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特開2023-170303支障物回避支援システム及び保守用車
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023170303
(43)【公開日】2023-12-01
(54)【発明の名称】支障物回避支援システム及び保守用車
(51)【国際特許分類】
   B61L 23/00 20060101AFI20231124BHJP
   E01B 27/12 20060101ALI20231124BHJP
   E01B 35/02 20060101ALI20231124BHJP
   G06T 1/00 20060101ALI20231124BHJP
【FI】
B61L23/00 Z
E01B27/12
E01B35/02
G06T1/00 330Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022081960
(22)【出願日】2022-05-19
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 研究集会名 2021年度第9回鉄道施設技術発表会 主催者 一般社団法人日本鉄道施設協会 掲載年月日 令和3年7月2日 掲載アドレス https://www.jrcea.or.jp/emag 〔刊行物等〕 発行者名 株式会社鉄道現業社 刊行物名 新線路 巻数、号数 第75巻、第10号(令和3年10月号) 発行年月日 令和3年10月15日 〔刊行物等〕 博覧会名 鉄道技術展・大阪 主催者 株式会社産業経済新聞社 掲載年月日 令和4年4月6日 掲載アドレス https://www.westjr.co.jp/company/action/technology/vision/techweb/company11.html
(71)【出願人】
【識別番号】597110995
【氏名又は名称】株式会社レールテック
(74)【代理人】
【識別番号】100113712
【弁理士】
【氏名又は名称】野口 裕弘
(72)【発明者】
【氏名】永原 伸彦
【テーマコード(参考)】
2D057
5B057
5H161
【Fターム(参考)】
2D057BA00
5B057AA16
5B057CA01
5B057CA08
5B057CA12
5B057CA16
5B057CB01
5B057CB08
5B057CB12
5B057CB16
5B057CE08
5B057DA16
5B057DB02
5B057DB06
5B057DB09
5H161AA01
5H161MM05
5H161MM12
5H161NN10
5H161QQ03
(57)【要約】
【課題】埋設された支障物や、支障物の増設・移設に対応できる支障物回避支援システムを提供する。
【解決手段】支障物回避支援システム1は、調査用画像取得装置3と、支障物データ管理装置4と、支障物データ表示装置5を備える。調査用画像取得装置3は、軌道を撮像して取得した調査用軌道画像を位置情報と対応させて出力する。支障物データ管理装置4は、その調査用軌道画像を表示し、支障物データ(支障物の位置範囲、その支障物の種別、その位置範囲で動作が禁止される作業装置の情報)の入力操作を受け、その調査用軌道画像及び支障物データを出力する。支障物データ表示装置5は、作業装置2を有する保守用車50に搭載されて、調査用軌道画像及び作業時軌道画像をレール方向の位置を合わせて並べて表示するとともに、支障物データにおける支障物の位置範囲をその調査用軌道画像及び作業時軌道画像に重ねて表示する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軌道に存在する支障物の位置で特定の作業装置の動作を禁止するための支障物回避支援システムであって、
軌道上を移動する車に搭載される調査用画像取得装置と、
地上に設けられる支障物データ管理装置と、
作業装置を有する保守用車に搭載される支障物データ表示装置を備え、
前記調査用画像取得装置は、軌道を撮像して調査用軌道画像を取得する第1撮像部と、データを処理する第1車上処理部と、前記車の位置情報を取得する位置情報取得部を有し、
