(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023170251
(43)【公開日】2023-12-01
(54)【発明の名称】エレベータ装置
(51)【国際特許分類】
B66B 7/06 20060101AFI20231124BHJP
【FI】
B66B7/06 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022081857
(22)【出願日】2022-05-18
(71)【出願人】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110002365
【氏名又は名称】弁理士法人サンネクスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】井手 康一朗
【テーマコード(参考)】
3F305
【Fターム(参考)】
3F305BB04
3F305BB14
3F305BB19
3F305BC19
(57)【要約】
【課題】
乗りかごの移動による巻上機及び主索に対する負荷の変動量を低減する。
【解決手段】
エレベータ装置1は、乗りかご4と、主索5と、巻上機10と、制御ケーブル6と、一端が乗りかご4に、他端が釣合おもり7に連結され、昇降路2の底面付近に配置された張り車9に巻き掛けられる釣合ロープ8と、を備える。釣合ロープ8は、単位重量が異なる複数本の釣合ロープから構成され、当該複数本の釣合ロープには、第1の釣合ロープ8Aと、第1の釣合ロープ8Aよりも単位重量が軽い第2の釣合ロープ8Bとが含まれる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
昇降路内を昇降する乗りかごと、
一端が前記乗りかごに、他端が釣合おもりに連結されて、つるべ式に前記乗りかご及び前記釣合おもりを懸垂する主索と、
前記主索を駆動することにより前記乗りかごを昇降させる巻上機と、
前記乗りかご内の機器と制御盤とを接続し、前記機器と前記制御盤との間で信号の送受を行う制御ケーブルと、
一端が前記乗りかごに、他端が前記釣合おもりに連結されて、前記昇降路の底面付近に配置された張り車に巻き掛けられる釣合ロープと、
を備え、
前記釣合ロープは、単位重量が異なる複数本の釣合ロープから構成され、当該複数本の釣合ロープには、第1の釣合ロープと、前記第1の釣合ロープよりも単位重量が軽い第2の釣合ロープとが含まれる
ことを特徴とするエレベータ装置。
【請求項2】
前記張り車は、前記第2の釣合ロープに掛かる張力が前記第1の釣合ロープに掛かる張力よりも小さくなるように前記釣合ロープを巻き掛ける構造を有する
ことを特徴とする請求項1に記載のエレベータ装置。
【請求項3】
前記張り車において前記第2の釣合ロープが巻き掛けられる外周径は、前記第1の釣合ロープが巻き掛けられる外周径よりも小さい
ことを特徴とする請求項2に記載のエレベータ装置。
【請求項4】
前記張り車は、外周面に前記第2の釣合ロープが巻き掛けられる溝を有する
ことを特徴とする請求項3に記載のエレベータ装置。
【請求項5】
前記第2の釣合ロープが巻き掛けられる溝は、前記張り車の外周面の幅方向の中央部に形成される
ことを特徴とする請求項4に記載のエレベータ装置。
【請求項6】
前記張り車は、前記第2の釣合ロープが巻き掛けられる溝とは別に、前記第1の釣合ロープが巻き掛けられる溝を前記外周面に有する
ことを特徴とする請求項4に記載のエレベータ装置。
【請求項7】
前記第2の釣合ロープは、前記第1の釣合ロープよりもロープ径が小さい
ことを特徴とする請求項2に記載のエレベータ装置。
【請求項8】
前記第2の釣合ロープは、前記第1の釣合ロープよりも長い
ことを特徴とする請求項2に記載のエレベータ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エレベータ装置に関し、釣合ロープを利用するエレベータ装置に適用して好適なものである。
【背景技術】
【0002】
