(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023170292
(43)【公開日】2023-12-01
(54)【発明の名称】止水蓋
(51)【国際特許分類】
F16L 55/132 20060101AFI20231124BHJP
E03F 7/00 20060101ALI20231124BHJP
【FI】
F16L55/132
E03F7/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022081936
(22)【出願日】2022-05-18
(71)【出願人】
【識別番号】000201504
【氏名又は名称】前田製管株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002996
【氏名又は名称】弁理士法人宮田特許事務所
(71)【出願人】
【識別番号】599024001
【氏名又は名称】株式会社サンリツ
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100228511
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 彩秋
(74)【代理人】
【識別番号】100173462
【弁理士】
【氏名又は名称】宮本 一浩
(74)【代理人】
【識別番号】100194179
【弁理士】
【氏名又は名称】中澤 泰宏
(74)【代理人】
【識別番号】100166442
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 洋雅
(74)【代理人】
【識別番号】110002996
【氏名又は名称】弁理士法人宮田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鎌田 健
(72)【発明者】
【氏名】大津賀 則男
【テーマコード(参考)】
2D063
3H025
【Fターム(参考)】
2D063EA03
2D063EA05
3H025DA01
3H025DB16
3H025DB19
3H025DD04
3H025DD05
(57)【要約】
【課題】
密閉性を確保するために使用される柔軟性を有する部品を保護することで、破損の進展を抑制可能な止水蓋を提供すること。
【解決手段】
止水蓋は、導水管Pに嵌め込み且つ柔軟性を有する密着体31と、密着体31の内部に収容する本体11と、密着体31と本体11との隙間に配置する拡張リング21と、拡張リング21を変形させる拡張ボルト44と、で構成し、密着体31は、外側筒33と外側壁36を有しており、本体11は、内側筒13と内側壁16を有しており、内側筒13には、拡張ボルト44を螺合させるメネジ14を設ける。そして拡張リング21を変位させて外側筒33を導水管Pに密着させることで、止水蓋は導水管Pに固定され、さらに導水管Pが塞がれて流れが遮断される。また外側壁36のほぼ全域は、内側壁16で保護するほか、内側壁16と外側壁36を接着することで、破損の進展が抑制される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
導水管(P)の内周面に嵌め込み且つ柔軟性を有する素材からなる密着体(31)と、該密着体(31)の内部に収容する本体(11)と、該密着体(31)と該本体(11)との隙間に配置する拡張リング(21)と、該拡張リング(21)を変形させるための拡張ボルト(44)と、で構成してあり、
前記密着体(31)は、前記導水管(P)の内周面に接触する外側筒(33)と、該外側筒(33)の一端面を塞ぐ外側壁(36)と、を有しており、
前記本体(11)は、前記外側筒(33)と概ね同心に揃う内側筒(13)と、該内側筒(13)の一端面を塞ぐ内側壁(16)と、を有しており、該内側筒(13)には、前記拡張ボルト(44)を螺合させるためのメネジ(14)を設け、さらに該内側壁(16)は、該内側筒(13)よりも大径であり、
前記拡張リング(21)は、切れ目を有する環状であり、前記メネジ(14)に螺合した前記拡張ボルト(44)を介して該拡張リング(21)を外周側に変位させることで、前記外側筒(33)を前記導水管(P)に密着させ、
前記内側壁(16)と前記外側壁(36)は接着してあることを特徴とする止水蓋。
【請求項2】