前記第1車上処理部は、前記第1撮像部が取得した調査用軌道画像を前記位置情報と対応させて出力し、
前記支障物データ管理装置は、データを処理する処理部と、表示部と、入力操作を受ける入力部を有し、
前記処理部は、前記調査用画像取得装置から前記調査用軌道画像が入力され、その調査用軌道画像を前記表示部に表示し、
前記入力部は、支障物データが入力され、
前記支障物データは、支障物の位置範囲、その支障物の種別、その位置範囲で動作が禁止される作業装置の情報を有し、
該支障物データ管理装置は、前記調査用軌道画像及び前記支障物データを出力し、
前記支障物データ表示装置は、軌道を撮像して作業時軌道画像を取得する第2撮像部と、車上表示部と、データを処理する第2車上処理部を有し、
前記第2車上処理部は、前記支障物データ管理装置から前記調査用軌道画像及び前記支障物データが入力され、その調査用軌道画像及び前記作業時軌道画像をレール方向の位置を合わせて並べて前記車上表示部に表示するとともに、前記支障物データにおける支障物の位置範囲をその調査用軌道画像及び作業時軌道画像に重ねて前記車上表示部に表示することを特徴とする支障物回避支援システム。
【請求項2】
前記支障物データ管理装置は、前記調査用軌道画像及び前記支障物データを保存する記憶部を有することを特徴とする請求項1に記載の支障物回避支援システム。
【請求項3】
前記支障物データ表示装置が搭載される前記保守用車は、マルチプルタイタンパであることを特徴とする請求項1に記載の支障物回避支援システム。
【請求項4】
前記軌道画像取得装置が搭載される前記車は、レールの超音波探傷を行うレール探傷車であることを特徴とする請求項1に記載の支障物回避支援システム。
【請求項5】
請求項1に記載の支障物回避支援システムの支障物データ表示装置が搭載された保守用車であって、
前記作業装置の動作を制御する制御装置を有し、
前記制御装置は、前記支障物データ管理装置から前記支障物データにおける支障物の位置範囲の情報と、その位置範囲で動作が禁止される作業装置の情報が入力され、入力された前記情報に基づいて前記作業装置を制御することを特徴とする保守用車。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軌道に存在する支障物の位置で特定の作業装置の動作を禁止するための支障物回避支援システム、及びそのシステムを利用する保守用車に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄道の軌道の保守において、マルチプルタイタンパという保守用車が線形整備作業に用いられる。マルチプルタイタンパは、軌道の道床バラストを連続してつき固める大型機械である(非特許文献1参照)。マルチプルタイタンパによる作業では、軌道に存在する分岐器、踏切、レール継目等の様々な設備が特定の作業装置にとって支障物となり、それらの支障物の位置で、作業装置の動作を禁止する制御(禁止制御)を行うことにより、作業装置が設備を損傷することを防いでいる。
【0003】
このような禁止制御を作業員のみに頼って行うことは、非効率的であり、ヒューマンエラーが発生するリスクもある。
【0004】
そこで、従来から、マルチプルタイタンパによる作業を行う前に、作業員が現地で支障物を確認し、支障物の位置に対応するレールの頭部外側面にペンキの塗布でバーコードを付けている。そして、そのバーコードを、マルチプルタイタンパに搭載された装置で読み取って、作業装置の禁止制御を自動的に行っている。しかし、ペンキを塗布でバーコードを付ける作業は、人手が掛かるとともに、作業の可否が天候に左右される。また、バーコードのペンキの経時変化、降雨、落葉、雑草等の影響でバーコードが正常に読み取れないことがある。なお、マルチプルタイタンパ以外にも作業装置の禁止制御が必要な保守用車がある。
【0005】
保守用車における作業装置の禁止制御をさらに自動化するものとして、鉄道保守作業支援用情報処理装置が提案されている(特許文献1参照)。この鉄道保守作業支援用情報処理装置は、軌道の撮像データを取得し、画像認識処理によって作業不可領域を定め、作業不可領域で作業装置を自動的に禁止制御する。
【0006】
