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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023170281
(43)【公開日】2023-12-01
(54)【発明の名称】照明装置及び照明装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   F21S 2/00 20160101AFI20231124BHJP
   F21V 31/00 20060101ALI20231124BHJP
   F21V 15/01 20060101ALI20231124BHJP
   F21L 4/00 20060101ALI20231124BHJP
   F21Y 115/30 20160101ALN20231124BHJP
【FI】
F21S2/00 380
F21S2/00 330
F21V31/00 100
F21V15/01 380
F21L4/00 411
F21L4/00 416
F21Y115:30
【審査請求】未請求
【請求項の数】26
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022081903
(22)【出願日】2022-05-18
(71)【出願人】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100127465
【弁理士】
【氏名又は名称】堀田 幸裕
(72)【発明者】
【氏名】倉重 牧夫
(72)【発明者】
【氏名】石田 一敏
(72)【発明者】
【氏名】田辺 尚雄
(72)【発明者】
【氏名】島田 修
(72)【発明者】
【氏名】羽鳥 茂喜
(72)【発明者】
【氏名】石川 幹雄
(72)【発明者】
【氏名】西尾 俊平
【テーマコード(参考)】
3K014
【Fターム(参考)】
3K014AA01
3K014NA02
(57)【要約】
【課題】所望の投影パターンを投影可能な照明装置を提供する。
【解決手段】照明装置10は、コヒーレント光源20と、コヒーレント光源20から放出されたコヒーレント光を整形する整形光学系25と、整形光学系25によって整形されたコヒーレント光を回折する凹凸面31を含む回折光学素子30と、を含んでいる。照明装置10は、回折光学素子30の凹凸面31によって回折されたコヒーレント光を用いて照明する。凹凸面31は、密閉された密閉空間CRに面している。
【選択図】図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コヒーレント光源と、
前記コヒーレント光源から放出されたコヒーレント光を整形する整形光学系と、
前記整形光学系によって整形された前記コヒーレント光を回折する凹凸面を含む回折光学素子と、を備え、
前記凹凸面は密閉された密閉空間に面している、照明装置。
【請求項2】
前記回折光学素子に対面して配置された透光板と、
前記回折光学素子及び前記透光板を保持する保持部材と、をさらに備え、
前記保持部材、前記回折光学素子及び前記透光板によって前記密閉空間が区画されている、請求項1に記載の照明装置。
【請求項3】
前記保持部材は貫通穴を有し、
前記回折光学素子は、前記貫通穴を一方の側から塞ぐように前記保持部材に接合され、
前記透光板は、前記貫通穴を他方の側から塞ぐように前記保持部材に接合されている、請求項2に記載の照明装置。
【請求項4】
コヒーレント光を放出するコヒーレント光源と、
前記コヒーレント光源から放出されたコヒーレント光を整形する整形光学系と、
前記整形光学系によって整形された前記コヒーレント光を回折する凹凸面を含む回折光学素子と、
前記回折光学素子に対面して配置された透光板と、
前記回折光学素子及び前記透光板を保持する保持部材と、を備え、
前記保持部材は貫通穴を有し、
前記透光板は、前記貫通穴を一方の側から塞ぐように前記保持部材に接合され、
前記回折光学素子は、前記貫通穴を他方の側から塞ぐように前記保持部材に接合され、
前記凹凸面は、前記透光板に対面している、照明装置。
【請求項5】
前記保持部材が板状である、請求項4に記載の照明装置。
【請求項6】
前記保持部材を収容するケーシングと、
前記保持部材の周縁部と前記ケーシングとをシールする第1シール部材と、を更に備える、請求項2~5のいずれか一項に記載の照明装置。
【請求項7】
前記保持部材は、前記貫通穴の周囲となる位置に、前記透光板の周縁部を収容する凹部を含む、請求項3~5のいずれか一項に記載の照明装置。
【請求項8】
前記保持部材は、前記貫通穴の周囲となる位置に、前記回折光学素子の周縁部を収容する第2凹部を含む、請求項3~5のいずれか一項に記載の照明装置。
【請求項9】
前記保持部材に固定された第2保持部材をさらに備え、
前記回折光学素子の周縁部は、前記保持部材及び前記第2保持部材によって保持されている、請求項2~5のいずれか一項に記載の照明装置。
【請求項10】
前記回折光学素子の前記周縁部と前記第2保持部材との間をシールする第2シール部材を更に備える、請求項9に記載の照明装置。
【請求項11】
前記回折光学素子に対面して配置された透光板をさらに備え、
前記透光板は、前記回折光学素子と接合され、前記回折光学素子との間に前記密閉空間を区画する、請求項1に記載の照明装置。
【請求項12】
前記回折光学素子は、前記凹凸面を含むプレート状部と、前記プレート状部から前記透光板に向けて突出した突出部と、を含み、
前記突出部は、前記透光板に接合されている、請求項11に記載の照明装置。
【請求項13】
前記透光板は、前記凹凸面に対面するプレート状部と、前記プレート状部から前記回折光学素子に向けて突出した突出部と、を含み、
前記突出部は、前記透光板に接合されている、請求項11に記載の照明装置。
【請求項14】
コヒーレント光を放出するコヒーレント光源と、
前記コヒーレント光源から放出されたコヒーレント光を整形する整形光学系と、
前記整形光学系によって整形された前記コヒーレント光を回折する凹凸面を含む回折光学素子と、
前記回折光学素子の前記凹凸面に対面して配置された透光板と、を備え、
前記透光板は、前記凹凸面の周囲となる周状の部分において、前記回折光学素子と接合している、照明装置。
【請求項15】
前記回折光学素子の前記凹凸面で回折されたコヒーレント光が透過するカバーを更に備え、
前記カバーは、前記回折光学素子に対面して配置されている、請求項1~5、11~14のいずれか一項に記載の照明装置。
【請求項16】
前記回折光学素子の前記凹凸面及び前記透光板の間の距離は、0.5mm以上3.5mm以下である、請求項2~5、11~14のいずれか一項に記載の照明装置。
【請求項17】
前記透光板は、表面を構成する反射防止層を含む、請求項2~5、11~14のいずれか一項に記載の照明装置。
【請求項18】
前記密閉空間に、乾燥した気体が充填されている、請求項1~3、11~13のいずれか一項に記載の照明装置。
【請求項19】
前記密閉空間は減圧されている、請求項1~3、11~13のいずれか一項に記載の照明装置。
【請求項20】
前記回折光学素子の前記凹凸面によって回折された前記コヒーレント光は、前記回折光学素子を透過する、請求項1~5、11~14のいずれか一項に記載の照明装置。
【請求項21】
前記回折光学素子は、前記凹凸面とは反対側の表面を構成する反射防止層を含む、請求項1~5、11~14のいずれか一項に記載の照明装置。
【請求項22】
前記回折光学素子は、前記凹凸面を構成する親水化層を含む、請求項1~5、11~14のいずれか一項に記載の照明装置。
【請求項23】
前記密閉空間内に吸湿材が設けられている、請求項1~3、11~13のいずれか一項に記載の照明装置。
【請求項24】
前記回折光学素子の前記凹凸面によって、前記コヒーレント光は、前記回折光学素子を透過する0次光と非平行な方向に回折される、請求項1~5、11~14のいずれか一項に記載の照明装置。
【請求項25】
請求項11~14のいずれか一項に記載の照明装置の製造方法であって、
一方の面に前記凹凸面を複数含む第1板、及び透光性を有する第2板を準備する準備工程と、
前記第1板の前記一方の面に前記第2板が接合される接合工程と、
前記第1板及び前記第1板に接合した前記第2板を、前記凹凸面ごとに切断する切断工程と、を備える、照明装置の製造方法。
【請求項26】
