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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023170268
(43)【公開日】2023-12-01
(54)【発明の名称】ポンプ式容器
(51)【国際特許分類】
   B65D 47/34 20060101AFI20231124BHJP
   B05B 11/00 20230101ALI20231124BHJP
【FI】
B65D47/34 110
B05B11/00 101C
B05B11/00 101G
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022081886
(22)【出願日】2022-05-18
(71)【出願人】
【識別番号】514015972
【氏名又は名称】エスコ 株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000104674
【氏名又は名称】キョーラク株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【弁理士】
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】石井 純一
(72)【発明者】
【氏名】大原 裕之
【テーマコード(参考)】
3E084
【Fターム(参考)】
3E084AA02
3E084AA12
3E084AA24
3E084AB06
3E084BA02
3E084CA01
3E084CC03
3E084DA01
3E084DB12
3E084DC03
3E084FB01
3E084GA04
3E084GB04
3E084KA20
3E084KB10
3E084LB02
3E084LB08
3E084LC01
3E084LD22
(57)【要約】      (修正有)
【課題】超高粘度の内容物やチクソトロピー性を有する内容物の最終残留率を低減可能な、ポンプ式容器を提供する。
【解決手段】容器本体と、ポンプを備えるポンプ式容器であって、前記容器本体内には内容物が充填されており、前記内容物は、粘度が10Pa・s以上であるか、又はチクソトロピー性を有し、前記容器本体は、外殻と内袋とを有し且つ内容物の減少に伴って前記内袋が収縮するように構成され、前記ポンプは、ポンプ本体と、ストローを備え、前記ストローは、前記内袋内に配置され、前記ポンプ本体は、前記ストローを通じて前記内容物を吸い上げて吐出可能に構成され、前記ストローは、先端に設けられた先端吸込口と、側面に設けられた複数の側面吸込口を備え、前記複数の側面吸込口は、前記ストローの長手方向に互いにずれた位置に設けられた第1及び第2側面吸込口を備え、互いにつながっておらず、それぞれ、前記ストロー内の流通路に連通している。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器本体と、前記ポンプを備えるポンプ式容器であって、
前記容器本体内には内容物が充填されており、
前記内容物は、粘度が10Pa・s以上であるか、又はチクソトロピー性を有し、
前記容器本体は、外殻と内袋とを有し且つ内容物の減少に伴って前記内袋が収縮するように構成され、
前記ポンプは、ポンプ本体と、ストローを備え、
前記ストローは、前記内袋内に配置され、
前記ポンプ本体は、前記容器本体の口部に装着され、かつ前記ストローを通じて前記内容物を吸い上げて吐出可能に構成され、
前記ストローは、前記ストローの先端に設けられた先端吸込口と、前記ストローの側面に設けられた複数の側面吸込口を備え、
前記複数の側面吸込口は、前記ストローの長手方向に互いにずれた位置に設けられた第1及び第2側面吸込口を備え、
前記先端吸込口と第1及び第2側面吸込口は、互いにつながっておらず、それぞれ、前記ストロー内の流通路に連通している、ポンプ式容器。
【請求項2】
請求項1に記載のポンプ式容器であって、
第1及び第2側面吸込口は、前記ストローの周方向に互いにずれた位置に設けられている、ポンプ式容器。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のポンプ式容器であって、
前記先端から第1側面吸込口までの長さをL1とし、前記先端から第2側面吸込口までの長さをL2とすると、L2/L1は、0.3~0.7である、ポンプ式容器。
【請求項4】
請求項1又は請求項2に記載のポンプ式容器であって、
前記内容物は、オイル成分とポリエチレンを含有し、前記ポリエチレンの含有量は、前記オイル成分に対して1~10質量%である、ポンプ式容器。