しかしながら、支障物には、信号保安装置等のケーブルやトラフ等、軌道のバラスト内に埋設されたものがある。埋設された支障物は、軌道の撮像データ(軌道画像)に写らないので、鉄道保守作業支援用情報処理装置の画像認識処理によって検知できない。さらに、画像認識処理で作業不可領域を定めた後、保守用車による作業までに支障物が増設・移設された場合、鉄道保守作業支援用情報処理装置では、その支障物について作業不可領域が定められない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2016-133857号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】JIS E1001「鉄道-線路用語」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記問題を解決するものであり、軌道に存在する支障物の位置で特定の作業装置の動作を禁止するための支障物回避支援システム、及びそのシステムを利用する保守用車において、埋設された支障物や、支障物の増設・移設に対応できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の支障物回避支援システムは、軌道に存在する支障物の位置で特定の作業装置の動作を禁止するためのシステムであって、軌道上を移動する車に搭載される調査用画像取得装置と、地上に設けられる支障物データ管理装置と、作業装置を有する保守用車に搭載される支障物データ表示装置を備え、前記調査用画像取得装置は、軌道を撮像して調査用軌道画像を取得する第1撮像部と、データを処理する第1車上処理部と、前記車の位置情報を取得する位置情報取得部を有し、前記第1車上処理部は、前記第1撮像部が取得した調査用軌道画像を前記位置情報と対応させて出力し、前記支障物データ管理装置は、データを処理する処理部と、表示部と、入力操作を受ける入力部を有し、前記処理部は、前記調査用画像取得装置から前記調査用軌道画像が入力され、その調査用軌道画像を前記表示部に表示し、前記入力部は、支障物データが入力され、前記支障物データは、支障物の位置範囲、その支障物の種別、その位置範囲で動作が禁止される作業装置の情報を有し、該支障物データ管理装置は、前記調査用軌道画像及び前記支障物データを出力し、前記支障物データ表示装置は、軌道を撮像して作業時軌道画像を取得する第2撮像部と、車上表示部と、データを処理する第2車上処理部を有し、前記第2車上処理部は、前記支障物データ管理装置から前記調査用軌道画像及び前記支障物データが入力され、その調査用軌道画像及び前記作業時軌道画像をレール方向の位置を合わせて並べて前記車上表示部に表示するとともに、前記支障物データにおける支障物の位置範囲をその調査用軌道画像及び作業時軌道画像に重ねて前記車上表示部に表示することを特徴とする。
【0011】
この支障物回避支援システムにおいて、前記支障物データ管理装置は、前記調査用軌道画像及び前記支障物データを保存する記憶部を有することが好ましい。
【0012】
この支障物回避支援システムにおいて、前記支障物データ表示装置が搭載される前記保守用車は、例えば、マルチプルタイタンパである。
【0013】
この支障物回避支援システムにおいて、前記軌道画像取得装置が搭載される前記車は、例えば、レールの超音波探傷を行うレール探傷車である。
【0014】
本発明の保守用車は、前記支障物回避支援システムの支障物データ表示装置が搭載された保守用車であって、前記作業装置の動作を制御する制御装置を有し、前記制御装置は、前記支障物データ管理装置から前記支障物データにおける支障物の位置範囲の情報と、その位置範囲で動作が禁止される作業装置の情報が入力され、入力された前記情報に基づいて前記作業装置を制御することが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明の支障物回避支援システムによれば、支障物データ管理装置の入力部から支障物の支障物データ(支障物の位置範囲、その支障物の種別、その位置範囲で動作が禁止される作業装置の情報)が入力されるので、埋設された支障物の支障物データも入力することができる。