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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023170242
(43)【公開日】2023-12-01
(54)【発明の名称】医用画像診断装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/055 20060101AFI20231124BHJP
【FI】
A61B5/055 370
A61B5/055 380
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022081835
(22)【出願日】2022-05-18
(71)【出願人】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】キヤノンメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001380
【氏名又は名称】弁理士法人東京国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】寳珠山 裕
(72)【発明者】
【氏名】舘林 勲
【テーマコード(参考)】
4C096
【Fターム(参考)】
4C096AA03
4C096AA04
4C096AB37
4C096AB44
4C096AC01
4C096AD07
4C096AD14
4C096BB21
4C096BB32
4C096DB06
4C096DC11
4C096DC22
4C096DC33
4C096DC36
4C096DD08
4C096DE07
(57)【要約】
【課題】位置決め画像の正常、異常に関わらず、診断用撮像における標準的な撮像断面やこれらの撮像断面を規定するための基準線を、余分な時間や労力を費やすことなく、正しく決定できるようにする。
【解決手段】一実施形態の医用画像診断装置は、被検体に対する診断用撮像を行うと共に、前記診断用撮像に先立って前記被検体の事前撮像を行う撮像部と、前記事前撮像によって取得されたデータから位置決め画像を生成すると共に、前記診断用撮像によって取得されたデータから診断画像を生成する画像生成部と、前記位置決め画像に異常があった場合に、当該異常な位置決め画像から、前記異常が修復された正常な位置決め画像を生成する、異常修復部と、前記異常が修復された前記正常な位置決め画像から、前記診断用撮像に用いられる撮像断面を決定する断面決定部と、を備える。
【選択図】 図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体に対する診断用撮像を行うと共に、前記診断用撮像に先立って前記被検体の事前撮像を行う撮像部と、
前記事前撮像によって取得されたデータから位置決め画像を生成すると共に、前記診断用撮像によって取得されたデータから診断画像を生成する画像生成部と、
前記位置決め画像に異常があった場合に、当該異常な位置決め画像から、前記異常が修復された正常な位置決め画像を生成する、異常修復部と、
前記異常が修復された前記正常な位置決め画像から、前記診断用撮像に用いられる撮像断面を決定する断面決定部と、
を備える医用画像診断装置。
【請求項2】
前記異常修復部は、
機械学習によって生成された学習済みモデルを備え、
前記異常な位置決め画像を前記学習済みモデルに入力し、この入力に応じて前記学習済みモデルから出力される画像を、前記正常な位置決め画像とすることによって、前記異常な位置決め画像から前記正常な位置決め画像を生成する、
請求項1に記載の医用画像診断装置。
【請求項3】
前記学習済みモデルは、複数の異常な位置決め画像を学習用データ群と、複数の正常な位置決め画像を正解データ群とを用いた機械学習によって、または、複数の正常な位置決め画像を用いた正常を学習する機械学習によって生成される、
請求項2に記載の医用画像診断装置。
【請求項4】
前記異常修復部は、
前記被検体を撮像した複数の画像が保存された画像データベースを備え、
前記異常な位置決め画像に対応する正常な画像を前記画像データベースの中から検索し、検索した前記正常な画像を、前記正常な位置決め画像とすることによって、前記異常な位置決め画像から前記正常な位置決め画像を生成する、
請求項1に記載の医用画像診断装置。
【請求項5】
前記異常修復部は、前記画像データベースの中から検索された前記正常な画像と、前記異常な位置決め画像との間に位置ズレがある場合には、前記正常な画像を前記異常な位置決め画像に合致させるための位置合わせ処理を実施する、
請求項4に記載の医用画像診断装置。
【請求項6】
前記異常修復部は、
前記被検体を撮像した複数の画像であって、前記異常な位置決め画像が撮像されたモダリティ装置とは異なる種類の異種モダリティ装置で撮像された複数の画像が保存された異種モダリティ画像データベースと、
前記異種モダリティ装置で撮像された画像を、前記異常な位置決め画像が撮像されたモダリティ装置で撮像された画像に変換するモダリティ変換用の学習済みモデルと、を備え、
前記異常な位置決め画像に対応する正常な画像を前記異種モダリティ画像データベースの中から検索し、検索した前記正常な画像を、前記モダリティ変換用の学習済みモデルに入力し、この入力に応じて前記モダリティ変換用の学習済みモデルから出力される画像を、前記正常な位置決め画像とすることによって、前記異常な位置決め画像から前記正常な位置決め画像を生成する、
