を計測して、その積により音響インピーダンスを求めることができる。その他の方法として、JIS A 1405-2に準拠して固定された2つのマイクロホンにより測定された2点間の伝達関数から、固定部32を構成する材料の音響インピーダンスを求めてもよい。また、固定部32を構成する材料に関する公知の数値(密度、音速)から算出してもよい。
【0058】
一方、配線基板10において、伸縮部31は伸縮性に応じた弾性を有しており、通常、弾性係数の小さい物質は音響インピーダンスも小さくなる。例えば、シリコーンゴムの音響インピーダンスは、約1.0×106kg/m2・sである。
ここで、本開示の触覚提示装具においては、利用者に効率的にフィードバックする皮膚感覚に対してノイズ等の混入を回避するために、伸縮部31の音響インピーダンスは、固定部32の音響インピーダンスよりも小さいことが好ましい。このような理由から、伸縮部31の音響インピーダンスは、例えば2.0×106kg/m2・s未満であり、好ましくは1.5×106kg/m2・s以下であり、より好ましくは1.0×106kg/m2・s以下である。上記のように、シリコーンゴムの音響インピーダンスは、約1.0×106kg/m2・sであることから、シリコーンゴムは伸縮部31の材料として好ましい。
なお、伸縮部31の音響インピーダンスの値は、上記のノイズ等の混入を回避するためには小さいほどよく、下限値については特に制限されないが、空気の音響インピーダンスが410kg/m2・sであることから、例えば、400kg/m2・sとすることができる。
【0059】
基材20の伸縮部31の音響インピーダンスを算出する方法としては、上述した固定部32の音響インピーダンスを算出する方法と同様の方法を用いることができる。
【0060】
なお、以下の説明において、基材20の伸縮部31の音響インピーダンスのことを、第1の音響インピーダンスとも称する。また、固定部32の音響インピーダンスのことを、第2の音響インピーダンスとも称する。
【0061】
上記のように、基材20の固定部32は振動伝搬性に応じた音響インピーダンス(第2の音響インピーダンス)を有しており、通常、音響インピーダンスの大きい物質は、その弾性係数も大きな値となる。それゆえ、基材20の固定部32は、伸縮部31の第1の弾性係数よりも大きい弾性係数を有する。以下の説明において、基材20の固定部32の弾性係数のことを、第2の弾性係数とも称する。
【0062】
基材20の固定部32の弾性係数(第2の弾性係数)は、例えば1GPa以上であり、より好ましくは10GPa以上である。基材20の固定部32の第2の弾性係数は、基材20の伸縮部31の第1の弾性係数の100倍以上であってもよく、1000倍以上であってもよい。このような固定部32を基材20に設けることにより、基材20の固定部32が伸縮することを抑制することができる。これにより、基材20を、伸縮が生じやすい部分である伸縮部31と、伸縮が生じにくい部分である固定部32とに区画することができる。基材20の固定部32の第2の弾性係数は、500GPa以下であってもよい。また、基材20の固定部32の第2の弾性係数は、基材20の伸縮部31の第1の弾性係数の500000倍以下であってもよい。
【0063】
基材20の固定部32の第2の弾性係数を算出する方法は、基材20の固定部32の形態に応じて適宜定められる。例えば、基材20の固定部32の第2の弾性係数を算出する方法は、上述の基材20の伸縮部31の弾性係数を算出する方法と同様であってもよく、異なっていてもよい。例えば、基材20の固定部32の弾性係数を算出する方法として、基材20の固定部32のサンプルを用いて、ASTM D882に準拠して引張試験を実施するという方法を採用することができる。
【0064】
また、基材20の固定部32は、基材20の伸縮部31の第1の曲げ剛性よりも大きい曲げ剛性を有する。基材20の固定部32の曲げ剛性は、基材20の伸縮部31の第1の曲げ剛性の100倍以上であってもよく、1000倍以上であってもよい。以下の説明において、基材20の固定部32の曲げ剛性のことを、第2の曲げ剛性とも称する。
【0065】
基材20の固定部32を構成する材料の例としては、ガラス繊維にエポキシ樹脂を含侵させたガラスエポキシ樹脂、紙基材にフェノール樹脂を含侵させた紙フェノール樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂や、PET(ポリエチレンテレフタラート)、PI(ポリイミド)、PEN(ポリエチレンナフタレート)等のフィルム、金属、セラミック、および、セラミックまたは金属を含有するゴム等を挙げることができる。
上記のガラスエポキシ樹脂としては、米国電機工業会(NEMA)規格のFR4以上に相当するものが、難燃性の点から好ましい。同様に、紙フェノール樹脂としては、米国電機工業会(NEMA)規格のFR1以上に相当するものが、難燃性の点から好ましい。
【0066】
[配線]
配線41は導電性を有する部材である。そして、配線41は、基材20の第1面21側に位置し、振動子等の電子部品42に接続される。
【0067】
ここで、図3に示す触覚提示装具1においては、配線41が基材20の第1面21に接する形態を例示しているが、本開示の触覚提示装具はこれに限定されない。例えば、配線41は、基材20の第1面21と離間する形態で、基材20の第1面21側に設けられていてもよい。このような形態としては、例えば、配線41がワイヤー線の形態(糸状の形態)を挙げることができる。配線41が基材20の第1面21と離間する形態であれば、基材20が伸縮する場合も、配線41が直接その影響で変形(例えば厚みが変化)することを回避でき、断線や抵抗値変化を抑制することができる。
【0068】
一方、図3に示す触覚提示装具1のように、配線41が基材20の第1面21に接する形態の場合、配線41を配線基板10と一体化することができ、人体に装着しての取り扱いがより良好なものとなる。ただし、配線41が基材20の第1面21に接する形態の場合は、基材20の伸縮により、配線41がその影響で変形(例えば厚みが変化)し、断線や抵抗値変化を生じてしまうおそれがある。
【0069】
この点を考慮し、触覚提示装具1における配線41は、変形に対する耐性を有する構造を備えることが好ましい。例えば、配線41は、ベース材と、ベース材の中に分散された複数の導電性粒子とを有する。この場合、ベース材として、樹脂などの変形可能な材料を用いることにより、基材20の伸縮に応じて配線41も変形することができる。これにより、断線を抑制することができる。また、配線41に変形が生じた場合であっても複数の導電性粒子の間の接触が維持されるように導電性粒子の分布や形状を設定することにより、配線41の導電性を維持することができる。これにより、抵抗値変化を抑制することができる。
【0070】
配線41のベース材を構成する材料としては、例えば、一般的な熱可塑性エラストマーおよび熱硬化性エラストマーを用いることができ、例えば、スチレン系エラストマー、アクリル系エラストマー、オレフィン系エラストマー、ウレタン系エラストマー、シリコーンゴム、ウレタンゴム、フッ素ゴム、ニトリルゴム、ポリブタジエン、ポリクロロプレン等を用いることができる。中でも、ウレタン系、シリコーン系構造を含む樹脂やゴムが、その伸縮性や耐久性などの面から好ましく用いられる。また、配線41の導電性粒子を構成する材料としては、例えば銀、銅、金、ニッケル、パラジウム、白金、カーボン等の粒子を用いることができる。中でも、銀粒子が、価格と導電性の観点から好ましく用いられる。
【0071】
配線41の厚みは、例えば、50μm以下とすることができる。配線41の幅は、例えば50μm以上且つ10mm以下とすることができる。
【0072】
[電子部品]
電子部品42は、基材20の固定部32の第1面21側に位置し、配線41に接続される。図示はしないが、配線41が接続用電極を有しており、この接続用電極を介して、配線41と電子部品42とが接続されていてもよい。
【0073】
ここで、接続用電極は、例えば、電子部品42を配線基板10に搭載する際に図示しない圧着治具により押圧される場合がある。この場合、接続用電極は、基材20の剛性が高い部分である固定部32の第1面21側に配置されているため、基材20が押し込まれにくく変改しにくいことから、接続用電極と配線41との間に断線が発生するのを抑制することができる。
【0074】
また、接続用電極は、例えば、配線基板10から電子部品42を脱着する時に引っ張られる場合がある。この場合、接続用電極は、基材20の剛性が高い部分である固定部32の第1面21側に配置されているため、基材20が引っ張られにくく変改しにくいことから、接続用電極と配線41との間に断線が発生するのを抑制することができる。
【0075】
接続用電極に用いられる材料としては、導電性の高い材料が好ましく、例えば、金、銀、銅、アルミニウム、白金、クロム等の金属や、これらの金属を含む合金が挙げられる。
接続用電極は、固定部32の第1面21側に配置されるため、特に伸縮性を有する必要は無いが、製造容易とする点から、接続用電極と配線41とは、同じ材料から構成されてもよい。
【0076】
次に、基材20の固定部32と電子部品42との位置関係について説明する。配線基板10に搭載される電子部品42には、ハプティクス素子としての振動子を含む。配線基板10は、ハプティクス素子としての振動子に加えて、他の電子部品を有していてもよい。
電子部品42は基材20の固定部32の第1面21側に配置される。そして、基材20の固定部32は、基材20の伸縮部31に比べて変形しにくい。それゆえ、基材20に引張応力などの力を加えたときや、基材20から引張応力などの力を取り除いたときなどに、基材20の変形に起因する応力が電子部品42に加わることを抑制することができ、電子部品42が変形したり破損したりしてしまうことを抑制することができる。また、電子部品42と配線41との間の電気接合部が破損してしまうことを抑制することができる。
【0077】
ハプティクス素子としての振動子に加えて搭載する電子部品の例としては、トランジスタ、LSI(Large-Scale Integration)、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)、リレー、LED、OLED、LCDなどの発光素子、センサ、ブザー等の発音部品、冷却発熱をコントロールするペルチェ素子や電熱線などの冷発熱部品、抵抗器、キャパシタ、インダクタ、圧電素子、スイッチ、コネクタなどを挙げることができる。
上述の例のうち、センサとしては、例えば、温度センサ、圧力センサ、光センサ、光電センサ、近接センサ、せん断力センサ、生体センサ、レーザーセンサ、マイクロ波センサ、湿度センサ、歪みセンサ、ジャイロセンサ、加速度センサ、変位センサ、磁気センサ、ガスセンサ、GPSセンサ、超音波センサ、臭いセンサ、脳波センサ、電流センサ、振動センサ、脈波センサ、心電センサ、光度センサ等を挙げることができる。
【0078】
(配線基板の製造方法)
次に、本開示の触覚提示装具の第1の実施形態に係る配線基板の製造方法について、図4および図5を用いて説明する。ここで、図4図3に示す配線基板10の製造方法の一例を示す工程図であり、図5図4に続く図3に示す配線基板の製造方法の一例を示す工程図である。
