(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023170270
(43)【公開日】2023-12-01
(54)【発明の名称】構造体及び構造体の製造方法
(51)【国際特許分類】
B29C 67/00 20170101AFI20231124BHJP
【FI】
B29C67/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022081888
(22)【出願日】2022-05-18
(71)【出願人】
【識別番号】000005278
【氏名又は名称】株式会社ブリヂストン
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100186015
【弁理士】
【氏名又は名称】小松 靖之
(74)【代理人】
【識別番号】100164448
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 雄輔
(72)【発明者】
【氏名】杉 信一郎
(72)【発明者】
【氏名】石原 暢之
【テーマコード(参考)】
4F213
【Fターム(参考)】
4F213AA45
4F213AB25
4F213AD03
4F213AD08
4F213AG03
4F213AH20
4F213WA38
4F213WA53
4F213WA55
4F213WA83
4F213WB01
(57)【要約】
【課題】本発明は、短時間且つ強固に被接着ゴム部材に取付部材を接着してなり、適時に取付部材を被接着ゴム部材から取り外すことのできる構造体、及び、短時間且つ強固に被接着ゴム部材に取付部材を接着し、適時に取付部材を被接着ゴム部材から取り外す、構造体の製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明の構造体は、被接着ゴム部材の表面に接着層を介して取付部材を取り付けたものであり、前記接着層は、導電部材を含有する熱可塑性樹脂である。本発明の構造体の製造方法は、前記被接着ゴム部材の表面に接着層を介して取付部材を配置する工程と、前記接着層に高周波電磁波を印加して、前記接着層を加熱する工程と、を含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被接着ゴム部材の表面に接着層を介して取付部材を取り付けた構造体であって、
前記接着層は、導電部材を含有する熱可塑性樹脂であることを特徴とする、構造体。
【請求項2】
前記導電部材は、金属部材である、請求項1に記載の構造体。
【請求項3】
前記金属部材は、粒子状、短繊維、メッシュ、及びシート状のいずれかである、請求項2に記載の構造体。
【請求項4】
前記導電部材の少なくとも一部は、前記熱可塑性樹脂の表面に露出している、請求項1~3のいずれか一項に記載の構造体。
【請求項5】
前記導電部材は、前記熱可塑性樹脂の表面に露出していない、請求項1~3のいずれか一項に記載の構造体。
【請求項6】
前記被接着ゴム部材は、タイヤである、請求項1~3のいずれか一項に記載の構造体。
【請求項7】
前記取付部材の、前記接着層と接触する部分の少なくとも一部はゴムである、請求項1~3のいずれか一項に記載の構造体。
【請求項8】
前記取付部材の内部、又は、前記取付部材と前記被接着ゴム部材との間に、電子部品を配置してなる、請求項1~3のいずれか一項に記載の構造体。
【請求項9】
前記電子部品と前記取付部材との間、及び、前記電子部品と前記被接着ゴム部材の表面との間には、前記導電部材が配置されていない、請求項8に記載の構造体。
【請求項10】
前記取付部材は、タイヤサイド部に配置されている、請求項6に記載の構造体。
【請求項11】
前記取付部材は、互いに平行に配列された複数本の補強素子を被覆ゴムにより被覆してなる、請求項6に記載の構造体。
【請求項12】
被接着ゴム部材の表面に接着層を介して取付部材を取り付けた構造体の製造方法であって、
前記接着層は、導電部材を含有する熱可塑性樹脂であり、
前記方法は、
前記被接着ゴム部材の表面に接着層を介して取付部材を配置する工程と、
前記接着層に高周波電磁波を印加して、前記接着層を加熱する工程と、を含むことを特徴とする、構造体の製造方法。
【請求項13】