【請求項5】
請求項1又は請求項2に記載のポンプ式容器であって、
前記ストローの先端は、前記長手方向に垂直な垂直面と、前記垂直面に対して前記ストローの根本に向かって傾斜するテーパー面とを備える、ポンプ式容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポンプ式容器に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、シャンプーやリンス等の比較的粘度の高い液体を吐出可能なポンプ式容器が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008-290745号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般に、ポンプ式容器では、シャンプーやリンスのような粘度が概ね3Pa・s以下のものは吐出可能であるが、それよりも高粘度である超高粘度の内容物やチクソトロピー性を有する内容物を吐出することは、非常に困難である。また、仮に吐出ができたとしても、ポンプを押下しても内容物が吐出されなくなる時点での内容物の残留率(以下、「最終残留率」)が高くなりやすい。
【0005】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、超高粘度の内容物やチクソトロピー性を有する内容物の最終残留率を低減可能な、ポンプ式容器を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、以下の発明が提供される。
(1)容器本体と、前記ポンプを備えるポンプ式容器であって、前記容器本体内には内容物が充填されており、前記内容物は、粘度が10Pa・s以上であるか、又はチクソトロピー性を有し、前記容器本体は、外殻と内袋とを有し且つ内容物の減少に伴って前記内袋が収縮するように構成され、前記ポンプは、ポンプ本体と、ストローを備え、前記ストローは、前記内袋内に配置され、前記ポンプ本体は、前記容器本体の口部に装着され、かつ前記ストローを通じて前記内容物を吸い上げて吐出可能に構成され、前記ストローは、前記ストローの先端に設けられた先端吸込口と、前記ストローの側面に設けられた複数の側面吸込口を備え、前記複数の側面吸込口は、前記ストローの長手方向に互いにずれた位置に設けられた第1及び第2側面吸込口を備え、前記先端吸込口と第1及び第2側面吸込口は、互いにつながっておらず、それぞれ、前記ストロー内の流通路に連通している、ポンプ式容器。
(2)(1)に記載のポンプ式容器であって、第1及び第2側面吸込口は、前記ストローの周方向に互いにずれた位置に設けられている、ポンプ式容器。
(3)(1)又は(2)に記載のポンプ式容器であって、前記先端から第1側面吸込口までの長さをL1とし、前記先端から第2側面吸込口までの長さをL2とすると、L2/L1は、0.3~0.7である、ポンプ式容器。
(4)(1)~(3)の何れか1つに記載のポンプ式容器であって、前記内容物は、オイル成分とポリエチレンを含有し、前記ポリエチレンの含有量は、前記オイル成分に対して1~10質量%である、ポンプ式容器。
(5)(1)~(4)の何れか1つに記載のポンプ式容器であって、前記ストローの先端は、前記長手方向に垂直な垂直面と、前記垂直面に対して前記ストローの根本に向かって傾斜するテーパー面とを備える、ポンプ式容器。
【0007】
本発明者が鋭意検討を行ったところ、先端吸込口及び第1及び第2側面吸込口を有するストローと、内容物の減少に伴って収縮する内袋を組み合わせることによって、超高粘度の内容物やチクソトロピー性を有する内容物の最終残留率を低減されることを見出し、本発明の完成に到った。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の第1実施形態のポンプ式容器1の斜視図である。図中の一点鎖線は、表面形状を構成する面の曲率が変化する境界線を表す。他の図についても同様である。
図2図1のポンプ式容器1の分解斜視図である。
図3図1のポンプ式容器1の断面図である。
図4図3中のストロー5を示し、図4Aは正面図、図4Bは底面図である。
図5図5A図5Dは、それぞれ、ストロー1A~1Dの寸法を示す。
図6図6A図6Fは、それぞれ、ストロー2A~2Fの寸法を示す。
図7図7A図7Dは、それぞれ、ストロー3A~3Dの寸法を示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について説明する。以下に示す実施形態中で示した各種特徴事項は、互いに組み合わせ可能である。また、各特徴について独立して発明が成立する。