【0079】
図3に示す配線基板10を製造するには、まず、図4(a)に示すように、土台301として平板(ガラス板等)を準備し、この土台301の上に、離型剤を塗布等して離型層302を形成する。
【0080】
次に、図4(b)に示すように、離型層302の上に固定部32となる部材を配置する。ここで、上記の固定部32となる部材の配置は、基材20における固定部32の第1面21側が離型層302と接する側となり、第2面22側が天側となるように配置することが好ましい。上記のように配置することで、基材20における伸縮部31の第1面21と固定部32の第1面21とは、離型層302の天側の面に沿って形成されることから、伸縮部31と固定部32との境界で段差の無い同一面として形成されることが可能になる。これにより、例えば、配線41の形成に際して、伸縮部31と固定部32との境界で配線41の厚さが変化してしまう不具合や、極端な場合に伸縮部31と固定部32との境界の段差によって配線が断線してしまうことを抑制できる。
【0081】
次に、図4(c)に示すように、伸縮部31となる液状の材料(若しくは流動性を有する材料)を流し込んだ際に、所望の領域からの流出をせき止めるための構造物(いわゆる堰)として枠303を配置し、続いて、図4(d)に示すように、伸縮部31となる材料を流し込む。
【0082】
その後、伸縮部31となる材料を硬化させ、図4(e)に示すように、伸縮部31と固定部32とが一体化した基材20を取り出す。なお、図4(e)においては、離型層302を介して枠303を備えた土台301から、基材20が取り出されている形態を例示しているが、これに限らず、まず、土台301の上に設けられた離型層302から、枠303と基材20とを一体として分離し、次いで、枠303から基材20を取り出してもよい。
【0083】
次に、取り出した基材20を天地反転させて、図5(f)に示すように、第1面21側が天側に、第2面22側が地側になるようにして、図5(g)に示すように、配線41を形成し、さらに電子部品42を配置して、図5(h)に示すように、配線基板10を得る。
【0084】
図5(g)に示す配線41を形成する方法としては、例えば、ベース材及び導電性粒子を含む導電性ペーストを基材20の第1面21に印刷する方法を挙げることができる。
【0085】
また、例えば、配線41がワイヤー線の形態(糸状の形態)である場合のように、配線41が基材20の第1面21と離間する形態で、基材20の第1面21側に設けられる場合には、先に接続用電極を固定部32の上に形成し、次いで、配線41を接続用電極に接続して、配線41を基材20の第1面21側に設けてもよい。
【0086】
(振動伝達部)
次に、振動伝達部50について、上記の図1図2に加えて図6も用いて説明する。ここで、図6は、本開示の第1の実施形態に係る触覚提示装具の一例を示す断面図であり、より詳しくは、図2に示す触覚提示装具1を線B-Bに沿って切断した場合に相当する図である。
なお、触覚提示装具1が人体へ装着される際は、触覚提示装具1が人体(例えば皮膚の表面)に直接接触する形態や、触覚提示装具1と人体との間に他の物質(布、樹脂等)を介する形態がある。図1および図2においては、利用者の指2の爪3や腹と、触覚提示装具1との位置関係を理解容易とする目的で、触覚提示装具1が利用者の指2に直接接触する形態を例示した。図6においては、指2と触覚提示装具1との間に、手袋生地5が介在する形態を例示する。
【0087】
上述したように、触覚提示装具1は、配線基板10と、振動伝達部50とを備える。配線基板10は、基材20、配線41を備える。基材20は、伸縮部31と、固定部32と、を備えている。また、電子部品42が、基材20の固定部32の上に配置され、配線41に接続されている。配線基板10に搭載される電子部品には、ハプティクス素子としての振動子を含む。配線基板10は、ハプティクス素子としての振動子に加えて、他の電子部品を有していてもよい。
配線基板10の固定部32は、利用者の指2の爪3の側に配置されており、振動伝達部50は、その一の端部が配線基板10の固定部32に接続されている。そして、振動伝達部50は、利用者の指2の爪3の側から利用者の指2の側部に沿って、利用者の指2の腹4の側に到達する長さを有している。
【0088】
図6に示す例において、振動伝達部50は断面形態としてU字状の形態を有している。より詳しくは、図6に示すように、振動伝達部50はその一の端部が配線基板10の固定部32に接続されており、利用者の指2の爪3の側から利用者の指2の側部に沿ったU字状の形態を有しており、振動伝達部50のもう一方の端部は利用者の指2の腹4の側に位置している。
【0089】
このように、触覚提示装具1においては、配線基板10の固定部32が利用者の指2の爪3の側に配置されており、この固定部32の上に、ハプティクス素子としての振動子を含む電子部品42が配置される。このため、ハプティクス素子を装着した状態においても、指2の腹の側に、電子部品42や配線41などの複雑な構造が配置されることはなく、利用者において指2の腹を使う作業が困難になることを解消できる。
そして、触覚提示装具1においては、一の端部が配線基板10の固定部32に接続されている振動伝達部50を有し、振動伝達部50は、利用者の指2の爪3の側から指2の腹の側に到達している。このため、電子部品42として振動子を固定部32に搭載した場合、振動子の振動は、まず固定部32に伝わり、続いて固定部32から振動伝達部50を伝わって、利用者の指2の腹4の側に到達されることになり、利用者の指2の腹4の側に、振動による疑似触覚を提示することができる。
【0090】
すなわち、触覚提示装具1によれば、利用者がハプティクス素子を装着した状態においても、指の腹を使う作業が困難になることを解消でき、振動による皮膚感覚を利用者に効率的にフィードバックすることが可能となる。
また、触覚提示装具1においては、配線基板10の基材20の大部分が伸縮部31から構成されていることから、人体への装着に適した伸縮性を有するものとなる。
【0091】
触覚提示装具1において、振動伝達部50は伸縮部31よりも大きい音響インピーダンスを有することが好ましい。目的としない箇所(例えば、利用者の指2の爪3)に電子部品42からの振動が伝わることを抑制しつつ、目的とする箇所(利用者の指2の腹4)に電子部品42からの振動を、効率的に伝えることができるからである。
振動伝達部50の音響インピーダンスは、例えば2.0×106kg/m2・s以上であり、好ましくは2.5×106kg/m2・s以上であり、より好ましくは3.0×106kg/m2・s以上である。振動伝達部50の音響インピーダンスが、2.5×106kg/m2・sec以上であれば、多くの弾性体よりも大きい音響インピーダンスとなり、伸縮部31に比べて十分に高い効率で振動を伝搬することができる。これにより、触覚提示装具1においては、固定部32の上に配置される電子部品42からの振動による皮膚感覚を、利用者に効率的にフィードバックすることができる。
【0092】
振動伝達部50の音響インピーダンスの値は大きいほどよく、上限値については特に制限されないが、例えば、50×106kg/m2・sとすることができる。音響インピーダンスが、50×106kg/m2・s以下であれば、多くの金属材料を含めることができ、金属材料は通常、振動を伝搬する効率が高い。なお、振動伝達部50には固定部32を介して電子部品42からの振動が伝わることから、振動伝達部50の音響インピーダンスの値が、固定部32の音響インピーダンス(第2の音響インピーダンス)よりも大きい値を有していても、固定部32を超える振動伝搬の効果は得られない。
なお、以下の説明において、振動伝達部50が有する音響インピーダンスのことを、第3の音響インピーダンスとも称する。
【0093】
振動伝達部50を構成する材料の例としては、ABS樹脂、PC(ポリカーボネート)樹脂、PMMA(ポリメチルメタクリレート)樹脂などの立体成型が可能な材料や金属材料、PET(ポリエチレンテレフタラート)、PI(ポリイミド)、PP(ポリプロピレン)などのフレキシブル性のある高分子フィルム、ウレタン繊維、金属繊維生地などの柔軟性がある材料等を挙げることができる。また、振動伝達部50を構成する材料は、シリコーンゴム、アクリルゴム、ブタジエンゴムなどを含むものであってもよい。
【0094】
振動伝達部50の厚みは、使用される人体の部位や用途にもよるが、例えば10mm以下であり、より好ましくは1mm以下である。振動伝達部50の幅(長手方向に直交する方向の長さ)も使用される人体の部位や用途にもよるが、例えば50mm以下であり、10mm以下であってもよい。
振動伝達部50の長手方向は、少なくとも、固定部32に接続された端部から、振動を伝達する対象となる箇所に到達する長さを有する。振動伝達部50の長手方向の長さは、用途や使用される人体の部位によって大きく異なる。例えば、指に装着される場合は、10mm以上80mm以下とすることができる。手首に装着される場合は、80mm以上300mm以下とすることができる。その他にも、使用される人体の部位に応じた長さとすることができる。
【0095】
(触覚提示装具の製造方法)
触覚提示装具1を製造する方法としては、例えば、上述した配線基板10の製造方法によって配線基板10を製造し、別途製造した振動伝達部50の一の端部を、配線基板10の固定部32に接着剤を用いて接着する方法が挙げられる。固定部32と振動伝達部50とが共に金属から構成される場合は、圧着により両者を接続してもよい。
【0096】
振動伝達部50の製造方法としては、振動伝達部50の材料が立体成型可能な材料の場合は、金型を用いた成型を挙げることができる。また、振動伝達部50の材料が、金属材料の場合は、平板状の状態でエッチングやレーザー加工、若しくは打ち抜き加工等により外形加工し、その後所望の断面形態(U字状)となるように変形させてもよい。
【0097】
振動伝達部50の材料が柔軟性を有する場合、例えば、振動伝達部50の材料がフレキシブル性のある高分子フィルムなどの場合は、シート状の状態で打ち抜き加工等により振動伝達部50の外形加工を施し、その一の端部を配線基板10の固定部32に接着剤を用いて接着し、利用者に装着された際に所望の断面形態(U字状)となるようにしてもよい。
利用者に装着された際に所望の断面形態(U字状)となるようにするには、例えば、触覚提示装具1と人体との間に他の物質(布、樹脂等)を介する形態を適用することができる
【0098】
触覚提示装具1と人体との間に他の物質(布、樹脂等)を介する形態の場合は、その介在する物質に配線基板10と振動伝達部50とを配置して、触覚提示装具1を製造してもよい。例えば、振動伝達部50が柔軟性を有する場合、図6に示すように、手袋生地5の所定の位置に配線基板10と振動伝達部50とを配置して、触覚提示装具1を製造してもよい。より具体的には、利用者が手袋生地5から構成される手袋を装着した際に、指2の爪3の位置となる手袋生地5の位置の外側に配線基板10を配置し、指2の爪3の側から指2の側部に沿って指2の腹の側に到達する位置となる手袋生地5の位置の外側に振動伝達部50を配置して、触覚提示装具1を製造してもよい。
【0099】