前記導電部材は、金属部材である、請求項12に記載の構造体の製造方法。
【請求項14】
前記金属部材は、粒子状、短繊維、メッシュ、及びシート状のいずれかである、請求項13に記載の構造体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、構造体及び構造体の製造方法、特に、被接着ゴム部材及び取付部材を備えた構造体、及び、被接着ゴム部材に取付部材を取り付けた構造体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、被接着ゴム部材に取付部材を取り付けた構造体の一例として、タイヤ表面に接着層を介してRF(Radiо Frequency)IDタグ等の電子装置を取付部材として取り付けた構造体が提案されている(例えば、特許文献1)。この技術によれば、RFIDタグに記録された情報を読み取ることにより、タイヤの様々な情報を管理することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の加硫済みゴム部材同士の接着及び複合化は、接着の機能を有する未加硫ゴムを加硫ゴム間に設置して接着剤として用いて、あるいは、加硫ゴム用の接着剤を用いて行われていた。いずれの手法においても、接着剤が硬化し、接着層として機能するまでに長時間を要するため、例えばゴムシートを貼り付けることによるタイヤ等のゴム製品の修復の場合、ダウンタイムが長くなってしまうことが懸念される。
【0005】
これに対し、上記いずれの接着手法においても、熱エネルギーを与えることで接着層として機能するまでの硬化時間を短縮することが可能であるが、過剰な熱エネルギーを与えて高温にすると、被着体である加硫ゴムの熱劣化を生じさせてしまう。また通常の接着剤を使用する場合、溶剤が含まれていることが一般的であり環境負荷が懸念される。
【0006】
ところで、特許文献1のように、タイヤの内部に電子部品等を有する取付部材を設置する場合、通常、電子部品は製造時にタイヤ内に設置し、タイヤ加硫工程によって生タイヤから製品になる段階で固定化される方式をとっていることが多い。このような方式の場合、タイヤ製造時あるいは走行時に電子部品が故障してしまうと、加硫済みのタイヤに改めて電子部品を設置することや新たな電子部品に交換することは困難である。そして、このような問題は、取付部材を製造時の加硫によって被接着ゴム部材に固定化した構造体において同様に生じ得るものである。
【0007】
本発明は、強固に被接着ゴム部材と取付部材とが接着され、適時に取付部材を被接着ゴム部材から取り外すことのできる構造体、及び、短時間且つ強固に被接着ゴム部材に取付部材を接着し、適時に取付部材を被接着ゴム部材から取り外し得る、構造体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の要旨構成は、以下の通りである。
(1)被接着ゴム部材の表面に接着層を介して取付部材を取り付けた構造体であって、
前記接着層は、導電部材を含有する熱可塑性樹脂であることを特徴とする、構造体。
【0009】
(2)前記導電部材は、金属部材である、上記(1)に記載の構造体。
【0010】
(3)前記金属部材は、粒子状、短繊維、メッシュ、及びシート状のいずれかである、上記(2)に記載の構造体。
【0011】
(4)前記導電部材の少なくとも一部は、前記熱可塑性樹脂の表面に露出している、上記(1)~(3)のいずれか1つに記載の構造体。
【0012】
(5)前記導電部材は、前記熱可塑性樹脂の表面に露出していない、上記(1)~(3)のいずれか1つに記載の構造体。
【0013】
(6)前記被接着ゴム部材は、タイヤである、上記(1)~(5)のいずれか1つに記載の構造体。
【0014】
(7)前記取付部材の、前記接着層と接触する部分の少なくとも一部はゴムである、上記(1)~(5)のいずれか1つに記載の構造体。
【0015】
(8)前記取付部材の内部、又は、前記取付部材と前記被接着ゴム部材との間に、電子部品を配置してなる、上記(1)~(7)のいずれか1つに記載の構造体。
【0016】
(9)前記電子部品と前記取付部材との間、及び、前記電子部品と前記被接着ゴム部材の表面との間には、前記導電部材が配置されていない、上記(8)に記載の構造体。
【0017】
(10)前記取付部材は、タイヤサイド部に配置されている、上記(6)に記載の構造体。
