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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023170298
(43)【公開日】2023-12-01
(54)【発明の名称】防振装置
(51)【国際特許分類】
   F16F 15/08 20060101AFI20231124BHJP
   F16F 1/36 20060101ALI20231124BHJP
【FI】
F16F15/08 E
F16F15/08 W
F16F1/36 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022081946
(22)【出願日】2022-05-19
(71)【出願人】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】TOYO TIRE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000534
【氏名又は名称】弁理士法人真明センチュリー
(72)【発明者】
【氏名】増田 辰典
【テーマコード(参考)】
3J048
3J059
【Fターム(参考)】
3J048AA01
3J048BA19
3J048EA01
3J059BA42
3J059BC06
3J059GA01
(57)【要約】
【課題】ブラケットの耐久性を向上できる防振装置を提供すること。
【解決手段】第2ブラケット30の取付孔36a,37a,38bに挿入したボルト39によって車体側に第2ブラケット30が取り付けられる。この取付孔36a,37a,38bは、上下方向U-Dに離れた2枚の取付板36,37の間に複数の連環板38を挟み込むことで互いに重なった部分に貫通形成されている。そのため、第2ブラケット30のうちボルト39による締結部分を厚くして高剛性化でき、第2ブラケット30の耐久性を向上できる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1部材および第2部材を弾性体製の防振基体で連結した防振装置本体と、
第1方向に延びて前記第1部材が固定されるアームを有し、振動源側および振動受側の一方に取り付けられる第1ブラケットと、
前記振動源側および前記振動受側の他方に締結部材で締結される第2ブラケットと、を備え、
前記第2ブラケットは、前記第2部材が固定される固定部と、
前記固定部が設けられる第1板と、
前記第1方向に垂直な第2方向に関し前記第1板との間に前記アームを挟んで相対する第2板と、
前記第1方向および前記第2方向に垂直な第3方向に前記アームを挟んで互いに相対し前記第1板および前記第2板を連結する一対の側壁板と、
前記側壁板から前記第3方向へそれぞれ張り出し前記第2方向に互いに離れて配置される複数の取付板と、
複数の前記取付板の間で前記第2方向に挟み込まれるスペーサと、を備え、
前記取付板および前記スペーサが互いに重なった部分には、前記締結部材が挿入される取付孔が前記第2方向に貫通形成されていることを特徴とする防振装置。
【請求項2】
前記第2方向に離れた複数の前記取付板のうち少なくとも1枚は、前記第3方向から見て前記アームと重なる位置にあることを特徴とする請求項1記載の防振装置。
【請求項3】
前記第1板と前記側壁板とは、縁同士が曲面状の角部で連結され、
前記固定部は、前記第1板および前記角部から前記第2板とは反対側へ突出して前記第2部材が内側に嵌まる円筒状または楕円筒状に形成され、
前記固定部と前記角部との接続部分は、前記側壁板へ向かうにつれて前記第1方向の寸法が小さくなることを特徴とする請求項1記載の防振装置。
【請求項4】
前記第2ブラケットは、前記側壁板および前記取付板から垂直に立ち上がる垂直補強板を備えることを特徴とする請求項1記載の防振装置。
【請求項5】
前記スペーサは、前記取付孔を中央に設けた複数の環状板を前記第2方向に重ねて形成されていることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の防振装置。
【請求項6】
前記取付板には、前記取付孔が複数設けられ、
前記スペーサは、複数の前記取付孔に対応するように前記第1方向および前記第3方向の少なくとも一方に離れた前記環状板同士を連結部で連結した連環板を前記第2方向に複数重ねて形成されていることを特徴とする請求項5記載の防振装置。
【請求項7】
