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特開2023-170299検査装置、検査方法、及びプログラム。
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023170299
(43)【公開日】2023-12-01
(54)【発明の名称】検査装置、検査方法、及びプログラム。
(51)【国際特許分類】
   G01N 29/04 20060101AFI20231124BHJP
【FI】
G01N29/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022081953
(22)【出願日】2022-05-19
(71)【出願人】
【識別番号】521244824
【氏名又は名称】株式会社哲建
(74)【代理人】
【識別番号】100158366
【弁理士】
【氏名又は名称】井戸 篤史
(72)【発明者】
【氏名】澤野 哲也
【テーマコード(参考)】
2G047
【Fターム(参考)】
2G047AA05
2G047BC03
2G047BC07
2G047CA03
2G047EA12
2G047GA21
2G047GH04
2G047GH06
2G047GH22
(57)【要約】
【課題】撮像画像上の検査対象の位置を正確に特定することが可能な、検査装置や、検査方法、当該方法をコンピュータに実行させるプログラムの提供を課題とする。
【解決手段】
検査対象及び基準点を含む領域を撮像し、第一の撮像画像及び第二の撮像画像を得る撮像手段と、撮像手段を特定の方向に移動させる移動手段と、第一及び第二の撮像画像内の検査対象及び基準点を認識する画像認識手段と、第一及び第二の撮像画像内の検査対象及び基準点に座標を付与する座標付与手段と、第一の撮像画像内の基準点及び第二の撮像画像内の基準点の座標に基づいて、第一及び/又は第二の撮像画像内の検査対象の座標を補正する座標補正手段と、を備え、基準点は、移動手段の移動方向に連続的に配置される、検査装置。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造物外面の検査対象を検査する検査手段と、
前記検査対象及び基準点を含む領域を撮像し、第一の撮像画像及び第二の撮像画像を得る撮像手段と、
前記撮像手段を特定の方向に移動させる移動手段と、
前記第一及び前記第二の撮像画像内の検査対象及び基準点を認識する画像認識手段と、
前記第一及び前記第二の撮像画像内の検査対象及び基準点に座標を付与する座標付与手段と、
前記第一の撮像画像内の基準点及び前記第二の撮像画像内の基準点の座標に基づいて、前記第一及び/又は前記第二の撮像画像内の検査対象の座標を補正する座標補正手段と、を備え、
前記基準点は、前記移動手段の移動方向に連続的に配置される、
検査装置。
【請求項2】
前記第二の撮像画像は、前記検査手段による前記検査対象に対する検査が撮像され、
前記検査の検査結果から前記検査対象の状態を判定する検査結果判定手段と、
前記検査結果判定手段による判定結果を、前記検査対象の撮像画像上に表示する検査結果表示手段と、
をさらに備える、
請求項1に記載の検査装置。
【請求項3】
前記基準点が、前記移動手段の移動方向に略一定間隔で配置される、請求項2に記載の検査装置。
【請求項4】
前記移動方向が、鉛直方向であり、
前記基準点が、前記構造物外面上に配設された紐状及び/又は帯状部材上に配置される、
請求項3に記載の検査装置。
【請求項5】
前記領域に、少なくとも3点の前記基準点が含まれる、請求項1~4いずれか一項に記載の検査装置。
【請求項6】
構造物外面の検査対象を検査する検査手段と、
前記検査対象及び基準点を含む領域を撮像し、第一の撮像画像及び第二の撮像画像を得る撮像手段と、
前記第一の撮像画像内の検査対象及び基準点、並びに前記第二の撮像画像内の検査対象及び基準点候補を認識する画像認識手段と、
前記第一及び前記第二の撮像画像内の検査対象、基準点、及び基準点候補に座標を付与する座標付与手段と、
前記基準点に付与された座標及び前記基準点候補に付与された座標を基に、前記基準点候補は基準点であるか否かを判定する、基準点判定手段と、
前記第一の撮像画像内の基準点の座標、及び前記基準点判定手段により基準点であると判定された前記第二の撮像画像内の基準点の座標に基づいて、前記第一及び/又は前記第二の撮像画像内の前記検査対象の座標を補正する座標補正手段と、を備える、
検査装置。
【請求項7】
前記第二の撮像画像には、前記検査手段による前記検査対象に対する検査が撮像され、
前記検査の検査結果から前記検査対象の状態を判定する検査結果判定手段と、
前記検査結果判定手段による判定結果を、前記検査対象の撮像画像上に表示する検査結果表示手段と、
をさらに備える、
請求項6に記載の検査装置。
【請求項8】
前記基準点判定手段が、前記基準点に付与された座標と前記基準点候補に付与された座標との間の距離を算出し、前記距離と予め設定された閾値とを比較して、前記基準点候補は基準点であるか否かを判定する、
請求項6に記載の検査装置。
【請求項9】
前記画像認識手段は、第一の撮像画像における基準点に付与された座標から、第二の撮像画像における基準点が存在する蓋然性が高い範囲を特定し、当該範囲内で基準点候補を認識する、
請求項6~8いずれか一項に記載の検査装置。
【請求項10】
構造物外面の検査対象を検査する検査手段と、
前記検査対象及び基準点を含む領域を撮像し、第一の撮像画像及び第二の撮像画像を得る撮像手段と、
前記撮像手段を特定の方向に移動させる移動手段と、
前記第一及び前記第二の撮像画像内の基準点を認識する画像認識手段と、
前記第一及び前記第二の撮像画像内の前記基準点に座標を付与する座標付与手段と、
前記第一の撮像画像内の基準点に付与された座標と、前記第二の撮像画像内の基準点に付与された座標とを比較して、前記第二の撮像画像撮像時に前記移動手段が前記特定の方向に移動していたか否かを判定する、移動判定手段と、を備える、