【0018】
(11)前記取付部材は、互いに平行に配列された複数本の補強素子を被覆ゴムにより被覆してなる、上記(6)に記載の構造体。
【0019】
(12)被接着ゴム部材の表面に接着層を介して取付部材を取り付けた構造体の製造方法であって、
前記接着層は、導電部材を含有する熱可塑性樹脂であり、
前記方法は、
前記被接着ゴム部材の表面に接着層を介して取付部材を配置する工程と、
前記接着層に高周波電磁波を印加して、前記接着層を加熱する工程と、を含むことを特徴とする、構造体の製造方法。
【0020】
(13)前記導電部材は、金属部材である、上記(12)に記載の構造体の製造方法。
【0021】
(14)前記金属部材は、粒子状、短繊維、メッシュ、及びシート状のいずれかである、上記(13)に記載の構造体の製造方法。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、強固に被接着ゴム部材と取付部材とが接着され、適時に取付部材を被接着ゴム部材から取り外すことのできる構造体、及び、短時間且つ強固に被接着ゴム部材に取付部材を接着し、適時に取付部材を被接着ゴム部材から取り外し得る、構造体の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明の一実施形態にかかる構造体を模式的に示す断面図である。
【
図2】本発明の一実施形態にかかる構造体の他の例を模式的に示す断面図である。
【
図3】本発明の一実施形態にかかる構造体の別の例を模式的に示す断面図である。
【
図4】通信装置を取り付けた一例を模式的に示す断面図である。
【
図5】通信装置を取り付けた他の例を模式的に示す断面図である。
【
図6】ゴム部材同士の接着及び取り外しについて説明するための図である。
【
図7】電子部品を取付部材内に配置する場合について説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に例示説明する。
【0025】
図1は、本発明の一実施形態にかかる構造体を模式的に示す断面図である。
図1に示すように、本実施形態の構造体1は、被接着ゴム部材2の表面に接着層3を介して取付部材4を取り付けたものである。
【0026】
被接着ゴム部材2は、任意のゴム部材とすることができ、例えば加硫ゴム部材とすることができる。被接着ゴム部材2は、例えばタイヤとすることができる。その場合、接着層3を介して取付部材4を取り付ける位置としては、例えばタイヤ内面やタイヤサイド部(外表面側)とすることができる。
【0027】
図示のように、接着層3は、導電部材6を含有する熱可塑性樹脂5である。
【0028】
熱可塑性樹脂としては、ポリウレタン樹脂、ポリオレフィン樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリアミド樹脂等が挙げられる。
【0029】
本実施形態では、導電部材6は、金属部材である。図示例では、導電部材6は、(被接着ゴム部材2、接着層3、及び取付部材4が積層される方向に直交する平面上を延びる)シート状の金属部材であるが、他にも、粒子状、短繊維、メッシュの金属部材とすることができる。
図3は、接着層3が、熱可塑性樹脂の内部に粒子状の金属部材6が散りばめられてなる例である。金属としては、鉄、黒鉛(グラファイト)、タングステン、スズ、アルミニウム、真鍮、銅、ステンレス、ニッケル等を挙げることができる。特には限定されないものの、コストの観点からはアルミニウムを好適に用いることができる。
【0030】
本実施形態では、導電部材6の少なくとも一部は、熱可塑性樹脂5の表面に露出している。本例では、
図1に示すように、導電部材6の一端(図示左側)は、熱可塑性樹脂5の表面に露出しており、導電部材6の他端(図示右側)は、熱可塑性樹脂5の表面に露出していない。一方で、導電部材6の両端が、熱可塑性樹脂5の表面に露出していても良い。あるいは、
図2に示すように、導電部材6は、熱可塑性樹脂5の表面に露出しない構成とすることもできる。
【0031】
取付部材4の、接着層3と接触する部分の少なくとも一部(本例では全部)はゴムである。
【0032】
ここで、取付部材4の内部(
図4)、又は、取付部材4と被接着ゴム部材2との間(
図5)に、電子部品7を配置することができる。
