(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023170271
(43)【公開日】2023-12-01
(54)【発明の名称】ファンの着脱装置
(51)【国際特許分類】
F04D 29/34 20060101AFI20231124BHJP
【FI】
F04D29/34 R
F04D29/34 Q
F04D29/34 S
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022081889
(22)【出願日】2022-05-18
(71)【出願人】
【識別番号】000156307
【氏名又は名称】株式会社TJMデザイン
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100154003
【弁理士】
【氏名又は名称】片岡 憲一郎
(72)【発明者】
【氏名】後藤 章夫
【テーマコード(参考)】
3H130
【Fターム(参考)】
3H130AA13
3H130AB03
3H130AB12
3H130AB45
3H130AC26
3H130BA95C
3H130BA96C
3H130CB07
3H130DA02Z
3H130DD01Z
3H130DG01Z
3H130EA04C
3H130EB01D
(57)【要約】
【課題】改良されたファンの着脱装置を提供することである。
【解決手段】ファン装置4に用いられる、モータ5の回転軸5aに対するファン6の着脱装置10であって、回転軸5aが挿通される挿通孔21を備え、ファン6に固定された基板部材20と、基板部材20のモータ5とは反対側を向く面に設けられ、回転軸5aの係止溝5bに係合して基板部材20を回転軸5aに保持させる保持機構30と、基板部材20のモータ5の側を向く面に設けられ、回転軸5aに設けられた係止ピン5cに嵌合して基板部材20を回転軸5aに対して回り止めする嵌合機構40と、を有することを特徴とするファン6の着脱装置10。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ファン装置に用いられる、モータの回転軸に対するファンの着脱装置であって、
前記回転軸が挿通される挿通孔を備え、前記ファンに固定された基板部材と、
前記基板部材の前記モータとは反対側を向く面に設けられ、前記回転軸の係止溝に係合して前記基板部材を前記回転軸に保持させる保持機構と、
前記基板部材の前記モータの側を向く面に設けられ、前記回転軸に設けられた係止ピンに嵌合して前記基板部材を前記回転軸に対して回り止めする嵌合機構と、を有することを特徴とするファンの着脱装置。
【請求項2】
前記保持機構が、
前記係止溝に係合する係合部と操作部とを備え、前記係合部と前記操作部との間において、第1支持軸により前記基板部材に回動自在に支持された第1レバー部材と、
前記係止溝に係合する係合部と操作部とを備え、前記係合部と前記操作部との間において、前記第1支持軸に対して前記回転軸を中心として点対称に配置された第2支持軸により前記基板部材に回動自在に支持された第2レバー部材と、を有する、請求項1に記載のファンの着脱装置。
【請求項3】
前記嵌合機構が、
前記係止ピンが嵌合する嵌合溝と、
前記基板部材に装着され、前記係止ピンを前記嵌合溝から離脱させる方向に付勢する弾性体と、を有する、請求項1または2に記載のファンの着脱装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ファン装置に用いられる、モータの回転軸に対するファンの着脱装置に関する。
【背景技術】
【0002】
建物の台所に設置されるコンロなどの調理器具の上方には、レンジフードが設置される。レンジフードは、モータと、モータにより回転駆動されるファンとを有するファン装置を備えており、調理の際に発生する油煙等をファン装置により屋外に排出することができる。
【0003】
従来、例えばレンジフードに用いられるファン装置として、油汚れ等の掃除を容易に行い得るようにするために、ファンをモータの回転軸に対して着脱可能とする着脱装置を備えた構成のものが知られている(例えば特許文献1、2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第5542532号公報