検査装置。
【請求項11】
前記移動判定手段により移動していないと判定された前記第二の撮像画像から、前記第一の撮像画像内の基準点及び前記第二の撮像画像内の基準点の座標に基づいて、前記第一及び/又は前記第二の撮像画像内の前記検査対象の座標を補正する座標補正手段と、をさらに備える、
請求項10に記載の検査装置。
【請求項12】
前記第二の撮像画像には、前記検査手段による前記検査対象に対する検査が撮像され、
前記移動判定手段により移動していないと判定された前記第二の撮像画像に撮像された検査の検査結果から前記検査対象の状態を判定する検査結果判定手段と、
前記検査結果判定手段による判定結果を、前記検査対象の撮像画像上に表示する検査結果表示手段と、
をさらに備える、
請求項10又は11に記載の検査装置。
【請求項13】
構造物外面の検査対象を検査する検査ステップと、
前記検査対象及び基準点を含む領域を撮像し、第一の撮像画像及び第二の撮像画像を得る撮像ステップと、
前記第一及び前記第二の撮像画像内の検査対象及び基準点を認識する画像認識ステップと、
前記第一及び前記第二の撮像画像内の検査対象及び基準点に座標を付与する座標付与ステップと、
前記第一の撮像画像内の基準点及び前記第二の撮像画像内の基準点の座標に基づいて、前記第一の及び/又は前記第二の撮像画像内の検査対象の座標を補正する座標補正ステップと、を含み、
前記撮像手段は特定の方向に移動可能であって、
前記基準点が、前記検査手段及び前記撮像手段の移動方向に略一定間隔で配置される、
検査方法。
【請求項14】
コンピュータに、
構造物外面の検査対象を検査した検査結果、及び、前記検査対象及び基準点を含む領域を撮像した第一の撮像画像及び第二の撮像画像を受付ける受付ステップと、
前記第一及び前記第二の撮像画像内の検査対象及び基準点を認識する画像認識ステップと、
前記第一及び前記第二の撮像画像内の検査対象及び基準点に座標を付与する座標付与ステップと、
前記第一の撮像画像内の基準点及び前記第二の撮像画像内の基準点の座標に基づいて、前記第一の及び/又は前記第二の撮像画像内の検査対象の座標を補正する座標補正ステップと、
を実行させ、
前記撮像手段は特定の方向に移動可能であって、
前記基準点は、前記検査手段及び前記撮像手段の移動方向に略一定間隔で配置される、
プログラム。
【請求項15】
構造物外面の検査対象を検査する検査ステップと、
前記検査対象及び基準点を含む領域を撮像し、第一の撮像画像及び第二の撮像画像を得る撮像ステップと、
前記第一の撮像画像内の検査対象及び基準点、並びに前記第二の撮像画像内の検査対象及び基準点候補を認識する画像認識ステップと、
前記第一及び前記第二の撮像画像内の検査対象、基準点、及び基準点候補に座標を付与する座標付与ステップと、
前記基準点に付与された座標と前記基準点候補に付与された座標を基に、前記基準点候補は基準点であるか否かを判定する、基準点判定ステップと、
前記第一の撮像画像内の基準点の座標、及び前記基準点判定手段により基準点であると判定された前記第二の撮像画像内の基準点の座標に基づいて、前記第一の及び/又は前記第二の撮像画像内の検査対象の座標を補正する座標補正ステップと、を含む、
検査方法。
【請求項16】
コンピュータに、
構造物外面の検査対象を検査した検査結果、及び、前記検査対象及び基準点を含む領域を撮像した第一の撮像画像及び第二の撮像画像を受付ける受付ステップと、
前記第一の撮像画像内の検査対象及び基準点、並びに前記第二の撮像画像内の検査対象及び基準点候補を認識する画像認識ステップと、
前記第一及び前記第二の撮像画像内の検査対象、基準点、及び基準点候補に座標を付与する座標付与ステップと、
前記基準点に付与された座標と前記基準点候補に付与された座標を基に、前記基準点候補は基準点であるか否かを判定する、基準点判定ステップと、
前記第一の撮像画像内の基準点の座標、及び前記基準点判定手段により基準点であると判定された前記第二の撮像画像内の基準点の座標に基づいて、前記第一の及び/又は前記第二の撮像画像内の検査対象の座標を補正する座標補正ステップと、を実行させる、
プログラム。
【請求項17】
構造物外面の検査対象を検査する検査ステップと、
前記検査対象及び基準点を含む領域を撮像し、第一の撮像画像及び第二の撮像画像を得る撮像ステップと、
前記第一の撮像画像内の検査対象及び基準点、並びに前記第二の撮像画像内の検査対象及び基準点候補を認識する画像認識ステップと、
前記第一及び前記第二の撮像画像内の検査対象、基準点、及び基準点候補に座標を付与する座標付与ステップと、
前記撮像手段は特定の方向に移動可能であり、前記第一の撮像画像内の基準点に付与された座標と、前記第二の撮像画像内の基準点に付与された座標とを比較して、前記第二の撮像画像撮像時に前記撮像手段が前記特定の方向に移動していたか否かを判定する、移動判定ステップと、を含む、
検査方法。
【請求項18】
コンピュータに、
構造物外面の検査対象を検査した検査結果、及び、前記検査対象及び基準点を含む領域を撮像した第一の撮像画像及び第二の撮像画像を受付ける受付ステップと、
前記第一の撮像画像内の検査対象及び基準点、並びに前記第二の撮像画像内の検査対象及び基準点候補を認識する画像認識ステップと、
前記第一及び前記第二の撮像画像内の検査対象、基準点、及び基準点候補に座標を付与する座標付与ステップと、
前記撮像手段は特定の方向に移動可能であり、前記第一の撮像画像内の基準点に付与された座標と、前記第二の撮像画像内の基準点に付与された座標とを比較して、前記第二の撮像画像撮像時に前記撮像手段が前記特定の方向に移動していたか否かを判定する、移動判定ステップと、
を実行させる、
プログラム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、構造物外面の検査対象を検査する検査手段を含む検査装置、検査方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