なお、振動伝達部50には、通気性を確保するための孔が設けられていてもよい。以降の変形例、実施形態における振動伝達部においても同様である。
【0100】
上述した実施の形態に対しては、様々な変更を加えることが可能である。以下、必要に応じて図面を参照しながら、変形例について説明する。以下の説明および以下の説明で用いる図面では、上述した実施の形態と同様に構成され得る部分について、上述の実施の形態における対応する部分に対して用いた符号と同一の符号を用いることとし、重複する説明を省略する。また、上述した実施の形態において得られる作用効果が変形例においても得られることが明らかである場合、その説明を省略することもある。
なお、本開示の触覚提示装具においては、以下の各変形例が有する構成を単独で用いてもよく、2種以上の変形例の各構成を組み合わせて用いてもよい。
【0101】
(第1の変形例)
図7は本開示の第1の実施形態の第1の変形例に係る触覚提示装具の一例を示す断面図である。本開示の触覚提示装具においては、振動伝達部が2つの端部を有するリング状の形態を有し、2つの端部が配線基板の固定部に接続されていてもよい。以下、図7を用いて、詳しく説明する。
【0102】
図7に示す触覚提示装具1Aも、図1から図3、および図6に示した触覚提示装具1と同様に、配線基板10を備えている。配線基板10は、基材20、配線41を備える。基材20は、伸縮部31と、固定部32と、を備えている。また、図7に示す例において、電子部品42が、基材20の固定部32の上に配置され、配線41に接続されている。配線基板10に搭載される電子部品には、ハプティクス素子としての振動子を含む。配線基板10は、ハプティクス素子としての振動子に加えて、他の電子部品を有していてもよい。配線基板10の固定部32は、利用者の指2の爪3の側に配置されている。
【0103】
また、図7に示す触覚提示装具1Aにおいても、基材20は固定部32の下側(基材20の第2面22の側)にも伸縮部31を備えている。言い換えれば、触覚提示装具1Aは、基材20の第1面21の法線方向に沿って見た場合に、固定部32と重なる基材20の第2面22の側にも伸縮部31を備えている。このような構成を有するため、触覚提示装具1Aにおいても、電子部品42から固定部32に伝わる振動は、利用者の指に直接伝達されず、固定部32の下側に位置する伸縮部31によって減衰することになる。それゆえ、目的としない箇所(例えば、利用者の指の爪)に電子部品42からの振動が伝わることを抑制できる。
【0104】
ここで、図6に示した触覚提示装具1が有する振動伝達部50は、断面形態としてU字状の形態を有していた。より詳しくは、図6に示すように、振動伝達部50はその一の端部が配線基板10の固定部32に接続されており、利用者の指2の爪3の側から利用者の指2の側部に沿ったU字状の形態を有しており、振動伝達部50のもう一方の端部は利用者の指2の腹4の側に位置していた。
【0105】
一方、図7に示す触覚提示装具1Aが有する振動伝達部50Aは、断面形態としてリング状の形態を有している。より詳しくは、図7に示すように、振動伝達部50Aは、2つの端部を有するリング状の形態を有し、2つの端部が配線基板10の固定部32に接続されている。図7に示すように、振動伝達部50Aは、利用者の指2の爪3の側から指2の一方の側部(例えば左側側部)に沿って指2の腹4の側に到達し、さらに利用者の指2の他方の側部(例えば右側側部)に沿って指2の爪3の側に到達する長さを有している。すなわち、触覚提示装具1Aにおいては、振動伝達部50Aが、指輪のように利用者の指2(指2の爪や腹を含む部位)に装着される。
【0106】
図7に示す触覚提示装具1Aにおいても、図6に示した触覚提示装具1と同様に、配線基板10の基材20の大部分が伸縮部31から構成されていることから、人体への装着に適した伸縮性を有するものとなる。
また、触覚提示装具1Aにおいても、配線基板10の固定部32が利用者の指2の爪3の側に配置されており、この固定部32の上に、ハプティクス素子としての振動子を含む電子部品42が配置される。このため、ハプティクス素子を装着した状態においても、指2の腹の側に、電子部品42や配線41などの複雑な構造が配置されることはなく、利用者において指2の腹を使う作業が困難になることを解消できる。
そして、触覚提示装具1Aにおいても、振動伝達部50Aは、固定部32に接続された端部から、振動を伝達する対象となる箇所(利用者の指2の腹)に到達する長さを有しており、利用者の指2の爪3の側から指2の腹4の側に振動を伝達できる。このため、電子部品42として振動子を固定部32に搭載した場合、振動子の振動は、まず固定部32に伝わり、続いて固定部32から振動伝達部50Aを伝わって、利用者の指2の腹4の側に伝達されることになり、利用者の指2の腹4の側に、振動による疑似触覚を提示することができる。
【0107】
すなわち、触覚提示装具1Aにおいても、図6に示した触覚提示装具1と同様に、利用者がハプティクス素子を装着した状態であっても、指の腹を使う作業が困難になることを解消でき、振動による皮膚感覚を利用者に効率的にフィードバックすることが可能となる。
【0108】
また、触覚提示装具1Aにおいては、振動伝達部50Aが、指輪のように利用者の指2(指2の爪や腹を含む部位)に装着されることから、振動を伝達する対象となる箇所(利用者の指2の腹4の特定領域)に、より的確に振動伝達部50Aを配置させることができ、装着後の作業等による位置ズレも、より抑制することができる。
【0109】
触覚提示装具1Aにおいても、図6に示した触覚提示装具1と同様に、振動伝達部50Aは伸縮部31よりも大きい音響インピーダンスを有することが好ましい。目的としない箇所(例えば、利用者の指2の爪3)に電子部品42からの振動が伝わることを抑制しつつ、目的とする箇所(利用者の指2の腹4)に電子部品42からの振動を、効率的に伝えることができるからである。
触覚提示装具1Aが有する振動伝達部50Aの音響インピーダンスは、上述した触覚提示装具1が有する振動伝達部50の音響インピーダンスと同様の値とすることができる。
また、振動伝達部50Aを構成する材料も、上述した触覚提示装具1が有する振動伝達部50を構成する材料と同様のものとすることができる。
【0110】
振動伝達部50Aの厚みや幅(長手方向に直交する方向の長さ)についても、上述した触覚提示装具1が有する振動伝達部50と同様とすることができる。振動伝達部50Aの長手方向の長さは、上述した触覚提示装具1が有する振動伝達部50の長手方向の長さの概ね2倍程度の大きさとすることができる。
【0111】
振動伝達部50Aの製造方法も、上述した触覚提示装具1が有する振動伝達部50と同様とすることができる。また、図7に示す触覚提示装具1Aの製造方法も、図6に示した触覚提示装具1と同様とすることができる。例えば、上述した配線基板10の製造方法によって配線基板10を製造し、別途製造した振動伝達部50Aの2つの端部を、配線基板10の固定部32に接着剤を用いて接着する方法が挙げられる。固定部32と振動伝達部50とが共に金属から構成される場合は、圧着により両者を接続してもよい。
【0112】
(第2の変形例)
図8は本開示の第1の実施形態の第2の変形例に係る触覚提示装具の一例を示す平面図である。本開示の触覚提示装具においては、振動伝達部の有する音響インピーダンスが、部分的に異なっていてもよい。以下、図8を用いて、詳しく説明する。
【0113】
図8に示す触覚提示装具1Bも、図1から図3、および図6に示した触覚提示装具1と同様に、配線基板10を備えている。配線基板10は、基材20、配線41を備える。基材20は、伸縮部31と、固定部32と、を備えている。また、電子部品42が、基材20の固定部32の上に配置され、配線41に接続されている。配線基板10に搭載される電子部品には、ハプティクス素子としての振動子を含む。配線基板10は、ハプティクス素子としての振動子に加えて、他の電子部品を有していてもよい。配線基板10の固定部32は、利用者の指2の爪3の側に配置されている。
【0114】
また、図示はしないが、触覚提示装具1Bにおいても、基材20は固定部32の下側(基材20の第2面22の側)にも伸縮部31を備えていることが好ましい。言い換えれば、触覚提示装具1Bは、基材20の第1面21の法線方向に沿って見た場合に、固定部32と重なる基材20の第2面22の側にも伸縮部31を備えていることが好ましい。このような構成を有することで、触覚提示装具1Bにおいても、電子部品42から固定部32に伝わる振動は、利用者の指2に直接伝達されず、固定部32の下側に位置する伸縮部31によって減衰することになる。それゆえ、目的としない箇所(例えば、利用者の指2の爪3)に電子部品42からの振動が伝わることを抑制できる。
【0115】
ここで、図6に示した触覚提示装具1が有する振動伝達部50においては、振動伝達部50全体が同じ材料で構成されており、振動伝達部50全体が同じ音響インピーダンス(第3の音響インピーダンス)を有するものであったが、本開示の触覚提示装具は、これに限定されない。例えば、本開示の触覚提示装具が有する振動伝達部は、部分的に音響インピーダンスが異なるものであってもよい。
【0116】
例えば、図8に示す触覚提示装具1Bが有する振動伝達部50Bは、平面視において、第1領域部51と、第1領域部51の両脇に第2領域部52とを、有している。そして、第1領域部51を構成する材料と、第2領域部52を構成する材料とを、別のものとすることで、各領域部の音響インピーダンスを異なる大きさとすることができる。例えば、第1領域部51の音響インピーダンスを、上述した第3の音響インピーダンスの大きさとし、第2領域部52の音響インピーダンスを、第3の音響インピーダンスよりも小さく、第1の音響インピーダンス(基材20の伸縮部31の音響インピーダンス)より大きい、第4の音響インピーダンスとすることができる。すなわち、図8に示す触覚提示装具1Bが有する振動伝達部50Bは、第3の音響インピーダンスよりも小さく、第1の音響インピーダンスより大きい、第4の音響インピーダンスを部分的に有する構成とすることができる。
【0117】
なお、振動伝達部50Bの第2領域部52が有する音響インピーダンス(第4の音響インピーダンス)を、第1の音響インピーダンス(基材20の伸縮部31の音響インピーダンス)より大きいものとする理由は、例えば、利用者の指2の爪3には電子部品42からの振動が伝わることを抑制しつつ、利用者の指2の腹には電子部品42からの振動が伝わるようにするためである。
【0118】
このような構成を有するため、図8に示す触覚提示装具1Bにおいては、振動を伝達する対象となる箇所(例えば、利用者の指2の腹)において、振動伝達部50Bの両脇側(第2領域部52)から中央側(第1領域部51)に向かって音響インピーダンスが大きくなるため、利用者により自然なフィードバックを与えることができる。
すなわち、図8に示す触覚提示装具1Bは、図6に示した触覚提示装具1が有する効果に加えて、さらに利用者により自然なフィードバックを与えることができる。
【0119】
振動伝達部50Bを構成する材料も、上述した触覚提示装具1が有する振動伝達部50を構成する材料と同様のものとすることができる。ただし、第1領域部51を構成する材料と、第2領域部52を構成する材料とを、別のものとする。第1領域部51を構成する材料には、第2領域部52を構成する材料よりも、音響インピーダンスが大きいものを用い、逆に、第2領域部52を構成する材料には、第1領域部51を構成する材料よりも、音響インピーダンスが小さいものを用いる。