近年、ビルの高層化に伴い、エレベータに対しても高行程対応の要求が高まっている。一般的に、高行程のエレベータにおいては、巻上機及び主索の負担重量の面で乗りかごの移動による負荷の変動を抑えるために、釣合ロープ及び張り車が設置される。例えば特許文献1には、釣合ロープ用の張り車として釣合ロープ用プーリを備えたエレベータ装置が開示されている。特許文献1には開示されていないが、一般的な従来の釣合ロープ用の張り車は、複数本の釣合ロープを巻き掛けるために、同一径のロープ溝を釣合ロープの本数分だけ有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、乗りかごの移動による巻上機及び主索への負荷の変動は、主索及び制御ケーブルと釣合ロープとの重量が完全に釣り合うときに、ゼロになる。しかし、上述した従来の一般的な張り車を用いた場合、釣合ロープの直径及び本数が主索に対して離散値となることから、主索及び制御ケーブルと釣合ロープとの重量を完全に釣り合わせるようにエレベータを設計することは困難であり、少なからず両者に重量差が生じてしまう。かくして、従来技術では、乗りかごの移動による巻上機及び主索に対する負荷の変動を抑えることが難しかった。
【0005】
本発明は以上の点を考慮してなされたもので、主索及び制御ケーブルと釣合ロープとの重量の釣り合わせを容易にすることで、乗りかごの移動による巻上機及び主索に対する負荷の変動量を低減することが可能なエレベータ装置を提案しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる課題を解決するため本発明においては、昇降路内を昇降する乗りかごと、一端が前記乗りかごに、他端が釣合おもりに連結されて、つるべ式に前記乗りかご及び前記釣合おもりを懸垂する主索と、前記主索を駆動することにより前記乗りかごを昇降させる巻上機と、前記乗りかご内の機器と制御盤とを接続し、前記機器と前記制御盤との間で信号の送受を行う制御ケーブルと、一端が前記乗りかごに、他端が前記釣合おもりに連結されて、前記昇降路の底面付近に配置された張り車に巻き掛けられる釣合ロープと、を備え、前記釣合ロープは、単位重量が異なる複数本の釣合ロープから構成され、当該複数本の釣合ロープには、第1の釣合ロープと、前記第1の釣合ロープよりも単位重量が軽い第2の釣合ロープとが含まれることを特徴とするエレベータ装置が提供される。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、乗りかごの移動による巻上機及び主索に対する負荷の変動量を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の一実施形態に係るエレベータ装置1の構成例を示す図である。
【
図2】張り車9付近の詳細な構造例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態を詳述する。
【0010】
なお、以下の記載及び図面は、本発明を説明するための例示であって、説明の明確化のため、適宜、省略及び簡略化がなされている。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。本発明が実施形態に制限されることは無く、本発明の思想に合致するあらゆる応用例が本発明の技術的範囲に含まれる。本発明は、当業者であれば本発明の範囲内で様々な追加や変更等を行うことができる。本発明は、他の種々の形態でも実施する事が可能である。特に限定しない限り、各構成要素は複数でも単数でも構わない。
【0011】
なお、以下の説明では、同種の要素を区別せずに説明する場合には、添字や枝番を含む参照符号のうちの共通部分(添字や枝番を除く部分)を使用し、同種の要素を区別して説明する場合には、添字や枝番を含む参照符号を使用することがある。例えば、釣合ロープを特に区別せずに説明する場合には「釣合ロープ8」と記載するのに対して、単位重量の違いによって個々の釣合ロープ8を区別して説明する場合には「釣合ロープ8A」、「釣合ロープ8B」のように記載することがある。