画像解析技術や音声解析技術に基づきマンションやビル等の建物や、トンネルや橋梁等の構造物の状態を判定する検査・診断について、構造物上の検査対象を撮像し、基準点から検査対象の位置を特定する手法が知られている。例えば、指標部と、検査対象の表面の互いに離れた少なくとも2箇所に設定された複数の基準点により歪み補正を行って、検査対象物の検出箇所の位置情報を特定する検査対象物の状態評価装置(特許文献1参照)、指標部と、検査対象の表面の互いに離れた少なくとも2箇所に設定された複数の基準点とを含む範囲を撮像し、複数の基準点に対する指標部の相対的な位置を示す位置情報を生成する装置(特許文献2参照)、検査対象物に取り付けられたレーザースキャナの位置を基準点として、レーザースキャナにより走査された検出部の位置情報を生成する状態評価装置(特許文献3参照)、構造物外面に予め基準点を設定し、基準点を原点として互いに直行するX座標及びY座標の2次元座標データを設定する点検装置であって、構造物外面に予め塗料やシールなどで形成された指標や、構造物外面の角部などの特定の箇所を基準点として設定するもの(特許文献4参照)等が挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-082402号公報
【特許文献2】特開2016-205901号公報
【特許文献3】特開2020-159950号公報
【特許文献4】特開2016-173347号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1及び2は、検査対象である建物外面に複数の基準点を設置することが記載されているが、具体的に複数の基準点をどのように設置するか、基準点を含む撮像画像をどのように処理するかは、開示されていない。また、特許文献3及び特許文献4は、検出部や検出対象の座標を特定することが記載されているが、当該座標に意図せずズレが生じた場合に、正確な座標に補正することは開示されていない。
【0005】
検査手段や撮像手段をゴンドラやドローン等の移動手段で移動させながら検査する場合には、風や検査行為に伴い、検査手段や撮像手段が意図せずに揺動することがあり、かかる場合に撮像手段によって得られた撮像画像から得られる情報を、適正な情報に補正する必要があった。
【0006】
また、基準点により情報の補正を行う場合、撮像画像に基準点らしきものが多数映り込むことがあり、その中から正しい基準点を認識する必要があった。補正に伴うコンピュータ処理や、検査結果の判定や表示に伴うコンピュータ処理を高速化させるため、複数の撮像画像から必要な撮像画像を抽出することも求められた。
【0007】
そこで、本発明は、撮像画像上の検査対象の位置を正確に特定することが可能な検査装置や、検査方法、当該方法をコンピュータに実行させるプログラムの提供を課題とする。また、撮像画像上の基準点の認識や撮像画像の抽出等の処理を正確又は迅速に実行することが可能な検査装置や、検査方法、当該方法をコンピュータに実行させるプログラムの提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち、本発明の検査装置は、構造物外面の検査対象を検査する検査手段と、前記検査対象及び基準点を含む領域を撮像し、第一の撮像画像及び第二の撮像画像を得る撮像手段と、前記撮像手段を特定の方向に移動させる移動手段と、前記第一及び第二の撮像画像内の前記検査対象及び前記基準点を認識する画像認識手段と、前記第一及び第二の撮像画像内の前記検査対象及び前記基準点に座標を付与する座標付与手段と、前記第一の撮像画像内の基準点及び前記第二の撮像画像内の基準点の座標に基づいて、前記第一及び/又は前記第二の撮像画像内の前記検査対象の座標を補正する座標補正手段と、を備え、前記基準点は、前記移動手段の移動方向に連続的に配置される。
【0009】
前記第二の撮像画像は、前記検査手段による前記検査対象に対する検査が撮像される。検査装置は、前記検査の検査結果から前記検査対象の状態を判定する検査結果判定手段と、前記検査結果判定手段による判定結果を、前記検査対象の撮像画像上に表示する検査結果表示手段と、をさらに備えていてもよい。
【0010】
前記基準点は、前記移動手段の移動方向に略一定間隔で配置されてもよい。前記移動方向が、鉛直方向であり、前記基準点が、前記構造物外面上に配設された紐状及び/又は帯状部材上に配置されてもよい。前記領域に、少なくとも3点の前記基準点が含まれてもよい。
【0011】
本発明は、さらに、構造物外面の検査対象を検査する検査ステップと、前記検査対象及び基準点を含む領域を撮像し、第一の撮像画像及び第二の撮像画像を得る撮像ステップと、前記第一及び前記第二の撮像画像内の検査対象及び基準点を認識する画像認識ステップと、前記第一及び前記第二の撮像画像内の検査対象及び基準点に座標を付与する座標付与ステップと、前記第一の撮像画像内の基準点及び前記第二の撮像画像内の基準点の座標に基づいて、前記第一の及び/又は前記第二の撮像画像内の検査対象の座標を補正する座標補正ステップと、を含み、前記撮像手段は特定の方向に移動可能であって、前記基準点が、前記検査手段及び前記撮像手段の移動方向に略一定間隔で配置される、検査方法を提供する。
【0012】
本発明は、さらに、コンピュータに、構造物外面の検査対象を検査した検査結果、及び、前記検査対象及び基準点を含む領域を撮像した第一の撮像画像及び第二の撮像画像を受付ける受付ステップと、前記第一及び前記第二の撮像画像内の検査対象及び基準点を認識する画像認識ステップと、前記第一及び前記第二の撮像画像内の検査対象及び基準点に座標を付与する座標付与ステップと、前記第一の撮像画像内の基準点及び前記第二の撮像画像内の基準点の座標に基づいて、前記第一の及び/又は前記第二の撮像画像内の検査対象の座標を補正する座標補正ステップと、を実行させ、前記撮像手段は特定の方向に移動可能であって、前記基準点は、前記検査手段及び前記撮像手段の移動方向に略一定間隔で配置される、プログラムを提供する。