また、振動伝達部50Bの第1領域部51と第2領域部52とを同じ材料で作製し、第1領域部51のみに音響インピーダンスが大きい材料を含有させてもよい。例えば、振動伝達部50Bの第1領域部51と第2領域部52とを、シリコーンゴム、アクリルゴム、ブタジエンゴムなどを含む材料で作製し、第1領域部51のみに金属を含有させることで、振動伝達部50Bを作製してもよい。
【0120】
振動伝達部50Bの厚みや幅(長手方向に直交する方向の長さ)、長手方向の長さについても、上述した触覚提示装具1が有する振動伝達部50と同様とすることができる。
なお、振動伝達部50Bの断面形態は、図6に示した触覚提示装具1が有する振動伝達部50の断面形態(U字状)の他に、図7に示した触覚提示装具1Aが有する振動伝達部50Aの断面形態(リング状)であってもよい。この場合、振動伝達部50Bの長手方向の長さは、上述した触覚提示装具1Aが有する振動伝達部50Aの長手方向の長さと同様とすることができる。
【0121】
(第3の変形例)
図9は本開示の第1の実施形態の第3の変形例に係る触覚提示装具の一例を示す断面図である。本開示の触覚提示装具においては、振動伝達部が、振動を伝達する対象となる箇所に位置する突起部を有していてもよい。以下、図9を用いて、詳しく説明する。
【0122】
図9に示す触覚提示装具1Cも、図1から図3、および図6に示した触覚提示装具1と同様に、配線基板10を備えている。配線基板10は、基材20、配線41を備える。基材20は、伸縮部31と、固定部32と、を備えている。また、電子部品42が、基材20の固定部32の上に配置され、配線41に接続されている。配線基板10に搭載される電子部品には、ハプティクス素子としての振動子を含む。配線基板10は、ハプティクス素子としての振動子に加えて、他の電子部品を有していてもよい。配線基板10の固定部32は、利用者の指2の爪3の側に配置されている。
【0123】
また、触覚提示装具1Cにおいても、基材20は固定部32の下側(基材20の第2面22の側)にも伸縮部31を備えている。言い換えれば、触覚提示装具1Cは、基材20の第1面21の法線方向に沿って見た場合に、固定部32と重なる基材20の第2面22の側にも伸縮部31を備えている。このような構成を有することで、触覚提示装具1Cにおいても、電子部品42から固定部32に伝わる振動は、利用者の指2に直接伝達されず、固定部32の下側に位置する伸縮部31によって減衰することになる。それゆえ、目的としない箇所(例えば、利用者の指2の爪3)に電子部品42からの振動が伝わることを抑制できる。
【0124】
また、触覚提示装具1Cにおいても、振動伝達部50Cは、その一の端部が配線基板10の固定部32に接続されている。そして、振動伝達部50Cは、利用者の指2の爪3の側から利用者の指2の側部に沿って、利用者の指2の腹4の側に到達する長さを有している。ここで、触覚提示装具1Cにおいては、振動伝達部50Cが、振動を伝達する対象となる箇所に位置する突起部60を有している。より詳しくは、図9に示すように、振動伝達部50Cは、振動を伝達する対象となる箇所である利用者の指2の腹4に位置し、利用者の指2の腹4に向かって突出する突起部60を有している。
【0125】
このような形態を有するため、触覚提示装具1Cにおいては、頂部の面積が小さい突起部60によって振動を伝達する対象となる箇所である利用者の指2の腹4に振動を伝搬することになり、このような突起部の振動は皮膚において、より敏感に感じ取られることになる。
さらに、突起部60は、利用者の指2の腹4に対して、高さ方向(突出する方向)の振動のみならず、面方向に揺れる振動も伝えることができる。それゆえ、触覚提示装具1Cにおいては、振動による皮膚感覚を、さらに効果的に、利用者にフィードバックすることができる。
【0126】
振動伝達部50Cの厚みや幅(長手方向に直交する方向の長さ)、長手方向の長さについても、上述した触覚提示装具1が有する振動伝達部50と同様とすることができる。突起部60の高さ(突起部60の付け根部分から頂部までの長さ)は、使用される人体の部位や用途にもよるが、例えば10mm以下であり、好ましくは1mm以下である。突起部60の幅(突起部60の付け根部分の面方向のの長さ)も使用される人体の部位や用途にもよるが、例えば10mm以下であり、1mm以下であってもよい。
【0127】
なお、振動伝達部50Cの断面形態は、図9に示す断面形態(U字状)の他に、図7に示した触覚提示装具1Aが有する振動伝達部50Aの断面形態(リング状)であってもよい。この場合、振動伝達部50Cの長手方向の長さは、上述した触覚提示装具1Aが有する振動伝達部50Aの長手方向の長さと同様とすることができる。
【0128】
振動伝達部50Cの製造方法としては、上述した振動伝達部50の製造方法と同様の方法を適用できる。例えば、振動伝達部50Cの材料が立体成型可能な材料の場合は、金型を用いた成型を挙げることができる。振動伝達部50Cの材料が高分子フィルムなどの場合は、例えば、突起部60となる部材を、接着剤を用いて振動伝達部50Cの所定の位置に接着する方法が挙げられる。また、突起部60となる液状の材料(若しくは流動性を有する材料)を用いて、シート状の状態の振動伝達部50Cにスクリーン印刷し、その後硬化させて突起部60を形成してもよい。その後、打ち抜き加工等により振動伝達部50Cの外形加工を施す。
【0129】
(第4の変形例)
図10は本開示の第1の実施形態の第4の変形例に係る触覚提示装具の一例を示す断面図である。本開示の触覚提示装具においては、振動伝達部が有する突起部が、位置に応じて異なる音響インピーダンスを有していてもよい。以下、図10を用いて、詳しく説明する。
【0130】
図10に示す触覚提示装具1Dも、図1から図3、および図6に示した触覚提示装具1と同様に、配線基板10を備えている。配線基板10は、基材20、配線41を備える。基材20は、伸縮部31と、固定部32と、を備えている。また、電子部品42が、基材20の固定部32の上に配置され、配線41に接続されている。配線基板10に搭載される電子部品には、ハプティクス素子としての振動子を含む。配線基板10は、ハプティクス素子としての振動子に加えて、他の電子部品を有していてもよい。配線基板10の固定部32は、利用者の指2の爪3の側に配置されている。
【0131】
また、触覚提示装具1Dにおいても、基材20は固定部32の下側(基材20の第2面22の側)にも伸縮部31を備えている。言い換えれば、触覚提示装具1Dは、基材20の第1面21の法線方向に沿って見た場合に、固定部32と重なる基材20の第2面22の側にも伸縮部31を備えている。このような構成を有することで、触覚提示装具1Dにおいても、電子部品42から固定部32に伝わる振動は、利用者の指2に直接伝達されず、固定部32の下側に位置する伸縮部31によって減衰することになる。それゆえ、目的としない箇所(例えば、利用者の指2の爪3)に電子部品42からの振動が伝わることを抑制できる。
【0132】
また、触覚提示装具1Dにおいても、振動伝達部50Dは、その一の端部が配線基板10の固定部32に接続されている。そして、振動伝達部50Dは、利用者の指2の爪3の側から利用者の指2の側部に沿って、利用者の指2の腹4の側に到達する長さを有している。
さらに、触覚提示装具1Dにおいては、振動伝達部50Dが、振動を伝達する対象となる箇所に位置し、音響インピーダンスが異なる第1突起部と第2突起部とを有している。より詳しくは、図10に示すように、振動伝達部50Dは、振動を伝達する対象となる箇所の中央側の位置に配置される第1突起部61と、振動を伝達する対象となる箇所の外縁側の位置に配置される第2突起部62と、を有している。そして、第2突起部62が有する音響インピーダンスが、第1突起部61が有する音響インピーダンスよりも小さい。
【0133】
このような形態を有するため、触覚提示装具1Dにおいては、図9に示した触覚提示装具1Cと同様に、頂部の面積が小さい第1突起部61および第2突起部62によって、振動を伝達する対象となる箇所である利用者の指2の腹4に振動を伝搬することになり、このような突起部の振動は皮膚において、より敏感に感じ取られることになる。
また、第1突起部61および第2突起部62は、利用者の指2の腹4に対して、高さ方向(突出する方向)の振動のみならず、面方向に揺れる振動も伝えることができる。それゆえ、触覚提示装具1Dにおいても、 振動による皮膚感覚を、さらに効果的に、利用者にフィードバックすることができる。
さらに、触覚提示装具1Dでは、振動を伝達する対象となる箇所(図10において利用者の指2の腹4)の外縁側の位置に配置される第2突起部62の音響インピーダンスが、振動を伝達する対象となる箇所(図10において利用者の指2の腹4)の中央側の位置に配置される第1突起部61の音響インピーダンスが、よりも小さい。それゆえ、触覚提示装具1Dでは、振動を伝達する対象となる箇所(図10において利用者の指2の腹4)の外縁側から中央側に向かって、音響インピーダンスが大きくなる。これにより、触覚提示装具1Dを装着する利用者に、より自然なフィードバックを与えることができる。
【0134】
振動伝達部50Dの厚みや幅(長手方向に直交する方向の長さ)、長手方向の長さについても、上述した触覚提示装具1が有する振動伝達部50と同様とすることができる。第1突起部61および第2突起部62の高さや幅については、上述した触覚提示装具1Cが有する振動伝達部50Cの突起部60と同様とすることができる。
【0135】
なお、振動伝達部50Dの断面形態も、図10に示す断面形態(U字状)の他に、図7に示した触覚提示装具1Aが有する振動伝達部50Aの断面形態(リング状)であってもよい。この場合、振動伝達部50Dの長手方向の長さは、上述した触覚提示装具1Aが有する振動伝達部50Aの長手方向の長さと同様とすることができる。
【0136】
振動伝達部50Dの製造方法としては、上述した振動伝達部50Cの製造方法と同様の方法を適用できる。例えば、第1突起部61および第2突起部62となる部材を、接着剤を用いて振動伝達部50Dの所定の位置に接着する方法が挙げられる。
【0137】
(第5の変形例)
図11は本開示の第1の実施形態の第5の変形例に係る触覚提示装具の一例を示す断面図である。本開示の触覚提示装具においては、振動を伝達する対象となる箇所と異なる位置に、振動を吸収する振動吸収部を有していてもよい。以下、図11を用いて、詳しく説明する。
【0138】
図11に示す触覚提示装具1Eも、図1から図3、および図6に示した触覚提示装具1と同様に、配線基板10を備えている。配線基板10は、基材20、配線41を備える。基材20は、伸縮部31と、固定部32と、を備えている。また、電子部品42が、基材20の固定部32の上に配置され、配線41に接続されている。配線基板10に搭載される電子部品には、ハプティクス素子としての振動子を含む。配線基板10は、ハプティクス素子としての振動子に加えて、他の電子部品を有していてもよい。配線基板10の固定部32は、利用者の指2の爪3の側に配置されている。