請求項1に記載の医用画像診断装置。
【請求項7】
前記異常な位置決め画像が撮像されたモダリティ装置はMRI装置であり、前記異種モダリティ装置は、X線CT装置、X線アンギオ装置、及び、超音波診断装置の少なくとも1つである、
請求項6に記載の医用画像診断装置。
【請求項8】
前記異常修復部は、
前記異常な位置決め画像を前記正常な位置決め画像に変換する第1の学習済みモデルと、
変換された前記正常な位置決め画像を、第1のコントラストから、前記第1のコントラストとは異なる第2のコントラストに変換する第2の学習済みモデルと、を備え、
前記第1及び第2の学習済みモデルによって、前記第1のコントラストを有する前記異常な位置決め画像から、前記第2のコントラストを有する前記正常な位置決め画像を生成する、
請求項1に記載の医用画像診断装置。
【請求項9】
前記第1のコントラストはT1強調画像に対応するコントラストであり、前記第2のコントラストはT2強調画像に対応するコントラストである、
請求項8に記載の医用画像診断装置。
【請求項10】
前記第1のコントラストはT2強調画像に対応するコントラストであり、前記第2のコントラストはT1強調画像に対応するコントラストである、
請求項8に記載の医用画像診断装置。
【請求項11】
前記断面決定部は、
前記正常な位置決め画像から、前記被検体の複数の解剖学的特徴点を検出し、
検出された前記複数の解剖学的特徴点に基づいて、前記診断用撮像に用いられる撮像断面を決定する、
請求項1に記載の医用画像診断装置。
【請求項12】
前記断面決定部は、ユーザから指定された特定の解剖学的な撮像基準面、又は、ユーザから指定された特定の解剖学的な基準線と、検出された前記複数の解剖学的特徴点とに基づいて、前記診断用撮像に用いられる撮像断面を決定する、
請求項11に記載の医用画像診断装置。
【請求項13】
ディスプレイと、
前記ディスプレイに表示する表示画像を生成する表示制御部と、
をさらに備え、
前記表示制御部は、決定された前記撮像断面、又は、前記撮像断面を規定する基準線を、前記位置決め画像に重ねた断面決定結果画像を前記ディスプレイに表示させると共に、前記異常な位置決め画像から生成された前記正常な位置決め画像を、前記ディスプレイに表示させる、
請求項1に記載の医用画像診断装置。
【請求項14】
前記医用画像診断装置は、MRI装置である、
請求項1乃至13のいずれか1項に記載の医用画像診断装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書及び図面に開示の実施形態は、医用画像診断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
MRI(Magnetic Resonance Imaging)装置は、静磁場中に置かれた被検体の原子核スピンをラーモア周波数の高周波(RF:Radio Frequency)信号で励起し、励起に伴って被検体から発生する磁気共鳴信号(MR(Magnetic Resonance)信号)を再構成してMR画像を生成する撮像装置である。
【0003】
MRI装置、X線CT装置、超音波診断装置などの医用画像診断装置(所謂、モダリティ装置)を用いた撮像では、被検体(或いは、被検者)を診断するための標準的な撮像断面が予め定められている場合がある。
【0004】
例えば、頭部の診断のための標準的な撮像断面を規定するための基準線として、OMライン(Orbitmeatal base line)や、RBライン(Reid’s base line)等が知られている。
【0005】
OMラインは、眼窩中心と外耳孔中心とを結ぶ基準線であり、左右の基準線を含む平面(基準面)が撮像断面となる。OMラインは、大脳の診断に適していると言われている。
【0006】
RBラインは、眼窩下縁と外耳孔上縁とを結ぶ基準線であり、左右の基準線を含む平面(基準面)が撮像断面となる。RBラインはドイツ水平線とも呼ばれており、眼窩、副鼻腔、脳蓋底などの診断に適していると言われている。
【0007】
この他、例えば、心臓の診断のための標準的な撮像断面として、垂直長軸断面、水平長軸断面、短軸断面、4腔断面、3腔断面、2腔断面などの基準6断面が知られている。
【0008】
MRI装置やX線CT装置では、上述した標準的な撮像断面に対応する診断画像を取得する診断用撮像に先立って、位置決め画像を撮像することがしばしば行われる。位置決め画像は、スキャノ画像、スカウト画像、或いは、ロケータ画像とも呼ばれる。
【0009】
そして、今日では、事前に撮像した位置決め画像から被検体の解剖学的特徴点を検出し、上記の標準的な撮像断面、或いは、撮像断面を規定するための基準線を自動的に決定することが可能となっている。
【0010】
しかしながら、位置決め画像に異常があった場合、上記の標準的な撮像断面や基準線を正しく決定できなくなる。例えば、金属アーチファクトや特殊な疾患等により、解剖学的特徴点を検出するために必要な情報が欠落した場合や、モーションアーチファクト等によって解剖学的特徴点の位置検出が困難となった場合には、標準的な撮像断面や基準線を正しく決定できなくなる。このような場合には、位置決め画像を手動で修正する必要があり、余分な時間と労力が必要となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2021-39742号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本明細書及び図面に開示の実施形態が解決しようとする課題の1つは、位置決め画像の正常、異常に関わらず、診断用撮像における標準的な撮像断面やこれらの撮像断面を規定するための基準線を、余分な時間や労力を費やすことなく、正しく決定できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