【特許文献1】特開2010-48203号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来のファン装置においては、改良されたファンの着脱装置が求められていた。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、改良されたファンの着脱装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のファンの着脱装置は、ファン装置に用いられる、モータの回転軸に対するファンの着脱装置であって、前記回転軸が挿通される挿通孔を備え、前記ファンに固定された基板部材と、前記基板部材の前記モータとは反対側を向く面に設けられ、前記回転軸の係止溝に係合して前記基板部材を前記回転軸に保持させる保持機構と、前記基板部材の前記モータの側を向く面に設けられ、前記回転軸に設けられた係止ピンに嵌合して前記基板部材を前記回転軸に対して回り止めする嵌合機構と、を有することを特徴とする。
【0008】
本発明のファンの着脱装置は、上記構成において、前記保持機構が、前記係止溝に係合する係合部と操作部とを備え、前記係合部と前記操作部との間において、第1支持軸により前記基板部材に回動自在に支持された第1レバー部材と、前記係止溝に係合する係合部と操作部とを備え、前記係合部と前記操作部との間において、前記第1支持軸に対して前記回転軸を中心として点対称に配置された第2支持軸により前記基板部材に回動自在に支持された第2レバー部材と、を有するのが好ましい。
【0009】
本発明のファンの着脱装置は、上記構成において、前記嵌合機構が、前記係止ピンが嵌合する嵌合溝と、前記基板部材に装着され、前記係止ピンを前記嵌合溝から離脱させる方向に付勢する弾性体と、を有するのが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、改良されたファンの着脱装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】レンジフードの内部構造を示す説明図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係るファンの着脱装置を備えたファン装置の分解側面図である。
【
図4】ファンを取り外した状態のファン装置の側面図である。
【
図6】レバー部材を取り外した状態の保持機構の斜視図である。
【
図10】
図9におけるA-A線に沿う断面図である。
【
図12】回転軸の係止ピン5cが嵌合溝に嵌合した状態の嵌合機構を示す説明図である。
【
図13】嵌合機構に設ける弾性体の変形例を示す説明図である。
【
図14】嵌合機構に設ける弾性体の他の変形例を示す説明図である。
【
図15】嵌合機構に設ける弾性体のさらに他の変形例を示す説明図である。
【
図16】嵌合機構に設ける弾性体のさらに他の変形例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、図面を参照しつつ、本発明の一実施形態に係るファンの着脱装置(着脱機構)について詳細に例示説明する。
【0013】
本発明の一実施形態に係るファンの着脱装置は、レンジフードのファン装置に用いられるものである。
【0014】
図1に示すレンジフード1は、建物の台所に設置されるコンロなどの調理器具(付図四)の上方に設置されるものであり、フード部分2とダクト部分3とを備え、ダクト部分3の内部にファン装置4が設けられている。
【0015】
図2に示すように、ファン装置4は、モータ5とファン6とを有している。
【0016】
モータ5は回転軸5aを有し、回転軸5aの先端側の外周面には、周方向に向けて延びる円環状の係止溝5bが設けられている。また、回転軸5aの係止溝5bよりも根本側には、一対の係止ピン5cが固定されている。一対の係止ピン5cは、それぞれ断面円形であり、回転軸5aの軸心を中心として点対称に配置され、それぞれ回転軸5aに垂直な方向を向いている。
【0017】
図3に示すように、ファン6は、本発明の一実施形態に係るファンの着脱装置10(以下、単に「着脱装置10」とする場合がある。)を備えており、この着脱装置10によりモータ5の回転軸5aに着脱自在に取り付けられている。ファン装置4は、モータ5により駆動されてファン6が回転することで、調理の際に発生する油煙等をフード部分2で捕集し、ダクト部分3を通して屋外に排出することができる。
【0018】
なお、本実施形態では、レンジフード1は、ファン6を横向きとして(モータ5の回転軸5aを水平方向に向けて)ファン装置4が配置された横向き式のものとなっているが、ファン6を下向きとして(モータ5の回転軸5aを鉛直方向下方に向けて)ファン装置4が配置された下向き式のもの、ファン6を斜め下向きとして(モータ5の回転軸5aを斜め下方に向けて)ファン装置4が配置された斜め向き式のものなど、ファン装置4の向きかかわらない種々のレンジフード1に本実施形態の着脱装置10を適用することができる。