【0139】
また、触覚提示装具1Eにおいても、基材20は固定部32の下側(基材20の第2面22の側)にも伸縮部31を備えている。言い換えれば、触覚提示装具1Eは、基材20の第1面21の法線方向に沿って見た場合に、固定部32と重なる基材20の第2面22の側にも伸縮部31を備えている。このような構成を有することで、触覚提示装具1Eにおいても、電子部品42から固定部32に伝わる振動は、利用者の指2に直接伝達されず、固定部32の下側に位置する伸縮部31によって減衰することになる。それゆえ、目的としない箇所(例えば、利用者の指2の爪3)に電子部品42からの振動が伝わることを抑制できる。
【0140】
また、触覚提示装具1Eにおいても、振動伝達部50Eは、その一の端部が配線基板10の固定部32に接続されている。そして、振動伝達部50Eは、利用者の指2の爪3の側から利用者の指2の側部に沿って、利用者の指2の腹4の側に到達する長さを有している。
ここで、触覚提示装具1Eにおいては、振動伝達部50Eが、振動を伝達する対象となる箇所(図11において利用者の指2の腹4)と異なる位置に、振動を吸収する振動吸収部70を有している。より詳しくは、図11に示すように、振動伝達部50Eは、振動を吸収する振動吸収部70を、利用者の指2の爪3と指2の腹4との間の指2の側部に対向する位置に有している。
【0141】
このような形態を有するため、触覚提示装具1Eにおいては、図6に示した触覚提示装具1が有する効果に加えて、振動を伝達する対象となる箇所(図11において利用者の指2の腹4)と異なる箇所(図11において利用者の指2の側部)に、電子部品42からの振動が伝わることを抑制できる。それゆえ、目的とする箇所(利用者の指の腹)に、電子部品42からの振動を、効率的に伝えることができる。これにより、触覚提示装具1Eを装着する利用者に、より自然なフィードバックを与えることができる。
【0142】
振動吸収部70を構成する材料は、電子部品42からの振動を吸収する作用を奏するものであれば用いることができるが、例えば、スポンジ、発泡体など、内部に空隙を有する材料を挙げることができる。また、伸縮部31を構成する材料と、同様であってもよい。
振動吸収部70の音響インピーダンスは、振動伝達部50Eが有する音響インピーダンス(第3の音響インピーダンス)よりも小さく、例えば2.0×106kg/m2・s未満であり、好ましくは1.5×106kg/m2・s以下であり、より好ましくは1.0×106kg/m2・s以下である。振動吸収部70の音響インピーダンスの値は、小さいほどよく、下限値については特に制限されないが、空気の音響インピーダンスが410kg/m2・sであることから、例えば、400kg/m2・sとすることができる。
【0143】
振動伝達部50Eの厚みや幅(長手方向に直交する方向の長さ)、長手方向の長さについても、上述した触覚提示装具1が有する振動伝達部50と同様とすることができる。振動吸収部70の厚みについては、使用される人体の部位や用途にもよるが、例えば10mm以下であり、好ましくは1mm以下である。振動吸収部70の幅や長手方向の長さについては、振動伝達部50Eと概ね同じ大きさとすることができるが、使用される人体の部位や用途によって、適宜決められる。
【0144】
なお、振動伝達部50Eの断面形態も、図11に示す断面形態(U字状)の他に、図7に示した触覚提示装具1Aが有する振動伝達部50Aの断面形態(リング状)であってもよい。この場合、振動伝達部50Eの長手方向の長さは、上述した触覚提示装具1Aが有する振動伝達部50Aの長手方向の長さと同様とすることができる。また、この場合、振動伝達部50Eは、振動吸収部70を利用者の指の両側部に対向する位置に、それぞれ有していることが好ましい。
【0145】
振動伝達部50Eの製造方法としては、上述した振動伝達部50の製造方法と同様の方法を適用できる。例えば、振動吸収部70となる部材を、接着剤を用いて振動伝達部50Eの所定の位置に接着する方法が挙げられる。
【0146】
(第6の変形例)
図12は本開示の第1の実施形態の第6の変形例に係る触覚提示装具の一例を示す断面図である。本開示の触覚提示装具においては、流体制御によって圧覚を提示する構造を、さらに備えていてもよい。
振動子で表現できる触覚と、流体制御で表現できる触覚は種類が異なり、例えば、振動子では数百Hzの振動に係る触覚に適しているが、低周波や静的な圧覚(0Hz)に係る触覚には適していない。一方、流体制御によれば、静的な圧覚が表現できる。それゆえ、本開示の触覚提示装具が、流体制御によって圧覚を提示する構造を、さらに有していれば、振動伝達に係る触覚に加えて、圧覚に係る触覚も利用者に体感させることができる。以下、図12を用いて、詳しく説明する。
【0147】
図12に示す触覚提示装具1Fも、図1から図3、および図6に示した触覚提示装具1と同様に、配線基板10を備えている。配線基板10は、基材20、配線41を備える。基材20は、伸縮部31と、固定部32と、を備えている。また、電子部品42が、基材20の固定部32の上に配置され、配線41に接続されている。配線基板10に搭載される電子部品には、ハプティクス素子としての振動子を含む。配線基板10は、ハプティクス素子としての振動子に加えて、他の電子部品を有していてもよい。配線基板10の固定部32は、利用者の指2の爪3の側に配置されている。
【0148】
また、触覚提示装具1Fにおいても、基材20は固定部32の下側(基材20の第2面22の側)にも伸縮部31を備えている。言い換えれば、触覚提示装具1Fは、基材20の第1面21の法線方向に沿って見た場合に、固定部32と重なる基材20の第2面22の側にも伸縮部31を備えている。このような構成を有することで、触覚提示装具1Fにおいても、電子部品42から固定部32に伝わる振動は、利用者の指2に直接伝達されず、固定部32の下側に位置する伸縮部31によって減衰することになる。それゆえ、目的としない箇所(例えば、利用者の指2の爪3)に電子部品42からの振動が伝わることを抑制できる。
【0149】
また、触覚提示装具1Fにおいても、振動伝達部50Fは、その一の端部が配線基板10の固定部32に接続されている。そして、振動伝達部50Fは、利用者の指2の爪3の側から利用者の指2の側部に沿って、利用者の指2の腹4の側に到達する長さを有している。それゆえ、利用者の指2の腹4の側に、振動による疑似触覚を提示することができる。
【0150】
ここで、触覚提示装具1Fにおいては、振動伝達部50Fが、圧覚を提示する圧覚提示部82と、圧覚提示部82に繋がる流路81と、を有している。圧覚提示部82は、流路81内の流体の圧力変化に応じて膨張若しくは収縮する。圧覚提示部82は、利用者の指2の腹4に対向する位置にあり、流路81のもう一方の端部は、利用者の指2の爪3の側で電磁バルブ83に繋がっている。図示はしないが、電磁バルブ83は、別の流路を介して、コンプレッサーに繋がっている。電磁バルブ83からコンプレッサーに繋がる流路は、例えば、利用者の指2の爪3の側を指2の表面に沿って配置されている。
【0151】
このような形態を有するため、触覚提示装具1Fにおいては、図6に示した触覚提示装具1が有する効果に加えて、流体制御による圧覚を、利用者の指2の腹4に与えることができるという効果を奏する。具体的には、触覚提示装具1Fにおいては、電磁バルブ83の開閉制御によって、流路81内の流体にかかる圧力を変化させることができ、その圧力変化に応じて圧覚提示部82が膨張若しくは収縮することにより、利用者の指2の腹4に圧覚を与えることができる。すなわち、触覚提示装具1Fにおいては、振動伝達に係る触覚に加えて、圧覚に係る触覚も利用者に体感させることができる。
なお、振動伝達部50Fは、それぞれ独立した複数の流路と、複数の各流路に繋がる圧覚提示部を有していてもよい。複数の流路と圧覚提示部を有することで、より複雑な圧覚を利用者に体感させることができる。
【0152】
(第7の変形例)
図13は本開示の第1の実施形態の第7の変形例に係る触覚提示装具の一例を示す斜視図である。本開示の触覚提示装具においては、配線基板が固定部を複数有し、複数の固定部のそれぞれに振動伝達部が接続されていてもよい。
【0153】
例えば、図13に示す触覚提示装具1Gにおいては、配線基板10Gが3つの固定部(固定部32a、固定部32b、固定部32c)を有している。固定部32a、固定部32b、固定部32cは、いずれも、図6に示した触覚提示装具1が有する固定部32と同じであってよい。
そして、固定部32aに振動伝達部50Gaが接続されており、固定部32bに振動伝達部50Gbが接続されており、固定部32cに振動伝達部50Gcが接続されている。振動伝達部50Ga、振動伝達部50Gb、振動伝達部50Gcは、いずれも、図6に示した触覚提示装具1が有する振動伝達部50と同じであってよい。
また、固定部32aには電子部品42aが配置されており、固定部32bには電子部品42bが配置されており、固定部32cには電子部品42cが配置されている。電子部品42a、電子部品42b、電子部品42cは、いずれも、図6に示した触覚提示装具1が有する電子部品42と同じであってよい。
【0154】
このような形態を有するため、触覚提示装具1Gにおいては、3つの固定部(固定部32a、固定部32b、固定部32c)に、それぞれ配置される3つの電子部品(電子部品42a、電子部品42b、電子部品42c)の振動をコントロールすることで、利用者の指2に与える触覚を、より複雑なものにすることができる。例えば、利用者の指2に、撫でられる感覚や方向の提示を与えることができる。
【0155】
なお、上記では、固定部32a、固定部32b、固定部32cは、いずれも、図6に示した触覚提示装具1が有する固定部32と同じであってよいとしたが、本開示の触覚提示装具は、これに限定されない。配線基板が有する複数の固定部は、それぞれ異なる材料から構成されていてもよく、また異なる大きさであってもよい。
同様に、振動伝達部50Ga、振動伝達部50Gb、振動伝達部50Gcも、それぞれ異なる構成を有していてもよく、また異なる大きさであってもよい。
同様に、電子部品42a、電子部品42b、電子部品42cも、それぞれ異なるものであってもよい。
【0156】
(第8の変形例)
図14は本開示の第1の実施形態の第8の変形例に係る触覚提示装具の一例を示す斜視図である。本開示の触覚提示装具においては、アクチュエータによって駆動される骨格構造(外骨格)を、さらに備えていてもよい。本開示の触覚提示装具が外骨格をさらに有していれば、振動伝達に係る触覚に加えて、この外骨格に係る力覚も利用者に体感させることができる。
【0157】
例えば、図14に示す触覚提示装具1Hにおいては、配線基板10Hは固定部32に加えて、指2の付け根に近い側(手首に近い側)に固定部32Hを有している。図14に示すように、固定部32には、振動伝達部50が接続されている。また、固定部32には、電子部品42が配置されている。さらに、図14に示す触覚提示装具1Hにおいては、固定部32に外骨格ワイヤー93が接続される外骨格ワイヤー接続部91が備えられている。言い換えれば、触覚提示装具1Hにおいては、基材20の第1面21の法線方向に沿って見た場合に、固定部32と重なる基材20の第1面21の側に、外骨格ワイヤー93が接続される外骨格ワイヤー接続部91を備えている。
