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特開2023-170248化粧料組成物用の形状異方性を有する磁性酸化鉄顔料及びその製造方法並びに磁性酸化鉄顔料を用いた化粧料組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023170248
(43)【公開日】2023-12-01
(54)【発明の名称】化粧料組成物用の形状異方性を有する磁性酸化鉄顔料及びその製造方法並びに磁性酸化鉄顔料を用いた化粧料組成物
(51)【国際特許分類】
   C09C 1/24 20060101AFI20231124BHJP
   A61K 8/19 20060101ALI20231124BHJP
   A61Q 1/02 20060101ALI20231124BHJP
   A61Q 1/12 20060101ALI20231124BHJP
   C09C 1/62 20060101ALI20231124BHJP
【FI】
C09C1/24
A61K8/19
A61Q1/02
A61Q1/12
C09C1/62
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022081854
(22)【出願日】2022-05-18
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り (1)展示会名/第10回化粧品産業技術展CITE JAPAN 2021 開催日/令和3年5月19日~5月21日 (2)掲載年月日/令和3年5月19日 掲載アドレス/チタン工業株式会社HP内(http://www.titankogyo.co.jp/randd/citejapan2021/) 「酸化鉄系」の「3.黒酸化鉄ABLシリーズ」(http://www.titankogyo.co.jp/pdf/Octahedral_lron_Oxide_ABL_series.pdf) (3)掲載年月日/令和3年5月19日 掲載アドレス/チタン工業株式会社HP内(http://www.titankogyo.co.jp/randd/citejapan2021/) You Tube▲R▼内(https://www.youtube.com/watch?v=tAXCg7LwY7g) (4)掲載年月日/令和3年10月15日 掲載アドレス/You Tube▲R▼内(日本語版:https://www.youtube.com/watch?v=TErI_IPtZT8 英語版:https://www.youtube.com/watch?v=vKhXKKVqtFI) (5)掲載年月日/令和3年11月24日 掲載アドレス/You Tube▲R▼内(日本語版:https://www.youtube.com/watch?v=5vJInvLHqRg 英語版:https://www.youtube.com/watch?v=e6gCSZcoMfs) (6)サンプル提供日(発送日)/ 令和3年 6月11日(納入日:令和3年 6月14日) 令和3年 6月15日(納入日:令和3年 6月28日) 令和3年 6月16日(納入日:令和3年 6月28日) 令和3年 6月23日(納入日:令和3年 6月28日) 令和3年 7月26日(納入日:令和3年 8月 3日) 令和3年 8月 3日(納入日:令和3年 8月18日) 令和3年 9月 3日(納入日:令和3年 9月 9日) 令和3年 9月16日(納入日:令和3年 9月24日) 令和3年10月26日(納入日:令和3年11月 1日) 令和3年12月 6日(納入日:令和3年12月 8日) 配布場所/サンプルの提供を希望した国内外を含む複数の顧客と仲介業者
(71)【出願人】
【識別番号】000109255
【氏名又は名称】チタン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100112634
【弁理士】
【氏名又は名称】松山 美奈子
(74)【代理人】
【識別番号】100141265
【弁理士】
【氏名又は名称】小笠原 有紀
(72)【発明者】
【氏名】吉見 晃
(72)【発明者】
【氏名】神田 浩二
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼田 晃彦
(72)【発明者】
【氏名】熊谷 徹
【テーマコード(参考)】
4C083
4J037
【Fターム(参考)】
4C083AA082
4C083AA112
4C083AA122
4C083AB032
4C083AB172
4C083AB231
4C083AB232
4C083AB242
4C083AB312
4C083AB352
4C083AB432
4C083AB442
4C083AC012
4C083AC022
4C083AC072
4C083AC112
4C083AC122
4C083AC172
4C083AC182
4C083AC242
4C083AC262
4C083AC302
4C083AC342
4C083AC352
4C083AC372
4C083AC392
4C083AC402
4C083AC422
4C083AC432
4C083AC442
4C083AC482
4C083AC532
4C083AC542
4C083AC582
4C083AC642
4C083AC712
4C083AC792
4C083AD022
4C083AD042
4C083AD072
4C083AD092
4C083AD112
4C083AD132
4C083AD152
4C083AD162
4C083AD172
4C083AD242
4C083AD352
4C083AD662
4C083CC11
4C083CC12
4C083CC13
4C083CC14
4C083CC23
4C083CC25
4C083CC41
4C083DD17
4C083DD21
4C083DD22
4C083DD33
4C083FF01
4J037AA15
4J037CA10
4J037CA20
4J037DD05
4J037DD07
4J037EE03
4J037EE19
4J037EE35
4J037EE43
4J037EE46
4J037EE47
4J037FF02
4J037FF30
(57)【要約】
【課題】肌に塗布することで、使用者の顔に立体的な印象を与え、更に必要がなくなった際には容易に除去することができる化粧料組成物用の磁性酸化鉄顔料を提供する。
【解決手段】外部磁場が397.9kA/mの際の保磁力(kA/m)を比表面積(m/g)で割った値Kが、1.50以上3.90以下である磁性酸化鉄顔料。磁性酸化鉄顔料の比表面積は好ましくは1.1m/g以上4.0m/g以下である。化粧料組成物にこの磁性酸化鉄顔料を配合する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部磁場が397.9kA/mの際の保磁力(kA/m)を比表面積(m/g)で割った値Kが、1.50以上3.90以下である、化粧料組成物用の磁性酸化鉄顔料。
【請求項2】
比表面積が1.1m/g以上4.0m/g以下である、請求項1に記載の磁性酸化鉄顔料。
【請求項3】
吸油量が25g/100g以上40g/100g以下であり、かさ密度が0.25g/mL以上0.36g/mL以下である、請求項1又は2に記載の磁性酸化鉄顔料。
【請求項4】
第一鉄塩水溶液と水酸化アルカリとを反応させて水酸化第一鉄スラリーを形成させること、及び
水酸化第一鉄スラリーに加熱下で酸素含有ガスを吹き込んで水酸化第一鉄を酸化すること、
を含む、請求項1又は2に記載の磁性酸化鉄顔料の製造方法であって、
前記水酸化第一鉄スラリー中のFe濃度が25g/L以上35g/L以下であること、及び、
水酸化第一鉄を形成していない水酸化物イオン(OH)濃度が80mmol/L以上240mmol/L以下となるような量で水酸化アルカリを添加することを特徴とする上記製造方法。
【請求項5】
請求項1又は2に記載の磁性酸化鉄顔料の表面に被覆を有する酸化鉄顔料。
【請求項6】