【0019】
図3、
図4に示すように、着脱装置10は、基板部材20と、基板部材20のモータ5とは反対側を向く面に設けられた保持機構30と、基板部材20のモータ5の側を向く面に設けられた嵌合機構40とを有している。
【0020】
このように、本実施形態の着脱装置10は、基板部材20を挟んだ一方側に保持機構30を設け、他方側に嵌合機構40を設けた構成としたので、着脱装置10ないし着脱装置10を備えたファン装置4をコンパクトなものとすることができる。
【0021】
図3に示すように、基板部材20は、その軸心にモータ5の回転軸5aが挿通される挿通孔21を備えた板状となっており、ファン6の軸心部分に固定されている。本実施形態では、基板部材20は、例えばアルミ合金などの金属製の鋳造品である。
【0022】
保持機構30は、モータ5の回転軸5aに設けられた係止溝5bに係合して、基板部材20を回転軸5aに当該回転軸5aに対して軸方向に移動不能となるように保持させるものである。本実施形態では、
図5に示すように、保持機構30は、それぞれ基板部材20のモータ5とは反対側を向く面に配置される第1レバー部材31と第2レバー部材32とを有している。
【0023】
第1レバー部材31は、係止溝5bの溝幅よりも若干薄い厚みの板材によりアーム状に形成されており、その一端は係止溝5bに係合する係合部31aとなっている。第1レバー部材31の他端は垂直に折り曲げられて(
図4参照)、矩形の操作部31bとなっている。第1レバー部材31は、係合部31aと操作部31bとの間において、くの字形状に曲がっており、当該くの字に曲がった係合部31aと操作部31bとの間の部分において第1支持軸33により基板部材20に回動自在に支持されている。
【0024】
同様に、第2レバー部材32は、係止溝5bの溝幅よりも若干薄い厚みの板材によりアーム状に形成されており、その一端は係止溝5bに係合する係合部32aとなっている。第2レバー部材32の他端は垂直に折り曲げられて(
図4参照)、矩形の操作部32bとなっている。第2レバー部材32は、係合部32aと操作部32bとの間において、くの字形状に曲がっており、当該くの字に曲がった係合部32aと操作部32bとの間の部分において、第1支持軸33に対して挿通孔21ないし回転軸5aを中心として点対称に配置された第2支持軸34により基板部材20に回動自在に支持されている。
【0025】
このように、本実施形態では、第1レバー部材31と第2レバー部材32は同一の形状となっており、互いに挿通孔21ないし回転軸5aを中心として点対称に配置されている。
【0026】
図6に示すように、本実施形態では、基板部材20のモータ5とは反対側を向く面には、挿通孔21に連なる円筒壁22と、円筒壁22から径方向に向けて互いに反対側に延びる一対の直壁23と、それぞれ直壁23の外側端から周方向に延びる円弧壁24とが一体に設けられている。
【0027】
そして、第1レバー部材31は、係合部31aが一方の直壁23の上面に配置され、操作部31bが他方の円弧壁24の径方向外側に配置され、円弧壁24の上面に沿って回動するようになっている。また、第1レバー部材31は、操作部31bが径方向内側に向けて押し込まれたときに、操作部31bの内側部分が一方の直壁23の上面に設けられた突起23aに当接することで、押込み方向のストローク端が規制されている。なお、第1レバー部材31は、係合部31aが円筒壁22に設けられた突起22aに当接することで、押込みが解除される方向のストローク端が規制されている。
【0028】
同様に、第2レバー部材32は、係合部32aが他方の直壁23の上面に配置され、操作部32bが一方の円弧壁24の径方向外側に配置され、円弧壁24の上面に沿って回動するようになっている。また、第2レバー部材32は、操作部32bが径方向内側に向けて押し込まれたときに、操作部32bの内側部分が他方の直壁23の上面に設けられた突起23aに当接することで、押込み方向のストローク端が規制されている。なお、第2レバー部材32は、係合部32aが円筒壁22に設けられた突起22aに当接することで、押込みが解除される方向のストローク端が規制されている。
【0029】
第1レバー部材31と円筒壁22との間には、第1支持軸33を保持する第1保持筒35に保持されて第1トーションバネ36が設けられ、第1レバー部材31は第1トーションバネ36の弾性力によって係合部31aが係止溝5bに係合する位置に保持されるように付勢されている。なお、第1トーションバネ36に替えて、他のバネ部材を用いてもよい。
【0030】
