IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ソニーセミコンダクタソリューションズ株式会社の特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023170280
(43)【公開日】2023-12-01
(54)【発明の名称】測距装置及び測距システム
(51)【国際特許分類】
   G01S 7/4861 20200101AFI20231124BHJP
   G01C 3/06 20060101ALI20231124BHJP
   H01L 31/10 20060101ALI20231124BHJP
【FI】
G01S7/4861
G01C3/06 120Q
G01C3/06 140
H01L31/10 A
H01L31/10 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】19
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022081902
(22)【出願日】2022-05-18
(71)【出願人】
【識別番号】316005926
【氏名又は名称】ソニーセミコンダクタソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(72)【発明者】
【氏名】冨田 和寿
(72)【発明者】
【氏名】佃 恭範
【テーマコード(参考)】
2F112
5F149
5F849
5J084
【Fターム(参考)】
2F112AD01
2F112BA06
2F112CA05
2F112CA12
2F112DA21
2F112DA24
2F112DA28
2F112EA05
2F112FA07
2F112FA14
2F112FA16
2F112FA19
2F112FA41
2F112GA01
2F112GA10
5F149AA07
5F149BB03
5F149BB07
5F149EA02
5F149KA11
5F149XB01
5F149XB38
5F849AA07
5F849BB03
5F849BB07
5F849EA02
5F849KA11
5F849XB01
5F849XB38
5J084AA05
5J084AC02
5J084AD01
5J084BA03
5J084BA36
5J084BA40
5J084CA03
5J084CA32
5J084EA06
(57)【要約】
【課題】周囲の明るさが急激に変化しても、測距開始時点から正確な測距を行う。
【解決手段】測距装置は、物体で反射された反射光パルス信号を受光する受光部と、前記受光部の出力信号に基づいて測距処理を行う測距部と、前記測距部が前記測距処理を開始する前に、前記受光部のバイアス電圧を制御するバイアス制御部と、を備える。
【選択図】図14
【特許請求の範囲】
【請求項1】
物体で反射された反射光パルス信号を受光する受光部と、
前記受光部の出力信号に基づいて測距処理を行う測距部と、
前記測距部が前記測距処理を開始する前に、前記受光部のバイアス電圧を制御するバイアス制御部と、
を備える測距装置。
【請求項2】
前記バイアス制御部は、前記測距部が前記測距処理を開始する前の第1期間と、前記測距処理を行っている間の第2期間とに、前記受光部のバイアス電圧を制御する、
請求項1に記載の測距装置。
【請求項3】
前記第1期間は、前記測距処理を行わない期間のうち、前記測距処理を開始する直前の一部の期間を含む、
請求項2に記載の測距装置。
【請求項4】
前記受光部は、
前記測距処理に用いられる第1受光素子と、
前記バイアス電圧の制御に用いられる第2受光素子と、を有する、
請求項1に記載の測距装置。
【請求項5】
前記受光部は、
前記測距処理に用いられる第1受光素子と、
前記バイアス電圧の制御に用いられる第2受光素子と、を有し、
前記第1受光素子は、前記第2受光素子が前記バイアス電圧の制御を行う期間内に受光動作を行う、
請求項1に記載の測距装置。
【請求項6】
前記受光部は、
前記測距処理に用いられる複数の第1受光素子と、
前記バイアス電圧の制御に用いられる第2受光素子と、を有し、
前記複数の第1受光素子のうちの一部の第1受光素子は、前記第2受光素子が前記バイアス電圧の制御を行う期間内に受光動作を行う、
請求項1に記載の測距装置。
【請求項7】
前記複数の第1受光素子を有する画素アレイ部を備え、
前記一部の第1受光素子は、前記画素アレイ部内の前記複数の第1受光素子を間引いた2以上の第1受光素子である、
請求項6に記載の測距装置。
【請求項8】
前記バイアス制御部は、前記測距部が前記測距処理を開始する前の前記受光部の出力信号の電圧レベルに基づいて、前記バイアス電圧を制御する、
請求項1に記載の測距装置。
【請求項9】
前記バイアス制御部は、前記測距部が前記測距処理を開始する前に前記反射光パルス信号を受光した前記受光部の出力信号の電圧レベルに基づいて、前記バイアス電圧を制御する、
請求項1に記載の測距装置。
【請求項10】
前記第1受光素子が前記反射光パルス信号を受光したときに、前記第1受光素子のカソード電圧又はアノード電圧が予め定めた所定の電圧レベルになるように前記バイアス電圧を制御する、
請求項4に記載の測距装置。
【請求項11】
前記バイアス制御部は、前記受光部の出力信号と所定の閾値との交差回数に基づいて前記バイアス電圧を制御する、
請求項1に記載の測距装置。
【請求項12】
前記受光部は、複数の受光素子を有し、
前記バイアス制御部は、前記複数の受光素子のうち少なくとも一部の受光素子の出力信号と所定の閾値との交差回数に基づいて前記バイアス電圧を制御する、
請求項1に記載の測距装置。
【請求項13】
前記交差回数をカウントする回数カウント部と、
前記受光部の出力信号が所定の閾値と交差した回数と、前記受光部の出力信号レベルとの対応関係を記憶する記憶部と、
前記回数カウント部でカウントされた回数に対応する前記出力信号レベルを前記記憶部から読み出す記憶制御部と、を備え、
前記バイアス制御部は、前記記憶制御部が読み出した前記出力信号レベルに基づいて、前記バイアス電圧を制御する、
請求項11に記載の測距装置。
【請求項14】
前記記憶部は、前記受光部の出力信号が所定の閾値と交差した回数と、前記受光部の前記出力信号レベルと、温度との対応関係を記憶する、
請求項13に記載の測距装置。
【請求項15】
前記回数カウント部は、前記測距部が前記測距処理を開始する前に前記反射光パルス信号を受光した前記受光部の出力信号が前記所定の閾値と交差した回数をカウントする、
請求項13に記載の測距装置。
【請求項16】
請求項1に記載の測距装置と、
光パルス信号を発光する発光部と、をさらに備え、
前記受光部は、前記光パルス信号が前記物体で反射された前記反射光パルス信号を受光する、
測距システム。
【請求項17】
前記発光部は、前記測距処理を行っている期間と、前記測距処理を開始する前の前記バイアス制御部が前記受光部のバイアス電圧を制御する期間とに前記光パルス信号を発光する、
請求項16に記載の測距システム。
【請求項18】
前記測距部は、前記発光部による前記光パルス信号の発光タイミングと、前記受光部による前記反射光パルス信号の受光タイミングとの時間差に基づいて前記物体までの距離を測定する、
請求項17に記載の測距システム。
【請求項19】
前記発光部は、それぞれが前記光パルス信号を発光する複数の発光素子を有し、
前記発光部は、前記測距部が第1距離範囲内の前記物体までの距離を測定する際には、1以上の第1個数の前記発光素子を同時に発光させる第1モードと、前記測距部が前記第1距離範囲よりも広い第2距離範囲内の前記物体までの距離を測定する際には、前記第1個数よりも少ない第2個数の前記発光素子を同時に発光させる第2モードとを有し、
前記発光部は、前記第1モードでは、前記測距部が前記測距処理を行う期間と、前記測距部が前記測距処理を開始する前とにおいて、前記第1個数の前記発光素子を同時に発光させ、前記第2モードでは、前記測距部が前記測距処理を開始する前には前記第2個数の前記発光素子を発光させず、前記測距部が前記測距処理を行う期間内に前記第2個数の前記発光素子を同時に発光させる、請求項16に記載の測距システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術は、測距装置及び測距システムに関する。
【背景技術】
【0002】
ToF(Time of Flight)方式の測距装置では、物体からの反射光パルス信号を受光するためにSPAD(Single-Photon Avalanche Diode)を用いることが多い。SPADは、1光子を検出できる検出能力を有する。通常は、複数のSPADを二次元方向に配列した受光チップが用いられる。
【0003】
しかしながら、SPADのアノードとカソード間のブレークダウン電圧は、温度に応じて変化するという問題があり、温度によって、SPADの検出感度が変動する。このため、温度に応じてSPADのアノード電圧を制御することで、光に反応したSPADのカソード電圧が温度により変動しないようにする技術が提案されている(例えば、特許文献1参照。)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2021-56016号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
例えば、測距装置を自動運転に適用する場合などでは、測距対象の物体が位置する付近の明るさが急激に変化する場合がある。例えば、トンネルの内部を走行している車両がトンネルを出た途端に周囲が急激に明るくなる。また、測距装置を備えたシステムによっては、遠距離測距モードと中近距離測距モードの切り替え機能を備えたものがある。測距用の発光部は、遠距離測距モードでは一部の発光素子のみを発光させるのに対して、中近距離測距モードではより多くの発光素子を発光させる場合がある。この場合、遠距離測距モード時よりも、中近距離測距モード時の方が多くのSPADが反応する。
【0006】
このように、周囲の明るさが急激に変化すると、光に反応するSPADの数が大きく変化し、それによって、SPADのチップの温度が変化する。
【0007】
特許文献1では、周囲の明るさが急激に変化することを考慮に入れていないため、周囲の明るさが急激に変化してからしばらくの間は、測距精度が低下するおそれがある。
【0008】
本技術はこのような状況に鑑みて生み出されたものであり、周囲の明るさが急激に変化しても、測距開始時点から正確な測距を行うことができる測距装置及び測距システムを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために、本開示によれば、
物体で反射された反射光パルス信号を受光する受光部と、
前記受光部の出力信号に基づいて測距処理を行う測距部と、
前記測距部が前記測距処理を開始する前に、前記受光部のバイアス電圧を制御するバイアス制御部と、
を備える測距装置が提供される。
【0010】
前記バイアス制御部は、前記測距部が前記測距処理を開始する前の第1期間と、前記測距処理を行っている間の第2期間とに、前記受光部のバイアス電圧を制御してもよい。