前記第2方向に重なった前記連結部が互いに接合されると共に、前記連結部が前記取付板に接合されることを特徴とする請求項6記載の防振装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は防振装置に関し、特にブラケットの耐久性を向上できる防振装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
防振装置は、第1部材および第2部材を弾性体製の防振基体で連結した防振装置本体と、第1部材が固定される第1ブラケットと、第2部材が固定される第2ブラケットと、を備える。振動源(例えばエンジン)側および振動受(例えば車体)側の一方に第1ブラケットが取り付けられて他方に第2ブラケットが締結部材で締結される。この振動源側と振動受側との間の振動伝達が防振装置によって抑制される。
【0003】
例えば、特許文献1に開示された第2ブラケットは、円筒状の第2部材が嵌まる円筒部と、その円筒部の上端が外周面に接合されて第1ブラケットのアームを囲む角筒部と、角筒部の左右両側に設けた一対の脚部と、を備える。この脚部は、板材を左右方向から見て略U字状に曲げることで形成され、底板から垂直補強板が立ち上がる。角筒部の左右両側の側壁板に垂直補強板が接合される。底板に貫通形成された取付孔に締結部材が挿入されて第2ブラケットが振動受側に締結される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011-7261号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来技術では、第2ブラケットのうち締結部材で振動受側に締結される部分が1枚の底板だけであるため、その締結部分の剛性が低い。また、底板と側壁板とをいずれにも垂直な垂直補強板で連結する場合、第1ブラケットから第2ブラケットへの左右方向の入力に対し、その連結部分の剛性が不十分となるおそれがある。このように上記従来技術では、第2ブラケットの耐久性が低いという問題点がある。
【0006】
本発明は上述した問題点を解決するためになされたものであり、第2ブラケットの耐久性を向上できる防振装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的を達成するために本発明の防振装置は、第1部材および第2部材を弾性体製の防振基体で連結した防振装置本体と、第1方向に延びて前記第1部材が固定されるアームを有し、振動源側および振動受側の一方に取り付けられる第1ブラケットと、前記振動源側および前記振動受側の他方に締結部材で締結される第2ブラケットと、を備え、前記第2ブラケットは、前記第2部材が固定される固定部と、前記固定部が設けられる第1板と、前記第1方向に垂直な第2方向に関し前記第1板との間に前記アームを挟んで相対する第2板と、前記第1方向および前記第2方向に垂直な第3方向に前記アームを挟んで互いに相対し前記第1板および前記第2板を連結する一対の側壁板と、前記側壁板から前記第3方向へそれぞれ張り出し前記第2方向に互いに離れて配置される複数の取付板と、複数の前記取付板の間で前記第2方向に挟み込まれるスペーサと、を備え、前記取付板および前記スペーサが互いに重なった部分には、前記締結部材が挿入される取付孔が前記第2方向に貫通形成されている。
【発明の効果】
【0008】
請求項1記載の防振装置によれば、第2ブラケットの取付孔に挿入した締結部材によって振動源側および振動受側の他方に第2ブラケットが取り付けられる。この取付孔は、第2方向に離れた複数の取付板の間にスペーサを挟み込むことで互いに重なった部分に貫通形成されている。そのため、第2ブラケットのうち締結部材による締結部分を厚くして高剛性化できる。
【0009】
更に、この取付板は、第1ブラケットのアームを第3方向に挟んで相対する一対の側壁板から第3方向へ張り出している。これにより、第1ブラケットから第2ブラケットへ第3方向の入力が有った場合、締結部材と側壁板との間で、その入力に対し略真っ直ぐに取付板が突っ張る。そのため、第3方向の入力に対する第2ブラケットの剛性を向上できる。これらの結果、第2ブラケットの耐久性を向上できる。
【0010】
請求項2記載の防振装置によれば、請求項1記載の防振装置の奏する効果に加え、次の効果を奏する。第2方向に離れた複数の取付板のうち少なくとも1枚は、第3方向から見てアームと重なる位置にある。これにより、第3方向の入力により防振基体が変形してアームが側壁板に押し付けられた場合でも、アームと締結部材との間で略真っ直ぐに取付板が突っ張る。その結果、第3方向の入力に対する第2ブラケットの剛性をより向上でき、第2ブラケットの耐久性をより向上できる。