【0012】
図1は、本発明の一実施形態に係るエレベータ装置1の構成例を示す図である。エレベータ装置1は、釣合ロープを利用するエレベータ装置であって、主要な構成として、乗りかご4、主索(主ロープ)5、制御ケーブル6、釣合おもり7、釣合ロープ8、張り車9、巻上機10、反らせ車11、及び制御盤12を備える。
【0013】
図1に示すように、乗りかご4、釣合おもり7、及び張り車9は、建物内に形成された昇降路2内に配置される。巻上機10及び反らせ車11は、昇降路2の上階に設けられた機械室3に配置される。制御盤12は、機械室3に配置されることが一般的であるが、他の場所に配置されてもよい。
【0014】
乗りかご4は、乗客や荷物を載せて運搬する中空の略直方体形状のかごであって、側面に乗客や荷物が出入りする扉が設けられる。乗りかご4内部の側面には、乗りかご4の移動や扉の開閉等を操作する操作パネル等の機器が設けられる。一般的なエレベータ装置と同様に、エレベータ装置1では、乗りかご4において乗客が操作パネルを操作すると、操作信号が乗りかご4に接続された制御ケーブル6を介して制御盤12に送信され、制御盤12が操作信号に応じた制御信号を巻上機10に送信し、巻上機10が制御信号に従って作動する。この結果、乗りかご4に連結された主索5の巻き上げ/巻き下ろしが行われることにより、不図示のスライダに沿って乗りかご4の昇降が実現される。
【0015】
主索5は、例えば同一径の複数本のロープによって構成される。主索5は、
図1に示したように、機械室3に設置された巻上機10及び反らせ車11に巻きかけられ、その一端が乗りかご4の上部に連結され、他端が釣合おもり7の上部に連結される。すなわち、乗りかご4及び釣合おもり7は、巻上機10及び反らせ車11を介して、主索5によってつるべ式に懸垂される。
【0016】
制御ケーブル6は、乗りかご4内の操作パネル等の機器と制御盤12との間で信号の送受信を行う通信ケーブルであって、一端が乗りかご4の下部に接続され、他端が制御盤12に接続される。
図1では、制御ケーブル6の図示を一部省略している。
【0017】
釣合おもり7は、乗りかご4の重量との釣合をとって、巻上機10及び主索5に掛かる重量差を小さくするためのおもりであって、乗りかご4とは反対側の主索5の端部に吊られる。釣合おもり7の重量設計は、一般的に知られたロープ式エレベータにおける釣合おもりの重量と同様に考えてよく、例えば、乗りかご4の自重と積載荷重の50%との合計値等で設計される。
【0018】
釣合ロープ8は、主索5及び制御ケーブル6との重量バランスをとるために設けられるロープであって、複数本のロープにより構成される。釣合ロープ8は、
図1に示したように、その一端が乗りかご4の下部に連結され、昇降路の底面付近に固定された張り車9への巻き掛けを経由して、他端が釣合おもり7の下部に連結される。すなわち、釣合ロープ8は、その途中で張り車9に巻き掛けられながら、乗りかご4及び釣合おもり7の下部に懸垂する。
【0019】
なお、本実施形態に係るエレベータ装置1では、従来の一般的な釣合ロープとの相違点として、釣合ロープ8の複数本のロープは、単位重量が異なる釣合ロープ8A及び釣合ロープ8Bから構成される。釣合ロープ8及び張り車9の詳細については、
図2を参照しながら後述する。
【0020】
張り車9は、釣合ロープ8が巻き掛けられる滑車であって、昇降路2の底面付近に固定されて設置される。
【0021】
巻上機10は、主索5に対して移動力を供給する装置であって、機械室の床面等に設置される。巻上機10は、制御盤12による制御信号に応じて、自身が有する回転軸機構(綱車)をモータによって駆動させることにより、巻上機10に掛けられた主索5を巻き上げる(または巻き下ろす)。上述したように、巻上機10による主索5の巻き上げまたは巻き下ろしによって、乗りかご4の昇降が実現される。
【0022】
反らせ車11は、釣合おもり7の吊り心位置及び巻き掛け角を調整するための滑車であって、機械室3の床面等(巻上機10の近傍)に設置される。