同様に、第2レバー部材32と円筒壁22との間には、第2支持軸34を保持する第2保持筒37に保持されて第2トーションバネ38が設けられ、第2レバー部材32は第2トーションバネ38の弾性力によって係合部32aが係止溝5bに係合する位置に保持されるように付勢されている。なお、第2トーションバネ38に替えて、他のバネ部材を用いてもよい。
【0031】
上記構成を有する保持機構30では、第1レバー部材31の係合部31aと第2レバー部材32の係合部32aが、それぞれ回転軸5aの係止溝5bに係合することで、回転軸5aに対する基板部材20の軸方向への相対移動を規制して、基板部材20すなわち基板部材20が固定されたファン6をモータ5の回転軸5aに保持させることができる。一方、第1レバー部材31の操作部31bと第2レバー部材32の操作部32bとを同時に径方向内側に向けて押し込むことにより、第1レバー部材31と第2レバー部材32とを、それぞれ第1トーションバネ36ないし第2トーションバネ38のバネ力に抗して第1支持軸33ないし第2支持軸34を中心として回動させて、係合部31aと係合部32aとを係止溝5bから離脱させることができる。そして、この状態で基板部材20を回転軸5aから引き抜くことでファン6をモータ5の回転軸5aから取り外すことができる。また、挿通孔21に回転軸5aを挿入し、係合部31a、32aを係止溝5bに係合させることで、取り外したファン6をモータ5の回転軸5aに取り付けることができる。
【0032】
ここで、特許文献1、2に記載されるもののように、着脱装置が、モータの回転軸を中心とした点対称の構成ではない場合、着脱装置ないしファンの重量が回転軸を中心としてアンバランスとなるので、モータが作動してファンが回転したときに、回転軸5aに重量のアンバランスによる負荷が加わって振動による騒音を生じるなどの問題が生じる虞がある。
【0033】
これに対し、本実施形態の着脱装置10では、保持機構30は、互いに同一の形状を有する第1レバー部材31と第2レバー部材32とが回転軸5aを中心として点対称に配置された構成となっているので、着脱装置10ないし着脱装置10を備えたファン6の重量バランスは回転軸5aを中心として点対称のバランスとなる。また、第1レバー部材31と第2レバー部材32とが同一形状であるので、第1レバー部材31と第2レバー部材32とに付随する、第1支持軸33と第2支持軸34、第1トーションバネ36と第2トーションバネ38、一対の直壁23、一対の円弧壁24なども、回転軸5aを中心として点対称に配置された構成となる。したがって、着脱装置10ないし着脱装置10を備えたファン6の重量は回転軸5aを中心としてバランスされるので、モータ5が作動してファン6が回転したときに、回転軸5aに重量のアンバランスによる負荷が加わることを防止して、振動や騒音の発生等を抑制することができる。
【0034】
また、本実施形態の着脱装置10では、第1レバー部材31と第2レバー部材32として同一形状のものを用いることができるので、従来のもの比較して、実質的な部品点数を削減することができ、さらに、第1レバー部材31、第2レバー部材32などの部品の軽量化、加工を容易に行うことができるので、着脱装置10の製造コストを低減することができる。
【0035】
さらに、本実施形態では、第1レバー部材31、第2レバー部材32を基板部材20に回動自在に支持する第1支持軸33、第2支持軸34としてリベットを用いるようにしているので、ファン6の作動時における振動によって第1レバー部材31、第2レバー部材32が基板部材20から脱落することを防止することができる。
【0036】
さらに、本実施形態の着脱装置10では、基板部材20に直壁23と円弧壁24とを設け、これらで第1レバー部材31と第2レバー部材32の回動をガイドするようにしたので、第1レバー部材31と第2レバー部材32とが安定して回動できるようにして、第1レバー部材31と第2レバー部材32の操作性を高めることができる。
【0037】
さらに、基板部材20に直壁23と円弧壁24とを設け、これらで第1レバー部材31と第2レバー部材32の回動をガイドするようにしたので、操作部31b、32bが基板部材20に対してモータ5から離れる側に配置されるようにして、使用者が、操作部31b、32bを操作し易くすることができる。
【0038】
なお、基板部材20に、直壁23を設けることなく突起23a及び円弧壁24のみを設けた構成としてもよい。直壁23を設けた場合には、基板部材20の成形性を高めるとともに強度を高めることができる。
【0039】
さらに、第1レバー部材31と第2レバー部材32とを、それぞれ係合部31a、32aと操作部31b、32bとの間でくの字に曲がる形状としたので、直壁23ないし円弧壁24の軌道をコンパクトにして、着脱装置10を小型化することができる。