【0011】
前記第1期間は、前記測距処理を行わない期間のうち、前記測距処理を開始する直前の一部の期間を含んでもよい。
【0012】
前記受光部は、
前記測距処理に用いられる第1受光素子と、
前記バイアス電圧の制御に用いられる第2受光素子と、を有してもよい。
【0013】
前記受光部は、
前記測距処理に用いられる第1受光素子と、
前記バイアス電圧の制御に用いられる第2受光素子と、を有し、
前記第1受光素子は、前記第2受光素子が前記バイアス電圧の制御を行う期間内に受光動作を行ってもよい。
【0014】
前記受光部は、
前記測距処理に用いられる複数の第1受光素子と、
前記バイアス電圧の制御に用いられる第2受光素子と、を有し、
前記複数の第1受光素子のうちの一部の第1受光素子は、前記第2受光素子が前記バイアス電圧の制御を行う期間内に受光動作を行ってもよい。
【0015】
前記複数の第1受光素子を有する画素アレイ部を備え、
前記一部の第1受光素子は、前記画素アレイ部内の前記複数の第1受光素子を間引いた2以上の第1受光素子であってもよい。
【0016】
前記バイアス制御部は、前記測距部が前記測距処理を開始する前の前記受光部の出力信号の電圧レベルに基づいて、前記バイアス電圧を制御してもよい。
【0017】
前記バイアス制御部は、前記測距部が前記測距処理を開始する前に前記反射光パルス信号を受光した前記受光部の出力信号の電圧レベルに基づいて、前記バイアス電圧を制御してもよい。
【0018】
前記第1受光素子が前記反射光パルス信号を受光したときに、前記第1受光素子のカソード電圧又はアノード電圧が予め定めた所定の電圧レベルになるように前記バイアス電圧を制御してもよい。
【0019】
前記バイアス制御部は、前記受光部の出力信号と所定の閾値との交差回数に基づいて前記バイアス電圧を制御してもよい。
【0020】
前記受光部は、複数の受光素子を有し、
前記バイアス制御部は、前記複数の受光素子のうち少なくとも一部の受光素子の出力信号と所定の閾値との交差回数に基づいて前記バイアス電圧を制御してもよい。
【0021】
前記交差回数をカウントする回数カウント部と、
前記受光部の出力信号が所定の閾値と交差した回数と、前記受光部の出力信号レベルとの対応関係を記憶する記憶部と、
前記回数カウント部でカウントされた回数に対応する前記出力信号レベルを前記記憶部から読み出す記憶制御部と、を備え、
前記バイアス制御部は、前記記憶制御部が読み出した前記出力信号レベルに基づいて、前記バイアス電圧を制御してもよい。
【0022】
前記記憶部は、前記受光部の出力信号が所定の閾値と交差した回数と、前記受光部の前記出力信号レベルと、温度との対応関係を記憶してもよい。
【0023】
前記回数カウント部は、前記測距部が前記測距処理を開始する前に前記反射光パルス信号を受光した前記受光部の出力信号が前記所定の閾値と交差した回数をカウントしてもよい。
【0024】
本開示の他の一態様では、上述した測距装置と、
光パルス信号を発光する発光部と、をさらに備え、
前記受光部は、前記光パルス信号が前記物体で反射された前記反射光パルス信号を受光する測距システムが提供される。
【0025】
前記発光部は、前記測距処理を行っている期間と、前記測距処理を開始する前の前記バイアス制御部が前記受光部のバイアス電圧を制御する期間とに前記光パルス信号を発光してもよい。
【0026】
前記測距部は、前記発光部による前記光パルス信号の発光タイミングと、前記受光部による前記反射光パルス信号の受光タイミングとの時間差に基づいて前記物体までの距離を測定してもよい。
【0027】
前記発光部は、それぞれが前記光パルス信号を発光する複数の発光素子を有し、
前記発光部は、前記測距部が第1距離範囲内の前記物体までの距離を測定する際には、1以上の第1個数の前記発光素子を同時に発光させる第1モードと、前記測距部が前記第1距離範囲よりも広い第2距離範囲内の前記物体までの距離を測定する際には、前記第1個数よりも少ない第2個数の前記発光素子を同時に発光させる第2モードとを有し、
前記発光部は、前記第1モードでは、前記測距部が前記測距処理を行う期間と、前記測距部が前記測距処理を開始する前とにおいて、前記第1個数の前記発光素子を同時に発光させ、前記第2モードでは、前記測距部が前記測距処理を開始する前には前記第2個数の前記発光素子を発光させず、前記測距部が前記測距処理を行う期間内に前記第2個数の前記発光素子を同時に発光させてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本技術の第1の実施の形態における測距システムの一構成例を示すブロック図である。
図2】本技術の第1の実施の形態における測距装置の一例を示す図である。
図3】本技術の第1の実施の形態における画素チップの一構成例を示す平面図である。
図4】本技術の第1の実施の形態における回路チップの一構成例を示すブロック図である。
図5】本技術の第1の実施の形態における回路ブロックの一構成例を示すブロック図である。
図6】本技術の第1の実施の形態におけるモニタ画素の一例を示すブロック図である。
図7】本技術の第1の実施の形態における測距画素の一例を示すブロック図である。
図8】SPADにおけるカソード電圧の変動の一例を示す図である。
図9】SPADにおけるエクセスバイアスが小さい例を示す図である。
図10】スポット光およびフラッド光の説明図である。
図11】測距処理及びバイアス制御に関する動作タイミング図である。
図12】本技術の第1の実施の形態における測距装置と発光部の動作タイミング図である。
図13A】測距のための演算処理を測距装置内部で行う場合のキャプチャ期間の説明図である。
図13B】測距のための演算処理を測距装置外部で行う場合のキャプチャ期間の説明図である。
図14】本技術の第1の実施の形態における測距停止期間中の測距装置の回路動作を示すである。
図15】本技術の第2の実施の形態における測距停止期間中の測距装置の回路動作を示す図である。
図16】本技術の第3の実施の形態における測距停止期間中の測距装置の回路動作を示す図である。
図17】本技術の第4の実施の形態における測距装置と発光部の動作タイミング図である。
図18A】本技術の第4の実施の形態における、測距停止期間の開始時点から測距期間が開始される数フレーム手前までの期間の測距装置の回路動作を示す図である。
図18B】本技術の第4の実施の形態における、測距期間の直前の測距装置の回路動作を示す図である。
図19】本技術の第5の実施の形態における測距装置と発光部の動作タイミング図である。
図20】本技術の第6の実施の形態における測距装置と発光部の動作タイミング図である。
図21】本技術の第6の実施の形態における、測距停止期間内に、モニタ画素及び測距画素のうち、モニタ画素のみでカウント値を監視する場合の、測距装置の回路動作を示す図である。
図22】本技術の第6の実施の形態における、記憶部のデータ構成を示す図である。
図23】本技術の第6の実施の形態における測距装置の処理動作を示すフローチャートである。
図24】本技術の第6の実施の形態における、測距停止期間内に、モニタ画素及び測距画素のうち、測距画素の一部のみでカウント値を監視する場合の、測距装置の回路動作を示す図である。
図25】本技術の第7の実施の形態における測距装置と発光部の動作タイミング図である。
図26】本技術の第8の実施の形態における測距装置と発光部の動作タイミング図である。
図27】車両制御システムの概略的な構成の一例を示すブロック図である。
図28】車外情報検出部及び撮像部の設置位置の一例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、図面を参照して、測距装置の実施形態について説明する。以下では、測距装置の主要な構成・回路・テーブルモデル等を説明するが、測距装置には、図示又は説明されていない構成部分や機能が存在しうる。以下の説明は、図示又は説明されていない構成部分や機能を除外するものではない。
【0030】
(第1の実施形態)
図1は、本技術の第1の実施の形態における測距システム100の一構成例を示すブロック図である。この測距システム100は、光の照射によって物体までの距離を測定するものであり、車載LiDAR(Light Detection And Ranging)などへの搭載を想定している。この測距システム100は、発光部110、同期制御部120及び測距装置200を備える。発光部110と同期制御部120の少なくとも一方を測距装置200と統合する構成も取りうる。
【0031】
同期制御部120は、発光部110及び測距装置200を同期して動作させる制御を行う。この同期制御部120は、所定周波数の同期信号CLKpに同期させて、発光部110及び測距装置200を動作させる。
【0032】
発光部110は、同期信号CLKpに同期させて、例えば、近赤外光の周波数帯域の光パルス信号を間欠的に発光する。
【0033】
測距装置200は、発光部110からの光パルス信号が物体に照射されて反射された反射光パルス信号を受光し、物体までの距離を算出する。この測距装置200は、dToF(direct Time of Flight)方式の場合、発光部の発光タイミングと、反射光パルス信号を受光したタイミングまでの往復時間を測定する。測距装置200は、測定した往復時間から、物体までの距離を算出し、その距離を示す距離データを生成して出力する。あるいは、測距装置200は、物体からの反射光パルス信号の受光タイミングを推定するまでの測距処理の一部を行い、測距処理の残りの処理を測距装置200の外部で行ってもよい。
【0034】
[測距装置の構成例]
本実施の形態による測距装置は、半導体チップで構成可能である。図2は、測距装置200のチップ構成の一例を示す図である。図2の測距装置200は、画素チップ201と回路チップ202を積層した積層構造で構成されている。これらのチップは、Cu-Cu接合などで接続されて各種の信号の伝送を行う。なお、画素チップ201と回路チップ202は、Cu-Cu接合の他、ビアやバンプなどにより接続されてもよい。
【0035】
図3は、画素チップ201の一構成例を示す平面図である。この画素チップ201には、受光部210が設けられる。この受光部210内に、複数の受光素子211と、複数の受光素子212とが配列されている。受光素子211は、後述するように、温度変化による受光部210の出力電圧の変化をモニタするために設けられている。受光素子212は、測距処理を行うために設けられている。受光素子211は、例えば、受光部210の一端部に沿って、線状に配列されている。なお、受光素子211の配置場所及び個数は任意である。一方、受光素子212は、例えば二次元格子状に配列されている。
【0036】
図4は、回路チップ202の一構成例を示すブロック図である。この回路チップ202は、タイミング生成部220、回路ブロック300、及び出力インタフェース260を備える。回路ブロック300の内部には、測距部270、360が設けられている。測距部270は、測距画素402を用いて測距処理を行う。測距部360は、モニタ画素401を用いて測距処理を行う。測距部270は必須であるが、測距部360は必須ではなく、省略してもよい。なお、測距部270、360は、回路ブロック300とは別個に設けてもよい。