請求項1又は2に記載の磁性酸化鉄顔料を含有する、化粧料組成物。
【請求項7】
肌用化粧料である、請求項6に記載の化粧料組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化粧料組成物の用途に使用される、形状異方性を有する磁性酸化鉄顔料、及びその製造方法並びにそれを使用する化粧料組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
化粧料は多くの場合、使用者に健康的な印象を与えることを目的の一つとしているため、一般的にイメージされるのは、明るい色調のものである。にもかかわらず、化粧料用の黒色顔料のニーズは大きい。黒色顔料は、染毛剤やボディペイントの用途にも使用されるが、肌用化粧料の用途にも多く使用される。多様な肌に合わせた化粧料が必要とされていることは、近年では常識と言って良く、その際に色味の調整剤として多く使用される。更に、使用者の、特に顔に対して立体的な印象を与えるための化粧料も、黒色顔料の用途の一つである。
【0003】
化粧をする際に顔全体を均一に明るい色調にすると、かえって不自然な印象を与えてしまうことがある。逆に、暗い色味の化粧料を用いて、ほお骨の周囲、目の周り、唇やその周辺の陰影を際立たせると、自然な印象を与える上に、顔全体が引き締まった、いわゆる「小顔」に見える。これは、日本化粧品技術者会が定義する「フリップフロップ効果」とほぼ同じ原理を利用している。上記の暗い色味を実現するために、黒色の顔料が必要とされている。
【0004】
従来、黒色顔料としてはカーボンブラックが広く使用されていた。しかし近年、カーボンブラックは一部の国や地域では、健康への影響を理由に使用が規制されている。このため、安全性がより高い黒色顔料として、酸化鉄からなる顔料が注目されている。本出願人も、特開2016-000763号公報(特許文献1)において、カーボンブラックの代替に用いることができる高着色力黒酸化鉄を提供した。
【0005】
しかしながら、特許文献1の高着色力黒酸化鉄は、その高い着色力故に、立体的な印象を与える、という点において必要とされる以上に暗い色味になり易く、改善の余地があった。特開2010-174003号公報(特許文献2)では、目や眉の輪郭を明確にする効果を有する化粧料として、平均粒径5~30μmの鱗片状ガラスと黒色酸化鉄からなるメークアップ化粧料が提示されている。
【0006】
一方で、黒色顔料を用いた化粧料は、不要になった際に除去するのが難しい、という課題があった。黒色顔料を用いたメイクを完全に除去するためには、メイク落としに時間が掛かったり、強いクレンジング剤を使用して肌荒れを引き起こしたり、といった問題があった。特許文献2は、落とし易さに関しては何ら言及されていない。また、特許文献2の化粧料は、鱗片状ガラスと酸化鉄顔料を併用するために色分かれが発生する恐れがあり、更に塗布した部位が光沢を持つため、使用者の置かれた状況によっては好ましくない印象を与えてしまうことがある。特開平02-207014号公報(特許文献3)では、クレンジングの際の洗浄性が著しく良好である超微粒子マグネタイトを使用した化粧料組成物が提示されている。しかし、特許文献3では立体的な印象に関しては何ら言及されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2016-000763号公報
【特許文献2】特開2010-174003号公報
【特許文献3】特開平02-207014号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明では、特に肌に塗布することで、使用者の顔に立体的な印象を与え、更に必要がなくなった際には容易に除去することが可能な化粧料組成物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
発明者等は上記の課題について鋭意検討した結果、外部磁場が397.9kA/mの際の保磁力(kA/m)を比表面積(m/g)で割った値Kが、1.50以上3.90以下である、磁性酸化鉄顔料を配合することで、使用者の顔に立体的な印象を与え、更に必要がなくなった際には容易に除去することが可能な化粧料組成物を提供できることを見出した。本発明は、これらに限定されないが、以下を含む。
[1]外部磁場が397.9kA/mの際の保磁力(kA/m)を比表面積(m/g)で割った値Kが、1.50以上3.90以下である、化粧料組成物用の磁性酸化鉄顔料。
[2]比表面積が1.1m/g以上4.0m/g以下である、[1]に記載の磁性酸化鉄顔料。
[3]吸油量が25g/100g以上40g/100g以下であり、かさ密度が0.25g/mL以上0.36g/mL以下である、[1]又は[2]に記載の磁性酸化鉄顔料。
[4]第一鉄塩水溶液と水酸化アルカリとを反応させて水酸化第一鉄スラリーを形成させること、及び
水酸化第一鉄スラリーに加熱下で酸素含有ガスを吹き込んで水酸化第一鉄を酸化すること、
を含む、[1]又は[2]に記載の磁性酸化鉄顔料の製造方法であって、
前記水酸化第一鉄スラリー中のFe濃度が25g/L以上35g/L以下であること、及び、
水酸化第一鉄を形成していない水酸化物イオン(OH)濃度が80mmol/L以上240mmol/L以下となるような量で水酸化アルカリを添加することを特徴とする上記製造方法。
[5][1]又は[2]に記載の磁性酸化鉄顔料の表面に被覆を有する酸化鉄顔料。
[6][1]又は[2]に記載の磁性酸化鉄顔料を含有する、化粧料組成物。
[7]肌用化粧料である、[6]に記載の化粧料組成物。
【発明の効果】
【0010】
本発明の磁性酸化鉄顔料は、化粧料組成物に配合した際に、ほほ骨の周囲等、顔面上の適切な部位に塗布することによって、使用者の顔に立体的な印象を与えることが可能で、更に顔全体を、いわゆる「小顔」に見せることができる。
【0011】
更に、本発明の磁性酸化鉄顔料を配合した化粧料は、必要がなくなった際には、容易に除去することができるため、メイク落としに掛ける時間を短縮することが可能であり、更にクレンジング剤の使用量を低減して肌荒れを抑えることができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(磁性酸化鉄顔料)
本発明の磁性酸化鉄顔料は、外部磁場が397.9kA/mの際の保磁力(kA/m)を比表面積(m/g)で割った値Kが、1.50以上3.90以下である。好ましくは比表面積は1.1m/g以上4.0m/g以下である。本発明の磁性酸化鉄顔料は、化粧料組成物に配合する用途で用いられる。
【0013】
本発明の磁性酸化鉄顔料の値Kが上記の範囲であることと、本磁性酸化鉄顔料を化粧料組成物に配合した際の特性の関係は明らかになっていないが、以下のように考えられる。顔料を構成する粒子の形状は、反射光の強度、色味、凝集力、肌に対する付着力に大きく影響する。ここで、一般的に酸化鉄の保磁力は、粒子形状及び比表面積の影響を強く受けるため、保磁力を比表面積で割った値Kは粒子の形状異方性の程度を表すパラメーターとして機能する。値Kが一定範囲にある本発明の磁性酸化鉄顔料は、反射光の強度等が、使用者の顔に立体的な印象を与え、かつ容易に除去することができる、という効果に対して適度な範囲にあると言える。値Kの下限は、より好ましくは2.30以上、更に好ましくは2.40以上、一層好ましくは2.70以上であり、上限はより好ましくは3.50以下である。比表面積はBET一点法にて測定する。保磁力の測定方法は後述する。
【0014】
磁性酸化鉄顔料の比表面積は好ましくは1.1m/g以上4.0m/g以下である。比表面積が上記の範囲内である磁性酸化鉄顔料は、着色力、肌の凹みへの入り込みやすさや付着性、入射光の反射率が本発明の効果に対して適度な範囲となりやすい。比表面積の下限はより好ましくは1.5m/g以上、上限はより好ましくは3.5m/g以下、更に好ましくは3.0m/g以下、一層好ましくは2.6m/g以下である。
【0015】
