(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023170291
(43)【公開日】2023-12-01
(54)【発明の名称】作業適正度推定システム及び作業適正度推定方法
(51)【国際特許分類】
G06Q 10/0639 20230101AFI20231124BHJP
G06Q 50/04 20120101ALI20231124BHJP
【FI】
G06Q10/06 332
G06Q50/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022081934
(22)【出願日】2022-05-18
(71)【出願人】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001689
【氏名又は名称】青稜弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】小林 拓椰
(72)【発明者】
【氏名】新倉 雄大
(72)【発明者】
【氏名】井上 祐貴
(72)【発明者】
【氏名】中崎 渓一郎
【テーマコード(参考)】
5L049
【Fターム(参考)】
5L049AA06
5L049CC04
(57)【要約】
【課題】作業適正度推定システムにおいて、作業者の内面的な要素である精神的負荷を考慮して作業者の適性度を推定する。
【解決手段】作業者の精神的負荷を推定して精神的負荷推定値を生成する精神的負荷推定部と、作業者の作業内容を推定する作業内容推定部と、精神的負荷推定値と作業内容に基づいて作業者の作業適正を推定して作業適正度を生成する作業適正推定部と、作業適正度と精神的負荷推定値に基づいて作業改善案を生成する作業改善案生成部とを有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業者の生体データと前記作業者の作業データを取得するセンシングデータ取得部と、
前記生体データに基づいて前記作業者の精神的負荷を推定して精神的負荷推定値を生成する精神的負荷推定部と、
前記作業データに基づいて前記作業者の作業内容を推定する作業内容推定部と、
前記精神的負荷推定値と前記作業内容に基づいて前記作業者の作業適正を推定して作業適正度を生成する作業適正推定部と、
前記作業適正度と前記精神的負荷推定値に基づいて作業改善案を生成する作業改善案生成部と、
を有することを特徴とする作業適正度推定システム。
【請求項2】
前記作業内容は、複数の要素作業を含み、
前記作業内容推定部は、
複数の前記要素作業の作業順と前記要素作業ごとの作業時間を推定し、
前記精神的負荷推定部は、
前記要素作業ごとに前記精神的負荷推定値を生成し、
前記作業適正推定部は、
前記要素作業ごとに前記作業適正度を生成することを特徴とする請求項1に記載の作業適正度推定システム。
【請求項3】
前記センシングデータ取得部は、
前記作業者に取り付けられたウェアラブルセンサを用いて、前記作業者が作業を実行している間に前記生体データと前記作業データを取得することを特徴とする請求項1に記載の作業適正度推定システム。
【請求項4】
前記作業改善案を出力する出力部を更に有することを特徴とする請求項2に記載の作業適正度推定システム。
【請求項5】
前記作業改善案生成部は、
前記作業適正度と前記精神的負荷推定値に基づいて、現在作業を実行中の前記作業者に対して前記現在作業を実行中に起こり得るエラーポテンシャルをレベルごとに予測し、
前記出力部は、
前記エラーポテンシャルの前記レベルに対応した警告情報を前記作業者に提示することを特徴とする請求項4に記載の作業適正度推定システム。
【請求項6】
前記作業改善案生成部は、
前記作業適正度と前記精神的負荷推定値がそれぞれ所定の閾値を超えるか否かを判定することにより、前記エラーポテンシャルを前記レベルごとに予測することを特徴とする請求項5に記載の作業適正度推定システム。
【請求項7】
前記出力部は、
前記警告情報として、注意喚起情報又は休憩の提案に関する情報を前記作業者に提示することを特徴とする請求項5に記載の作業適正度推定システム。
【請求項8】
前記作業改善案生成部は、
前記精神的負荷推定値に基づいて前記作業者に最適な前記要素作業の前記作業順を求め、
前記出力部は、
前記作業者ごとに前記作業順を提案することを特徴とする請求項4に記載の作業適正度推定システム。
【請求項9】
前記作業改善案生成部は、
同一作業を複数回に渡ってそれぞれ異なる作業順で実行した前記作業者に対して前記作業順ごとに前記精神的負荷推定値の大小を比較することにより、前記精神的負荷推定値が最小の前記作業順を前記作業者に最適な前記作業順として求めることを特徴とする請求項8に記載の作業適正度推定システム。