【0040】
さらに、第1レバー部材31と第2レバー部材32の回動を直壁23と円弧壁24とでガイドする構成としたことにより、第1レバー部材31と第2レバー部材32のガイドされる部分の面積を削減して、第1レバー部材31ないし第2レバー部材32への汚れの付着可能性を低減することができる。これにより、第1レバー部材31と第2レバー部材32が常に滑らかに回動できるようにして、着脱装置10の操作性をさらに高めることができる。
【0041】
なお、第1レバー部材31と第2レバー部材32は、互いにほぼ同一の形状であり、回転軸5aを挟んだ重量バランスが均一となるように配置されていれば、互いに完全に同一の形状でなくてもよい。
【0042】
図7に示すように、着脱装置10は、第1レバー部材31の係合部31aが設けられる側の先端部31cが、第2レバー部材32の操作部32bと第2支持軸34に支持される部分との間の部分の内側側面に当接し、第2レバー部材32の係合部32aが設けられる側の先端部32cが、第1レバー部材31の操作部31bと第1支持軸33に支持される部分との間の部分の内側側面に当接する構成とすることもできる。この構成によれば、第1レバー部材31及び第2レバー部材32の一方の操作部31b、32bのみを径方向内側に向けて押し込むことで、第1レバー部材31及び第2レバー部材32の両方を回動させることができる。これにより、ファン6を回転軸5aから取り外す操作をより容易に行うことが可能となる。
【0043】
図3、
図4に示すように、着脱装置10は、保持機構30をカバー部材39で覆った構成とすることもできる。
【0044】
図8に示すように、カバー部材39は、天壁部39a、周壁部39b及び一対のフランジ部39cを有しており、一対のフランジ部39cに設けられた貫通孔39dにおいてリベット50により基板部材20に固定され、天壁部39aと周壁部39bとで保持機構30の大部分を覆っている。なお、フランジ部39cには、基板部材20に設けられた一対の位置決め突起20aに嵌合してカバー部材39を基板部材20に対して位置決めする一対の位置決め孔39eが設けられている。
【0045】
また、カバー部材39の天壁部39aには、回転軸5aの先端が突出する円形の開口39fと、開口39fを挟んで対称に設けられた一対の水抜き孔39gが設けられている。一対の水抜き孔39gは、それぞれプレス加工により天壁部39aの一部を三日月状に内方に押し込んで形成されている。カバー部材39は基板部材20にリベット50で固定されて取り外すことができないが、カバー部材39の天壁部39aに一対の水抜き孔39gを設けたことで、使用者は、ファン6を回転軸5aから取り外して洗浄を行った後、カバー部材39の内部に溜まった水を一対の水抜き孔39gから外部に排出させて、容易に水切りを行うことができる。
【0046】
カバー部材39の周壁部39bには、軸心を挟んで一対の矩形の切欠き39hが設けられている。
図3に示すように、第1レバー部材31の操作部31bが一方の切欠き39hからカバー部材39の外部に突出し、第2レバー部材32の操作部32bが他方の切欠き39hからカバー部材39の外部に突出している。切欠き39hの周方向幅は、第1レバー部材31ないし第2レバー部材32が回動する際の操作部31bないし操作部32bの周方向への移動を許容する幅とされている。また、基板部材20の一対の円弧壁24は、それぞれ周方向幅が切欠き39hよりも大きく且つ切欠き39hに沿った円弧状に形成されており、一対の切欠き39hの大部分はそれぞれ円弧壁24により閉塞されている。さらに、操作部31bないし操作部32bが押し込まれて第1レバー部材31ないし第2レバー部材32が解除方向に回動しても、操作部31b、32bの内側部分が直壁23の上面に設けられた突起23aに当接してストローク端が規制されることで、操作部31bないし操作部32bと一対の円弧壁24との間に隙間が維持されるようになっている。これにより、一対の円弧壁24の外面が傷つくことを防止することができる。
【0047】
嵌合機構40は、モータ5の回転軸5aに設けられた一対の係止ピン5cに嵌合して基板部材20を回転軸5aに対して回り止めするものである。本実施形態では、
図9、
図10に示すように、嵌合機構40は、それぞれ基板部材20のモータ5の側を向く面に設けられた4つの嵌合溝41と、これら4つの嵌合溝41に対応した4つの弾性体としての板バネ部材42と、を有している。
【0048】