【0013】
また、本発明の検査装置は、構造物外面の検査対象を検査する検査手段と、前記検査対象及び基準点を含む領域を撮像し、第一の撮像画像及び第二の撮像画像を得る撮像手段と、前記第一の撮像画像内の検査対象及び基準点、並びに第二の撮像画像内の検査対象及び基準点候補を認識する画像認識手段と、前記第一及び第二の撮像画像内の前記検査対象、前記基準点、及び前記基準点候補に座標を付与する座標付与手段と、前記基準点に付与された座標及び前記基準点候補に付与された座標を基に、前記基準点候補は基準点であるか否かを判定する、基準点判定手段と、前記基準点判定手段により基準点であると判定された前記第二の撮像画像内の基準点の座標に基づいて、前記第一及び/又は前記第二の撮像画像内の前記検査対象の座標を補正する座標補正手段と、を備える。
【0014】
検査装置は、前記第二の撮像画像には、前記検査手段による前記検査対象に対する検査が撮像され、前記検査の検査結果から前記検査対象の状態を判定する検査結果判定手段と、前記検査結果判定手段による判定結果を、前記検査対象の撮像画像上に表示する検査結果表示手段と、をさらに備えていてもよい。
【0015】
前記基準点判定手段は、前記基準点に付与された座標と前記基準点候補に付与された座標との間の距離を算出し、前記距離と予め設定された閾値とを比較して、前記基準点候補は基準点であるか否かを判定し得る。また、前記画像認識手段は、第一の撮像画像における基準点に付与された座標から、第二の撮像画像における基準点が存在する蓋然性が高い範囲を特定し、当該範囲内で基準点候補を認識し得る。
【0016】
本発明は、さらに、構造物外面の検査対象を検査する検査ステップと、前記検査対象及び基準点を含む領域を撮像し、第一の撮像画像及び第二の撮像画像を得る撮像ステップと、前記第一の撮像画像内の検査対象及び基準点、並びに前記第二の撮像画像内の検査対象及び基準点候補を認識する画像認識ステップと、前記第一及び前記第二の撮像画像内の検査対象、基準点、及び基準点候補に座標を付与する座標付与ステップと、前記基準点に付与された座標と前記基準点候補に付与された座標を基に、前記基準点候補は基準点であるか否かを判定する、基準点判定ステップと、前記第一の撮像画像内の基準点の座標、及び前記基準点判定手段により基準点であると判定された前記第二の撮像画像内の基準点の座標に基づいて、前記第一の及び/又は前記第二の撮像画像内の検査対象の座標を補正する座標補正ステップと、を含む、検査方法を提供する。
【0017】
本発明は、さらに、コンピュータに、構造物外面の検査対象を検査した検査結果、及び、前記検査対象及び基準点を含む領域を撮像した第一の撮像画像及び第二の撮像画像を受付ける受付ステップと、前記第一の撮像画像内の検査対象及び基準点、並びに前記第二の撮像画像内の検査対象及び基準点候補を認識する画像認識ステップと、前記第一及び前記第二の撮像画像内の検査対象、基準点、及び基準点候補に座標を付与する座標付与ステップと、前記基準点に付与された座標と前記基準点候補に付与された座標を基に、前記基準点候補は基準点であるか否かを判定する、基準点判定ステップと、前記第一の撮像画像内の基準点の座標、及び前記基準点判定手段により基準点であると判定された前記第二の撮像画像内の基準点の座標に基づいて、前記第一の及び/又は前記第二の撮像画像内の検査対象の座標を補正する座標補正ステップと、を実行させる、プログラムを提供する。
【0018】
さらに、本発明の検査装置は、構造物外面の検査対象を検査する検査手段と、前記検査対象及び基準点を含む領域を撮像し、第一の撮像画像及び第二の撮像画像を得る撮像手段と、前記撮像手段を特定の方向に移動させる移動手段と、前記第一及び第二の撮像画像内の基準点を認識する画像認識手段と、前記第一及び第二の撮像画像内の前記基準点に座標を付与する座標付与手段と、第一の撮像画像内の基準点に付与された座標と、第二の撮像画像内の基準点に付与された座標とを比較して、第二の撮像画像撮像時に前記移動手段が前記特定の方向に移動していたか否かを判定する、移動判定手段と、を備える。
【0019】
検査装置は、前記移動判定手段により移動していないと判定された前記第二の撮像画像から、前記第一の撮像画像内の基準点及び前記第二の撮像画像内の基準点の座標に基づいて、前記第一及び/又は前記第二の撮像画像内の前記検査対象の座標を補正する座標補正手段と、をさらに備えてもよい。
【0020】
前記第二の撮像画像には、前記検査手段による前記検査対象に対する検査が撮像され、検査装置は、前記移動判定手段により移動していないと判定された前記第二の撮像画像に撮像された検査の検査結果から前記検査対象の状態を判定する検査結果判定手段と、前記検査結果判定手段による判定結果を、前記検査対象の撮像画像上に表示する検査結果表示手段と、をさらに備えてもよい。
【0021】
本発明は、さらに、構造物外面の検査対象を検査する検査ステップと、前記検査対象及び基準点を含む領域を撮像し、第一の撮像画像及び第二の撮像画像を得る撮像ステップと、前記第一の撮像画像内の検査対象及び基準点、並びに前記第二の撮像画像内の検査対象及び基準点候補を認識する画像認識ステップと、前記第一及び前記第二の撮像画像内の検査対象、基準点、及び基準点候補に座標を付与する座標付与ステップと、前記撮像手段は特定の方向に移動可能であり、前記第一の撮像画像内の基準点に付与された座標と、前記第二の撮像画像内の基準点に付与された座標とを比較して、前記第二の撮像画像撮像時に前記撮像手段が前記特定の方向に移動していたか否かを判定する、移動判定ステップと、を含む、検査方法を提供する。
【0022】