前記内側筒(13)の内部には、前記内側壁(16)から突出する排水管(17)を設けてあり、さらに前記外側壁(36)において、該排水管(17)の延長線上には抜き穴(37)を設けてあり、該排水管(17)および該抜き穴(37)により、前記導水管(P)の内部でせき止められた水を流出可能としたことを特徴とする請求項1記載の止水蓋。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、用水路や下水道などの導水管において、その流れを一時的に遮断する際に使用する止水蓋に関する。
【背景技術】
【0002】
用水路や下水道は、人々の生活に必要不可欠な社会基盤であり、農地や宅地が新たに開発された際、新規に敷設されることがあるほか、敷設から歳月が経過した後は、その健全性を維持するため、点検や補修を行うことになる。このように、用水路や下水道の敷設や点検や補修などを行う際は、その作業を円滑に進めるため、導水管を塞いで流れを一時的に遮断したい場合があり、そのため、後記の特許文献のような技術が提案されている。
【0003】
特許文献1では、欠けを有する下水管においても、確実に封止が可能な下水管用止水プラグが開示されている。この下水管用止水プラグは、下水道の内周面に密着するゴム製筒状部と、ゴム製筒状部の内部に配置される筒状の螺子保持部と、螺子保持部の一端面を塞ぐ蓋と、ゴム製筒状部と螺子保持部との間に配置される押圧部と、螺子保持部から外周側に突出させる螺子とで構成されており、螺子を介して押圧部を外周側に押圧することで、ゴム製筒状部が下水管に密着して封止が実現する。なおゴム製筒状部の一端側は、締結バンドなどで螺子保持部と一体化させるほか、他端側は、押圧部で下水管に密着するため、蓋とゴム製筒状部により、下水管を封止することになる。この発明では、螺子を複数配置してあるため、ゴム製筒状部を局地的に膨出させることができ、欠けを有する下水管についても、確実に封止が可能である。
【0004】
次の特許文献2では、マンホールに接続する下水管本管の取付装置が開示されている。この取付装置は、弾性筒体と内環と外環との三要素を中心に構成されており、弾性筒体の一端側の内部には下水道本管を差し込むが、そこに締付固定バンドを組み込むことで、下水道本管と弾性筒体が一体化する。また弾性筒体の他端側については、マンホールの周壁に形成された削孔の内周面に接触させるが、この接触箇所において、弾性筒体の内部には外環を配置してあり、さらに外環の内部には内環を配置してあり、内環には、複数の螺合孔を設けてある。そして、螺合孔に差し込まれた締め付け具を変位させて外環を押圧することで、弾性筒体が削孔の内周面に密着し、マンホールと弾性筒体が一体化する。なお内環と外環との離脱を防ぐため、その一方には棒状に突出する係止部を設けてあり、他方にはそれを受け止める被係止部を設けてある。したがって弾性筒体を取り付ける際、外環は所定の位置に留まるため、その位置調整の作業が不要になり、効率的な施工が実現する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2013-256806号公報
【特許文献2】特開2015-172307号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
止水蓋で導水管の流れを遮断する際は、ゴムや合成樹脂など、柔軟性を有する素材を使用した筒状の部品を導水管の内周面に密着させる必要がある。この筒状の部品は、当然ながら金属よりも強度が劣るため、激しい摩擦や鋭利な異物との接触などにより破損する恐れがある。この点において、前記の特許文献1の下水管用止水プラグでは、ゴム製筒状部の中間部分(円錐形になっている部分)が被覆物で保護されることなく外部に露出しており、悪い条件が重なった場合、破損が進展して漏水を招く可能性がある。このような事態を防ぐため、柔軟性を有する部品の周辺には、できるだけ広範囲に被覆物を配置し、破損の進展を抑制する必要がある。
【0007】