一実施形態の医用画像診断装置は、被検体に対する診断用撮像を行うと共に、前記診断用撮像に先立って前記被検体の事前撮像を行う撮像部と、前記事前撮像によって取得されたデータから位置決め画像を生成すると共に、前記診断用撮像によって取得されたデータから診断画像を生成する画像生成部と、前記位置決め画像に異常があった場合に、当該異常な位置決め画像から、前記異常が修復された正常な位置決め画像を生成する、異常修復部と、前記異常が修復された前記正常な位置決め画像から、前記診断用撮像に用いられる撮像断面を決定する断面決定部と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】実施形態に係る医用画像診断装置の一例として、MRI装置の全体構成例を示す図。
図2】実施形態のMRI装置のブロック図であり、特に、処理回路で実現する機能に焦点を当てた機能ブロック図。
図3】従来からの位置決め画像を用いた撮像断面の決定方法を例示する図。
図4】従来からの位置決め画像を用いた撮像断面の決定方法の課題を例示する図。
図5】実施形態のMRI装置における撮像断面の自動決定処理に関する処理例を示すフローチャート。
図6】実施形態のMRI装置における撮像断面の自動決定処理の処理概念を示す第1の図。
図7】実施形態のMRI装置における撮像断面の自動決定処理の処理概念を示す第2の図。
図8】第1の実施例に係る異常修復処理の概念を説明する図。
図9】第2の実施例に係る異常修復処理の概念を説明する図。
図10】第3の実施例に係る異常修復処理の概念を説明する図。
図11】第4の実施例に係る異常修復処理の概念を説明する図。
図12】ディスプレイの表示画面の一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態に係る医用画像診断装置を、添付図面に基づいて説明する。
(構成)
実施形態の医用画像診断装置は、MRI装置、X線CT装置、超音波診断装置などの医用画像診断装置(所謂、モダリティ装置)を含むが、以下では、MRI装置1を医用画像診断装置の例として説明する。
【0016】
図1は、MRI装置1の全体構成を示すブロック図である。MRI装置1は、磁石架台100、制御キャビネット300、コンソール400、及び、寝台500等を備えて構成されている。
【0017】
磁石架台100は、静磁場磁石10、傾斜磁場コイル11、WB(Whole Body)コイル12等を有しており、これらの構成品は円筒状の筐体に収納されている。寝台500は、寝台本体50と天板51を有している。また、MRI装置1は、被検体に近接して配設されるローカルコイル20を有している。
【0018】
制御キャビネット300は、傾斜磁場電源31(X軸用31x、Y軸用31y、Z軸用31z)、RF受信器32、RF送信器33、及びシーケンスコントローラ34を備えている。
【0019】
磁石架台100の静磁場磁石10は、概略円筒形状をなしており、被検体(例えば、患者)の撮像領域であるボア(即ち、静磁場磁石10の円筒内部の空間)内に静磁場を発生させる。静磁場磁石10は超電導コイルを内蔵し、液体ヘリウムによって超電導コイルが極低温に冷却されている。静磁場磁石10は、励磁モードにおいて静磁場用電源(図示せず)から供給される電流を超電導コイルに印加することで静磁場を発生し、その後、永久電流モードに移行すると、静磁場用電源は切り離される。一旦永久電流モードに移行すると、静磁場磁石10は長時間、例えば1年以上に亘って、大きな静磁場を発生し続ける。なお、静磁場磁石10を永久磁石として構成しても良い。
【0020】
傾斜磁場コイル11も概略円筒形状をなし、静磁場磁石10の内側に固定されている。この傾斜磁場コイル11は、傾斜磁場電源(31x、31y、31z)から供給される電流によりX軸,Y軸,Z軸の方向に傾斜磁場を被検体に印加する。
【0021】
寝台500の寝台本体50は天板51を上下方向に移動可能であり、撮像前に天板51に載った被検体を所定の高さまで移動させる。その後、撮影時には天板51を水平方向に移動させて被検体をボア内に移動させる。
【0022】
WBコイル12は、傾斜磁場コイル11の内側に被検体を取り囲むように概略円筒形状に固定されている。WBコイル12は、RF送信器33から伝送されるRFパルスを被検体に向けて送信する一方、水素原子核の励起によって被検体から放出される磁気共鳴信号を受信する。
【0023】
ローカルコイル20は、被検体から放出される磁気共鳴信号を被検体に近い位置で受信する。ローカルコイル20は、例えば、複数の要素コイルが配列されたアレイコイルとして構成される。ローカルコイル20は、被検体の撮像部位に応じて、頭部用、胸部用、脊椎用、下肢用、或いは全身用など種々のタイプがあるが、図1では胸部用のローカルコイル20を例示している。
【0024】
RF送信器33は、シーケンスコントローラ34からの指示に基づいて、WBコイル12にRFパルスを送信する。一方、RF受信器32は、WBコイル12やローカルコイル20によって受信された磁気共鳴信号を検出し、検出した磁気共鳴信号をデジタル化して得られる生データをシーケンスコントローラ34に送る。