前記第2板を前記第1板に接合する工程において、各凹凸面の周囲において、前記第2板が前記第1板に周状に接合される、請求項25に記載の照明装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、照明装置及び照明装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1に開示されるように、投影面に投影パターンを投影する照明装置が知られている。特許文献1の照明装置は、回折光学素子の凹凸面によって回折されたコヒーレント光を投影面に照射する。
【0003】
昨今、照明装置を屋外において使用することが求められている。照明装置を屋外において使用する場合、埃を含む粉塵や、水滴等の異物が凹凸面に付着しやすくなる。粉塵や水滴等の異物が凹凸面に付着すると、凹凸面に入射するコヒーレント光の光路が意図しない方向に向けられ得る。このとき、投影面に投影されたパターンは、意図した所望の投影パターンとして観察されなくなる。所望の投影パターンにて投影面を照明することができなくなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2021-52008号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開示は、所望の投影パターンを投影可能な照明装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一実施の形態は、次の[1]~[26]に関する。
【0007】
[1] コヒーレント光源と、
前記コヒーレント光源から放出されたコヒーレント光を整形する整形光学系と、
前記整形光学系によって整形された前記コヒーレント光を回折する凹凸面を含む回折光学素子と、を備え、
前記回折光学素子の前記凹凸面によって回折された前記コヒーレント光を用いて照明し、
前記凹凸面は密閉された密閉空間に面している、照明装置。
【0008】
[2] 前記回折光学素子に対面して配置された透光板と、
前記透光板及び前記回折光学素子を保持する保持部材と、をさらに備え、
前記保持部材、前記回折光学素子及び前記透光板によって前記密閉空間が区画されている、[1]の照明装置。
【0009】
[3] 前記保持部材は貫通穴を有し、
前記回折光学素子は、前記貫通穴を一方の側から塞ぐように前記保持部材に接合され、
前記透光板は、前記貫通穴を他方の側から塞ぐように前記保持部材に接合されている、[2]の照明装置。
【0010】
[4] コヒーレント光を放出するコヒーレント光源と、
前記コヒーレント光源から放出されたコヒーレント光を整形する整形光学系と、
前記整形光学系によって整形された前記コヒーレント光を回折する凹凸面を含む回折光学素子と、
前記回折光学素子に対面して配置された透光板と、
前記透光板及び前記回折光学素子を保持する保持部材と、を備え、
前記保持部材は貫通穴を有し、
前記透光板は、前記貫通穴を一方の側から塞ぐように前記保持部材に接合され、
前記回折光学素子は、前記貫通穴を他方の側から塞ぐように前記保持部材に接合され、
前記凹凸面は、前記透光板に対面している、照明装置。
【0011】
[5] 前記保持部材が板状である、[4]の照明装置。
【0012】
[6] 前記保持部材を収容するケーシングと、
前記保持部材の周縁部と前記ケーシングとをシールする第1シール部材と、を更に備える、[2]~[5]のいずれかの照明装置。
【0013】
[7] 前記保持部材は、前記貫通穴の周囲となる位置に、前記透光板の周縁部を収容する凹部を含む、[3]~[5]のいずれかの照明装置。
【0014】
[8] 前記保持部材は、前記貫通穴の周囲となる位置に、前記回折光学素子の周縁部を収容する第2凹部を含む、[3]~[5]のいずれかの照明装置。
【0015】
[9] 前記保持部材に固定された第2保持部材をさらに備え、
前記回折光学素子の周縁部は、前記保持部材及び前記第2保持部材によって保持されている、[2]~[5]のいずれかの照明装置。
【0016】
[10] 前記回折光学素子の前記周縁部と前記第2保持部材との間をシールする第2シール部材を更に備える、[9]の照明装置。
【0017】
[11] 前記回折光学素子に対面して配置された透光板をさらに備え、
前記透光板は、前記回折光学素子と接合され、前記回折光学素子との間に前記密閉空間を区画する、[1]の照明装置。
【0018】
[12] 前記回折光学素子は、前記凹凸面を含むプレート状部と、前記プレート状部から前記透光板に向けて突出した突出部と、を含み、
前記突出部は、前記透光板に接合されている、[11]の照明装置。
【0019】
[13] 前記透光板は、前記凹凸面に対面するプレート状部と、前記プレート状部から前記回折光学素子に向けて突出した突出部と、を含み、
前記突出部は、前記透光板に接合されている、[11]の照明装置。
【0020】
[14] コヒーレント光を放出するコヒーレント光源と、
前記コヒーレント光源から放出されたコヒーレント光を整形する整形光学系と、
前記整形光学系によって整形された前記コヒーレント光を回折する凹凸面を含む回折光学素子と、
前記回折光学素子の前記凹凸面に対面して配置された透光板と、を備え、
前記透光板は、前記凹凸面の周囲となる周状の部分において、前記回折光学素子と接合している、照明装置。
【0021】
[15] 前記回折光学素子で回折されたコヒーレント光が透過するカバーを更に備え、
前記カバーは、前記回折光学素子に対面して配置されている、[1]~[14]のいずれかの照明装置。
【0022】
[16] 前記回折光学素子の前記凹凸面及び前記透光板の間の距離は、0.5mm以上3.5mm以下である、[2]~[14]のいずれかの照明装置。
【0023】
[17] 前記透光板は、表面を構成する反射防止層を含む、[2]~[14]のいずれかの照明装置。
【0024】
[18] 前記密閉空間に、乾燥した気体が充填されている、[1]~[3]、[11]~[13]のいずれかの照明装置。
【0025】
[19] 前記密閉空間は真空である、[1]~[3]、[11]~[13]のいずれかの照明装置。
【0026】
[20] 前記凹凸面によって回折された前記コヒーレント光は、前記回折光学素子を透過する、[1]~[19]のいずれかの照明装置。
【0027】
[21] 前記回折光学素子は、前記凹凸面とは反対側の表面を構成する反射防止層を含む、[1]~[20]のいずれかの照明装置。
【0028】
[22] 前記回折光学素子は、前記凹凸面を構成する親水化層を含む、[1]~[21]のいずれかの照明装置。
【0029】
[23] 前記密閉空間内に吸湿材が設けられている、[1]~[3]、[11]~[13]のいずれかの照明装置。
【0030】
[24] 前記回折光学素子の前記凹凸面によって、前記コヒーレント光は、前記回折光学素子を透過する0次光と非平行な方向に回折される、[1]~[23]のいずれかの照明装置。
【0031】
[25] [11]~[14]のいずれかに記載の照明装置の製造方法であって、
一方の面に前記回折光学素子を複数含む第1板、及び前記透光板を含む第2板を準備する準備工程と、
前記複数の回折光学素子を覆うように、前記第1板の前記一方の面に前記第2板が接合される接合工程と、
前記第2板と接合された前記第1板を前記回折光学素子ごとに切断する切断工程と、を備える、照明装置の製造方法。
【0032】
[26] 前記第2板を前記第1板に接合する工程において、各凹凸面の周囲において、前記第2板が前記第1板に周状に接合される、[25]の照明装置の製造方法。
【発明の効果】
【0033】
本開示によれば、所望の投影パターンを投影できる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1A図1Aは、一実施の形態を説明する図であって、照明装置の概略構成を示す斜視図である。
図1B図1Bは、照明装置の回折光学素子組立体、及び被照明領域の一例を示す側面図である。
図2図2は、照明装置の他の例を示す断面図である。
図3図3は、図2の照明装置のA部拡大図である。
図4図4は、図3の照明装置の第1保持部材、及び第1保持部材に保持された透光板を示す図である。
図5図5は、図3の照明装置の第1保持部材、及び第1保持部材に保持された回折光学素子を示す図である。
図6図6は、図3の照明装置の第2保持部材を示す図である。
図7図7は、照明装置のさらに他の例を示す断面図である。
図8図8は、照明装置のさらに他の例を示す断面図である。
図9図9は、図1Bの回折光学素子組立体の他の例を示す断面図である。
図10図10は、図1Bの回折光学素子組立体のさらに他の例を示す断面図である。