本発明はこうした実情を基に開発されたもので、密閉性を確保するために使用される柔軟性を有する部品を保護することで、破損の進展を抑制可能な止水蓋の提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記の課題を解決するための請求項1記載の発明は、導水管の内周面に嵌め込み且つ柔軟性を有する素材からなる密着体と、該密着体の内部に収容する本体と、該密着体と該本体との隙間に配置する拡張リングと、該拡張リングを変形させるための拡張ボルトと、で構成してあり、前記密着体は、前記導水管の内周面に接触する外側筒と、該外側筒の一端面を塞ぐ外側壁と、を有しており、前記本体は、前記外側筒と概ね同心に揃う内側筒と、該内側筒の一端面を塞ぐ内側壁と、を有しており、該内側筒には、前記拡張ボルトを螺合させるためのメネジを設け、さらに該内側壁は、該内側筒よりも大径であり、前記拡張リングは、切れ目を有する環状であり、前記メネジに螺合した前記拡張ボルトを介して該拡張リングを外周側に変位させることで、前記外側筒を前記導水管に密着させ、前記内側壁と前記外側壁は接着してあることを特徴とする止水蓋である。
【0009】
本発明による止水蓋は、密着体と本体と拡張リングと拡張ボルトとの四要素を中心に構成され、導水管の内部に嵌め込み、そこを完全に塞ぐことで流れを遮断する。そして密着体は、ゴムや合成樹脂など、外力で容易に変形可能な柔軟性を有する素材を使用するほか、筒状を基調としながらも、その一端面が塞がれた形状とする。なお密着体において、導水管の内周面に沿うような筒状の部位を外側筒と称し、さらに外側筒の一端面を塞ぐ部位を外側壁と称するものとする。ただし外側壁は、外側筒の内部を完全に塞ぐ必要はなく、その中心部には、抜き穴を設けることもできる。当然ながら外側筒の大きさや形状は、相手方となる導水管に応じて決めることになる。
【0010】
本体は、金属を素材としており、内側筒と称する部位と内側壁と称する部位を溶接などで一体化した構成であり、その全体が密着体の内部に収容されるが、この内側筒は、密着体の外側筒よりも小径の筒状であり、また内側壁は、内側筒の一端面を塞いでいる。さらに、内側筒と外側筒を概ね同心で並べた際、双方の境界には隙間が確保されるよう、各部の寸法を調整するものする。ただし内側壁の外径は、外側筒の内径と同等とする。したがって内側壁は、内側筒よりも大径になり、内側筒からツバ状に突出することになる。
【0011】
拡張リングは、本体の内側筒と密着体の外側筒との隙間に配置する帯状の金属板であり、これを外周側に変位させることで外側筒を押圧し、外側筒を導水管の内周面に密着させる。このように拡張リングは、外周側に変形可能とする必要があるため、途切れることのない環状とすることができず、一箇所以上の切れ目を有するものとする。なお、切れ目を二箇所以上とするならば、拡張リングは複数に分割されることになる。また内側筒と外側筒との隙間の大きさは、拡張リングの配置を考慮して決めることになる。
【0012】
拡張ボルトは、拡張リングを変位させる機能を担い、内側筒の内部から外周側に向けて差し込み、その先端を拡張リングに接触させる。そのため内側筒には、拡張ボルトと螺合するメネジを設ける。このメネジは、内側筒に穴を加工した後、その内周面に形成することも可能だが、内側筒に穴を加工した後、そこを覆うようにナットを取り付け、これをメネジとして利用することもできる。そして拡張ボルトを内側筒の内部からメネジに差し込み、その後に拡張ボルトを締め付けることで、拡張ボルトの先端が拡張リングに接触し、以降も締め付けを続けることで、拡張リングが外周側に変位して外側筒を押圧する。なお拡張ボルトは、拡張リングの全域を均等に変位させるため、周方向に沿って間隔を空けて複数本を配置する必要があり、しかも導水管の内周面の局地的な欠損などに対応できるよう、八本以上使用することが多い。
【0013】
密着体と本体と拡張リングを個別に製造した後、本体を密着体の内部に収容する。その際、本体の内側壁は、密着体の外側壁に接触させるほか、内側壁と外側壁を接着剤で一体化する。その結果、外側壁に抜き穴などを設けてある場合でも、内側壁により、流れを遮断することができる。また内側壁は、内側筒よりも大径であるため、外側壁の外縁付近も内側筒に接着させることができる。そのほか内側筒と外側筒との隙間には、拡張リングを配置し、さらに内側筒のメネジには拡張ボルトを螺合させるが、拡張ボルトを締め付ける前の段階では、外側筒が拡張リングで押圧されることはない。
【0014】
実際に止水蓋を使用する際は、密着体と本体と拡張リングが既に一体化してあり、これを導水管の内部に嵌め込むが、その時点では密着体が容易に弾性変形可能な状態であり、止水蓋は、導水管の軸線方向に無理なく移動可能である。そして止水蓋を所定の位置に到達させた後、全ての拡張ボルトを均等に締め付ける。その結果、拡張リングは外周側に変位して外側筒に接触し、さらに締め付けを続けると、外側筒が押圧されて導水管に密着する。この段階で止水蓋は導水管に固定された状態になり、併せて導水管が塞がれて流れが遮断される。