本発明の磁性酸化鉄顔料は、吸油量が25g/100g以上40g/100g以下であることが好ましい。吸油量が25g/100g以上であれば黒色顔料が化粧料組成物中の他の材料と馴染みが良く、40g/100g以下であれば、ベタつきにくいため均一に塗布し易い。吸油量の下限は、より好ましくは28g/100g以上であり、吸油量の上限は、より好ましくは35g/100g以下、一層好ましくは32g/100g以下である。吸油量の測定方法は後述する。
【0016】
本発明の磁性酸化鉄顔料は、かさ密度が0.25g/mL以上0.36g/mL以下であることが好ましい。かさ密度が0.25g/mL以上であれば粒子間のすき間が小さいため、色味が白っぽくなることを防ぐことが可能であり、0.36g/mL以下であれば、感触が重くならないため均一に塗布し易い。下限はより好ましくは0.26g/mL以上、一層好ましくは0.28g/mL以上であり、上限はより好ましくは0.34g/mL以下、一層好ましくは0.33g/mL以下である。かさ密度の測定方法は後述する。
【0017】
本発明の磁性酸化鉄顔料を構成する粒子は、平均粒子径が0.50μmより大きく、1.00μmより小さいことが好ましい。平均粒子径が0.50μmより大きければ、顔料が洗浄後に肌の凹み部分に残りにくく、平均粒子径が1.00μmより小さければ、肌に塗布した際の感触が良好となる。下限は、より好ましくは0.60μmより大きく、上限は、より好ましくは0.80μmより小さい。粒子径の測定方法は後述する。
【0018】
本発明の磁性酸化鉄顔料を構成する粒子は、なるべくサイズ及び形状が同一であることが好ましい。粒子形状やサイズが大きく異なる粒子が混在していると、製品の特性が安定しなくなるため、好ましくない。あくまで目安としては、粒子形状については走査型電子顕微鏡で本発明の磁性酸化鉄顔料を観察した際に、周囲の粒子と比較して明らかに形状が異なる粒子の割合が5%より小さいことが好ましい。また粒子サイズについては、粒子径の小粒径側からの累積個数が全粒子個数の50%、90%及び95%における粒子径をそれぞれD50、D90、D95としたときに、D90/D50及びD95/D50の値が3を超えないことが好ましく、2.5を超えないことが更に好ましい。
【0019】
本発明の磁性酸化鉄顔料の結晶子径については、特に限定されないが、100nm以下であることが好ましい。本発明の磁性酸化鉄顔料の結晶子径が100nm以下であれば、反射光の強度及び顔料の色味が、使用者の顔に立体的な印象を与える、という観点から適切な範囲となる。下限は特に限定されないが、好ましくは10nm以上である。
【0020】
本発明の磁性酸化鉄顔料は、主に酸化鉄からなるものであって、酸化鉄を構成するFe及びOを除く元素の含有量については、特に限定されない。化粧料組成物に添加する用途で使用することから、重金属元素については含有しない方がよい。また、リンやケイ素は顔料の特性が変動する要因となるため、含有しない方がよい。好ましくは、ケイ素の含有量は3g/kgより小さく、リンの含有量は1g/kgより小さい。ケイ素の含有量は、一層好ましくは1g/kgより小さい。これらの物質の含有量については、ICP、ICP-MS又は蛍光エックス線分析で測定する。
【0021】
本発明の磁性酸化鉄顔料を構成する粒子は、後述する表面処理を実施する場合を除き、粒子表面と粒子内部の組成は同一であることが好ましい。特に粒子表面に特定の化学種が偏在する場合は、化粧料組成物に添加して使用した際に化学種が溶出する可能性が存在するため、好ましくない。
【0022】
本発明の磁性酸化鉄顔料を構成する粒子は、化粧料組成物の用途で使用する際には分散媒中に分散させることが望ましい。分散媒中では、粒子同士が互いに凝集又は結着していないことが望ましく、分散が不十分な場合は、分散媒を変更したり、後述するように表面処理を実施することが望ましい。また、一般的に、化粧料組成物中の樹脂成分との結着力が強いことは、分散性の観点から好ましくない。
【0023】
本発明の化粧料組成物に配合するための磁性酸化鉄顔料は、例えば化粧料組成物を製造する際の分散媒体中での分散安定性及び耐久性向上の目的のため、その顔料粒子の表面の少なくとも一部に、アルミニウム、珪素、亜鉛、チタニウム、ジルコニウム、鉄、セリウム及びスズ等の金属の酸化物、水酸化物又はオキシ水酸化物のような無機物の被覆層を付してもよい。また、上記以外の金属塩を無機物の被覆として用いてもよい。また、粒子表面の少なくとも一部に、疎水処理に代表される表面改質を施すために、有機物の被覆層を付してもよい。有機物の被覆としては、ジメチルポリシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン等のシリコーン化合物、シラン系、アルミニウム系、チタニウム系及びジルコニウム系等のカップリング剤、パーフルオロアルキルリン酸化合物等のフッ素化合物、炭化水素、レシチン、アミノ酸、ポリエチレン、ロウ、金属石けん等を処理することを挙げることができる。これらの処理を複数組み合わせて実施してもよく、その際処理の順番に特に制限はない。
【0024】
本発明の化粧料組成物に配合するための磁性酸化鉄顔料は、化粧料組成物に配合するための材料を製造する者の常識の範囲で、製造後に洗浄や精製を行うことが好ましい。顔料中に不純物が残存していると、化粧料としての機能に影響する可能性がある。
【0025】
(製造方法)
本発明の磁性酸化鉄顔料の製造方法について詳細に説明する。
本発明の磁性酸化鉄顔料は、第一鉄塩水溶液と水酸化アルカリとを反応させて水酸化第一鉄スラリーを形成させること、及び水酸化第一鉄スラリーに加熱下で酸素含有ガスを吹き込んで水酸化第一鉄を酸化すること、を含む製造方法により製造される。この際、水酸化第一鉄スラリー中のFe濃度を25g/L以上35g/L以下とし、また、水酸化第一鉄を形成していない水酸化物イオン(OH)濃度が80mmol/L以上240mmol/L以下となるような量で水酸化アルカリを添加する。
【0026】
第一鉄塩水溶液と水酸化アルカリとを反応させる(中和反応)際には、不活性ガス雰囲気中で行うことが好ましい。また、水酸化第一鉄に加熱下で酸素含有ガスを吹き込む際には、pH及び温度を管理しながら行うことが好ましい。
【0027】
第一鉄塩水溶液としては、硫酸第一鉄、塩化第一鉄、硝酸第一鉄等が挙げられるが、一般的には硫酸法酸化チタン製造の副生成物である硫酸第一鉄や、鉄材及び鋼材の洗浄に伴って生成する硫酸第一鉄を使用する。また水酸化アルカリとしては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム等のアルカリ金属、アルカリ土類金属の水酸化物並びに水酸化アンモニウム、アンモニアガスを用いることができる。
【0028】
最初に第一鉄塩水溶液と水酸化アルカリとを混合して中和反応を起こし、水酸化第一鉄を生成する。水酸化アルカリに第一鉄塩水溶液を加えても良いし、その逆でも良い。液量や濃度の微調整のために、どちらか、あるいは両方の液を二回以上に分けて加えても良い。比表面積及び値Kが所望の範囲内である顔料を得るためには、槽内のFe濃度を25g/L以上35g/L以下とする必要がある。また、水酸化物イオン(OH)の添加量が、鉄イオン(II)1.0molに対して2.0molを超える必要がある。混合終了時には添加した水酸化物イオン(OH)はスラリー中の鉄イオン(II)と水酸化第一鉄を形成するが、水酸化第一鉄を形成していない遊離の水酸化物イオン(OH)がスラリー中に80mmol/L以上240mmol/L以下残存するような量で水酸化物イオン(OH)を添加することが望ましい。遊離の水酸化物イオン(OH)濃度の下限は、好ましくは120mmol/L以上、一層好ましくは150mmol/L以上であり、濃度の上限は、好ましくは200mmol/L以下である。
【0029】
中和反応終了後に鉄イオン(II)、鉄イオン(III)、水酸化アルカリのいずれも槽内に追加することはない。本発明の酸化鉄顔料を製造する際には、ケイ素やリンを添加する必要はない。
【0030】