図11図11は、図1Bの回折光学素子組立体のさらに他の例を示す断面図である。
図12図12は、図9に示された回折光学素子組立体を含む照明装置の製造方法の一例を説明するための図である。
図13図13は、図9に示された回折光学素子組立体を含む照明装置の製造方法の一例を説明するための図である。
図14図14は、図9に示された回折光学素子組立体を含む照明装置の製造方法の一例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、図面を参照して本開示の一実施の形態について説明する。本件明細書に添付する図面においては、図示と理解のしやすさの便宜上、適宜縮尺および縦横の寸法比等を、実物のそれらから変更し誇張してある。
【0036】
本明細書において用いる、形状や幾何学的条件ならびにそれらの程度を特定する、例えば「平行」、「直交」、「同一」等の用語や長さや角度の値等については、厳密な意味に限定されることなく、同様の機能を期待し得る程度の範囲を含めて解釈する。
【0037】
方向関係を図面間で明確化するため、いくつかの図面には、第1方向D1、第2方向D2、及び第3方向D3を図面間で共通する方向として矢印で示している。矢印の先端側が、各方向の第1側である。図面の紙面に垂直な方向に沿って紙面から手前に向かう矢印を、例えば図2に示すように、円の中に点を設けた記号により示した。図面の紙面に垂直な方向に沿って紙面から奥に向かう矢印を、例えば図1Bに示すように、円の中に×を設けた記号により示した。
【0038】
図1A図6は、一実施の形態を説明するための図である。このうち、図1Aは、照明装置10の概略構成を示す斜視図である。図2は、照明装置10に適用され得る具体的構成を示す断面図である。本実施の形態による照明装置10は、コヒーレント光源20と、整形光学系25と、回折光学素子30と、を含む。整形光学系25は、コヒーレント光源20から放出されたコヒーレント光を整形する。回折光学素子30は、コヒーレント光を回折する凹凸面31を含む。凹凸面31によって、整形光学系25によって整形されたコヒーレント光を回折する。
【0039】
照明装置10は、凹凸面31によって回折された光によって、投影面95に投影パターン90を投影する。言い換えると、照明装置10は、投影面95を投影パターン90の形状にて照明する。凹凸面31によって回折されたコヒーレント光は、投影面95上の被照明領域96に向かう。被照明領域96にコヒーレント光が照射されることによって、投影面95上の投影された投影パターン90が観察される。すなわち、被照明領域96は、投影パターン90と同一形状を有する投影面95上の領域である。
【0040】
以下に説明する本実施の形態では、所望の投影パターンを投影するための工夫がなされている。より具体的には、粉塵や水滴等の異物が凹凸面31に付着すること抑制している。これにより、異物の影響でコヒーレント光が意図しない方向に屈折ないし回折してしまうことを抑制できる。したがって、照明装置10によれば、所望の投影パターン90を投影面95に投影できる。
【0041】
図2に示された具体例のように、照明装置10は、可搬性を有してもよい。すなわち、照明装置10は、特別な手段を用いることなく、操作者が持ち運び可能となっている。可搬性を有した照明装置10は、種々の場所にて使用できる。このような照明装置10は、使用中に風雨に曝されることもある。したがって、異物の凹凸面31への付着が抑制される本実施の形態は、可搬性を有した照明装置10にとりわけ好適である。
【0042】
照明装置10から照明光を照射される投影面95は、特に限定されない。投影パターン90が投影される投影面95として、路面、歩道、運動場、公園等の地面、海面等の水面、学校、会社、ビル、工場、集会場、講堂、体育館、競技場、会場等の建物の外壁面、内壁面、通路、床、天井等が例示される。
【0043】
被照明領域96の形状および投影パターン90は、特に限定されない。図1Aに示された例において、被照明領域96は、照明装置10から遠ざかるように延びる線状の領域となっている。被照明領域96の形状および投影パターン90は、特に限定されない。被照明領域96の形状および投影パターン90は、文字、絵柄、色模様、記号、マーク、イラスト、キャラクター、ピクトグラムのいずれか一以上を表すパターンでもよい。被照明領域96の形状および投影パターン90は、情報、例えば方向や向きを表示してもよい。
【0044】
以下、図示された具体例を参照し、一実施の形態による照明装置10の構成要素を説明する。
【0045】
上述したように一実施の形態において、照明装置10は、コヒーレント光源20、整形光学系25及び回折光学素子30を含んでいる。照明装置10は、図示するように、コヒーレント光源20、整形光学系25及び回折光学素子30を収容するケーシング60を含んでもよい。
【0046】
図示された具体例において、照明装置10は、回折光学素子組立体30Xを含んでいる。回折光学素子組立体30Xは、回折光学素子30を含んでいる。後述するように、回折光学素子組立体30Xは、水分や粉塵等の異物の凹凸面31への付着を抑制できるようにして回折光学素子30を含んでいる。
【0047】
ケーシング60は、照明装置10に防水性を付与してもよい。照明装置10に防水性を付与するため、ケーシング60の継ぎ目部分やはめ込み部分に、ゴムやパッキン、接着剤等の防水部材が設けられてもよい。
【0048】
図2に示された例において、ケーシング60は、外筒部61と、外筒部61に収容された内筒部62と、を含んでいる。図2に示す例では、コヒーレント光源20、整形光学系25、回折光学素子組立体30Xが、外筒部61内に位置している。このうち、コヒーレント光源20及び整形光学系25は、内筒部62内に位置している。
【0049】
内筒部62は、一方を閉鎖された筒状の形状を有している。内筒部62の内寸法は、段差部62sを介して変化している。内筒部62の内寸法は、閉鎖された一方の端部から第1方向D1における第1側に離れるにしたがって、拡大する。内筒部62は、閉鎖された一方の端部とは反対の端部において開口している。
【0050】
コヒーレント光源20は、コヒーレント光を放出する。コヒーレント光は、波長及び位相が揃った光である。コヒーレント光源20は、特定波長域のコヒーレント光を放出してもよい。コヒーレント光は、単一の波長を有してもよい。コヒーレント光は、波長445nmの青色光でもよい。コヒーレント光は、460nmの青色光でもよい。コヒーレント光は488nmの青色光でもよい。コヒーレント光は、波長520nmの緑色光でもよい。コヒーレント光は、波長530nmの緑色光でもよい。コヒーレント光は、波長638nmの赤色光でもよい。コヒーレント光は、波長660nmの赤色光でもよい。コヒーレント光源20として、種々の形式の光源を使用できる。コヒーレント光源20として、レーザー光を発振するレーザー光源を使用してもよい。レーザー光源として、半導体レーザー光源を例示できる。なお、図2に示された具体例において、コヒーレント光源20は、内筒部62の閉鎖された一方の端部に固定されている。
【0051】
整形光学系25は、コヒーレント光源20から放出されたコヒーレント光を整形する。図1Aに模式的に示す例において、整形光学系25は、コヒーレント光源20から放出された発散光としてのコヒーレント光を、拡幅した平行光束に整形する。図1Aに示された整形光学系25は、レンズを含んでいる。このレンズは、コヒーレント光源20から放出された発散光束を、平行光束に整形する。この例において、整形光学系25を構成するレンズは、コリメートレンズとして機能する。
【0052】
図2に示された具体例において、整形光学系25は、第1レンズ26、第2レンズ27及び第3レンズ28を含んでいる。図2に示された整形光学系25は、図1Aに示された整形光学系25と同様に、コヒーレント光源20から放出されたコヒーレント光を、光路幅が拡幅された平行光束に整形する。図2に示された具体例において、第1レンズ26、第2レンズ27、及び第3レンズ28は、いずれも、内筒部62に収容されている。内筒部62に収容された第1レンズ26、第2レンズ27、及び第3レンズ28は、第1方向D1に間隔を空けて直線状に配置されている。内筒部62に収容された整形光学系25のうち、第1レンズ26は、第1方向D1においてコヒーレント光源20に最も近づいている。内筒部62に収容された整形光学系25のうち、第3レンズ28は、第1方向D1においてコヒーレント光源20から最も離れている。
【0053】