図1に示したように、主索5は、機械室3において巻上機10及び反らせ車11に巻き掛けられる。
【0023】
制御盤12は、乗りかご4の昇降動作等、エレベータ装置1の全般的な制御を行う装置である。具体的には例えば、制御盤12は、制御ケーブル6を介して乗りかご4の内部装置と通信したり、巻上機10に対して制御信号を送信したりすることができる。
【0024】
図2は、張り車9付近の詳細な構造例を示す模式図である。
図2に示した張り車9は、複数本の釣合ロープ8Aと1本の釣合ロープ8Bがそれぞれ巻き掛けられる形状を有する。以下では、釣合ロープ8A,8Bと張り車9の特徴について詳しく説明する。
【0025】
釣合ロープ8Aは、釣合ロープ8Bよりも単位重量が重い複数本(好適には3本以上)のロープである。本実施形態において、釣合ロープ8Aは、主索5及び制御ケーブル6との重量バランスをとるという釣合ロープの機能に関して、その中心的な役割を担う。それぞれの釣合ロープ8Aは、巻き掛けが外れたり、ずれて他の釣合ロープ8A,8Bと絡んだりしないように、張り車9に形成された溝21Aに巻き掛けられる。
【0026】
釣合ロープ8Bは、釣合ロープ8Aよりも単位重量が軽いロープである。本実施形態において、釣合ロープ8Bは、主索5及び制御ケーブル6との重量バランスをとるという釣合ロープの機能に関して、より完全な重量バランスを実現するために微調整する補助的な役割を担う。すなわち、釣合ロープ8A及び釣合ロープ8Bの合計重量が主索5及び制御ケーブル6の総重量と完全に釣り合うように、釣合ロープ8A,8Bの長さやロープの種類が決定される。釣合ロープ8Bは、巻き掛けが外れたり、ずれて他の釣合ロープ8A,8Bと絡んだりしないように、張り車9に形成された溝21Bに巻き掛けられる。
【0027】
なお、単位重量が異なる釣合ロープ8A,8Bは、同一素材のロープを用いる場合、例えばロープの径が異なる釣合ロープ8A,8Bで実現される。このとき、釣合ロープ8Bは、釣合ロープ8Aよりも幅細のロープ(径が小さいロープ)となり、これらのロープ径の違いに応じて異なる幅で溝21A,21Bを形成することにより、釣合ロープ8A,8Bのずれを防止する効果が向上する。
【0028】
張り車9は、上述したように釣合ロープ8A,8Bを適切に巻き掛けるための構造として、外周面に溝21A,21Bが形成される。
図2の場合、溝21Aは、釣合ロープ8Aが適切に巻き掛けられるように、それぞれの釣合ロープ8Aの巻き掛け位置に、釣合ロープ8Aのロープ幅を考慮した幅で、釣合ロープ8Aの本数分だけ形成されている。溝21Bは、釣合ロープ8Bが適切に巻き掛けられるように、釣合ロープ8Bの巻き掛け位置に、釣合ロープ8Bのロープ幅を考慮した幅で形成されている。このように、溝21A,21Bの外周径は、釣合ロープ8A,8Bの種類(単位重量の軽重、ロープ径の大小等)に基づいて差異を設けることができる。
【0029】
なお、
図2において、溝21Bは、その外周径が溝21Aの外周径よりも小さくなるように形成されている。このような構造とすることで、溝21Bに巻き掛けられた釣合ロープ8Bが釣合ロープ8A側にずれることを防止できるだけでなく、例えば釣合ロープ8Aが釣合ロープ8Bと略同じ長さである場合に、釣合ロープ8Bに掛かる負荷(張力)を釣合ロープ8Aに掛かる負荷よりも低減することができる。釣合ロープ8Bは、単位重量が相対的に軽いため、張力に対する強度が釣合ロープ8Aよりも弱いことが想定されるが、上記のように釣合ロープ8Bに掛かる負荷を低減できることにより、釣合ロープ8Bの損傷等を予防する効果が得られる。
【0030】
以上のように釣合ロープ8A,8Bと張り車9とが構成されることにより、本実施形態に係るエレベータ装置1は、主索5及び制御ケーブル6と釣合ロープ8(8A,8B)との重量の釣り合わせを容易に実現でき、従来のエレベータ装置に比べて、乗りかご4の移動による巻上機10及び主索5に対する負荷の変動量をより低減することができる。
【0031】
なお、