中和反応の際に、第一鉄塩水溶液と水酸化アルカリとを液中に酸素が存在する状態で混合すると、酸化の状態を制御することが困難となるため、中和反応中は反応槽内を不活性雰囲気とすることが好ましい。反応槽中に窒素ガスを吹き込みながら中和反応を行うのが一般的である。中和反応を行う際の液温は特に制限されないが、25℃以上45℃以下が好ましい。25℃以上であれば反応速度が十分大きく、また45℃以下であれば、水酸化第一鉄以外の物質が生成し難い。下限は、更に好ましくは35℃以上である。
【0031】
中和反応後の水酸化第一鉄を含むスラリーに加熱下で酸素含有ガスを吹き込んで水酸化第一鉄を酸化して酸化鉄を得る。この際、スラリーを80℃以上96℃以下で保持することが好ましい。酸素含有ガスとしては、例えば、空気や、空気と窒素の混合ガスを用いることができる。後述する方法で測定する酸化率が67mol%以上71mol%以下となるまで水酸化第一鉄を酸化することが好ましい。酸化中に上記の温度でスラリーを保持すれば、工業的な効率が良く、また酸化率の制御が容易となる。より好ましくは、上記の保持温度の下限は85℃以上であり、上限は92℃以下である。酸化は、目標とする酸化率に達するまで中断せずに行い、途中でスラリー中に新たな物質を添加することはない。酸化速度は特に限定されないが、あまりに酸化速度が大きい場合、所望の酸化率で酸化を停止することが難しくなる。あくまで目安としては、14mol%/h以上48mol%/h以下が好ましい。酸化率は、以下の方法で測定することができる:
スラリーに濃硫酸を加えて加熱し、スラリー内の酸化鉄からなる粒子を溶解する。過マンガン酸カリウム水溶液を用いて、溶液中の鉄(II)イオンを滴定し、この時の滴定量を「滴定量A」とする。次に水銀アマルガムを用いて、溶液中の全ての鉄(III)イオンを鉄(II)イオンに還元した後、再度過マンガン酸カリウム水溶液を用いて、溶液中の鉄(II)イオンを滴定し、この時の滴定量を「滴定量B」とする。以下の式を用いて酸化率を算出する:
酸化率(mol%)=100×(滴定量B-滴定量A)/滴定量B。
【0032】
酸化が終了したら、不活性雰囲気で酸を添加してスラリーのpHが6.5となるまで中和することが好ましい。この際、スラリー中の水素イオン濃度に大きな濃度差が生じないように、槽内をよく撹拌しながら酸を徐添することが望ましい。酸の種類は特に限定されないが、希硫酸に代表される、酸化力がなく、また顔料の表面に残留しにくい酸を用いることが好ましい。中和が完了したら、不活性雰囲気下で撹拌しながら、スラリーを常温まで放冷する。
【0033】
スラリーは公知の方法でろ過し、更に水洗して表面の酸やアルカリを除去することで、磁性酸化鉄顔料を得ることができる。ろ過、洗浄後の磁性酸化鉄顔料は水分を除去するために、公知の方法で乾燥させることができるが、100℃以上で乾燥させると、残留した水分と熱の影響で酸化が進行する恐れがあるため、望ましくない。乾燥後の磁性酸化鉄顔料は、公知の方法で粉砕することができる。
【0034】
得られた磁性酸化鉄顔料は、必要に応じて、粒子表面を無機物及び/又は有機物を含む層で被覆しても良い。被覆を付与する場合は、無機物を含む層又は有機物を含む層を一層又は二層以上被覆しても良い。二層以上被覆する場合には、同一又は異なる種類の無機物を含む層又は有機物を含む層を二層以上被覆しても良いし、無機物を含む層の上に有機物を含む層を被覆しても良いし、有機物を含む層の上に無機物を含む層を被覆しても良い。
【0035】
無機物を含む層で被覆する場合、磁性酸化鉄顔料を一旦水中に分散し、所定量の無機金属塩を添加して無機金属塩を不溶性の水和酸化物にすることにより、酸化物粒子の表面を無機化合物で被覆することができる。これらの処理の際に、磁性酸化鉄顔料中の成分が被覆層に溶出することはない。本発明に使用できる無機金属塩としては、アルミニウム、ケイ素、亜鉛、チタニウム、ジルコニウム、セリウム及び錫等の金属の水酸化物又は酸化物を形成することができるものであれば特に制限されないが、好ましくはアルミン酸ナトリウム、硫酸アルミニウム、硝酸アルミニウム、塩化アルミニウム、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム、四塩化ケイ素、硫酸亜鉛、塩化亜鉛、硫酸チタン、四塩化チタン、オキシ塩化ジルコニウム、硫酸ジルコニウム、硝酸ジルコニウム、塩化セリウム、硝酸セリウム、酢酸セリウム、塩化錫、硫酸第一錫、錫酸ナトリウム等を挙げることができる。
【0036】
撥水及び/又は撥油化のため、本発明の磁性酸化鉄顔料を有機物を含む層で被覆しても良い。この場合の有機物としては、ジメチルポリシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン等のシリコーン系化合物、シラン系、アルミニウム系、チタニウム系及びジルコニウム系等のカップリング剤、パーフルオロアルキルリン酸化合物等のフッ素化合物、炭化水素、レシチン、アミノ酸、ポリエチレン、ロウやラウリン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸等の脂肪酸等が挙げられる。
【0037】
(化粧料組成物)
本発明の磁性酸化鉄顔料は、化粧料組成物に配合して使用される。本発明の磁性酸化鉄顔料を含有する化粧料組成物は、本発明の一態様である。
【0038】
本発明の磁性酸化鉄顔料を含有する化粧料組成物は、使用者の顔に立体的な印象を与えることが可能であり、また不要となった際には容易に除去することができる。更に、本発明の磁性酸化鉄顔料を含有する化粧料組成物は凝集が生じにくい。これらの特徴を活かし、本発明の磁性酸化鉄顔料は、特に肌用化粧料として使用するのに好適である。
【0039】
また、本発明の磁性酸化鉄を含む化粧料組成物は、肌用化粧料以外の化粧料としても使用することができる。一例としては、アイライナーや口紅等として、目の周りや唇に対して使用する用途が挙げられる。また、本発明の磁性酸化鉄顔料は、使用後は容易に除去できる、という特性を活かし、顔以外に使用する化粧料組成物に使用する用途や、化粧料組成物で従来使用していた黒色酸化鉄顔料を代替する用途にも使用することができる。
【0040】
化粧料組成物の形態は特に制限されず、液状化粧料、固体化粧料、ゲル状化粧料のいずれでもよい。液状化粧料としては、剤型は水性分散液、油性分散液、ローション状等のいずれの状態であってもよく、例えばメークアップベース、コントロールカラー、日焼け止め化粧料、アイシャドー、アイライナー、マスカラ、チークカラー、マニキュア等のメークアップ化粧料、スキンケア化粧料、ヘアケア化粧料、永久染毛剤、半永久染毛剤、一次染毛剤、ネイル化粧料等とすることができる。固体状化粧料としては、剤型は粉末状、粉末固形状、ペースト状、油性固形状等のいずれの状態であってもよく、例えばメークアップベース、ファンデーション、ルースパウダー、ほほ紅、コンシーラー、アイブロウ、フェイスパウダー、コントロールカラー、マスカラ、チークカラー、ボディーパウダー、プレストパウダー、パヒュームパウダー、ベビーパウダー等のメークアップ化粧料、スキンケア化粧料、ヘアケア化粧料等とすることができる。ゲル状化粧料は、本発明の化粧料組成物の態様の一つである。剤型としてはクリーム状、乳液状、油性液状、ペースト状等のいずれの状態であってもよく、例えばメークアップベース、コントロールカラー、日焼け止め化粧料、口紅、アイシャドー、アイライナー、マスカラ、リップクリーム、リップカラー、リップグロス、マニキュア等のメークアップ化粧料、スキンケア化粧料、ヘアケア化粧料等とすることができる。
【0041】
色を付けることが必須ではない化粧料も、本発明の化粧料組成物の一態様であり、シャンプー、リンス、ボディーシャンプー、洗顔フォーム、洗顔パウダー、石けん、粉末入浴剤、ピールオフパック、練り歯磨き等にも使用することができる。
【0042】
化粧料組成物の製造方法は、特に制限されない。本発明の磁性酸化鉄顔料に、化粧料組成物に必要な他の材料を組み合わせることにより、製造することができる。例えば、磁性酸化鉄顔料と他の成分とを混合し、液状、固体状、ゲル状などの所望の剤型とすることにより製造することができる。例えば、固体状の化粧料組成物とする場合には、各成分の混合後に必要に応じて乾燥、成型等を行うことができる。混合、乾燥、成型等で使用する装置は特に制限されない。