図2に示された具体例において、第1レンズ26が配置された部分における内筒部62の内寸法、第2レンズ27が配置された部分における内筒部62の内寸法、及び、第3レンズ28が配置された部分における内筒部62の内寸法は、互いに異なっている。このうち、第1レンズ26が配置された部分における内筒部62の内寸法が、最も小さくなっており、第3レンズ28が配置された部分における内筒部62の内寸法が、最も大きくなっている。
【0054】
図2に示すように、第1レンズ26と第2レンズ27との間に間隙環63が設けられてもよい。間隙環63は、整形光学系25を含む光学要素間の距離を制御してもよい。間隙環63は、照明装置10に加えられ得る振動や衝撃による、整形光学系25を含む光学要素の相対位置ずれを抑制し得る。図2に示すように、間隙環63は、第2レンズ27と第3レンズ28との間にも設けられている。間隙環63は、第3レンズ28と回折光学素子組立体30Xとの間にも設けられている。間隙環63は、一例として、環状又は筒状の部材でもよい。間隙環63の材料として、アルミニウム等の金属を用いてもよいし、樹脂を用いてもよい。
【0055】
なお、図2に示された具体例において、照明装置10は、電池64、回路65及びスイッチ66を含んでいる。電池64は、一次電池でもよいし、充放電可能な二次電池でもよい。回路65は、電池64とコヒーレント光源20とをスイッチ66を介して電気的に接続している。スイッチ66の操作により、電池64からコヒーレント光源20への給電、及び電池64からコヒーレント光源20への給電停止を切替え可能である。照明装置10においては、スイッチ66の操作以外の方法により、コヒーレント光源20に給電してもよい。照明装置10の外部からコヒーレント光源20に給電してもよく、照明装置10の外部からの有線あるいは無線のスイッチ信号により電池64からコヒーレント光源20への給電を制御してもよい。
【0056】
照明装置10は、電池64からコヒーレント光源20への給電及び給電停止を制御する制御部を含んでもよい。制御部は、外部からの電気信号を受信することによって、電池64からコヒーレント光源20への給電及び給電停止を制御してもよい。制御部は、CPU(Central Processing Unit)等のプロセッサを含んでもよい。制御部は、制御部と電気的に接続された配線を介して、外部からの電気信号を受信してもよい。制御部は、赤外線等の電磁波を介して、外部からの電気信号を受信してもよい。
【0057】
図1Bに示すように、回折光学素子30は、整形光学系25によって整形されたコヒーレント光の進行方向を変化させる。回折光学素子30は、整形光学系25によって整形されたコヒーレント光を回折する凹凸面31を含んでいる。回折光学素子30は、凹凸面31での回折により、コヒーレント光の進行方向を変化させる。回折光学素子30によって進行方向が変化したコヒーレント光は、投影面95上の被照明領域96に照射される。すなわち、照明装置10は、回折光学素子30の凹凸面31によって回折されたコヒーレント光を用いて、被照明領域96を照明する。
【0058】
図1Aに示された例において、投影面95は、第1方向D1及び第2方向D2に広がっている。第1方向D1及び第2方向D2は、互いに直交している。照明装置10は、投影面95から第3方向D3における第1側にずれて配置されている。第3方向D3は、第1方向D1と直交している。第3方向D3は、第2方向D2と直交している。図示された例において、被照明領域96の形状および投影パターン90は、線状の形状を有している。被照明領域96の形状および投影パターン90は、照明装置10から第1方向D1に遠ざかる線状となっている。被照明領域96の形状および投影パターン90は、直線状である。被照明領域96の形状および投影パターン90は、第1方向D1に長手方向を有している。被照明領域96の形状および投影パターン90は、第2方向D2に短手方向を有している。図示された例において、照明装置10からのコヒーレント光は、投影面95上の被照明領域96に比較的大きな入射角度α、例えば45°以上の入射角度αで入射する。照明装置10からのコヒーレント光は、60°以上の入射角度αで入射してもよいし、80°以上の入射角度αで入射してもよい。入射角度α(°)は、被照明領域96へ向かうコヒーレント光の進行方向が被照明領域96の法線方向NDに対してなす角度(°)を意味する。図示された例において、法線方向NDは第3方向D3と平行となっている。
【0059】
回折光学素子30は、ホログラム素子でもよい。回折光学素子30は、レリーフホログラムでもよい。回折光学素子30としてホログラム素子を用いることにより、投影面95上における予め定めた位置、形状、大きさ、及び、向きとなる所望領域の全域のみに光を投射し得る回折パターンを設計できる。回折光学素子30は、透過型のホログラム素子でもよい。回折光学素子30は、反射型のホログラム素子でもよい。
【0060】
凹凸面31の回折パターンの設計において、被照明領域96は、回折光学素子30に対して予め定めた位置に、予め定めた形状、大きさ、及び向きを有するように、実空間に設定され得る。投影面95上における被照明領域96の位置、形状、大きさ及び向きは、凹凸面31の構成に依存する。凹凸面31の構成を調整することによって、投影面95上における被照明領域96の位置、輪郭形状、大きさ及び向きを任意に調整できる。したがって、凹凸面31の設計においては、投影面95上の被照明領域96の位置、形状、大きさ、及び向きがまず決定され得る。次に、決定された被照明領域96の全域に光を投射できるように、凹凸面31の構成が調整され得る。
【0061】
回折光学素子30は、計算機合成ホログラム(CGH:Computer Generated Hologram)として作製されてもよい。計算機合成ホログラムは、任意の回折パターンを持つ構造を計算機上で計算することによって作製される。計算機合成ホログラムを回折光学素子30として採用することによって、光源や光学系を用いた物体光及び参照光の生成や、露光によるホログラム記録材料への干渉縞の記録を不要にできる。照明装置10は、当該照明装置10に対して予め定めた位置に、予め定め輪郭形状、大きさ及び向きの被照明領域にコヒーレント光を照射することが想定されている。被照明領域96に関する情報をパラメータとして計算機に入力することで、被照明領域96に回折光を投影可能な回折パターンをもたらす凹凸面の形状を、計算機での演算によって特定できる。特定された凹凸面の形状を、例えば樹脂賦形によって形成することで、計算機合成ホログラムとしての回折光学素子を作製できる。なお、計算機は、コンピュータでもよい。
【0062】
回折光学素子30は、複数の区分回折光学素子を含んでもよい。個々の区分回折光学素子は、例えばホログラム素子であり、上述した回折光学素子と同様に構成されてもよい。複数の区分回折光学素子で回折された光は、投影面95上の互いに同一の領域に入射してもよい。つまり、各区分回折光学素子で回折されたコヒーレント光は、投影面95上に設定された被照明領域96の全域に入射してもよい。このような、回折光学素子30によれば、被照明領域96内の各位置に向かう光を、回折光学素子に含まれる複数の区分回折光学素子から分散して射出することができる。これにより、回折光学素子30上の各位置において局所的に放射強度が高くなり過ぎることが抑制され、レーザー安全性を向上させることができる。
【0063】
各区分回折光学素子は、互いに同一の回折特性を有してもよい。高精度な照射を実現する上で、各区分回折光学素子が、当該区分回折光学素子の回折光学素子30内における配置位置に応じて、別個に設計された回折特性を付与されてもよい。この例によれば、各区分回折光学素子は、投影面95上の被照明領域96の全域のみに高精度にコヒーレント光の回折光を向けることができる。
【0064】
複数の区分回折光学素子が、互いに異なる投影面95上の領域にコヒーレント光を回折してもよい。つまり、複数の区分回折光学素子で回折されたコヒーレント光が、投影面95上の互いに異なる区分被照射領域に入射してもよい。この例によれば、複数の区分被照射領域の組み合わせによって、一つの被照明領域96が形成され得る。
【0065】
上述したように、照明装置10は、回折光学素子30を回折光学素子組立体30Xの一部分として含む。回折光学素子組立体30Xは、水分や埃等の異物の凹凸面31への付着を抑制できるようにして回折光学素子30を含んでいる。
【0066】