【0010】
1.第1実施形態
図1図4に示すように、本発明の第1実施形態のポンプ式容器1は、容器本体2と、ポンプ3を備える。図3に示すように、容器本体2内には、内容物Wが収容されている。以下、各構成について詳細に説明する。
【0011】
<内容物W>
内容物Wとしては、主に、クレンジング化粧料、マッサージ化粧料、クリーム、整髪料のような化粧料が想定されている。内容物Wは、粘度が10Pa・s以上であるか、又はチクソトロピー性を有する。このような粘度又はチクソトロピー性は、取り扱い性が優れているが、一般のポンプ式容器では吐出が困難であるか、仮に吐出ができたとしても、最終残留率が高くなりやすいという問題がある。本実施形態では、後述する構成の容器本体2とポンプ3を併用することによって、内容物Wの最終残留率の低減を可能にしている。
【0012】
粘度は、15Pa・s以上が好ましく、20Pa・s以上がさらに好ましい。このような粘度の場合に、上記問題が特に申告であるので、本発明を適用する技術的意義が特に顕著である。
【0013】
粘度は、例えば、10~2000Pa・sであり、具体的には例えば、10、15、20、25、30、35、40、45、50、100、150、200、250、300、500、1000、2000Pa・sであり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内又は何れか以上であってもよい。なお、内容物Wが化粧クリーム、軟膏、練わさび・練からしのように流動性が乏しいものである場合は、粘度は、300Pa・s以下が好ましい。この場合、内容物Wの流動性が乏しい場合でも吐出及び残留量低減の実現が特に効果的に実現可能であるからである。
【0014】
粘度は、以下の条件で測定することができる。
-試料温度:25℃
-回転粘度計(東機産業製:BII形粘度計)
-動作条件:スピンドルL4(形状、径の種類を特定)を使用。25℃、50rpm、30secにて測定。
【0015】
内容物Wがチクソトロピー性を有する場合、内容物Wに外力を加えない状態では、内容物Wがゲル状態(固体状態)であり、内容物Wに外力を加えると、内容物Wがゾル状態(液体状態)となる。
【0016】
内容物Wに外力を加えないゲル状態では、内容物Wの硬度を示すレオメータ値は、200g以上が好ましく、250g以上がさらに好ましく、300g以上がさらに好ましい。この場合、ゲル状態での内容物Wの硬度が十分に大きく、内容物Wを容器1から手の上に吐出したときに、内容物Wが手からこぼれにくい。レオメータ値は、例えば200~800gであり、具体的には例えば、200、250、300、350、400、450、500、550、600、650、700、750、800gであり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内又は何れか以上であってもよい。
【0017】
内容物Wに外力を加えたゾル状態では、内容物Wのレオメータ値は、100g以下が好ましく、50g以下がさらに好ましく、測定限界以下がさらに好ましい。この場合、ゾル状態での内容物Wの硬度が十分に小さく、内容物Wを被塗布物(ボディなど)に塗布した後に広げやすい。
【0018】
レオメータ値は、以下の条件で測定することができる。
-試料温度:25℃
-レオメータ(株式会社レオテック社製)
-動作条件:粘性用(4)アダプターの径D10mmを用い、落下速度 1mm/sec、100gスケール感度。
【0019】
なお、ゲル状態では、上記条件で粘度を測定しようとすると、内容物Wが動的スリップ現象を起こして、粘度の測定が不可となる場合がある。また、ゾル状態では、上記条件で測定した粘度は、例えば、1~20Pa・sであり、具体的には例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20Pa・sであり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0020】
チクソトロピー性を有する内容物Wは、一例では、オイル成分とポリエチレンを含有する。
【0021】
ポリエチレンは、ゲル化剤として機能する。ポリエチレンによるゲル化としては、ポリエチレンの高分子架橋によるゲル化現象が利用されている。具体的には、ポリエチレンと炭化水素が持つ水素部位の、引力的相互作用による水素結合によって海綿状のマトリックス(格子)ゲル構造が取られ、この時、炭化水素がこの中にトラップされると考える。これによって、使用温度範囲(例えば0~45℃)での温度変化によって物理的変化を生じ難くできる一方、塗布時の物理的ストレスによって当該ボディマッサージ用化粧料を簡単にオイルにすること(液状化)ができるからである。
