(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023170276
(43)【公開日】2023-12-01
(54)【発明の名称】配線基板
(51)【国際特許分類】
H05K 3/46 20060101AFI20231124BHJP
H05K 1/11 20060101ALI20231124BHJP
【FI】
H05K3/46 N
H05K3/46 B
H05K1/11 N
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022081895
(22)【出願日】2022-05-18
(71)【出願人】
【識別番号】000000158
【氏名又は名称】イビデン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】弁理士法人朝日奈特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】橋本 義輝
(72)【発明者】
【氏名】河合 義樹
【テーマコード(参考)】
5E316
5E317
【Fターム(参考)】
5E316AA32
5E316AA35
5E316AA43
5E316CC05
5E316CC08
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5E316CC10
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5E316CC32
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5E317BB15
5E317CC25
5E317CC32
5E317CC33
5E317CC42
5E317CD32
5E317GG03
(57)【要約】
【課題】配線基板の品質向上。
【解決手段】実施形態の配線基板100は、導体パッド111を含む第1導体層と、第1導体層を覆っていて上面21aを有する樹脂絶縁層21と、上面21aに接合されている金属箔12aを含む第2導体層12と、樹脂絶縁層21及び金属箔12aを貫いて導体パッド111を露出させる貫通孔3と、貫通孔3を充填すると共に導体パッド111と第2導体層12とを接続するビア導体4と、を含んでいる。導体パッド111の表面111aに存在する樹脂が平面視において貫通孔3内の表面111aに対して占める比率は面積比で5%以下であり、貫通孔3の周囲で金属箔12aと樹脂絶縁層21とが剥離している部分の長さLは、貫通孔3の中心軸から外側へと向かう方向において10μm以下であり、金属箔12aにおける樹脂絶縁層21から剥離している部分と樹脂絶縁層21との間がビア導体4によって充填されている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
導体パッドを含む第1導体層と、
前記第1導体層を覆っていて、前記第1導体層側と反対側を向く上面を有する樹脂絶縁層と、
前記樹脂絶縁層の前記上面に接合されている金属箔を含む第2導体層と、
前記樹脂絶縁層及び前記金属箔を貫いて前記導体パッドを露出させる貫通孔と、
前記貫通孔を充填すると共に前記導体パッドと前記第2導体層とを接続するビア導体と、
を含む配線基板であって、
前記導体パッドにおける前記ビア導体側の表面に存在する樹脂が平面視において前記貫通孔内の前記表面に対して占める比率は面積比で5%以下であり、
前記貫通孔の周囲で前記金属箔と前記樹脂絶縁層とが剥離している部分の長さは、前記貫通孔の中心軸から外側へと向かう方向において10μm以下であり、
前記金属箔における前記樹脂絶縁層から剥離している部分と前記樹脂絶縁層との間が前記ビア導体によって充填されている。
【請求項2】
請求項1記載の配線基板であって、前記貫通孔に面している前記金属箔の断面と前記貫通孔に面している前記樹脂絶縁層の断面とは同一面上に位置している。
【請求項3】
請求項1記載の配線基板であって、前記樹脂絶縁層の前記上面のうちの前記金属箔から離間している部分の面粗度は、前記上面のうちの前記金属箔と接合している部分の面粗度よりも低い。
【請求項4】
請求項1記載の配線基板であって、前記導体パッドの前記表面における前記貫通孔の幅と、前記樹脂絶縁層の前記上面における前記貫通孔の幅であるトップ幅との差は、前記トップ幅に対して20%以下である。
【請求項5】
請求項1記載の配線基板であって、前記導体パッドの前記表面のうちの前記貫通孔内の部分は、前記表面のうちの前記樹脂絶縁層に覆われている部分と略面一である。
【請求項6】
請求項1記載の配線基板であって、前記金属箔における前記樹脂絶縁層側の表面である下面と、前記樹脂絶縁層の前記上面のうちの前記金属箔と離間している部分との間の角度は、前記金属箔の前記下面と、前記貫通孔に面している前記樹脂絶縁層の断面との間の角度以下であって、且つ、30°以上である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は配線基板に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、第1導体層と、第2導体層と、この両導体層の間に位置する層間絶縁層と、第1導体層と第2導体層とを導通させるフィルドビアと、を含む配線板が開示されている。第2導体層は、層間絶縁層の表面上に位置する導体箔と、導体箔上に形成されているめっき層とを含んでいる。めっき層は、層間絶縁層に形成された穴を充填してフィルドビアを形成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示の配線板では、フィルドビアの周囲において導体箔と層間絶縁層との剥離によって第2導体層が層間絶縁層から剥離することがある。また、フィルドビアと層間絶縁層及び/又は第1導体層との間の密着性が不足して剥離が生じることがある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の配線基板は、導体パッドを含む第1導体層と、前記第1導体層を覆っていて、前記第1導体層側と反対側を向く上面を有する樹脂絶縁層と、前記樹脂絶縁層の前記上面に接合されている金属箔を含む第2導体層と、前記樹脂絶縁層及び前記金属箔を貫いて前記導体パッドを露出させる貫通孔と、前記貫通孔を充填すると共に前記導体パッドと前記第2導体層とを接続するビア導体と、を含んでいる。前記導体パッドにおける前記ビア導体側の表面に存在する樹脂が平面視において前記貫通孔内の前記表面に対して占める比率は面積比で5%以下であり、前記貫通孔の周囲で前記金属箔と前記樹脂絶縁層とが剥離している部分の長さは、前記貫通孔の中心軸から外側へと向かう方向において10μm以下であり、前記金属箔における前記樹脂絶縁層から剥離している部分と前記樹脂絶縁層との間が前記ビア導体によって充填されている。