【0011】
請求項3記載の防振装置によれば、請求項1記載の防振装置の奏する効果に加え、次の効果を奏する。第1板と側壁板とは、縁同士が曲面状の角部で連結される。第2部材が内側に嵌まる円筒状または楕円筒状に形成された固定部は、第1板および角部から第2板とは反対側へ突出する。固定部と角部との接続部分は、側壁板へ向かうにつれて第1方向の寸法が小さくなる。このように接続部分が側壁板へ向かうにつれてすぼむことで、接続部分の近傍の剛性を向上できる。
【0012】
請求項4記載の防振装置によれば、請求項1記載の防振装置の奏する効果に加え、次の効果を奏する。第2ブラケットは、側壁板および取付板から垂直に立ち上がる垂直補強板を備える。これにより、第2ブラケットへの第3方向の入力時に、取付板へ向かって側壁板を倒れ難くできる。このように、垂直補強板で第2ブラケットの剛性を向上して耐久性をより向上できる。
【0013】
請求項5記載の防振装置によれば、請求項1から4のいずれかに記載の防振装置の奏する効果に加え、次の効果を奏する。スペーサは、取付孔を中央に設けた複数の環状板を第2方向に重ねて形成されている。スペーサが1本の円筒体である場合と比べ環状板の方が、板材からの抜き打ち加工などによってスペーサを低コストで製造し易い。また、環状板を重ねる枚数の調整により取付板の間の距離を容易に調整できる。
【0014】
請求項6記載の防振装置によれば、請求項5記載の防振装置の奏する効果に加え、次の効果を奏する。取付板には、取付孔が複数設けられる。この複数の取付孔に対応するように第1方向および第3方向の少なくとも一方に離れた環状板同士を連結部で連結することで、連環板が形成される。この連環板を第2方向に複数重ねてスペーサが形成される。よって、連結部が無い場合と比べてスペーサを構成する部品点数を削減できる。
【0015】
請求項7記載の防振装置によれば、請求項6記載の防振装置の奏する効果に加え、次の効果を奏する。第2方向に重なった連結部が互いに接合されると共に、連結部が取付板に接合される。これらの接合部分を取付孔の近傍、即ち締結部材の軸力が作用する部位から離すことによって、その接合に起因した形状変化が締結部材の軸力に影響することを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】第1実施形態における防振装置の斜視図である。
図2】防振装置の断面図である。
図3図2のIII-III線における防振装置の断面図である。
図4】第2ブラケットの分解斜視図である。
図5】第2実施形態における防振装置の斜視図である。
図6】第3実施形態における防振装置の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、好ましい実施形態について、添付図面を参照して説明する。図1は、第1実施形態における防振装置10の斜視図である。図2は、防振装置10の断面図である。図3は、図2のIII-III線における防振装置10の断面図である。図4は、第2ブラケット30の分解斜視図である。
【0018】
なお以下の説明では、図2の紙面上側を防振装置10の上方向Uとし、それぞれ同様に紙面下側を下方向D、紙面左側を前方向F、紙面右側を後方向B、紙面手前側を左方向L、紙面奥側を右方向Rとする。これら上下方向U-D(第2方向)と前後方向F-B(第1方向)と左右方向L-R(第3方向)とは互いに垂直である。防振装置10の上下方向U-D等は、防振装置10が搭載される車両の上下方向などとは必ずしも一致しない。例えば、防振装置10の上方向と車両の下方向とを一致させたり、防振装置10の左右方向と車両の上下方向とを一致させたりしても良い。また、これらの各方向は第2,3実施形態でも同様である。
【0019】
図1に示すように、防振装置10は、車両のエンジンを弾性支持するエンジンマウントである。防振装置10は、エンジン(振動源)側に取り付けられる第1ブラケット11と、第1ブラケット11に固定される防振装置本体20と、車体(振動受)側に取り付けられて防振装置本体20が固定される第2ブラケット30と、を備える。
【0020】
図1及び図2に示すように、第1ブラケット11は、基部12及びアーム15を備える金属製の部材である。基部12は、前後方向F-Bに垂直な厚板状の部位であり、複数の貫通孔13が貫通形成されている。この貫通孔13に挿入したボルト14によって第1ブラケット11がエンジン側に取り付けられる。
