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  • 特開-修理済み空気入りタイヤの製造方法 図1
  • 特開-修理済み空気入りタイヤの製造方法 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023170267
(43)【公開日】2023-12-01
(54)【発明の名称】修理済み空気入りタイヤの製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 73/10 20060101AFI20231124BHJP
【FI】
B29C73/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022081881
(22)【出願日】2022-05-18
(71)【出願人】
【識別番号】000005278
【氏名又は名称】株式会社ブリヂストン
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100186015
【弁理士】
【氏名又は名称】小松 靖之
(74)【代理人】
【識別番号】100164448
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 雄輔
(72)【発明者】
【氏名】京 壮一
(72)【発明者】
【氏名】大西 功二
【テーマコード(参考)】
4F213
【Fターム(参考)】
4F213AH20
4F213WM02
4F213WM14
4F213WM16
(57)【要約】
【課題】本発明は、補修用パッチのサイズを極力増大させないようにした、修理済み空気入りタイヤの製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明の修理済み空気入りタイヤの製造方法は、補修箇所に、互いに平行に配列した複数本の補強コードの周囲に未加硫ゴムを配置してなる補強層を備えた補修用パッチを配置する、配置工程と、前記補修用パッチを配置したタイヤを加硫する、加硫工程と、を含み、前記修理済み空気入りタイヤにおいて、前記補修用パッチのタイヤ径方向外側端が、1層以上のベルト層のうちタイヤ幅方向の幅が最大である最大幅ベルト層の端よりもタイヤ幅方向内側に位置し、且つ、前記補修用パッチのタイヤ径方向内側端が、タイヤ最大幅位置よりもタイヤ径方向外側に位置する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対のビード部間でトロイド状に延びるカーカスと、前記カーカスのクラウン部のタイヤ径方向外側に配設された1層以上のベルト層からなるベルトと、を備えた、修理済み空気入りタイヤの製造方法であって、
補修箇所に、互いに平行に配列した複数本の補強コードの周囲に未加硫ゴムを配置してなる補強層を備えた補修用パッチを配置する、配置工程と、
前記補修用パッチを配置したタイヤを加硫する、加硫工程と、
を含み、
前記修理済み空気入りタイヤにおいて、前記補修用パッチのタイヤ径方向外側端が、前記1層以上のベルト層のうちタイヤ幅方向の幅が最大である最大幅ベルト層の端よりもタイヤ幅方向内側に位置し、且つ、前記補修用パッチのタイヤ径方向内側端が、タイヤ最大幅位置よりもタイヤ径方向外側に位置することを特徴とする、修理済み空気入りタイヤの製造方法。
【請求項2】
前記加硫工程の前に、
前記ベルトのタイヤ径方向外側に未加硫のトレッドゴムを取り付ける、トレッドゴム取付工程をさらに含む、請求項1に記載の修理済み空気入りタイヤの製造方法。
【請求項3】
前記加硫工程においては、金型を用いる、請求項1又は2に記載の修理済み空気入りタイヤの製造方法。
【請求項4】
前記加硫工程においては、
加硫時の前記金型の温度を130°C~170°Cとし、加硫ブラダー内の温水の圧力を1.0MPa~2.5MPaとする、請求項3に記載の修理済み空気入りタイヤの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、修理済み空気入りタイヤの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、空気入りタイヤに補修用パッチを貼り付けてサイドウォール部及びトレッド部の貫通傷を補修する、空気入りタイヤの修理方法が提案されている(例えば、特許文献1)。