図1Bに示すように、回折光学素子組立体30Xは、密閉空間CRを区画する。密閉空間CRは、外部環境に対して閉鎖された空間である。回折光学素子組立体30Xは、内部空間として、密閉空間CRを含む。密閉空間CRを区画する部材の密閉空間CRに面する部分は、外部環境に露出しない。回折光学素子30の凹凸面31は、密閉空間CRに面している。図1Bに示すように、コヒーレント光源20から放出されたコヒーレント光は、密閉空間CRを通過してもよい。図1Bに示すように、図示された回折光学素子30は透過型のホログラム素子である。この例において、コヒーレント光源20から放出されたコヒーレント光は、密閉空間CR及び回折光学素子30を透過する。
【0067】
密閉空間CRに対して用いる「密閉される」とは、JISZ2330:2012で規定された液没法により、気体の漏れが検出されないことを意味する。具体的には、回折光学素子組立体30Xを水に浸漬した際に、回折光学素子組立体30Xによって区画された密閉空間CRから気泡の漏れが生じない場合、密閉空間CRは密閉されていると判断される。液没試験において、試験対象となる容器は、水面から10cm以上30cm以下の深さに浸漬する。気泡の有無は、10分間に亘る目視観察により判断する。液没試験あたり、密閉空間CRの気圧調整は実施しない。すなわち、照明装置10に組み込まれる回折光学素子組立体30Xを、液没試験の対象とする。
【0068】
図1B及び図3に示すように、回折光学素子組立体30Xは、回折光学素子30とともに、透光板40及び保持部材50を含んでもよい。図3は、図2の照明装置10に適用され得る照明装置10の射出端およびその周囲の構成を示す断面図である。図3には、回折光学素子組立体30Xの一具体例が示されている。図3に示された回折光学素子組立体30Xは、保持部材50に加えて、第2保持部材52を更に含む。第2保持部材52と区別するため、保持部材50を第1保持部材51とも呼ぶ。
【0069】
図1B及び図3に示すように、第1保持部材51は貫通穴51Xを有する。回折光学素子30は、その周縁部35を第1保持部材51に接合されている。貫通穴51Xは、周縁部35によって取り囲まれる位置に開口している。回折光学素子30は、貫通穴51Xを一方の側から塞いでいる。透光板40は、その周縁部45を第1保持部材51に接合されている。貫通穴51Xは、周縁部45によって取り囲まれる位置に開口している。透光板40は、貫通穴51Xを他方の側から塞いでいる。透光板40は、回折光学素子30に対面して配置されている。保持部材50の貫通穴51Xの両方の開口が、回折光学素子30及び透光板40によって塞がれている。このようにして、保持部材50、回折光学素子30及び透光板40によって、密閉空間CRが区画されている。
【0070】
回折光学素子30の保持部材50への接合は、溶接や超音波接合等の溶着でもよいし、接着材や粘着材等の接合材を用いた接着または粘着接でもよい。透光板40の保持部材50への接合は、溶接や超音波接合等の溶着でもよいし、接着材や粘着材等の接合材を用いた接着または粘着接でもよい。このような接合により、密閉空間CRを密閉できる。
【0071】
図3に示された例において、回折光学素子30及び透光板40は第1方向D1に対面している。透光板40は、凹凸面31と第1方向D1に対面している。透光板40は、コヒーレント光源20から放出されたコヒーレント光の光路に沿って、コヒーレント光源20及び回折光学素子30の間に位置する。すなわち、透光板40を透過したコヒーレント光が、回折光学素子30に入射する。この配置によれば、照明装置10内におけるコヒーレント光の光路における下流側において、コヒーレント光が回折光学素子30によって回折されるようになる。したがって、コヒーレント光の利用効率を高く維持しながら照明装置10を小型化できる。図1Bに示された例において、回折光学素子30の凹凸面31によって、コヒーレント光は、回折光学素子30を透過する0次光LX0と非平行な方向に回折される。このような回折特性を有した回折光学素子30を用いた場合にも、透光板40を回折光学素子30よりも上流側に配置することによって、コヒーレント光の利用効率を高く維持しながら照明装置10を小型化できる。また、このような回折特性を有した回折光学素子30よりも、透光板40を上流側に配置することで、透光板40と回折光学素子30との間の多重反射による二重像(ゴースト)の投影を抑制できる。さらに、透過型の回折光学素子30を用いることにより、コヒーレント光の利用効率を高く維持しながら照明装置10をより小型化できる。
【0072】
図3に示された具体例を参照して、回折光学素子組立体30Xについて更に詳述する。
【0073】
図3図5に示すように、第1保持部材51は、板状である。図4は、保持部材50(第1保持部材51)を透光板40とともに第1方向D1における第1側と反対側の第2側から示す平面図である。図5は、保持部材50(第1保持部材51)を回折光学素子30とともに第1方向D1における第1側から示す平面図である。第1保持部材51は、その中央部に、貫通穴51Xを有している。第1保持部材51は、内筒部62の開口した端部に接続されている。第1保持部材51は、間隙環63を介して整形光学系25の第3レンズ28と位置決めされている。図4及び図5に示されるように、第1保持部材51は、第1方向D1からの観察において円形形状の輪郭を有する板状の部材でもよい。第1保持部材51の材料は、アルミニウム等の金属でもよく、樹脂でもよい。
【0074】
透光板40は、透光性を有する。整形光学系25によって整形されたコヒーレント光は、透光板40を透過できる。透光性を有するとは、可視光域の平均全光線透過率が30%以上であることを意味し、好ましくは50%以上であり、更に好ましくは80%以上である。可視光域の平均全光線透過率は、380nm以上780nm以下の1nm毎の光について測定された全光線透過率(%)の平均値である。全光線透過率(%)は、分光光度計((株)島津製作所製「UV-3100PC」、JIS K 0115準拠品)を用いて、入射角0°で測定した、全光線透過率(%)を意味する。
【0075】
図示された例において、透光板40は、一対の平行な主面を有する板状である。この透光板40は、透過するコヒーレント光の平行度を維持する。透光板40は、例えば一対の非平行な主面を有してもよい。この透光板40は、透光板40を透過するコヒーレント光の光軸を調整してもよい。透光板40を構成する材料は、コヒーレント光を透過可能な種々の材料でもよい。透光板40を構成する材料は、ガラスでもよく、樹脂でもよい。透光板40は、透過型の回折格子でもよい。
【0076】
図4に示された例において、第1方向D1からの観察した透光板40は、長方形形状を有している。透光板40の端辺は、第2方向D2及び第3方向D3のいずれか一方の方向に延びている。透光板40の周縁部45は、透光板40のこの端辺に沿っている。
【0077】
図5に示された例において、第1方向D1からの観察した回折光学素子30は、長方形形状を有している。回折光学素子30の端辺は、第2方向D2及び第3方向D3のいずれか一方の方向に延びている。図5に示すように、回折光学素子30の周縁部35は、回折光学素子30のこの端辺に沿っている。
【0078】
第1保持部材51は、第1方向D1への幅を持った側端面51pを有する。側端面51pは周状である。側端面51pは、窪み51qを含んでいる。図4に示すように、窪み51qは、側端面51pに沿って周状に延びている。第1保持部材51は、図3に示すように、窪み51qを含んだ側端面51pにおいて、内筒部62に第1方向D1から接触している。この具体例によれば、第1保持部材51及び内筒部62は、第1方向D1と非平行な方向への相対移動を抑制される。これにより、整形光学系25によって整形されたコヒーレント光は、所定の方向から回折光学素子30の凹凸面31に入射できる。
【0079】
照明装置10は、回折光学素子組立体30Xとケーシング60との間をシールする第1シール部材71を含んでもよい。図3に示された例において、第1シール部材71は、第1保持部材51と外筒部61との間に設けられている。この第1シール部材71は、第1保持部材51と外筒部61との間をシールしている。第1シール部材71は、Oリングでもよい。図3に示すように、第1保持部材51の側端面51pに周状の溝51rが設けられている。第1シール部材71は溝51rに収容されている。第1シール部材71によれば、外部環境から照明装置10内への異物の流入を抑制できる。
【0080】