また、固定部32Hには、外骨格ワイヤー93を通す外骨格ワイヤーガイド92が備えられている。図示はしないが、外骨格ワイヤー93は、指2の付け根の方向の先に備えられたアクチュエータによって駆動される。
【0158】
このような形態を有するため、触覚提示装具1Hにおいては、図1図2および図6に示した触覚提示装具1が有する振動伝達に係る触覚に加えて、この外骨格ワイヤー93の駆動に係る力覚も利用者に体感させることができる。
また、触覚提示装具1Hにおいては、固定部32に外骨格ワイヤー接続部91が備えられており、固定部32は伸縮部31に比べて変形しにくい。それゆえ、伸縮部31に備えられる場合に比べて、外骨格ワイヤー93による力覚を、利用者に効率的に伝えられる。
さらに、電子部品42が配置される固定部32に、外骨格ワイヤー接続部91も配置することで、別途、外骨格ワイヤー接続部91を備えるための固定部を設ける必要がなく、振動を提示する構造と力覚を提示する構造とを、より小さいスペースに配置することができる。
また、触覚提示装具1Hにおいては、固定部32Hに外骨格ワイヤーガイド92が備えられており、固定部32Hも伸縮部31に比べて変形しにくい。それゆえ、伸縮部31に備えられる場合に比べて、外骨格ワイヤー93を通すガイドとして、より安定した構造とすることができる。
【0159】
なお、図14に示す触覚提示装具1Hにおいては、外骨格ワイヤーガイド92が備えられる固定部32Hには、電子部品が配置されておらず、振動伝達部も接続されていないが、本開示の触覚提示装具は、これに限定されない。本開示の触覚提示装具においては、外骨格ワイヤーガイド92が備えられる固定部に、電子部品が配置されていてもよく、振動伝達部が接続されていてもよい。
また、図14に示す触覚提示装具1Hにおいては、主に外骨格ワイヤー93の駆動が阻害されることを回避する目的で、外骨格ワイヤー接続部91、外骨格ワイヤーガイド92、および外骨格ワイヤー93を覆うように、カバー94が設けられているが、本開示の触覚提示装具においては、カバー94が設けられていなくてもよい。
【0160】
<第2の実施形態>
(触覚提示装具)
次に、本開示の第2の実施形態に係る触覚提示装具について説明する。
この第2の実施形態に係る触覚提示装具においては、配線基板の構成が、上述した本開示の第1の実施形態に係る触覚提示装具と相違する。振動伝達部については、上述した本開示の第1の実施形態に係る触覚提示装具と同様であってよい。
それゆえ、ここでは、上述した本開示の第1の実施形態に係る触覚提示装具と相違する部分について詳しく説明し、重複する説明については適宜省略する。
【0161】
図15は、本開示の第2の実施形態に係る触覚提示装具の一例を示す平面図である。より詳しくは、図15は、触覚提示装具101を配線基板110の支持基板120の第1面121側から見た触覚提示装具101の平面形態の要部を示す平面図である。なお、図15において、固定部32は点線で表されている。
例えば、図15に示す触覚提示装具101を構成する配線基板110は支持基板120を有し、振動伝達部50は、その端部が支持基板120に接続されている。なお、振動伝達部50は、電子部品42に接続されていてもよい。振動伝達部50が電子部品42に接続されていれば、電子部品42からの振動は、直接、振動伝達部50に伝わることになる。
以下、本開示の第2の実施形態に係る触覚提示装具の配線基板について、詳しく説明する。
【0162】
(配線基板)
本開示の第2の実施形態に係る触覚提示装具の配線基板について、上述した図15に加えて、図16および図17を用いて説明する。
図16および図17は、本開示の第2の実施形態に係る触覚提示装具の配線基板の一例を示す断面図であり、より詳しくは、図16および図17に示す断面図は、図15に示す触覚提示装具101を線A-Aに沿って切断した場合の図である。
ここで、図16は、主に触覚提示装具101を構成する配線基板110の断面構成と、振幅Sa、振幅Sbについて説明するための図であり、図17は、主に触覚提示装具101を構成する配線基板110の断面構成と、周期Fa、周期Fbについて説明するための図である。
なお、図16および図17においては、図15において点線で輪郭を示した利用者の指2や爪3は図示していないが、図16および図17における基材20の第2面22の側に、図15において点線で輪郭を示した利用者の指2が位置することになる。
【0163】
図16および図17に示すように、配線基板110は、基材20、接着層111、支持基板120、配線141、電子部品42を備える。例えば、配線基板110は、上述した第1の実施形態に係る配線基板10の配線41と基材20の第1面21との間に、配線141を支持する支持基板120を更に備える構成と表現することができる。ただし、配線基板110においては、図16および図17に示すように、配線141は、基材20の厚み方向の断面において、山部Ma及び谷部Vaを含む蛇腹形状部130を有している。
【0164】
配線基板110においても、上述した配線基板10と同様に、基材20の大部分が伸縮部31から構成されているため、人体への装着に適した伸縮性を有するものとなる。
さらに、配線基板110においては、配線141が蛇腹形状部130を有しているため、基材20が伸張する際、配線141は、蛇腹形状部130の起伏を低減するように変形することによって、すなわち蛇腹形状を解消することによって、基材20の伸張に追従することができる。このため、基材20の伸張に伴って配線141の全長が増加することや、配線141の断面積が減少することを抑制することができる。このことにより、配線基板110の伸張に起因して配線141の抵抗値が増加することを抑制することができる。また、配線141にクラックなどの破損が生じてしまうことを抑制することができる。
【0165】
以下、配線基板110の各構成要素について説明する。なお、上述した第1の実施形態と同様に構成され得る部分については、重複する説明を省略する。
【0166】
[支持基板]
支持基板120は、基材20の伸縮部31よりも低い伸縮性を有するよう構成された板状の部材である。支持基板120は、基材20側に位置する第2面122と、第2面122の反対側に位置する第1面121と、を含む。図16および図17に示す例において、支持基板120は、その第1面121側において電子部品42及び配線141を支持している。また、支持基板120は、その第2面122側において基材20の第1面21に接合されている。例えば、基材20と支持基板120との間に、接着剤を含む接着層111が設けられていてもよい。接着層111を構成する材料としては、例えばアクリル系接着剤、シリコーン系接着剤等を用いることができる。接着層111の厚みは、例えば5μm以上且つ200μm以下である。
【0167】
後述するように、支持基板120に接合された基材20から引張応力が取り除かれて基材20が収縮するとき、支持基板120には蛇腹形状部が形成される。支持基板120の特性や寸法は、このような蛇腹形状部が形成され易くなるよう設定されている。例えば、支持基板120は、基材20の伸縮部31の第1の弾性係数よりも大きい弾性係数を有する。以下の説明において、支持基板120の弾性係数のことを、第3の弾性係数とも称する。
【0168】
支持基板120の第3の弾性係数は、例えば100MPa以上であり、より好ましくは1GPa以上である。支持基板120の第3の弾性係数は、基材20の伸縮部31の第1の弾性係数の100倍以上であってもよく、1000倍以上であってもよい。また、支持基板120の厚みは、例えば10μm以下であり、より好ましくは5μm以下である。支持基板120の弾性係数を高くしたり、支持基板120の厚みを小さくしたりすることにより、基材20の伸縮部31の収縮に伴って支持基板120に蛇腹形状部が形成され易くなる。支持基板120を構成する材料としては、例えば、ポリエチレンナフタレート、ポリイミド、ポリカーボネート、アクリル樹脂、ポリエチレンテレフタラート等を用いることができる。
【0169】
支持基板120の第3の弾性係数は、基材20の伸縮部31の第1の弾性係数の100倍以下であってもよい。支持基板120の第3の弾性係数を算出する方法は、基材20の伸縮部31の場合と同様である。また、支持基板120の厚みは、500nm以上であってもよい。
【0170】
支持基板120の弾性係数(第3の弾性係数)を算出する方法は、上述の基材20の固定部32の弾性係数(第2の弾性係数)を算出する方法と同様であってよい。例えば、支持基板120の弾性係数を算出する方法として、支持基板120のサンプルを用いて、ASTM D882に準拠して引張試験を実施するという方法を採用することができる。
【0171】
上述したように、支持基板120は、基材20の伸縮部31よりも大きい弾性係数を有しており、通常、弾性係数の大きい物質は音響インピーダンスも大きくなる。そして、支持基板120の第3の弾性係数は、例えば、基材20の伸縮部31の第1の弾性係数の100倍以上であってもよく、1000倍以上であってもよい。すなわち、支持基板120は、伸縮部31に比べて十分に高い効率で振動を伝搬することができる。そして、図15に示す触覚提示装具101において、電子部品42は支持基板120の上(より詳しくは、図15から図17に示すように、基材20の第1面21の法線方向に沿って見た場合に、固定部32と重なる位置の支持基板120の第1面121の上)に配置される。
それゆえ、図15に示すように、振動伝達部50の端部が支持基板120に接続されていれば、電子部品42からの振動による皮膚感覚を、利用者に効率的にフィードバックすることができる。なお、振動伝達部50は、電子部品42に接続されていてもよい。振動伝達部50が電子部品42に接続されていれば、電子部品42からの振動は、直接、振動伝達部50に伝わることになる。
【0172】
[配線および蛇腹形状部]
配線基板110において、配線141は支持基板120の第1面121側に位置し、同じく支持基板120の第1面121側に位置する電子部品42に接続されている。そして、図16および図17に示す配線141は、支持基板120の第1面121の法線方向に沿って見た場合に、支持基板120の第1面121の面内方向に沿って並ぶ複数の山部Ma及び谷部Vaを含む蛇腹形状部130を有する。
蛇腹形状部130は、例えば、伸長させた状態の基材20に配線141を設けた後、基材20を弛緩させることで生じる。このような場合、図16および図17に示すように、支持基板120や基材20にも、配線141と同様の蛇腹形状部が形成され得る。
【0173】
山部Ma及び谷部Vaは、支持基板120の第1面121の法線方向に沿って見た場合に、基材20の伸縮部31と重なる領域において、支持基板120の第1面121の面内方向に沿って繰り返し現れる。
【0174】
図16において、符号Saは、配線141の蛇腹形状部130に重なる部分に現れる山部及び谷部の振幅を表す。すなわち、符号Saは、配線141の表面における蛇腹形状部130の振幅を表す。振幅Saは、例えば1μm以上であり、より好ましくは10μm以上である。振幅Saを10μm以上とすることにより、基材20の伸張に追従して配線141が変形し易くなる。また、振幅Saは、例えば500μm以下であってもよい。