【0037】
測距部270、360の内部には、後述するように、時間デジタル変換部とヒストグラム生成部、及び距離計算部などが設けられる。
【0038】
タイミング生成部220は、上述したように、発光部110の発光タイミングに同期させて受光部210を動作させる制御を行う。
【0039】
回路ブロック300内には、複数の画素回路が配列されている。そのうちの一部の画素回路は、上述の受光素子212と接続されて測距画素402を構成する。回路ブロック300の詳細については後述する。本明細書では、図4の回路ブロックの左右方向を列方向、上下方向を行方向と呼ぶ。
【0040】
測距部270、360内の時間デジタル変換器は、回路ブロック300内の画素回路から出力された反射光パルス信号に応じた光電変換信号の信号レベルが閾値を下回る時刻に対応するデジタル信号を生成する。このデジタル信号は、光子の検出タイミングを示す。時間デジタル変換器は、デジタル信号をヒストグラム生成部に供給する。
【0041】
図4では、回路ブロックを偶数行と奇数行に分けずにデジタル信号を生成するため、回路チップ202の構成を小面積化できるが、回路チップ202の全画素回路でのデジタル信号を生成するため、消費電力が増える。
【0042】
測距部270、360内のヒストグラム生成部は、時間デジタル変換器で生成されたデジタル信号に基づいて、ヒストグラムを生成する。ここで、ヒストグラムは、複数の反射光パルス信号の受光タイミングの頻度を表すグラフである。測距部270内のヒストグラム生成部は、一つ以上の測距画素402に対してヒストグラムを生成し、それぞれのピーク値のタイミングを反射光の受光タイミングとして求める。ヒストグラム生成部で生成されたヒストグラムは、物体までの距離を計測するために用いられる。例えば、dToF方式の場合、ヒストグラムの頻度数が最大のピーク位置に対応する時刻を受光タイミングとし、発光部110の発光タイミングから、受光部210の受光タイミングまでの時間差により、物体までの距離を計算する。物体までの距離は、測距画素402ごとに計算されて、出力インタフェース260を介して外部に出力される。
【0043】
図5図4の回路ブロック300の詳細なブロック図である。図5の回路ブロック300には、複数のモニタ画素回路310と、複数の測距画素回路370と、バイアス制御部500とが配置されている。
【0044】
モニタ画素回路310は、受光素子211ごとに配置され、対応する受光素子211と接続されている。受光素子211と、その受光素子211に接続されたモニタ画素回路310とは、一つのモニタ画素401を構成する。
【0045】
測距画素回路370は、受光素子212ごとに配置され、対応する受光素子212と接続されている。受光素子212と、その受光素子212に対応する測距画素回路370とは、一つの測距画素402を構成する。この測距画素402は、光子を検出してパルス状の光電変換信号を生成する。
【0046】
バイアス制御部500は、モニタ画素401による光子の検出結果に基づいて、受光素子211、212のカソード及びアノードのいずれかの電圧を制御する。
【0047】
以降、本明細書では、受光素子211、212のアノード電圧をバイアス制御部500による制御対象とし、カソード電圧を監視対象として説明する。カソード電圧の監視については後述する。なお、カソード電圧を制御対象、アノード電圧を監視対象としてもよい。本明細書では、制御対象側の電圧を、バイアス電圧と呼ぶ。すなわち、アノード電圧をバイアス電圧と呼ぶことがある。
【0048】
図6は、本技術の第1の実施の形態におけるモニタ画素401の一例を示すブロック図である。前述したように、画素チップ201内の受光素子211と、回路チップ202内のモニタ画素回路310は、1つのモニタ画素401を構成する。受光素子211とモニタ画素回路310はチップ接続部311を介して接続される。本明細書では、チップ接続部311に繋がるモニタ画素回路310の入力ノードを、接続ノード312と呼ぶ。チップ接続部311は、例えばCu-Cu接合により画素チップ201内の配線と回路チップ202内の配線を接続する箇所である。
【0049】
モニタ画素回路310は、pMOS(p-channel Metal Oxide Semiconductor)トランジスタ321及びnMOS(n-channel Metal Oxide Semiconductor)トランジスタ322と、サンプルホールド回路340と、アナログデジタル変換器(ADC)350とを備える。また、モニタ画素回路310は、インバータ330と測距部360を有していてもよい。
【0050】
受光素子211は、光子の入射に応じて、電流を引き込む。この受光素子211として、例えば、上述したSPADが用いられる。
【0051】
pMOSトランジスタ321は、受光素子211のカソードと電源電圧VDDHとの間に挿入される。このpMOSトランジスタ321は、そのゲートに電流源として動作させるためのある一定電圧RCHが入力されており、接続ノード312を介して受光素子211のカソード電圧を電源電圧VDDHに初期化する。一方、nMOSトランジスタ322は、受光素子211のカソードとグランド電圧VSSとの間に挿入される。このnMOSトランジスタ322は、タイミング生成部220からのハイレベルの制御信号SMがゲートに入力された際に、接続ノード312を介して受光素子211のカソードを強制的にグランド電圧VSSに設定する。受光素子211のカソードがグランド電圧VSSに設定されると、受光素子211は受光動作を停止する。
【0052】
受光素子211のカソードに繋がる接続ノード312の電圧(カソード電圧VSM)が監視対象の電圧に該当する。接続ノード312にはサンプルホールド回路340を介してアナログデジタル変換器(ADC)350が接続されている。受光素子211が光子を受光してカソード電圧VSMが低下すると、サンプルホールド回路340がカソード電圧を保持する。アナログデジタル変換器350は、保持電圧と所望のクエンチ電圧との差分がどの程度あるかを判別する一方、受光素子211のアノードは、バイアス制御部500に接続され、そのアノード電圧VRLDは、バイアス制御部500により制御される。
【0053】
アナログデジタル変換器350は、サンプルホールド回路340とバイアス制御部500との間に挿入される。このアナログデジタル変換器350は、サンプルホールド回路340の保持電圧と所望のクエンチ電圧との差分がどの程度あるかを示すデジタル信号を生成する。
【0054】
図7は、本技術の第1の実施の形態における測距画素の一例を示すブロック図である。前述したように、画素チップ201内の受光素子212と、回路チップ202内の測距画素回路370は、一つの測距画素402を構成する。受光素子212と測距画素回路370はチップ接続部371を介して接続される。チップ接続部371と測距画素回路370は、接続ノード372を介して接続される。
【0055】
測距画素回路370は、pMOS(p-channel Metal Oxide Semiconductor)トランジスタ381及びnMOS(n-channel Metal Oxide Semiconductor)トランジスタ382と、インバータ390と、測距部270とを備える。
【0056】
pMOSトランジスタ381は、受光素子212と電源電圧VDDHとの間に挿入される。このpMOSトランジスタ381は、そのゲートに電流源として動作させるためのある一定電圧RCHが入力された際に、接続ノード372を介して受光素子212のカソード電圧を電源電圧VDDHに初期化する。一方、nMOSトランジスタ382は、受光素子212のカソードとグランド電圧VSSとの間に挿入される。このnMOSトランジスタ382は、そのゲートにハイレベルの制御信号SDが入力された際に、接続ノード372を介して受光素子212のカソードを強制的にグランド電圧VSSに設定する。受光素子212のカソードがグランド電圧VSSに設定されると、受光素子212は受光動作を停止する。
【0057】
受光素子212のカソード電圧は、接続ノード372を介してインバータ390に入力される。受光素子212のカソード電圧がインバータ390の閾値電圧を下回るか否かで、インバータ390の出力電圧が変化する。インバータ390の出力電圧は測距部270に入力される。測距部270は、時間デジタル変換器、ヒストグラム生成部、重心計算部、及び距離計算部などを有する。
【0058】
受光素子212のカソードは、接続ノード372に接続される。一方、受光素子212のアノードは、バイアス制御部500に接続され、そのアノード電圧VRLDは、バイアス制御部500により制御される。このように、バイアス制御部500は、受光素子211、212のアノード電圧VRLDを同じ電圧に制御する。
【0059】
図8は、測距画素402内の受光素子212のカソード電圧VSDが変化する様子を示す図である。初期状態では、カソード電圧VSDは、初期電圧である電源電圧VDDHに設定されている。受光素子212に光子が入射すると、カソード電圧VSDは急激に降下する。このカソード電圧VSDの最低値は、クエンチ電圧VQである。カソード電圧VSDがインバータ390の閾値電圧VTHを下回ると、インバータ390の出力論理が反転する。この後、リチャージ処理によりカソード電圧VSDは元の電源電圧VDDHに初期化される。電源電圧VDDHとクエンチ電圧VQとの間の電位差は、エクセスバイアス(超過バイアス)VEXと呼ばれる。また、クエンチ電圧VQとアノード電圧VRLDとの間の電位差は、ブレークダウン電圧VBDと呼ばれる。電源電圧VDDH及びアノード電圧VRLDが一定の場合、エクセスバイアスVEXとブレークダウン電圧VBDは、温度等により変動する。
【0060】
上述したように、受光素子212のカソード電圧VSDがインバータ390の閾値電圧VTHを下回ったときに、インバータ390からはパルス信号が出力される。測距部270は、インバータ390から出力されるパルス信号に基づいて、受光タイミングを表すデジタル信号を生成する。
【0061】
温度に応じて、図8に示すエクセスバイアスVEXは変化し、場合によっては、受光素子212が光子を受光したにもかかわらず、カソード電圧VSDがインバータ390の閾値電圧VTHを下回らないことがある。特に、温度が高くなるほど、エクセスバイアスVEXはより小さくなる傾向にある。図9はエクセスバイアスVEXが小さい例を示す図である。上述したように、エクセスバイアスVEXが小さい場合、受光素子212のカソード電圧VSDがインバータ390の閾値電圧VTHを下回らない場合がある。もしくは、カソード電圧VSDが閾値電圧VTHを下回るのに時間がかかる場合がある。前者の場合、光子が入射したにも関わらず、インバータ390からパルス信号が出力されず、測距できなくなってしまう。後者の場合、光子の検出タイミングにずれが生じ、測距位置に誤差が生じる。
【0062】