【0006】
本発明の実施形態によれば、配線基板の導体層の剥離やビア導体の剥離を抑制し得ることがあり、配線基板の品質が高まることがある。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明の一実施形態の配線基板の一例を示す断面図。
【
図3】
図1のII部の他の例を拡大して示す断面図。
【
図4】
図3の例における貫通孔内の導体パッドの表面を示す平面図。
【
図5】
図2のV部の一例をさらに拡大して示す断面図。
【
図6】実施形態の配線基板に対する比較例における
図5に相当する部分の断面図。
【
図7A】一実施形態の配線基板を製造する方法の一例を示す断面図。
【
図7B】一実施形態の配線基板を製造する方法の一例を示す断面図。
【
図7C】一実施形態の配線基板を製造する方法の一例を示す断面図。
【
図7D】一実施形態の配線基板を製造する方法の一例を示す断面図。
【
図7E】一実施形態の配線基板を製造する方法の一例を示す断面図。
【
図7F】一実施形態の配線基板を製造する方法の一例を示す断面図。
【
図7G】一実施形態の配線基板を製造する方法の一例を示す断面図。
【
図7H】一実施形態の配線基板を製造する方法の一例を示す断面図。
【
図7I】一実施形態の配線基板を製造する方法の一例を示す断面図。
【
図7J】一実施形態の配線基板を製造する方法の一例を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
一実施形態の配線基板が図面を参照しながら説明される。
図1は、一実施形態の配線基板の一例である配線基板100を示す断面図である。
図2及び
図3には、
図1のII部の一例及び他の例が、それぞれ拡大して示されている。なお、配線基板100は本実施形態の配線基板の一例に過ぎない。本実施形態の配線基板の積層構造、並びに、導体層及び絶縁層それぞれの数は、
図1の配線基板100の積層構造、並びに配線基板100に含まれる導体層及び絶縁層それぞれの数に限定されない。また、以下の説明で参照される各図面では、開示される実施形態が理解され易いように特定の部分が拡大して描かれていることがあり、大きさや長さについて各構成要素がそれぞれの間の正確な比率で描かれていない場合がある。
【0009】
図1に例示の配線基板100は、交互に積層された複数の導体層及び絶縁層によって構成される積層構造を有していて、その積層方向の中心に位置するコア基板1を含んでいる。コア基板1は、配線基板100の厚さ方向と略直交する2つの主面(第1面2a及び第2面2b)を有する絶縁層2と、絶縁層2の第1面2a上に形成されている導体層11と、絶縁層2の第2面2b上に形成されている導体層14と、を含んでいる。導体層11は、導体パッド111を含んでいる。同様に導体層14は導体パッド141を含んでいる。コア基板1には、絶縁層2を貫通して導体層11と導体層14とを接続する筒状のスルーホール導体10が形成されている。
図1のスルーホール導体10は導体パッド111と導体パッド141とを接続している。筒状のスルーホール導体10の内部は、例えばエポキシ樹脂のような絶縁性樹脂や金属粒子を含む導電性樹脂で形成される充填体10aで充填されている。
【0010】
図1に例示の配線基板100は、さらに、コア基板1における絶縁層2の第1面2a側に順に積層されている樹脂絶縁層21、導体層12、樹脂絶縁層22、及び導体層13を含んでいる。樹脂絶縁層21は絶縁層2の第1面2a及び導体層11の上に形成されていて導体層11を覆っている。樹脂絶縁層21は、導体層11側と反対方向を向く表面である上面21aを有しており、導体層12は樹脂絶縁層21の上面21a上に形成されている。樹脂絶縁層22は、樹脂絶縁層21及び導体層12の上に積層されており、導体層13は樹脂絶縁層22の上に形成されている。
図1の例のように実施形態の配線基板は、導体パッド111のような導体パッドを含む第1導体層(
図1の例では導体層11)を含んでいる。さらに、実施形態の配線基板は、第1導体層を覆っていて、第1導体層側と反対側を向く上面を有する樹脂絶縁層(
図1の例では上面21aを有する樹脂絶縁層21)と、その上面に形成されている第2導体層(
図1の例では導体層12)と、を含んでいる。
【0011】
図1の例の配線基板100は、さらに、絶縁層2の第1面2a側と同様に絶縁層2の第2面2b及び導体層14の上に順に積層されている、樹脂絶縁層23、導体層15、樹脂絶縁層24、及び導体層16を含んでいる。
図1の例の配線基板100は、さらに、樹脂絶縁層22上に形成されていて導体層13を部分的に覆うソルダーレジスト層51と、樹脂絶縁層24上に形成されていて導体層16を部分的に覆うソルダーレジスト層52と、を含んでいる。ソルダーレジスト層51、52は、例えば感光性のエポキシ樹脂やポリイミド樹脂(PI樹脂)などで形成されている。
【0012】
なお、実施形態の配線基板の説明では、配線基板100の厚さ方向において、絶縁層2から遠い側は、「上側」、「外側」、又は、単に「上」若しくは「外」とも称される。一方、配線基板100の厚さ方向において、絶縁層2に近い側は、「下側」、「内側」、又は単に「下」若しくは「内」とも称される。また、実施形態の配線基板の各構成要素において絶縁層2と反対側を向く表面は「上面」とも称され、絶縁層2側を向く表面は「下面」とも称される。なお、配線基板100の厚さ方向は、単に「Z方向」とも称される。