【請求項10】
前記作業改善案生成部は、
前記要素作業ごとに標準作業時間が設定されている作業を実行する前記作業者に対して前記作業適正度に基づいて前記要素作業ごとに前記作業者に最適な前記作業時間を作業目安時間として求め、
前記出力部は、
前記作業者ごとに前記作業目安時間を提案することを特徴とする請求項4に記載の作業適正度推定システム。
【請求項11】
前記出力部は、
前記作業改善案を音声、動画又は画像により出力することを特徴とする請求項4に記載の作業適正度推定システム。
【請求項12】
作業者の生体データと前記作業者の作業データを取得するセンシングデータ取得ステップと、
前記生体データに基づいて前記作業者の精神的負荷を推定して精神的負荷推定値を生成する精神的負荷推定ステップと、
前記作業データに基づいて前記作業者の作業内容を推定する作業内容推定ステップと、
前記精神的負荷推定値と前記作業内容に基づいて前記作業者の作業適正を推定して作業適正度を生成する作業適正推定ステップと、
前記作業適正度と前記精神的負荷推定値に基づいて作業改善案を生成する作業改善案生成ステップと、
を有することを特徴とする作業適正度推定方法。
【請求項13】
前記作業改善案を出力する出力ステップを更に有し、
前記作業改善案生成ステップは、
前記作業適正度と前記精神的負荷推定値に基づいて、現在作業を実行中の前記作業者に対して前記現在作業を実行中に起こり得るエラーポテンシャルをレベルごとに予測し、
前記出力ステップは、
前記エラーポテンシャルの前記レベルに対応した警告情報を前記作業者に提示することを特徴とする請求項12に記載の作業適正度推定方法。
【請求項14】
前記作業改善案生成ステップは、
前記精神的負荷推定値に基づいて前記作業者に最適な前記要素作業の前記作業順を求め、
前記出力ステップは、
前記作業者ごとに前記作業順を提案することを特徴とする請求項13に記載の作業適正度推定方法。
【請求項15】
前記作業改善案生成ステップは、
前記要素作業ごとに標準作業時間が設定されている作業を実行する前記作業者に対して前記作業適正度に基づいて前記要素作業ごとに前記作業者に最適な前記作業時間を作業目安時間として求め、
前記出力ステップは、
前記作業者ごとに前記作業目安時間を提案することを特徴とする請求項13に記載の作業適正度推定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業適正度推定システム及び作業適正度推定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
作業の効率化やミス低減を図るために、例えば作業者の作業毎の適正度を判定し、実行している作業の適正度に応じて適切に指示を送りたい場合がある。
【0003】
特許文献1には、「各作業に対する人間の能力(習熟度)は、当該各作業の処理時間を指標とするだけでは困難である」ことを課題として、「作業の正確性、速度、安定性、及びリズムを基準としたパフォーマンス指数を指標とする」ことを特徴とする適性度判定及び人員配置システムについて開示がある。これにより、各作業に対する各作業者の割り当てを、パフォーマンス指数を基に適切に決定することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のような従来のシステムでは、作業者の各作業に対する適性度の判定は、実行時間の速さ、作業順序の正しさ、ミスの少なさ、のように作業を実行した際に生じる外面的な要素から決定される。このような外面的な要素を用いて作業の適性度を判定するためには、各要素に関して適正度を見分ける目安となるべき値が要求される。
【0006】
従来のシステムでは、これを作業の習熟度の高い熟練者のデータを収集することで算出している。つまり、従来のシステムでは、作業の習熟度が高い熟練作業員と比較して、作業がどの程度円滑に行えていたかを定量的に比較することが可能である。
【0007】
しかしながら、作業適正度の判定には、作業を実行する際の作業者の内面的な要素が含まれていない。内面的な要素とは、作業者にかかる精神的な負荷や疲労度のことを指す。ここで問題となるのは、外面的な要素による作業適性度と内面的な要素による作業適性度が必ずしも一致しない点である。
【0008】
例えば、作業者が極端に集中している状況であれば、苦手な作業であってもミスなく要求時間内で実行することは可能だが、その分精神的な負荷は大きくなる。このようなケースでは、短期的には要求以上のパフォーマンスを発揮できたとしても、長期的には作業効率の低下が起こることが考えられる。
【0009】