そこで、バイアス制御部500は、測距期間内に継続的にモニタ画素401内の受光素子211のカソード電圧VSMをモニタし、カソード電圧VSMの低下度合に応じてモニタ画素401及び測距画素402内の受光素子211、212のアノード電圧VRLDを制御するバイアス制御を行う。より具体的には、受光素子211のカソード電圧VSMの低下度合が小さいほど、アノード電圧VRLDをより低下させるバイアス制御を行う。このようなバイアス制御を行うことで、温度が変化しても、受光素子212のエクセスバイアスVEXをほぼ一定に制御でき、PDE及び測距位置の算出精度が向上する。
【0063】
測距処理は、測距停止期間を間に挟んで、断続的に行われる。測距停止期間内に周囲の明るさが大きく変化すると、その後に測距処理を開始する際に、受光素子211のカソード電圧VSMが直前の測距期間とは異なる値になることがあり、一時的に測距精度が低下する。周囲の明るさの変化は、上述したように、例えばトンネルの内部を走行している車両がトンネルから出た場合や、遠距離測距モード(第2モード)と中近距離測距モード(第1モード)の切り替えを行う場合などに生じる。以下では、遠距離測距モードと中近距離測距モードの切り替えで周囲の明るさが変化する理由を説明する。
【0064】
図10は、遠距離測距モードで用いられるスポット光LSと、中近距離測距モードで用いられるフラッド光LFを説明する図である。遠距離測距モードを選択した場合、遠方まで照射するためにレーザーパワーを上げる必要があるため、限られた数での発光素子にて、所望の範囲内の物体に光パルス信号を照射する必要性があることから、スポット光LSが用いられる。一方、中近距離測定モードを選択した場合、遠距離測距モードに比べてレーザーパワーは軽減できるが、広範囲の物体に光パルス信号を照射するには、より多くの発光素子を発光させる必要があるため、フラッド光LFが用いられる。スポット光LSとは、図10Aに示すように、発光部110内の複数の発光素子を均等に間引いて一部の発光素子のみが発光する光である。フラッド光LFとは、図10Bに示すように、受光部210内を一様に照射する光であり、スポット光LSよりも同時に発光される発光素子の数が多くなる。
【0065】
スポット光LSとフラッド光LFでは、受光素子211、212を構成するSPADに入射する反射光パルス信号の量が大きく異なる。そのため、例えばスポット光LSからフラッド光LFに切り替えた場合、光に反応するSPADの数(以下、発火画素数)が大きく増加し、それによって、SPADのチップの温度が上昇し、SPADの受光素子212のカソード電圧VSDの低下度合が小さくなる。この他、暗いトンネルから明るい屋外に出た際などでも、SPADに入射する光量が大きく増加し、SPADのチップの温度が上昇し、受光素子212のカソード電圧VSDの低下度合が小さくなる場合がある。
【0066】
図11は、一比較例による測距装置の測距処理とバイアス制御に関する動作タイミング図である。図11に示すように測距期間TONと、測距停止期間TOFFとが交互に繰り返される。測距期間TONにおいては、発光部110は光パルス信号を繰り返し発光し、測距停止期間TOFFにおいては、発光部110は光パルス信号の発光を停止する。また、バイアス制御は測距期間TONにのみ行われる。
【0067】
図11の場合、測距停止期間TOFF内には、バイアス制御を行わないため、測距停止期間TOFF内に周囲の明るさが大きく変化すると、その後の測距処理開始時点で正確な測距処理ができないおそれがある。以下に説明する各実施形態では、この問題を解決できることを特徴とする。
【0068】
本実施形態に係る測距装置は、測距処理を開始する前に受光素子211を動作させて、受光素子211、212のバイアス制御を行うことを特徴とする。図12は、第1の実施の形態における測距装置200と発光部110の動作タイミング図である。第1の実施の形態においては、測距期間TONの前の測距停止期間TOFFにおいて受光素子211、212のバイアス制御を行う。測距停止期間TOFF中は、発光部110は光パルス信号の発光を停止しているため、受光素子211は、環境光(ノイズ光とも呼ぶ)を受光することになる。バイアス制御部500は、測距停止期間TOFF中の受光素子211による受光結果に基づいて、受光素子211、212のアノード電圧VRLDを制御する。
【0069】
また、測距期間TONには、受光素子211、212が反射光パルス信号を受光して測距処理を行うキャプチャ期間TCAPと、必要に応じてブランク期間TBLKとが設けられる。ブランク期間TBLKは、キャプチャ期間TCAPが終わってから、次のキャプチャ期間TCAPが始まるまでの期間である。ブランク期間TBLKは省略することができ、その場合、複数のキャプチャ期間が途切れなく設けられることになる。
【0070】
キャプチャ期間TCAPは、図13Aに詳細を示すように、例えば、露光期間TEXPと、読出し期間TRDと、演算期間TCALと、データ出力期間TDOとを含む。露光期間TEXPは、受光素子211、212が反射光パルス信号を受光する期間である。読出し期間TRDは、受光素子212に接続されたインバータ390から出力されたパルス信号をデジタル信号に変換してヒストグラム生成部でヒストグラムを生成する期間である。演算期間TCALは、ヒストグラムに基づいて重心を計算して受光タイミングを特定し、物体までの距離を計測する期間である。データ出力期間TDOは演算期間の演算処理結果を出力する期間である。
【0071】
測距のための演算処理は、本実施形態に係る測距装置200の外部で行ってもよい。この場合、キャプチャ期間TCAPは、図13Bに詳細を示すように、例えば、露光期間TEXPと、読出し期間TRDと、データ出力期間TDOとを含むことになり、演算期間TCALを省略できる。
【0072】
図14は、第1の実施の形態における測距停止期間TOFF中の測距装置200の回路動作を示す図である。上述の通り、測距装置200はモニタ画素401、測距画素402、及びバイアス制御部500を備える。
【0073】
測距停止期間TOFFにおいては、測距画素402に対してハイレベルの制御信号SDが入力される。これにより、nMOSトランジスタ382はオンし、測距画素402内の受光素子212のカソードは、強制的にグランド電圧VSSに設定され、測距画素402内の受光素子212は受光動作を停止する。
【0074】
一方、測距停止期間TOFFにおいて、モニタ画素401に対してはローレベルの制御信号SMが入力される。これにより、nMOSトランジスタ322はオフし、モニタ画素401内の受光素子211のカソード電圧VSMは、電流源として動作させるためのある一定電圧RCHが入力され、リチャージ処理により初期化され、繰り返し受光動作が可能になる。
【0075】
バイアス制御部500は、測距停止期間TOFFにおいても、モニタ画素401内の受光素子211の受光結果に基づいてバイアス制御を行い、受光素子212が光子に反応した際のカソード電圧VSD(クエンチ電圧VQ)が一定の電圧レベルになるようにバイアス制御を行う。これにより、図8に示したエクセスバイアスVEXが温度により変動しなくなり、その後に測距処理を開始した時点から正確な測距を行うことができる。
【0076】
このように、第1の実施の形態では、測距期間TONだけでなく、測距停止期間TOFFにおいても受光素子211、212のバイアス制御を行うため、測距期間の合間の測距停止期間中に周囲の明るさが大きく変化しても、その後の測距処理開始時点から精度よく測距処理を行うことができる。
【0077】
[第2の実施の形態]
上述の第1の実施の形態では、測距停止期間TOFFにおいてはモニタ画素401内の受光素子211のみで受光動作を行ってバイアス制御を行う。これに対して、測距期間TON中はモニタ画素401内の受光素子211だけでなく、測距画素402内の受光素子212も受光動作を行う。測距画素402が受光動作を行うと、発火する受光素子212の数が増えることから、モニタ画素401内の受光素子211のみで受光動作させた時と比較して温度上昇量が変化し、上述したクエンチ電圧VQとエクセスバイアスVEXが変化するため、測距精度が低下するおそれがある。
【0078】
そこで、以下に説明する第2の実施の形態では、測距停止期間TOFFにおいてモニタ画素401内の受光素子211だけでなく、測距画素402内の受光素子212を受光動作させ、測距期間TON中との温度誤差量を無くして測距精度を向上させるものである。すなわち、測距画素402内の受光素子212は、モニタ画素401内の受光素子211がバイアス電圧の制御を行う期間内に受光動作を行う。
【0079】
図15は、第2の実施の形態における測距停止期間TOFF中の測距装置200の回路動作を示す図である。第2の実施の形態における測距画素402に対しては、ローレベルの制御信号SDが入力される。これにより、nMOSトランジスタ382はオフし、測距画素402内の受光素子212のカソード電圧VSDは、電流源として動作させるためのある一定電圧RCHが入力されると、リチャージ処理により初期化され、繰り返し受光動作が可能になる。
【0080】
このように、第2の実施の形態では、測距停止期間TOFFにおいて、モニタ画素401内の受光素子211だけでなく、測距画素402内の受光素子212も受光動作を行うため、測距期間TON中との温度誤差量を無くすことができ、測距処理を開始した直後での測距精度の低下を抑えることができる。
【0081】
[第3の実施の形態]
上述の第1の実施の形態では、測距停止期間TOFFにおいてモニタ画素401内の受光素子211のみが受光動作を行う。一方、第2の実施の形態では、測距停止期間TOFF中において画素チップ201内の全ての画素内の受光素子が受光動作を行うため、消費電力が増大する。そこで、以下に説明する第3の実施の形態では、測距停止期間TOFF中に一部の測距画素402のみが受光動作を行うものである。以下では、測距画素402が、測距停止期間TOFF中に受光動作を行う測距画素403と、測距停止期間TOFF中に受光動作を行わない測距画素404とを含む例を説明する。
【0082】
図16は、第3の実施の形態における測距停止期間TOFF中の測距装置200の回路動作を示す図である。第3の実施の形態では、一部の測距画素403には、ローレベルの制御信号SDを入力して受光動作を行わせ、残りの測距画素404には、ハイレベルの制御信号SDを入力して受光停止状態とする。なお、測距画素403、404内には、測距画素402と同様に、それぞれ受光素子213、214及びnMOSトランジスタ383、384を備える。このように、一部の測距画素403内の受光素子212は、モニタ画素401内の受光素子211がバイアス電圧の制御を行う期間内に受光動作を行う。
【0083】
測距停止期間TOFF中に受光動作を行う一部の測距画素403は、受光部210内の複数の測距画素402から例えば均等に間引かれた測距画素であるのが望ましい。均等に間引かれた一部の測距画素403で受光動作を行うことで、受光部210の全域での温度を反映させてバイアス制御を行うことができる。
【0084】
このように、第3の実施の形態では、測距停止期間TOFF内に、モニタ画素401に加えて、一部の測距画素403で受光動作を行うため、第2の実施の形態よりも低消費電力で、測距開始時点から精度の高い測距処理を行うことができる。
【0085】
[第4の実施の形態]