【0013】
図1に示されるように、配線基板100は、さらに、樹脂絶縁層21を貫く貫通孔3と、貫通孔3を充填すると共に導体パッド111と導体層12とを接続するビア導体4と、を含んでいる。貫通孔3は、樹脂絶縁層21に覆われないように貫通孔3の内部に導体パッド111の一部を露出させる。配線基板100のように実施形態の配線基板は、さらに、第1導体層と第2導体層との間の樹脂絶縁層を貫く貫通孔(
図1の例では樹脂絶縁層21を貫く貫通孔3)と、貫通孔3を充填するビア導体(
図1の例ではビア導体4)と、を含んでいる。
【0014】
図1の例の配線基板100は、さらに、樹脂絶縁層22を貫いて導体層12と導体層13とを接続しているビア導体40a、並びに、絶縁層23及び絶縁層24それぞれを貫くビア導体40bを含んでいる。
【0015】
樹脂絶縁層21~24及び絶縁層2は、例えばエポキシ樹脂、ビスマレイミドトリアジン樹脂(BT樹脂)又はフェノール樹脂などの熱硬化性の絶縁性樹脂を用いて形成され得る。樹脂絶縁層21~24及び絶縁層2は、フッ素樹脂、液晶ポリマー(LCP)、フッ化エチレン(PTFE)樹脂、ポリエステル(PE)樹脂、及び変性ポリイミド(MPI)樹脂のような熱可塑性の絶縁性樹脂を用いて形成されていてもよい。なお、絶縁層21~24及び絶縁層2の材料として列挙される各樹脂は、各絶縁層を形成し得る材料の例示に過ぎない。各絶縁層は、配線基板100に含まれる導体層間の絶縁性を提供し得る任意の材料で形成され得る。
【0016】
図1の例の樹脂絶縁層21及び樹脂絶縁層23、並びに絶縁層2は、例えばガラス繊維やアラミド繊維などで構成される補強材(芯材)20を含んでいる。
図1には示されていないが、樹脂絶縁層22及び樹脂絶縁層24も、樹脂絶縁層21が含む補強材20のような補強材を含んでいてもよい。各樹脂絶縁層及び絶縁層2は、さらに、シリカ又はアルミナなどの無機フィラー(図示せず)を含んでいてもよい。なお、樹脂絶縁層21、樹脂絶縁層22、樹脂絶縁層23、及び樹脂絶縁層24は、以下では、それぞれ、単に「絶縁層21」、「絶縁層22」、「絶縁層23」、及び「絶縁層24」とも称される。
【0017】
導体層11~16、ビア導体4及びビア導体40a~40b、並びにスルーホール導体10は、銅又はニッケルなどの適切な導電性を有する任意の金属を用いて形成される。各導体層は、任意の導体パターンを含み得る。
図1の例において導体層11及び導体層14は、前述したように、それぞれ、導体パッド111及び導体パッド141を含んでいる。導体層12は、ビア導体4によって導体パッド111と接続されている導体パッド121を含んでいる。
【0018】
各導体層及び各ビア導体は、積層された導電体によって構成される多層構造を有し得る。
図1の例の導体層11は、例えば銅箔やニッケル箔などからなる金属箔層11aと、金属箔層11a上に形成された第1めっき膜層11bと、第1めっき膜層11b上に形成された第2めっき膜層11cと、を含む多層構造を有している。導体層14も同様の構造を有している。
【0019】
第1めっき膜層11b及び第2めっき膜層11cは、
図1では単層構造を有するように示されているが、それぞれ、無電解めっき膜又はスパッタリング膜で形成される下地膜と、その下地膜を給電層として用いる電解めっきによって形成される電解めっき膜とを含み得る。第2めっき膜層11cに含まれる電解めっき膜によって、導体パッド111におけるビア導体4側の表面111aのような、第1導体層11における第2導体層12側の表面が構成される。一方、第1めっき膜層11bは、絶縁層2を貫く貫通孔内まで連続的に形成されていてスルーホール導体10を形成している。
【0020】
導体層13及び導体層16は、2層の積層構造を有しており、例えば無電解めっき膜又はスパッタリング膜であり得る金属膜と、その上に例えば電解めっきによって形成される金属膜とによって構成されている。ビア導体40a、及び絶縁層24を貫くビア導体40bは、導体層13又は導体層16を構成する金属膜によって形成されている。
【0021】
図1及び
図2に示されるように、本実施形態の配線基板100において導体層12は、絶縁層21の上面21aに接合されている金属箔12aを含んでいる。貫通孔3は、金属箔12aも貫いている。
図1及び
図2の例の導体層12は、さらに、金属箔12a上に形成されている第1金属膜12b、及び第1金属膜12b上に形成されている第2金属膜12cを含んでいる。すなわち、
図1及び
図2の例の導体層12は、金属箔12aからなる第1層と、第1金属膜12bからなる第2層と、第2金属膜12cからなる第3層とを含む3層構造を有している。
図1の例では、導体層15も、導体層12と同様の3層構造を有している。金属箔12aは、例えば銅箔やニッケル箔などであり得る。第1金属膜12bは、例えば無電解めっき膜又はスパッタリング膜であり得る。第2金属膜12cは、例えば、第1金属膜12bを給電層として用いる電解めっきによって形成された電解めっき膜であり得る。第1金属膜12b及び第2金属膜12cは、絶縁層21を貫く貫通孔3の内部にも形成されている。
【0022】
図2に示されるように、第1金属膜12bは、貫通孔3の内部において、貫通孔3に面する絶縁層21の断面21b(貫通孔3を囲む絶縁層21の内壁面)上に形成されていて断面21bを覆っている。第1金属膜12bは、貫通孔3に面する金属箔12aの断面12ab(貫通孔3を囲む金属箔12aの内壁面)も覆っている。第2金属膜12cは、貫通孔3の内部空間のうちの第1金属膜12bに占められていない領域を充填している。第1金属膜12b及び第2金属膜12cのうちの絶縁層21を貫通している部分によってビア導体4が形成されている。ビア導体4は、導体層12と一体的に形成されていて、第1金属膜12b及び第2金属膜12cを含む2層構造を有している。
【0023】
図1~