また、作業適正度の高い作業であったとしても、作業者の体調や精神的な疲労度によっては要求通りのパフォーマンスを発揮できないケースもある。このようなケースでは、内面的な要素からは事前にパフォーマンス低下のリスクを察知することができるが、外面的な要素からは顕在化するまで察知することは不可能である。
【0010】
このように、従来のシステムでは、作業を実行した際の外面的な要素から作業適正度を判定するため、作業者にかかっている精神的な負荷とそれによって生じる長期的なリスクや、実行中の作業で起こりうるトラブルが察知しづらい状態であると言える。
【0011】
以上の課題を踏まえ、各作業において作業者にかかる内面的な負荷を判定要素として含んだ作業適正度を判定し、より作業者の主観と一致する観点から作業の適正度を判定する技術が求められる。
【0012】
本発明の目的は、作業適正度推定システムにおいて、作業者の内面的な要素である精神的負荷を考慮して作業者の適性度を推定することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の一態様の作業適正度推定システムは、作業者の生体データと前記作業者の作業データを取得するセンシングデータ取得部と、前記生体データに基づいて前記作業者の精神的負荷を推定して精神的負荷推定値を生成する精神的負荷推定部と、前記作業データに基づいて前記作業者の作業内容を推定する作業内容推定部と、前記精神的負荷推定値と前記作業内容に基づいて前記作業者の作業適正を推定して作業適正度を生成する作業適正推定部と、前記作業適正度と前記精神的負荷推定値に基づいて作業改善案を生成する作業改善案生成部とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明の一態様によれば、推定システムにおいて、作業者の内面的な要素である精神的負荷を考慮して作業者の適性度を推定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】実施例の精神的負荷・作業適正度推定システムの全体ブロック図である。
【
図2】センシングデータ取得部が取得するデータの例を示すブロック図である。
【
図3】生体データによる精神的負荷推定の模式図である。
【
図4】作業データによる佐合内容推定の模式図である。
【
図6】要素作業単位での精神的負荷推定値の模式図である。
【
図7】精神的負荷データベースの一例の模式図である。
【
図8】作業適正度データベースの一例の模式図である。
【
図9】実施例1において作業適正度と精神的負荷に伴うレベル別のエラーポテンシャルに対する警告を作業改善案として出力する際のフローチャート図である。
【
図10】実施例2において作業順序を作業改善案として出力する際の概念図である。
【
図11】実施例3において作業目安時間を作業改善案として出力する際の概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。ただし、本発明は以下に示す実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。本発明の思想ないし趣旨から逸脱しない範囲で、その具体的構成を変更し得ることは当業者であれば容易に理解される。
【0017】
以下に説明する発明の構成において、同一部分又は同様な機能を有する部分には同一の符号を異なる図面間で共通して用い、重複する説明は省略することがある。
【0018】
同一あるいは同様な機能を有する要素が複数ある場合には、同一の符号に異なる添字を付して説明する場合がある。ただし、複数の要素を区別する必要がない場合には、添字を省略して説明する場合がある。
【0019】
本明細書等における「第1」、「第2」、「第3」などの表記は、構成要素を識別するために付するものであり、必ずしも、数、順序、もしくはその内容を限定するものではない。また、構成要素の識別のための番号は文脈毎に用いられ、一つの文脈で用いた番号が、他の文脈で必ずしも同一の構成を示すとは限らない。また、ある番号で識別された構成要素が、他の番号で識別された構成要素の機能を兼ねることを妨げるものではない。
【0020】
図面等において示す各構成の位置、大きさ、形状、範囲などは、発明の理解を容易にするため、実際の位置、大きさ、形状、範囲などを表していない場合がある。このため、本発明は、必ずしも、図面等に開示された位置、大きさ、形状、範囲などに限定されない。
【0021】
本明細書において単数形で表される構成要素は、特段文脈で明らかに示されない限り、複数形を含むものとする。
【0022】
ここで、「要素作業」とは一連の作業を分割した際の各単位要素のことをいうものとする。例えば、生産ラインの組み立て作業であれば「ネジ締め」、「部品取り付け」、「点検」等がこれにあたる。要素作業の分割方法や分割単位は必ずしも一位に定まらず、扱う作業内容によって調整や変更を加えても良い。