【0022】
ポリエチレンの数平均分子量Mnとしては、300~3000であることが好ましい。当該範囲のものは、融点が30℃~130℃のものとなり、扱い易い温度の下でポリエチレンを溶融させて、ポリエチレンとオイル成分とを的確に混合することができるからである。この場合、ポリエチレンの融点を100℃以下とするものがより好ましい。オイル成分とポリエチレンとの混合時の温度に基づき、オイル成分が変性することを確実に防止できるからである。Mnは、具体的には例えば、300、400、500、600、700、800、900、1000、2000、3000であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0023】
ポリエチレンの含有量は、オイル成分に対して1~10質量%であることが好ましい。1質量%未満では、オイル成分を十分にゲル化することができない場合があり、10質量%を超える場合には、内容物Wの融点(ポリエチレンとオイル成分との割合で決定される混合融点(液状化温度))が高くなり過ぎると共に、ゲル化が進み過ぎて固くなりすぎる場合があるからである。ポリエチレンの含有量は、具体的には例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10質量%であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0024】
<容器本体2>
図3に示すように、容器本体2は、外殻12と内袋14とを有し且つ内容物Wの減少に伴って内袋14が収縮する積層剥離容器である。内容物の減少に伴って内袋14が外殻12から離れることによって、内袋14が外殻12から離れて収縮する。このような容器では、内袋14内に外気が侵入しにくいので、内容物の劣化が抑制される。容器本体2は、ダイレクトブロー成形によって形成可能であり、この場合、容器本体2は、押出ヘッドから押し出された溶融状態の筒状の積層パリソンを一対の分割金型を用いてブロー成形することによって形成することができる。積層パリソンは、外殻12及び内袋14に対応する外層及び内層を備える。積層パリソンの対向する面同士が溶着されて形成されたシール部において容器本体2の底が閉じられる。
【0025】
外殻12は、例えば、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合体及びその混合物などで構成される。外殻12は、複数層構成であってもよい。内袋14は、複数の層から構成することが好ましい。例えば、外殻12と接触する層にエチレン-ビニルアルコール共重合体(EVOH)樹脂からなるEVOH層を用い、内容物に接触する層に、例えば、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合体及びその混合物などのポリオレフィンからなる内面層を用いることができる。そして、上記EVOH層と内面層との間には、接着層を用いることが好ましい。
【0026】
図2図3に示すように、容器本体2は、有底筒状であり、内容物を収容する収容部7と、収容部7から内容物を吐出する口部9を備える。収容部7は、胴部7aと、底部7bを備える。口部9には係合部(雄ねじ部)9dが設けられており、ポンプ3のポンプ本体4を装着可能になっている。
【0027】
容器本体2の外殻12には、外気導入孔15が設けられており、外気導入孔15を通じて外殻12と内袋14の中間空間に外気を導入することができる。この場合、内袋14の収縮に伴って中間空間に外気が導入されるので、内容物の吐出に伴って内袋14のみを収縮させることができる。
【0028】
容器本体2の容量は、例えば、100mL以上であり、150mL以上が好ましい。後述する実施例で示すように、容器本体2の容量が150mL以上である場合は、側面吸込口5b1,5b2が長手方向に互いにずれているストロー5を用いて初めて最終残留率を十分に低減することができるので、本発明を適用する意義が特に顕著である。容器本体2の容量は、例えば100~1000mLであり、具体的には例えば、100、200、300、400、500、600、700、800、900、1000mLであり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内又は何れか以上であってもよい。
【0029】
<ポンプ3>