図3の例において、貫通孔3は、金属箔12a側から導体パッド111側に向かって先細りするテーパー形状を有している。そのため、ビア導体4も、絶縁層21の上面21a側から、導体パッド111側に向かって先細りするテーパー形状を有している。実施形態の配線基板では、貫通孔3及びビア導体4は、このようなテーパー形状を有し得る。後述される製造方法の例のように、貫通孔3がレーザー光の照射によって形成される場合、絶縁層21に伝えられるレーザー光のエネルギーは導体パッド111側に進むにつれて低下するため、
図1などのような形状の貫通孔3が形成され易い。
【0024】
しかし本実施形態では、貫通孔3における金属箔12a側の幅と導体パッド111側の幅との差は比較的小さい。すなわち貫通孔3及びビア導体4のテーパー角は、従来のレーザー加工による貫通孔及びその内部を充填するビア導体のテーパー角と比べて小さいことがある。例えば、本実施形態では、導体パッド111の表面111aにおける貫通孔3の幅(ボトム幅Wb)と、絶縁層21の上面21aにおける貫通孔3の幅(トップ幅Wt)との差は、トップ幅Wtに対して20%以下であり得る。この場合ボトム幅Wbはトップ幅Wtよりも小さい。ボトム幅Wbとトップ幅Wtとの差は、トップ幅Wtに対して5%以下であってもよい。なお、貫通孔3及びビア導体4それぞれの「幅」は、貫通孔3及びビア導体4それぞれのZ方向と直交する断面又は端面の外周上の最も離れた2点間の距離である。
【0025】
前述したように、貫通孔3は、例えばレーザー加工によって
図1などの例のようなテーパー形状を有するように形成され得るが、貫通孔3の形成後の任意の処理や後加工によってその形状を調整し得ることがある。例えば、レーザー加工後の貫通孔3内の樹脂の残渣(スミア)を除去する所謂デスミア処理が、過マンガン酸塩溶液などの薬液への浸漬を含むウェット処理で行われると、貫通孔3に露出する壁面全体が一様に処理されるため、レーザー加工後の形状がそのまま残り易い。しかし、例えば、後述するような四フッ化メタンなどのプラズマガスに貫通孔3を晒すドライ処理でデスミア処理を行うことによって、貫通孔3のテーパー角を小さくし得ることがある。
【0026】
例えば、レーザー加工によるテーパー形状を有する貫通孔3にプラズマガスが金属箔12a側から吹き付けられると、導体パッド111側の貫通孔3の壁際には、金属箔12a側の壁の近傍に吹き付けられたガスが集束する。そのため、金属箔2a側の壁際よりもガスによる反応が多く生じ得る。そのため、その多くの反応によって導体パッド111側で貫通孔3に露出する樹脂が、金属箔12a側で貫通孔3に露出する樹脂よりも多く除去され、その結果、デスミア処理前よりもテーパー角を減少させた貫通孔3が得られることがある。貫通孔3及びビア導体4のテーパー角が比較的小さいと、第1金属膜12b及び第2金属膜12cによる貫通孔3の良好な充填性が得られてビア導体4内にボイドが生じ難いと考えられる。また、小さいテーパー角のためにビア導体4と導体パッド111との接触面積が大きく、そのため、ビア導体4と導体パッド111との密着強度が高いと考えられる。
【0027】
また
図1~
図3の例において、導体パッド111の表面111aのうちの貫通孔3内の部分は、表面111aのうちの絶縁層21に覆われている部分と略面一である。すなわち、導体パッド111の表面111aのうちのビア導体4と接する部分は、その周囲の部分との間に段差を有さず、しかも、上側又は下側に湾曲もしていない。
図1などの例において導体パッド111は、ビア導体4側の表面として略平坦な面である表面111aを有している。表面111aが略平坦なので、ビア導体4の形成時にビア導体4と導体パッド111との間でボイドなどが生じ難く、ビア導体4と導体パッド111とが良好に密着すると考えられる。
【0028】
さらに
図2の例のビア導体4は、導体パッド111と向かい合う底面の全面において導体パッド111に接している。すなわち貫通孔3の内部に露出する導体パッド111の表面111aとビア導体4との間には異物は介在していない。例えば絶縁層21から派生した樹脂の残渣が、導体パッド111とビア導体4との間に存在していない。そのため、導体パッド111とビア導体4との間に高い密着性が得られていて両者の間での剥離が生じ難いと考えられる。例えば、後述されるように、貫通孔3の形成後、前述したドライ処理又はウェット処理による所謂デスミア処理などを行うことによって、樹脂残渣の無い導体パッド111の表面111aが得られる。そして、導体パッド111と良好に密着するビア導体4を形成することができる。
【0029】
しかし、本実施形態の配線基板においても、導体パッド111の表面111aとビア導体4との間に異物が介在していることがある。例えば、導体パッド111の表面111a上に僅かに樹脂の残渣が存在していることがある。
図3は、そのように導体パッド111の表面111a上に樹脂残渣Sが存在する、
図1のII部の他の例を拡大して示している。
図4には、
図3の例のように樹脂残渣Sが存在する導体パッド111の表面111aの平面図が、貫通孔3と共に示されている。なお、
図4はビア導体4が形成される直前の状態を示している。
図4において、符号E1が付された円形状の輪郭は、貫通孔3における導体パッド111側の開口の外縁を示し、符号E2が付された円形状の輪郭は貫通孔3における金属箔12a側の開口の外縁を示している。
【0030】
図3及び
図4に示されるように、これらの例では、貫通孔3の内部に露出する導体パッド111の表面111a上には、樹脂残渣Sが存在している。樹脂残渣Sは、例えば、レーザー加工による貫通孔3の形成時に絶縁層21から派生し、その後のデスミア処理で除去されずに導体パッド111上に残った樹脂屑である。しかし、本実施形態では、デスミア処理が行われているため、ビア導体4の形成の直前まで導体パッド111上に残存する樹脂残渣Sのような異物は極めて少ない。本実施形態では、表面111aに存在する樹脂が平面視において貫通孔3内の表面111aに対して占める比率(R)は、面積比(貫通孔3内の表面111aの面積に対する、1又は複数の樹脂残渣Sの平面視での総面積の比率)で5%以下である。比率Rは0%~5%までの任意の比率であり得る。
【0031】