【0175】
振幅Saは、例えば、配線141の長さ方向における一定の範囲にわたって、隣り合う山部Maと谷部Vaとの間の、第1面121の法線方向における距離を測定し、それらの平均を求めることにより算出される。「配線141の長さ方向における一定の範囲」は、例えば10mmである。隣り合う山部Maと谷部Vaとの間の距離を測定する測定器としては、レーザー顕微鏡などを用いた非接触式の測定器を用いてもよく、接触式の測定器を用いてもよい。また、断面写真などの画像に基づいて、隣り合う山部Maと谷部Vaとの間の距離を測定してもよい。後述する振幅Sbの算出方法も同様である。
【0176】
図17に示す配線基板110において、山部Ma及び谷部Vaが繰り返し現れる周期Faは、例えば10μm以上且つ100mm以下である。なお、図17においては、蛇腹形状部130の複数の山部及び谷部が一定の周期で並ぶ例が示されているが、これに限られることはない。図示はしないが、蛇腹形状部130の複数の山部Ma及び谷部Vaは、第1面121の面内方向に沿って不規則に並んでいてもよい。例えば、第1面121の面内方向において隣り合う2つの山部の間の間隔が一定でなくてもよい。
【0177】
周期Faは、例えば、配線141の長さ方向における一定の範囲にわたって、隣り合う山部Maと谷部Vaとの間の、第1面121の面内方向における距離を測定し、それらの平均を求めることにより算出される。「配線141の長さ方向における一定の範囲」は、例えば10mmである。隣り合う山部Maと谷部Vaとの間の距離を測定する測定器としては、レーザー顕微鏡などを用いた非接触式の測定器を用いてもよく、接触式の測定器を用いてもよい。また、断面写真などの画像に基づいて、隣り合う山部Maと谷部Vaとの間の距離を測定してもよい。後述する周期Fbの算出方法も同様である。
【0178】
図16および図17に示すように、基材20の伸縮部31の第2面22にも蛇腹形状部が形成されていてもよい。基材20の第2面22における蛇腹形状部は、複数の山部Mb及び谷部Vbを含む。
なお、上述した、配線141の支持基板120の第1面121の面内方向に沿って並ぶ山部Ma及び谷部Vaは、支持基板120の第1面121側から見て山頂となる形状を有する部位が山部Maであり、支持基板120の第1面121側から見て谷底となる形状を有する部位が谷部Vaであった。
一方、基材20の第2面22における蛇腹形状部は、基材20の第2面22側から見て山頂となる形状を有する部位が山部Mbであり、基材20の第2面22側から見て谷底となる形状を有する部位が谷部Vbである。
【0179】
山部Mb及び谷部Vbは、基材20の第2面22の法線方向に沿って見た場合に、基材20の伸縮部31と重なる領域において、基材20の第2面22の面内方向に沿って繰り返し現れる。
なお、基材20の第2面22における蛇腹形状部130の複数の山部Mb及び谷部Vbは第2面22の面内方向に沿って一定の周期で並んでいてもよく、不規則に並んでいてもよい。例えば、第2面22の面内方向において隣り合う2つの山部の間の間隔は、一定であってもよく、一定でなくてもよい。
【0180】
図16において、符号Sbは、基材20の第2面22のうち蛇腹形状部130に重なる部分に現れる山部Mb及び谷部Vbの振幅を表す。
基材20の第2面22のうち蛇腹形状部130に重なる部分に現れる山部Mb及び谷部Vbの振幅Sbは配線141の蛇腹形状部130に重なる部分に現れる山部Ma及び谷部Vaの振幅Saと同一であってもよく、異なっていてもよい。例えば、振幅Sbは振幅Saよりも小さくてもよい。振幅Sbが振幅Saよりも小さい場合、振幅Sbは振幅Saの0.9倍以下であってもよく、0.8倍以下であってもよく、0.6倍以下であってもよい。また、振幅Sbは、振幅Saの0.1倍以上であってもよく、0.2倍以上であってもよい。基材20の伸縮部31の厚みが小さい場合、振幅Saに対する振幅Sbの比率が大きくなり易い。
なお、「基材20の第2面22のうち蛇腹形状部130に重なる部分に現れる山部Mb及び谷部Vbの振幅Sbが、配線141の蛇腹形状部130に重なる部分に現れる山部Ma及び谷部Vaの振幅Saよりも小さい」とは、基材20の伸縮部31の第2面22に山部及び谷部が現れない場合を含む概念である。
【0181】
図17において、符号Fbは、基材20の第2面22のうち蛇腹形状部130に重なる部分に現れる山部Mb及び谷部Vbの周期を表す。
基材20の第2面22のうち蛇腹形状部130に重なる部分に現れる山部Mb及び谷部Vbの周期Fbは、配線141の蛇腹形状部130に重なる部分に現れる山部Ma及び谷部Vaの周期Faと同一であってもよく、異なっていてもよい。例えば、周期Fbは周期Faよりも大きくてもよい。周期Fbが周期Faよりも大きい場合、周期Fbは周期Faの1.1倍以上であってもよく、1.2倍以上であってもよく、1.5倍以上であってもよく、2.0倍以上であってもよい。
なお、「基材20の第2面22のうち蛇腹形状部130に重なる部分に現れる山部Mb及び谷部Vbの周期Fbが、配線141の蛇腹形状部130に重なる部分に現れる山部Ma及び谷部Vaの周期Faよりも大きい」とは、基材20の伸縮部31の第2面22に山部及び谷部が現れない場合を含む概念である。
【0182】
ここで、蛇腹形状部130が配線141に形成されていることの利点について説明する。上述のように、基材20の伸縮部31は、10MPa以下の弾性係数を有する。このため、配線基板110に引張応力を加えた場合、基材20の伸縮部31は、弾性変形によって伸長することができる。ここで、仮に配線141も同様に弾性変形によって伸長すると、配線141の全長が増加し、配線141の断面積が減少するので、配線141の抵抗値が増加してしまう。また、配線141の弾性変形に起因して配線141にクラックなどの破損が生じてしまうことも考えられる。
【0183】
これに対して、本実施の形態においては、配線141が蛇腹形状部130を有している。このため、基材20が伸張する際、配線141は、蛇腹形状部130の起伏を低減するように変形することによって、すなわち蛇腹形状を解消することによって、基材20の伸張に追従することができる。このため、基材20の伸張に伴って配線141の全長が増加することや、配線141の断面積が減少することを抑制することができる。このことにより、配線基板110の伸張に起因して配線141の抵抗値が増加することを抑制することができる。また、配線141にクラックなどの破損が生じてしまうことを抑制することができる。
【0184】
なお、配線141に求められることは、蛇腹形状部130の解消及び生成を利用して基材20の伸縮部31の伸張及び収縮に追従することである。この点を考慮すると、配線141の材料としては、それ自体が変形性や伸縮性を有しているものだけでなく、それ自体は変形性や伸縮性を有していないものも採用可能である。
配線141に用いられ得る、それ自体は伸縮性を有さない材料としては、例えば、金、銀、銅、アルミニウム、白金、クロム等の金属や、これらの金属を含む合金が挙げられる。
配線141の材料自体が伸縮性を有さない場合、配線141としては、金属膜を用いることができる。
【0185】
配線141の厚みは、例えば50μm以下である。配線141の幅は、例えば50μm以上且つ10mm以下である。
【0186】
(配線基板の製造方法)
次に、本開示の第2の実施形態に係る触覚提示装具の配線基板の製造方法について、図18を用いて説明する。ここで、図18は配線基板110の製造方法の一例を示す工程図である。
【0187】
まず、基材20を準備する基材準備工程を実施する。本実施の形態においては、基材準備工程において、図18(a)に示すように、第1面21及び第1面21の反対側に位置する第2面22を含む基材20であって、第1面21の面内方向に、弾性を有する伸縮部31と、伸縮部31と隣接する固定部32と、を有する基材20を準備する。
【0188】
また、支持基板120を準備する支持基板準備工程を実施する。本実施の形態においては、支持基板準備工程において、図18(b)に示すように、支持基板120の第1面121に配線141及び電子部品42を設ける。配線141を設ける方法としては、例えば、ベース材及び導電性粒子を含む導電性ペーストを支持基板120の第1面121に印刷する方法を採用することができる。
【0189】
続いて、伸縮部31と固定部32とを備えた基材20に引張応力Tを加えて基材20を伸長させる第1工程を実施する。基材20の伸縮部31の伸張率は、例えば10%以上且つ200%以下である。第1工程は、基材20を加熱した状態で実施してもよく、常温で実施してもよい。基材20を加熱する場合、基材20の温度は例えば50℃以上且つ100℃以下である。
【0190】
続いて、図18(c)に示すように、引張応力Tによって伸長した状態の基材20の第1面21側に、配線141及び電子部品42が設けられた支持基板120を、支持基板120の第2面122側から接合させる、第2工程を実施する。この際、基材20と支持基板120との間に接着層111を設けてもよい。
【0191】
その後、基材20から引張応力Tを取り除く第3工程を実施する。これにより、図18(d)において矢印Cで示すように、基材20が収縮し、基材20に接合されている支持基板120及び配線141にも変形が生じる。支持基板120の第3の弾性係数は、基材20の伸縮部31の第1の弾性係数よりも大きい。このため、支持基板120及び配線141の変形を、蛇腹形状部130の生成として生じさせることができる。
【0192】
また、本開示の配線基板においては、固定部32の第1面21側に、電子部品42としてハプティクス素子の振動子が配置される。このため、第1工程において基材20のうち電子部品42と重なる部分が伸張することを抑制することができる。従って、第3工程において基材20のうち電子部品42と重なる部分が収縮することを抑制することができる。このことにより、基材20の変形に起因する応力が電子部品42に加わることを抑制することができ、電子部品42が変形したり破損したりしてしまうことを抑制することができる。また、電子部品42と配線141との間の電気接合部が破損してしまうことを抑制することができる。このように、本実施の形態によれば、基材20に生じる変形を位置に応じて制御することにより、電子部品42の実装のし易さや電子部品42及び配線141の信頼性を高めることができる。
【0193】
次に、配線141の蛇腹形状部130によって得られる、配線141の抵抗値に関する効果の一例について説明する。ここでは、基材20の第1面21の面内方向に沿う引張応力が基材20に加えられていない第1状態における配線141の抵抗値を、第1抵抗値と称する。また、基材20に引張応力を加えて基材20を第1面21の面内方向において第1状態に比べて30%伸長させた第2状態における配線141の抵抗値を、第2抵抗値と称する。本実施の形態によれば、配線141に蛇腹形状部130を形成することにより、第1抵抗値に対する、第1抵抗値と第2抵抗値の差の絶対値の比率を、20%以下にすることができ、より好ましくは10%以下にすることができ、更に好ましくは5%以下にすることができる。
【0194】
(変形例)