【0015】
このように、止水蓋を密着体と本体と拡張リングなどで構成し、本体の内側壁は、内側筒からツバ状に突出する大きさとすることで、密着体の外側壁のほぼ全域が内側壁に接触し、外側壁が保護されることになる。しかも内側壁と外側壁を接着することで、外側壁の変形が抑制されるため、仮に異物との接触などで外側壁に破損を生じた場合でも、その進展を抑制することができる。
【0016】
請求項2記載の発明は、利便性の向上を目的とするものであり、内側筒の内部には、内側壁から突出する排水管を設けてあり、さらに外側壁において、排水管の延長線上には抜き穴を設けてあり、排水管および抜き穴により、導水管の内部でせき止められた水を流出可能としたことを特徴とする。止水蓋は、導水管の流れを一時的に遮断するために使用されるが、この遮断後、導水管の内部でせき止められた水を外部に流出させたい場合がある。そこでこの発明のように、本体に排水管を設けることもできる。
【0017】
排水管は、内側筒の内部に配置され、しかも内側壁から突出しており、溶接などで内側壁と一体化してある。また排水管に水が流入できるよう、排水管の延長線上については、内側壁に穴を設けるほか、外側壁についても、水が流入できるよう、抜き穴を設ける。なお通常は、止水蓋として本来の機能を発揮できるよう、排水管を塞ぐものとする。そして、導水管の内部でせき止められた水を外部に流出させたい場合、排水管の先に別の配管などを連結する。当然ながら排水管は、拡張ボルトの差し込みや締め付けを妨げないように配置する。
【発明の効果】
【0018】
請求項1記載の発明のように、止水蓋を密着体と本体と拡張リングなどで構成し、本体の内側壁は、内側筒からツバ状に突出する大きさとすることで、密着体の外側壁のほぼ全域が内側壁に接触し、外側壁が保護されることになり、しかも内側壁と外側壁を接着することで、外側壁の変形が抑制される。そのため異物との接触などで外側壁に破損を生じた場合でも、その進展を抑制することができ、止水蓋としての健全性を維持できる。また外側筒については、多数の拡張ボルトを介して押圧させることで、導水管の内周面の欠損など、局地的な変形に対して柔軟に追従することができ、経年劣化の進んだ導水管にも使用可能である。
【0019】
請求項2記載の発明のように、本体の内側筒の内部に排水管を設けることで、導水管の内部の水をせき止めながらも、その水を外部に流出させることが可能になる。そのため水質検査や他の場所への給水など、施工現場での様々な要望に対応することができ、利便性が向上する。なお内側壁と外側壁は、接着で一体化してあるため、排水管を設けた場合でも、本体と密着体との間に水が流入することはない。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明による止水蓋の具体例を示す斜視図であり、ここでは各構成要素を分離して描いてあるほか、図の下方ではその断面を描いてある。
【
図2】
図1の各構成要素を組み立てる過程を示す斜視図であり、図の下方ではその断面を描いてある。
【
図3】
図2の止水蓋の拡張リングを外周側に変位させ、外側筒を押圧して大径化させる様子を示す斜視図であり、図の下方ではその断面を描いてある。
【
図4】
図2の止水蓋を嵌め込み、導水管の内部の流れを遮断した状態を示す斜視図であり、図の下方では、接続フランジにバルブを取り付けた状態を描いてある。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1は、本発明による止水蓋の具体例を示しており、ここでは各構成要素を分離して描いてあるほか、図の下方ではその断面を描いてある。そしてこの図の止水蓋は、円断面の導水管Pの内部を塞ぎ、水の流れをせき止めるために使用され、またこの止水蓋は、本体11と拡張リング21と密着体31と拡張ボルト44などで構成されている。そのうち本体11は、円筒状の内側筒13と、内側筒13の一端面を塞ぐ内側壁16との二要素を中心に構成され、内側筒13と内側壁16のいずれも金属製であり、これらを溶接で一体化してある。なお内側壁16は円盤状であり、その外径は内側筒13よりも大きいため、内側壁16の外縁は、内側筒13よりも外周側に突出している。