図2図3に示すように、ポンプ3は、ポンプ本体4と、ストロー5を備える。ストロー5は、内袋14内に配置される。ポンプ本体4は、容器本体2の口部9に装着され、かつストロー5を通じて内容物Wを吸い上げて吐出可能に構成されている。ポンプ3は、内袋14内へ外気を導入させないように構成されている。
【0030】
ポンプ本体4は、本体部4aと、ピストン部4bと、ノズル4cを備える。本体部4aは、筒部4a1と、シリンダ部4a2と、上壁部4a3と、嵌合部4a4を備える。筒部4a1の内面には、係合部(雄ねじ部)9dに係合される係合部(雌ねじ部)(不図示)が設けられている。シリンダ部4a2は、口部9内に挿入される。シリンダ部4a2は、筒状であり、ピストン部4bがシリンダ部4a2内で摺動可能になっている。シリンダ部4a2の内部空間は、ノズル4c及びストロー5に連通されている。シリンダ部4a2の内部空間には、弾性部材と弁で構成されるポンプ機構が内蔵されている。ピストン部4bを摺動させてポンプ機構を作動させることによって、ストロー5を通じて吸い上げた内容物をノズル4cから吐出することが可能になっている。嵌合部4a4は、シリンダ部4a2の下側に配置され、ストロー5に嵌合可能になっている。
【0031】
ストロー5は、ストロー5の先端に設けられた先端吸込口5aと、ストロー5の側面に設けられた複数の側面吸込口5bを備える。複数の側面吸込口5bは、ストロー5の長手方向に互いにずれた位置に設けられた第1及び第2側面吸込口5b1,5b2を備える。ストロー5は、根本の嵌合部5eが嵌合部4a4に嵌合されることによって、ポンプ本体4に固定される。
【0032】
一般に、ポンプ式容器において内容物を吸い出すには、容器内の内容物が吸込口にまで移動する必要があるが、内容物の流動性が低いと、容器内の内容物の量が少なくなると、内容物が吸込口に到達できなくなり、最終残留率が高くなりやすい。特に、本実施形態にように、内容物の粘度が10Pa・s以上であるか又は内容物がチクソトロピー性を有する場合は、内容物の流動性が極めて低いために、その傾向が顕著である。
【0033】
本実施形態では、吸込口5a,5b1,5b2を有するストロー5と、内容物の減少に伴って収縮する内袋14を組み合わせることによって、超高粘度の内容物やチクソトロピー性を有する内容物の最終残留率の低減を可能にしている。以下、その作用について説明する。
【0034】
まず、ストロー5が、吸込口5a,5b1,5b2を有しているために、ストロー5の先端と、ストロー5の長手方向の複数の部位から内容物Wの吸い込みが可能になっている。吸込口がストローの先端のみや、先端と根本のみにある場合には、内容物がシャンプー程度の流動性を有する場合には、最終残留率はそれほど高くなりにくいが、内容物の流動性がさらに低くなると、最終残留率が顕著に増大してしまう。一方、本実施形態では、先端吸込口5aが設けられるとともに、ストロー5の長手方向に互いにずれた位置に設けられた側面吸込口5b1,5b2が設けられているので、内容物Wの流動性が低くても、内容物Wが吸込口に到達しやすく、最終残留率を低減することができる。また、内容物Wの吐出に伴って内袋14が収縮し、内容物Wが内袋14によって押されて吸込口5a,5b1,5b2に近づけられるために、最終残留率が一層低減される。
【0035】
先端吸込口5aと、側面吸込口5b1,5b2は、互いにつながっておらず、それぞれ、ストロー5内の流通路5cに連通している。これによって、吸込口の面積が大きくなりすぎず、それぞれの吸込口からの吸引力が強くなりやすい。
【0036】
吸込口5a,5b1,5b2は、ある程度離れて設けられていることが好ましく、ストロー5の先端5dから第1側面吸込口5b1までの長さをL1とし、先端5dから第2側面吸込口5b2までの長さをL2とすると、L2/L1は、0.3~0.7が好ましい。L2/L1は、具体的には例えば、0.30、0.35、0.40、0.45、0.50、0.55、0.60、0.65、0.70であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。吸込口が関係する長さ、高さ、及び角度は、吸込口の中心を基準とする。
【0037】
容器本体2の底部7bの内面の中央から口部9の開口端9aまでの高さをHとし、容器本体2の底部7bの内面の中央から第1側面吸込口5b1までの高さをH1とすると、H1/Hは、例えば0.4~0.9であり、具体的には例えば、0.40、0.45、0.50、0.55、0.60、0.65、0.70、0.75、0.80、0.85、0.90であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。容器本体2の底部7bの内面の中央から第2側面吸込口5b2までの高さをH2とすると、H2/Hは、例えば0.2~0.7であり、具体的には例えば、0.20、0.25、0.30、0.35、0.40、0.45、0.50、0.55、0.60、0.65、0.70であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0038】