このように、本実施形態では、導体パッド111の表面111a上に樹脂残渣Sのような樹脂が全く存在しないか、樹脂残渣Sが存在する場合でもその数が少ない又はその大きさが極めて小さい。樹脂残渣Sのような異物が極めて少ない導体パッド111の表面111a上に、ビア導体4が形成されている。従って、導体パッド111とビア導体4とが強固に密着し、そのため両者の間での剥離が生じ難いと考えられる。
【0032】
図2~
図4に示されるように、実施形態の配線基板では、平面視で貫通孔3の周囲において貫通孔3に露出する壁面を起点として金属箔12aと絶縁層21とが離間して剥離部Pが生じていることがある。このような剥離は、貫通孔3の形成のためのレーザー加工時の金属箔12aへのレーザー光の照射による熱的又は機械的衝撃で生じることがある。このような剥離は、さらに、前述したデスミア処理によって生じたり、デスミア処理によってさらに拡大したりすることがある。しかし、実施形態の配線基板において貫通孔3の周囲で金属箔12aと絶縁層21とが剥離している部分の長さLは10μm以下である。なお、長さLは、
図2及び
図4に示されるように、平面視における貫通孔3の周囲での金属箔12aと絶縁層21との剥離部Pの長さであり、貫通孔3の中心軸から貫通孔3の外側へと向かう方向における剥離部Pの長さである。
【0033】
図5には、剥離部Pを含む
図2のV部の拡大図が示されている。また、
図6には、実施形態の配線基板に対する比較例として、従来の配線基板であるが実施形態の配線基板と同程度にビア導体と導体パッドとの間の樹脂残渣が少ない配線基板における、
図5に相当する部分の断面図が示されている。
図5に示されるように、実施形態の配線基板では、貫通孔3の周囲における金属箔12aと絶縁層21との剥離部Pの長さLは、樹脂残渣が実施形態の配線基板と同程度に少ない
図6の従来の配線基板における同等の箇所の剥離部P1の長さL1と比べて短い。前述したように、本実施形態では、貫通孔3の周囲における金属箔12aと絶縁層21との剥離部Pの長さLは、最長でも10μmであり、0μmであってもよい。すなわち金属箔12aと絶縁層21とが貫通孔3の周囲で剥がれていないこともある。本実施形態では、このように、金属箔12aと絶縁層21との剥離部Pの長さLが短いので、導体層12と絶縁層21との間で、より広範に広がる剥離が生じ難く、導体層と絶縁層との間の層間剥離に関する信頼性が高いと考えらえる。
【0034】
前述したように、デスミア処理を行うことによって貫通孔3内の樹脂残渣を除去して貫通孔3内に露出する導体パッド111(
図2参照)上の異物を少なくすることができる。しかしデスミア処理では、デスミア処理に用いられる薬液が、貫通孔に露出する金属箔と絶縁層との界面から浸透してその界面付近の絶縁層の樹脂を溶解させることがある。その結果、金属箔と絶縁層との間に、貫通孔の壁面から、より遠い箇所にまで渡る、
図6の比較例の剥離部P1のような深い剥離が生じることがある。
【0035】
しかし、例えば、前述したプラズマガスを用いるようなドライ処理でデスミア処理を行うことによって、金属箔12aと絶縁層21との剥離を抑制し得ることがある。すなわち、ドライ処理の場合、金属箔12aと絶縁層21との界面に浸透するような薬液は用いられないので、この界面付近の樹脂は溶解し難い。レーザー加工時の衝撃によって金属箔12aと絶縁層21との間に既に剥離が生じていても、その剥離部に露出する絶縁層21の樹脂がプラズマガスと反応して除去される程度であり、深い剥離部は発生し難い。そのため、深い剥離部の発生を従来に比べて抑制し得ることがある。
【0036】
さらに、本実施形態では、
図5に示されるように、剥離部P、すなわち、金属箔12aにおける絶縁層21から剥離している部分と絶縁層21との間が、ビア導体4によって充填されている。ビア導体4の一部が、剥離部Pにまで入り込んでいる。そのため、ビア導体4と絶縁層21との密着性がさらに高められており、両者の間の剥離が一層生じ難いと考えられる。なお、
図5の例では、剥離部Pは、ビア導体4を構成する第1金属膜12bによって充填されているが、剥離部Pは、第1金属膜12bと第2金属膜12cとによって充填されていてもよい。
【0037】
一方、
図6に示される比較例では、金属箔120aと絶縁層210との剥離部P1が貫通孔300に露出する壁面から深くにまで及んでいるため、金属箔120aと絶縁層210との間が金属膜120bで十分に充填されず、両者の間にボイドBが生じている。ボイドBは、温度変化による膨張や収縮などによって金属箔120aと絶縁層210との新たな剥離を生じさせることがある。本実施形態では、前述したように剥離部Pが比較的小さいので、比較例のボイドBのような空乏部が金属箔12aと絶縁層21との間に生じ難く、前述したように両者の間の層間剥離に関する信頼性が高いと考えられる。
【0038】
このように本実施形態では、
図2~
図4に示されるように、導体パッド111上の樹脂が、貫通孔3内に露出する導体パッド111の表面111aの面積比で5%以下と極めて少ない。しかも貫通孔3の周囲における金属箔12aと絶縁層21との剥離部分は比較的小さく、その長さLは10μm以下である。従って本実施形態によれば、ビア導体の絶縁層からの剥離が生じ難く、しかも絶縁層からの導体層の大きな剥離も生じ難い、信頼性の高い配線基板が得られると考えられる。
【0039】
図5に示される配線基板100では、貫通孔3に面している金属箔12aの断面12abと、貫通孔3に面している絶縁層21の断面21bとは、同一面上に位置している。貫通孔3の金属箔12a側の開口部において、金属箔12aは絶縁層21よりも貫通孔3の内部に向かって突出していない。そのため、貫通孔3内が、第1金属膜12b及び第2金属膜12cによって充填され易く、貫通孔3の内部にボイドが生じ難いと考えられる。このように実施形態の配線基板では、それぞれ貫通孔3に面している金属箔12aの断面12abと絶縁層21の断面21bとは、少なくとも略面一であり得る。なお、「貫通孔3に面している絶縁層21の断面21b」は、絶縁層21における剥離部P以外の貫通孔3に面する断面である。また、