より具体的には、基板部材20のモータ5の側を向く面には、挿通孔21を中心としてモータ5の側に向けて突出する平面視で十字形の台座部分43が基板部材20と一体に設けられており、台座部分43の頂部にモータ5の側に向けて突出する円形のドーム状部分44が台座部分43に一体且つ同軸に設けられている。ドーム状部分44の軸心にはモータ5の回転軸5aが挿通される挿通孔21が貫通している。ドーム状部分44における挿通孔21の開口部分には、回転軸5aの外径よりも若干広くなる拡径部分が設けられている。これにより、挿通孔21へ回転軸5aを挿入し易くなっている。
【0049】
4つの嵌合溝41は、それぞれモータ5の側に向けて開口する溝状となってドーム状部分44に設けられている。4つの嵌合溝41は、それぞれ挿通孔21から径方向に沿って延びるとともに互いに周方向に等しい間隔(90度の間隔)を空けて並べて設けられている。また、4つの嵌合溝41の径方向(挿通孔21に垂直な方向)の長さは、回転軸5aに設けられた係止ピン5cの長さよりも短くなっている。
【0050】
図11に示すように、それぞれの嵌合溝41は、係止ピン5cの外径に対応した内径の半円形の底面41aと、底面41aの両側部に連なり且つ回転軸5aと平行な一対の側面41bと、それぞれ側面41bの開口側端に連なる一対の傾斜面41cとを有している。一対の側面41bの周方向の間隔は、係止ピン5cの直径と同一であってもよく、係止ピン5cの直径よりも僅かに大きくてもよい。一対の傾斜面41cは、それぞれ互いの周方向の間隔が側面41bの側から開口側端に向けて徐々に広くなるように傾斜している。
【0051】
基板部材20の矩形溝25には外形が正四角形の金属板製の枠部45が嵌め込まれており、4つの板バネ部材42は、それぞれ枠部45に一体に設けられ、枠部45とともに基板部材20に装着されている。なお、基板部材20の矩形溝25の外側には、ファン6を基板部材20に取り付ける際の位置決めとなる4つの凸部26が設けられている。
【0052】
台座部分43は、それぞれ対応する嵌合溝41の径方向外側に連なる4つの収納溝43aを備えている。4つの板バネ部材42は、それぞれ枠部45の角部分から径方向内側に向けて斜め上方に延び、対応する収納溝43aに配置されている。
図10に示すように、それぞれの板バネ部材42は、自然状態において、対応する嵌合溝41の最下端位置よりも上方に突出しており、当該状態から収納溝43aの内部に向けて下方向(モータ5から離れる方向)に弾性変形自在となっている。
【0053】
ファン6が回転軸5aに取り付けられると、前述の通り、ファン6が保持機構30により回転軸5aに保持された状態となるとともに、
図12に示すように、挿通孔21を挟んで対称に配置された何れか一対の嵌合溝41にそれぞれ回転軸5aに設けられた係止ピン5cが嵌合する。これにより、ファン6は、回転軸5aに保持されるとともに回転軸5aに回り止めされた状態となり、モータ5が作動すると回転軸5aとともに回転することができる。
【0054】
ここで、ファン6が回転軸5aに取り付けられて一対の嵌合溝41にそれぞれ係止ピン5cが嵌合すると、一対の係止ピン5cの嵌合溝41から収納溝43aに突出した部分により、対応する一対の板バネ部材42が下方に向けて押された状態となる。すなわち、一対の係止ピン5cは、一対の板バネ部材42により嵌合溝41から離脱する方向に付勢される。なお、本実施形態では、それぞれの板バネ部材42の先端がくの字に折り曲げられており、板バネ部材42は係止ピン5cに点接触する。また、一対の係止ピン5cは、一対の板バネ部材42に付勢されることで、嵌合溝41の底面41aから離れた状態となる。なお、板バネ部材42の先端を、下向きのくの字に折り曲げた構成とすることで、洗浄の際の傷付きを抑制することができるとともに、指などが引っ掛かり難くして安全性を高めることができる。
【0055】
このように、本実施形態の着脱装置10では、嵌合機構40の一対の板バネ部材42により回転軸5aに設けられた一対の係止ピン5cが付勢された(弾性的に押された)状態で保持機構30によってファン6が回転軸5aに保持されることで、回転軸5aに対するファン6の軸方向へのがたつきを解消して、ファン6の回転時における騒音を低減することができる。
【0056】
ここで、従来のものでは、係止ピンに後付けで緩衝材を取り付けるようにしているので、ファンに加わる重力の方向と回転軸の軸方向とが相違している場合には、振動抑制の効果を発揮しにくいという問題点がある。また、洗浄時などにおいて係止ピンに緩衝材を着脱する作業が煩雑であるという問題点もある。さらに、緩衝材の経年劣化や破損の問題もある。これに対し、本実施形態の着脱装置10では、係止ピン5cは、常に板バネ部材42によって付勢されているので、レンジフード1を、横向き式、下向き式、斜め向き式の何れとした場合であっても(ファン6に加わる重力の方向と回転軸5aの軸方向とが相違している場合であっても)、回転軸5aに対するファン6の軸方向へのがたつきを解消して、ファン6の回転時における騒音を低減することができる。また、緩衝材の着脱も不要である。さらに、本実施形態の着脱装置10では、弾性体として板バネ部材42を用いるようにしたので、弾性体の経年劣化や破損を抑制して、長期間に亘り、上記した振動抑制、騒音低減の効果を持続することができる。