【0033】
この場合、
図4、
図5に示すように、電子部品7と取付部材4との間、及び、電子部品7と被接着ゴム部材2の表面との間には、導電部材6が配置されていないことが好ましい。すなわち、
図4、
図5に示す例では、被接着ゴム部材2、接着層3、及び取付部材4の積層方向に見た際に、電子部品7が配置されている領域には、導電部材6が配置されないように、導電部材6は、一対の導電部材6a、6bが離間して設けられている。これにより、特に電子部品7が通信装置である場合に、その通信性を阻害しないようにすることができる。
【0034】
図6に示すように、このような構造体を製造方法においては、被接着ゴム部材2の表面に接着層3を介して取付部材4を配置する工程(一番左側の図)と、接着層3に高周波電磁波を印加して、接着層3を加熱する工程(左から2番目の図)とを行う。これにより、接着層3が有する導電部材6に誘導電流が流れてジュール熱が発生して熱可塑性樹脂5が加熱され溶融し、その後放冷により熱可塑性樹脂3が固まる(右から2番目の図)。これにより、短時間且つ強固に被接着ゴム部材2と取付部材4とが接着される。構造体1は、被接着ゴム部材2と取付部材4とが強固に接着されたものとなる。なお、発熱体である金属に直接被接着ゴム部材2が接しておらず、また、短時間の加熱とすることが可能であるため、過剰な熱を与えないようにしてゴム部材の劣化が抑えられる。次いで、被接着ゴム部材2から取付部材4を取り外す際にも同様に、接着層3に高周波電磁波を印加して、接着層3を加熱し、熱可塑性樹脂5が溶融して接着力が低下した状態で、被接着ゴム部材2から取付部材4を取り外す(一番右側の図)。
【0035】
このように、本実施形態の構造体によれば、強固に被接着ゴム部材と取付部材とが接着され、適時に取付部材を被接着ゴム部材から取り外すことができる。
また、上記の工程を含む、構造体の製造方法によれば、短時間且つ強固に被接着ゴム部材に取付部材を接着し、適時に取付部材を被接着ゴム部材から取り外し得る。
【0036】
上記のように、導電部材は、金属部材であることが好ましい。誘導加熱に特に有利だからである。金属部材は、粒子状、短繊維、メッシュ、及びシート状のいずれかであることが好ましいが、シート状であることが特に好ましい。効率的に誘導加熱を行うことができるからである。金属部材がシート状又はメッシュ状の場合、金属部材は、被接着ゴム部材2及び取付部材4から離間して配置するのが好ましい。均一な加熱が可能となるからである。
【0037】
均一な加熱や製造性の観点からは、導電部材の少なくとも一部は、熱可塑性樹脂の表面に露出していることが好ましい。あるいは、導電部材の耐久性の観点からは、導電部材は、熱可塑性樹脂の表面に露出していないことが好ましい。
【0038】
一例としては、取付部材は、タイヤサイド部(外表面側)に配置することができ、これにより、タイヤサイド部の外傷を防ぐことができる。
他の例としては、取付部材は、互いに平行に配列された複数本の補強素子を被覆ゴムにより被覆してなるものとすることができ、この場合は、タイヤ内面(インナーライナーを有する場合はインナーライナーの内面)に取付部材を取り付ける。これにより、損傷箇所の補修を行うことができる。
【0039】
ここで、接着層の厚さは、50~1000μmとすることが好ましい。接着性をより高めることができるからである。接着層の厚さは、150~600μmとすることがさらに好ましい。金属部材がシート状である場合、その厚さは、10~200μmとすることが好ましく、30~120μmとすることがさらに好ましい。接着層の厚さは、シート状の金属部材の厚さの5~100倍であることが好ましい。
【0040】
被接着ゴム部材2の表面は、有機塩素化剤による処理、次亜塩素酸水による処理、その他汎用の処理剤を用いて処理を予め行っておくことができる。接着性を高めることができるからである。
【0041】
なお、電子部品7を取付部材4内に配置する場合は、
図7に示すように、高周波電磁波印加装置8により熱可塑性樹脂5が溶融して接着層3が接着性を有した状態で、ゴム部材同士を電子部品7を封止するように接着することができる。
【符号の説明】
【0042】
1:構造体、 2:被接着ゴム部材、
3:接着層、 4:取付部材、
5:熱可塑性樹脂、 6:導電部材、
7:電子部品、 8:高周波電磁波印加装置