第1保持部材51は、透光板40の周縁部45を収容する第1凹部51Aを含んでもよい。図3及び図4に示すように、第1凹部51Aは、貫通穴51Xの周囲となる位置に設けられている。第1凹部51Aは、貫通穴51Xに隣接している。この具体例によれば、透光板40を保持部材50に対して所定の位置に精度良く位置決めできる。コヒーレント光の光路が透光板40によって意図しない方向に曲げられることを抑制できる。
【0081】
図3及び図4に示すように、第1凹部51Aの内寸法は、段差部51sを介して変化している。第1凹部51Aの内寸法は、第1方向D1における第2側において、段差部51sを介して増加している。
【0082】
図3及び図5に示すように、第1保持部材51は、回折光学素子30の周縁部35を収容する第2凹部51Bを含んでもよい。第2凹部51Bは、貫通穴51Xの周囲となる位置に設けられている。第2凹部51Bは、貫通穴51Xに隣接している。この具体例によれば、回折光学素子30を保持部材50に対して所定の位置に精度良く位置決めできる。回折光学素子30によって、コヒーレント光を所望の方向に向けることができる。
【0083】
図3及び図5に示すように、第2凹部51Bの内寸法は、段差部51tを介して変化している。第2凹部51Bの内寸法は、第1方向D1における整形光学系25から遠ざかった部分において、段差部51tを介して増加している。
【0084】
照明装置10は、第1保持部材51に固定された第2保持部材52をさらに含んでもよい。図6に示すように、第2保持部材52は、第1方向D1からの観察において円形形状の輪郭を有してもよい。図3に示すように、第2保持部材52は板状でもよい。図示された例において、第2保持部材52は、第1保持部材51と同一の寸法を有している。
【0085】
第2保持部材52は、固定具55によって第1保持部材51に固定されてもよい。固定具55は、図3に示されるように、ねじでもよい。図4及び図5に示された例において、第1保持部材51は、固定具55を固定する複数の固定穴51Yを有している。また、図6に示された例において、第2保持部材52は、固定具55が通過可能な複数の固定具通過穴52Yを有している。図示された例では、固定具通過穴52Yを通過した固定具55が固定穴51Yに固定されることで、第1保持部材51と第2保持部材52とが互いに固定されている。図6は、第2保持部材52を含む回折光学素子組立体30Xを示す平面図である。
【0086】
図6に示す例において、第2保持部材52は、第1方向D1に貫通する貫通穴52Xを含んでいる。図示された例において、第1方向D1から観察したとき、第2保持部材52の貫通穴52Xは、第1保持部材51の貫通穴51Xと同一の寸法を有している。第1保持部材51と第2保持部材52とが互いに固定されたとき、図4及び図5において破線を用いて示される貫通穴51Xによる開口は、図6に示される貫通穴52Xによる開口と、第1方向D1において重なる。貫通穴51X,52Xの周囲において、回折光学素子30の周縁部35は、第1保持部材51及び第2保持部材52の間に保持されている。
【0087】
図3及び図6に示すように、第2保持部材52は、貫通穴52Xの周囲となる位置に、凹部52Aを有してもよい。図示された例において、凹部52Aは、第1方向D1における第2側からの観察において、第2方向D2に長手方向を有する長方形形状の輪郭を有している。第1方向D1からの観察において、第2保持部材52の凹部52Aの輪郭は、第1保持部材51の第2凹部51Bの輪郭と同一の寸法を有している。第1保持部材51と第2保持部材52とが互いに固定されたとき、図5に示される第1保持部材51の第2凹部51Bの輪郭は、図6に示される第2保持部材52の凹部52Aの輪郭と、第1方向D1において重なる。
【0088】
図2及び図3に示すように、照明装置10は、第1保持部材51の第2凹部51Bと第2保持部材52の凹部52Aとの間に位置する第2シール部材72を含んでもよい。第2シール部材72は、回折光学素子30の周縁部35に、第1方向D1における第1側から接触している。第2シール部材72は、回折光学素子30の周縁部36と第2保持部材52との間をシールしている。図示された例において、第2シール部材72は、回折光学素子30の周縁部35、第1保持部材51の第2凹部51B、及び第2保持部材52の凹部52Aによって区画された隙間の形状にしたがって、変形している。この結果、回折光学素子30の周縁部35は、第1方向D1における第1側から、第2シール部材72を介して第2保持部材52によって保持されている。回折光学素子30の周縁部35は、第1方向D1における他方の側から、第1保持部材51によって保持されている。第2シール部材72によれば、外部環境から照明装置10内への異物の流入を抑制できる。
【0089】
図3及び図6に示す例において、第2保持部材52の、第1保持部材51に接触している面とは反対の面には、ケーシング60の外筒部61が接触している。図6において二点鎖線を用いて示すように、第2保持部材52は、その周縁部において、外筒部61に接触している。図3に示すように、第2保持部材52の固定具通過穴52Yは、外筒部61によって第1方向D1から塞がれている。
【0090】
図1B及び図3に示すように、照明装置10は、回折光学素子30に第1方向D1に対面して配置されたカバー80を含んでもよい。カバー80は、外筒部61の開口を第1方向D1から塞いでいる。カバー80は透光性を有する。回折光学素子30の凹凸面31で回折されたコヒーレント光は、カバー80を透過可能である。この具体例によれば、外筒部61の開口から照明装置10内への異物の流入を抑制できる。
【0091】
次に、図示された照明装置の使用時の作用について説明する。
【0092】
投影面95に投影パターン90を投影するため、コヒーレント光源20からコヒーレント光が放出される。コヒーレント光源20から放出されたコヒーレント光は、整形光学系25において整形される。図2に示された照明装置10において、コヒーレント光源20から放出されたコヒーレント光は、第1レンズ26によって、発散光束に整形される。発散光束は、第2レンズ27及び第3レンズ28において、平行光束に整形される。このようにして、コヒーレント光源20から放出されたコヒーレント光は、整形光学系25によって整形される。
【0093】
整形光学系25によって整形されたコヒーレント光は、回折光学素子組立体30Xに向かう。このコヒーレント光は、回折光学素子組立体30Xの透光板40を透過する。透光板40を透過したコヒーレント光は、保持部材50の貫通穴51Xを通過して回折光学素子30へ向かう。回折光学素子30は、整形光学系25によって整形されたコヒーレント光の進行方向を変化させる。回折光学素子30は、整形光学系25によって整形されたコヒーレント光を回折する凹凸面31を含んでいる。凹凸面31において回折されたコヒーレント光は、投影面95上の被照明領域96に向けられる。これにより、凹凸面31での回折特性に応じた投影パターン90を投影面95に投影できる。言い換えると、凹凸面31での回折特性に応じた被照明領域96にコヒーレント光を照射して、投影面95を照明できる。
【0094】
ところで、照明装置は屋外において使用されることもある。照明装置を屋外において使用する場合、粉塵、水滴等の異物が照明装置の内部へ流入し得る。また、外部環境の温度にともなって照明装置の内部の温度が急激に変化することもある。このとき、照明装置内に結露が生じ得る。異物は、回折光学素子の凹凸面に付着し得る。
【0095】
凹凸面に粉塵、水滴等の異物が付着した場合、凹凸面に入射しようとするコヒーレント光は、これらの異物の影響で意図しない方向に屈折ないし回折してしまう。このように、凹凸面31に付着した異物から及ぼされる光学作用によって、コヒーレント光の光路が意図しない方向に向けられ得る。結果として、所望の投影パターンが投影面に投影され得ない。
【0096】
図2及び図3に示すように、凹凸面31は、密閉空間CRに面している。密閉空間CRは、密閉された空間であり、外部環境に通じていない。これにより、密閉空間CRへの異物の流入が抑制され、凹凸面31への異物の付着が抑制される。結果として、凹凸面31が期待された回折機能を発揮でき、コヒーレント光を所望の方向に回折できる。すなわち、コヒーレント光によって投影面95上の所望の被照明領域96を精度良く照明でき、これにともなって、所望の投影パターン90を投影面95に投影できる。
【0097】