上述の第1~第3の実施の形態においては、測距停止期間TOFF中に継続的にバイアス制御を行う。このため、温度上昇が安定した結果でアノードのバイアス電圧制御が可能である一方測距停止期間TOFFが長いほど、消費電力が増大する。そこで、以下に説明する第4の実施の形態では、測距停止期間TOFFのうち、測距処理を開始する直前の一部の期間(以下、制御期間TJST)でバイアス制御を行うことを特徴とする。第4の実施の形態では、第3の実施の形態と同様に、測距画素402が、測距停止期間TOFF中に受光動作を行う測距画素403と、測距停止期間TOFF中に受光動作を行わない測距画素404とを含む例を説明する。なお、第4の実施形態は、受光部210内のすべての測距画素402で受光動作を行う場合、又は、モニタ画素401のみで受光動作を行う場合にも適用可能である。
【0086】
図17は、第4の実施の形態における測距装置200と発光部110の動作タイミング図である。図17は、測距停止期間TOFFのうち、測距期間TONの数フレーム手前の制御期間TJSTで、モニタ画素401と一部の測距画素403で受光動作を行ってバイアス制御を行う例を示している。数フレームとは、1フレーム以上を意味し、特定のフレーム数に限定される趣旨ではない。フレーム数が多いほど消費電力が増大するが、より信頼性の高いバイアス制御を行うことができるため、消費電力とバイアス制御の信頼性の兼ね合いで適切なフレーム数を設定するのが望ましい。
【0087】
図18A及び図18Bは、第4の実施の形態における測距装置200の回路動作を示す図である。図18Aは、測距停止期間TOFFの開始時点から制御期間TJSTまでの期間の測距装置200の回路動作を示す図である。この期間内は、受光部210内のモニタ画素401とすべての測距画素403、404は受光動作を停止する。よって、モニタ画素401内の受光素子211のカソードに繋がるnMOSトランジスタ322のゲートに入力される制御信号SMはハイレベルになって受光素子211のカソードは強制的にグランド電圧VSSになる。同様に、上述した期間内には、測距画素403、404内の受光素子213、214のカソードに繋がるnMOSトランジスタ383、384のゲートに入力される制御信号SDはハイレベルになって受光素子213、214のカソードは強制的にグランド電圧VSSになる。モニタ画素401内の受光素子211と測距画素403、404内の受光素子213、214は受光動作を停止する。
【0088】
図18Bは、制御期間TJST内の測距装置200の回路動作を示す図である。図18Bは、図16と同様に、モニタ画素401と一部の測距画素403で受光動作を行う例を示している。モニタ画素401の受光素子211と、一部の測距画素403の受光素子213は、光子に反応するたびに一時的にカソード電圧VSM、VSDが低下し、その後のリチャージ処理によりカソード電圧VSM、VSDは初期化される。
【0089】
このように、第4の実施の形態では、測距停止期間TOFFのうち、測距処理を開始する直前の制御期間TJSTのみでバイアス制御を行うため、消費電力を抑えることができる。
【0090】
[第5の実施の形態]
上述の第1~第4の実施の形態においては、測距停止期間TOFFに受光された環境光(背景光又はノイズ光と呼ぶこともある)に基づいて各受光素子のバイアス制御を行う。環境光の輝度が低い場合、測距停止期間TOFFと測距期間TONの輝度差が大きくなり、受光部210の温度変化も大きくなるため、測距停止期間TOFF内に行ったバイアス制御が測距期間TON内にそのまま適用できなくなるおそれがある。特に、中近距離の測距処理を行う場合、発光部110内のより多くの発光素子を発光させるフラッド光LFに基づく反射光パルス信号を受光部210で受光するため、光子に反応する受光素子の数が急増して温度も上昇することから、バイアス制御をやり直さなければならなくなる。そこで、以下に説明する第5の実施の形態では、測距停止期間TOFF内にも発光部110が光パルス信号を間欠的に発光し、測距期間TONと同じ条件でバイアス制御を行うものである。
【0091】
図19は、第5の実施の形態における測距装置200と発光部110の動作タイミング図である。第5の実施の形態においては、測距期間TONではなく、測距停止期間TOFFの少なくとも一部においても、発光部110は光パルス信号を間欠的に発光する。発光された光パルス信号は、物体に照射されて、物体からの反射光パルス信号がモニタ画素401と測距画素403、404で受光される。モニタ画素401と受光素子211は、反射光パルス信号の受光結果に基づいて、各受光素子のアノード電圧VRLDを制御するバイアス制御を行う。
【0092】
測距期間TONにフラッド光LFを発光させる場合には、温度変化が顕著になるおそれが高いため、測距停止期間TOFFにもフラッド光LFを発光させるのが望ましい。また、測距期間TONにスポット光LSを発光させる場合には、フラッド光LFほどは温度変化が顕著にならないため、消費電力を考慮に入れて、測距停止期間TOFFにはスポット光LSを発光させないようにしてもよい。あるいは、測距期間TONにスポット光を発光させる場合に、測距停止期間TOFFにもスポット光LSを発光させてもよい。
【0093】
また、第5の実施の形態では、測距停止期間TOFF内に、受光部210内のモニタ画素401の他に、すべての測距画素403、404を用いてバイアス制御を行ってもよいし、一部の測距画素403を用いてバイアス制御を行ってもよいし、モニタ画素401のみでバイアス制御を行ってもよい。さらに、制御期間TJSTだけでバイアス制御を行ってもよい。
【0094】
このように、第5の実施の形態では、測距停止期間TOFF内の少なくとも一部の制御期間TJSTにおいて、測距期間TONと同様に発光部110で光パルス信号を発光させて、バイアス制御を行うため、測距停止期間TOFFと測距期間TONとの画素チップ201への入射光量の違いを抑えることができ、測距停止期間TOFF内のバイアス制御の信頼性を向上できる。
【0095】
[第6の実施の形態]
上述の第1~第5の実施の形態においては、モニタ画素401内の受光素子211のカソード電圧VSMの低下度合により、バイアス制御を行っていた。これに対して、以下に説明する第6の実施の形態では、モニタ画素401及び測距画素402における受光素子211、212のカソード電圧VSM、VSDがインバータ330、390の閾値電圧VTHを下回った回数(以下、カウント値)をカウントする。このカウント値に基づき、バイアス制御を行うという点で、第1~第5の実施の形態と異なる。
【0096】
第1~第5の実施形態のように、受光素子211のカソード電圧VSMの低下度合に応じてバイアス制御を行う場合、温度変化に応じてバイアス電圧(例えば、受光素子212のアノード電圧VRLD)を細かく調整することができる。これに対して、以下に説明する第6の実施形態では、受光素子211、212のカソード電圧VSM、VSDがインバータ330、390の閾値電圧VTHを下回った回数によりバイアス制御を行うため、温度変化に対してバイアス電圧を細かく調整することはできないものの、一部の画素を動作させるだけで受光部210内のすべての受光素子211、212のバイアス電圧を制御できる。
【0097】
図20は、第6の実施の形態における測距装置200と発光部110の動作タイミング図である。第6の実施の形態においては、測距停止期間TOFFにおいて測距装置200はカウント動作を行う。
【0098】
図21は、第6の実施の形態における測距装置200の回路動作を示す図である。図21は、測距停止期間TOFF内に、モニタ画素401及び測距画素402のうち、モニタ画素401のみでカウント値を監視する場合を示す図である。この場合、モニタ画素401の受光素子211のカソード電圧VSMは、pMOSトランジスタ321により初期化電圧に設定され、受光動作が可能となる。一方、測距画素402の受光素子212のカソードは、nMOSトランジスタ383、384によりグランド電圧VSSに設定され、受光動作が強制的に停止状態になる。
【0099】
第6の実施の形態において、モニタ画素回路310は、測距部360内のヒストグラム生成部兼カウント部613と、記憶部620と、記憶制御部630とを用いて、上述したカウント値をカウントする。測距部360内に配置される時間デジタル変換器612は、測距処理では使用されるが、カウント処理時には使用されず、バイパスされる。
【0100】
受光素子211に光子が入射し、カソード電圧VSMがインバータ330の閾値電圧VTHを下回ったとき、インバータ330から反転パルス信号が出力され、この反転パルス信号がデジタル信号となる。このデジタル信号は、受光素子211のカソード電圧VSMがインバータ330の閾値電圧VTHを下回ったか否かを示す2値信号である。
【0101】
ヒストグラム生成部兼カウント部613は、測距停止期間TOFF内には上記のデジタル信号に基づいて、光子の反応頻度をカウント値として出力する。
【0102】
記憶部620は、個々の受光素子211でカウントされたカウント値の平均値と、受光素子211のクエンチ電圧VQと、温度との対応関係を記憶する。記憶部620に記憶される情報は、例えば、本開示による測距装置の出荷前に測定されて記憶される情報である。
【0103】
図22は記憶部620のデータ構成を示す図である。図示のように、記憶部620には、カウント値の平均値と、モニタ画素401内の受光素子211あるいは212のクエンチ電圧VQと、温度との対応関係が記憶されている。受光素子211、212のクエンチ電圧VQは、バイアス制御されるアノード電圧VRLDを示している。なお、記憶部620における温度の情報は、カウント値からクエンチ電圧VQを推定する観点では、必須の情報ではない。
【0104】
記憶制御部630は、ヒストグラム生成部兼カウント部613から出力されたカウント値に基づいて記憶部620を参照し、対応するクエンチ電圧VQを取得する。
【0105】
図23は、第6の実施の形態における測距装置200の処理動作を示すフローチャートである。このフローチャートは、測距停止期間TOFF内に行われる。
【0106】
まず、記憶部620に図22の情報を記憶する(ステップS1)。上述したように、ステップS1の処理は、例えば、測距装置の出荷前に行われる。あるいは、ユーザの指示で、任意のタイミングで記憶部620に図22の情報を記憶してもよい。
【0107】
次に、測距停止期間TOFF内にモニタ画素401を用いて、受光素子211のカソード電圧VSMがインバータ330の閾値電圧VTHを下回る回数をカウントする(ステップS2)。このステップS2では、より詳細には、ヒストグラム生成部兼カウント部613にて、回数をカウントする複数の受光素子211のカウント値の平均値を計算する。
【0108】
次に、ステップS2でカウントしたカウント値に基づいて記憶部620を参照し、対応するクエンチ電圧VQを取得する(ステップS3)。ステップS3の処理は、記憶制御部630が行う。
【0109】
次に、受光部210内の各受光素子211、212のカソード電圧VSM、VSDが光子反応時にステップS3で取得したクエンチ電圧VQになるように、各受光素子211、212のアノード電圧VRLDを制御するバイアス制御を行う(ステップS4)。ステップS4の制御は、バイアス制御部500で行われる。