【0023】
このような技術は、例えば工場の作業における作業者支援に活用することができる。作業者支援システムは、例えば、生産ラインの組み立て作業の実作業で利用することができる。以下、図面を用いて実施例について説明する。
【実施例0024】
<システム全体構成>
図1は、実施例の精神的負荷・作業適正度推定システムの全体ブロック図である。
精神的負荷・作業適正度推定システム1は実行部110と、データベース120を含む。データベース120は過去の実行部110における処理結果を蓄積するものであり、実行部110はデータベース120が蓄積した過去の処理結果を参照しながら処理を実行する。
【0025】
実行部110は、センシングデータ取得部111、精神的負荷推定部112、作業内容推定部113、作業適正推定部114、作業改善案生成部115と出力部116を含む。
【0026】
データベース120は、作業データベース121、精神的負荷データベース122、作業適正度データベース123を含む。
【0027】
実行部110とデータベース120を含む精神的負荷・作業適正度推定システム1は、一般的なサーバで構成できる。サーバ周辺のハードウェア構成として、入力装置、出力装置、処理装置、および記憶装置を含む。本実施例では、計算や制御等の機能は、記憶装置に格納されたプログラムが処理装置によって実行されることで、定められた処理を他のハードウェアと協働して実現されることとし、
図1ではその機能ブロックのみを示している。
【0028】
以上の構成は、単体のサーバで構成してもよいし、あるいは、入力装置、出力装置、処理装置、記憶装置の任意の部分が、ネットワークで接続された他のコンピュータで構成されてもよい。
【0029】
図2は、センシングデータ取得部111が取得するデータの例を示すブロック図である。
センシングデータ取得部111は精神的負荷推定部112に必要な生体データ11と、作業内容推定部113に必要な作業データ12を取得するためのセンサによって構成される。
【0030】
生体データ11を取得するセンサとしては脳波計、心拍計、血圧計などの作業者の内面的な状態を測定できるものから1または複数種類を選択すればよい。その他、動画を含むカメラ、筋電計、視線計測可能なメガネ型のセンサなどでも良い。
【0031】
以下では、生体データ11として脳波、心拍、視線を組み合わせた例で説明する。作業データ12を取得するセンサとしては一人称視点の動画や姿勢・骨格センサなどの作業者の動きを捉えられるものから1または複数種類を選択すればよい。また、あらかじめ実行する要素作業の種類と順序が明らかである場合は、その情報を直接作業データ12として取得しても良い。
【0032】
また、ウェアラブルセンサが取り付けられた作業者が複数の要素作業を含む作業を実行している間に、センシングデータ取得部111においてウェアラブルセンサから生体データ11と作業データ12を取得してもよい。以下では、作業データ12として一人称視点動画を用いた例で説明する。
【0033】
精神的負荷推定部112は、センシングデータ取得部111から生体データ11と、データベース120の精神的負荷データベース122から過去の同一作業者の精神的負荷情報を受け取り、推定した精神的負荷を作業適正推定部114と作業改善案生成部115にそれぞれ送信する。また、推定した精神的負荷情報をデータベース120の精神的負荷データベース122に蓄積する。
【0034】
作業内容推定部113は、センシングデータ取得部111から作業データ12を受け取り、推定した作業内容を作業適正推定部114と作業改善案生成部115にそれぞれ送信する。また、推定した作業内容情報をデータベース120の作業データベース121に蓄積する。
【0035】
作業適正推定部114は、精神的負荷推定部112から精神的負荷、作業内容推定部113から作業内容の情報をそれぞれ受け取り、データベース120の作業適正度データベース123に蓄積されている該当作業者・作業に対する過去の作業適正度を元に、最新の作業適正度を推定する。新しく推定された作業適正度を作業改善案生成部115に送信する。また、推定した作業適正度を用いてデータベース120の作業適正度データベース123を更新する。
【0036】
作業改善案生成部115は、精神的負荷推定部112から精神的負荷、作業内容推定部113から作業内容、作業適正推定部114から作業適正度の情報をそれぞれ受け取り、データベース120に蓄積されている該当作業者・作業に対する過去の作業情報を元に、現在の作業者の状態に最適化された作業改善案を生成する。