【0025】
シーケンスコントローラ34は、コンソール400による制御のもと、傾斜磁場電源31、RF送信器33およびRF受信器32をそれぞれ駆動することによって被検体のスキャンを行う。そして、シーケンスコントローラ34は、スキャンを行ってRF受信器32から生データを受信すると、その生データをコンソール400に送る。
【0026】
シーケンスコントローラ34は、処理回路(図示を省略)を具備している。この処理回路は、例えば所定のプログラムを実行するプロセッサや、FPGA(Field Programmable Gate Array)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)等のハードウェアで構成される。
コンソール400は、処理回路40、記憶回路41、ディスプレイ42、及び入力I/F(インタフェース)43を有するコンピュータとして構成されている。
【0027】
記憶回路41は、ROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)の他、HDD(Hard Disk Drive)や光ディスク装置等の外部記憶装置を含む記憶媒体である。記憶回路41は、各種の情報やデータを記憶する他、処理回路40が具備するプロセッサが実行する各種のプログラムを記憶する。
【0028】
入力I/F43は、例えば、マウス、キーボード、トラックボール、タッチパネル等であり、各種の情報やデータを操作者が入力するための種々のデバイスを含む。ディスプレイ42は、液晶ディスプレイパネル、プラズマディスプレイパネル、有機ELパネル等の表示デバイスである。
【0029】
処理回路40は、例えば、CPUや、専用又は汎用のプロセッサを備える回路である。プロセッサは、記憶回路41に記憶した各種のプログラムを実行することによって、後述する各種の機能を実現する。処理回路40は、FPGA(field programmable gate array)やASIC(application specific integrated circuit)等のハードウェアで構成してもよい。これらのハードウェアによっても後述する各種の機能を実現することができる。また、処理回路40は、プロセッサとプログラムによるソフトウェア処理と、ハードウェア処理とを組み合わせて、各種の機能を実現することもできる。
図2は、実施形態のMRI装置1のブロック図であり、特に、処理回路40で実現する機能に焦点を当てた機能ブロック図である。
【0030】
なお、図2では、図1に示すMRI装置1の構成のうち、コンソール400以外の構成品、即ち、制御キャビネット300、磁石架台100及び寝台500の総称を撮像部600として記載している。
【0031】
図2に示すように、MRI装置1の処理回路40は、撮像条件設定機能F01、画像生成機能F02、位置決め画像生成機能F03、診断画像生成機能F04、異常修復機能F05の、撮像断面決定機能F06、及び、表示制御機能F07の各機能を実現する。
【0032】
撮像条件設定機能F01は、被検体(例えば、患者)の診断画像を取得するための撮像である診断用撮像(即ち、本撮像)のパルスシーケンスの種類や、パルスシーケンスを規定する各種のパラメータを撮像条件として、シーケンスコントローラ34に対して設定する。パルスシーケンスを規定する各種のパラメータには、診断画像の撮像断面の位置や向き等の関するパラメータも含まれる。
【0033】
また、撮像条件設定機能F01は、診断用撮像に先立って行われる事前撮像において、位置決め画像を取得するためのパルスシーケンスに関する各種のパラメータもシーケンスコントローラ34に対して設定する。
【0034】
画像生成機能F02は、診断画像及び位置決め画像を生成する。ここで、画像生成機能F02が生成する診断画像、或いは、位置決め画像は、ディスプレイ42に表示する2次元の表示画像だけでなく、2次元の表示画像をレンダリング等で生成するための3次元画像データを含む。
【0035】
画像生成機能F02のうち、位置決め画像生成機能F03は、事前撮像で取得されたデータ(即ち、MR信号)を再構成して、位置決め画像を生成する。位置決め画像は、3次元のボリュームデータとして再構成された3次元画像データでもよいし、2次元画像として再構成されたスライス画像を複数枚積み重ねて生成した3次元画像データでもよい。
また、診断画像生成機能F04は、診断用撮像で収集された取得されたデータ(即ち、MR信号)から、被検体を診断するための診断画像を生成する。
【0036】
異常修復機能F05は、位置決め画像に異常があった場合に、この異常な位置決め画像から、異常が修復された正常な位置決め画像を生成する。撮像断面決定機能F06は、異常が修復された正常な位置決め画像から、診断用撮像に用いられる撮像断面を決定する。異常修復機能F05や撮像断面決定機能F06のより具体的な動作は後述する。
【0037】
表示制御機能F07は、診断画像生成機能F04で生成された診断画像や、断面決定結果画像をディスプレイ42に表示させる。ここで、断面決定結果画像とは、位置決め画像生成機能F03で生成された位置決め画像に、撮像断面決定機能F06で決定された撮像断面、又は、撮像断面を決定するための基準線を重畳させた画像のことである。
【0038】