図2の例では、張り車9に対して、その外周面の幅方向の中央付近に1本の釣合ロープ8Bが巻き掛けられ、釣合ロープ8Bの両側に3本ずつ釣合ロープ8Aが巻き掛けられているが、本実施形態に係るエレベータ装置1において、釣合ロープ8A,8Bの本数及び巻き掛け位置は、これらの例示に限定されるものではない。具体的には例えば、釣合ロープ8Aの本数は6本以外であってもよく(1本でもよい)、釣合ロープ8Bの本数は2本以上であってもよい。また例えば、釣合ロープ8Aが張り車9の外周面の中央付近に巻き掛けられる構造であってもよいし、釣合ロープ8Aと釣合ロープ8Bとが交互に張り車9の外周面に巻き掛けられる等の構造であってもよい。
【0032】
また、釣合ロープ8Aが複数本のロープで構成されるとき、釣合ロープ8Aは、釣合ロープ8Bよりも単位重量が重いという条件さえ満たしていれば、同種の(すなわち、単位重量、素材、寸法等の何れか同じ)ロープで構成されてもよいし、異種のロープで構成されてもよい。
【0033】
なお、主索及び制御ケーブルとの重量バランスをとる従来技術の1つとして、ロープではなくチェーンを利用するコンペンチェーンという技術が知られている。コンペンチェーンは、張り車が不要となるという利点があるが、チェーンの移動時に発生する音が大きく、静音性の点で高行程対応の高速エレベータには使用できないという課題があった。これに対し、本実施形態に係るエレベータ装置1は、移動時の発生音がチェーンよりも小さい釣合ロープ8を使用することから、高速エレベータであっても、静音性を満たしながら、主索5及び制御ケーブル6との重量調整を実現することができる。釣合ロープ8に用いられる素材としては、例えば鋼線ロープが挙げられる。
【0034】
さらに、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。以下に変形例の1つを説明する。
【0035】
図2を参照して説明した上記実施形態では、重量バランスの微調整を行うための釣合ロープ8Bに掛かる張力が釣合ロープ8Aに掛かる張力よりも小さくなるように、張り車9において、溝21Bの外周径を溝21Aの外周径よりも小さく形成していた。これに対し本変形例では、釣合ロープ8Bに掛かる張力を小さくする別の構成として、釣合ロープ8Bの長さを釣合ロープ8Aよりも長くし、さらに、張り車9の溝21Bに対して釣合ロープ8Bが所定程度の余裕をもって巻き掛けられるように構成する。なお、釣合ロープ8Aは張り車9に対して撓まないように巻き掛けられる。
【0036】
上記の構成を実現する際、張り車9において釣合ロープ8Bが巻き掛けられる外周径は、釣合ロープ8Aが巻き掛けられる外周径よりも大きくなる。そのため、本変形例の張り車9には、溝21Aの外周径よりも大きい外周径で溝21Bが形成される。このとき、外周径の大きい溝21Bに余裕をもって巻き掛けられた釣合ロープ8Bが、外周径の小さい溝21Aに巻き掛けられた釣合ロープ8Aの側にずれることがないように、溝21Bと溝21Aとの間に凸状のずれ防止部を形成する等としてもよい。
【0037】
また、本変形例においても、重量バランスの微調整を行いやすくするために、釣合ロープ8Bの単位重量は釣合ロープ8Aの単位重量よりも軽いことが好ましい。例えば同一素材のロープを用いる場合には、釣合ロープ8Bは釣合ロープ8Aよりも小さい径(狭い幅)で実現される。
【0038】
以上のように、本変形例においても、上述した実施形態に係るエレベータ装置1と同様に、複数種類の釣合ロープ8A,8Bを用いて釣合ロープ8が構成されることで、重量バランスの微調整を行うための釣合ロープ8Bに掛かる張力を抑制しながら、主索5及び制御ケーブル6と釣合ロープ8(8A,8B)との重量の釣り合わせを容易に実現することができる。この結果、従来のエレベータ装置に比べて、乗りかご4の移動による巻上機10及び主索5に対する負荷の変動量をより低減することができる。
【符号の説明】
【0039】
1 エレベータ装置
2 昇降路
3 機械室
4 乗りかご
5 主索(主ロープ)
6 制御ケーブル
7 釣合おもり
8(8A,8B) 釣合ロープ
9 張り車
10 巻上機
11 反らせ車
12 制御盤
21A,21B 溝