【0043】
本発明の化粧料組成物は、上記の特徴を有する本発明の磁性酸化鉄顔料を0.1g/kg以上500g/kg以下含有することが望ましい。磁性酸化鉄顔料の配合量が500g/kg以下であると、化粧料組成物が粉っぽい感触となることを防ぎ、広範囲に塗り広げやすくなる。上限はより好ましくは400g/kg以下、更に好ましくは300g/kg以下、一層好ましくは250g/kg以下である。
【0044】
本発明の化粧料組成物は、着色剤として本発明の磁性酸化鉄顔料のみを使用してもよいし、また、本発明の効果を損なわない量的、質的範囲内で他の顔料を加えて色味を調整してもよい。通常併用できる無機顔料には、酸化チタン、酸化亜鉛、赤色酸化鉄、黄色酸化鉄、黒色酸化鉄、茶色酸化鉄、群青、紺青、ベンガラ、酸化セリウム、タルク、白雲母、合成雲母、金雲母、黒雲母、合成フッ素金雲母、雲母チタン、雲母状酸化鉄、セリサイト、ゼオライト、カオリン、ベントナイト、クレー、ケイ酸、無水ケイ酸、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、ケイ酸カルシウム、硫酸バリウム、硫酸マグネシウム、硫酸カルシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、チッ化ホウ素、オキシ塩化ビスマス、アルミナ、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム、酸化クロム、カラミン、ヒドロキシアパタイト及びこれらの複合体等を用いることができる。同じく併用できる有機顔料には、シリコーン粉末、シリコーン弾性粉末、ポリウレタン粉末、セルロース粉末、ナイロン粉末、ウレタン粉末、シルク粉末、PMMA粉末、スターチ、ポリエチレン粉末、ポリスチレン粉末、カーボンブラック、タール色素、天然色素、ステアリン酸亜鉛等の金属石けん等及びこれらの複合体等を用いることができる。本発明の化粧料組成物に対して本発明の磁性酸化鉄顔料以外の顔料を加える場合、加える顔料としては、色分かれを防止する観点から、上記の中でも、赤色酸化鉄、黄色酸化鉄、及び/又は茶色酸化鉄が好ましい。また、他の黒色酸化鉄と併用しても良い。
【0045】
本発明の磁性酸化鉄顔料を含有する化粧料組成物には、目的に応じて本発明の効果を損なわない量的、質的範囲内で顔料以外の他の成分を配合することができる。例えば、油性成分、色素、pH調整剤、保湿剤、増粘剤、界面活性剤、分散剤、安定化剤、着色剤、防腐剤、酸化防止剤、金属封鎖剤、収れん剤、消炎剤、紫外線吸収剤、香料、研磨剤等のうち1つ以上を適宜配合することができる。特に、マイカに代表される板状化合物を配合すると、化粧料組成物のすべり性が良好となるので、望ましい。
【0046】
実施例の説明に先立ち、本発明で用いた評価方法について説明する。
[評価項目及び評価方法]
[BET比表面積]
Micromeritics Instrument Corporation製GeminiVII2390を用いて、BET一点法にて測定した。
【0047】
[値K]
東英工業株式会社製振動試料型磁力計VSM-3を使用し、外部磁場397.9kA/mの際の保磁力:Hc(kA/m)を測定した。以下に操作の詳細を示す。なお、本測定において外部磁場値の「-」は、磁場の方向が「+」の場合とは逆であることを示す。また、操作は室温を23℃に保った室内で実施した。
【0048】
まず、標準試料を使用し、振動試料型磁力計の+397.9kA/m(5kOe)印加時の磁化を5EMUに調整した。底面積38.47mm、高さ7mm、内容量が0.05655cmの円柱形のセルに、試料粉末を充填密度として2.20g/cm以上2.40g/cm以下の範囲になるように充填した。円柱状セルの高さ方向が鉛直になるように装置内にセットし、外部磁場を+397.9kA/mに設定し、外部磁場が0A/mから試料への印加を行った。79.6kA/m付近より印加速度を下げ、+79.6kA/m以上では印加速度を最低の20min/Full-scaleにし、+397.9kA/mを超えないように印加した。+397.9kA/m印加した状態で1s程度保持した後、磁場を反転して-397.9kA/mまで、逆方向に帯電を印加した。+397.9kA/mまで印加した時と同様に、-79.6kA/m以上の負帯電では印加速度を下げ、-79.6kA/m以上の負帯電での印加速度は最低の20min/Fullscaleにし、-397.9kA/mを超えて負帯電を印加しないようにした。磁場を反転した後、試料の磁化が減少することを確認し、印加速度を調整しながら、試料の磁化の変化を追跡し、試料の磁化がゼロとなる時の外部磁場の絶対値を-Hc(kA/m)とした。外部磁場が-397.9kA/mとなった状態で1s程度保持した後、磁場を反転し、0kA/mから+397.9kA/mまで印加した時と同様の手順で、再度+397.9kA/mまで印加した。磁場を反転した後、試料の磁化の絶対値が減少することを確認し、先ほどと同様に印加速度を調整しながら試料の磁化を追跡し、試料の磁化がゼロとなる時の外部磁場の値をHc(kA/m)とした。
上記の操作により読み取ったHcとHcの平均値を保磁力Hc(kA/m)とし、保磁力HcをBET比表面積で除した値を、値Kとした。
【0049】
[平均粒子径]
日本電子株式会社製透過型電子顕微鏡JEM-1400plusを用いて測定した。観察倍率は、45000倍(透過型電子顕微鏡の観察倍率15000倍×印画3倍)とした。粒子に合わせて面積が等しい円を作成し、その直径を粒子径とした。観察視野内の約300個の粒子について上記の操作を実施し、粒子径の長さの平均値を、本発明における平均粒子径とした。
【0050】
[吸油量]
磁性酸化鉄顔料の試料2.0gを板ガラス上に広げ、煮あまに油を少量ずつ試料中央に滴下し、その都度試料全体をヘラで混ぜ、試料と煮あまに油を練り合わせた。試料全体が均一なパテ上の塊になった時点を終点とした。使用した煮あまに油をe(mL)とすると、吸油量(g/100g)は、46.75×eとなる。
【0051】
[かさ密度]
JISK5101-12-1に準拠した方法で評価した。規格を満たした見掛け密度測定装置の漏斗台に、漏斗と目開き45μmのふるいとをのせ、容積15mLの大さじ一杯分の磁性酸化鉄顔料の試料をふるい上にのせ、硬い毛の筆でふるいの全面を均等に軽く掃いて、試料を分散落下させ、漏斗台の下の受器で受けた。試料が受器に山盛りとなるまでこの操作を繰返した。次にヘラで山の部分を削りとったのち、受器の内容物の質量を計量した。内容物の質量をa(g)とすると、かさ密度d(g/mL)は、以下の式で算出される:
d=a/30。
【0052】
[立体的な印象]
実施例及び比較例の磁性酸化鉄顔料0.25gを、石原産業株式会社製酸化チタンC-50R0.15gと混合し、混合顔料を準備した。混合顔料をパネラー5人に、顔の主にほお骨の周辺に塗布してもらい、視覚的な印象を評価した。
(評価基準)
・使用者の顔が、立体的に見えた:4点
・使用者の顔が、意識して見れば立体的に見えた:3点
・使用者の顔の印象は、塗布前と変わらなかった:2点
・使用者の顔に対し、かえってのっぺりとした印象を受けた。:1点
(判定基準)
試料毎に平均点を算出し、小数点1桁で切り上げた。
【0053】
[落とし易さ]
混合顔料0.15gを手の平にのせ、指で強くすり込んだ後、余った混合顔料をキムワイプ(登録商標)で拭った。その後、手を濡らし、市販の家庭用液体石けん(以下「液体石けん」と記す)を用いて手を洗浄した。黒い色が残っていれば、再度手を濡らし、市販の固形石けん(以下「固形石けん」と記す)を用いて再度手を洗浄した。なお、一般的に固形石けんは液体石けんと比較して石けん成分の割合が大きいため、液体石けんよりも洗浄力が大きい。
(評価基準)
・液体石けんで手を洗浄すると手の平から黒い部分が完全になくなった:4点