【0110】
図23のステップS2~S4の処理は、測距停止期間TOFFのたびに行われる。ステップS2のカウント値のカウントは、上記では図21に示すようなモニタ画素401のみで行う場合を説明した。なお変形例として、図24に示すように一部の測距画素403のみでカウントを行ってもよいし、すべての測距画素402でカウントを行ってもよい。測距画素403あるいは404でカウントを行う場合は、それぞれの対応の受光素子213、214のカソード電圧VSDが、インバータ390の閾値電圧VTHを下回る回数をカウントする。なお、図21の記憶部620は、測距装置200とは別個に設けてもよい。また、図24では、測距部270でカウントしたカウント値を記憶する記憶部を省略しているが、この記憶部は測距装置200とは別個に設けてもよい。
【0111】
図24は、モニタ画素401及び測距画素402のうち、一部の測距画素403のみでカウント値を監視する場合を示す図である。一部の測距画素403のみでカウント値を監視する場合、測距停止期間TOFF中においてはモニタ画素401及びカウント値監視を行わない測距画素404の受光素子211、214のカソードはnMOSトランジスタ322、384により強制的にグランド電圧VSSに設定されて、受光動作が停止状態になる。
【0112】
図24の測距画素回路370は、測距部270内で光子の反応頻度をカウントする。
【0113】
モニタ画素401のみでカウント値を監視する場合と同様に、測距画素403においても、カウント値と記憶部を用いて、受光素子213のクエンチ電圧VQを推定し、推定されたクエンチ電圧VQに基づいてバイアス制御を行うことができる。
【0114】
このように、第6の実施形態では、モニタ画素401内の受光素子211のカソード電圧VSMに基づいてバイアス制御を行うのではなく、カソード電圧VSMもしくはVSDがインバータ330、390の閾値電圧VTHを下回った回数に基づいてバイアス制御を行うため、一部の画素を動作させるだけで温度変化の差を気にせず受光素子211、212のアノード電圧VRLDを制御できる。また、事前に記憶部620にカウント値と、クエンチ電圧VQと、温度との対応関係を記憶するため、計測されたカウント値から記憶部620を参照して、クエンチ電圧VQを取得してバイアス電圧を設定でき、迅速にバイアス制御を行うことができる。
【0115】
[第7の実施の形態]
上述の第6の実施の形態においては、測距停止期間TOFFに継続的にカウント動作を行っていた。これに対して、以下に説明する第7の実施の形態では、第4の実施の形態と同様に、カウント動作を行う期間を、制御期間TJSTに限定することで、消費電力を抑えるものである。
【0116】
図25は、第7の実施の形態における測距装置200と発光部110の動作タイミング図である。第7の実施の形態においては、測距停止期間TOFFのうち、測距期間TONの直前の制御期間TJST内にカウント動作を行う。
【0117】
このように、第7の実施の形態では、測距停止期間TOFF内の一部である制御期間TJSTのみでカウント動作を行うため、消費電力をより抑えることができる。
【0118】
[第8の実施の形態]
上述の第6~第7の実施の形態においては、測距停止期間TOFFに受光された環境光に基づいて各受光素子のバイアス制御を行う。これに対して、以下に説明する第8の実施の形態では、第5の実施の形態と同様に、測距停止期間TOFF中にも発光部110が発光動作を行うことで、測距停止期間TOFF内のバイアス制御の信頼性を向上させるものである。
【0119】
図26は、第8の実施の形態における測距装置200と発光部110の動作タイミング図である。第8の実施の形態においては、第5の実施の形態と同様に、測距停止期間TOFFにおいても、発光部110は光パルス信号を間欠的に発光する。
【0120】
このように、第8の実施の形態では、測距停止期間TOFF内の少なくとも一部のカウント動作期間において、測距期間TONと同様に発光部110で光パルス信号を発光させてカウント動作を行うため、測距停止期間TOFFと測距期間TONにおける画素チップ201への入射光量の違いを抑えることができ、測距停止期間TOFF内のバイアス制御の信頼性を向上できる。
【0121】
[応用例]
本開示に係る技術は、様々な製品へ応用することができる。例えば、本開示に係る技術は、自動車、電気自動車、ハイブリッド電気自動車、自動二輪車、自転車、パーソナルモビリティ、飛行機、ドローン、船舶、ロボット、建設機械、農業機械(トラクター)などのいずれかの種類の移動体に搭載される装置として実現されてもよい。
【0122】
図27は、本開示に係る技術が適用され得る移動体制御システムの一例である車両制御システム7000の概略的な構成例を示すブロック図である。車両制御システム7000は、通信ネットワーク7010を介して接続された複数の電子制御ユニットを備える。図27に示した例では、車両制御システム7000は、駆動系制御ユニット7100、ボディ系制御ユニット7200、バッテリ制御ユニット7300、車外情報検出ユニット7400、車内情報検出ユニット7500、及び統合制御ユニット7600を備える。これらの複数の制御ユニットを接続する通信ネットワーク7010は、例えば、CAN(Controller Area Network)、LIN(Local Interconnect Network)、LAN(Local Area Network)又はFlexRay(登録商標)等の任意の規格に準拠した車載通信ネットワークであってよい。
【0123】
各制御ユニットは、各種プログラムにしたがって演算処理を行うマイクロコンピュータと、マイクロコンピュータにより実行されるプログラム又は各種演算に用いられるパラメータ等を記憶する記憶部と、各種制御対象の装置を駆動する駆動回路とを備える。各制御ユニットは、通信ネットワーク7010を介して他の制御ユニットとの間で通信を行うためのネットワークI/Fを備えるとともに、車内外の装置又はセンサ等との間で、有線通信又は無線通信により通信を行うための通信I/Fを備える。図27では、統合制御ユニット7600の機能構成として、マイクロコンピュータ7610、汎用通信I/F7620、専用通信I/F7630、測位部7640、ビーコン受信部7650、車内機器I/F7660、音声画像出力部7670、車載ネットワークI/F7680及び記憶部7690が図示されている。他の制御ユニットも同様に、マイクロコンピュータ、通信I/F及び記憶部等を備える。
【0124】
駆動系制御ユニット7100は、各種プログラムにしたがって車両の駆動系に関連する装置の動作を制御する。例えば、駆動系制御ユニット7100は、内燃機関又は駆動用モータ等の車両の駆動力を発生させるための駆動力発生装置、駆動力を車輪に伝達するための駆動力伝達機構、車両の舵角を調節するステアリング機構、及び、車両の制動力を発生させる制動装置等の制御装置として機能する。駆動系制御ユニット7100は、ABS(Antilock Brake System)又はESC(Electronic Stability Control)等の制御装置としての機能を有してもよい。
【0125】
駆動系制御ユニット7100には、車両状態検出部7110が接続される。車両状態検出部7110には、例えば、車体の軸回転運動の角速度を検出するジャイロセンサ、車両の加速度を検出する加速度センサ、あるいは、アクセルペダルの操作量、ブレーキペダルの操作量、ステアリングホイールの操舵角、エンジン回転数又は車輪の回転速度等を検出するためのセンサのうちの少なくとも一つが含まれる。駆動系制御ユニット7100は、車両状態検出部7110から入力される信号を用いて演算処理を行い、内燃機関、駆動用モータ、電動パワーステアリング装置又はブレーキ装置等を制御する。
【0126】
ボディ系制御ユニット7200は、各種プログラムにしたがって車体に装備された各種装置の動作を制御する。例えば、ボディ系制御ユニット7200は、キーレスエントリシステム、スマートキーシステム、パワーウィンドウ装置、あるいは、ヘッドランプ、バックランプ、ブレーキランプ、ウィンカー又はフォグランプ等の各種ランプの制御装置として機能する。この場合、ボディ系制御ユニット7200には、鍵を代替する携帯機から発信される電波又は各種スイッチの信号が入力され得る。ボディ系制御ユニット7200は、これらの電波又は信号の入力を受け付け、車両のドアロック装置、パワーウィンドウ装置、ランプ等を制御する。
【0127】
バッテリ制御ユニット7300は、各種プログラムにしたがって駆動用モータの電力供給源である二次電池7310を制御する。例えば、バッテリ制御ユニット7300には、二次電池7310を備えたバッテリ装置から、バッテリ温度、バッテリ出力電圧又はバッテリの残存容量等の情報が入力される。バッテリ制御ユニット7300は、これらの信号を用いて演算処理を行い、二次電池7310の温度調節制御又はバッテリ装置に備えられた冷却装置等の制御を行う。
【0128】
車外情報検出ユニット7400は、車両制御システム7000を搭載した車両の外部の情報を検出する。例えば、車外情報検出ユニット7400には、撮像部7410及び車外情報検出部7420のうちの少なくとも一方が接続される。撮像部7410には、ToF(Time Of Flight)カメラ、ステレオカメラ、単眼カメラ、赤外線カメラ及びその他のカメラのうちの少なくとも一つが含まれる。車外情報検出部7420には、例えば、現在の天候又は気象を検出するための環境センサ、あるいは、車両制御システム7000を搭載した車両の周囲の他の車両、障害物又は歩行者等を検出するための周囲情報検出センサのうちの少なくとも一つが含まれる。
【0129】
環境センサは、例えば、雨天を検出する雨滴センサ、霧を検出する霧センサ、日照度合いを検出する日照センサ、及び降雪を検出する雪センサのうちの少なくとも一つであってよい。周囲情報検出センサは、超音波センサ、レーダ装置及びLIDAR(Light Detection and Ranging、Laser Imaging Detection and Ranging)装置のうちの少なくとも一つであってよい。これらの撮像部7410及び車外情報検出部7420は、それぞれ独立したセンサないし装置として備えられてもよいし、複数のセンサないし装置が統合された装置として備えられてもよい。
【0130】
ここで、図28は、撮像部7410及び車外情報検出部7420の設置位置の例を示す。撮像部7910,7912,7914,7916,7918は、例えば、車両7900のフロントノーズ、サイドミラー、リアバンパ、バックドア及び車室内のフロントガラスの上部のうちの少なくとも一つの位置に設けられる。フロントノーズに備えられる撮像部7910及び車室内のフロントガラスの上部に備えられる撮像部7918は、主として車両7900の前方の画像を取得する。サイドミラーに備えられる撮像部7912,7914は、主として車両7900の側方の画像を取得する。リアバンパ又はバックドアに備えられる撮像部7916は、主として車両7900の後方の画像を取得する。車室内のフロントガラスの上部に備えられる撮像部7918は、主として先行車両又は、歩行者、障害物、信号機、交通標識又は車線等の検出に用いられる。