【0057】
さらに、本実施形態の着脱装置10では、ファン6が回転軸5aに取り付けられて一対の嵌合溝41にそれぞれ係止ピン5cが嵌合すると、一対の係止ピン5cは、それぞれ一対の板バネ部材42に付勢されて対応する嵌合溝41の底面41aから離れ、一対の側面41bの間に配置される。したがって、モータ5が作動して回転軸5aが回転すると、一対の係止ピン5cにより一対の側面41bが回転方向に押されてファン6が回転することになるので、回転するファン6に係止ピン5cから軸方向の荷重が加えられることを防止して、ファン6の浮き上がりを防止することができる。
【0058】
さらに、それぞれの嵌合溝41の開口側端に傾斜面41cを設けるようにしたので、ファン6を回転軸5aに取り付ける際に、係止ピン5cと嵌合溝41との周方向位置がずれている場合であっても、係止ピン5cが傾斜面41cにより嵌合溝41の一対の側面41bの間に案内されるようにして、ファン6の回転軸5aへの取り付け作業を容易に行い得るようにすることができる。
【0059】
さらに、一対の係止ピン5cに対して4つの嵌合溝41を設けるようにしたので、一対の係止ピン5cが、4つの嵌合溝41のうちの何れか一対の嵌合溝41に嵌合することができるようにして、ファン6の回転軸5aへの取り付け作業を容易に行い得るようにすることができる。なお、嵌合溝41は、4つに限らず、2つのみ設けるようにしてもよく、6つ以上の2の倍数だけ設けるようにしてもよい。
【0060】
なお、本実施形態では、ファン6が回転軸5aに取り付けられて一対の嵌合溝41にそれぞれ係止ピン5cが嵌合したときに係止ピン5cを嵌合溝41から離脱させる方向に付勢する弾性体として、嵌合溝41の径方向外側に配置した板バネ部材42を用いるようにしているが、これに限らず、弾性体として、ダイヤフラムスプリング、皿バネ、スパイダースプリングなどの他の金属製のバネ部材を用いてもよく、また、金属製のバネ部材に替えてエラストマー、固めのスポンジ、エアクッション、合成ゴムなどを用いるようにしてもよい。より具体的には、弾性体として、例えば
図13に示すように、それぞれ対応する嵌合溝41の径方向外側に配置した4つのコイルスプリング61を用いてもよく、
図14に示すように、嵌合溝41の径方向内側に配置した、挿通孔21と同軸の1つのコイルスプリング62を用いてもよく、
図15に示すように、嵌合溝41の径方向外側に配置した、挿通孔21と同軸の1つのコイルスプリング63を用いてもよく、
図16に示すように、それぞれ対応する嵌合溝41の径方向外側に配置したトーションバネ64を用いてもよい。
【0061】
第1レバー部材31、第2レバー部材32にバネ力を加える第1トーションバネ36、第2トーションバネ38としては、使用者が容易に着脱操作を行い得るようにするために、バネ定数が弱めのものを用いるのが好ましい。本実施形態の着脱装置10では、嵌合機構40の板バネ部材42により係止ピン5cを弾性的に押して振動を抑えることができるので、第1トーションバネ36、第2トーションバネ38のバネ力を弱くしても、ファン6を回転軸5aに確実に保持することができる。
【0062】
本実施形態では、第1トーションバネ36、第2トーションバネ38として、線径が1.2mm、巻き数が8.25、内径が12.6mm、アーム長さが19.8mm、巻角度が90°であり、クローズ時のたわみ角度が122°、オープン時のたわみ角度が136°、力の加わり始めの荷重が5.44N、力の加わり切った荷重が6.07Nとなるものを用いている。このような弱めのバネ力の第1トーションバネ36、第2トーションバネ38を用いることで、例えば、線径が1.4mm、巻き数が12.25、内径が12.6mm、アーム長さが19.8mm、巻角度が90°であり、クローズ時のたわみ角度が122°、オープン時のたわみ角度が136°、力の加わり始めの荷重が6.74N、力の加わり切った荷重が7.51Nとなる比較例1のトーションバネや、線径が1.6mm、巻き数が9.25、内径が12.6mm、アーム長さが19.8mm、巻角度が90°であり、クローズ時のたわみ角度が122°、オープン時のたわみ角度が136°、力の加わり始めの荷重が14.91N、力の加わり切った荷重が16.62Nとなる比較例2のトーションバネを用いた場合に比べて、ファン6を回転軸5aに確実に保持しつつ、第1レバー部材31、第2レバー部材32の操作に必要な操作力を低減して、着脱操作をより容易に行い得るようにすることができる。