・液体石けんで洗浄しても黒い部分が残っていたが、固形石けんで1回洗浄すると手の平 から黒い色が完全になくなった:3点
・何度も(2回以上)固形石けんを使用して手を洗うと、手の平から黒い部分がほとんど (洗浄前と比較して、目測で95%以上が)除去できた:2点
・固形石けんで何度も(2回以上)洗浄しても、手の平に黒い部分が明らかに(洗浄前と 比較して目測で5%以上)残っていた:1点
(判定基準)
試料毎に平均点を算出し、小数点2桁目を四捨五入した。
【実施例0054】
以下に実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明する。以下に挙げる例は単に例示のために記すものであり、発明の範囲がこれによって制限されるものではない。
なお、実施例及び比較例中に記載の撹拌操作では、液量や液の粘度、容器の形状といった、撹拌時の液の挙動に関係する性状を考慮し、液全体が均一に混合され、かつ飛沫が周囲に飛び散らないように回転数を適切に調整している。また、水酸化ナトリウムなど、一般的な市販品であればどの企業の製品を使用しても同じ効果が得られる場合、製造元及び販売元の企業名を省略している。
【0055】
[実施例1]
反応槽に17kgの水酸化ナトリウムを含む水溶液150Lを入れた。液温を40℃とし、窒素を毎分80L送気しながら、Feとして12kg分を含む硫酸第一鉄水溶液を反応槽に添加し、10min程度撹拌した。反応槽内のFe濃度を測定し、水を加えてFe濃度を30.0g/Lに調整した。更に水酸化ナトリウム水溶液を添加し、スラリー中の水酸化物イオン(OH)濃度を160mmol/Lに調整した。反応槽を88℃に昇温し、窒素の送気を停止して空気を毎分60L送気し、酸化反応を開始した。酸化率が67%以上71%以下となったら空気の送気を停止し、窒素を毎分80L送気しながら、希硫酸でスラリーpHを6.5に調整し、窒素雰囲気下で撹拌しながら室温まで放冷した。スラリーをろ過し、ろ液の電気伝導度が200μS/cm以下となるまで水道水で洗浄した。洗浄ケーキは90℃で3h乾燥した。乾燥物は東京アトマイザー製造株式会社製TASM-1型サンプルミル(以下「アトマイザー」と略記する)を用いて粉砕し、磁性酸化鉄顔料を得た。得られた磁性酸化鉄顔料は黒色のざらざらした粒で、平均粒子径が0.65μm、BET比表面積が2.1m/g、値Kが3.15kAg/m、吸油量が30g/100g、かさ密度が0.31g/mL、D90/D50は1.4、D95/D50は1.5であった。また、得られた磁性酸化鉄顔料を酸化チタンと混合した混合顔料を用いた官能試験では、立体的な印象の平均値が3.8点、落とし易さの平均値が3.9点であった。
【0056】
[実施例2]
スラリー中の水酸化物イオン(OH)濃度を90mmol/Lに調整した以外は実施例1と同様にして、磁性酸化鉄顔料を得た。得られた磁性酸化鉄顔料は黒色のざらざらした粒で、平均粒子径が0.51μm、BET比表面積が2.7m/g、値Kが2.35kAg/m、吸油量が29g/100g、かさ密度が0.26g/mL、D90/D50は1.3、D95/D50は1.4であった。また、得られた磁性酸化鉄顔料を酸化チタンと混合した混合顔料を用いた官能試験では、立体的な印象の平均値が3.5点、落とし易さの平均値が3.5点であった。
【0057】
[実施例3]
スラリー中の水酸化物イオン(OH)濃度を180mmol/Lに調整した以外は実施例1と同様にして、磁性酸化鉄顔料を得た。得られた磁性酸化鉄顔料は黒色のざらざらした粒で、平均粒子径が0.72μm、BET比表面積が1.9m/g、値Kが3.41kAg/m、吸油量が31g/100g、かさ密度が0.33g/mL、D90/D50は1.7、D95/D50は1.8であった。また、得られた磁性酸化鉄顔料を酸化チタンと混合した混合顔料を用いた官能試験では、立体的な印象の平均値が3.8点、落とし易さの平均値が3.9点であった。
【0058】
[比較例1]
チタン工業株式会社製BL-100HPを用いた。
[比較例2]
チタン工業株式会社製ABL-412HPを用いた。
【0059】
[比較例3]
チタン工業株式会社製BL-50HPを用いた。
表1は、実施例及び比較例に記載の磁性酸化鉄顔料の評価結果を示す。実施例に記載の磁性酸化鉄顔料は使用者の顔に立体的な印象を与え、かつ容易に除去することができた。これより、本発明の磁性酸化鉄顔料は、使用者の顔に立体的な印象を与える化粧料組成物の用途で好適に使用できると考えられる。
【0060】
【表1】
【0061】
以下に、本発明の磁性酸化鉄顔料を用いた化粧料組成物の処方例を示す。なお、赤色酸化鉄顔料はチタン工業株式会社製R-516HP、茶色酸化鉄顔料Aはチタン工業株式会社製BBR-213HP、茶色酸化鉄顔料Bはチタン工業株式会社製BBR-309HP、黄色酸化鉄はチタン工業株式会社製LL-100HPを使用した。酸化チタンについては、断りがない限り、石原産業株式会社製C-50Rを使用した。
【0062】
肌用化粧料は、本発明の主な使用態様の一つである。以下に、処方例を示す。
[処方例]
処方1:パウダーファンデーション
成分 配合比(g/kg)
(1)茶色酸化鉄顔料A 8.9
(2)実施例1記載顔料 1.1
(3)マイカ(トピー工業株式会社製PDM-1000) 490
(4)タルク(浅田製粉株式会社製JA-46R) 300
(5)酸化チタン 100
(6)油剤{クロダランSWL(クローダ株式会社製)、フィトスクワラン(岩瀬コスフ ァ株式会社製)、O.D.O(日清オイリオグループ株式会社製)、T.I.O (日清オイリオグループ株式会社製)、KF-56(信越化学株式会社製)を4: 4:3:3:6の割合で混合したもの} 100
(製 法)
(1)と(2)を予め手動で混合し、混合した顔料と(3)から(6)を三井三池化工機株式会社製FM-10B(以下「ヘンシェルミキサー」と記す)により均一に混合した。混合物をアトマイザーで粉砕し、金型に充填して圧縮成型し、目的のパウダーファンデーションを得た。得られたパウダーファンデーションは使用者の顔に立体的な印象を与え、また使用後は容易に除去できるものであった。
【0063】
処方2:スティック状ファンデーション
成分 配合比(g/kg)
(1)シクロペンタシロキサン 300
(2)メトキシケイヒ酸エチルヘキシル 50
(3)リンゴ酸ジイソステアリル 40
(4)キャンデリラワックス 60
(5)水添ホホバエステル 40
(6)セチルジメチコンコポリオール 20
(7)セスキイソステアリン酸ソルビタン 5
(8)シリコーン処理茶色酸化鉄顔料A(注1) 25
(9)シリコーン処理実施例1記載顔料(注1) 2
(10)シリコーン処理酸化チタン(注1) 70
(11)シリコーン処理タルク(注1) 60
(12)メタクリル酸メチルクロスポリマー(松本油脂製薬株式会社製M-305)
40
(13)精製水 残余
(14)クエン酸ナトリウム 3
(15)プロパンジオール 30
(16)グリセリン 20
(注1)信越化学工業株式会社製KF-9909で表面を処理済み
(製 法)
粉体部(8)から(12)を予めヘンシェルミキサーにて混合した。全量が仕込める容器に油相部(1)から(7)を秤量し、加熱溶解した。別の容器に水相部(13)から(16)を秤量し加熱溶解した。油相部に粉体部を加え均一に分散させ、水相部を加え乳化し、脱泡した後モールドにバルクを流し込み、室温まで徐冷し、目的のスティック状ファンデーションを得た。得られたスティック状ファンデーションは使用者の顔に立体的な印象を与え、また使用後は容易に除去できるものであった。
【0064】
処方3:プレストパウダー
成分 配合比(g/kg)
(1)シリコーン処理タルク(注1) 残余
(2)メタクリル酸メチルクロスポリマー(松本油脂製薬株式会社製M-305)
100
(3)シリコーン処理セリサイト(注1) 500
(4)シリカ(AGCエスアイテック株式会社製サンスフェア(登録商標)NP-30) 60
(5)シリコーン処理酸化チタン(注1) 55
(6)シリコーン処理実施例1記載顔料(注1) 0.5