側面吸込口5b1,5b2は、ストロー5の周方向に互いにずれた位置に設けられていることが好ましい。この場合、内容物Wの最終残留率を一層低減させやすい。側面吸込口5b1,5b2の間の角度(時計回りと反時計回りの角度のうち小さい方)は、例えば、30度以上であり、60度以上が好ましい。この角度は、例えば30~180度であり、具体的には例えば、30、40、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180度であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0039】
ストロー5の外径をDとし、側面吸込口5b1,5b2の円相当径(各吸込口の面積に相当する、真円の直径)をD1,D2とすると、D1/D及びD2/Dは、それぞれ、0.10~0.80が好ましく、0.35~0.60が好ましい。この値が小さすぎると、粘度又は硬度が高い内容物Wを吸い込みにくく、この値が大きすぎると、吸込口の面積が大きくなりすぎて、それぞれの吸込口からの吸引力が不十分になりやすい。この値は、具体的には例えば、0.10、0.15、0.20、0.25、0.30、0.35、0.40、0.45、0.50、0.55、0.60、0.65、0.70、0.75、0.80であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。側面吸込口5b1,5b2は、円形であることが好ましいが、別の形状であってもよい。
【0040】
ストロー5の先端5dには、ストロー5の長手方向に垂直な垂直面5d1と、垂直面5d1に対してストロー5の根本に向かって傾斜するテーパー面5d2を設けることが好ましい。テーパー面5d2を設けることによって先端吸込口5aの面積が増大するとともに、先端吸込口5aがストロー5の端面と側面の両方に開くので、内容物Wを効果的に吸い込むことができる。また、先端5dがテーパー面5d2のみで構成されていると、先端5dが尖ってしまって先端5dで内袋14を傷つける虞があるが、垂直面5d1を設けることによって先端5dが内袋14を傷つけることを抑制することができる。
【0041】
容器本体2の底部7bの内面の中央からストロー5の先端5dまでの高さは、例えば、1~30mmであり、3~20mmが好ましい。この高さは、具体的には例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30mmであり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0042】
ストロー5の長さLは、例えば、50~120mmであり、具体的には例えば、50、60、70、80、90、100、110、120mmであり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。ストロー5の外径Dは、例えば、4~14mmであり、具体的には例えば、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14mmであり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。L/Dは、例えば6~16であり、具体的には例えば、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。ストロー5の肉厚は、例えば、0.4~1.2mmであり、具体的には例えば、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、1.1、1.2mmであり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0043】
2.その他実施形態
上記実施形態では、側面吸込口5bの数は、2であったが、側面吸込口5bの数は3以上であってもよい。側面吸込口5bの数は、例えば2~20であり、具体的には例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15,20であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【実施例0044】
1.ストロー5の準備