この他、表示制御機能F07は、位置決め画像生成機能F03で生成された位置決め画像自体や、異常修復機能F05によって異常が修復された正常な位置決め画像をディスプレイ42に表示させてもよい。
【0039】
実施形態に係る医用画像診断装置1(或いは、MRI装置1)の異常修復機能F05や撮像断面決定機能F06の説明に先立ち、従来から行われている、位置決め画像を用いた撮像断面の決定方法と、その課題について、図3及び図4を用いて説明しておく。
【0040】
前述したように、MRI装置、X線CT装置、超音波診断装置などの医用画像診断装置を用いた撮像では、被検体を診断するための標準的な撮像断面が予め定められている。例えば、頭部の診断のための標準的な撮像断面を規定するための基準線として、OMライン(Orbitmeatal base line)や、RBライン(Reid’s base line)等が知られている。OMラインは、眼窩中心と外耳孔中心とを結ぶ基準線であり、左右の基準線を含む平面(基準面)が撮像断面となる。RBラインは、眼窩下縁と外耳孔上縁とを結ぶ基準線であり、左右の基準線を含む平面(基準面)が撮像断面となる。RBラインはドイツ水平線とも呼ばれている。この他、例えば、心臓の診断のための標準的な撮像断面として、垂直長軸断面、水平長軸断面、短軸断面、4腔断面、3腔断面、2腔断面などの基準6断面が知られている。
【0041】
MRI装置やX線CT装置では、上述した標準的な撮像断面に対応する診断画像を取得する診断用撮像に先立って、事前撮像を行って位置決め画像を取得する。一方、ユーザは、診断用撮像で取得したい所望の撮像断面や基準線を、入力インタフェース43等を介して設定する。その後、MRI装置やX線CT装置は、取得した位置決め画像から被検体の解剖学的構造、或いは、解剖学的特徴点を検出する。そして、検出した解剖学的構造、或いは、解剖学的特徴点の位置に基づいて、指定した撮像断面、或いは、撮像断面を規定するための基準線を自動的に決定している。
【0042】
図3では、MRI装置1によって取得された頭部の位置決め画像からOMラインが自動的に決定された結果を、頭部のサジタル画像にOMラインを重畳した画像として示している。OMラインを自動的に決定するために、頭部の3次元画像データとしての位置決め画像から、複数の解剖学的構造、或いは、解剖学的特徴点を検出する。そして、例えば、少なくとも2つ解剖学的特徴点、例えば、解剖学的特徴点1(眼窩中心)と解剖学的特徴点2(外耳孔中心)とから、両者を結ぶ直線をOMラインとして決定する。そして、左右の2本のOMラインを含む平面を、OMラインに対応する撮像断面として決定している。
【0043】
図4は、上述した撮像断面の従来の決定方法の問題点を説明する図である。位置決め画像から撮像断面や基準線を正確に決定するためには、位置決め画像から解剖学的構造や解剖学的特徴点の位置を正確に決定する必要がある。例えば、OMラインを正確に決定するためには、眼窩中心の位置と外耳孔中心の位置を正確に決定する必要がある。
【0044】
しかしながら、位置決め画像にアーチファクトが発生すると、アーチファクトの影響を受けて解剖学的構造や解剖学的特徴点の位置を正確に決定することができなくなり、誤った位置として検出されることになる。
【0045】
例えば、図4(a)に示すように、金属製の入れ歯などによって位置決め画像に金属アーチファクトが発生し、その結果、位置決め画像に欠損領域が発生する可能性がある。このような異常な位置決め画像では、検出した解剖学的特徴点の位置(例えば、眼窩中心の位置)が、本来の正しい位置から大きくずれて検出される可能性がある。その結果、指定した基準線とは異なる、誤った基準線が検出されることになる。
【0046】
また例えば、図4(b)に示すように、撮像中に被検体が動いた場合には位置決め画像にモーションアーチファクトが発生したり、位置決め画像にブレが発生したりする。また、被検体とFOV(Field of View)の相対的な位置関係によっては、折り返しが発生し、位置決め画像にゴーストが発生する場合もある。このようにブレやゴーストが発生している異常な位置決め画像においても、検出した解剖学的特徴点の位置が、本来の正しい位置から大きくずれて検出される可能性があり、その結果、指定した基準線とは異なる、誤った基準線が検出されることになる。
【0047】
実施形態のMRI装置1では、このような不都合を解消するために、位置決め画像に異常があった場合には、異常な位置決め画像から正常な位置決め画像を推定するように、若しくは、異常な位置決め画像に基づいて正常な位置決め画像を取得するように、異常修復処理を行っている。
【0048】
(撮像断面の自動決定処理)
図5は、MRI装置1における撮像断面の自動決定処理に関する処理例を示すフローチャートである。以下、図5のフローチャートと図6乃至図12を用いてMRI装置1の動作について説明する。
【0049】
ステップST100では、診断しようとする被検体の位置決め画像を取得するための事前撮像を行う。事前撮像は、撮像条件設定機能F01で設定された位置決め画像の撮像用のパルスシーケンスに従って、撮像部600によって行われる。
【0050】
ステップST101では、位置決め画像生成機能F03が位置決め画像を生成する。生成された位置決め画像は、例えば、ディスプレイ42に表示される。図6の左上に示す「画像A」は、MRI装置1で撮像された頭部の位置決め画像を例示している。位置決め画像は、前述したように3次元の画像データとして生成されるので、ディスプレイ42に表示する画像としては、コロナル断面像、アキシャル断面像、又は、サジタル断面像など、任意の断面を表示可能であるが、以下では、サジタル断面像を例に挙げて説明を進める。また、以下では、「画像A」に示したように、欠損領域(或いはアーチファク領域)のある異常な位置決め画像が、撮像断面を自動決定するための入力画像となる例で説明を進める。