(7)シリコーン処理赤色酸化鉄(注1) 0.5
(8)シリコーン処理茶色酸化鉄A(注1) 10
(9)メトキシケイヒ酸エチルヘキシル 30
(10)スクワラン 20
(11)防腐剤 適量
(12)抗酸化剤 適量
(注1)信越化学工業株式会社製KF-9909で表面を処理済み
(製 法)
粉体部(1)から(8)を混合粉砕して、これをヘンシェルミキサーに移し、油相部(9)から(12)を加えて均一になるよう撹拌混合した。その後アトマイザーにて粉砕した。これをアルミ皿にプレス成型し、目的のプレストパウダーを得た。得られたプレストパウダーは、使用者の顔に立体的な印象を与え、また使用後は容易に除去できるものであった。
【0065】
処方4:ほほ紅
成分 配合比(g/kg)
(1)トリエトキシカプリリルシラン処理タルク(注1) 250
(2)トリエトキシカプリリルシラン処理セリサイト(注1) 残余
(3)トリエトキシカプリリルシラン処理酸化チタン(注1) 18
(4)ステアリン酸処理酸化チタン(チタン工業株式会社製STV-455) 30
(5)トリエトキシカプリリルシラン処理黒色酸化鉄顔料(注1) 0.5
(6)トリエトキシカプリリルシラン処理赤色酸化鉄顔料(注1) 2
(7)トリエトキシカプリリルシラン処理茶色酸化鉄顔料B 8
(8)メトキシケイヒ酸エチルヘキシル 30
(9)パルミチン酸エチルヘキシル 50
(10)防腐剤 適量
(11)抗酸化剤 適量
(注1)信越化学工業株式会社製AES-3083で表面を処理済み
(製 法)
(1)から(7)をヘンシェルミキサーで混合し、これに加熱溶解した(8)から(11)を混合した後、アトマイザーにて粉砕した。これをアルミ皿にプレス成型し、目的のほほ紅を得た。得られたほほ紅は、使用者の顔に立体的な印象を与え、また使用後は容易に除去できるものであった。
【0066】
処方5:O/W乳化型ファンデーション
成分 配合比(g/kg)
(1)ステアリン酸 10
(2)イソステアリン酸 3
(3)エチルヘキサン酸セチル 40
(4)流動パラフィン70cs 110
(5)ステアレス-10 20
(6)セチルアルコール 15
(7)トリエトキシカプリリルシラン処理タルク(注1) 50
(8)トリエトキシカプリリルシラン処理茶色酸化鉄顔料A(注1) 30
(9)トリエトキシカプリリルシラン処理黄色酸化鉄顔料(注1) 5
(10)トリエトキシカプリリルシラン処理実施例1記載顔料(注1) 2
(11)トリエトキシカプリリルシラン処理酸化チタン(注1) 75
(12)トリエタノールアミン 12
(13)プロパンジオール 50
(14)キサンタンガム 2
(15)精製水 残余
(16)フェノキシエタノール 5
(注1)信越化学工業株式会社製AES-3083で表面を処理済み
(製 法)
85℃にて加熱溶解した(1)から(6)に、混合粉砕した(7)から(11)を加え、均一に分散した。これに85℃に加熱した(12)から(16)の混合物を徐々に添加して乳化を行い、室温まで撹拌冷却後、適当な容器に充填し、目的のO/W乳化型ファンデーションを得た。得られたO/W乳化型ファンデーションは、使用者の顔に立体的な印象を与え、また使用後は容易に除去できるものであった。
【0067】
処方6:2WAYケーキファンデーション
成分 配合比(g/kg)
(1)シリコーン処理タルク(注1) 残余
(2)シリコーン処理酸化チタン(注1) 100
(3)シリコーン処理マイカ(注1) 200
(4)シリコーン処理セリサイト(注1) 360
(5)ナイロンパウダー 100
(6)シリコーン処理赤色酸化鉄顔料(注1) 2
(7)シリコーン処理茶色酸化鉄顔料B(注1) 30
(8)シリコーン処理黄色酸化鉄顔料(注1) 5
(9)シリコーン処理実施例1記載顔料(注1) 2
(10)ジメチコン1000cs 60
(11)イソノナン酸イソトリデシル 30
(12)スクワラン 30
(13)トコフェロール 1
(14)1,3-ブチレングリコール 10
(注1)信越化学工業株式会社製KF-9909で表面を処理済み
(製 法)
(1)から(9)をヘンシェルミキサーで混合し、これに加熱溶解した(10)から(14)を混合した後、アトマイザーにて粉砕し、アルミ皿にプレス成型し、目的の2WAYケーキファンデーションを得た。得られた2WAYケーキファンデーションは、使用者の顔に立体的な印象を与え、また使用後は容易に除去できるものであった。
【0068】
目の周囲や唇に使用する化粧料組成物も、本発明の使用の一態様である。以下に、処方例を示す。
処方7:口紅
成分 配合比(g/kg)
(1)セレシン 100
(2)マイクロクリスタリンワックス 32
(3)パラフィン 50
(4)テトライソステアリン酸ペンタエリスリチル 200
(5)リンゴ酸ジイソステアリル 150
(6)水添ポリデセン 100
(7)ワセリン 100
(8)トリイソステアリン酸ポリグリセリル-2 残余
(9)シメチコン 1
(10)プロピルパラベン 1
(11)赤色202号 3
(12)茶色酸化鉄顔料A 20
(13)実施例1記載顔料 2
(14)酸化チタン 3
(15)シリカ 10
(製 法)
(1)から(15)を秤量し、加熱混合した。アイメックス株式会社製3本ロールミルBR-100VIII(以下「3本ロールミル」と記す)で均一に分散した後、更に加熱し均一に撹拌した。脱泡した後、型に加熱混合物を流し込み、急冷した。適当な容器に装着し、目的の口紅を得た。得られた口紅は、使用者の唇に立体的な印象を与え、また使用後は容易に除去できるものであった。
【0069】
処方8:プレスタイプアイシャドー
成分 配合比(g/kg)
(1)茶色酸化鉄顔料A 270
(2)実施例1記載顔料 3
(3)セリサイト 残余
(4)タルク 149
(5)雲母チタン(BASF社製Flamenco(登録商標) Super
Pearl 120C) 200
(6)メチルパラベン 1
(7)ジメチコン1000cs 70
(8)リンゴ酸ジイソステアリル 30
(9)イソプロピルアルコール 適量
(製 法)
(1)から(6)を混合粉砕した。ついで、別の容器に混合した(7)及び(8)を加えて均一になるよう撹拌混合した。調整した混合物を(9)に適度な粘度になるよう分散し、スラリーを適当な金皿に充填した。40℃で12時間乾燥し、目的のプレスタイプアイシャドーを得た。得られた製品は、使用者の目の周りに立体的な印象を与え、また使用後は容易に除去できるものであった。
【0070】
処方9:水性アイライナー
成分 配合比(g/kg)
(1)実施例1記載顔料 60
(2)茶色酸化鉄顔料B 25
(3)精製水 残余
(4)ラウリン酸デカグリセリル 10
(5)グリセリン 60
(6)カルボキシメチルセルロース 100g/kg水溶液 180
(7)フェノキシエタノール 5
(8)ペンチレングリコール 10
(9)酢酸ビニル樹脂エマルション(日信化学工業株式会社製ビニブラン(登録商標)
GV-5651) 450
(製 法)
(1)から(3)を秤量し、アイメックス株式会社製イージーナノRMB型ビーズミルにて(1)及び(2)を(3)中に微細に分散させた。別の容器に(4)から(8)を秤量し、70℃で顔料部を加えて均一に分散した後、室温まで冷却し(9)を加え、目的の水性アイライナーを得た。得られた水性アイライナーは、使用者の目の周りに立体的な印象を与え、また使用後は容易に除去できるものであった。
【0071】
処方10:油性アイライナー
成分 配合比(g/kg)
(1)イソステアリン酸デキストリン(千葉製粉株式会社製ユニフィルマ(登録商標)
HVY) 50
(2)マイクロクリスタリンワックス 50
(3)パルミチン酸デキストリン 100
(4)リンゴ酸ジイソステアリル 100
(5)イソドデカン 残余
(6)シリコーン処理実施例1記載顔料 255
(7)シリコーン処理茶色酸化鉄顔料B 25
(8)マイカ 200
(製 法)
(1)から(5)を秤量し、均一になるまで加熱混合した。更に混合粉砕した(6)から(8)を加えて均一になるまで加熱混合し、40℃まで冷却した後、適当な容器に充填して室温まで冷却し、目的の油性アイライナーを得た。得られた油性アイライナーは、使用者の目の周りに立体的な印象を与え、また使用後は容易に除去できるものであった。