本発明は、さらに、コンピュータに、構造物外面の検査対象を検査した検査結果、及び、前記検査対象及び基準点を含む領域を撮像した第一の撮像画像及び第二の撮像画像を受付ける受付ステップと、前記第一の撮像画像内の検査対象及び基準点、並びに前記第二の撮像画像内の検査対象及び基準点候補を認識する画像認識ステップと、前記第一及び前記第二の撮像画像内の検査対象、基準点、及び基準点候補に座標を付与する座標付与ステップと、前記撮像手段は特定の方向に移動可能であり、前記第一の撮像画像内の基準点に付与された座標と、前記第二の撮像画像内の基準点に付与された座標とを比較して、第二の撮像画像撮像時に前記撮像手段が前記特定の方向に移動していたか否かを判定する、移動判定ステップと、を実行させる、プログラムを提供する。
【発明の効果】
【0023】
本発明の第一の検査装置、検査方法、及びプログラムは、移動手段の移動方向に連続的に配置された基準点を用いることで、どの位置の撮像手段であっても、撮像領域内に基準点を含めることができることから、撮像画像内の検査対象の座標を適正に補正することができる。また、基準点が配置された紐状及び/又は帯状部材を用いる場合には、構造物における取付や撤去作業を容易に行うことができる。
【0024】
また、本発明では、第一の撮像画像を撮像した撮像手段が、第二の撮像画像の撮像時までに、風や検査行為によって意図せずに移動した場合であっても、第一の撮像画像及び/又は第二の撮像画像の検査対象の座標を適正に補正することができる。その結果、各撮像画像や検査結果を一の画像上に重ね合わせて表示することも可能となる。
【0025】
本発明の第二の検査装置、検査方法、及びプログラムは、撮像画像内に多数の基準点らしきものが映り込んだ場合であっても、その中から正しい基準点を簡易な処理で特定することができる。その結果、検査対象の座標を正しく補正することが可能となる。
【0026】
本発明の第三の検査装置、検査方法、及びプログラムは、第二の撮像画像が、移動中に撮像されたか否かを判定することできることから、移動による影響を考慮したデータ処理が可能となる。移動中に撮像された第二の撮像画像をその後のデータ処理の対象から除外してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明の実施形態に係る第一の検査装置の構成を示す概略構成図である。
図2】本発明の実施形態に係る第一の検査装置を用いた検査の一例を示す図である。
図3】本発明の実施形態に係る第二の検査装置の構成を示す概略構成図である。
図4】本発明の実施形態に係る第二の検査装置による処理手順の一例を示すフローチャートである。
図5】本発明の実施形態に係る第三の検査装置の構成を示す概略構成図である。
図6】本発明の実施形態に係る第三の検査装置による処理手順の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0028】
図面を参照して本発明の検査装置、検査方法、及びプログラムの実施形態を説明する。本発明の検査装置は、少なくとも検査手段、撮像手段、並びに、コンピュータから構成される。本発明は、検査システムでもあり得る。
【0029】
本発明の一実施形態では、本発明は打音検査に関する検査装置である。打音検査とは、検査対象物の表面を打撃し、打撃により発生する音を分析することで、視覚的には確認できない検査対象の欠陥の有無を判定する検査方法である。
【0030】
本発明における検査対象は、構造物外面に備わったものであり、ここでの構造物とは、具体的にはマンションやビル等の建物躯体、建物の天井・床・壁、トンネル、橋梁等が挙げられる。検査対象物とは、具体的には構造物外面に取り付けられた複数の外装材であり、さらに具体的には、タイルが好適に挙げられる。
【0031】
検査手段は、好ましくは打撃手段であり、かかる場合には、検査手段は録音手段を備える。打撃手段は、構造物表面に備わった複数の検査対象を打撃し、録音手段が打撃手段により発生した打撃音を録音する。録音手段により録音された打撃音と撮像手段に撮像された撮像画像とがコンピュータで解析され、検査結果が得られる。録音手段は、検査手段とは別に備えられてもよく、撮像手段が録音手段を兼ねてもよい。
【0032】
打撃手段は、打音検査で通常使用される打撃手段が用いられる。具体的には、先端部に金属球が設けられた棒状のハンマーであり、先端部の金属球によってタイル等の検査対象を打撃することで打撃音を発生させる。打撃手段の打撃により発生する打撃音は、検査対象の状態によって振幅や周波数の特徴が異なることから、打撃音を解析することで、検査対象が正常であるか、正常でないか(異常であるか)を判定することができる。
【0033】
録音手段は、検査対象物を打撃手段で打撃した際に発生する打撃音を録音する。録音手段には、マイクロフォンを備えたレコーダー等、既知の手段が好適に用いられる。撮像手段は、検査対象に対する打撃手段による打撃を撮像する。撮像手段により撮像される撮像画像は、好ましくは動画であるが、一定間隔で撮像される静止画であっても良い。
【0034】
ここで、本発明の実施形態に係る第一の検査装置は、構造物外面の検査対象を検査する検査手段と、検査対象及び基準点を含む領域を撮像する撮像手段と、少なくとも撮像手段を特定の方向に移動させる移動手段と、撮像画像内の検査対象及び基準点を認識する画像認識手段と、撮像画像内の検査対象及び基準点に座標を付与する座標付与手段と、撮像画像内の基準点の座標に基づいて検査対象の座標を補正する座標補正手段とを備える。
【0035】
図1は、本発明の一実施形態である第一の検査装置100の概略構成図である。検査装置10は、検査手段12、撮像手段14、及びコンピュータ16から構成される。検査手段12は、打音検査用のハンマーであり、さらに、検査対象であるタイル18を打撃して発生した打撃音を録音し、音声データを生成する機能を有する。撮像手段14は、タイル18に対する検査手段12による打撃と、少なくとも1点の基準点20とを同時に含めた撮像領域22を撮像し、撮像データが生成される。
【0036】