【0022】
密着体31は、円筒状の外側筒33と、外側筒33の一端面を塞ぐ外側壁36との二要素を一体的に成形したものであり、ゴムや合成樹脂など、柔軟性を有する素材を使用しており、密着体31を導水管Pの内部に嵌め込んだ後、外側筒33を大径化することで導水管Pの内周面に密着させ、密閉性を確保する。そのため外側筒33の大きさや形状は、相手方となる導水管Pに応じて決めることになり、弾性変形を生じていない通常の状態では、導水管Pに無理なく嵌め込むことができる。なお外側壁36は、単純な円盤状ではなく、その中心部には切り抜き状の抜き穴37を設けてある。そのほか外側壁36の外縁については、外側筒33よりも外周側に突出することはない。
【0023】
本体11は、密着体31の外側筒33の内部に収容可能な大きさとしてあるが、内側壁16の外径は、外側筒33の内径とほぼ等しくしてあり、必然的に密着体31の内部に本体11を収容した際は、双方が概ね同心に揃うことになる。また内側筒13は、外側筒33よりも小径であり、必然的に内側筒13と外側筒33には、隙間が確保されることになる。そのほか内側筒13の内部には、排水管17を設けてある。排水管17は、止水蓋で導水管Pの内部を塞いだ後、止水蓋でせき止められた水を外部に流出させるために使用され、排水管17の一端は内側壁16と一体化してある。当然ながら排水管17に水を流入させるため、内側壁16において、排水管17の内部を塞ぐ範囲は切り抜かれている。しかも排水管17の入り口側は、外側壁36の抜き穴37に隣接しており、密着体31で排水管17が塞がれることはない。
【0024】
拡張リング21は、本体11の内側筒13と密着体31の外側筒33との隙間に配置される帯状の金属板であり、円弧状に湾曲しているが、ここでは半円形のものを二個使用することで、内側筒13の外周側を環状に取り囲むほか、通常の使用状態で弾性変形ができるよう、厚さなどを調整してある。また拡張リング21は、内側筒13と外側筒33との隙間の中で変位可能としてあり、拡張リング21が外側筒33を押圧することで、密着体31が導水管Pに密着することになる。なお、拡張リング21が本体11から離脱することを防ぐため、拡張リング21には固定ピン25を取り付けてあり、本体11の内側筒13にはピン穴15を設けてある。固定ピン25は、拡張リング21の内周面から内側筒13に向けて突出しており、対するピン穴15は、拡張リング21の変位を許容できるよう長円形としてあり、固定ピン25の先端部分がピン穴15に差し込まれる。
【0025】
拡張ボルト44は、拡張リング21を外周側に変位させる機能を担っており、拡張ボルト44を螺合させるため、内側筒13にはメネジ14を設けてある。そして拡張ボルト44を内側筒13の内部に配置した後、その軸部をメネジ14に螺合させて内側筒13の外周側に突出させる。その結果、拡張ボルト44の先端が拡張リング21に接触し、さらに拡張ボルト44を締め付けると、拡張リング21が外周側に変位して外側筒33を押圧する。なお二個の拡張リング21が整然と環状に並ぶよう、双方の境界には舌片26と逃げ溝24を設けてある。舌片26は、一方の拡張リング21の端面の中央から舌状に突出する部位であり、対する逃げ溝24は、残る一方の拡張リング21において、舌片26を収容するための切り欠きであり、舌片26が逃げ溝24に入り込むことで、二個の拡張リング21が環状に並ぶ状態を維持できる。
【0026】
拡張ボルト44により、二個の拡張リング21が外周側に変位する際は、必然的に二個の拡張リング21が隣接する箇所において、双方の間隔が広がっていく。その結果、外側筒33においては、拡張リング21で押圧されることのない範囲が生じることになり、そこで水漏れを引き起こす恐れがある。これを防ぐため、個々の拡張リング21の一端側の内周面には、延長板23を取り付けてあり、これにより、二個の拡張リング21が隣接する箇所においても、二個の拡張リング21が連続することになり、外側筒33が途切れることなく押圧され、この箇所での水漏れを防ぐ。
【0027】
この図の内側筒13には、等間隔で八箇所にメネジ14を設けてあり、必然的に八本の拡張ボルト44を使用することになるが、より確実に水漏れを防ぐため、メネジ14の間隔を狭め、拡張ボルト44の使用本数をより多くすることもできる。またこの図では、一個の拡張リング21に二箇所の固定ピン25を設けてあるが、これについても、三箇所以上とすることができる。その場合、ピン穴15を固定ピン25に対応させる必要がある。そのほか排水管17の出口側の端面には、他の配管などを接続できるよう、接続フランジ18を取り付けてあるが、通常はこれを塞ぎ板48で閉じて水漏れを防いでいる。なお塞ぎ板48は、止めボルト46などで接続フランジ18に固定する。