【0021】
アーム15は、基部12から前方向Fへ延びる略四角棒状の部位である。アーム15の上下両面はそれぞれ上下方向U-Dと垂直であり、アーム15の左右両面はそれぞれ左右方向L-Rと垂直である。このアーム15の周囲(上下左右)は、弾性体(例えばゴム)からなる緩衝体18で被覆される。また、アーム15の前方向Fの先端部には、ボルト17が挿入される貫通孔16が上下方向U-Dに貫通形成されている。
【0022】
防振装置本体20は、軸状の第1部材21と、第1部材21を囲む筒状の第2部材22と、それらを連結する弾性体製の防振基体23と、を備える。第1部材21は、上下方向U-Dに平行な軸心Cに沿って形成されたボス金具である。なお、図2の断面図には、この軸心Cを含む防振装置10の断面であって左右方向L-Rと直交する断面が示されている。
【0023】
第1部材21の下端には、ボルト17が締結されるボルト孔21aが軸心Cに沿って形成される。アーム15の貫通孔16に挿入したボルト17をボルト孔21aに締結することで、アーム15の先端から上方向Uへ第1部材21が突出し、アーム15に第1部材21が固定される。
【0024】
第2部材22は、軸心Cを中心とした略円筒状の部材であり、主に鉄鋼などの金属により形成される。第2部材22は、第1部材21に対し上方向Uへオフセットして配置される。第2部材22は、上下方向U-Dの中央部分が上方向Uへ向かうにつれて徐々に内外径が小さくなる円錐筒状に形成される。第2部材22は、その中央部分よりも下端側の円筒部に対し上端側の円筒部の内外径が小さい。
【0025】
防振基体23は、ゴムや熱可塑性エラストマ等の弾性体製の部材であり、上下反転した略傘状に形成される。防振基体23は、第1部材21の外周面と、第2部材22の内周面とにそれぞれ全周に亘って加硫接着され、これらを連結する。
【0026】
防振装置10には主に左右方向L-Rの振動が入力される。この入力により、防振基体23が弾性変形して、第2ブラケット30及び第2部材22に対し第1ブラケット11及び第1部材21が左右方向L-Rへ移動(振動)する。
【0027】
第2ブラケット30は、固定部31と、第1板32と、第2板33と、一対の側壁板34と、複数の取付板36,37と、複数の連環板38と、を備える。これら第2ブラケット30の各部は、鋼板などの板材に対する打ち抜き加工や曲げ加工などによって形成される。
【0028】
固定部31は、軸心Cを中心とした略円筒状の部位である。固定部31には、第2部材22の下端側が圧入されて嵌め込まれる。第1板32は、固定部31の下端の全周から径方向外側へ張り出す略平板状の部位である。第1板32は、上下方向U-Dに垂直に形成されている。第1板32は、アーム15の上側に位置する。
【0029】
第2板33は、上下方向U-Dに垂直な略平板状の部位である。第2板33は、アーム15の下側に位置する。第1板32と第2板33とは、上下方向U-Dにアーム15を挟んで相対する。なお、第2板33には、下方向Dから見てボルト17が見える位置に孔33aが貫通形成されている。これにより、第2ブラケット30に防振装置本体20を取り付けた状態で、孔33aから工具を挿入してボルト17を回し、防振装置本体20の第1部材21をアーム15に固定したりその固定を解除したりできる。
【0030】
図1及び図3に示すように、一対の側壁板34はいずれも、左右方向L-Rに垂直な略平板状の部位である。一対の側壁板34は、左右方向L-Rにアーム15を挟んで互いに相対する。一対の側壁板34の上縁が第1板32の左右両縁にそれぞれ連なり、一対の側壁板34の下縁が第2板33の左右両縁にそれぞれ連なる。
【0031】
これらの第1板32、第2板33及び一対の側壁板34により、第1ブラケット11のアーム15を囲む筒体が形成される。この筒体の各部によって、第2ブラケット30に対する第1ブラケット11の上下方向U-D及び左右方向L-Rの相対移動が規制される。なお、アーム15の上下両面に設けた緩衝体18によって、アーム15と筒体の各部との衝突が緩衝される。
【0032】
固定部31、第1板32及び一対の側壁板34は、1枚の鋼板(板材)から形成されている。具体的な製造方法として例えば、まず1枚の鋼板の左右両側を下方向Dへ略垂直に曲げ加工することで、第1板32及び一対の側壁板34を形成する。その後、第1板32の中央に設けた孔を広げつつ、その孔の周囲を上方向Uへ曲げる絞り加工によって固定部31を形成する。