基準点20は、紐状部材24上に連続的に配置される。基準点20は、コンピュータ16による画像認識を容易にするため、構造物外観や検査対象、基準点が配置される部材とは異なる色で表示されることが好ましい。例えば、基準点20は、構造物外観や検査対象の色相及び/又は彩度に対して、画像認識し易い色相及び/又は彩度で表示され、基準点の色彩パラメータは、L*a*b*色空間やRGB色空間、HSV色空間等の色彩情報から決定され得る。
【0037】
一の撮像領域22に含まれる基準点20は、少なくとも1点であるが、一の撮像領域22には複数の基準点20が含まれることが好ましい。より具体的には、一の撮像領域22に含まれる基準点20は、2点であることが好ましく、3点以上であることがさらに好ましい。撮像領域22に含まれる基準点20が3点以上であれば、後述する座標補正手段34において、アフィン変換が可能となるためである。
【0038】
検査装置100は、移動手段26を備える。移動手段26は、少なくとも撮像手段14を特定の方向に移動させるものであり、ここでの移動手段26は、検査手段12及び撮像手段14を両矢印aが示す方向に移動させる。
【0039】
移動手段26は、具体的には、ドローン等の飛翔体や、構造物より垂下されるゴンドラ等の垂下体、構造物上に設置されたレール上を搬送する搬送体等が挙げられる。本発明の一実施形態では、移動手段は、マンションやビル等の建物躯体の屋上や、足場やアーム等から垂下されたゴンドラであり、鉛直方向に昇降移動が可能である。打音検査が作業員によって実施される場合には、検査手段12を持った作業員及び撮像手段を搭載したゴンドラであり得る。
【0040】
基準点20は、移動手段26の移動方向aに沿って紐状部材24上に連続的に配置され、より好ましくは略一定間隔又は一定間隔で配置される。このように配置された基準点20を用いることで、移動手段26により撮像手段14が移動しても、いずれの移動先での撮像領域22に、少なくとも1点の、好ましくは3点以上の基準点20を含めることができる。基準点20は、紐状部材24上だけでなく、帯状部材上にも配置され得る。また、基準点20は、プロジェクタ等の投影手段により、移動方向aに連続的に表示されるよう、構造物外観上に投影することによって配置してもよい。
【0041】
基準点20を紐状部材及び/又は帯状部材上に配置する場合、風や検査行為、移動手段26の移動等に起因して基準点20の位置が移動することがないように、構造物外面に紐状部材及び/又は帯状部材が配設される。紐状部材及び/又は帯状部材が、構造物から垂下される場合には、部材が弛むことなく緊張状態が維持されるように、部材の上端側が、構造物の屋上又は上階に固定され、部材の下端側が、構造物の下階若しくは地面に固定され、又は錘と連結されていることが好ましい。
【0042】
撮像手段14は、検査開始前から検査終了に至るまで、検査対象及び基準点20を連続的に撮像し得る。撮像される画像は、好ましくは動画であるが、一定間隔で撮像される静止画であっても良い。本発明の一実施形態においては、検査開始前に検査対象を撮像した撮像画像を第一の撮像画像と呼称し、いずれかの検査対象に対する検査を撮像した撮像画像を第二の撮像画像と呼称する。
【0043】
撮像手段14は、検査される検査対象物が撮像可能な位置に設置され、具体的には、複数のタイル18を備えた構造物外面の一部又は全体が撮像領域22に収まるよう、構造物から一定の距離が離れた地点に設置される。具体的には作業員の頭部や、ゴンドラ、ゴンドラ上の支持部材等に取付られる。撮像手段14は、検査手段12に代えて録音手段が備わっていてもよく、かかる場合にはマイクロフォンを内蔵したカメラが好適に用いられる。
【0044】
コンピュータ16は、好ましくは記憶装置、演算装置、及び制御装置からなり、検査手段12及び撮像手段14より得られたデータを解析して、検査結果を表示する。コンピュータ16は、受付手段28、画像認識手段30、座標付与手段32、座標補正手段34、評価手段36、表示手段38、及び/又は記憶手段40として機能する。
【0045】
受付手段28は、検査手段12により取得された打撃音の音声データ、及び撮像手段14により取得された撮像画像の画像データを受付ける。画像認識手段30は、受付手段28により受付された撮像画像から、撮像領域22内のタイル18、及び、基準点20を認識する。具体的には、画像認識手段30は、予め設定された目地42の色情報から、目地42に相当する画像範囲を検出することで、タイル18を認識し得る。また、画像認識手段30は、予め設定された基準点20の色情報から、基準点20に相当する画像範囲を検出することで、基準点20を認識し得る。ここで、タイル18は、検査手段12によって打撃されたタイル18だけでなく、撮像画像に含まれるタイル18全てを認識してもよい。
【0046】
次に、座標付与手段32は、画像認識手段により認識されたタイル18及び基準点20に座標値を付与する。タイル18に対しては、タイル18そのものではなく目地42やその角部に座標を付与してもよい。タイル18及び基準点20に付与される座標値は、二次元座標(XY座標)の値であり得る。座標系の原点、X軸及びY軸の方向は、撮像画像内で任意に設定されるが、第一の撮像画像と第二の撮像画像においては、座標系の原点、X軸及びY軸の方向は同一の基準で設定される。
【0047】
座標補正手段34は、第二の撮像画像において座標付与手段32により付与された座標値を補正する。具体的には、第一の撮像画像内の基準点20の座標と、第二の撮像画像内の基準点20の座標とを比較し、同一の基準点間の差分を検出する。当該差分は、撮像手段14の、第一の撮像画像撮像時から第二の撮像画像撮像時までの間の移動量として捉えることができる。
【0048】
座標補正手段34は、第二の撮像画像撮像時の撮像手段14と構造物外面との相対的な位置関係を、第一の撮像画像撮像時の撮像手段14と構造物外面との相対的な位置関係に合わせるため、基準点20の第一の撮像画像撮像時から第二の撮像画像撮像時までの移動量を基に、第二の撮像画像内のタイル18の座標値を補正する。
【0049】