【0131】
なお、図28には、それぞれの撮像部7910,7912,7914,7916の撮影範囲の一例が示されている。撮像範囲aは、フロントノーズに設けられた撮像部7910の撮像範囲を示し、撮像範囲b,cは、それぞれサイドミラーに設けられた撮像部7912,7914の撮像範囲を示し、撮像範囲dは、リアバンパ又はバックドアに設けられた撮像部7916の撮像範囲を示す。例えば、撮像部7910,7912,7914,7916で撮像された画像データが重ね合わせられることにより、車両7900を上方から見た俯瞰画像が得られる。
【0132】
車両7900のフロント、リア、サイド、コーナ及び車室内のフロントガラスの上部に設けられる車外情報検出部7920,7922,7924,7926,7928,7930は、例えば超音波センサ又はレーダ装置であってよい。車両7900のフロントノーズ、リアバンパ、バックドア及び車室内のフロントガラスの上部に設けられる車外情報検出部7920,7926,7930は、例えばLIDAR装置であってよい。これらの車外情報検出部7920~7930は、主として先行車両、歩行者又は障害物等の検出に用いられる。
【0133】
図27に戻って説明を続ける。車外情報検出ユニット7400は、撮像部7410に車外の画像を撮像させるとともに、撮像された画像データを受信する。また、車外情報検出ユニット7400は、接続されている車外情報検出部7420から検出情報を受信する。車外情報検出部7420が超音波センサ、レーダ装置又はLIDAR装置である場合には、車外情報検出ユニット7400は、超音波又は電磁波等を発信させるとともに、受信された反射波の情報を受信する。車外情報検出ユニット7400は、受信した情報に基づいて、人、車、障害物、標識又は路面上の文字等の物体検出処理又は距離検出処理を行ってもよい。車外情報検出ユニット7400は、受信した情報に基づいて、降雨、霧又は路面状況等を認識する環境認識処理を行ってもよい。車外情報検出ユニット7400は、受信した情報に基づいて、車外の物体までの距離を算出してもよい。
【0134】
また、車外情報検出ユニット7400は、受信した画像データに基づいて、人、車、障害物、標識又は路面上の文字等を認識する画像認識処理又は距離検出処理を行ってもよい。車外情報検出ユニット7400は、受信した画像データに対して歪補正又は位置合わせ等の処理を行うとともに、異なる撮像部7410により撮像された画像データを合成して、俯瞰画像又はパノラマ画像を生成してもよい。車外情報検出ユニット7400は、異なる撮像部7410により撮像された画像データを用いて、視点変換処理を行ってもよい。
【0135】
車内情報検出ユニット7500は、車内の情報を検出する。車内情報検出ユニット7500には、例えば、運転者の状態を検出する運転者状態検出部7510が接続される。運転者状態検出部7510は、運転者を撮像するカメラ、運転者の生体情報を検出する生体センサ又は車室内の音声を集音するマイク等を含んでもよい。生体センサは、例えば、座面又はステアリングホイール等に設けられ、座席に座った搭乗者又はステアリングホイールを握る運転者の生体情報を検出する。車内情報検出ユニット7500は、運転者状態検出部7510から入力される検出情報に基づいて、運転者の疲労度合い又は集中度合いを算出してもよいし、運転者が居眠りをしていないかを判別してもよい。車内情報検出ユニット7500は、集音された音声信号に対してノイズキャンセリング処理等の処理を行ってもよい。
【0136】
統合制御ユニット7600は、各種プログラムにしたがって車両制御システム7000内の動作全般を制御する。統合制御ユニット7600には、入力部7800が接続されている。入力部7800は、例えば、タッチパネル、ボタン、マイクロフォン、スイッチ又はレバー等、搭乗者によって入力操作され得る装置によって実現される。統合制御ユニット7600には、マイクロフォンにより入力される音声を音声認識することにより得たデータが入力されてもよい。入力部7800は、例えば、赤外線又はその他の電波を利用したリモートコントロール装置であってもよいし、車両制御システム7000の操作に対応した携帯電話又はPDA(Personal Digital Assistant)等の外部接続機器であってもよい。入力部7800は、例えばカメラであってもよく、その場合搭乗者はジェスチャにより情報を入力することができる。あるいは、搭乗者が装着したウェアラブル装置の動きを検出することで得られたデータが入力されてもよい。さらに、入力部7800は、例えば、上記の入力部7800を用いて搭乗者等により入力された情報に基づいて入力信号を生成し、統合制御ユニット7600に出力する入力制御回路などを含んでもよい。搭乗者等は、この入力部7800を操作することにより、車両制御システム7000に対して各種のデータを入力したり処理動作を指示したりする。
【0137】
記憶部7690は、マイクロコンピュータにより実行される各種プログラムを記憶するROM(Read Only Memory)、及び各種パラメータ、演算結果又はセンサ値等を記憶するRAM(Random Access Memory)を含んでいてもよい。また、記憶部7690は、HDD(Hard Disc Drive)等の磁気記憶デバイス、半導体記憶デバイス、光記憶デバイス又は光磁気記憶デバイス等によって実現してもよい。
【0138】
汎用通信I/F7620は、外部環境7750に存在する様々な機器との間の通信を仲介する汎用的な通信I/Fである。汎用通信I/F7620は、GSM(登録商標)(Global System of Mobile communications)、WiMAX(登録商標)、LTE(登録商標)(Long Term Evolution)若しくはLTE-A(LTE-Advanced)などのセルラー通信プロトコル、又は無線LAN(Wi-Fi(登録商標)ともいう)、Bluetooth(登録商標)などのその他の無線通信プロトコルを実装してよい。汎用通信I/F7620は、例えば、基地局又はアクセスポイントを介して、外部ネットワーク(例えば、インターネット、クラウドネットワーク又は事業者固有のネットワーク)上に存在する機器(例えば、アプリケーションサーバ又は制御サーバ)へ接続してもよい。また、汎用通信I/F7620は、例えばP2P(Peer To Peer)技術を用いて、車両の近傍に存在する端末(例えば、運転者、歩行者若しくは店舗の端末、又はMTC(Machine Type Communication)端末)と接続してもよい。
【0139】
専用通信I/F7630は、車両における使用を目的として策定された通信プロトコルをサポートする通信I/Fである。専用通信I/F7630は、例えば、下位レイヤのIEEE802.11pと上位レイヤのIEEE1609との組合せであるWAVE(Wireless Access in Vehicle Environment)、DSRC(Dedicated Short Range Communications)、又はセルラー通信プロトコルといった標準プロトコルを実装してよい。専用通信I/F7630は、典型的には、車車間(Vehicle to Vehicle)通信、路車間(Vehicle to Infrastructure)通信、車両と家との間(Vehicle to Home)の通信及び歩車間(Vehicle to Pedestrian)通信のうちの1つ以上を含む概念であるV2X通信を遂行する。
【0140】
測位部7640は、例えば、GNSS(Global Navigation Satellite System)衛星からのGNSS信号(例えば、GPS(Global Positioning System)衛星からのGPS信号)を受信して測位を実行し、車両の緯度、経度及び高度を含む位置情報を生成する。なお、測位部7640は、無線アクセスポイントとの信号の交換により現在位置を特定してもよく、又は測位機能を有する携帯電話、PHS若しくはスマートフォンといった端末から位置情報を取得してもよい。
【0141】
ビーコン受信部7650は、例えば、道路上に設置された無線局等から発信される電波あるいは電磁波を受信し、現在位置、渋滞、通行止め又は所要時間等の情報を取得する。なお、ビーコン受信部7650の機能は、上述した専用通信I/F7630に含まれてもよい。
【0142】
車内機器I/F7660は、マイクロコンピュータ7610と車内に存在する様々な車内機器7760との間の接続を仲介する通信インタフェースである。車内機器I/F7660は、無線LAN、Bluetooth(登録商標)、NFC(Near Field Communication)又はWUSB(Wireless USB)といった無線通信プロトコルを用いて無線接続を確立してもよい。また、車内機器I/F7660は、図示しない接続端子(及び、必要であればケーブル)を介して、USB(Universal Serial Bus)、HDMI(登録商標)(High-Definition Multimedia Interface、又はMHL(Mobile High-definition Link)等の有線接続を確立してもよい。車内機器7760は、例えば、搭乗者が有するモバイル機器若しくはウェアラブル機器、又は車両に搬入され若しくは取り付けられる情報機器のうちの少なくとも1つを含んでいてもよい。また、車内機器7760は、任意の目的地までの経路探索を行うナビゲーション装置を含んでいてもよい。車内機器I/F7660は、これらの車内機器7760との間で、制御信号又はデータ信号を交換する。
【0143】
車載ネットワークI/F7680は、マイクロコンピュータ7610と通信ネットワーク7010との間の通信を仲介するインタフェースである。車載ネットワークI/F7680は、通信ネットワーク7010によりサポートされる所定のプロトコルに則して、信号等を送受信する。
【0144】
統合制御ユニット7600のマイクロコンピュータ7610は、汎用通信I/F7620、専用通信I/F7630、測位部7640、ビーコン受信部7650、車内機器I/F7660及び車載ネットワークI/F7680のうちの少なくとも一つを介して取得される情報に基づき、各種プログラムにしたがって、車両制御システム7000を制御する。例えば、マイクロコンピュータ7610は、取得される車内外の情報に基づいて、駆動力発生装置、ステアリング機構又は制動装置の制御目標値を演算し、駆動系制御ユニット7100に対して制御指令を出力してもよい。例えば、マイクロコンピュータ7610は、車両の衝突回避あるいは衝撃緩和、車間距離に基づく追従走行、車速維持走行、車両の衝突警告、又は車両のレーン逸脱警告等を含むADAS(Advanced Driver Assistance System)の機能実現を目的とした協調制御を行ってもよい。また、マイクロコンピュータ7610は、取得される車両の周囲の情報に基づいて駆動力発生装置、ステアリング機構又は制動装置等を制御することにより、運転者の操作に拠らずに自律的に走行する自動運転等を目的とした協調制御を行ってもよい。
【0145】