【0033】
このように形成された第1板32と側壁板34とは、縁同士が曲面状の角部35で連結されている。また、固定部31の外径は、一対の側壁板34の左右外面の間の距離と略同一である。そのため、固定部31は、第1板32のうち上下方向U-Dに垂直な部分だけでなく角部35からも上方向Uへ突出している。
【0034】
外周面が曲面である円筒状の固定部31と、曲面状の角部35との接続部分は、その曲面の向きが90°異なることにより、側壁板34へ向かうにつれて前後方向F-Bの寸法が小さくなる。このように接続部分が側壁板34へ向かってすぼむことで、接続部分の近傍の剛性を向上できる。
【0035】
図1及び図4に示すように、取付板36は、第2板33を左右方向L-Rへそれぞれ延長した略平板状の部位であり、左右一対に設けられる。なお、左右両側で取付板36の寸法は異なるが、両者に同一の符号を付して説明を簡略化している。この説明の簡略化は、取付板37でも同一である。
【0036】
取付板36には、上下方向U-Dに貫通する2つの取付孔36aが前後方向F-Bに離れて形成されている。また、一対の取付板36の左右内縁と側壁板34の下縁との隅が前後方向F-Bの略全長に亘って溶接され、その溶接により溶接ビード40が形成される。これにより、取付板36との一体成形品である第2板33が側壁板34に連結される。更に取付板36は、側壁板34から左右方向L-Rへ垂直に張り出したものとなる。
【0037】
取付板37は、取付板36の上方向Uに離れて配置される平板状の部位であり、左右一対に設けられる。取付板37は、上下方向U-Dに相対する取付板36と同一形状および同一寸法に形成される。即ち、取付板37には、取付板36の取付孔36aに対応する位置に取付孔37aが貫通形成されている。
【0038】
取付板37の左右内縁が側壁板34に前後方向F-Bの略全長に亘って溶接され、その溶接により溶接ビード41が形成される。これにより、取付板37は、側壁板34から左右方向L-Rへ垂直に張り出したものとなる。また、取付板36と取付板37とは互いに平行に配置される。
【0039】
連環板38は、鋼板からの抜き打ち加工によって形成される板状の部材である。連環板38は、前後方向F-Bの両端にそれぞれ設けられた環状板38aと、2枚の環状板38a同士を連結する連結部38cと、を備える。
【0040】
環状板38aは、中央に取付孔38bが形成された円環状の部位である。取付孔38bの内径は、取付板36,37の取付孔36a,37aの内径と略同一である。また、前後方向F-Bにそれぞれ離れた2つの取付孔36a,37aの間隔と、2枚の環状板38aの取付孔38bの間隔とが同一になるよう、連結部38cの前後方向F-Bの寸法が設定されている。
【0041】
取付板36と取付板37との間には、複数(本実施形態では4枚)の連環板38を上下方向U-Dに重ねて形成したスペーサが挟み込まれる。この取付板36,37及び連環板38(スペーサ)が重なった部分には、取付孔36a,37a,38bが上下方向U-Dに連なるように貫通形成されている。
【0042】
なお、第2ブラケット30を製造するには、まず鋼板(板材)に対する抜き打ち加工や曲げ加工によって固定部31や連環板38等の各部品を形成する。次いで、側壁板34を第2板33及び取付板36に溶接する。次いで、取付孔36a,38bの位置を合わせながら、取付板36の上に複数の連環板38を重ねる。次いで、取付孔37a,38bの位置を合わせながら、連環板38の上に取付板37を重ねる。次いで、取付板37を側壁板34に溶接する。最後に、重ねた部分がボルト39の挿入前にずれないよう、複数の連環板38の連結部38c同士と、連結部38c及び取付板36,37とをそれぞれ溶接して溶接ビード42を形成する。
【0043】
以上説明した防振装置10によれば、第2ブラケット30の取付孔36a,37a,38bに挿入したボルト39を車体側に取り付けることで、第2ブラケット30が車体側に締結される。この締結部分は、取付板36,37及び環状板38aの重なりによって厚くなっている。その結果、第2ブラケット30の締結部分を高剛性化でき、第2ブラケット30の耐久性を向上できる。
【0044】
なお、取付板36,37の間に挟み込むスペーサとしては、複数の環状板38aを重ねたものに代えて、1本の円筒体(例えば第2実施形態のスペーサ52)を用いても良い。但し、環状板38aを用いる方が、環状板38aを重ねる枚数の調整により取付板36,37間の距離を容易に調整できる。加えて、鋼板からの抜き打ち加工などによって低コストで環状板38aを製造し易い。