図5の例では、断面21bは、細かな凹凸を有している。この場合、「金属箔12aの断面12abと絶縁層21の断面21bとが同一面上に位置している」又は両者が「略面一である」は、断面21bの凹凸の平均線を含む仮想の面が、断面12abと同一面上に位置している、又は略面一であることを意味している。実施形態の説明において凹凸の「平均線」は、その凹凸によって示される曲線について最小二乗法による1次の近似式で示される直線である。
【0040】
また、
図5に示されるように、絶縁層21の上面21aは凹凸を有している。このような凹凸によって金属箔12aとの間で所謂アンカー効果が得られ、絶縁層21と導体層12との強固な密着性が確保される。さらに
図5の例では、絶縁層21の上面21aのうちの剥離部Pにおいて金属箔12aから離間している部分の面粗度は、上面21aのうちの金属箔12aと接合している部分の面粗度よりも低い。例えば貫通孔3の形成時に金属箔12aと離間した絶縁層21の上面21aを、デスミア処理に晒してその凸部を溶解させたり丸めたりすることによって、上面21aの離間部分の面粗度を金属箔12aと接合されたままの部分よりも低下させ得ることがある。また、デスミア処理自体で金属箔12aから剥離した部分も、そのデスミア処理で面粗度を低下させ得ることがある。
図5の例では、絶縁層21の上面21aのうちの金属箔12aから離間している部分の面粗度が他の部分よりも低いので、例えばめっきによる第1及び第2の金属膜12b、12cの形成時に、剥離部Pにめっき液などが回り込み易いと考えられる。従って、剥離部Pがビア導体4によって充填され易いと考えられる。
【0041】
さらに、
図5の例では、金属箔12aにおける絶縁層21側の表面である下面12acと、絶縁層21の上面21aのうちの金属箔12aと離間している部分との間の角度θは、
図6の比較例における相当箇所の角度θ1よりも大きい。例えば、本実施形態において角度θは、30°以上であってもよい。角度θが比較的大きいと、例えばめっきによる第1及び第2の金属膜12b、12cの形成時に、剥離部Pにめっき液などが回り込み易いと考えられる。従って、剥離部Pがビア導体4によって充填され易いと考えられる。なお、角度θは、金属箔12aの下面12acと、貫通孔3に面している絶縁層21の断面21bとの間の角度以下である。
図5の例では、金属箔12aの下面12ac、及び絶縁層21の上面21aのうちの金属箔12aと離間している部分は、いずれも細かな凹凸を有している。この場合、角度θは、下面12acの凹凸の平均線を含む仮想の面と、上面21aのうちの金属箔12aと離間している部分の凹凸の平均線を含む仮想の面とがなす角度である。
【0042】
図7A~
図7Jを参照して、
図1に示される配線基板100が製造される場合を例に、実施形態の配線基板を製造する方法が説明される。先ず、
図7Aに示されるように、コア基板1が用意され、コア基板1その厚さ方向と直交する一方の表面上に絶縁層21及び金属箔12aが積層される。コア基板1の他方の表面上には絶縁層23及び金属箔15aが積層される。
【0043】
コア基板1の用意では、例えば、絶縁層2の両面に、金属箔層11aとなる金属箔が積層された両面銅張積層板が用意される。その金属箔と共に絶縁層2を貫く貫通孔10bがレーザー加工やドリル加工によって形成される。無電解めっき又はスパッタリング、及び電解めっきなどによって、貫通孔10bの内部、及び絶縁層2の両面の金属箔上に、第1めっき膜層11bとなるめっき膜が形成される。貫通孔10b内には、このめっき膜からなる筒状のスルーホール導体10が形成される。筒状のスルーホール導体10の内部は、エポキシ樹脂などを注入することによって充填体10aで充填される。さらに、絶縁層2の両面上のめっき膜の全面及び充填体10aの両側の端面の全面に、第2めっき膜層11cとなるめっき膜が、無電解めっき又はスパッタリング、及び電解めっきなどで形成される。そして、適切な開口を有するエッチングマスク(図示せず)を用いたエッチングによって、絶縁層2の両面の金属箔及びめっき膜の所定の部分が除去される。その結果、導体パッド111や導体パッド141のような所望の導体パターンをそれぞれが含む導体層11及び導体層14を備えたコア基板1が用意される。
【0044】
絶縁層21及び絶縁層23は、それぞれ、例えば、シート状又はフィルム状に成形された絶縁性樹脂を熱圧着することによって形成される。その熱圧着の際に、絶縁層21を形成する絶縁性樹脂の上には金属箔12aが積層され、絶縁層23を形成する絶縁性樹脂の上には金属箔15aが積層され、絶縁性樹脂と共に熱圧着される。例えば、
図7Aの例のように、ガラス繊維やアラミド繊維などで構成される補強材(芯材)20に含侵されたエポキシ樹脂やBT樹脂などの絶縁性樹脂を含むプリプレグが、絶縁層21及び絶縁層23を形成する絶縁性樹脂として用いられる。金属箔12a及び金属箔15aは、例えば銅箔やニッケル箔などの適切な導電性を有する任意の金属箔であり得る。
【0045】
金属箔12a、15aの積層後、
図7Bに示されるように、金属箔12a及び金属箔15aそれぞれの上に、後工程で用いられるレーザー光の吸収性を高める被膜Fが形成されてもよい。例えば黒色の被膜Fを形成することによって、金属箔12a、15a上でのレーザー光の吸収性を高めることができる。被膜Fは、例えば、銅箔などであり得る金属箔12a、15aの表面を強アルカリ性酸化溶液に晒して酸化させることによって形成される酸化膜であり得る。酸化処理によって金属箔12aなどの表面に針状結晶が形成され、黒色を呈する被膜Fが形成され得る。
【0046】
図7Cに示されるように、絶縁層21に、金属箔12a及び被膜Fと共に絶縁層21を貫く貫通孔3が形成される。貫通孔3はビア導体4(
図1参照)の形成位置に形成される。貫通孔3は、例えば炭酸ガスレーザー光やYAGレーザー光を被膜Fに覆われた金属箔12aの表面上に照射することによって形成される。被膜Fが形成されているので、貫通孔3が効率良く形成される。貫通孔3は、レーザー光の照射条件の調整などによって、
図7Cに示されるような、コア基板1に向かって先細るテーパー形状を有するように形成されてもよく、軸方向全体に渡って略同じ幅を有するように形成されてもよい。なお、絶縁層23には、ビア導体40b(