【0037】
現在の作業者の状態に最適化された作業改善案としては、例えば、作業者のミス抑制、負担軽減、作業効率化を実現するような新たな作業方法の提案や、現在の作業方法における注意点を作業者に知らせる、などがあげられる。
【0038】
出力部116は、作業改善案生成部115で生成した作業改善案を受け取り、その改善案をどのような方式で出力するか決定し、出力内容をサーバなどに搭載されている出力装置に送信する。出力の方式としては、例えば、音声、動画、画像など、もしくは複数種類を組み合わせてもよい。出力部の発信対象は実際の作業を実行している作業者、もしくは作業現場の監督者である。
【0039】
<作業内容推定部>
図3は生体データ11による精神的負荷推定の模式図である。生体データ11として、各生体センサで測定した値を時系列の特徴量として抽出する。
図3では、脳波計、心拍計、視線センサを作業者に装着し、それぞれの測定値をセンシングデータ取得部111で取得する例を示す。取得した測定値はそのまま特徴量として用いても良いし、教師あり学習で学習済みの特徴抽出器を用いて特徴量を別に抽出しても良い。
図3のように複数の測定値を取得した際は、測定値を組み合わせて新たな単一の特徴量を作成しても良い。
【0040】
抽出した特徴量を用いて、精神的負荷推定部112において時系列の精神的負荷を推定する。精神的負荷推定部112は、例えばディープニューラルネットワーク(DNN)で構成し、教師有り学習で学習させておけばよい。
【0041】
<精神的負荷推定部>
図4は作業データ12による作業内容推定の模式図である。作業データ12として、各作業センサで測定した値を時系列の特徴量として抽出する。
図4では、一人称視点動画が撮影可能なウェアラブルカメラを作業者の頭部に装着し、センシングデータ取得部111で一人称動画を取得する。取得した一人称動画から学習済みの動画特徴量抽出器を用いて特徴量を抽出する。複数の測定値を取得した際は、測定値を組み合わせて新たな単一の特徴量を作成しても良い。
【0042】
抽出した特徴量を用いて、作業内容推定部113において各要素作業の作業種類と作業時間を推定する。作業内容推定部113は、例えばディープニューラルネットワーク(DNN)で構成し、教師有り学習で学習させておけばよい。
【0043】
作業内容推定部113によって推定した作業内容をデータベース120の作業データベース121に蓄積する。
図5は、作業データベースの一例の模式図である。
【0044】
図5の例では、データベースをテーブル形式で管理し、レコード毎にレコードid、作業者名、作業名、作業開始時間、要素作業単位で推定した作業順番と作業時間をデータとして蓄積する。レコードidは測定した各作業を区別するために用いられる。各要素作業は作業全体の中で複数回登場する可能性があるため、推定した作業順番と作業時間はリストとして格納する。
【0045】
<作業適正推定部>
図6は要素作業単位での精神的負荷推定値の模式図である。精神的負荷推定部112によって推定した時系列の精神的負荷と、作業内容推定部113によって推定した要素作業単位での作業種と作業時間を元に、要素作業単位で時系列の推定精神負荷値を区切り、それぞれの精神負荷を抽出する。
【0046】
抽出した要素作業単位での時系列の精神的負荷と、データベース120の精神的負荷データベース122に蓄積された過去の同一作業者による精神的負荷を元に、推定した精神的負荷の最終値を決定する。抽出した精神的負荷の平均値をそのまま最終値として扱っても良いが、作業者によっては推定した精神的負荷が全体的に高い傾向、もしくは全体的に低い傾向が見られる場合がある。
【0047】
そこで、例えば、抽出した精神的負荷の平均値と、精神的負荷データベース122に蓄積されている同一作業者の全レコードの精神的負荷の平均値を比較し、全レコードの平均値を50として標準化した精神負荷最終値を算出する。これにより、精神的負荷が全体的に高い、もしくは低い作業者であっても、その作業者の精神的負荷の平均値が中間値の50として扱われるため、作業者毎の偏りが生じない精神的負荷の算出が可能となる。
【0048】
図7は、精神的負荷データベースの一例の模式図である。
図7の例では、データベースをテーブル形式で管理し、レコード毎に測定対象要素作業のidと順番、精神的負荷推定値の最小値、最大値、平均と分散、精神的負荷最終値をデータとして蓄積する。
【0049】
図7の例では、精神的負荷推定値の最小値、最大値、平均と分散を過去の同一作業者の蓄積レコードと比較することで、標準化した精神的負荷最終値を算出する。
【0050】
作業適正推定部114は、精神的負荷推定部112と作業内容推定部113によって推定した要素作業毎の精神的負荷最終値を元に、作業適正度データベース123に蓄積された過去の要素作業毎の作業適正度を最新の状態に更新する。