【0003】
空気入りタイヤのショルダー部の貫通傷を補修する際、補修用パッチの端がタイヤ変形の大きい領域(具体的には、ベルト層のうち最大幅を有する最大幅ベルト層の端からタイヤ最大幅位置までの領域)に位置するように補修用パッチを配置してしまうと、タイヤ変形により補修用パッチが端から剥がれてしまうおそれがある。このことから、従来は、補修用パッチのサイズを大きくすることにより、補修用パッチの両端が上記タイヤ変形の大きい領域外に位置するようにしていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開2012/111347号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、補修用パッチのコストは補修用パッチの大きさに伴って増大するため、補修用パッチの大きさを大きくするとコストが高くなってしまうという問題があった。
【0006】
そこで、本発明は、補修用パッチのサイズを極力増大させないようにした、修理済み空気入りタイヤの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の要旨構成は、以下の通りである。
(1)一対のビード部間でトロイド状に延びるカーカスと、前記カーカスのクラウン部のタイヤ径方向外側に配設された1層以上のベルト層からなるベルトと、を備えた、修理済み空気入りタイヤの製造方法であって、
補修箇所に、互いに平行に配列した複数本の補強コードの周囲に未加硫ゴムを配置してなる補強層を備えた補修用パッチを配置する、配置工程と、
前記補修用パッチを配置したタイヤを加硫する、加硫工程と、
を含み、
前記修理済み空気入りタイヤにおいて、前記補修用パッチのタイヤ径方向外側端が、前記1層以上のベルト層のうちタイヤ幅方向の幅が最大である最大幅ベルト層の端よりもタイヤ幅方向内側に位置し、且つ、前記補修用パッチのタイヤ径方向内側端が、タイヤ最大幅位置よりもタイヤ径方向外側に位置することを特徴とする、修理済み空気入りタイヤの製造方法。
ここで、「タイヤ最大幅位置」とは、修理済み空気入りタイヤを適用リムに装着し、規定内圧を充填し、無負荷とした際に、タイヤ幅方向の幅が最大になる位置をいう。
【0008】
また、「適用リム」とは、タイヤが生産され、使用される地域に有効な産業規格であって、日本ではJATMA(日本自動車タイヤ協会)のJATMA YEAR BOOK、欧州ではETRTO(The European Tyre and Rim Technical Organisation)のSTANDARDS MANUAL、米国ではTRA(The Tire and Rim Association,Inc.)のYEAR BOOK等に記載されているまたは将来的に記載される、適用サイズにおける標準リム(ETRTOのSTANDARDS MANUALではMeasuring Rim、TRAのYEAR BOOKではDesign Rim)を指す(即ち、上記の「リム」には、現行サイズに加えて将来的に上記産業規格に含まれ得るサイズも含む。「将来的に記載されるサイズ」の例としては、ETRTO 2013年度版において「FUTURE DEVELOPMENTS」として記載されているサイズを挙げることができる。)が、上記産業規格に記載のないサイズの場合は、タイヤのビード幅に対応した幅のリムをいう。
また、「規定内圧」とは、上記JATMA等に記載されている、適用サイズ・プライレーティングにおける単輪の最大負荷能力に対応する空気圧(最高空気圧)を指し、上記産業規格に記載のないサイズの場合は、「規定内圧」は、タイヤを装着する車両毎に規定される最大負荷能力に対応する空気圧(最高空気圧)をいうものとする。
【0009】
(2)前記加硫工程の前に、
前記ベルトのタイヤ径方向外側に未加硫のトレッドゴムを取り付ける、トレッドゴム取付工程をさらに含む、上記(1)に記載の修理済み空気入りタイヤの製造方法。
【0010】
(3)前記加硫工程においては、金型を用いる、上記(1)又は(2)に記載の修理済み空気入りタイヤの製造方法。
【0011】
(4)前記加硫工程においては、