図1参照)の形成位置に、貫通孔3の形成方法と同様の方法で貫通孔31が形成される。
【0047】
図7Dには、貫通孔3の形成後の
図7CのVIID部の拡大図が示されている。なお、以下で参照される
図7E~
図7Hにも、
図7CのVIID部における各工程後の状態が拡大して示されている。
図7Dに示されるように、貫通孔3の形成後、貫通孔3の内部には、主に絶縁層21から派生した樹脂屑である樹脂残渣Sが残存していることがある。
図7Dの例では、樹脂残渣Sは、導体パッド111の表面111a上に付着している。また、
図7Dに示されるように貫通孔3の形成後、貫通孔3の壁面に絶縁層21に含まれている例えばシリカやアルミナなどの無機フィラー21dが露出していることがある。なお、
図7Dの例では、金属箔12aと絶縁層21との間に剥離は生じていないが、貫通孔3の形成時のレーザー加工による熱的及び又は機械的衝撃によって、両者の間に僅かな剥離が生じることもある。
【0048】
図7Eに示されるように、
図7Dの状態で導体パッド111の表面111a上に残存していた樹脂残渣Sが除去される。所謂デスミア処理が行われる。例えば、アルカリ性過マンガン酸塩を含む溶液中に製造途上の配線基板が浸漬されるウェット処理によって、樹脂残渣が除去される。また、樹脂残渣は、酸素、窒素、アルゴン、四フッ化メタン、四フッ化メタンと酸素との混合気、又は、六フッ化硫黄などのプラズマガスに貫通孔3を晒すプラズマ処理のようなドライ処理によって除去されてもよい。
図7Eの例では、
図7Dの状態で導体パッド111上に残存していた樹脂残渣Sが全て除去されているが、導体パッド111上の樹脂残渣がデスミア処理で完全には除去されずに残ることもある。しかしデスミア処理のような樹脂残渣の除去工程を行うことによって殆ど全ての樹脂残渣を除去することができる。実施形態の配線基板が製造される場合は、導体パッド111の表面111aに存在する樹脂が平面視において貫通孔3内の表面111aに対して占める比率が面積比で5%以下となるようにデスミア処理が行われる。
【0049】
このように、所謂デスミア処理のような樹脂残渣の除去工程を行うことによって清浄な導体パッド111の表面111aを得ることができる。しかし、デスミア処理では、金属箔12aとの界面付近の絶縁層21の樹脂が除去されて、
図7Eに示されるように金属箔12aと絶縁層21との剥離部Pが生じることがある。このようなデスミア処理による剥離部Pの発生は、前述したように溶液を用いるウェット処理において顕著なことがある。しかし、プラズマ処理のようなドライ処理でデスミア処理を行うことによって、剥離部Pの発生領域を小さくし得ることがある。ドライ処理では、金属箔12aと絶縁層21との界面への樹脂を溶解させる溶液の浸透が無いので、貫通孔の壁面から外側において広範に及ぶ剥離部Pが発生し難いと考えられる。実施形態の配線基板の製造においては、貫通孔3の周囲での剥離部Pの長さが、貫通孔3の中心軸から外側へと向かう方向において10μm以下に留まるように、例えばプラズマ処理によって、デスミア処理が行われる。
【0050】
また、ドライ処理でデスミア処理を行うことによって、前述したように貫通孔3の導体パッド111側の幅を広げて、ビア導体4(
図1参照)と導体パッド111との密着強度を高め得ることがある。また、ドライ処理でデスミア処理を行うことによって、前述したように、金属箔12aの下面12acと、絶縁層21の上面21aのうちの金属箔12aと離間している部分との間の角度θを大きくし得ることがある。例えば角度θが30°以上となるように、デスミア処理におけるプラズマガスの密度や、温度、処理時間などが調整され得る。また、ドライ処理又はウェット処理を問わずデスミア処理を行うことによって、絶縁層21の上面21aのうちの金属箔12aから離間している部分の面粗度を、上面21aのうちの金属箔12aと接合している部分の面粗度よりも低下させ得ることがある。すなわち、上面21aのうちの金属箔12と離間して露出している部分をデスミア処理の溶液やガスに晒すことによって、例えばその部分の凹凸の凸部の高さを低くし得ることがある。その結果、前述したように、剥離部Pの充填性を高め得ることがある。伝送損失を抑制できることもある。
【0051】
その後、金属箔12aを覆っている被膜Fが除去される。
図7Fに示されるように金属箔12a自体の表面が露出する。被膜Fを除去することで、後工程で金属箔12a上に金属箔12Fとの密着性の良好なめっき膜を形成することができる。被膜Fは、例えば酸処理によって除去される。例えば、硫酸などに製造途上の配線基板を浸漬することによって、被膜Fが除去される。
【0052】
図7Gに示されるように、
図7Fの状態で貫通孔3内に露出していた無機フィラー21dが除去される。無機フィラーの21d除去は任意の方法で行われる。例えば超音波洗浄によって無機フィラーが除去される。例えば、純水が満たされた洗浄槽に製造途上の配線基板が投入され、洗浄槽に適切な振幅及び周波数の超音波が印加される。純水の超音波振動によって、無機フィラー21dが貫通孔3の壁面から離脱して除去される。無機フィラー21dを除去することによって、後工程で貫通孔3の壁面に、浮きやピンホールなどの欠陥の少ない金属膜を形成することができる。
【0053】
なお、実施形態の配線基板の製造では、貫通孔3の形成と、その後のビア導体4(
図7I参照)の形成との間に、導体パッド111の表面111a上に意図せず生成された酸化膜を除去する処理が行われなくてもよい。導体パッド111の表面111a上に酸化膜があると、ビア導体4の形成に支障が生じ得るため、ビア導体4の形成の前に例えばソフトエッチングでこの酸化膜が除去される。しかし、前述したように、酸処理などによって被膜Fの除去が行われていると、導体パッド111上の酸化膜も被膜Fと共に除去されるので、ソフトエッチングのような意図せず生じた酸化膜の除去処理が不要なことがある。ソフトエッチングが行われない場合、導体パッド111の表面111aのうちの貫通孔3内の部分がエッチングされないので、表面111aのうちの貫通孔3内の部分と絶縁層21に覆われている部分とを略面一のまま維持し得ることがある。
【0054】