【0045】
更に、環状板38aと共に、ボルト39による締結部分を高剛性化するための取付板36,37も、鋼板からの抜き打ち加工により形成でき、曲げ加工や絞り加工などを不要にできる。そのため、締結部分を高剛性化するための構成を更に低コストで製造し易くできる。
【0046】
また、取付板36,37の間に複数の環状板38a(スペーサ)を挟み込む場合、連結部38cを省略しても良い。しかし、スペーサに連結部38cが無い場合と比べて連結部38cが有る方が、スペーサを構成する部品点数を削減できる。
【0047】
更に、この連結部38cを設けることで、溶接ビード42を連結部38cに形成できる。これにより、複数枚重ねられた環状板38a毎に溶接ビード42を形成(溶接)しなくてよいので、溶接回数を低減できる。加えて、ボルト39からの軸力が作用する取付孔36a,37a,38bの近傍(環状板38a等)から溶接ビード42を離すことができる。その結果、溶接ビード42によって取付孔36a,37a,38bの近傍の一部が盛り上がる等、溶接に伴う形状変化がボルト39の軸力に影響することを抑制できる。即ち、溶接ビード42を連結部38cに形成することによって、ボルト39の軸力を低下し難くできる。
【0048】
第1ブラケット11から第2ブラケット30へ左右方向L-Rの入力が有った場合には、ボルト39と側壁板34との間で、その入力に対し略真っ直ぐに取付板36,37が突っ張る。これにより、左右方向L-Rの入力に対する第2ブラケット30の剛性を向上でき、第2ブラケット30の耐久性を向上できる。
【0049】
特に図3に示すよう、取付板37は、左右方向視において、緩衝体18に覆われた部分のアーム15と重なる位置にある。これにより、左右方向L-Rの入力により防振基体23が変形し、アーム15が緩衝体18を介して側壁板34に押し付けられた場合、アーム15とボルト39との間で略真っ直ぐに取付板37が突っ張る。その結果、左右方向L-Rの入力に対する第2ブラケット30の剛性をより向上でき、第2ブラケット30の耐久性をより向上できる。
【0050】
更に、左右方向視において、緩衝体18に覆われた部分のアーム15のうち上下方向U-Dの中央部分に取付板37が重なることが好ましい。この中央部分とは、例えばアーム15の上面を0%とし下面を100%とした場合の25%~75%の部位とする。この場合、左右方向L-Rの入力時にアーム15から第2ブラケット30が主に荷重を受ける領域の略中央に取付板37が位置する。その結果、取付板37による突っ張り効果を向上でき、第2ブラケット30の耐久性を更に向上できる。
【0051】
次に図5を参照して第2実施形態について説明する。第1実施形態では、複数の連環板38を重ねて形成したスペーサを取付板36,37間に挟み込む場合について説明した。これに対し第2実施形態では、円筒体であるスペーサ52を取付板36,37間に挟み込む場合について説明する。なお、第1実施形態と同一の部分については、同一の符号を付して以下の説明を省略する。
【0052】
図5は第2実施形態における防振装置50の斜視図である。防振装置50の第2ブラケット51は、固定部31と、第1板32と、第2板33と、一対の側壁板34と、複数の取付板36,37と、複数のスペーサ52と、複数の垂直補強板53と、を備える。
【0053】
スペーサ52は、ボルト39が挿入される取付孔が軸に沿って形成された円筒体である。即ち、スペーサ52は、互いに重ねた第1実施形態の複数の環状板38aを一体成形したものと同一である。
【0054】
このスペーサ52は、複数の取付孔36a,37aの位置でそれぞれ取付板36,37間に挟み込まれる。これにより、第1実施形態と同様に、第2ブラケット51のうちボルト39による締結部分を高剛性化でき、第2ブラケット51の耐久性を向上できる。
【0055】
また、取付板36,37間に挟み込まれるスペーサ52が1本の円筒体からなるので、第1実施形態のスペーサ(複数の環状板38a)と比べ、スペーサ52を構成する部品点数を削減できる。更に、第2実施形態では、前後方向F-Bに離れたスペーサ52を連結する第1実施形態のような連結部38cが無いので、スペーサ52の形状を単純化できる。その結果、スペーサ52の製造コストを低減し易くできる。
【0056】
垂直補強板53は、側壁板34及び取付板37からそれぞれ垂直に立ち上がる略三角形状の板材である。垂直補強板53は、左右方向L-Rの両側でそれぞれ前後方向F-Bに離れて複数配置される。