【0028】
図2は、
図1の各構成要素を組み立てる過程を示しており、図の下方ではその断面を描いてある。まずは図の左上のように、本体11の内側筒13を取り囲むように拡張リング21を配置し、拡張リング21から突出する固定ピン25を内側筒13のピン穴15に差し込む。その結果、拡張リング21は、本体11に対して変位可能になるが、本体11から離脱することはできない。また二個の拡張リング21が隣接する箇所では、一方から突出する舌片26が相手方の逃げ溝24に入り込み、二個の拡張リング21が環状に並ぶ状態を維持できるほか、舌片26や逃げ溝24の背後は延長板23で覆われており、拡張リング21は、内側筒13を途切れることなく取り囲んでいる。
【0029】
本体11を取り囲むように拡張リング21を配置した後、図の右上のように、これらを密着体31の内部に収容する。その際は、図の下方に描くように、本体11の内側壁16と密着体31の外側壁36を接触させ、さらに双方を接着で一体化する。これにより、内側壁16と外側壁36との接触面に水が流れ込むことを防ぐ。また外側壁36の中心部には、抜き穴37を設けてあるため、導水管Pの内部の水は排水管17に流入することができる。ただし排水管17を塞ぎ板48で閉じることで、水の流出を防いでいる。
【0030】
本体11のメネジ14には拡張ボルト44を螺合させてあり、拡張ボルト44の先端は拡張リング21に接触している。ただしこの段階では、拡張リング21が外側筒33に接触することなく隙間を確保してあり、外側筒33は内部に向けて変形することもできる。そのため、無理なく止水蓋を導水管Pの内部に嵌め込むことができる。そして止水蓋を所定の位置に到達させた後、全ての拡張ボルト44を均等に締め付け、拡張リング21で外側筒33を押圧することで、密着体31が導水管Pの内部に密着し、流れを遮断することができる。
【0031】
図3は、
図2の止水蓋の拡張リング21を外周側に変位させ、外側筒33を押圧して大径化させる様子を示しており、図の下方ではその断面を描いてある。拡張ボルト44を締め付けることで、拡張リング21は外周側に変位して外側筒33を押圧するため、外側筒33が大径化することになる。なお拡張リング21が変位することで、固定ピン25も変位することになるが、固定ピン25の長さには余裕を確保してあるため、ピン穴15から抜けることはない。しかもピン穴15は長円形としてあるため、固定ピン25がピン穴15の外縁に激しく接触することもなく、拡張リング21の変位を妨げることはない。
【0032】
拡張リング21の変位に伴い、二個の拡張リング21が隣接する箇所では、舌片26が逃げ溝24から離脱することもあり得るが、その場合でも延長板23により、二個の拡張リング21は隙間なく連続しており、外側筒33を途切れることなく押圧することができる。なお外側筒33が押圧される前の段階では、内側壁16の外縁が外側筒33の内周面に隣接している。そのため外側壁36は、そのほぼ全域が内側壁16で保護された状態になり、仮に外側壁36に異物が接触した場合でも、これによる破損の進展を抑制することができ、止水蓋としての信頼性が向上する。
【0033】
図4は、
図2の止水蓋を嵌め込み、導水管Pの内部の流れを遮断した状態を示しており、図の下方では、接続フランジ18にバルブVを取り付けた状態を描いてある。止水蓋を導水管Pの内部に嵌め込んだ後、拡張ボルト44を締め付けると、拡張リング21が密着体31を押圧し、密着体31が導水管Pの内周面に密着し、止水蓋が導水管Pの内部で移動不能な状態で固定され、導水管Pの内部を塞ぐことができる。また図の下方のように、接続フランジ18にバルブVなどを取り付けることで、せき止められた水を外部に流出させることができる。
【符号の説明】
【0034】
11 本体
13 内側筒
14 メネジ
15 ピン穴
16 内側壁
17 排水管
18 接続フランジ
21 拡張リング
23 延長板
24 逃げ溝
25 固定ピン
26 舌片
31 密着体
33 外側筒
36 外側壁
37 抜き穴
44 拡張ボルト
46 止めボルト
48 塞ぎ板
P 導水管
V バルブ