図示された照明装置10及び回折光学素子組立体30Xは、凹凸面31を含む回折光学素子30と、回折光学素子30に対面して配置された透光板40と、回折光学素子30及び透光板40を保持する第1保持部材51と、を含んでいる。第1保持部材51は貫通穴51Xを有している。透光板40は、貫通穴51Xを一方の側から塞ぐように第1保持部材51に接合されている。回折光学素子30は、貫通穴51Xを他方の側から塞ぐように第1保持部材51に接合されている。凹凸面31は、透光板40に対面している。この具体例によれば、簡易な構成によって、密閉空間CRを形成できる。密閉空間CRの区画に必要な部材を削減できる。これにともない、密閉空間CRを含む照明装置10の製造コストを低減できる。
【0098】
図示された具体例において、第1保持部材51は板状である。板状の第1保持部材51に設けられた貫通穴51Xを利用して密閉空間CRを形成することによって、回折光学素子30及び透光板40が向かい合う方向、すなわち第1方向D1に沿った密閉空間CRの長さを短くできる。また、板状の第1保持部材51は、ケーシング60等によって、安定して保持され得る。これらにより、密閉空間CR及び密閉空間CRを内部に形成される照明装置10の寸法を小型化できる。
【0099】
図示された具体例において、照明装置10及び回折光学素子組立体30Xは、第1保持部材51に固定された第2保持部材52を含んでいる。回折光学素子30の周縁部35は、第1保持部材51及び第2保持部材52によって保持されている。この具体例によれば、回折光学素子30の周縁部36が第2保持部材52によって覆われることで、回折光学素子30の周縁部36から凹凸面31への異物の流入を抑制できる。
【0100】
以上に説明してきた一実施の形態において、照明装置10は、コヒーレント光源20と、コヒーレント光源20から放出されたコヒーレント光を整形する整形光学系25と、整形光学系25によって整形されたコヒーレント光を回折する凹凸面31を含む回折光学素子30と、を含んでいる。凹凸面31は、密閉された密閉空間CRに面している。この具体例によれば、凹凸面31への異物の付着を抑制できる。これにより、凹凸面31によって、コヒーレント光を所望の方向に回折できる。したがって、所望の投影パターン90を投影面95に精度良く投影できる。
【0101】
以上に説明してきた一実施の形態において、照明装置10は、コヒーレント光を放出するコヒーレント光源20と、コヒーレント光源20から放出されたコヒーレント光源を整形する整形光学系25と、整形光学系25によって整形されたコヒーレント光を回折する凹凸面31を含む回折光学素子30と、回折光学素子30に対面して配置された透光板40と、回折光学素子30及び透光板40を保持する保持部材50と、を含んでいる。保持部材50(第1保持部材51)は貫通穴51Xを有する。透光板40は、貫通穴51Xを一方の側から塞ぐように保持部材50に接合されている。回折光学素子30は、貫通穴51Xを他方の側から塞ぐように保持部材50に接合されている。凹凸面31は透光板40に対面している。この具体例によれば、凹凸面31への異物の付着を抑制できる。これにより、凹凸面31によって、コヒーレント光を所望の方向に回折できる。したがって、所望の投影パターン90を投影面95に精度良く投影できる。
【0102】
具体例を参照しながら一実施の形態を説明してきたが、上述の具体例が一実施の形態を限定しない。上述した一実施の形態の具体例は、その他の様々な具体例で実施でき、その要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更、追加等を行うことができる。
【0103】
以下、図面を参照しながら、変形の一例について説明する。以下の説明および以下の説明で用いる図面では、上述した具体例と同様に構成され得る部分について、上述の具体例における対応する部分に対して用いた符号と同一の符号を用い、重複する説明を省略する。
【0104】
上述した具体例において、保持部材50(第1保持部材51)が板状であった。これに限られず、図7に示すように、保持部材50は筒状でもよい。この例において、回折光学素子30は、貫通穴51Xを一方の側から塞ぐように保持部材50に接合されてもよい。透光板40は、貫通穴51Xを他方の側から塞ぐように、保持部材50に接合されてもよい。
【0105】
上述した具体例において、照明装置10の回折光学素子組立体30Xは、回折光学素子30及び透光板40を保持する保持部材50を含んでいた。しかしながら、図8に示すように、照明装置10及び回折光学素子組立体30Xから保持部材50を省略してもよい。図8に示すように、回折光学素子30及び透光板40は、ケーシング60によって保持されてもよい。ケーシング60は、貫通穴60Xを有している。透光板40は、ケーシング60の貫通穴60Xを一方の側から塞ぐように、ケーシング60に接合されている。回折光学素子30は、ケーシング60の貫通穴60Xを他方の側から塞ぐように、ケーシング60に接合されている。この具体例によれば、回折光学素子30及び透光板40は、簡易な構成によって、安定して密閉状態に維持され得る密閉空間CRを区画できる。
【0106】
上述した具体例において、照明装置10の回折光学素子組立体30Xには、保持部材50に固定された第2保持部材52が含まれていた。しかしながら、図7及び図8に示されるように、照明装置10及び回折光学素子組立体30Xから第2保持部材52を省略してもよい。
【0107】
上述した具体例において、密閉空間CRは、回折光学素子30、透光板40、及び保持部材50によって区画されていた。しかしながら、密閉空間CRは、図9図11に示すように、互いに接合された回折光学素子30と透光板40との間に区画されてもよい。透光板40は、凹凸面31の周囲となる周状の部分(領域)において、回折光学素子30と接合してもよい。この具体例によれば、透光板40を透過させることで、コヒーレント光をより確実に凹凸面31に入射させつつ、密閉空間CRを容易に区画できる。
【0108】
図9に示す例において、回折光学素子30は、凹凸面31を含むプレート状部30aと、プレート状部30aから透光板40に向けて突出した突出部30bと、を含んでいる。この具体例において、回折光学素子30の突出部30bは、凹凸面31と透光板40とが互いに対面する方向とは非平行な方向から、密閉空間CRを区画している。この具体例によれば、回折光学素子30及び透光板40は、簡易な構成によって、安定して密閉状態に維持され得る密閉空間CRを区画できる。
【0109】
図10に示す例において、透光板40は、回折光学素子30の凹凸面31に対面するプレート状部40aと、プレート状部40aから回折光学素子30に向けて突出した突出部40bと、を含んでいる。この具体例において、透光板40の突出部40bは、凹凸面と透光板40とが互いに対面する方向とは非平行な方向から、密閉空間CRを区画している。この具体例によっても、回折光学素子30及び透光板40は、簡易な構成によって、安定して密閉状態に維持され得る密閉空間CRを区画できる。
【0110】
図11に示す例において、回折光学素子30は、凹凸面31を含むプレート状部30aと、プレート状部30aから透光板40に向けて突出した突出部30bと、を含んでいる。また、透光板40は、回折光学素子30の凹凸面31に対面するプレート状部40aと、プレート状部40aから回折光学素子30に向けて突出した突出部40bと、を含んでいる。この具体例によっても、回折光学素子30及び透光板40は、簡易な構成によって、安定して密閉状態に維持され得る密閉空間CRを区画できる。
【0111】
回折光学素子30と透光板40との間に区画された密閉空間CRを含む照明装置10の製造方法の一例として、図12図14を参照して、図9に示した密閉空間CRを含む照明装置10の製造方法を説明する。
【0112】
まず、一方の面に回折光学素子30を複数含む第1板101、及び透光板40を含む第2板102を準備する。図11に示す例において二点鎖線を用いて示すように、第1板101は、第3方向D3に並ぶ3つの回折光学素子30を含んでいる。図示された例において、第3方向D3に隣り合う回折光学素子30同士が、切断されずに接続されている。3つの回折光学素子30の各々は、第1方向D1における第2板102に向けて、凹凸面31を含んでいる。複数の回折光学素子30を含む第1板101は、種々の成形方法によって作製され得る。一例として、第1板101は、射出成形やナノインプリント成形によって作製され得る。
【0113】
図12に示す例において、第1板101は、回折光学素子30の凹凸面31を含む板状部101aと、板状部101aから第2板102に向けて突出する突出部101bと、を含んでいる。図示された例において、回折光学素子30の凹凸面31は、第3方向D3に隣り合う2つの突出部101bの間に位置している。