【0051】
ステップST102では、異常修復処理を実施するか否かが判定される。例えば、「位置決め画像に異常があった場合、異常修復処理を実施するか?」などのメッセージをディスプレイ42に表示し、「YES」ボタンのクリック等の入力がユーザから行われた場合には、ステップST103に進む。一方、「NO」ボタンがクリックされた場合には、ステップST103の処理をスキップして、ステップST104へ進む。
【0052】
ステップST103における異常修復処理は、異常な位置決め画像と正常な位置決め画像のどちらに対しても正常な位置決め画像を出力すること可能である。しかしながら、ステップST101で生成された位置決め画像が、ユーザの判断によって、異常がないことが明らかである場合には、ステップST103における異常修復処理をスキップすることにより、処理時間を短縮することが可能である。このような場合には、ユーザは「NO」ボタンをクリックすることにより、ステップST103の処理をスキップする。
【0053】
なお、位置決め画像に異常が有るか否かの判定を、ユーザが行うのではなく、機械学習等を用いて、装置が自動的に判定するようにしてもよい。この場合、ステップST102では、「位置決め画像に異常が有るか?」という判定を装置が行うことになり、「YES」の場合はステップST103へ進み、「NO」の場合はステップST104に進むことになる。
【0054】
図6の上段に示す「画像B」は、異常な位置決め画像が、ステップST103の異常修復処理によって修復された後の正常な位置決め画像を例示している。正常な位置決め画像(「画像B」)では、異常な位置決め画像(「画像A」)に存在していた欠損領域(又はアーチファク領域)が取り除かれている。ステップST103の異常修復処理の具体例については、後述する。
【0055】
ステップST104では、ユーザが指定した標準的な撮像断面、或いは、基準線を受け付ける。例えば、撮像部位が頭部の場合にはOMラインやRBライン等の基準線を受け付け、撮像部位が心臓の場合には、短軸断面や4腔断面等の標準的な撮像断面を受け付ける。
【0056】
ステップST104の処理は必ずしもこの位置である必要はなく、ステップST105よりも前であれば、任意の位置を取り得る。また、後述するように、ステップST105とステップST106の間でもよい。
【0057】
ステップST105では、修復された(又は取得された)正常な位置決め画像から、指定された撮像断面又は基準線の決定に必要な解剖学的構造(又は解剖学的特徴点)を検出する。
【0058】
解剖学的構造(又は解剖学的特徴点)の検出は、機械学習によって生成されたDNN(Deep Neural Network)等の学習済みモデルを用いてもよいし、パタンマッチング等の手法を用いてもよい。
【0059】
図6の下段に示す「画像C」では、ステップST105で検出された解剖学的構造(又は解剖学的特徴点)を白丸で表示して、検出対象であった修復された正常な位置決め画像に重ねて表示している。図6に示した例では、撮像断面を規定する基準線がOMラインとして既に指定されているため、ステップST105では、OMラインを検出するために必要な2つの解剖学的構造(1)、(2)の特徴点として、眼窩中心と外耳孔中心とを検出すればよい。
【0060】
ステップST106では、検出された解剖学的構造(またはその特徴点)から、指定された撮像断面又は基準線の位置や向きに関する情報を決定する。図6の下段中央に示す「画像D」では、このようにして決定された基準線であるOMラインを、修復された正常な位置決め画像に重ねて表示している。
【0061】
次に、ステップST107では、当初の位置決め画像(欠損領域等を含んだ、異常な位置決め画像)に、ステップST106で決定された撮像断面や基準線を重ねて、「画像E」を生成し、「画像E」をディスプレイ42に表示させる。
【0062】
ステップST105及びステップST106の処理は、図2に示した処理回路40の撮像断面決定機能F06が行う。また、ステップST107の処理は、処理回路40の表示制御機能F07が行う。
【0063】
なお、通常、ユーザがディスプレイ42を介して認識できるのは、入力画像としての「画像A」と、出力画像としての「画像E」である。「画像B」、「画像C」、及び、「画像D」は、処理回路40の内部で行われる処理の概念を説明するための画像であり、通常は、これらの画像がディスプレイ42に表示されることはない。
ステップST108では、このようにして決定された撮像断面に対応する診断画像を取得するための本撮像(即ち、診断用撮像)が実施される。
【0064】
図7は、解剖学的構造の検出処理の変形例に係る処理概念を示す図である。この変形例では、想定される複数の撮像断面又は複数の基準線に対応する、複数の解剖学的構造(又は解剖学的特徴点)を、想定され得る範囲で網羅的に検出するものとしている。そして、これら複数の解剖学的構造(又は解剖学的特徴点)の中から、指定された撮像断面又は基準線の決定に必要な解剖学的構造(又は解剖学的特徴点)のみを抽出するようにしている。そして、抽出された解剖学的構造(又は解剖学的特徴点)に基づいて、指定された撮像断面又は基準線の位置や向きに関する情報を決定するようにしている。