図7Hに示されるように、貫通孔3の壁面及び金属箔12aの表面の全面に、例えば銅やニッケルなどからなる第1金属膜12bが形成される。第1金属膜12bは、無電解めっき又はスパッタリングなどの任意の方法で形成され得る。
図7Hの例では、金属箔12aにおける絶縁層21と剥離している部分と絶縁層21との間が第1金属膜12bで充填されている。このように実施形態の配線基板の製造においては、金属箔12aと絶縁層21との剥離部Pが、第1金属膜12b、又は、第1金属膜12b及び後工程で形成される第2金属膜12c(
図7J参照)によって充填される。
【0055】
図7Iに示されるように、導体層12及び導体層15が形成される。なお、絶縁層23を貫く貫通孔31の壁面、及び金属箔15a上には、第1金属膜12bと同様の方法で金属膜15bが形成されている。導体層12及び導体層15は、セミアディティブ法やサブトラクティブ法などの任意の導体層の形成方法によって形成される。例えば、セミアディティブ法が用いられる場合、第1金属膜12b上に、導体層12に含まれるべき導体パターンに応じた開口を有するめっきレジスト(図示せず)が設けられる。その開口内に、第1金属膜12bを給電層として用いる電解めっきによって、銅やニッケルなどの適切な金属からなる第2金属膜12cが形成される。貫通孔3が第2金属膜12cで充填されて、貫通孔3内にビア導体4が形成される。その後、図示されないめっきレジストが除去され、さらに、金属箔12a及び第1金属膜12bのうちの第2金属膜12cに覆われていない部分がクイックエッチングなどによって除去される。その結果、所望の導体パターンを含む導体層12が形成される。第2金属膜12cの形成方法と同様の方法で金属膜15b上に金属膜15cを形成することによって、導体層15及びビア導体40bが形成される。
【0056】
サブトラクティブ法が用いられる場合は、第1金属膜12b及び金属膜15bそれぞれの全面に電解めっきによって第2金属膜12c及び金属膜15cが形成される。その後、各金属膜並びに金属箔12a及び金属箔15aそれぞれの所定部分を除去することによって、導体層12、導体層15、ビア導体4、及びビア導体40bが形成される。
【0057】
図7Jに示されるように、絶縁層21及び導体層12上に、絶縁層22、導体層13及びビア導体40aが形成され、絶縁層23及び導体層15上に、絶縁層24、導体層16及びビア導体40bが形成される。絶縁層22及び絶縁層24は、絶縁層21などの形成方法と同様に、例えば、フィルム状に成形された絶縁性樹脂を熱圧着することによって形成される。
図7Jでは、絶縁層21などが含む補強材20のような補強材を含まない絶縁層22及び絶縁層24が形成されている。導体層13、導体層16、ビア導体40a、及びビア導体40bは、前述された導体層12及びビア導体4の形成方法と同様の方法、例えばセミアディティブ法によって形成される。
図7Jの例では、例えば無電解めっき膜と電解めっきとによって構成される2層構造の導体層13及び導体層16が形成されている。
【0058】
さらに、絶縁層22及び導体層13の上にソルダーレジスト層51が形成され、絶縁層24及び導体層16の上にソルダーレジスト層52が形成される。ソルダーレジスト層51には、導体層13の一部を露出させる開口51aが形成され、ソルダーレジスト層52には、導体層16の一部を露出させる開口52aが形成されている。ソルダーレジスト層51及びソルダーレジスト層52は、例えば、感光性を有するエポキシ樹脂やポリイミド樹脂などを含む樹脂膜を、スプレーコーティング、カーテンコーティング、又は積層などの方法で成膜することによって形成される。そして、開口51a、52aの形成位置に応じた適切なパターンを有する露光マスクを用いる露光、及び現像によって、開口51a、52aが形成される。以上の工程を経ることによって、
図1の例の配線基板100が完成する。
【0059】
なお、
図1の配線基板100の導体層12及びビア導体4を例に実施形態の配線基板の特徴が説明されたが、実施形態の配線基板は、導体層12及びビア導体4のような導体層及びビア導体を、その積層構造の任意の階層、及び特定の階層の任意の位置に有し得る。すなわち、実施形態の配線基板は、金属箔12aについて前述された程度に小さく下側の絶縁層と剥離している金属箔を含む導体層を任意の数で任意の階層に有し得る。また、実施形態の配線基板は、そのような金属箔を含む導体層と一体的に形成されて下側の導体パッドとの間に樹脂残渣を挟んでいないかビア導体4について前述された程度に僅かに挟んでいるビア導体を、任意の数で任意の位置に有し得る。
【0060】
実施形態の配線基板は、各図面に例示される構造、並びに、本明細書において例示される構造、形状、及び材料を備えるものに限定されない。前述されたように、実施形態の配線基板は、絶縁層を挟む2以上の任意の数の導体層を有し得る。また、実施形態の配線基板は、コア基板1のようなコア基板を含んでいなくてもよい。すなわち
図1の例の導体層11は、ビルドアップ層内の絶縁層上に形成されていてもよい。
図1の例のビア導体4や貫通孔3は、導体パッド111に向かって先細りする形状でなくてもよい。また、実施形態の配線基板を製造する方法は、
図7A~
図7Jを参照して説明された方法に限定されない。実施形態の配線基板は、貫通孔のデスミア処理の方法を含め、実施形態の配線基板について説明された、構造、樹脂残渣の残存の程度、及び金属箔と絶縁層との剥離の程度などの実現が可能な任意の方法で製造され得る。
【符号の説明】
【0061】
100 配線基板
11 導体層(第1導体層)
111 導体パッド
111a 導体パッドのビア導体側の表面
12 導体層(第2導体層)
12a 金属箔
12ab 貫通孔に面する金属箔の断面
12ac 金属箔の下面
13~16 導体層
21~24 樹脂絶縁層(絶縁層)
21a 絶縁層の上面
21b 貫通孔に面する絶縁層の断面
3、30、31 貫通孔
4、40a、40b ビア導体
L 金属箔と樹脂絶縁層とが剥離している部分の長さ
P 剥離部
θ 金属箔の下面と絶縁層の上面のうちの金属箔と離間している部分との間の角度
Wb 貫通孔のボトム幅
Wt 貫通孔のトップ幅