加硫時の前記金型の温度を130°C~170°Cとし、加硫ブラダー内の温水の圧力を1.0MPa~2.5MPaとする、上記(1)~(3)のいずれか1つに記載の修理済み空気入りタイヤの製造方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、補修用パッチのサイズを極力増大させないようにした、修理済み空気入りタイヤの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一実施形態にかかる修理済み空気入りタイヤの製造方法によって製造された修理済み空気入りタイヤのタイヤ幅方向断面図である。
図2】本発明の一実施形態にかかる修理済み空気入りタイヤの製造方法のフローチャートである。
図3】補修用パッチの構造を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に例示説明する。
【0015】
図1は、本発明の一実施形態にかかる修理済み空気入りタイヤの製造方法によって製造された修理済み空気入りタイヤのタイヤ幅方向断面図である。図1に示すように、この修理済み空気入りタイヤ(以下、単にタイヤとも称する)1は、一対のビード部2間でトロイド状に延びるカーカス3と、カーカス3のクラウン部のタイヤ径方向外側に配設された1層以上(図示例では3層)のベルト層4a、4b、4cからなるベルト4及びトレッド5と、を備えている。
【0016】
一対のビード部2の各々には、ビードコア2aが埋設されている。ビードコア2aのタイヤ径方向外側には、適宜ビードフィラーを配置しても良い。カーカス3は、1枚以上のカーカスプライからなり、カーカスプライは例えば有機繊維コードを用いることができる。本例では、カーカス3は、一対のビード部2間でトロイド状に延びるカーカス本体部と、カーカス本体部からビードコア2aの周りを折り返してなるカーカス折り返し部とからなる。本例ではベルト層は3層であるが、ベルト層の層数は、1層以上であれば良い。また、本例では、タイヤ径方向最内側のベルト層4aのタイヤ幅方向の幅が最も大きく、タイヤ径方向最外側のベルト層4cのタイヤ幅方向の幅が最も小さいが、各ベルト層のタイヤ幅方向の幅の大小関係は、この例に限定されず、適宜変更することができる。ベルトコードには、例えばスチールコードを用いることができる。ベルトコードのタイヤ周方向に対する傾斜角度は、例えば30°~60°とすることができる。また、ベルト4のタイヤ径方向外側又は内側に、適宜ベルト補強層(例えばコードがタイヤ周方向に延びるベルト補強層)をさらに備えていても良い。また、トレッド5は、トレッドゴムからなる。
【0017】
図2は、本発明の一実施形態にかかる修理済み空気入りタイヤの製造方法のフローチャートである。図2に示すように、本実施形態では、まず、修理前の空気入りタイヤの補修箇所に、互いに平行に配列した複数本の補強コードの周囲に未加硫ゴムを配置してなる補強層を備えた補修用パッチを配置する(配置工程:ステップS101)。次いで、本例では、ベルトのタイヤ径方向外側に未加硫のトレッドゴムを取り付ける(トレッドゴム取付工程:ステップS102)。なお、ステップS102は適宜省略することもできる。次いで、補修用パッチを配置したタイヤを加硫する(加硫工程:ステップS103)。本実施形態では、加硫工程においては、金型を用いて加硫を行う。金型は溝を有するものとすることができる。また、本実施形態では、加硫工程においては、加硫時の金型の温度を130°C~170°Cとし、加硫ブラダー内の温水の圧力を1.3MPa~2.1MPaとする。
【0018】
このような工程を経て修理された修理済み空気入りタイヤは、タイヤ内面(図示しないインナーライナーの内面)に、補修用パッチ6をさらに備える。図1に示すように、補修用パッチ6のタイヤ径方向外側端は、1層以上のベルト層のうちタイヤ幅方向の幅が最大である最大幅ベルト層(本例ではベルト層3a)の端よりもタイヤ幅方向内側に位置し、且つ、補修用パッチ6のタイヤ径方向内側端は、タイヤ最大幅位置Pよりもタイヤ径方向外側に位置している。
本実施形態の修理済み空気入りタイヤの製造方法の作用効果について説明する。
【0019】