【0114】
次に、図12及び図13に示すように、複数の回折光学素子30を含む第1板101の一方の面に第2板102が接合される。第1板101と第2板102とは、接着又は溶着によって互いに接合されてもよい。図13に示すように、第1板101は、突出部101bにおいて第2板102に接合されている。この結果、第3方向D3に隣り合う第1板101の突出部101bの間の領域は、第2板102によって閉鎖されている。すなわち、第1板101と第2板102との接合工程において、第1板101と第2板102との間に密閉空間CRが区画されている。また、図13に示す例において、第2板102は、凹凸面31の周囲において、第1板101に周状に接合されている。
【0115】
次に、図14に示すように、第2板102と接合された第1板101を回折光学素子30ごとに切断する。図示された例において、第2板102と接合された第1板101は、第1方向D1及び第2方向D2に広がる平面によって、切断されている。以上のようにして、回折光学素子30と透光板40との間に密閉空間CRが区画された回折光学素子組立体30Xが製造される。そして、この回折光学素子組立体30Xを組み込むことで、照明装置10が製造される。
【0116】
図12図14に示された照明装置10の製造方法の一具体例において、回折光学素子組立体30Xの密閉空間CRは、第1板101の一方の面に第2板102が接合される接合工程において、第1板101と第2板102との間に区画されている。この具体例によれば、密閉空間CRは、第2板102と接合された第1板101を回折光学素子30ごとに切断する切断工程より前に、第1板101及び第2板102によって区画される。これにより、切断工程において発生し得る粉塵や水滴等の異物が、密閉空間CRへ流入することを効果的に抑制できる。したがって、この具体例によれば、回折光学素子30の凹凸面31への異物の流入を抑制できる。
【0117】
図12図14に示された照明装置10の製造方法の一具体例において、第2板102を第1板101に接合する際に、回折光学素子30の凹凸面31の周囲において、第2板102が第1板101に周状に接合されている。この具体例によれば、回折光学素子30の凹凸面31は、第2板102と接合された第1板101を回折光学素子30ごとに切断する切断工程より前に、第2板102によって覆われる。これにより、切断工程において発生し得る粉塵等の異物が、回折光学素子30の凹凸面31へ付着することを効果的に抑制できる。
【0118】
なお、図12図14に示された例とは異なり、第2板102が、第1板101に向けて突出する突出部を含んでもよい。また、図11図13に示された例とは異なり、第1板101が、第2板102に向けて突出する突出部を含み、且つ第2板102が第1板101に向けて突出する突出部を含んでもよい。
【0119】
上述した具体例において、密閉空間CRには、乾燥した気体が充填されてもよい。密閉空間CRに充填される気体は、空気でもよいし、窒素でもよい。なお、気体が「乾燥している」とは、1atmの圧力下における当該気体の露点温度が-30℃以下であることを意味する。露点温度は、静電容量式露点計(永野電機産業株式会社製「ND-TA」、JIS Z 8806:2001準拠品)によって測定される。あるいは、上述した具体例において、密閉空間CRは、減圧されていてもよい。減圧されているとは、圧力が1atm未満であることを意味する。密閉空間CRは、真空でもよい。これらの具体例によれば、密閉空間CRに含まれる水蒸気の量が低減され、密閉空間CR内における結露の発生を抑制できる。これにより、凹凸面31への水滴の付着を抑制できる。
【0120】
上述した具体例において、回折光学素子30の凹凸面31及び透光板40の間の距離は、0.5mm以上3.5mm以下でもよく、1.0mm以上3.0mm以下でもよく、1.5mm以上2.5mm以下でもよい。凹凸面31及び透光板40の間の距離に上限値を設けることで、回折光学素子30と透光板40との間に区画された密閉空間CRの体積の増大を抑制できる。これにより、密閉空間CR内に含まれる水蒸気の量を低減し、結露等によって凹凸面31に水滴が付着することを抑制できる。また、凹凸面31及び透光板40の間の距離に下限値を設けることによって、照明装置10内に密閉空間CRを容易に区画できる。
【0121】
上述した具体例において、回折光学素子30は、凹凸面31を構成する親水化層を含んでもよい。親水化層とは、親水化層によって構成される回折光学素子30の表面に滴下した4μlの水滴の接触角が30°以下となる層を意味する。接触角は、接触角計(協和界面科学株式会社製「DropMaster DM500」、JIS R 3257:1999準拠品)によって測定される。親水化層は、親水性基を含む種々の材料を含んでもよい。この具体例によれば、凹凸面31に水滴が付着したとしても、この水滴によってコヒーレント光の光路を意図せず大きく曲げてしまうことを効果的に抑制できる。
【0122】
上述した具体例において、密閉空間CR内に吸湿材が設けられてもよい。吸湿材として、酸化カルシウム、酸化ストロンチウム、シリカゲル、高吸水性ポリマー、水分ゲッター(例えば、双葉電子工業(株)製「OleDry」)等を使用してもよい。この具体例によれば、密閉空間CR内の湿度を吸湿材によって低減できる。これにより、凹凸面31への結露を効果的に抑制できる。
【0123】
上述した具体例において、透光板40は、表面を構成する反射防止層を含んでもよい。透光板40の反射防止層とは、コヒーレント光源20からのコヒーレント光の反射を抑制する機能を有した層を意味する。反射率は、分光光度計((株)島津製作所製「UV-3100PC」、JIS K 0115準拠品)によって測定される。反射防止層を設けた透光板40の反射率は、0°入射光において、1.0%以下でもよい。透光板40は、透光板40の整形光学系25を向く表面に反射防止層を含んでもよい。透光板40は、回折光学素子30の凹凸面31を向く表面に反射防止層を含んでもよい。透光板40の反射防止層は、単層でもよい。透光板40の反射防止層は、屈折率を調整するための粒子として、中空シリカと、フッ素添加物と、を含んでもよい。この具体例によれば、整形光学系25によって整形されたコヒーレント光の透光板40における反射を抑制して、コヒーレント光源20から放出された光によって、明瞭に被照明領域96を照明できる。また、この具体例によれば、透光板40表面におけるコヒーレント光の反射に起因した二重像(ゴースト)の発生を抑制できる。
【0124】
上述した具体例において、回折光学素子30は、凹凸面31とは反対側の表面を構成する反射防止層を含んでもよい。回折光学素子30の反射防止層とは、コヒーレント光源20からのコヒーレント光の反射を抑制する機能を有した層を意味する。反射率は、分光光度計((株)島津製作所製「UV-3100PC」、JIS K 0115準拠品)によって測定される。反射防止層を設けた回折光学素子30の反射率は、0°入射光において、1.0%以下でもよい。回折光学素子30の反射防止層は、単層でもよい。回折光学素子30において、単層の反射防止層は、屈折率を調整するフッ化マグネシウムを含む薄膜でもよい。回折光学素子30の反射防止層は、2層以上設けられてもよい。2層以上の反射防止層が回折光学素子30に設けられる場合、反射防止層の各々における屈折率、及び厚みが異なってもよい。この具体例によれば、回折光学素子30における環境光の反射を抑制することで、投影パターン90を高精度に安定して投影できる。
【0125】
なお、以上において上述した実施の形態に対するいくつかの変形例を説明してきたが、当然に、複数の変形例を適宜組み合わせて適用することも可能である。
【符号の説明】
【0126】
10:照明装置、20:コヒーレント光源、25:整形光学系、26:第1レンズ、27:第2レンズ、28:第3レンズ、30X:回折光学素子組立体、30:回折光学素子、31:凹凸面、40:透光板、50:保持部材、51:第1保持部材、52:第2保持部材、55:固定具、60:ケーシング、61:外筒部、62:内筒部、63:間隙環、64:電池、65:回路、66:スイッチ、71:第1シール部材、72:第2シール部材、80:カバー、90:投影パターン、95:投影面、96:被照明領域
図1A
図1B
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14