座標補正手段34によるタイル18の座標値の補正は、移動、拡大縮小、回転、及び、せん断から選ばれる1又は複数の手段によってなされるが、第一の撮像画像及び第二の撮像画像に同一の基準点20が3点以上含まれる場合には、アフィン変換によりタイル18の座標値を補正することが好ましい。
【0050】
好ましくは、第一の撮像画像は、検査行為の実施前に検査対象となる複数のタイル18を撮像した撮像画像であり、第二の撮像画像は、検査行為の実施、すなわちタイル18に対する検査手段12の打撃を撮像した撮像画像である。撮像手段14は、作業員による検査行為を連続的に撮像し、座標補正手段34は、第二の撮像画像において検査手段12により打撃されたタイル18を、第一の撮像画像内の当該タイルの座標値に補正する。その結果、表示手段38は、第一の撮像画像上に複数のタイル18の検査結果を重ね合わせて表示することができるようになる。
【0051】
評価手段36は、検査対象であるタイル18を打撃した際に発生した打撃音を評価する。具体的には、評価手段36は、打撃音が、正常なタイル18を打撃した打撃音であるか、正常でない(異常な)タイル18を打撃した打撃音であるかを判定する。打撃音の評価は、公知の機械学習が好ましく用いられ、具体的には、サポートベクターマシン等の教師あり学習が挙げられる。事前に、正常なタイル18を打撃した打撃音と、正常でない(異常な)タイル18を打撃した打撃音とを用いて、分類器を構築しておくことが望ましい。また、軽度の異常・重度の異常というように、異常を段階的に判定可能な分類器を構築しても良い。
【0052】
評価手段36は、タイル18の打撃音の評価結果と、座標補正手段34により補正された第二の撮像画像内の当該タイル18の座標値とを紐付ける。
【0053】
表示手段38は、評価手段36により評価された評価結果を表示する。評価結果は、コンピュータのディスプレイやタブレット等、作業員が携帯する端末上に表示すると良い。例えば、複数のタイル18が示された第一の撮像画像上に、補正された各タイル18の座標値を基に、各タイル18の評価結果を重ね合わせて表示することができる。
【0054】
記憶手段40は、コンピュータ16により機能する各手段において得られたデータの記憶や、各手段において必要なデータを読み出す処理を行う。これらの各手段は、単一のコンピュータ16によって実行されてもよく、各手段を分割して任意に割り当てられた複数のコンピュータ16によって実行されてもよい。
【0055】
図2は、本発明の一実施形態である検査装置100を用いた検査の一例を示す図である。検査装置100においては、構造物は建物躯体44であって、移動手段26は、作業員Hが乗って検査作業を行うゴンドラである。建物躯体44の屋上に、ワイヤ46の巻き上げや送り出しを行う昇降装置48が設置され、移動手段26であるゴンドラはワイヤ46により両矢印aが示す鉛直上方向及び/又は鉛直下方向に移動する。
【0056】
基準点20は、紐状部材24上に、両矢印aに示す方向に連続的且つ略一定間隔に配置される。紐状部材24は、検査対象のタイル18に対して、移動手段26の移動方向aに直行する方向の両外側、すなわち検査対象のタイル18の左右両外側に配設されるよう、建物躯体44の屋上から垂下される。
【0057】
撮像手段14は、移動手段26であるゴンドラに搭載され、撮像領域22を連続的に撮像する。撮像領域22には、少なくとも3点の基準点20が含まれる。基準点20は、移動手段26であるゴンドラが、いずれの位置に移動しても、撮像領域22に少なくとも3点の基準点が含まれるような間隔で、紐状部材24に連続的に配置される。
【0058】
また、撮像手段14は、検査行為の開始前に検査対象である複数のタイル18の撮像画像を撮像し(第一の撮像画像)、作業員Hが実施する検査手段12による検査行為を撮像する(第二の撮像画像)。コンピュータ16は、第一の撮像画像及び第二の撮像画像を前述のように解析し、表示手段38により、第一の撮像画像上に、各タイル18の検査結果を重ね合わせて表示する。
【0059】
次に、本発明の第二の実施形態について説明する。図3は、本発明の一実施形態である第二の検査装置200の構成を示す概略構成図である。以下、第二の検査装置200を詳細に説明するが、第一の検査装置100と共通する構成要素の説明は省略する場合もある。
【0060】
検査装置200は、第二の撮像画像内の基準点20が、第一の撮像画像内の基準点20と同一の基準点20であるか否かを、座標付与手段32により付与された座標を基に判定する、基準点判定手段33を備える。すなわち、検査装置200を構成するコンピュータ16は、受付手段28、画像認識手段30、座標付与手段32、座標補正手段34、評価手段36、表示手段38、及び/又は記憶手段40に加えて、基準点判定手段33として機能する。
【0061】
基準点判定手段33以前の第二の撮像画像内の基準点20は、基準点20であるかどうかは特定されていないため、これを基準点候補と呼称する。基準点判定手段33は、第二の撮像画像内の基準点候補が、基準点20であるか否かを判定する手段である。
【0062】
画像認識手段30は、第一の撮像画像内の検査対象であるタイル18及び基準点20、並びに、第二の撮像画像内のタイル18及び基準点候補を認識する。さらに、座標付与手段32は、第一の撮像画像内の検査対象であるタイル18及び基準点20、並びに、第二の撮像画像内のタイル18及び基準点候補に対して、座標値を付与する。
【0063】
基準点判定手段33は、基準点候補が基準点20であるか否かを判定する。検査装置200における画像認識手段30、座標付与手段32、及び基準点判定手段33の処理手順の一例を示すフローチャートを図4に示す。基準点判定手段33では、第一の撮像画像内の基準点20に付与された座標と、第二の撮像画像内の基準点候補に付与された座標から、基準点20の位置から基準点候補の位置への移動量、及び/又は、基準点20と基準点候補との距離がデータとして取得される。ここでの距離は、ユークリッド距離だけでなく、第一の撮像画像撮像時から第二の撮像画像撮像時までの撮像手段14の移動等による影響を考慮したマハラノビス距離も含む。撮像手段14の移動による影響は、既知の統計的手法により算出され得る。