事前に取得された調査用軌道画像が支障物データ管理装置の表示部に表示されるので、支障物データの入力が容易になる。また、作業装置を有する保守用車に搭載された車上表示部に調査用軌道画像及び作業時軌道画像がレール方向の位置を合わせて並べて表示されるので、調査用軌道画像の取得後の支障物に関する変化をユーザに気付かせることができる。さらに、支障物データにおける支障物の位置範囲がその調査用軌道画像及び作業時軌道画像に重ねて表示されるので、支障物データに無い支障物が作業時軌道画像にあれば、それをユーザに気付かせることができる。したがって、支障物回避支援システム及びそのシステムを利用する保守用車は、埋設された支障物や、支障物の増設・移設に対応できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は本発明の一実施形態に係る支障物回避支援システムのブロック構成図である。
図2図2は同システムの調査用画像取得装置が搭載された車の先頭部の図面代用写真である。
図3図3は同システムの支障物データ管理装置に表示された調査用軌道画像の例を示す図面代用写真である。
図4図4は同システムの支障物データ管理装置に表示された入力ダイアログの例を示す図である。
図5図5は同システムの支障物データ管理装置に表示された支障物データ一覧の表示ダイアログの例を示す図である。
図6図6は同システムの支障物データ表示装置における表示例を示す図面代用写真である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の一実施形態に係る支障物回避支援システムを図1乃至図5を参照して説明する。図1に示すように、支障物回避支援システム1は、軌道に存在する支障物の位置で特定の作業装置2の動作を禁止するためのシステムである。この支障物回避支援システム1は、調査用画像取得装置3と、支障物データ管理装置4と、支障物データ表示装置5を備える。それぞれの装置は、設置場所が異なる。
【0018】
調査用画像取得装置3は、軌道上を移動する車30に搭載される。軌道上を移動する車30は、保守用車又は鉄道車両である。図2に示すように、本実施形態では、車30は、レールを超音波探傷するレール探傷車、すなわち保守用車の一種である。
【0019】
支障物データ管理装置4は、地上に設けられる。本実施形態では、支障物データ管理装置4は、事務所に設けられる。
【0020】
支障物データ表示装置5は、作業装置2を有する保守用車50に搭載される。本実施形態では、保守用車50は、マルチプルタイタンパである。マルチプルタイタンパの作業装置2は、クランプ(レールを持ち上げる装置)、タンピングユニット(マクラギ下のバラストをつき固める装置)、コンパクター(バラストを締め固める装置)、スイーパ(道床整理を行う装置)、DGS(道床を振動で安定化させる装置)等である。
【0021】
調査用画像取得装置3は、第1撮像部31と、第1車上処理部32と、位置情報取得部33を有する。第1撮像部31は、軌道を撮像して調査用軌道画像を取得する。第1車上処理部32は、データを処理する。位置情報取得部33は、車30(自車)の位置情報を取得する。調査用画像取得装置3は、上記の構成以外に照明装置34等を有する。
【0022】
本実施形態では、第1撮像部31は、ラインスキャンカメラであり、車30の先頭部の上部から前方に張り出して下の軌道に向けて設けられる(図2参照)。第1撮像部31は、マクラギ方向(レール方向に直交する左右方向)にスキャン(走査)して軌道を撮像する。撮像する幅は、軌道中心から左右プラス・マイナス2.5mである。
【0023】
第1車上処理部32は、コンピュータ(PC)であり、CPUとメモリ等を有し、プログラムを実行することによって機能する(図1参照)。本実施形態では、第1車上処理部32は、車上用ラックマウントPCである。
【0024】
位置情報取得部33は、ロータリーエンコーダのパルス信号から移動距離の情報を得るととともに、地上子を検知することによって絶対位置の情報を得て、移動距離と絶対位置から位置情報を算出する。その位置情報は、キロ程で表され、cm単位の有効数字の精度を有する。
【0025】