【0057】
垂直補強板53の縁と側壁板34との隅が上下方向U-Dの略全長に亘って溶接され、その溶接による溶接ビード54が形成される。更に、垂直補強板53の縁と取付板37との隅が左右方向L-Rの略全長に亘って溶接され、その溶接による溶接ビード55が形成される。
【0058】
この垂直補強板53によれば、第1ブラケット11から第2ブラケット51へ左右方向L-Rの入力が有った場合、取付板37へ向かって側壁板34を倒れ難くできる。このように、垂直補強板53によって第2ブラケット51の剛性をより向上できる。
【0059】
次に図6を参照して第3実施形態について説明する。第1実施形態では、上下方向U-Dに離れて配置した2枚の取付板36,37間に複数の連環板38を挟み込む場合について説明した。これに対し第3実施形態では、上下方向U-Dに離れて配置した3枚の取付板36,37,62間にそれぞれ複数の環状板65を挟み込む場合について説明する。なお、第1実施形態と同一の部分については、同一の符号を付して以下の説明を省略する。
【0060】
図6は第3実施形態における防振装置60の斜視図である。防振装置60の第2ブラケット61は、固定部31と、第1板32と、第2板33と、一対の側壁板34と、複数の取付板36,37,62と、複数の環状板65と、を備える。
【0061】
取付板62は、取付板37の上方向Uに離れて配置される平板状の部位であり、左右一対に設けられる。取付板62は、上下方向U-Dに相対する取付板37と同一形状および同一寸法に形成される。即ち、取付板62には、取付板37の取付孔37a(図4参照)に対応する位置に、ボルト39が挿入される取付孔が貫通形成されている。
【0062】
取付板62の左右内縁が側壁板34に前後方向F-Bの略全長に亘って溶接され、その溶接による溶接ビード63が形成される。この溶接により、取付板62は、側壁板34から左右方向L-Rへ垂直に張り出したものとなる。また、取付板36,37と取付板62とは互いに平行に配置される。
【0063】
環状板65は、第1実施形態の環状板38aと同一に構成され、連結部38cに連結されていない。即ち、環状板65は、ボルト39が挿入される取付孔38b(図4参照)が中央に形成された円環状の部材である。
【0064】
取付板36,37間には、複数(本実施形態では4枚)の環状板65を上下方向U-Dに重ねたスペーサが挟み込まれる。更に、取付板37,62間には、複数(本実施形態では3枚)の環状板65を上下方向U-Dに重ねたスペーサが挟み込まれる。これにより、第1実施形態と同様に、第2ブラケット61のうちボルト39で締結される部分を高剛性化でき、第2ブラケット61の耐久性を向上できる。
【0065】
更に、第1ブラケット11から第2ブラケット61へ左右方向L-Rの入力が有った場合、ボルト39と側壁板34との間で突っ張る部位を取付板36,37,62の3枚にできる。このように、取付板36,37,62の枚数が多い程、左右方向L-Rの入力に対する第2ブラケット61の剛性をより向上でき、第2ブラケット61の耐久性をより向上できる。
【0066】
以上、実施形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変形が可能であることは容易に推察できるものである。例えば、第1部材21の軸心Cと、第2部材22の軸心とをオフセットして配置しても良い。また、ボルト14,17,39を、その他のねじやリベット等の締結部材に置き換えても良い。更に、第2ブラケット30,51,61の各部の接合方法としては、溶接以外に圧接やろう接、接着、ねじ止め等の機械的接合を用いても良い。
【0067】
上記形態では、本発明の防振装置10,50,60がエンジンマウントである場合を例示したが、これに限られない。例えば本発明をモーターマウントやメンバーマウント、デフマウントに適用しても良く、車両以外に搭載される防振装置に適用しても良い。また、エンジンなどの振動源側に第1ブラケット11を取り付け、車体などの振動受側に第2ブラケット30,51,61を取り付ける場合に限らず、振動受側に第1ブラケット11を取り付けて振動源側に第2ブラケット30,51,61を取り付けても良い。
【0068】
上記形態では、第2ブラケット30,51,61の固定部31が円筒状であり、その固定部31に円筒状の第2部材22が圧入される場合を説明したが、これに限られない。例えば、固定部31を第2部材22に嵌めて両者を溶接するなど、圧入は必須ではない。また、固定部31及び第2部材22を楕円筒状に形成したり、角筒状などその他の筒状に形成しても良い。なお、固定部31が楕円筒状であれば円筒状である場合と同様に、固定部31と角部35との接続部分を側壁板34へ向かってすぼめることができ、その接続部分の近傍の剛性を向上できる。