【0064】
取得データは、予め設定された閾値と比較され、取得データが閾値未満であれば取得データは異常値ではなく、基準点候補は基準点20であると判定され、取得データが閾値以上であれば取得データは異常であり、基準点候補は基準点20ではないと判定される。基準点候補が基準点20ではないと判定された場合には、画像認識手段30により第二の撮像画像内の別の基準点候補を認識し、基準点候補が基準点20であると判定されるまで、処理を繰り返す。
【0065】
閾値は、経験的に設定されてもよいが、異常値を検出する統計的手法により予め設定され得る。また、閾値と比較するために取得データの異常度を算出する方法として、マハラノビス距離、マハラノビス・タグチ法、ホテリングのT検定等の手法が用いられる。
【0066】
また、画像認識手段30は、第一の撮像画像における基準点の座標値から、第二の撮像画像において基準点20が存在する蓋然性が高い範囲を特定し、当該範囲内で基準点候補を認識する画像認識手段であり得る。換言すれば、画像認識手段30は、第二の撮像画像において注目領域(ROI: Region of Interest)を設定し、設定された注目領域内で基準点候補を認識する。注目領域の設定は、第一の撮像画像における基準点20の座標値を基に、第一の撮像画像内の基準点20から第二の撮像画像内の同一の基準点20への移動量の統計モデルから、基準点20が存在する蓋然性が高い範囲に設定され得る。
【0067】
次に、本発明の第三の実施形態について説明する。図5は、本発明の一実施形態である第三の検査装置300の構成を示す概略構成図である。以下、第三の検査装置300を詳細に説明するが、第一の検査装置100及び第二の検査装置200と共通する構成要素の説明は省略する場合もある。
【0068】
第三の検査装置300は、第二の撮像画像の撮像位置が、第一の撮像画像の撮像位置から変化した場合に、当該変化が、移動手段26を意図して特定方向に移動したことが起因したものか、又は、風や検査行為によって移動手段が意図せず移動したことが起因したかを判定する。
【0069】
検査装置300は、第一の撮像画像内の基準点に付与された座標と、第二の撮像画像内の基準点に付与された座標とを比較し、第二の撮像画像撮像時に移動手段が特定の方向に移動していたか否かを判定する、移動判定手段35を備える。検査装置300を構成するコンピュータ16は、受付手段28、画像認識手段30、座標付与手段32、座標補正手段34、評価手段36、表示手段38、及び/又は記憶手段40に加えて、移動判定手段35として機能する。
【0070】
画像認識手段30は、第一の撮像画像内の検査対象であるタイル18及び基準点20、並びに、第二の撮像画像内のタイル18及び基準点候補を認識する。さらに、座標付与手段32は、第一の撮像画像内の検査対象であるタイル18及び基準点20、並びに、第二の撮像画像内のタイル18及び基準点候補に対して、座標値を付与する。
【0071】
移動判定手段33は、第二の撮像画像が、移動手段26が特定の方向への移動中に撮像されたものであるか否かを判定する。検査装置300における画像認識手段30、座標付与手段32、及び移動判定手段35の処理手順の一例を示すフローチャートを図6に示す。移動判定手段35では、第一の撮像画像内の基準点20に付与された座標と、第二の撮像画像内の基準点20に付与された座標から、基準点20の位置から基準点候補の位置への移動量、及び/又は、基準点20と基準点候補との距離がデータとして取得される。
【0072】
取得データは、予め設定された閾値と比較され、取得データが閾値未満であれば、第二の撮像画像は特定の方向に移動中に撮像されたものではないと判定され、取得データが閾値以上であれば、第二の撮像画像は特定の方向に移動中に撮像されたものであると判定される。閾値は、予め移動手段26による特定方向への移動量を算出し、その算出結果を基に、統計的手法や機械学習によって設定され得る。第一の撮像画像における基準点20が、第二の撮像画像における基準点20の位置に移動する移動量と、移動手段26による特定方向への移動量とを比較することで、基準点20の移動が、移動手段26の特定方向による移動か否かが判定される。
【0073】
移動判定手段35によって、コンピュータ16によるデータ処理を簡易化又は高速化することができる。例えば、作業員に対し、移動手段26の特定方向への移動中は、検査作業を行わないようなルールを課した場合には、移動手段26の特定方向への移動中に撮像された第二の撮像画像は、検査がされていないため、座標補正手段34によるデータ処理の対象としない処理を行う。さらに、移動手段26が特定方向への移動をしていない状態で撮像された第二の撮像画像のみを抽出し、以降の座標補正手段34の処理に供することが可能となる。
【0074】
さらに、本発明の別の実施態様では、第一の検査装置100、第二の検査装置200、及び/又は第三の検査装置300を用いる検査方法を提供する。また、第一の検査装置100、第二の検査装置200、及び/又は第三の検査装置300におけるコンピュータ16に処理を実行させるプログラムを提供する。
【0075】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。
【符号の説明】
【0076】
12 検査手段
14 撮像手段
16 コンピュータ
18 タイル
20 基準点
22 撮像領域
24 紐状部材
26 移動手段
28 受付手段
30 画像認識手段
32 座標付与手段
33 基準点判定手段
34 座標補正手段
35 移動判定手段
36 評価手段
38 表示手段
40 記憶手段
100 第一の検査装置
200 第二の検査装置
300 第三の検査装置
a 移動方向
H 作業員
図1
図2
図3
図4
図5
図6