本実施形態の修理済み空気入りタイヤの製造方法によれば、修理済み空気入りタイヤは、補修用パッチ6のタイヤ径方向外側端が、1層以上のベルト層のうちタイヤ幅方向の幅が最大である最大幅ベルト層(本例ではベルト層3a)の端よりもタイヤ幅方向内側に位置しているため、例えば最大幅ベルト層付近で生じる貫通等、広い領域の補修に対応することができる。その一方で、補修用パッチ6のタイヤ径方向内側端が、タイヤ最大幅位置Pよりもタイヤ径方向外側に位置しているため、(補修用パッチ6のタイヤ径方向内側端が、タイヤ最大幅位置Pよりもタイヤ径方向内側に位置している場合と比べて)補修用パッチのサイズを小さくすることができ、補修用パッチ6自体のコストを低減することができる。
このように、本実施形態の修理済み空気入りタイヤの製造方法によれば、補修用パッチのサイズを極力増大させないようにすることができる。
【0020】
本実施形態にように、加硫工程の前に、ベルトのタイヤ径方向外側に未加硫のトレッドゴムを取り付ける、トレッドゴム取付工程をさらに含むことが好ましい。これによれば、補修とリトレッドとを同時に行うことができる。なお、上記配置工程とトレッドゴム取付工程は、いずれを先に行っても良く、あるいは同時に行っても良いが、作業性の観点からは、本実施形態のように、配置工程を先に行うことが好ましい。
【0021】
また、本実施形態のように、加硫工程においては、金型を用い、加硫時の金型の温度を130°C~170°Cとし、加硫ブラダー内の温水の圧力を1.0MPa~2.5MPaとすることが好ましい。このような高温、高圧条件で加硫を行うことにより、タイヤ変形の大きい領域である、最大幅ベルト層の端からタイヤ最大幅位置までの領域に、補修用パッチの端が位置していても、十分な接着性を確保することができる。すなわち、加硫時の金型の温度を130°C以上とすることや加硫ブラダー内の温水の圧力を1.0MPa以上とすることにより、補修用パッチの接着性を向上させることができる。一方で、ゴムの熱劣化を抑制する観点からは、加硫時の金型の温度は、170℃以下とすることが好ましい。また、加硫後のパッチ成形性の観点からは、加硫ブラダー内の温水の圧力を2.5MPa以下とすることが好ましい。上記と同様の理由により、加硫時の金型の温度は、140℃~160℃とすることがさらに好ましい。
【0022】
図3は、補修用パッチの構造を示す模式図である。補修用パッチ6は、上述した通り、互いに平行に配列した複数本の補強コードの周囲に未加硫ゴムを配置してなる補強層を備えるものである。補修用パッチの補強コードは、特に限定されないが、ナイロンPET、アラミド等の有機繊維を用いることができる。補修用パッチの補強層の層数は、1層以上4層以下とすることが好ましい。加硫時に不具合が発生するのを防止するためである。図3は、4層の補強層を積層してなる補修用パッチの例である。なお、層6a、6dでは、補強コードの図示は省略している。
【0023】
補修箇所について、修理前のタイヤ厚さt1を100とした際の、修理後のタイヤ厚さt2は、103~125とすることが好ましい。103以上とすることにより、補修の効果をより確実なものとし、一方で、125以下とすることにより、加硫時に不具合が発生するのを防止することができる。ここでいう、「タイヤ厚さ」とは、補修箇所における、トレッド表面からタイヤ内面まで(インナーライナーが配置されている場合には、インナーライナーの内面)の厚さをいい、修理済み空気入りタイヤを適用リムに装着し、規定内圧を充填し、無負荷とした状態において、カーカスの法線方向に最大幅ベルト層のベルト端を通る位置で計測するものとする。また、修理前タイヤ厚さt1は、修理後のタイヤ厚さt2から、上記の状態においてカーカスの法線方向に最大幅ベルト層のベルト端を通る位置で計測した補修用パッチ6の厚さを引いたものである。
【0024】
なお、補修用パッチ6の貼り付けは、従来と同様の手法により行うことができ、特には限定されないが、一例としては、以下のように行うことができる。まず、補修箇所の周辺のタイヤゴムやインナーライナーを除去し、補修箇所に未加硫ゴムを充填した後、補修用パッチを配置する工程(ステップS101)を行う。
【符号の説明】
【0025】
1:修理済み空気入りタイヤ、 2:ビード部、
3:カーカス、 4:ベルト、
5:トレッド、 6:補修用パッチ
図1
図2
図3