【0069】
また、第2ブラケット30,51,61に固定される第2部材を上記形態の第1部材21に置き換え、第1ブラケット11に固定される第1部材を上記形態の第2部材22に置き換えても良い。この場合、第1板32の中央に設けた孔を固定部とし、その固定部にボルト17等で第2部材(上記形態の第1部材21)を固定する。加えて、アーム15の先端を円筒状にし、その先端に第1部材(上記形態の第2部材22)を嵌めれば良い。
【0070】
上記形態では、ボルト39が挿入される取付孔36a,37a,38bが、第2ブラケット30,51,61の左右両側で2か所ずつ設けられる場合を説明したが、これに限られない。例えば、取付孔36a,37a,38bを設ける位置を左右両側で1か所や3か所以上としても良く、その数を左右両側で異ならせても良い。更に、左右両側のそれぞれで、複数の取付孔36a,37a,38bを左右方向L-Rにずらして配置しても良い。また、複数のボルト39による締結部分の少なくとも1か所で取付板36の上に環状板38a及び取付板37を重ね、その他の締結部分を取付板36の1枚のみにしても良い。
【0071】
上記第1実施形態では、連結部38cに溶接ビード42が形成される場合を説明したが、これに限られない。環状板38aに溶接ビード42を形成しても良い。また、上下方向U-Dに重なった環状板38a同士や連結部38c同士、それらと取付板36,37とをスポット溶接やプロジェクション溶接などで溶接しても良い。なお、これらの各部を溶接しなくても良い。
【0072】
上記第1,3実施形態では、同一形状の連環板38や環状板65を重ねてスペーサを形成する場合を説明したが、これに限られない。例えば連環板38と環状板65とを重ねても良い。また、連環板38や環状板65の一部や全部を、取付板37,62と同一形状のものに置き換えても良い。
【0073】
更に、第2ブラケット30,51,61の取付板36の下面に連環板38やスペーサ52、環状板65を1つ以上重ねても良い。同様に、取付板37,62の上面に連環板38やスペーサ52、環状板65を1つ以上重ねても良い。
【0074】
上記形態では、取付板36が第2板33との一体成形品である場合を説明したが、これに限られない。例えば、第2板33に取付板36を接合(溶接やねじ止め等)したり、取付板36を側壁板34との一体成形品にしても良い。更に、第2板33に対し取付板36を上方向Uへずらしても良い。
【0075】
また、側壁板34を第2板33から下方向Dへ延長し、第2板33に対し取付板36を下方向Dへずらしても良い。この場合、第2ブラケット30,51,61のうちアーム15を囲む部分が車体側から浮くため、その部分を上下反転しても良い。具体的に、側壁板34の下縁側に第1板32を連結して、第1板32から下方向Dへ固定部31を突出させても良い。また、取付板36の下面に連環板38等を重ね、アーム15を囲む部分を浮かした場合も同様である。
【0076】
上記各形態の構成の一部を省略したり、互いに組み合わせても良い。例えば、第2実施形態における垂直補強板53を第1,3実施形態の第2ブラケット30,61に適用しても良い。いずれの実施形態においても、取付板37,62や側壁板34の縁を曲げて垂直補強板53を形成しても良い。
【0077】
また、第2,3実施形態においても第1実施形態のように、スペーサ52や環状板65を取付板36,37,62に接合したり、環状板65同士を接合しても良い。第1実施形態のように第2実施形態の複数のスペーサ52を連結部で連結しても良い。また、左右いずれか一方の取付板36,37,62等を省略しても良い。
【符号の説明】
【0078】
10,50,60 防振装置
11 第1ブラケット
15 アーム
20 防振装置本体
21 第1部材
22 第2部材
23 防振基体
30,51,61 第2ブラケット
31 固定部
32 第1板
33 第2板
34 側壁板
35 角部
36,37,62 取付板
36a,37a,38b 取付孔
38 連環板
38a,65 環状板
38c 連結部
39 ボルト(締結部材)
52 スペーサ
53 垂直補強板
F-B 前後方向(第1方向)
U-D 上下方向(第2方向)
L-R 左右方向(第3方向)

図1
図2
図3
図4
図5
図6