照明装置34は、マクラギ方向に並べられた複数のLEDを有し、車30の先頭部の下部に設けられる(図2参照)。照明装置34によって、第1撮像部31の撮像位置で、約100,000ルクスの照度が確保される。
【0026】
調査用画像取得装置3は、上記の構成以外に、第1撮像部31が撮像した画像を車上で確認等するためのモニタ、データ収録用ストレージ(ハードディスク)、電源装置等を有する(図示せず)。
【0027】
上記のように構成された調査用画像取得装置3において、第1車上処理部32は、第1撮像部31が取得した調査用軌道画像を位置情報取得部33が取得した位置情報と対応させて出力する(図1参照)。具体的には、調査用軌道画像は、レール方向1mが一定長さで表示されるように補正され、レール方向1mごとの画像ファイルとしてデータ収録用ストレージに出力される。各画像ファイルは、位置で特定される。
【0028】
本実施形態では、調査用画像取得装置3から支障物データ管理装置4へのデータの転送は、記憶媒体を介して行われる。その記憶媒体は、SSD(ソリッド・ステート・ドライブ)である。なお、調査用画像取得装置3から支障物データ管理装置4へのデータの転送を無線によって行うように構成してもよい。
【0029】
支障物データ管理装置4は、データを処理する処理部41と、表示部42と、入力操作を受ける入力部43と、記憶部44を有する。
【0030】
本実施形態では、支障物データ管理装置4は、PC(コンピュータ)である。処理部41は、そのPCの本体であり、CPU及びメモリ等を有する。表示部42は、そのPCのディスプレイである。入力部43は、そのPCのキーボード及びマウスである。記憶部44は、そのPCのハードディスク又はSSDである。
【0031】
支障物データ管理装置4の処理部41は、調査用画像取得装置3から調査用軌道画像が入力され、その調査用軌道画像を表示部42に表示する。
【0032】
表示部42に表示される調査用軌道画像の例を図3に示す。この例では、調査用軌道画像に橋梁が写っている。調査用軌道画像は、レール方向(図3の横方向)にスクロールされる。
【0033】
入力部43は、支障物データが入力される。支障物データは、支障物の位置範囲、その支障物の種別、その位置範囲で動作が禁止される作業装置の情報を有する。
【0034】
支障物データ管理装置4のユーザは、表示部42を見ながら、入力部43を操作して支障物データを入力する。支障物データ入力のための入力ダイアログの例を図4に示す。入力ダイアログは、調査用軌道画像に重ねて表示部42に表示される。入力ダイアログには、支障物の位置範囲(キロ程、区間長)、支障物の種別、禁止指定の欄がある。支障物の位置範囲の入力では、表示部42に表示された調査用軌道画像上で入力部43のマウスを使って範囲を指定する。支障物の種別の入力では、入力ダイアログのメニューをマウスで選択する。動作が禁止される作業装置の情報の入力では、禁止指定の欄のラジオボタンやチェックボックスをマウスで選択する。ラジオボタンとは、GUI(グラフィック・ユーザ・インターフェース)において、複数の選択肢から一つだけ選ぶための入力ツールである。チェックボックスとは、複数の選択肢から重複を許して選ぶための入力ツールである。
【0035】
禁止指定の欄には、全作業禁止と個別指定のラジオボタンがある。全ての作業装置2の動作を禁止する場合、全作業禁止のラジオボタンをマウスでクリックする。各作業装置2の動作を個別に禁止する場合、個別指定のラジオボタンをクリックし、動作を禁止する作業装置2のチェックボックスをクリックする。図4の例では、支障物の種別で橋梁を選択し、個別指定のラジオボタンを選択すると、橋梁についてのデフォルトの禁止指定のチェックマークが自動的にチェックボックスに入る。ユーザは、各チェックボックスを選んで、追加の禁止指定をしたり、禁止指定を解除したりできる。
【0036】
ケーブル等、調査用軌道画像に写らない支障物について、ユーザは、現場調査の結果が記載された台帳等に基づいて支障物データを入力する。また、調査用軌道画像の取得後に増設・移設・撤去された支障物について、ユーザは、それ以降の現場調査の結果や、増設・移設・撤去工事の図面等に基づいて支障物データを入力する。
【0037】