【0063】
本実施形態の着脱装置10では、係止ピン5cを付勢する板バネ部材42として、十分な振動低減、騒音低減効果を生じつつより薄型化するために、板厚が1.2mm、初期角度が30°、使用時の荷重点のたわみ量が0.62mmであり、加えられる荷重が168.6N、2バネ分の荷重が337.1N、対ファン荷重比が38.2となるものを用いている。このような板バネ部材42を用いることで、例えば、板厚が1.0mm、初期角度が30°、使用時の荷重点のたわみ量が0.62mmであり、加えられる荷重が99.6N、2バネ分の荷重が199.1N、対ファン荷重比が22.6となる比較例1の板バネ部材や、板厚が0.8mm、初期角度が30°、使用時の荷重点のたわみ量が0.62mmであり、加えられる荷重が49.3N、2バネ分の荷重が98.5N、対ファン荷重比が11.2となる比較例2の板バネ部材を用いた場合に比べて、板バネ部材42を薄型化しつつ十分な振動低減、騒音低減効果を得ることができる。
【0064】
本実施形態のファン装置4は、水、湯、洗剤等に対する耐性を有する素材、構造となっており、容易に清掃が可能である。また、外装の凹凸が少なく洗い易いものである。特定不燃性の金属材料で形成することもできる。
【0065】
また、本実施形態のファン装置4は、カバー部材39は左右対称であり、手で握りやすい形状であるので、着脱操作が容易である。
【0066】
さらに、本実施形態のファン装置4は、第1レバー部材31及び第2レバー部材32の操作部31b、32bが、それぞれ指の先端に対応した1~2cm程度の幅であるので、着脱操作が容易である。
【0067】
さらに、本実施形態のファン装置4は、ファン6を回転軸5aに取り付けると、第1レバー部材31及び第2レバー部材32の係合部31a、32aが回転軸5aの係止溝5bに係合する際に「カチッとした音」が発生するので、使用者は、当該音により取り付けが完全であることを認識することができる。または、カバー部材39の開口39fから回転軸5aが突出することで、使用者が、取り付けが完全であることを認識する構成とすることもできる。または、第1レバー部材31及び第2レバー部材32の操作部31b、32bに色を付けておき、当該色の切欠き39hからの露出、隠れによって使用者が、取り付けが完全であることを認識する構成とすることもできる。
【0068】
さらに、本実施形態のファン装置4は、保持機構30、嵌合機構40によって油が付着しても、ファン6を確実に回転軸5aに固定して回転軸5aから脱落することを防止することができる。
【0069】
本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。
【0070】
例えば、前記実施形態では、保持機構30を、2つのレバー部材(第1レバー部材31、第2レバー部材32)を備えた構成としたが、これに限らず、3つ以上のレバー部材を回転軸5aを中心として点対称に配置した構成とすることもできる。
【0071】
本実施形態では、ファンの着脱装置10をレンジフード1のファン装置4に用いられるものとしたが、これに限らず、レンジフード1以外のファン装置に本発明のファンの着脱装置10を用いるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0072】
1 レンジフード
2 フード部分
3 ダクト部分
4 ファン装置
5 モータ
5a 回転軸
5b 係止溝
5c 係止ピン
6 ファン
10 ファンの着脱装置
20 基板部材
20a 位置決め突起
21 挿通孔
22 円筒壁
22a 突起
23 直壁
23a 突起
24 円弧壁
25 矩形溝
26 凸部
30 保持機構
31 第1レバー部材
31a 係合部
31b 操作部
31c 先端部
32 第2レバー部材
32a 係合部
32b 操作部
32c 先端部
33 第1支持軸
34 第2支持軸
35 第1保持筒
36 第1トーションバネ
37 第2保持筒
38 第2トーションバネ
39 カバー部材
39a 天壁部
39b 周壁部
39c フランジ部
39d 貫通孔
39e 位置決め孔
39f 開口
39g 水抜き孔
39h 切欠き
40 嵌合機構
41 嵌合溝
41a 底面
41b 側面
41c 傾斜面
42 板バネ部材(弾性体)
43 台座部分
43a 収納溝
44 ドーム状部分
45 枠部
50 リベット
61 コイルスプリング(弾性体)
62 コイルスプリング(弾性体)
63 コイルスプリング(弾性体)
64 トーションバネ(弾性体)