【0051】
図8は、作業適正度データベースの一例の模式図である。
図8の例では、データベースをテーブル形式で管理し、レコード毎に作業者名、要素作業名、作業適正度、推定回数をデータとして蓄積する。作業適正度は、精神的負荷推定部112によって算出された精神的負荷を元に決定する。
【0052】
図7の例のように精神的負荷最終値が0~100の間の値で標準化されている場合、作業適正度を計算する一つの方法として、100から精神的負荷最終値を減算する方法がある。同一の作業者と要素作業の組み合わせが既にレコードとして存在する場合、つまり過去に算出された作業適正度が既に存在する場合は、該当レコードに上書きする形でレコードの更新を行う。この際、過去の作業適正度とその作業測定回数、新しく推定した作業適正度を元に更新を行う。なお、作業適正度の計算方法は上記方法に限定するものではなく、同様の効果が得られる他の計算方法を用いても良い。
【0053】
図8の例では、過去に推定した全ての作業適正度の平均を取ることで、作業適正度の更新を行う。この際、推定回数が増えるにつれて作業適正度の更新される幅は小さくなる。そのため、定期的に作業者毎のレコードをリセットし、作業者の最新の作業適正度を反映したり、最大で直近N回(Nは自然数)の推定結果を用いて作業適性度の更新を行ったりしてもよい。
【0054】
<作業改善案生成部・出力部>
図9は作業適正度と精神的負荷に伴うレベル別のエラーポテンシャルに対する警告を作業改善案として出力する際のフローチャート図である。
【0055】
精神的負荷推定部112によって推定した現在の精神的負荷と、作業適正度推定部114で推定した該当要素作業の作業適正度を元に、作業者が現在の作業を実行中にエラーやミスを起こす可能性を示すエラーポテンシャルがどの程度高いか推定し、事前に警告を行う。
図9の例では、警告レベルを3つの段階に分割し、作業者が実行中の要素作業の適正度と現在の精神的負荷の状態を元に、警告レベルのどの段階に属するかを常に推定する。
【0056】
図9の例では作業適正度と精神的負荷は0~100の間で推定され、作業適正度が30未満だと作業適正度が低い、精神的負荷が70より大きいと精神的負荷が高いとする。作業適正度が低い、精神的負荷が高い、のどちらも当てはまらない場合は警告レベル0、どちらか1つが当てはまる場合は警告レベル1、2つとも当てはまる場合は警告レベル2と推定する。推定された警告レベルに応じて、作業者に対する音声アラートを用いた警告が出力部において実行される。出力部における出力は、音声の他に動画や画像、もしくはそれらの組み合わせによって実行されても良い。
【0057】
警告レベル0の状態ではエラーポテンシャルは低く、出力部において作業者に対する警告は行われない。警告レベル1の状態ではエラーポテンシャルは中程度であり、出力部において作業者に対して1回注意喚起を行う。注意喚起の内容は単純な警告音に加え、要素作業毎にミスしやすい点をあらかじめ作業データベース121に登録し、その内容を改めて作業者に音声で知らせる、などであっても良い。
【0058】
警告レベル2の状態ではエラーポテンシャルは高く、いつミスが起きてもおかしくない状況である。出力部はアラートによる注意喚起を継続的に行い、作業内容によっては休憩の提案を行っても良い。
【0059】
実施例1によれば、ウェアラブルセンサが取り付けられた作業者が複数の要素作業を含む作業を実行している間に、作業者の作業内容と、その際の精神的負荷を推定することで、要素作業単位で作業者の内面状態に着目した作業適正度を推定することが可能になる。
【0060】
これにより、精神的負荷と作業適正度を組み合わせることで作業者のエラーポテンシャルが常に把握できるようになり、作業者がミスをおかしやすい状態や作業効率が落ちる可能性がある状態の際に、事前に警告して作業者に知らせることが可能になる。
実施例1では、精神的負荷と作業適正度を組み合わせてレベル別のエラーポテンシャルアラートを作業改善案として出力する方法について記載した。実施例1における精神的負荷推定部112、作業内容推定部113、作業推定適正部114の実現方法を利用することで、作業者毎に最適な作業順序を作業改善案として出力する方法について検討することができる。
以上説明した実施例2によれば、同一作業を複数回に渡ってそれぞれ異なる順序で実行した作業者に対し、精神的負荷推定部112によって推定された精神的負荷を元に、それぞれの実行時における精神的負荷の大小を比較することで、作業改善案生成部115で同作業における作業者に最適な作業順序案を作成し、出力部116で出力することが可能になる。