図5図7に示すストロー1A~1D、2A~2F、3A~3Dを準備した。図中の数値は、寸法(mm)を示す。ストローは、何れもポリエチレン製の円筒チューブで構成されており、先端が斜めにカットされている。
【0045】
ストロー1A及び2Aは、外径11.5mm、内径10.0mmである。ストロー1B~1Dは、ストロー1Aに側面吸込口を設けたものであり、ストロー2B~2Fは、ストロー2Aに側面吸込口を設けたものである。ストロー3Aは、外径5.2mm、内径3.3mmである。ストロー3B~3Dは、ストロー3Aに側面吸込口を設けたものである。
【0046】
各ストローでの吸込口間の角度を表1に示す。表中の単位がない数値は、ストロー5の先端側から見たときの、側面吸込口1に対する、時計回り方向を正とする角度を示す。表1~表2中のストロー番号が太字のストローは、長手方向に互いにずれた位置に設けられた複数の側面吸込口を有するもの(以下、「本発明ストロー」)である。
【0047】
【表1】
【0048】
2.ポンプ式容器1の準備
容量が500mL、300mL、150mL、100mLのポンプ式容器1を準備した。500mLの容器1(以下、「500mL容器」と称する。他の容量のものも同様。)の形状は、図1に示す通りである。300mL容器は、高さが500mL容器と同じで、直径が500mLよりも小さいものである。150mL及び100mL容器は、高さ及び直径が500mL容器よりも小さいものである。底部7bの内面の中央からストロー5の先端5dまでの高さは、500mL、300mL、150mL、100mLの何れにおいても10mmであった。
【0049】
3.内容物の充填
表2に示す容量の容器本体2内に、以下に示す方法で、内容物(PE3.8、PE3.6、V24)を充填した。
【0050】
・PE3.8
オイル成分(オリーブオイル)に対してポリエチレン(Mnが約500)を3.8質量%となるように、ステンレス容器に計量し、80~90℃に加温・混合して、チクソトロピー性を有する内容物PE3.8を得た。これを70℃まで徐冷した後に、容器本体2内に充填し、ポンプ3を装着した。その後、ゲル構造が崩れないよう静置放冷した。PE3.8のレオメータ値は、144gであった。
【0051】
・PE3.6
PE3.6の充填は、ポリエチレンの配合量を3.6質量%に変更した以外は、PE3.8と同様の方法で行った。PE3.6のレオメータ値は、124gであった。
【0052】
V24は、粘度が24Pa・sである化粧料(ディープクリーム)であり、これを25℃で容器本体2内に充填した。
【0053】
4.吐出試験
表2に示す条件で、室温23~24℃、湿度47~50%で、試験例1~29の吐出試験を行った。試験開始前の容器1内の内容物の重量を充填量(=全重量-容器重量)とした。ポンプを押下しても内容物が吐出されなくなった時点での容器1内の内容物の重量を最終残留量とした。最終残留量を充填量で割ったものを最終残留率とした。最終残留率が10%以下のものを○とし、それを超えるものを×とした。
【0054】
【表2】
【0055】
5.考察
表2に示すように、太字で示す本発明ストローを用いた場合、全ての試験例において、良好な結果が得られた。一方、側面吸込口を有さないか、ストローの根本のみに側面吸込口を有するストローを用いた試験例では、試験例17を除いて最終残留率が10%を超えた。
【0056】
PE3.8とPE3.6を比較すると、内容物の硬度が高いほど、最終残留率が高くなる傾向があった。また、容器容量が異なる試験例を比較すると、容器容量が大きくなるほど、最終残留率が高くなる傾向があった。
【0057】
試験例17は、容器容量が100mLと小型であったために、ストローの根本のみに側面吸込口を有するストローを用いたにも関わらず、最終残留率が低くなったと考えられる。この結果は、容器容量が150mL以上である場合に、本発明ストローを用いることの技術的意義が特に高いことを示している。
【符号の説明】
【0058】
1 :ポンプ式容器
2 :容器本体
3 :ポンプ
4 :ポンプ本体
4a :本体部
4a1 :筒部
4a2 :シリンダ部
4a3 :上壁部
4a4 :嵌合部
4b :ピストン部
4c :ノズル
5 :ストロー
5a :先端吸込口
5b :側面吸込口
5b1 :第1側面吸込口
5b2 :第2側面吸込口
5c :流通路
5d :先端
5d1 :垂直面
5d2 :テーパー面
5e :嵌合部
7 :収容部
7a :胴部
7b :底部
7d :底面
9 :口部
9a :開口端
9d :係合部
12 :外殻
14 :内袋
15 :外気導入孔
W :内容物
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7