入力された支障物データは、表示部42に一覧表示される。支障物データ一覧の表示ダイアログの例を図5に示す。この表示ダイアログは、調査用軌道画像に重ねて表示部42に表示される。表示ダイアログは、支障物の種別、位置範囲、レール方向の長さが表示されるとともに、編集と削除のボタンがある。ユーザは、支障物を選んで編集のボタンを押すと、入力ダイアログでその支障物データを修正することができる。支障物を選んで削除のボタンを押すと、その支障物が支障物データから削除される。
【0038】
支障物データ管理装置4は、調査用軌道画像及び支障物データを記憶部44に保存する。このため、支障物データ管理装置4に支障物データを一度入力すると、次回からは、その後に変更が生じた支障物についてのみ新規入力、編集、削除等の入力をすればよく、支障物データの入力が省力化される。
【0039】
支障物データ管理装置4は、調査用軌道画像及び支障物データを出力する。そのうち、調査用軌道画像の出力先は、支障物データ表示装置5である(図1参照)。支障物データの出力先は、保守用車50に搭載された支障物データ表示装置5及び制御装置6である。
【0040】
制御装置6は、支障物データ管理装置4から支障物データにおける支障物の位置範囲の情報と、その位置範囲で動作が禁止される作業装置の情報が入力される。
【0041】
本実施形態では、支障物データ管理装置4は、制御装置6の支障物管理システムが読める形式でデータを出力し、その出力データが記憶媒体を介して制御装置6の支障物管理システム(図示せず)に入力される。なお、支障物データ管理装置4から制御装置6へのデータの転送を無線によって行うように構成してもよい。
【0042】
制御装置6は、入力された支障物の位置範囲の情報と、その位置範囲で動作が禁止される作業装置2の情報に基づいて作業装置2を制御する。
【0043】
これにより、支障物データ管理装置4が出力したデータに基づいて、軌道に存在する支障物の位置で特定の作業装置2の動作を禁止する制御が自動的に行われる。
【0044】
しかし、支障物データ管理装置4を用いて支障物データが入力された後に支障物に変更が生じた場合、制御装置6は、その変更後の支障物の位置で作業装置2の動作を禁止する制御を自動的にはできない。そこで、人がチェックして作業装置2の不要動作を回避する必要がある。支障物回避支援システム1の支障物データ表示装置5は、そのようなチェックを支援するものである。
【0045】
支障物データ表示装置5は、第2撮像部51と、車上表示部52と、データを処理する第2車上処理部53を有する。第2撮像部51は、軌道を撮像して作業時軌道画像を取得する。作業時軌道画像は、作業時の軌道画像、すなわちリアルタイム画像である。
【0046】
本実施形態では、第2撮像部51は、カメラである。車上表示部52は、ディスプレイである。第2車上処理部53は、コンピュータである。支障物データ表示装置5が搭載される保守用車50は、マルチプルタイタンパであり、位置情報取得装置54を有している。保守用車50の位置情報は、位置情報取得装置54から支障物データ表示装置5に入力される。なお、支障物データ表示装置5が位置情報取得装置54を有してもよい。
【0047】
第2車上処理部53は、支障物データ管理装置4から調査用軌道画像及び支障物データが入力される。そして、図6に示すように、第2車上処理部53は、その調査用軌道画像及び作業時軌道画像をレール方向(軌道長手方向)の位置を合わせて並べて車上表示部52に表示するとともに、支障物データにおける支障物の位置範囲をその調査用軌道画像及び作業時軌道画像に重ねて車上表示部52に表示する。
【0048】
図6の例では、中央の縦長の画像が調査用軌道画像であり、その右にある縦長の画像が作業時軌道画像である。
【0049】
また、第2車上処理部53は、保守用車50の現在の位置を調査用軌道画像及び作業時軌道画像上に表示する。図6の上端近くにある調査用軌道画像上及び作業時軌道画像上の点線は第2撮像部51の位置である。そのすぐ下にある横長の実線は保守用車50の先頭位置である。保守用車50の移動に伴い、調査用軌道画像及び作業時軌道画像が上方向に移動する。
【0050】