この変形例では、ステップST104の処理はステップST106の前であればよく、ステップST105の後でもよい。
【0065】
(異常修復処理)
次に、実施形態のMRI装置1が行ういくつかの実施例(ステップST103の処理)について、図8乃至図11を用いて説明する。なお、以下に説明する異常修復処理は、例えば、図2に示した処理回路40の異常修復機能F05が行う。
【0066】
図8は、第1の実施例に係る異常修復処理の概念を説明する図である。第1の実施例では、機械学習によって生成された学習済みモデルを用いて異常修復処理を行う。つまり、異常な位置決め画像を正常画像変換用の学習済みモデルに入力し、この入力に応じて学習済みモデルから出力される画像を、正常な位置決め画像とすることによって、異常な位置決め画像から正常な位置決め画像を生成するものとしている。
【0067】
ここで、学習済みモデルは、複数の異常な位置決め画像からなる学習用データ群と、複数の正常な位置決め画像からなる正解データ群とを用いた機械学習によって生成される。あるいは、学習済みモデルは、複数の正常な位置決め画像を用いた正常を学習する機械学習によって生成される。機械学習モデルは特に限定するものではないが、例えば、オートエンコーダ、GAN(Generative Adversarial Network)等のニューラルネットワークを用いた機械学習モデルや、その他の公知の機械学習モデルを用いて、正常画像変換用の学習済みモデルを生成することができる。
【0068】
なお、正常画像変換用の学習済みモデルには、異常な位置決め画像だけでなく、正常な位置決め画像を入力してもよい。この場合においても、正常画像変換用の学習済みモデルからは、正常な位置決め画像が出力される。
【0069】
図9は、第2の実施例に係る異常修復処理の概念を説明する図である。第2の実施例では、診断対象である被検体を撮像した複数の正常な過去画像が保存された画像データベースを用いて異常修復処理を行う。
【0070】
具体的には、複数の正常な過去画像が保存された画像データベースを検索し、ステップST101で生成された異常な位置決め画像に対応する正常な画像(例えば、ステップST101で生成された異常な位置決め画像に最も類似する画像)をこの画像データベースの中から抽出する。そして、抽出した画像を正常な位置決め画像とすることによって、異常な位置決め画像から正常な位置決め画像を生成することができる。
【0071】
なお、画像データベースの中から抽出された正常な位置決め画像と、ステップST101で生成された異常な位置決め画像との間に位置ズレがある場合には、正常な位置決め画像を異常な位置決め画像に合致させるための位置合わせ処理(レジストレーション)を実施すればよい。
【0072】
図10は、第3の実施例に係る異常修復処理の概念を説明する図である。第3の実施例では、異種モダリティ画像データベースとモダリティ変換用の学習済みモデルとを用いて異常修復処理を行う。
【0073】
ここで、異種モダリティ画像データベースは、診断対象である被検体を撮像した複数の画像であって、ステップST101で生成された異常な位置決め画像が撮像されたモダリティ装置とは異なる種類の異種モダリティ装置で撮像された複数の正常な過去画像が保存された画像データベースである。
【0074】
ステップST101で生成された異常な位置決め画像が撮像されたモダリティ装置がMRI装置1の場合、異種モダリティ画像データベースは、X線CT装置、X線アンギオ装置、及び、超音波診断装置の少なくとも1つで撮像された、当該被検体の複数の正常な過去画像が保存された画像データベースである。
【0075】
また、モダリティ変換用の学習済みモデルは、異種モダリティ装置で撮像された画像を、ステップST101で生成された異常な位置決め画像が撮像されたモダリティ装置で撮像された画像に変換する学習済みモデルである。
【0076】
ステップST101で生成された異常な位置決め画像が撮像されたモダリティ装置がMRI装置1であり、異種モダリティ画像データベースに保存されている画像がX線CT装置で撮像された画像である場合、モダリティ変換用の学習済みモデルは、CT画像をMR画像に変換するように学習された学習済みモデルである。
【0077】
第3の実施例に係る異常修復処理では、異種モダリティ画像データベースを検索して、異常な位置決め画像(例えば、MR画像)に対応する正常な画像(例えば、CT画像)を抽出する。そして、抽出した正常な画像を、モダリティ変換用の学習済みモデルに入力し、この入力に応じてモダリティ変換用の学習済みモデルから出力される画像(例えば、MR画像)を、正常な位置決め画像とすることによって、異常な位置決め画像(MR画像)から正常な位置決め画像(MR画像)を生成するようにしている。
【0078】
なお、ステップST101で生成された異常な位置決め画像と、異種モダリティ画像データベースから抽出された正常な位置決め画像との間に位置ズレがある場合には、第2の実施例と同様に、正常な位置決め画像を異常な位置決め画像に合致させるための位置合わせ処理(レジストレーション)を実施すればよい。
【0079】
図11は、第4の実施例に係る異常修復処理の概念を説明する図である。第4の実施例では、第1の学習済みモデルと第2の学習済みモデルとを用いて異常修復処理を行う。
【0080】