マイクロコンピュータ7610は、汎用通信I/F7620、専用通信I/F7630、測位部7640、ビーコン受信部7650、車内機器I/F7660及び車載ネットワークI/F7680のうちの少なくとも一つを介して取得される情報に基づき、車両と周辺の構造物や人物等の物体との間の3次元距離情報を生成し、車両の現在位置の周辺情報を含むローカル地図情報を作成してもよい。また、マイクロコンピュータ7610は、取得される情報に基づき、車両の衝突、歩行者等の近接又は通行止めの道路への進入等の危険を予測し、警告用信号を生成してもよい。警告用信号は、例えば、警告音を発生させたり、警告ランプを点灯させたりするための信号であってよい。
【0146】
音声画像出力部7670は、車両の搭乗者又は車外に対して、視覚的又は聴覚的に情報を通知することが可能な出力装置へ音声及び画像のうちの少なくとも一方の出力信号を送信する。図27の例では、出力装置として、オーディオスピーカ7710、表示部7720及びインストルメントパネル7730が例示されている。表示部7720は、例えば、オンボードディスプレイ及びヘッドアップディスプレイの少なくとも一つを含んでいてもよい。表示部7720は、AR(Augmented Reality)表示機能を有していてもよい。出力装置は、これらの装置以外の、ヘッドホン、搭乗者が装着する眼鏡型ディスプレイ等のウェアラブルデバイス、プロジェクタ又はランプ等の他の装置であってもよい。出力装置が表示装置の場合、表示装置は、マイクロコンピュータ7610が行った各種処理により得られた結果又は他の制御ユニットから受信された情報を、テキスト、イメージ、表、グラフ等、様々な形式で視覚的に表示する。また、出力装置が音声出力装置の場合、音声出力装置は、再生された音声データ又は音響データ等からなるオーディオ信号をアナログ信号に変換して聴覚的に出力する。
【0147】
なお、図27に示した例において、通信ネットワーク7010を介して接続された少なくとも二つの制御ユニットが一つの制御ユニットとして一体化されてもよい。あるいは、個々の制御ユニットが、複数の制御ユニットにより構成されてもよい。さらに、車両制御システム7000が、図示されていない別の制御ユニットを備えてもよい。また、上記の説明において、いずれかの制御ユニットが担う機能の一部又は全部を、他の制御ユニットに持たせてもよい。つまり、通信ネットワーク7010を介して情報の送受信がされるようになっていれば、所定の演算処理が、いずれかの制御ユニットで行われるようになってもよい。同様に、いずれかの制御ユニットに接続されているセンサ又は装置が、他の制御ユニットに接続されるとともに、複数の制御ユニットが、通信ネットワーク7010を介して相互に検出情報を送受信してもよい。
【0148】
なお、図14等を用いて説明した本実施形態に係る測距装置200の各機能を実現するためのコンピュータプログラムを、いずれかの制御ユニット等に実装することができる。また、このようなコンピュータプログラムが格納された、コンピュータで読み取り可能な記録媒体を提供することもできる。記録媒体は、例えば、磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク、フラッシュメモリ等である。また、上記のコンピュータプログラムは、記録媒体を用いずに、例えばネットワークを介して配信されてもよい。
【0149】
以上説明した車両制御システム7000において、図14等を用いて説明した本実施形態に係る測距装置200は、図17に示した応用例の統合制御ユニット7600に適用することができる。例えば、測距装置200の測距部270の処理動作は、統合制御ユニット7600のマイクロコンピュータ7610、記憶部7690、車載ネットワークI/F7680が行うことができる。
【0150】
また、図14等を用いて説明した測距装置200の少なくとも一部の構成要素は、図17に示した統合制御ユニット7600のためのモジュール(例えば、一つのダイで構成される集積回路モジュール)において実現されてもよい。あるいは、図14等を用いて説明した測距装置200が、図17に示した車両制御システム7000の複数の制御ユニットによって実現されてもよい。
【0151】
なお、本技術は以下のような構成を取ることができる。
(1)物体で反射された反射光パルス信号を受光する受光部と、
前記受光部の出力信号に基づいて測距処理を行う測距部と、
前記測距部が前記測距処理を開始する前に、前記受光部のバイアス電圧を制御するバイアス制御部と、
を備える測距装置。
(2)前記バイアス制御部は、前記測距部が前記測距処理を開始する前の第1期間と、前記測距処理を行っている間の第2期間とに、前記受光部のバイアス電圧を制御する、
(1)に記載の測距装置。
(3)前記第1期間は、前記測距処理を行わない期間のうち、前記測距処理を開始する直前の一部の期間を含む、
(2)に記載の測距装置。
(4)前記受光部は、
前記測距処理に用いられる第1受光素子と、
前記バイアス電圧の制御に用いられる第2受光素子と、を有する、
(1)乃至(3)のいずれか一項に記載の測距装置。
(5)前記受光部は、
前記測距処理に用いられる第1受光素子と、
前記バイアス電圧の制御に用いられる第2受光素子と、を有し、
前記第1受光素子は、前記バイアス電圧の制御に寄与するために受光動作を行う、
(1)乃至(3)のいずれか一項に記載の測距装置。
(6)前記受光部は、
前記測距処理に用いられる複数の第1受光素子と、
前記バイアス電圧の制御に用いられる第2受光素子と、を有し、
前記複数の第1受光素子のうちの一部の第1受光素子は、前記測距処理を行うとともに前記バイアス電圧の制御に寄与するために受光動作を行う、
(1)乃至(3)のいずれか一項に記載の測距装置。
(7)前記複数の第1受光素子を有する画素アレイ部を備え、
前記測距処理を行うとともに前記バイアス電圧の制御に寄与するために受光動作を行う前記一部の第1受光素子は、前記画素アレイ部内の前記複数の第1受光素子を間引いた2以上の第1受光素子である、
(6)に記載の測距装置。
(8)前記バイアス制御部は、前記測距部が前記測距処理を開始する前の前記受光部の出力信号の電圧レベルに基づいて、前記バイアス電圧を制御する、
(1)乃至(7)のいずれか一項に記載の測距装置。
(9)前記バイアス制御部は、前記測距部が前記測距処理を開始する前に前記反射光パルス信号を受光した前記受光部の出力信号の電圧レベルに基づいて、前記バイアス電圧を制御する、
(1)乃至(7)のいずれか一項に記載の測距装置。
(10)前記第1受光素子が前記反射光パルス信号を受光したときに、前記第1受光素子のカソード電圧又はアノード電圧が予め定めた所定の電圧レベルになるように前記バイアス電圧を制御する、
(4)乃至(7)のいずれか一項に記載の測距装置。
(11)前記バイアス制御部は、前記受光部の出力信号と所定の閾値との交差回数に基づいて前記バイアス電圧を制御する、
(1)乃至(3)のいずれか一項に記載の測距装置。
(12)前記受光部は、複数の受光素子を有し、
前記バイアス制御部は、前記複数の受光素子のうち少なくとも一部の受光素子の出力信号と所定の閾値との交差回数に基づいて前記バイアス電圧を制御する、
(1)乃至(3)のいずれか一項に記載の測距装置。
(13)前記交差回数をカウントする回数カウント部と、
前記受光部の出力信号が所定の閾値と交差した回数と、前記受光部の出力信号レベルとの対応関係を記憶する記憶部と、
前記回数カウント部でカウントされた回数に対応する前記出力信号レベルを前記記憶部から読み出す記憶制御部と、を備え、
前記バイアス制御部は、前記記憶制御部が読み出した前記出力信号レベルに基づいて、前記バイアス電圧を制御する、
(11)又は(12)に記載の測距装置。
(14)前記記憶部は、前記受光部の出力信号が所定の閾値と交差した回数と、前記受光部の前記出力信号レベルと、温度との対応関係を記憶する、
(13)に記載の測距装置。
(15)前記回数カウント部は、前記測距部が前記測距処理を開始する前に前記反射光パルス信号を受光した前記受光部の出力信号が前記所定の閾値と交差した回数をカウントする、
(13)又は(14)に記載の測距装置。
(16)(1)乃至(15)のいずれか一項に記載の測距装置と、
光パルス信号を発光する発光部と、をさらに備え、
前記受光部は、前記光パルス信号が前記物体で反射された前記反射光パルス信号を受光する、
測距システム。
(17)前記発光部は、前記測距処理を行っている期間と、前記測距処理を開始する前の前記バイアス制御部が前記受光部のバイアス電圧を制御する期間とに前記光パルス信号を発光する、
(16)に記載の測距システム。
(18)前記測距部は、前記発光部による前記光パルス信号の発光タイミングと、前記受光部による前記反射光パルス信号の受光タイミングとの時間差に基づいて前記物体までの距離を測定する、
(17)に記載の測距システム。
(19)前記発光部は、それぞれが前記光パルス信号を発光する複数の発光素子を有し、
前記発光部は、前記測距部が第1距離範囲内の前記物体までの距離を測定する際には、1以上の第1個数の前記発光素子を同時に発光させる第1モードと、前記測距部が前記第1距離範囲よりも広い第2距離範囲内の前記物体までの距離を測定する際には、前記第1個数よりも少ない第2個数の前記発光素子を同時に発光させる第2モードとを有し、
前記発光部は、前記第1モードでは、前記測距部が前記測距処理を行う期間と、前記測距部が前記測距処理を開始する前とにおいて、前記第1個数の前記発光素子を同時に発光させ、前記第2モードでは、前記測距部が前記測距処理を開始する前には前記第2個数の前記発光素子を発光させず、前記測距部が前記測距処理を行う期間内に前記第2個数の前記発光素子を同時に発光させる、(16)乃至(18)のいずれか一項に記載の測距システム。
【0152】
本開示の態様は、上述した個々の実施形態に限定されるものではなく、当業者が想到しうる種々の変形も含むものであり、本開示の効果も上述した内容に限定されない。すなわち、特許請求の範囲に規定された内容およびその均等物から導き出される本開示の概念的な思想と趣旨を逸脱しない範囲で種々の追加、変更および部分的削除が可能である。
【符号の説明】
【0153】
100 測距システム、110 発光部、120 同期制御部、200 測距装置、201 画素チップ、202 回路チップ、210 受光部、211、212、213、214 受光素子、220 タイミング生成部、260 出力インタフェース、270、360 測距部、300 回路ブロック、310 モニタ画素回路、311、371 チップ接続部、312、372 接続ノード、321、381 pMOSトランジスタ、322、382、383、384 nMOSトランジスタ、330、390 インバータ、340 サンプルホールド回路、350 アナログデジタル変換器、370 測距画素回路、401 モニタ画素、402、403、404 測距画素、500 バイアス制御部、612 時間デジタル変換器、613 ヒストグラム生成部兼カウント部、620 記憶部、630 記憶制御部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13A
図13B
図14
図15
図16
図17
図18A
図18B
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28