支障物の位置範囲は、調査用軌道画像上及び作業時軌道画像上で四角形の枠でカラー表示される。その四角形の枠は、通常は水色で、禁止制御する作業装置2が一定距離内に接近した時に黄色になり、禁止制御中はピンク色になる。なお、支障物の位置範囲の色分け表示における水色、黄色、ピンク色は、一具体例であり、これに限定されない。
【0051】
これにより、支障物データ表示装置5のユーザは、事前に入力された支障物データと、作業時軌道画像に含まれる支障物を容易に比較することができ、車上表示部52に表示された支障物範囲と、作業時軌道画像に含まれる支障物が相違する場合、ユーザは、その支障物について作業装置2の動作を禁止する操作を行うことができる。
【0052】
さらに、第2車上処理部53は、作業装置2の制御の状況を車上表示部52に表示する。
【0053】
図6の例において、作業装置2が調査用軌道画像上のレール外側に小さな矩形で表示され、作業装置2の名称と支障物との間の距離が、同図の左下に文字で表示されている。その作業装置2の制御の状況は、色で示される。支障物の一定距離内に接近した作業装置2は、黄色で表示される。この例では、クランプが支障物まであと2.43mまで接近しており、黄色で表示されている。禁止制御中の作業装置2は、ピンク色で表示される。この例では、DGSが禁止制御中である。
【0054】
この表示により、支障物データ表示装置5で作業装置2の制御の状況を監視することができる。
【0055】
第2車上処理部53は、車上表示部52の表示を支障物データ表示装置5のストレージに動画として保存する。保存された動画は、トラブルシューティング等に利用される。
【0056】
上述したように、要するに、支障物回避支援システム1は、調査用画像取得装置3と、支障物データ管理装置4と、支障物データ表示装置5を備える。調査用画像取得装置3は、軌道を撮像して取得した調査用軌道画像を位置情報と対応させて出力する。支障物データ管理装置4は、その調査用軌道画像を表示し、支障物データ(支障物の位置範囲、その支障物の種別、その位置範囲で動作が禁止される作業装置の情報)の入力操作を受け、その調査用軌道画像及び支障物データを出力する。支障物データ表示装置5は、作業装置2を有する保守用車50に搭載されて、調査用軌道画像及び作業時軌道画像をレール方向の位置を合わせて並べて表示するとともに、支障物データにおける支障物の位置範囲をその調査用軌道画像及び作業時軌道画像に重ねて表示する。
【0057】
以上、本実施形態にかかる支障物回避支援システム1によれば、支障物データ管理装置4の入力部43から支障物の支障物データ(支障物の位置範囲、その支障物の種別、その位置範囲で動作が禁止される作業装置の情報)が入力されるので、埋設された支障物の支障物データも入力することができる。事前に取得された調査用軌道画像が支障物データ管理装置4の表示部42に表示されるので、支障物データの入力が容易になる。また、作業装置2を有する保守用車50に搭載された車上表示部52に調査用軌道画像及び作業時軌道画像がレール方向の位置を合わせて並べて表示されるので、調査用軌道画像の取得後の支障物に関する変化をユーザに気付かせることができる。さらに、支障物データにおける支障物の位置範囲がその調査用軌道画像及び作業時軌道画像に重ねて表示されるので、支障物データに無い支障物が作業時軌道画像にあれば、それをユーザに気付かせることができる。したがって、支障物回避支援システム1は、埋設された支障物や、支障物の増設・移設に対応できる。
【0058】
なお、本発明は、上記の実施形態の構成に限られず、発明の要旨を変更しない範囲で種々の変形が可能である。例えば、調査用画像取得装置3が搭載される車30は、軌道を検測する軌道検測車であってもよい。また、支障物データ表示装置5が搭載される保守用車は、レール削正車であってもよい。
【符号の説明】
【0059】
1 支障物回避支援システム
2 作業装置
3 調査用画像取得装置
31 第1撮像部
32 第1車上処理部
33 位置情報取得部
4 支障物データ管理装置
41 処理部
42 表示部
43 入力部
44 記憶部
5 支障物データ表示装置
51 第2撮像部
52 車上表示部
53 第2車上処理部
6 制御装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6