落とし易い、という特徴を活かし、従来使用していた黒色顔料を本発明の磁性酸化鉄顔料で代替した化粧料組成物も、本発明の使用の一態様である。
【0072】
処方11:プレスドアイブロウ
成分 配合比(g/kg)
(1)酸化チタン 135
(2)実施例1記載顔料 150
(3)茶色酸化鉄顔料B 25
(4)群青 5
(5)マイカ 残余
(6)タルク 100
(7)ラノリンワックス 100
(8)流動パラフィン 40
(9)ステアリン酸グリセリン 10
(10)防腐剤 適量
(11)抗酸化剤 適量
(製 法)
混合粉砕した(1)から(6)を、加熱溶解した(7)から(11)に加えて均一になるまで混合し、圧縮成型し、目的のプレスドアイブロウを得た。得られたプレスドアイブロウは、独特の薄い色味を示し、使用後は容易に除去できるものであった。
【0073】
処方12:アイブロウペンシル
成分 配合比(g/kg)
(1)実施例1記載顔料 150
(2)茶色酸化鉄顔料B 20
(3)赤色酸化鉄顔料 10
(4)酸化チタン 45
(5)タルク 残余
(6)カオリン 150
(7)モクロウ 200
(8)ステアリン酸 100
(9)ミツロウ 50
(10)硬化ヒマシ油 50
(11)ワセリン 30
(12)ラノリン 30
(13)スクワラン 30
(14)防腐剤 適量
(15)抗酸化剤 適量
(製 法)
混合粉砕した(1)から(6)を、加熱溶解した(7)から(15)に加えて3本ロールミルにて均一練り合わせ芯に成型し、木にはさんで鉛筆状にし、目的のアイブロウペンシルを得た。得られたアイブロウペンシルは独特の薄い色味を示し、使用後は容易に除去できるものであった。
【0074】
処方13:乳化マスカラ
成分 配合比(g/kg)
(1)精製水 残余
(2)ポリビニルピロリドン 20
(3)プロパンジオール 20
(4)カチオン化セルロース 1%水溶液 100
(5)ベントナイト 5
(6)トリエタノールアミン 17
(7)メチルパラベン 2
(8)タルク 40
(9)実施例1記載顔料 90
(10)茶色酸化鉄顔料B 30
(11)カルナウバロウ 55
(12)ミツロウ 90
(13)ステアリン酸 20
(14)自己乳化型ステアリン酸グリセリル 20
(15)ステアリン酸プロピレングリコール 20
(16)水添ポリイソブテン 20
(17)シクロペンタシロキサン 40
(18)アクリル酸樹脂エマルション(大東化成工業株式会社製ダイトゾール(登録
商標)5000AD) 200
(製 法)
(1)から(7)に、予めヘンシェルミキサーにて撹拌混合した(8)から(10)を加え、撹拌機にて均一に分散した。これに加熱溶解した(11)から(17)を加えて乳化した後、40℃まで冷却し、(18)を加え、室温まで冷却し、目的の乳化マスカラを得た。得られた乳化マスカラは、独特の薄い色味を示し、使用後は容易に除去できるものであった。
【0075】
処方14:油性マスカラ
成分 配合比(g/kg)
(1)水添ポリイソブテン 20
(2)イソドデカン 残余
(3)イソステアリン酸デキストリン 50
(4)パルミチン酸デキストリン 150
(5)マイクロクリスタリンワックス 20
(6)ポリエチレンワックス 30
(7)プロピルパラベン 1
(8)タルク 60
(9)実施例1記載顔料 55
(10)茶色酸化鉄顔料B 10
(11)ジメチルシリル化シリカ 5
(12)ナイロン繊維(株式会社コスメテリアルズ製5D-8MM) 10
(製 法)
加熱溶解した(1)から(7)に、予め混合粉砕した(8)から(10)と、(11)を混合した。冷却後、(12)を均一に分散し、油性マスカラを得た。得られた油性マスカラは、独特の薄い色味を示し、使用後は容易に除去できるものであった。
洗顔や身体の汚れを落とす用途、歯磨きの用途での使用も、本発明の化粧料組成物の使用の一態様である。
【0076】
処方15:ボディーシャンプー
成分 配合比(g/kg)
(1)ラウリン酸 115
(2)ミリスチン酸 77
(3)パルミチン酸 48
(4)水酸化カリウム(純度480g/kg) 122
(5)ラウリルヒドロキシスルホベタイン 100
(6)コカミドモノエタノールアマイド 10
(7)ジステアリン酸エチレングリコール 20
(8)精製水 残余
(9)EDTA-4Na 1
(10)実施例1記載顔料 10
(11)黄色酸化鉄顔料 5
(12)タルク 4
(製 法)
(1)から(3)を70℃から80℃に加熱し、溶解させた。次いで、徐々に(4)を加え、けん化を行った。けん化が終了した時点で、残りの(5)から(9)を加え、均一になるまで撹拌した。40℃まで冷却し、これに混合粉砕した(10)から(11)を加え、撹拌混合しながら室温まで冷却し、目的のボディーシャンプーを得た。得られたボディーシャンプーは、独特の薄い色味を示し、粉っぽさがないものであった。
【0077】
処方16:石けん(固形)
成分 配合比(g/kg)
(1)脂肪酸アルカリ金属塩(ラウリン酸380g/kg、ミリスチン酸370g/kg、パルミチン酸150g/kg、ステアリン酸100g/kg)(カリウム:ナトリウム=1:5) 940
(2)コカミドプロピルベタイン 30
(3)グリセリン 20
(4)実施例1記載顔料 3
(5)茶色酸化鉄顔料A 7
(製 法)
(1)を加熱溶解させ、(2)から(5)を加えて混合し、更に3本ロールミルを用いて均一化した。次いで、得られた混合物を押出し機で混練及び加圧圧縮して棒状に押し出した後成形することによって、目的の石けんを得た。得られた石けんは、独特の薄い色味を示し、粉っぽさがないものであった。
【0078】
処方17:粉末状入浴剤
成分 配合比(g/kg)
(1)硫酸ナトリウム 860
(2)炭酸水素ナトリウム 残余
(3)グルタミン酸ナトリウム 20
(4)シリカ(AGCエスアイテック製サンスフェア(登録商標)H-52) 10
(5)実施例1記載顔料 2
(6)茶色酸化鉄顔料A 4
(7)黄色酸化鉄顔料 2
(8)バニリルブチルエーテル 2
(9)トウガラシエキス 1
(製 法)
(1)から(9)をヘンシェルミキサーにて均一に混合し、目的の粉末状入浴剤を得た。得られた粉末状入浴剤をお湯に溶かすと、木材をイメージさせるような色味を呈し、粉っぽさがないものであった。
【0079】
処方例18:ピールオフパック
成分 配合比(g/kg)
(1)PEG1500 80
(2)PEG/PPG-25/30コポリマー 60
(3)キサンタンガム 2
(4)クエン酸ナトリウム 3
(5)クエン酸 1
(6)精製水 残余
(7)ポリビニルアルコール 100
(8)ポリソルベート-80 2
(9)シリカ(AGCエスアイテック製サンスフェア(登録商標)H-51) 40
(10)タルク 80
(11)茶色酸化鉄顔料B 8
(12)実施例1記載顔料 2
(13)アクリル酸アルキル共重合体エマルション 50
(14)メチルパラベン 2
(15)エタノール 80
(製 法)
加熱溶解した(1)から(8)に、混合粉砕した(9)から(12)を加え、均一に分散した後、40℃まで冷却した。次いで、(13)から(15)を加え、室温まで撹拌冷却し、目的のピールオフパックを得た。得られたピールオフパックは、茶色系の色味を呈する、粉っぽさがないものであった。
【0080】
処方19:練り歯磨き
成分 配合比(g/kg)
(1)炭酸カルシウム 290
(2)実施例1記載顔料A 3
(3)赤色202号 5
(4)ソルビトール液 37
(5)グリセリン 35
(6)グァーガム 30
(7)蒸留水 600
(製 法)
(1)から(3)を秤量して(7)に添加し、特殊機器株式会社製ROBOMICS fMODELディゾルバーを用いて5分間撹拌した。更に撹拌しながら(4)から(6)を添加し、混合物の粘度が大きくなったら撹拌を停止した。得られた練り歯みがきは淡い色味を呈し、チューブに入れるのに十分な粘度と、歯の隙間に研磨剤が入るのに十分な流動性を兼ね備えたものとなった。