上述した第1の実施形態に係る触覚提示装具と同様に、本実施形態に係る触覚提示装具に対しても様々な変更を加えることが可能である。例えば、上述した第1の実施形態に係る触覚提示装具において説明した第1の変形例から第8の変形例は、本実施形態に係る触覚提示装具に対しても適用できる。そして、上述した各変形例において得られる作用効果は、本実施形態に係る触覚提示装具においても得られる。
【0195】
例えば、上述した第1の変形例から第6の変形例は、主に振動伝達部に係る変更であり、本実施形態に係る触覚提示装具の振動伝達部については、上述した本開示の第1の実施形態に係る触覚提示装具と同様であってよいことから、本実施形態に係る触覚提示装具に対しても同様に適用できる。
【0196】
また、上述した第7の変形例は、配線基板が複数の固定部を有し、複数の固定部のそれぞれに振動伝達部が接続されている形態を有するものであるが、本実施形態に係る触覚提示装具においては、例えば、配線基板が複数の固定部を有し、複数の固定部のそれぞれに配置される電子部品に振動伝達部が接続されている形態とすることができる。
【0197】
また、上述した第8の変形例は、第1の実施形態に係る触覚提示装具が、アクチュエータによって駆動される骨格構造(外骨格)を、さらに備えている変形例であり、図14に示すように、固定部32に外骨格ワイヤー93が接続される外骨格ワイヤー接続部91が備えられており、固定部32Hに外骨格ワイヤー93を通す外骨格ワイヤーガイド92が備えられている形態を有するものである。
これに対し、本実施形態に係る触覚提示装具においては、支持基板120の第1面121の法線方向に沿って見た場合に、 電子部品が配置される位置にある固定部と重なる位置の支持基板120の第1面121の上に、外骨格ワイヤー93が接続される外骨格ワイヤー接続部91を備え、別の位置にある固定部と重なる位置の支持基板120の第1面121の上に外骨格ワイヤーガイド92を備えればよい。
【0198】
<第3の実施形態>
(触覚提示装具)
次に、本開示の第3の実施形態に係る触覚提示装具について説明する。
図19は、本開示の第3の実施形態に係る触覚提示装具の一例を示す平面図である。より詳しくは、図19は、触覚提示装具201を配線基板210の基材20の第1面21側から見た触覚提示装具201の平面形態の要部を示す平面図である。
【0199】
上述の第2の実施形態においては、触覚提示装具を構成する配線基板の配線141及び電子部品42が、支持基板120によって支持される例を示したが、本開示の触覚提示装具を構成する配線基板は、これに限られることはない。例えば、蛇腹形状部130を有する配線141は、基材20の第1面21に設けられていてもよい。
この第3の実施形態に係る触覚提示装具においても、振動伝達部については、上述した本開示の第1の実施形態に係る触覚提示装具と同様であってよい。図19に示す例において、振動伝達部50は、その端部が固定部32に接続されている。なお、振動伝達部50は、電子部品42に接続されていてもよい。振動伝達部50が電子部品42に接続されていれば、電子部品42からの振動は、直接、振動伝達部50に伝わることになる。
以下、本開示の第3の実施形態に係る触覚提示装具の配線基板について、詳しく説明する。
【0200】
(配線基板)
図20は、本開示の第3の実施形態に係る触覚提示装具の配線基板の一例を示す断面図である。より詳しくは、図20に示す断面図は、図19に示す触覚提示装具201を線A-Aに沿って切断した場合の図である。なお、図20においては、図19において点線で輪郭を示した利用者の指2は図示していないが、図20における基材20の第2面22の側に、図19において点線で輪郭を示した利用者の指2が位置することになる。
【0201】
配線基板210においても、上述した配線基板10と同様に、基材20の大部分が伸縮部31から構成されているため、人体への装着に適した伸縮性を有するものとなる。
さらに、配線基板210においても、配線141が蛇腹形状部130を有しているため、基材20が伸張する際、配線141は、蛇腹形状部130の起伏を低減するように変形することによって、すなわち蛇腹形状を解消することによって、基材20の伸張に追従することができる。このため、基材20の伸張に伴って配線141の全長が増加することや、配線141の断面積が減少することを抑制することができる。このことにより、配線基板210の伸張に起因して配線141の抵抗値が増加することを抑制することができる。また、配線141にクラックなどの破損が生じてしまうことを抑制することができる。
【0202】
(配線基板の製造方法)
次に、本開示の第3の実施形態に係る配線基板の製造方法について、図21を用いて説明する。ここで、図21は、図20に示す配線基板210の製造方法の一例を示す工程図である。
【0203】
まず、図21(a)に示すように、基材20を準備する基材準備工程を実施する。
【0204】
続いて、図21(b)に示すように、基材20に引張応力Tを加えて基材20を伸長させる第1工程を実施する。続いて、図21(c)に示すように、引張応力Tによって伸長した状態の基材20の第1面21に、配線141及び電子部品42を設ける第2工程を実施する。配線141を設ける方法としては、例えば、ベース材及び導電性粒子を含む導電性ペーストを基材20の第1面21に印刷する方法を採用することができる。
【0205】
その後、基材20から引張応力Tを取り除く第3工程を実施する。これにより、図21(d)において矢印Cで示すように、基材20の伸縮部31が収縮し、基材20に設けられている配線141にも変形が生じる。配線141の弾性係数は、基材20の伸縮部31の弾性係数よりも大きい。このため、配線141の変形を、蛇腹形状部130の生成として生じさせることができる。
【0206】
また、本開示の配線基板においては、固定部32の第1面21側に、電子部品42としてハプティクス素子の振動子が配置される。このため、第1工程において基材20のうち電子部品42と重なる部分が伸張することを抑制することができる。従って、第3工程において基材20のうち電子部品42と重なる部分が収縮することを抑制することができる。このことにより、基材20の変形に起因する応力が電子部品42に加わることを抑制することができ、電子部品42が変形したり破損したりしてしまうことを抑制することができる。また、電子部品42と配線141との間の電気接合部が破損してしまうことを抑制することができる。
【0207】
(変形例)
上述した第1の実施形態に係る触覚提示装具と同様に、本実施形態に係る触覚提示装具に対しても様々な変更を加えることが可能である。例えば、上述した第1の実施形態に係る触覚提示装具において説明した第1の変形例から第8の変形例は、本実施形態に係る触覚提示装具に対しても適用できる。そして、上述した各変形例において得られる作用効果は、本実施形態に係る触覚提示装具においても得られる。
【0208】
<用途>
本開示の触覚提示装具の配線基板は伸縮性を有することから、曲面に適用することができ、かつ、変形に追従することができる。また、本開示の触覚提示装具は振動伝達部によって、配線基板に設けられる電子部品から離れた箇所に振動、力、動き等を効率的に伝達することができる。このような利点から、本開示の触覚提示装具は、各種の物品に適用できる。例えば、ウェアラブルデバイス、ハプティクスデバイス、医療機器等に用いることができる。
【0209】
本開示の触覚提示装具は、例えば、人の皮膚に貼付して用いてもよく、ウェアラブルデバイスに装着して用いてもよい。例えば、人の指などの身体の一部に取り付ける製品の少なくとも一部として、本開示の触覚提示装具を用いることができる。本開示の触覚提示装具は伸張することができるので、例えば触覚提示装具を伸長させた状態で身体に取り付けることにより、触覚提示装具を身体の一部により密着させることができる。このため、良好な着用感を実現することができる。また、触覚提示装具は伸長することができるので、曲面や立体形状に沿わせて設置することが可能である。また、本開示の触覚提示装具は振動伝達部によって、利用者に振動、力、動き等を伝達し、利用者の操作、動きに応じ適切なフィードバックを与えることが可能である。
【0210】
本開示の触覚提示装具は、振動伝達部によって、配線基板に設けられる電子部品から離れた箇所に振動、力、動き等を効率的に伝達することができる。このような利点から、本開示の触覚提示装具は、指以外の人体の各部にも用いることができる。
本開示の触覚提示装具が用いられる物品としては、例えば、手袋、指輪、付け爪、時計、リストバンド、ブレスレット、ヘアバンド、カチューシャ、はちまき、首輪、ネックレス、靴、インソール、マスク、靴下、ストッキング、腹巻、コルセット、服、インナーウェア、スポーツウェア、おむつ、帽子、マフラー、耳あて、カバン(例えばリュックサック、ウエストポーチ、ハンドバッグ、スポーツバッグ、スーツケース)、メガネ、補聴器、イヤリング、ピアス、アンクレット、ベルト、ヘアアクセサリー、水着、家具(例えば、椅子、机、ドアノブ、手すり)、絆創膏、包帯、薬液浸透美容マスク、湿布、ガーゼ、義手、義足、義眼、コンタクトレンズ、サポーター、ラケット、自動車内装シート、インパネ、ロボハンド、ヘルメット等を挙げることができる。
【0211】
また、本開示の触覚提示装具が用いられる物品の他の例としては、ヘルスケア製品、スポーツ製品、アミューズメント製品、振動アクチュエーターデバイス等のハプティクス製品、家電製品、家具や家具装飾品、寝具製品、ペットボトルやラップ等のパッケージ製品、書籍やペン等の文具製品、自動車内装やシート等のモビリティ関連製品等を挙げることができる。本開示においては、これらのいずれかの物品であって、上述した触覚提示装具を有する物品を提供することができる。
【0212】
以上、本開示に係る触覚提示装具および物品について、それぞれの実施形態を説明したが、本開示は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本開示の技術的思想と実質的に同一の構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなる場合であっても本開示の技術的範囲に包含される。
【符号の説明】
【0213】
1、1A、1B、1C、1D、1E、1F、1G、1H 触覚提示装具
2 指
3 爪
4 腹
5 手袋生地
10、10G、10H 配線基板
20 基材
21 第1面
22 第2面
31 伸縮部
32、32a、32b、32c、32H 固定部
41 配線
42、42a、42b、42c 電子部品
50、50A、50B、50C、50D、50E、50F 振動伝達部
50Ga、50Gb、50Gc 振動伝達部
51 第1領域部
52 第2領域部
60 突起部
61 第1突起部
62 第2突起部
70 振動吸収部
81 流路
82 圧覚提示部
83 電磁バルブ
91 外骨格ワイヤー接続部
92 外骨格ワイヤーガイド
93 外骨格ワイヤー
94 カバー
101、201 触覚提示装具
110、210 配線基板
111 接着層
120 支持基板
121 第1面
122 第2面
130 蛇腹形状部
141 配線
301 土台
302 離型層
303 枠
図1
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