第1の学習済みモデルは、ステップST101で生成された異常な位置決め画像を正常な位置決め画像に変換する正常画像変換用学習モデルであり、第1の実施例で用いる学習済みモデルと実施的に同じものである。
【0081】
一方、第2の学習済みモデルは、変換された正常な位置決め画像を、第1のコントラストから、前記第1のコントラストとは異なる第2のコントラストに変換するコントラスト変換用学習済みモデルである。
【0082】
ここで、第1のコントラストは、ステップST101で生成された異常な位置決め画像のコントラストであり、この位置決め画像を撮像した撮像法に対応するコントラストである。例えば、ステップST101で生成された位置決め画像が、T1強調撮像法で撮像された画像である場合、第1のコントラストは、T1強調撮像法に対応するコントラストである。この場合、第1のコントラストの画像では、脂肪成分の信号強度が高く、脳脊髄液や血液などの水成分の信号強度が低く描出されるコントラストをもつ。
【0083】
一方、コントラスト変換用学習済みモデルによって第1のコントラストから変換される第2のコントラストは、例えば、T2強調撮像法に対応するコントラストである。この場合、第2のコントラストの画像では、脂肪成分の信号強度が低く、脳脊髄液や血液などの水成分の信号強度が高く描出されるコントラストをもつ。
【0084】
第4の実施例の異常修復処理では、第1及び第2の学習済みモデルによって、第1のコントラストを有する異常な位置決め画像から、第2のコントラストを有する正常な位置決め画像を生成する。
【0085】
例えば、第1のコントラストがT1強調画像に対応するコントラストである場合、第2のコントラストはT2強調画像に対応するコントラストとなる。逆に、第1のコントラストがT2強調画像に対応するコントラストである場合、第2のコントラストはT1強調画像に対応するコントラストとなる。
第4の実施例では、解剖学的構造(又は解剖学的特徴点)の検出は、第2のコントラストを有する正常な位置決め画像に対して行われることになる。
【0086】
腹部の撮像等では、特定の血管や特定の血管の分岐点が、所望の撮像断面を決定するための解剖学的構造(又は解剖学的特徴点)となる場合がある。一方、T1強調画像のコントラストでは特定の血管や特定の血管の分岐点の信号強度が検出できない程度に低く描出され、逆にT2強調画像のコントラストではこれらの信号強度が高く描出されることが知られている。
【0087】
このような場合、ステップST101で生成された位置決め画像がT1強調画像であると、解剖学的構造(又は解剖学的特徴点)が良好に検出できなくなるため、不都合である。これに対して、第4の実施例では、ステップST101で生成された位置決め画像がT1強調画像であっても、これをT2強調画像の正常な位置決め画像に変換することができるため、解剖学的構造(又は解剖学的特徴点)が良好に検出することができる。
【0088】
なお、上記では、コントラスト変換の例として、T1強調画像からT2強調画像へ変換する例を挙げたが、これ以外にも種々のコントラスト変換が考えられる。例えば、脂肪抑制されていない画像から脂肪抑制されている画像への変換、拡散強調されていない画像から拡散強調されている画像への変換等、種々のコントラスト変換が考えられる。
【0089】
なお、上述した第1の実施例乃至第4の実施例に係る異常修復処理で生成される正常な位置決め画像、即ち、図8乃至図11に例示した「画像B」は、処理回路40の内部で行われる処理の概念を説明するための画像であり、通常は、これらの画像がディスプレイ42に表示されることはない。
【0090】
しかしながら、図8乃至図11に例示した「画像B」を、入力画像としての「画像A」と、出力画像としての「画像E」に加えて、ディスプレイ42の表示画面DS1に表示してもよい。「画像B」をディスプレイ42に表示することにより、解剖学的構造(又は解剖学的特徴点)の直接の検出元の画像をユーザに提供することが可能となる。
【0091】
図12は、ディスプレイ42の表示画面DS1に、(a)ステップST101で生成された、異常な位置決め画像、即ち、処理前の位置決め画像(「画像A」)、(b)決定された撮像断面又は撮像断面を規定するための基準線が位置決め画像に重畳された撮像断面重畳画像、即ち、断面決定結果画像(「画像E」)、及び、(c)異常修復処理で推定された中間画像、即ち、正常な位置決め画像(「画像B」)の3つの画像を表示した例を示している。
【0092】
なお、実施形態の記載における画像生成機能、異常修復機能、撮像断面決定機能、及び、表示画像制御機能は、夫々、特許請求の範囲の記載における画像生成部、異常修復部、断面決定部、及び、表示制御部の一例である。
【0093】
以上説明してきたように、実施形態の医用画像診断装置は、位置決め画像の正常、異常に関わらず、診断用撮像における標準的な撮像断面やこれらの撮像断面を規定するための基準線を、余分な時間や労力を費やすことなく、正しく決定できる。
【0094】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0095】
1 医用画像診断装置、MRI装置
40 処理回路
600 撮像部
F01 撮像条件設定機能
F02 画像生成機能
F03 位置決め画像生成機能
F04 診断画像生成機能
F05 異常修復機能
F06 撮像断面決定機能
F07 表示制御機能
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12